(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】剥離層形成用組成物及び剥離層
(51)【国際特許分類】
C08L 79/04 20060101AFI20220621BHJP
C08L 33/16 20060101ALI20220621BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08L79/04
C08L33/16
B32B27/00 L
(21)【出願番号】P 2019532854
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2018028043
(87)【国際公開番号】W WO2019022185
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2017145669
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018108670
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018108687
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】西田 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
(72)【発明者】
【氏名】何 邦慶
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/012172(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/118879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/04
C08L 33/16
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリウレア、
(B)
スルホン酸化合物又はその塩、
(C)ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を有する化合物から選ばれる架橋剤、
(D)下記式(a1)で表される繰り返し単位、下記式(b)で表される繰り返し単位及び下記式(c)で表される繰り返し単位を含む高分子添加剤、並びに
(E)溶剤
を含む剥離層形成用組成物であって、(D)高分子添加剤が、(A)ポリウレア100質量部に対し、5~100質量部含まれる剥離層形成用組成物。
【化1】
[式中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5及びA
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基であり、
X
1は、下記式(1-1)、(1-2)、(1-3)又は(1-4)で表される基であり、
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基であり、前記フェニル基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよく、また、R
1及びR
2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3~6の環を形成してもよく、R
3は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基であり、前記フェニル基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)
Q
1は、下記式(1-5)又は(1-6)で表される基である。
【化3】
(式中、X
2は、式(1-1)、式(1-2)又は式(1-4)で表される基であり、Q
2は、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基であり、前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよく、n
1及びn
2は、それぞれ独立に、0又は1である。)]
【化4】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R
B1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3又は4の分岐状のアルキル基であり、R
Cは、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であり、R
Dは、炭素数の6~20の多環式アルキル基又は炭素数6~12のアリール基である。)
【請求項2】
(D)高分子添加物の式(b)で表される繰り返し単位において、R
Cが、炭素数2~10のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第2級又は第3級炭素原子である請求項1記載の剥離層形成用組成物。
【請求項3】
(D)高分子添加物の式(b)で表される繰り返し単位において、R
Cが、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であり、かつ、式(a1)で表される繰り返し単位の含有割合が、(D)高分子添加物の全繰り返し単位中25モル%以上である請求項1記載の剥離層形成用組成物。
【請求項4】
(D)高分子添加剤が、下記式(a2)で表される繰り返し単位、下記式(b)で表される繰り返し単位、下記式(c)で表される繰り返し単位及び下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものである請求項1記載の剥離層形成用組成物。
【化5】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R
B2は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3又は4の分岐状のアルキル基であるが、2-メチル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基は含まず、R
Cは、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であり、R
Dは、炭素数6~20の多環式アルキル基又は炭素数6~12のアリール基であり、R
Eは、単結合、炭素数6~20の多環式アルキレン基又は炭素数6~12のアリーレン基であり、R
Fは、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基であり、R
Gは、メチル基、エチル基又はヒドロキシ基である。)
【請求項5】
X
1が、式(1-3)で表される基である請求項1~4のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【請求項6】
R
3が、2-プロペニル基である請求項5記載の剥離層形成用組成物。
【請求項7】
Q
1が、式(1-5)で表される基である請求項1~6のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【請求項8】
(C)架橋剤が、下記式(C-1)~(C-5)のいずれかで表される化合物である請求項1~
7のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【化6】
(式中、R
11~R
26は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、R
27は、水素原子又はメチル基である。)
【請求項9】
(C)架橋剤の含有量が、(A)ポリウレア100質量部に対し、10~100質量部である請求項1~
8のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物から得られる剥離層。
【請求項11】
請求項1
0記載の剥離層に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂層が積層された積層体。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物を基体に塗布し、剥離層を形成する工程、
前記剥離層上に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、及び
前記樹脂基板を、0.25N/25mm以下の剥離力で剥離する工程
を含む樹脂基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離層形成用組成物及び剥離層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスには、薄型化及び軽量化という特性に加え、曲げることができるという機能を付与することが求められている。このことから、従来の重く脆弱で曲げることができないガラス基板にかわって、軽量なフレキシブルプラスチック基板を用いることが求められる。
【0003】
特に、新世代ディスプレイでは、軽量なフレキシブルプラスチック基板(以下、樹脂基板ともいう。)を用いたアクティブマトリクス型フルカラーTFTディスプレイパネルの開発が求められている。また、タッチパネル式ディスプレイは、ディスプレイパネルに組み合わせて使用されるタッチパネルの透明電極や樹脂基板等、フレキシブル化に対応する材料が開発されている。透明電極としては、従来使用されていたITOから、PEDOT等曲げ加工が可能な透明導電性ポリマー、金属ナノワイヤ、及びその混合系等、別の透明電極材料が提案されている(特許文献1~4)。
【0004】
一方、タッチパネルフィルムの基材も、ガラスからポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、シクロオレフィン、アクリル等のプラスチックからなるシート等になり、フレキシブル性を持たせた透明フレキシブル製タッチスクリーンパネルが開発されている(特許文献5~7)。
【0005】
一般的に、フレキシブル製タッチスクリーンパネルは、生産性と剥離性を安定的に行うため、ガラス基板等の支持基板上に剥離(粘着)層を作製し、その上でデバイスを作製後剥離することで生産される(特許文献8)。この剥離層は、行程中では支持基板から剥離してはならない一方、剥離する際は低剥離力が必要とされる。また、生産性を向上させるため、剥離層を成膜後、製膜状態で長期保管する必要がある。このため、剥離層には成膜後の安定性が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2012/147235号
【文献】特開2009-283410号公報
【文献】特表2010-507199号公報
【文献】特開2009-205924号公報
【文献】国際公開第2017/002664号
【文献】国際公開第2016/160338号
【文献】特開2015-166145号公報
【文献】特開2016-531358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高い耐熱性と適度な剥離性とを有し、製膜後の安定性に優れる剥離層を与え得る剥離層形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)所定の繰り返し単位を含むポリウレア、(B)酸化合物又はその塩、(C)ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を有する化合物から選ばれる架橋剤、(D)所定の繰り返し単位を含む高分子添加剤、及び(E)溶剤を含む剥離層形成用組成物が、高い耐熱性、基体との優れた密着性、樹脂基板との適度な密着性、及び適度な剥離性を有する剥離層を再現性よく与え得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記剥離層形成用組成物及び剥離層を提供する。
