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特許7092171循環冷却水の処理方法及び冷却性能向上方法
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  • 特許-循環冷却水の処理方法及び冷却性能向上方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】循環冷却水の処理方法及び冷却性能向上方法
(51)【国際特許分類】
   F28G 13/00 20060101AFI20220621BHJP
   F28C 1/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F28G13/00 A
F28C1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020172321
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063917
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和久
(72)【発明者】
【氏名】谷山 奈津美
(72)【発明者】
【氏名】柳田 真里奈
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-040445(JP,A)
【文献】特開2009-226280(JP,A)
【文献】特公昭48-039457(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 13/00
F28C 1/00- 1/16
C02F 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能向上のための循環冷却水系の運転方法であり、
当該循環冷却水系に使用する冷却水を、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を用いて調製することを特徴とする、
前記冷却塔の冷却性能向上のための循環冷却水系の運転方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤である、請求項1に記載の循環冷却水系の運転方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、ノニオン性エーテル系界面活性剤である、請求項1又は2に記載の循環冷却水系の運転方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の循環冷却水系の運転方法。
【請求項5】
前記冷却水が、動的接触角52°以下、かつ、泡かさ高さが230mL以下である、請求項1~4のいずれか一項に循環冷却水系の運転方法。
【請求項6】
冷却塔を有する循環冷却水系に冷却性能向上のために使用する冷却水の調製のための循環冷却水系の運転方法であり、
当該循環冷却水系の冷却水に、界面活性剤を含む薬剤を用いて、(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下の冷却水に調製する、
前記冷却水の調製のための循環冷却水系の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環冷却水の処理方法及び冷却性能向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや地域施設などの空調設備、及び工業プラントなどでは、各種流体を冷却するために水冷式の熱交換器が用いられており、この熱交換器は、ビル空調などの発熱の発生源において負荷となる熱源を間接的に冷却するように構成されている。この熱交換器には、冷却塔と接続された循環水路が備えられており、この循環水路内の冷却水が熱交換器と冷却塔との間で循環することで、前記熱源を冷却している。具体的には、この循環する冷却水は、熱交換器を通過することで熱を受け取って高温となり、この高温となった冷却水は冷却塔にて冷却され、冷却された冷却水は冷却塔からポンプなどを用いて再び熱交換器に移送される。このように、通常、循環冷却水系は、熱交換器と、冷却塔と、当該熱交換器と当該冷却塔との間を冷却水が循環する循環水路が設けられ、上述したような熱源を冷却するように構成されている。
【0003】
冷却塔を保有する水系として、最も代表的なものは開放循環冷却水系である。この開放循環冷却水は、熱交換器において、冷凍機の冷媒や化学コンビナートのプロセス流体などを冷却するために用いられる。開放循環冷却水が熱交換器において受け取った熱は、開放式冷却塔においてその冷却水の一部を蒸発させることで放冷され、この冷却水は熱交換器での冷却に再利用されており、このような工程を繰り返して行って開放循環冷却水系を運転している。
【0004】
開放循環冷却水系では、開放式冷却塔において冷却水の冷却のために充填材領域で冷却水の一部を蒸発させているため、この蒸発により冷却水に含まれる溶存塩類などが濃縮されるようになる。冷却水中で濃縮された溶存塩類が、循環冷却水系内(循環水路内、熱交換器内、冷却塔内)において、スケールとして、冷却水中に析出したり、流路や装置内に付着することがしばしばみられる。このスケールは熱交換器における伝熱を阻害するため、スケールが熱交換器の循環水路内に付着しないよう開放循環冷却水系における冷却水の濃縮倍数を適正に管理する方法、スケール防止剤を添加する方法などが一般的に実施されている。
【0005】
また、蒸発した冷却水を補うために補給される補給水、及び冷却に用いる大気などには微生物(例えば、細菌、真菌類、藻類など)、粒子状物質(例えば、PM2.5、砂など)などが含まれているため、これらに含まれる微生物などが開放循環冷却水系に混入しやすい。混入した微生物などは、熱交換器内に備える循環水路内の表面にスライムを形成し、熱交換器における伝熱を阻害する場合もある。
これを防止するために、スライムが付着しないようにスライムコントロール剤を添加する方法も一般的に実施されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、冷媒の如何に関わらず長期に亘り安定に防汚性、耐食性等を発揮し得る光触媒を用いた熱交換器が開示されている。
例えば、特許文献2では、光触媒技術を用いて、冷却水などの循環水中に含まれる有機物の分解、スライムやスケールの発生原因となる藻類や細菌類の発生及び増殖の防止をより効果的に実施する、光触媒を用いた循環冷却水再生装置が開示されている。
【0007】
例えば、特許文献3では、新たな設備機材や設置スペースを必要とすることなく、循環水が接触する充填材並びに付属機材へのスケールやレジオネラ属菌など細菌類等の累積や繁殖を抑制させるための改善を提供できる、冷却塔内部における循環水の熱交換に使用する機材が開示されている。
【0008】
例えば、特許文献4では、吸収式冷凍機の熱交換性能の向上を図るため親水化性能の塗膜を有する吸収式冷凍機用伝熱管が開示されている。
例えば、特許文献5では、蒸気乾燥器、熱交換器、発熱体被覆管のいずれかを具備する伝熱システムにおける熱的効率の向上を図ることが開示されている。
【0009】
例えば、特許文献6では、圧縮機で圧縮された冷媒を大気により冷却して凝縮液化させる大気熱交換器と、大気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた大気調和装置の室外ユニットにおいて、大気熱交換器に散布する水には、大気熱交換器に対する濡れ性を向上させる界面活性剤が施されていることを特徴とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-242390号公報
【文献】特開2006-242511号公報
【文献】特開2011-117684号公報
【文献】特開2002-372339号公報
【文献】特開2003-90892号公報
【文献】特開2006-105541号公報
【文献】特開2005-188901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1~3に記載の技術では、循環冷却水系を新設したときの冷却性能を維持させることができたとしても、それ以上に冷却性能を向上させることはできない。
特許文献4及び5に記載の技術では、特定の伝熱システムに特化した技術であり、開放循環冷却水系全般に活用できる技術ではない。
また、特許文献6では、圧縮機で圧縮された冷媒を大気により冷却して凝縮液化される大気熱交換器を必須構成として用いているように、これは空冷式の冷媒凝縮器における伝熱性能を向上させる技術であり、散水系冷却塔(例えば、上方にある散水手段により冷却水を充填材に散布する冷却塔)の冷却性能を向上させる技術ではない。
【0012】
そこで、本発明者らは、新たな視点から、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能を向上させる技術について検討することにした。
すなわち、本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能を向上させる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで、冷却塔の構造からすると、冷却水が、充填材から、冷却水を貯留するピットに落ちる際に、ピットの水面に冷却水が叩きつけられることから、冷却水への界面活性剤の添加によって、より大量の泡立ちが発生するため、泡が冷却塔外に飛散し、界面活性剤による近隣環境の汚染などのトラブルの原因になり得る。このため、通常、散水系冷却塔を有する循環冷却水系に、界面活性剤を適用することは、非常に困難であると考えられてきた。
【0014】
また、本発明者らは、消泡剤との併用についても、検討した。循環冷却水系において消泡剤を添加する場合には、新たに消泡剤添加装置を増設する必要があるが、このような増設は、設置空間の制限や費用対効果の観点からも、困難である。また、循環冷却水系に、界面活性剤と消泡剤とを併用した一液型薬剤を使用する場合には、この一液型薬剤を長期保存する必要があるが、界面活性剤と消泡剤とを併用した一液型薬剤は貯蔵時の品質劣化が生じやすく、本来期待する界面活性剤の効果が低減することが考えられる。
【0015】