1.(A)下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリウレア、
(B)酸化合物又はその塩、
(C)ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を有する化合物から選ばれる架橋剤、
(D)下記式(a1)で表される繰り返し単位、下記式(b)で表される繰り返し単位及び下記式(c)で表される繰り返し単位を含む高分子添加剤、並びに
(E)溶剤
を含む剥離層形成用組成物であって、(D)高分子添加剤が、(A)ポリウレア100質量部に対し、5~100質量部含まれる剥離層形成用組成物。
【化1】
[式中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5及びA
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基であり、
X
1は、下記式(1-1)、(1-2)、(1-3)又は(1-4)で表される基であり、
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基であり、前記フェニル基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよく、また、R
1及びR
2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3~6の環を形成してもよく、R
3は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基であり、前記フェニル基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)
Q
1は、下記式(1-5)又は(1-6)で表される基である。
【化3】
(式中、X
2は、式(1-1)、式(1-2)又は式(1-4)で表される基であり、Q
2は、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基であり、前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよく、n
1及びn
2は、それぞれ独立に、0又は1である。)]
【化4】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R
B1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3又は4の分岐状のアルキル基であり、R
Cは、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であり、R
Dは、炭素数の6~20の多環式アルキル基又は炭素数6~12のアリール基である。)
2.(D)高分子添加物の式(b)で表される繰り返し単位において、R
Cが、炭素数2~10のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第2級又は第3級炭素原子である1の剥離層形成用組成物。
3.(D)高分子添加物の式(b)で表される繰り返し単位において、R
Cが、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であり、かつ、式(a1)で表される繰り返し単位の含有割合が、(D)高分子添加物の全繰り返し単位中25モル%以上である1の剥離層形成用組成物。
4.(D)高分子添加剤が、下記式(a2)で表される繰り返し単位、下記式(b)で表される繰り返し単位、下記式(c)で表される繰り返し単位及び下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものである1の剥離層形成用組成物。
【化5】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R
B2は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3又は4の分岐状のアルキル基であるが、2-メチル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基は含まず、R
Cは、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であり、R
Dは、炭素数6~20の多環式アルキル基又は炭素数6~12のアリール基であり、R
Eは、単結合、炭素数6~20の多環式アルキレン基又は炭素数6~12のアリーレン基であり、R
Fは、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基であり、R
Gは、メチル基、エチル基又はヒドロキシ基である。)
5.X
1が、式(1-3)で表される基である1~4のいずれかの剥離層形成用組成物。
6.R
3が、2-プロペニル基である5の剥離層形成用組成物。
7.Q
1が、式(1-5)で表される基である1~6のいずれかの剥離層形成用組成物。
8.(B)成分が、スルホン酸化合物又はその塩である1~7のいずれかの剥離層形成用組成物。
9.(C)架橋剤が、下記式(C-1)~(C-5)のいずれかで表される化合物である1~8のいずれかの剥離層形成用組成物。
【化6】
(式中、R
11~R
26は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、R
27は、水素原子又はメチル基である。)
10.(C)架橋剤の含有量が、(A)ポリウレア100質量部に対し、10~100質量部である1~9のいずれかの剥離層形成用組成物。
11.1~10のいずれかの剥離層形成用組成物から得られる剥離層。
12.11の剥離層に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂層が積層された積層体。
13.1~10のいずれかの剥離層形成用組成物を基体に塗布し、剥離層を形成する工程、
前記剥離層上に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、及び
前記樹脂基板を、0.25N/25mm以下の剥離力で剥離する工程
を含む樹脂基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剥離層形成用組成物を用いることで、高い耐熱性、基体との優れた密着性、樹脂基板との適度な密着性、及び適度な剥離性を有する剥離層を再現性よく得ることできる。また、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、基体上に形成された樹脂基板や、更にその上に設けられる回路等に損傷を与えることなく、当該回路等とともに当該樹脂基板を当該基体から分離することが可能となる。したがって、本発明の剥離層形成用組成物は、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造プロセスの高速化やその歩留り向上等に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[剥離層形成用組成物]
本発明の剥離層形成用組成物は、(A)所定の繰り返し単位を含むポリウレア、(B)酸化合物又はその塩、(C)ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を有する化合物から選ばれる架橋剤、(D)所定の繰り返し単位を含む高分子添加剤、並びに(E)溶剤を含むものである。
【0012】
[(A)ポリウレア]
(A)成分のポリウレアは、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むものである。
【化7】
【0013】
式(1)中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基であるが、剥離性と生産性の観点から、A1~A6が全て水素原子であることが好ましい。
【0014】
式(1)中、X
1は、下記式(1-1)、(1-2)、(1-3)又は(1-4)で表される基である。
【化8】
【0015】
式(1-1)及び(1-2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基であり、前記フェニル基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよく、また、R1及びR2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3~6の環を形成してもよい。
【0016】
式(1-3)中、R3は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基であり、前記フェニル基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)
【0017】
式(1)中、Q
1は、下記式(1-5)又は(1-6)で表される基である。
【化9】
【0018】
式(1-5)中、X
2は、式(1-1)、式(1-2)又は式(1-4)で表される基である。式(1-5)において、例えば、X
2が式(1-2)で表される基の場合、その構造は式(1-5-1)となる。
【化10】
(式中、R
1及びR
2は、前記と同じ。)
【0019】
式(1-6)中、Q2は、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基である。前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、及び炭素数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。また、Q2がフェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基である場合、それらの結合の位置は特に限定されない。すなわち、例えば、フェニレン基が1位と2位とで結合している場合、1位と3位とで結合している場合又は1位と4位とで結合している場合、ナフチレン基が1位と2位で結合している場合、1位と4位で結合している場合、1位と5位で結合している場合又は2位と3位で結合している場合、アントリレン基が1位と2位で結合している場合、1位と4位で結合している場合又は9位と10位で結合している場合等がありえるが、いずれであってもよい。
【0020】
前記炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記炭素数3~6のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、2-プロペニル基、3-ブテニル基等が挙げられる。
【0021】
前記炭素数1~6のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~6のアルキルチオ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、R1とR2が結合して形成される炭素数3~6の環としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0022】
前記炭素数1~10のアルキレン基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ペンタメチレン基、シクロヘキシレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0023】
なお、式(1)において、X
1が式(1-2)で表される基の場合、その構造は下記式(2)で表されるものとなり、X
1が式(1-3)で表される基の場合、その構造は下記式(3)で表されるものとなる。また、式(3)において、R
3が、2-プロペニル基であるものが好ましい。
【化11】
(式中、A
1~A
6、R
1~R
3及びQ
1は、前記と同じ。)
【0024】