さらに、本発明者らは、冷却塔を有する循環冷却水系に、実際に、界面活性剤が適用可能かどうかについて検討を行った結果、後記〔実施例〕の比較例2~6に示すように、単に界面活性剤を使用しても、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能を向上させることが実際にできなかった。
【0016】
しかしながら、本発明者らは、冷却塔に使用する界面活性剤にだけに着目するのではなく、界面活性剤を添加したときの冷却水の性状に着目し、循環冷却水系において、冷却塔を循環する冷却水の性状について鋭意検討した。その結果、循環冷却水系で循環する冷却水の動的接触角と泡かさ高さとを調整し制御することで、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能を向上させることができる技術を新たに見出した。さらに、本発明者らは、冷却塔の冷却性能を向上させることができる循環冷却水を、循環冷却水系内にて調製し、使用することができることも新たに見出した。さらに、この結果より、本発明者らは、循環冷却水系の運転を容易に行うことができることも新たに見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0017】
本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能向上方法であって、 当該循環冷却水系に使用する冷却水が、界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水であり、 当該冷却水が、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすことを特徴とする、冷却性能向上方法を提供するものである。
また、本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系に使用する冷却水の調製方法であって、 当該循環冷却水系の冷却水に、界面活性剤を含む薬剤を添加して、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下の冷却水に調製する、冷却水の調製方法を提供するものである。
また、本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法であって、 当該循環冷却水系に使用する冷却水が(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を添加することを特徴とする、循環冷却水系の運転方法を提供するものである。
【0018】
前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤であってもよい。
前記界面活性剤が、ノニオン性エーテル系界面活性剤であってもよい。
前記界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルであってもよい。
前記冷却水が、動的接触角52°以下、かつ、泡かさ高さが230mL以下であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能を向上させる技術を提供することができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の冷却塔を有する循環冷却水系の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。なお、数値における上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0022】
1.冷却塔の冷却性能向上方法
本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能向上方法であって、前記冷却水が、界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水であり、当該冷却水が、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすことを特徴とする、冷却性能向上方法を提供することができる。
【0023】
1-1.<冷却塔の冷却性能向上>
本発明における「冷却塔の冷却性能向上」とは、冷却塔が、循環冷却水を冷却する冷却性能を向上できることをいう。さらに、本発明では、冷却塔内において泡の増加が抑制でき、一定容量以上の泡立ちにならないような冷却水が、冷却塔内における泡立ちに起因するトラブルの抑制などの観点から、より好適である。
【0024】
本発明によって冷却塔の冷却性能が向上することにより、当該冷却塔から、より冷却された冷却水を熱交換器内の循環水路に送水することができ、これにより熱交換器における伝熱効率をより改善することができる。
さらに、冷却塔の冷却性能を発泡の問題を引き起こすことなく向上させることができるので、冷却塔及びこれを有する循環冷却水系の運転又は管理も容易に行うことができる。
【0025】
1-1-1.〔冷却塔における性能の指標〕
「循環冷却水を冷却する冷却性能を向上できる」とは、本発明のように調製した際の冷却水の冷却温度が、未調製の冷却水の冷却温度と比較し、より増加することをいう。