式(1)中、Q1は、(A)成分のポリウレアの耐熱性の観点から、環状構造を含んでいることが好ましい。すなわち、Q1が、式(1-5)で表される基、又は式(1-6)で表される基であってQ2が環状アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基であることが好ましく、式(1-5)で表される基であることがより好ましい。
【0025】
式(1)で表される繰り返し単位としては、下記式(4)~式(22)で表されるものが好ましい。なお、下記式中、Meはメチル基であり、Etはエチル基である。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
(A)成分のポリウレアは、例えば、国際公開第2005/098542号を参考にして合成することができる。
【0032】
(A)ポリウレアの重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、4,000~30,000がより一層好ましく、5,000~20,000が更に好ましい。また、その分散度(Mw/Mn)は、1.3~4.0が好ましく、1.4~2.5がより好ましい。なお、Mnは数平均分子量であり、Mw及びMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0033】
[(B)酸化合物又はその塩]
本発明の剥離層形成用組成物は、(B)成分として酸化合物又はその塩を含む。前記酸化合物としては、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート、サリチル酸、カンファースルホン酸、スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸及びピリジニウム-1-ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸化合物や、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等のカルボン酸化合物が挙げられる。また、前記酸化合物の塩としては、前記酸のピリジニウム塩、イソプロパノールアミン塩、N-メチルモルホリン塩等が挙げられ、具体的には、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム、1-ナフタレンスルホン酸ピリジニウム、イソプロパノールアミンp-トルエンスルホン酸塩、N-メチルモルホリンp-トルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0034】
(B)成分の含有量は、(A)成分のポリウレア100質量部に対し、0.01~15質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。(B)成分の含有量が前記範囲であれば、高い耐熱性と適度な剥離性とを有し、製膜後の安定性に優れる剥離層を与え得る組成物が得られる。(B)酸化合物又はその塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
[(C)架橋剤]
本発明の剥離層形成用組成物は、(C)成分として架橋剤を含む。前記架橋剤は、ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を有する化合物から選択されるものである。
【0036】
前記架橋剤としては、下記式(C-1)~(C-5)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化17】
【0037】
式中、R11~R26は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であるが、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。R27は、水素原子又はメチル基である。
【0038】
前記架橋剤として具体的には、ヘキサメチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラメチロールグリコールウリル、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル等の含窒素化合物が挙げられる。
【0039】
また、オルネクス社製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名サイメル(登録商標)300、サイメル301、サイメル303、サイメル350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名マイコート(登録商標)506、マイコート508)、グリコールウリル化合物(商品名サイメル1170、POWDERLINK 1174)、メチル化尿素樹脂(商品名UFR65)、ブチル化尿素樹脂(商品名UFR300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、DIC(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(商品名ベッカミン(登録商標)J-300S、ベッカミンP-955、ベッカミンN)等の市販されている含窒素化合物を挙げることができる。
【0040】
また、架橋剤として、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換された(メタ)アクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーを用いることができる。そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド)、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドとスチレンとの共重合体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体、N-エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートの共重合体、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドとベンジル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0041】
前記架橋剤としてより好ましくは、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(POWDERLINK 1174)、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリルが挙げられる。
【0042】
これら架橋剤は、自己縮合による架橋反応を起こすことができる。また、(A)成分のポリウレア中のヒドロキシ基と架橋反応を起こすことができる。そして、このような架橋反応によって、形成される剥離層は強固になり、有機溶剤に対する溶解性が低い剥離層となる。
【0043】
(C)成分の含有量は、(A)成分のポリウレア100質量部に対し、10~100質量部が好ましく、20~50質量部がより好ましい。(C)成分の含有量が前記範囲であれば、高耐熱性と適度な剥離性とを有し、製膜後の安定性に優れる剥離層を与え得る組成物が得られる。(C)架橋剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
[(D)高分子添加剤]
本発明の剥離層形成用組成物は、(D)成分として、下記式(a1)で表される繰り返し単位、下記式(b)で表される繰り返し単位及び下記式(c)で表される繰り返し単位を含む高分子添加剤を含む。
【化18】
【0045】
式中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。RB1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3又は4の分岐状のアルキル基である。RCは、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基である。RDは、炭素数6~20の多環式アルキル基又は炭素数6~12のアリール基である。
【0046】
前記炭素数3又は4の分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基が挙げられる。RB1としては、これらの分岐状アルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが好ましく、具体例としては、1,1,1-トリフルオロイソプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、ノナフルオロtert-ブチル基等が挙げられる。
【0047】
前記炭素数1~10のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、7-ヒドロキシヘプチル基、8-ヒドロキシオクチル基、9-ヒドロキシノニル基、10-ヒドロキシデシル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル基、3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル基、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルプロピル基、3-ヒドロキシ-1,2-ジメチルプロピル基、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル基、4-ヒドロキシ-1-メチルブチル基、4-ヒドロキシ-2-メチルブチル基、4-ヒドロキシ-3-メチルブチル基等の炭素数2~10のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるもの;1-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、1-ヒドロキシヘキシル基、2-ヒドロキシヘキシル基、1-ヒドロキシオクチル基、2-ヒドロキシオクチル基、1-ヒドロキシデシル基、2-ヒドロキシデシル基、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基等の炭素数1~10のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第2級又は第3級炭素原子であるものが挙げられる。
【0048】
前記炭素数6~20の多環式アルキル基としては、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、イソボルニル基、ノルボルニル基等が挙げられる。前記炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-ビフェニリル基、2-ビフェニリル基等が挙げられる。
【0049】
また、(D)高分子添加剤は、下記式(a2)で表される繰り返し単位、下記式(b)で表される繰り返し単位、下記式(c)で表される繰り返し単位及び下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものであってもよい。
【化19】
【0050】
式中、RA、RC及びRDは、前記と同じ。RB2は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3又は4の分岐状のアルキル基である(ただし、2-メチル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基を除く。)。前記炭素数3又は4の分岐状のアルキル基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。REは、単結合、炭素数6~20の多環式アルキレン基又は炭素数6~12のアリーレン基である。RFは、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基である。RGは、メチル基、エチル基又はヒドロキシ基である。