「冷却温度」とは、(1)熱交換器を通過し加熱された循環冷却水が冷却塔の入口に入るときの水温(℃)から、(2)所定期間の冷却水の循環後に、循環冷却水が冷却塔の出口から出るときの水温(℃)を引いたときの温度差である。「冷却温度が増加する」とは、この温度差が、正の値であって、大きくなることをいう。
【0026】
さらに、後記〔実施例〕に示すように、冷却塔での冷却水の冷却温度の増加と冷却水の動的接触角の減少とに関係が認められており、さらに、冷却塔における泡の増加の有無と冷却水の泡かさ高さの抑制とに関係が認められている。
このことから、本発明に用いる「冷却塔における性能の指標」として、「冷却性能」として冷却水の冷却温度や動的接触角、「泡立ち抑制性能」として泡かさ高さが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明において界面活性剤を含む薬剤を用いて冷却塔の冷却性能を向上させる際に、(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さの両方を指標とすることが、より好適である。(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さの両方を指標とする方が、界面活性剤を含む薬剤を調整し易く、泡立ち抑制しつつ冷却性能向上も容易という観点から、循環冷却水系をより容易に運転することができる。
【0028】
1-2.<冷却塔を有する循環冷却水系>
本発明に用いられる循環冷却水系は、特に限定されず、例えば、空調、石油化学コンビナート、一般工場などに設置されている冷却塔を系内に備える水系であることが好適である。本発明において、循環冷却水系は、空調、石油化学コンビナート、一般工場で発生する熱源を間接的に冷却するように構成されていることが好適であり、熱交換器、循環水路、冷却塔を含むように構成されている一般的な水系であってもよい。
【0029】
本発明に用いられる循環冷却水系は、開放循環冷却水系又は密閉循環冷却水系のいずれでもよく、開放循環冷却水系は、開放式で冷却水が循環できるような構成を有することが好適であり、閉鎖循環冷却水系は、閉鎖式で冷却水が循環できるような構成を有することが好適である。
また、本発明に用いられる冷却塔は、開放式冷却塔又は密閉式冷却塔のいずれでもよく、これら冷却塔は、公知の冷却塔の構成又は機構を採用してもよい。当該冷却塔は、散水手段と充填材領域を少なくとも備える散水系冷却塔がより好適である。冷却塔の性能(例えば冷却能力、処理水量など)は、工場の規模、使用目的などによって様々であるが、本発明の方法であれば、界面活性剤を添加したときの冷却水の性状を調製し制御するため、様々な冷却塔に対して冷却性能を向上させることができる。
また、本発明に用いられる冷却塔は、上方のにある手段により冷却水を下方の充填材に散布し、散布された冷却水が循環するように構成されている冷却塔が好適である。
また、本発明において、系又は手段は、装置又は処理装置であってもよい。
【0030】
本発明は、界面活性剤を用いて特定の冷却水に調製することで、冷却塔における冷却性能向上の課題と冷却塔において生じる泡立ち性に起因する問題点との両方を解決し得るという効果を有する。このように調製された特定の冷却水にてこれらを解決し得るため、一般的な循環冷却水系や既存の循環冷却水系にも、容易に適用できるという利点がある。
【0031】
本発明の方法は、より好適な態様として、散水系冷却塔を有する開放循環冷却水系に使用することが、特に散水系にて問題となりやすい泡飛散などを低減できるという利点があるので、好ましい。散水系冷却塔には、密閉式冷却塔及び開放式冷却塔が含まれる。
【0032】
1-2-1.<密閉式冷却塔及び密閉循環冷却水系>
本発明に用いる密閉式冷却塔及び密閉循環冷却水系は、特に限定されないが、以下のような構成を有することが好適である。密閉循環冷却水系には、単数又は複数の密閉式冷却塔を備えてもよい。
【0033】
また、密閉式冷却塔の第一の例として、大気を冷却塔内に取り込んで冷却領域を通過させ冷却塔外に排出するファンなどを備える送風手段、散水するための散水管を備える散水手段、冷却水用コイル及び冷却水用コイルから冷却機に連結するための配管などを備える冷却領域、当該冷却領域の側方に大気を取り込むためのルーバー、冷却領域を通過した散水を貯留する下部水槽などを備えるピットなどを備える密閉式冷却塔であり、当該散水が当該下部水槽からポンプによって循環し散水に再利用するように構成されている密閉式冷却塔が挙げられる(例えば、特許文献7の図11及び段落〔0011〕参照)。当該冷却塔の構成は、散水系にも採用しうる。
【0034】
密閉式冷却塔の第二の例として、銅などの金属製コイルを使用した間接冷却によって循環水(第一冷却水)を冷却するとともに、送風手段、散水手段、充填材領域、ピットが、上方から順に、備える冷却塔が挙げられる。さらに、当該散水手段は、その下方にある充填材領域に第二冷却水を散布するように構成されていることが好適である。ピットは、この散布された水を下部にあるピットにて貯留するように構成されていることが好適である。当該第二冷却水は、循環し再び冷却水として使用されるように構成されていることが好適である。さらに、当該充填材領域は、金属コイル層と充填材(例えばPVC)層とを積層させた領域であり、大気を冷却塔の側方から取り込み、充填材領域を通過し、通過した大気は送風手段にて、外に排出されるように構成されていることが好適である。充填材領域に、第二冷却水と大気とが接触することで、充填材領域のコイル層を冷却できるとともに冷却水を大気にて冷却することができる。当該冷却塔の構成は、散水系にも採用しうる。