【0051】
前記炭素数6~20の多環式アルキレン基としては、前述した炭素数6~20の多環式アルキル基の具体例から水素原子を1つ除いた基が挙げられ、例えば、アダマンチレン基、イソボルニレン基、ノルボルニレン基等が挙げられる。
【0052】
前記炭素数6~12のアリーレン基としては、前述した炭素数6~12のアリール基の具体例から水素原子を1つ除いた基が挙げられ、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基等が挙げられる。
【0053】
前記炭素数1~10のアルキレン基としては、前記Q2の説明において例示したものと同様のものを挙げることができる。本発明では、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましく、メチレン基がより一層好ましい。
【0054】
式(a1)又は(a2)で表される繰り返し単位としては、下記式(a-1)~(a-3)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化20】
【0055】
式(b)で表される繰り返し単位としては、下記式(b-1)~(b-16)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化21】
【0056】
式(c)で表される繰り返し単位としては、下記式(c-1)~(c-13)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化22】
【0057】
式(d)で表される繰り返し単位としては、下記式(d-1)~(d-8)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化23】
【0058】
(D)高分子添加剤が、式(a1)で表される繰り返し単位、式(b)で表される繰り返し単位及び式(c)で表される繰り返し単位を含むものであって、式(b)で表される繰り返し単位中のヒドロキシアルキル基においてヒドロキシ基が結合する炭素原子が第2級又は第3級炭素原子である場合(以下、このような高分子添加剤を高分子添加剤D1という。)、式(a1)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、30~60モル%が好ましく、35~50モル%がより好ましい。式(b)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、10~35モル%が好ましく、15~30モル%がより好ましい。式(c)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、5~60モル%が好ましく、20~50モル%がより好ましい。
【0059】
(D)高分子添加剤が、式(a1)で表される繰り返し単位、式(b)で表される繰り返し単位及び式(c)で表される繰り返し単位を含むものであって、式(b)で表される繰り返し単位中のヒドロキシアルキル基においてヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子である場合(以下、このような高分子添加剤を高分子添加剤D2という。)、式(a1)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、15~60モル%が好ましく、25~60モル%がより好ましく、30~60モル%がより一層好ましく、35~50モル%が更に好ましい。式(b)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、8~38モル%が好ましく、10~38モル%が好ましく、10~35モル%がより好ましく、15~30モル%がより一層好ましい。式(c)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、2~77モル%が好ましく、2~65モル%がより好ましく、5~60モル%がより一層好ましく、20~50モル%が更に好ましい。
【0060】
(D)高分子添加剤が、式(a2)で表される繰り返し単位、式(b)で表される繰り返し単位、式(c)で表される繰り返し単位及び式(d)で表される繰り返し単位を含むものである場合(以下、このような高分子添加剤を高分子添加剤D3という。)、式(a2)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、2~45モル%が好ましく、5~35モル%がより好ましい。式(b)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、20~35モル%が好ましく、25~35モル%がより好ましい。式(c)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、30~45モル%が好ましく、35~45モル%がより好ましい。式(d)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、5~18モル%が好ましく、5~15モル%がより好ましい。
【0061】
(D)高分子添加剤のMwは、2,000~10,000が好ましく、3,000~6,000がより好ましい。また、そのMw/Mnは、1.0~2.1が好ましく、1.0~1.9がより好ましい。
【0062】
(D)成分の高分子添加剤の含有量は、(A)成分のポリウレア100質量部に対し、5~100質量部である。高分子添加剤の含有量が5質量部未満であると、剥離力が大きくなることがあり、100質量部を超えると、製膜時にはじくことがある。
【0063】
ここで、(D)高分子添加剤が、高分子添加剤D1である場合、その含有量は、(A)成分のポリウレア100質量部に対し、10~100質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましく、30~100質量部がより一層好ましい。また、(D)高分子添加剤が、高分子添加剤D1以外のものである場合、その含有量は、(A)成分のポリウレア100質量部に対し、5~80質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましい。
【0064】
(D)高分子添加剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
[(E)溶剤]
本発明の剥離層形成用組成物は、(E)成分として溶剤を含む。前記溶剤としては、炭素数3~20のグリコールエーテル系溶剤、炭素数3~20のエステル系溶剤、炭素数3~20のケトン系溶剤、又は炭素数3~20の環状化合物系溶剤が好ましい。
【0066】
前記グリコールエーテル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0067】
前記エステル系溶剤としては、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロシキイソ酪酸メチル、2-ヒドロシキイソ酪酸エチル等が挙げられる。
【0068】
前記ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0069】
前記環状化合物溶剤としては、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0070】
(E)溶剤の含有量は、本発明の剥離層形成用組成物中の固形分濃度が、0.1~40質量%となる量が好ましく、0.5~20質量%となる量がより好ましく、0.5~10質量%となる量がより一層好ましい。なお、固形分とは、剥離層形成用組成物の全成分のうち、溶剤以外のものの総称である。(E)溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0071】
[その他の添加物]
本発明の剥離層形成用組成物は、必要に応じて界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を添加することで、基板に対する前記剥離層形成用組成物の塗布性を向上させることができる。前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。
【0072】
前記ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0073】
前記フッ素系界面活性剤等としては、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F171、F173、F554、F559、F563、R-30、R-40、R-40-LM、DS-21(DIC(株)製)、FLUORAD(登録商標)FC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0074】
また、シリコーン系界面活性剤としては、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0075】
前記剥離層形成用組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、(A)ポリウレア100質量部に対し、0.0001~1質量部が好ましく、0.001~0.5質量部がより好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
[剥離層形成用組成物の調製]
本発明の剥離層形成用組成物の調製方法は、特に限定されない。調製方法としては、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分等を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法や、前記調製方法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0077】
本発明の剥離層形成用組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定共重合体(ポリマー)の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、(A)成分の溶液に、前記と同様に(B)成分、更には(C)成分、(D)成分、(E)成分等を入れて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的として更に溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分の生成過程で用いられる溶剤と、剥離層形成用組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0078】
また、調製された剥離層形成用組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルター等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0079】
本発明の剥離層形成用組成物の粘度は、作製する剥離層の厚み等を勘案して適宜設定するものではあるが、特に0.01~5μm程度の厚さの膜を再現性よく得ることを目的とする場合、通常、25℃で1~5,000mPa・s程度、好ましくは1~2,000mPa・s程度である。
【0080】
ここで、粘度は、市販の液体の粘度測定用粘度計を使用して、例えば、JIS K7117-2に記載の手順を参照して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。好ましくは、粘度計としては、円錐平板型(コーンプレート型)回転粘度計を使用し、好ましくは同型の粘度計で標準コーンロータとして1°34'×R24を使用して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。このような回転粘度計としては、例えば、東機産業(株)製TVE-25Lが挙げられる。
【0081】
[剥離層]
本発明の剥離層形成用組成物を、基体上に塗布した後、180~250℃で焼成する工程を含む焼成法にて、基体との優れた密着性及び樹脂基板との適度な密着性と適度な剥離性とを有する剥離層を得ることができる。
【0082】
加熱時間は、加熱温度によって異なるため一概に規定できないが、通常1分間~5時間である。また、前記焼成時の温度は、最高温度が前記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0083】
本発明における加熱態様の好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱した後に、そのまま加熱温度を上昇させて180~250℃で5分間~4時間加熱する態様が挙げられる。特に、加熱態様のより好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱し、200~250℃で5分間~2時間加熱する態様が挙げられる。更に、加熱態様のより好ましい他の一例としては、50~150℃で1~30分間加熱した後に、200~250℃で5分間~1時間加熱する態様が挙げられる。
【0084】
なお、本発明の剥離層を基体上に形成する場合、剥離層は基体の一部表面に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。基体の一部表面に剥離層を形成する態様としては、基体表面のうち所定の範囲にのみ剥離層を形成する態様、基体表面全面にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状に剥離層を形成する態様等がある。なお、本発明において、基体とは、その表面に本発明の剥離層形成用組成物が塗られるものであって、フレキシブル電子デバイス等の製造に用いられるものを意味する。
【0085】
基体(基材)としては、例えば、ガラス、金属(シリコンウエハ等)、スレート等が挙げられるが、特に、本発明の剥離層形成用組成物から得られる剥離層がそれに対する十分な密着性を有することから、ガラスが好ましい。なお、基体表面は、単一の材料で構成されていてもよく、2以上の材料で構成されていてもよい。2以上の材料で基体表面が構成される態様としては、基体表面のうち、ある範囲はある材料で構成され、その余の表面はその他の材料で構成されている態様、基体表面全体にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状にある材料がその他の材料中に存在する態様等がある。
【0086】
塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等が挙げられる。
【0087】
加熱に用いる器具としては、例えば、ホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0088】
剥離層の厚さは、通常0.01~50μm程度、生産性の観点から、好ましくは0.01~20μm程度、より好ましくは0.01~5μm程度であり、加熱前の塗膜の厚さを調整して所望の厚さを実現する。
【0089】
本発明の剥離層は、基体、特にガラスの基体との優れた密着性、並びに樹脂基板との適度な密着性及び適度な剥離性を有する。それ故、本発明の剥離層は、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、当該デバイスの樹脂基板に損傷を与えることなく、当該樹脂基板を、その樹脂基板上に形成された回路等とともに、基体から剥離させるために好適に用いることができる。
【0090】
[樹脂基板の製造方法]
本発明の剥離層を用いたフレキシブル電子デバイスの製造方法の一例について説明する。まず、本発明の剥離層形成用組成物を用いて、前述の方法によって、ガラス基体上に剥離層を形成する。この剥離層の上に、樹脂基板を形成するための樹脂基板形成用溶液を塗布し、得られた塗膜を焼成することで、本発明の剥離層を介して、ガラス基体に固定された樹脂基板を形成する。
【0091】
前記塗膜の焼成温度は、樹脂の種類等に応じて適宜設定されるものであるが、本発明では、この焼成時の最高温度を200~250℃とすることが好ましく、210~250℃とすることがより好ましく、220~240℃とすることが更に好ましい。樹脂基板作製の際の焼成時の最高温度をこの範囲とすることで、下地である剥離層と基体との密着性や、剥離層と樹脂基板との適度な密着性及び剥離性をより向上させることができる。この場合も、最高温度が前記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0092】
樹脂基板は剥離層を全て覆うようにして、剥離層の面積と比較して大きい面積で、樹脂基板を形成する。樹脂基板としては、アクリルポリマーからなる樹脂基板やシクロオレフィンポリマーからなる樹脂基板が挙げられる。当該樹脂基板の形成方法は、常法に従えばよい。また、前記樹脂基板としては、波長400nmの光透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0093】
次に、本発明の剥離層を介して基体に固定された当該樹脂基板の上に、必要に応じて所望の回路を形成し、その後、例えば剥離層に沿って樹脂基板をカットし、この回路とともに樹脂基板を剥離層から剥離して、樹脂基板と基体とを分離する。この際、基体の一部を剥離層とともにカットしてもよい。本発明の剥離層を用いれば、樹脂基板を剥離層から0.25N/25mm以下の剥離力で剥離することができる。特に、(D)高分子添加物が高分子添加剤D2又は高分子添加剤D3である場合は、樹脂基板を剥離層から0.15N/25mm以下の剥離力で剥離することができる。更に、(D)高分子添加物が高分子添加剤D1である場合は、樹脂基板を剥離層から0.1N/25mm以下の剥離力で剥離することができる。
【実施例】
【0094】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0095】
下記例で使用した化合物は、以下のとおりである。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PL-LI:1,3,4,6-テトラキス(メトキシエチル)グリコールウリル(オルネクス社製、商品名:POWDERLINK 1174)
PPTS:p-トルエンスルホン酸ピリジニウム
HPMA:メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
ADMA:メタクリル酸2-アダマンチル
IBXA:メタクリル酸イソボルニル
CHMI:シクロヘキシルマレイミド
HFiPMA:メタクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル
HFiPAA:アクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル
PFHMA:メタクリル酸2-(パーフルオロヘキシル)エチル
KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
MA-BTHB-OH:4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-1-メチル-3-(トリフルオロメチル)ブチルメタクリレート
MA-BTHB-NB:メタクリル酸-5-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル
HFTB-M:メタクリル酸2-メチル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル
BMI70:ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0096】
また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定は、日本分光(株)製GPC装置(カラム:Shodex(登録商標)KD801及びKD805(昭和電工(株)製);溶離液:ジメチルホルムアミド/LiBr・H2O(29.6mM)/H3PO4(29.6mM)/THF(0.1質量%);流量:1.0mL/分;カラム温度:40℃;Mw:標準ポリスチレン換算値)を用いて行った。
【0097】
[1]ポリマーの合成
[合成例1]ポリウレア(L1)の合成
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)100g、5,5-ジエチルバルビツール酸66.4g及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリド4.1gをPGME682gに溶解させた後、130℃で24時間反応させ、ポリウレア(L1)を含む溶液(固形分濃度20質量%)を得た。GPC分析の結果、得られたポリウレア(L1)のMwは8,000、Mw/Mnは1.5であった。
【0098】
[合成例2]アクリルポリマー(S1)の合成
HFiPAA2.82g、HPMA0.79g、ADMA4.00g及びAIBN0.30gをPGME33.1gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S1)溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPAA:HPMA:ADMA=20:30:50であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S1)のMwは4,450、Mw/Mnは1.8であった。
【0099】
[合成例3]アクリルポリマー(S2)の合成
HFiPMA3.62g、HPMA0.74g、ADMA3.00g及びAIBN0.28gをPGME31.9gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S2)溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HPMA:ADMA=45:15:40であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S2)のMwは4,470、Mw/Mnは1.8であった。
【0100】
[合成例4]アクリルポリマー(S3)の合成
HFiPMA3.54g、HPMA1.62g、IBXA2.50g及びAIBN0.31gをPGME33.4gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S3)溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HPMA:IBXA=40:30:30であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S3)のMwは4,200、Mw/Mnは1.8であった。
【0101】
[合成例5]アクリルポリマー(CS1)の合成
HFiPMA3.51g、HPMA1.61g、CHMI2.00g及びAIBN0.30gをPGME31.2gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(CS1)溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HPMA:CHMI=30:40:30であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(CS1)のMwは3,600、Mw/Mnは2.0であった。
【0102】
[合成例6]アクリルポリマー(CS2)の合成