【0035】
なお、本発明の実施形態に係る「閉鎖式冷却塔」、「密閉循環冷却水系」及び「閉鎖式冷却塔を有する閉鎖循環冷却水系」では、上記「1-1.」「1-2.」と下記「1-2-2.」以降の構成と共通する、手段、部材、動的接触角、泡かさ高さ、界面活性剤などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1-1.」「1-2.」、「1-2-2.」以降などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0036】
1-2-2.<開放式冷却塔及び開放循環冷却水系>
本発明に用いる開放式冷却塔及び開放循環冷却水系について、以下に詳細を説明するが、上述のとおり、本発明の方法に使用する冷却塔は開放式冷却塔に限定されず、密閉式冷却塔であってもよい。開放循環冷却水系には、単数又は複数の開放式冷却塔を備えてもよい。当該冷却塔は、散水手段、送風手段及び充填材領域を備える散水系であることが好適である。
なお、本発明における開放循環冷却水系には、開放式冷却塔に加えて、密閉式冷却塔をさらに単数又は複数備えるような構成又は機構であってもよく、これらを組み合わせて熱源の冷却を行ってもよい。
【0037】
本発明に用いる開放式冷却塔を有する開放循環冷却水系は、例えば、図1に示すように、開放式冷却塔、熱交換器、及び循環水路を少なくとも含み、熱源を冷却するように構成されていることが好適である。本発明では界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水の性状にて、開放式冷却塔の性能を向上できるという効果を有する。
本発明に用いる開放式冷却塔は、本発明では放熱効率向上及び低発泡性の両方を有する冷却水を用いて循環運転を行うため、公知の装置又は新規の装置を問わず、さらに冷却処理能力などの装置性能、装置規模や装置機種などの装置によって特に限定されない。また、本発明の方法は、一般的な開放式冷却塔にも容易に使用することができる。
本発明に用いられる開放式冷却塔として、特に限定されないが、例えば、向流型(丸形)、直交流型(角型)などが挙げられるがこれらに限定されず、このうち、向流型が好適である。
【0038】
開放式冷却塔は、当該冷却塔の外部に熱交換器を配置し、当該冷却塔と熱交換器との間で冷却水が循環できるように配置された循環水路を有することが好適である。冷却水が循環できるように循環用の移送ポンプを備えることがより好適である。これにより、開放式冷却塔にて冷却された冷却水は、循環水路を通して、熱交換器に移送され、熱交換器にて加熱された冷却水は、循環水路を通して、開放式冷却塔に移送される。さらに、循環水路に接続されている開放式冷却塔の入口及び/又は出口には、水温計、pH計、動的接触角測定装置、泡かさ高さ測定装置などの各種測定装置を備えてもよい。
【0039】
開放式冷却塔には、送風手段、散水手段、充填材領域、ピットが備えられていることが好適であり、補給水供給手段、薬剤注入手段がさらに備えられていてもよい。さらに、開放式冷却塔を制御するための制御部を、循環冷却水系の内部又は外部に備えることが好適である。当該内部又は外部は、例えば、コンピュータ、データベース、クラウドシステム、ネットワークシステムなどであってもよい。
【0040】
送風手段は、送風機を備え、充填材領域に送風するように構成されていることが好適である。散水手段は、散水管を備え、充填材領域に冷却水を散布するように構成されていることが好適である。充填材領域は、複数の充填材を備えることが好適である。ピットは、冷却水貯留用タンクを備え、冷却水が冷却され、熱交換器に移送される冷却水が貯留できるように構成されていることが好適である。
【0041】
より好適な態様の一例として、開放式冷却塔は、熱交換器を通過した開放循環冷却水を冷却する冷却塔であり、充填材に前記冷却水を散布する散水手段と、充填材に大気を送風する送風手段と、当該冷却水を当該大気と接触させて蒸発させることで当該冷却水を冷却するように構成されている充填材を含む充填材領域を備え、当該冷却水に、界面活性剤を含む薬剤が添加できるように構成されている。
【0042】
開放式冷却塔には、冷却水が充填材表面に接触しながら冷却水の一部を蒸発させつつ、残りの冷却水が充填材領域を通過できるように、複数の充填材が積層状に構成されている充填材領域があることが、冷却性能向上の観点から、より好適である。
開放式冷却塔における充填材領域の配置は、特に限定されないが、当該冷却塔の上部領域又は内周領域に配置されてもよい。
本発明において、充填材領域を前記冷却塔の上部領域に設け、前記冷却塔の上方から順に、送風手段、散水手段、充填材領域、ピットにて配置されることが好適である。さらに、前記冷却塔に、充填材領域とピットとの間に空間を設けたり、外部から大気が流入可能な隙間を設けたりすることが好適である。
【0043】
充填材の基材は、特に限定されないが、合成樹脂製及び金属製(例えば、アルミ製、銅製など)等などが挙げられるが、合成樹脂製(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂製、ポリプロピレン樹脂製など)が好適であり、ポリ塩化ビニル樹脂製がより好適であり、さらに硬質塩化ビニル樹脂製がさらに好適である。充填材の接触方式として、冷却水を冷却できるように構成されている接触方式であれば特に限定されず、例えば、スプラッシュ型(液滴型)とフィルム型(水膜型)の接触方式が挙げられるが、フィルム型の接触方式が好ましい。
【0044】
さらに、開放式冷却塔には、冷却水の蒸散飛散による損失分を補うための補給水を供給するための補給水供給流路、及び薬剤を前記冷却水に注入するための薬剤注入流路が、接続されていることが好適である。
また、補給水供給流路には、水源及び当該水源から水を移送するポンプなどが接続されており、これらを含み、補給水を水系に供給するように構成されている補給水供給手段が、開放循環冷却水系に備えられていることが好適である。補給水の供給により、冷却塔のピットの水位を一定に保つことができ、開放循環冷却水系における安定的な運転を行うことができる。
【0045】
薬剤注入流路には、薬剤タンク及び当該薬剤タンクから薬剤を移送するポンプなどが接続され、これらを含む、各種薬剤を水系に注入するように構成されている薬剤供給手段が、開放循環冷却水系に備えられていることが好適である。薬剤の供給により、ピット内の冷却水への薬剤を注入することができる。当該薬剤として、特に限定されないが、界面活性剤を含む薬剤、腐食防止剤、スケール生成抑制剤、スライム生成抑制剤などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。このような薬剤によるスケール生成抑制などにより、開放循環冷却水系において安定的な運転を行うことができる。
【0046】
1-3.<界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水の性状>
本発明に用いる冷却水は、界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水であることが好適である。当該界面活性剤を含む薬剤の説明は、後述する。当該冷却水は、散水系冷却塔に使用することができ、さらに開放式又は密閉式の冷却塔のいずれに使用してもよいが、開放式が好適である。また、当該冷却水は、開放又は密閉の循環冷却水系のいずれでもよいが、開放循環冷却水系が好適である。
界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水は、(a)動的接触角(°)が、特定の範囲以下であること、かつ(b)泡かさ高さ(mL)が特定の範囲以下であることが、好適であり、このような性状を冷却水が有することにより、冷却塔に備える充填材と冷却水との濡れ性を向上させることができる。濡れ性を向上させることで、冷却塔によって冷却できる冷却水の温度をより大きくさせることができ、これにより冷却塔の冷却性能を向上させることができる。本発明に用いる冷却水の性状によって冷却塔の冷却性能を向上させるとともに、冷却水の泡立ちに起因する問題発生を抑制できるという利点を有する。
【0047】
本発明に用いる冷却水の性状は、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすことを特徴とすることが好適である。
【0048】
より好適な冷却水の(a)動的接触角は、好ましくは56°以下、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは53°以下、さらにより好ましくは52°以下、より好ましくは50°以下であり、40°以下、30°以下、20°以下、10°以下、5°以下になるに従って、冷却性能向上の観点からは、さらにより好ましい。薬剤の使用量低減及び泡立ち抑制の観点からは、冷却水の動的接触角は、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上、さらに好ましくは30°以上、さらにより好ましくは40°以上、より好ましくは50°以上である。
【0049】
より好適な冷却水の(b)泡かさ高さは、好ましくは300mL以下、より好ましくは280mL以下、さらに好ましくは250mL以下、さらにより好ましくは230mL以下、より好ましくは200mL以下であり、100mL以下、50mL以下になる従って、泡立ち抑制の観点からは、さらにより好ましい。濡れ性向上の観点からは、冷却水の泡かさ高さは、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上である。
【0050】
本発明に用いる冷却水の性状は、より好ましくは(a)動的接触角53°以下、かつ、(b)泡かさ高さ230mL以下、さらに好ましくは(a)動的接触角50°~52°、かつ、(b)泡かさ高さ200~230mLである。
【0051】
本発明における(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さを測定する際の好適な態様を以下に示す。
(a)冷却水の動的接触角(°)は、室温(25℃)にて、薬剤が添加された冷却水(4μL、25℃)を、試験板の上に滴下した場合における、滴下1秒後の当該冷却水の動的接触角であることが好適である。