PFHMA5.00g、KBM-503 3.83g、HEMA1.51g及びAIBN0.52gをPGME41.36gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(CS2)溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、PFHMA:KBM-503:HEMA=30:40:30であった。得られたアクリルポリマー(CS2)のMwは6,700、Mw/Mnは1.4であった。
【0103】
[合成例7]アクリルポリマー(S1')の合成
HFiPMA4.02g、HEMA2.22g、ADMA5.00g及びAIBN0.47gをPGME49.1gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S1')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:ADMA=30:30:40であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S1')のMwは5,040、Mw/Mnは1.7であった。
【0104】
[合成例8]アクリルポリマー(S2')の合成
HFiPMA3.98g、HEMA2.20g、IBXA5.00g及びAIBN0.46gをPGME48.8gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S2')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:IBXA=30:30:40であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S2')のMwは4,850、Mw/Mnは1.7であった。
【0105】
[合成例9]アクリルポリマー(S3')の合成
HFiPMA1.72g、HEMA1.42g、ADMA4.00g及びAIBN0.30gをPGME31.2gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S3')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:ADMA=20:30:50であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S3')のMwは4,350、Mw/Mnは1.7であった。
【0106】
[合成例10]アクリルポリマー(S4')の合成
HFiPMA2.80g、HEMA2.21g、ADMA5.00g及びAIBN0.42gをPGME43.9gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S4')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:ADMA=23:33:44であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S4')のMwは4,680、Mw/Mnは1.7であった。
【0107】
[合成例11]アクリルポリマー(S1'')の合成
HFiPMA1.61g、HEMA1.33g、ADMA3.00g、MA-BTHB-OH1.00g及びAIBN0.28gをPGME30.2gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S1'')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:ADMA:MA-BTHB-OH=20:30:40:10であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S1'')のMwは4,920、Mw/Mnは1.4であった。
【0108】
[合成例12]アクリルポリマー(S2'')の合成
HFiPMA1.61g、HEMA1.33g、ADMA3.00g、MA-BTHB-NB1.23g及びAIBN0.28gをPGME31.1gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S2'')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:ADMA:MA-BTHB-NB=20:30:40:10であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S2'')のMwは5,630、Mw/Mnは1.5であった。
【0109】
[合成例13]アクリルポリマー(S3'')の合成
HFiPMA1.61g、HEMA1.33g、ADMA3.00g、HFTB-M0.85g及びAIBN0.28gをPGME29.6gに溶解し、70℃にて20時間反応させ、アクリルポリマー(S3'')溶液(固形分濃度20質量%)を得た。各単位の組成比は、HFiPMA:HEMA:ADMA:HFTB-M=20:30:40:10であった。GPC分析の結果、得られたアクリルポリマー(S3'')のMwは5,160、Mw/Mnは1.5であった。
【0110】
[2]樹脂基板形成用組成物の調製
[調製例1]樹脂基板形成用組成物F1の調製
四塩化炭素100gを入れたナスフラスコに、ゼオノア(登録商標)1020R(日本ゼオン(株)製シクロオレフィンポリマー)10g及びエポリード(登録商標)GT401((株)ダイセル製)3gを添加した。この溶液を、窒素雰囲気下、24時間攪拌して溶解し、樹脂基板形成用組成物F1を調製した。
【0111】
[調製例2]樹脂基板形成用組成物F2の調製
四塩化炭素100gを入れたナスフラスコに、ゼオノア(登録商標)1060R(日本ゼオン(株)製シクロオレフィンポリマー)10gを添加した。この溶液を、窒素雰囲気下、24時間攪拌して溶解し、樹脂基板形成用組成物F2を調製した。
【0112】
[3]剥離層形成用組成物の調製-1
[実施例1-1]剥離層形成用組成物A1の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.04g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S1)溶液0.05g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が1質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物A1を調製した。
【0113】
[実施例1-2]剥離層形成用組成物A2の調製
アクリルポリマー(S1)溶液のかわりに、アクリルポリマー(S2)溶液を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物A2を調製した。
【0114】
[実施例1-3]剥離層形成用組成物A3の調製
アクリルポリマー(S1)溶液のかわりに、アクリルポリマー(S3)溶液を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物A3を調製した。
【0115】
[実施例1-4]剥離層形成用組成物A4の調製
合成例1で得られた反応液1gにPL-LI0.04gとPPTS0.01g、アクリルポリマー(S1)溶液0.10g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が1質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物A4を調製した。
【0116】
[比較例1-1]剥離層形成用組成物A5の調製
アクリルポリマー(S1)溶液のかわりに、アクリルポリマー(CS1)溶液を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物A5を調製した。
【0117】
[比較例1-2]剥離層形成用組成物A6の調製
アクリルポリマー(S1)溶液のかわりに、アクリルポリマー(CS2)溶液を0.002g用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物A6を調製した。
【0118】
[比較例1-3]剥離層形成用組成物A7の調製
フェノールノボラック樹脂TD2131(DIC(株)製)5.0g及びBMI70 1.0gにPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物A7を調製した。
【0119】
[比較例1-4]剥離層形成用組成物A8の調製
合成例L1で得られた反応液1gに、PL-LI0.04g、パラトルエンスルホン酸0.01g、非フッ素系アクリルポリマーUC-3000(東亞合成(株)製)1.06g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が4質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物A8を調製した。
【0120】
[比較例1-5]剥離層形成用組成物A9の調製
合成例1で得られた反応液1gにPL-LI0.04gとパラトルエンスルホン酸0.01g、非フッ素系アクリルポリマーUC-3510(東亞合成(株)製)1.06g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が4質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物A9を調製した。
【0121】
[4]剥離層及び樹脂基板の作製-1
[実施例2-1]
スピンコータ(条件:回転数1,000rpmで約30秒)を用いて、剥離層形成用組成物A1を、基体であるガラス基板(100mm×100mm、以下同様)の上に塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱し、次いでホットプレートを用いて230℃で10分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、すぐにスピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、前記ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで90%以上の透過率を示した。
【0122】
[実施例2-2]
樹脂基板形成用組成物F1のかわりに樹脂基板形成用組成物F2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで90%以上の透過率を示した。
【0123】
[実施例2-3]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0124】
[実施例2-4]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A3を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0125】
[実施例2-5]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A4を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0126】
[比較例2-1]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A5を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0127】
[比較例2-2]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A6を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0128】
[比較例2-3]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A7を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0129】