(b)冷却水の泡かさ高さ(mL)は、薬剤が添加された冷却水300mLを、2mL/minで20秒間曝気したときの泡かさ高さであることが好適である。
【0052】
前記(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さにおける「薬剤が添加された冷却水」は、薬剤を冷却水に添加後、水系内の冷却水が概ね均一濃度になるように、冷却塔と熱交換器との間を循環させた後に測定することが好ましい。さらに、冷却塔における送風手段のファンが回転している条件において採取した冷却水を測定することが好ましい。
後記〔実施例〕において、水系内の冷却水に薬剤を添加した後に薬剤が添加された冷却水を循環冷却水系にて一定時間循環させたときに冷却温度及び泡立ちの状態が一定していたため、使用する冷却塔に応じて測定のための循環時間を適宜調整してもよい。薬剤添加後の循環時間は、例えば、100~150L/minの処理水量である開放式冷却塔を用いた場合には、より好ましくは20分間以上、さらに好ましくは30分間以上、さらにより好ましくは30~60分間である。
なお、前記(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さにおける「薬剤が添加された冷却水」は、同時期又は別々の時期であってもよい。
【0053】
前記(a)における「試験板」は、好ましくは合成樹脂製板、より好ましくはポリ塩化ビニル樹脂製板、さらに好ましくは、硬質塩化ビニル樹脂製板である。
前記(a)における「試験板」は、前記冷却塔内に備える充填材の素材と同じ素材であることが、より適した冷却水が調製できる観点から、好ましい。
前記(a)における「試験板」は、純水で測定したときに動的接触角が67~73°の試験板を使用することが好ましく、このときの測定装置はFIBRO社製のDAT1100 MkII Dynamic Absorption Testerが好ましい。
前記(a)における動的接触角は、ASTM D5725準拠による測定方法によって得られた値であることが好適であり、CCDカメラによる画像解析によって得られた値であることが好適であり、測定時間は前記(a)のとおり、1秒である。
前記(a)における動的接触角は、CCDカメラによる画像解析を用い、測定時間1秒で、ASTM D5725準拠による動的接触角(°)であることが、より好適である。
さらに、より好適な具体的な前記「(a)冷却水の動的接触角(°)」の測定方法は、後記〔実施例〕の<動的接触角評価試験>にて説明したとおりであり、これを参照することができる。
【0054】
前記(b)における泡かさ高さは、1L容のメスシリンダーに、薬剤が添加された冷却水(25℃)300mLを入れた後に、散気管を用いて2mL/minで20秒間曝気したときの泡かさ高さであることが好適である。
前記(b)における「1L容のメスシリンダー」は、内径58mm、一目盛り10mL、ASTM公差:6±mLのものが好適である。散気管は、1L容のメスシリンダーの底部に配置することが好適である。
前記(b)における散気管は、フィルター径20mm、管径8mm、細孔20~30μmのものが好適である。
さらに、より好適な具体的な前記「(b)冷却水の泡かさ高さ(mL)」の測定方法は、後記〔実施例〕の<発泡性評価試験>にて説明したとおりであり、これを参照することができる。
【0055】
本発明に用いる界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水中における、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、その好適な下限値は、好ましくは10mg/L以上、より好ましくは50mg/L以上、さらに好ましくは150mg/L以上、さらにより好ましくは200mg/L以上、より好ましくは250mg/L以上、さらに好ましくは300mg/L以上であり、また、その好適な上限値は、好ましくは1000mg/L以下、より好ましくは900mg/L以下、さらに好ましくは800mg/L以下、さらにより好ましくは600mg/L以下、より好ましくは500mg/L以下である。当該界面活性剤の濃度は、好適な数値範囲として、より好ましくは10~900mg/L、さらに好ましくは10~500mg/Lである。環境負荷を小さくする観点から前記界面活性剤の使用量はできるだけ低い濃度とすることが好ましい。
【0056】
本発明に用いる界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水のpH(25°)は、特に限定されないが、好ましくは6.5~10.0、より好ましくは7.0~9.5、さらに好ましくは7.5~9.0である。冷却水の水温は、特に限定されないが、好ましくは10~50℃の範囲である。
【0057】
1-4.<界面活性剤を含む薬剤>