[比較例2-4]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A8を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0130】
[比較例2-5]
剥離層形成用組成物A1のかわりに剥離層形成用組成物A9を用い、樹脂基板形成用組成物F1のかわりに樹脂基板形成用組成物F2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0131】
[5]剥離性の評価-1
前記実施例2-1~2-5及び比較例2-1~2-5で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板について、剥離層とガラス基板又は樹脂基板との剥離性を、下記方法にて確認した。なお、下記の試験は、同一のガラス基板で行った。
【0132】
(1)剥離層とガラス基板との密着性評価
実施例2-1~2-5及び比較例2-1~2-5で得られた剥離層付きガラス基板上の剥離層をクロスカット(縦横2mm間隔、以下同様)し、25マスカットを行った。すなわち、このクロスカットにより、2mm四方のマス目を25個形成した。
この25マスカット部分に粘着テープを張り付けて、そのテープを剥がし、以下の基準に基づき、密着性を評価した。結果を表1に示す。
<判定基準>
5B:0%剥離(剥離なし)
4B:5%未満の剥離
3B:5~15%未満の剥離
2B:15~35%未満の剥離
1B:35~65%未満の剥離
0B:65%~80%未満の剥離
B:80%~95%未満の剥離
A:95%~100%未満の剥離
AA:100%剥離(すべて剥離)
【0133】
(2)剥離層と樹脂基板との剥離力評価
実施例2-1~2-5及び比較例2-1~2-5で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板に、25mm×50mmの短冊を作製した。更に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT-24)を貼った後、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離し、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。結果を表1に示す。
【0134】
(3)剥離層の剥離力変化1
剥離層付きガラス基板を得た後、23℃、湿度50%環境下で一日放置した。その後は、実施例1-1と同様に、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。更に、剥離層と樹脂基板との剥離力評価と同様に剥離力を測定し、剥離力の変化量を確認した。剥離力変化を下記のようにした。結果を表1に示す。
◎:0%以上10%未満の剥離力変化
○:10%以上30%未満の剥離力変化
△:30%以上50%未満の剥離力変化
×:50%以上の剥離力変化
-:未測定
【0135】
(4)剥離層の剥離力変化2
実施例1-1と同様に、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、ホットプレートを用いて230℃で2時間加熱した。更に、剥離層と樹脂基板との剥離力評価と同様に剥離力を測定し、剥離力の変化量を確認した。剥離力変化を下記のようにした。結果を表1に示す。
◎:0%以上10%未満の剥離力変化
○:10%以上30%未満の剥離力変化
△:30%以上50%未満の剥離力変化
×:50%以上の剥離力変化
-:未測定
【0136】
【0137】
表1に示した結果より、実施例の剥離層は、ガラス基板との密着性に優れており、樹脂膜とは容易にはがれることが確認された。また、成膜状態で保管した後においても剥離力が変化せず、成膜後の安定性にも優れていることが確認された。更に、高温の環境に曝した後においても剥離力が変化せず、高い耐熱性を有していることが確認された。一方、比較例の剥離層は、ガラス基板との密着性には優れるが、樹脂基板との剥離性に劣っていることが確認された。
【0138】
[6]剥離層形成用組成物の調製-2
[実施例3-1]剥離層形成用組成物B1の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.05g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S1')溶液0.15g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物B1を調製した。
【0139】
[実施例3-2]剥離層形成用組成物B2の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.05g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S1')溶液0.8g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物B2を調製した。
【0140】
[実施例3-3]剥離層形成用組成物B3の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.05g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S2')溶液0.10g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物B3を調製した。
【0141】
[実施例3-4]剥離層形成用組成物B4の調製
アクリルポリマー(S1')溶液のかわりに、アクリルポリマー(S2')溶液を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物B4を調製した。
【0142】
[実施例3-5]剥離層形成用組成物B5の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.04g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S3')溶液0.05g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が1質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物B5を調製した。
【0143】
[実施例3-6]剥離層形成用組成物B6の調製
アクリルポリマー(S3')溶液のかわりに、アクリルポリマー(S4')溶液を用いた以外は、実施例3-5と同様の方法で、剥離層形成用組成物B6を調製した。
【0144】
[比較例3-1]剥離層形成用組成物B7の調製
アクリルポリマー(S3')溶液のかわりに、アクリルポリマー(CS1)溶液を用いた以外は、実施例3-5と同様の方法で、剥離層形成用組成物B7を調製した。
【0145】
[比較例3-2]剥離層形成用組成物B8の調製
アクリルポリマー(S3')溶液のかわりに、アクリルポリマー(CS2)溶液を用いた以外は、実施例3-5と同様の方法で、剥離層形成用組成物B8を調製した。
【0146】
[比較例3-3]剥離層形成用組成物B9の調製
フェノールノボラック樹脂TD2131(DIC(株)製)5.0g及びBMI70 1.0gにPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物B9を調製した。
【0147】
[比較例3-4]剥離層形成用組成物B10の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.04g、パラトルエンスルホン酸0.01g、非フッ素系アクリルポリマーUC-3510(東亞合成(株)製)1.06g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が4質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物B10を調製した。
【0148】
[7]剥離層及び樹脂基板の作製-2
[実施例4-1]
スピンコータ(条件:回転数1,000rpmで約30秒)を用いて、剥離層形成用組成物B1を、基体であるガラス基板(100mm×100mm、以下同様)の上に塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱し、次いでホットプレートを用いて230℃で10分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、すぐにスピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、前記ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで90%以上の透過率を示した。
【0149】
[実施例4-2]
樹脂基板形成用組成物F1のかわりに樹脂基板形成用組成物F2を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで90%以上の透過率を示した。
【0150】
[実施例4-3]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B2を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0151】
[実施例4-4]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B3を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0152】
[実施例4-5]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B4を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0153】
[実施例4-6]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B5を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0154】
[実施例4-7]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B6を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0155】
[比較例4-1]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B7を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0156】
[比較例4-2]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B8を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0157】
[比較例4-3]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B9を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0158】
[比較例4-4]
剥離層形成用組成物B1のかわりに剥離層形成用組成物B10を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0159】
[8]剥離性の評価-2
前記実施例4-1~4-7及び比較例4-1~4-4で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板について、剥離層とガラス基板又は樹脂基板との剥離性を、下記方法にて確認した。なお、下記の試験は、同一のガラス基板で行った。
【0160】
(1)剥離層とガラス基板との密着性評価
実施例4-1~4-7及び比較例4-1~4-4で得られた剥離層付きガラス基板上の剥離層をクロスカット(縦横2mm間隔、以下同様)し、25マスカットを行った。すなわち、このクロスカットにより、2mm四方のマス目を25個形成した。
この25マスカット部分に粘着テープを張り付けて、そのテープを剥がし、以下の基準に基づき、密着性を評価した。結果を表2に示す。
<判定基準>
5B:0%剥離(剥離なし)
4B:5%未満の剥離
3B:5%以上15%未満の剥離
2B:15%以上35%未満の剥離
1B:35%以上65%未満の剥離
0B:65%以上80%未満の剥離
B:80%以上95%未満の剥離
A:95%以上100%未満の剥離
AA:100%剥離(すべて剥離)
【0161】
(2)剥離層と樹脂基板との剥離力評価
実施例4-1~4-7及び比較例4-1~4-4で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板に、25mm×50mmの短冊を作製した。更に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT-24)を貼った後、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離し、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。結果を表2に示す。
【0162】
(3)剥離層の剥離力変化
剥離層付きガラス基板を得た後、23℃、湿度50%環境下で一日放置した。その後は、実施例4-1と同様に、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。更に、剥離層と樹脂基板との剥離力評価と同様に剥離力を測定し、剥離層形成後直ちに樹脂基板を作製した場合における剥離力と比較することにより剥離力の変化量を確認した。剥離力変化は、以下の基準に基づき評価した。結果を表2に示す。
<判定基準>
◎:0%以上10%未満の剥離力変化
○:10%以上30%未満の剥離力変化
△:30%以上50%未満の剥離力変化
×:50%以上の剥離力変化
-:未測定
【0163】
【0164】
表2に示した結果より、実施例の剥離層は、ガラス基板との密着性に優れており、かつ、樹脂基板との剥離性に優れていることが確認された。また、実施例の剥離層は、成膜状態で保管した後においても剥離力が変化せず、成膜後の安定性にも優れていることが確認された。一方、比較例の剥離層は、ガラス基板との密着性には優れるが、樹脂基板との剥離性に劣っていることが確認された。
【0165】
[9]剥離層形成用組成物の調製-3
[実施例5-1]剥離層形成用組成物C1の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.05g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S1'')溶液0.15g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物C1を調製した。
【0166】
[実施例5-2]剥離層形成用組成物C2の調製
アクリルポリマー(S1'')溶液のかわりに、アクリルポリマー(S2'')溶液を用いた以外は、実施例5-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物C2を調製した。
【0167】
[実施例5-3]剥離層形成用組成物C3の調製
アクリルポリマー(S1'')溶液のかわりに、アクリルポリマー(S3'')溶液を用いた以外は、実施例5-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物C3を調製した。
【0168】
[実施例5-4]剥離層形成用組成物C4の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.04g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(S3'')溶液0.08g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物C4を調製した。
【0169】
[比較例5-1]剥離層形成用組成物C5の調製
合成例1で得られた反応液1gに、PL-LI0.04g、PPTS0.01g、アクリルポリマー(CS1)溶液0.05g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が1質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物C5を調製した。
【0170】
[比較例5-2]剥離層形成用組成物C6の調製
アクリルポリマー(CS1)溶液のかわりに、アクリルポリマー(CS2)溶液を用いた以外は、比較例5-1と同様の方法で、剥離層形成用組成物C6を調製した。
【0171】
[比較例5-3]剥離層形成用組成物C7の調製
フェノールノボラック樹脂TD2131(DIC(株)製)5.0g及びBMI70 1.0gにPGMEAを加え、固形分濃度が5質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物C7を調製した。
【0172】
[比較例5-4]剥離層形成用組成物C8の調製
合成例1で得られた反応液1gにPL-LI0.04gとパラトルエンスルホン酸0.01g、非フッ素系アクリルポリマーUC-3510(東亞合成(株)製)1.06g、及びPGMEAを加え、固形分濃度が4質量%、PGMEA濃度が30質量%となるようにPGMEで希釈し、剥離層形成用組成物C8を調製した。
【0173】
[10]剥離層及び樹脂基板の作製-3
[実施例6-1]
スピンコータ(条件:回転数1,000rpmで約30秒)を用いて、剥離層形成用組成物C1を、基体であるガラス基板(100mm×100mm、以下同様)の上に塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱し、次いでホットプレートを用いて230℃で10分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、すぐにスピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、前記ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで90%以上の透過率を示した。
【0174】
[実施例6-2]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C2を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0175】
[実施例6-3]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C3を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0176】
[実施例6-4]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C4を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0177】
[実施例6-5]
樹脂基板形成用組成物F1のかわりに樹脂基板形成用組成物F2を用いた以外は、実施例6-4と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。その後、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、400nmで90%以上の透過率を示した。
【0178】
[比較例6-1]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C5を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0179】
[比較例6-2]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C6を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0180】
[比較例6-3]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C7を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0181】
[比較例6-4]
剥離層形成用組成物C1のかわりに剥離層形成用組成物C8を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で、剥離層及び樹脂基板を作製し、剥離層付きガラス基板及び樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0182】
[11]剥離性の評価-3
前記実施例6-1~6-5及び比較例6-1~6-4で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板について、剥離層とガラス基板又は樹脂基板との剥離性を、下記方法にて確認した。なお、下記の試験は、同一のガラス基板で行った。
【0183】
(1)剥離層とガラス基板との密着性評価
実施例6-1~6-5及び比較例6-1~6-4で得られた剥離層付きガラス基板上の剥離層をクロスカット(縦横2mm間隔、以下同様)し、25マスカットを行った。すなわち、このクロスカットにより、2mm四方のマス目を25個形成した。
この25マスカット部分に粘着テープを張り付けて、そのテープを剥がし、以下の基準に基づき、密着性を評価した。結果を表3に示す。
<判定基準>
5B:0%剥離(剥離なし)
4B:5%未満の剥離
3B:5%以上15%未満の剥離
2B:15%以上35%未満の剥離
1B:35%以上65%未満の剥離
0B:65%以上80%未満の剥離
B:80%以上95%未満の剥離
A:95%以上100%未満の剥離
AA:100%剥離(すべて剥離)
【0184】
(2)剥離層と樹脂基板との剥離力評価
実施例6-1~6-5及び比較例6-1~6-4で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板に、25mm×50mmの短冊を作製した。更に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT-24)を貼った後、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離し、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。結果を表3に示す。
【0185】
(3)剥離層の剥離力変化
剥離層付きガラス基板を得た後、23℃、湿度50%環境下で1日放置した。その後は、実施例6-1と同様に、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。更に、剥離層と樹脂基板との剥離力評価と同様に剥離力を測定し、剥離層形成後直ちに樹脂基板を作製した場合における剥離力と比較することにより剥離力の変化量を確認した。剥離力変化は、以下の基準に基づき評価した。結果を表3に示す。
<判定基準>
◎:0%以上10%未満の剥離力変化
○:10%以上30%未満の剥離力変化
△:30%以上50%未満の剥離力変化
×:50%以上の剥離力変化
-:未測定
【0186】
【0187】
表3に示した結果より、実施例の剥離層は、ガラス基板との密着性に優れており、かつ、樹脂基板との剥離性に優れていることが確認された。また、実施例の剥離層は、成膜状態で保管した後においても剥離力が変化せず、成膜後の安定性にも優れていることが確認された。一方、比較例の剥離層は、ガラス基板との密着性には優れるが、樹脂基板との剥離性に劣っていることが確認された。