本発明に用いる薬剤は、界面活性剤を少なくとも含む薬剤である。当該薬剤が添加された冷却水は、充填材に対する濡れ性を向上させることができる。さらに、界面活性剤を含む薬剤を、上述の「(a)冷却水の動的接触角(°)」及び「(b)冷却水の泡かさ高さ(mL)」の条件を満たすように添加して冷却水を調製することができる。この調製された冷却水は、冷却塔における冷却温度を増加させつつ、泡かさ高さを抑制することができる。この調製された冷却水は、冷却塔の冷却性能向上に使用するための冷却水とすることができる。さらに、この調製された冷却水は、冷却塔の冷却性能を向上させることができ、冷却塔内の泡立ちも抑制されていることから、冷却塔の運転も容易である。なお、本発明に用いる薬剤は、濡れ向上用、低発泡用、冷却性能向上用などに適用することができる。なお、当該薬剤は、散水系の冷却塔に使用することが好適である。また、当該薬剤は、開放式又は密閉式の冷却塔のいずれに使用してもよいが、開放式が好適である。また、当該薬剤は、開放又は密閉の循環冷却水系のいずれでもよいが、開放循環冷却水系が好適である。
【0058】
本発明に用いる界面活性剤として、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を薬剤として使用してもよい。
また、本発明の上述の「(a)冷却水の動的接触角」及び「(b)冷却水の泡かさ高さ」の条件を満たすような界面活性剤を選定することで、界面活性剤からなる一液型薬剤であっても、放熱効率向上及び低発泡性の両方の性質を有することができ、薬剤の長期間安定性確保の観点から、消泡剤を消泡効果が発揮し得るように薬剤に含有させなくともよいという利点を有する。
【0059】
以下に、それぞれの例示を挙げるが、本発明で用いる界面活性剤はこれらに限るものではない。界面活性剤は、公知の製造方法にて製造してもよいし、市販品を用いてもよい。また、これらに用いる塩として、特に限定されないが、アルカリ金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム、マグネシウムなど)、第1~4級アンモニウム塩などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用してもよい。
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルファオレフィンスルホン酸及びその塩、アルキル硫酸エステル及びその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸及びその塩、N-アシルメチル-β-アラニン及びその塩、N-アシルメチルタウリン及びその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸及びその塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホコハク酸半エステル塩、脂肪酸石鹸、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル硫酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、アルキルナフタレンスルホン酸及びその塩、アルキルリン酸エステル及びその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を薬剤として使用してもよい。
【0061】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルビス-2-ヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルフェニルアンモニウム塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を薬剤として使用してもよい。
【0062】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン二級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパントリデカノエート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を薬剤として使用してもよい。
【0063】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、βアルキルアミノプロピオン酸塩、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダソリニウムベタイン、ラウリルアミノジプロピオン酸塩などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を薬剤として使用してもよい。
【0064】
本発明において、上述した界面活性剤のうち、ノニオン性界面活性剤が好適であり、当該ノニオン性界面活性剤のうち、エーテル系ノニオン性界面活性剤が好ましく、さらにこのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好適である。当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける「ポリオキシアルキレン」の「アルキレン」は、例えばエチレン、プロピレンなどの炭素数2~3が好適であり、当該「ポリオキシアルキレン」は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシ、又はエチレンオキシド・プロピレンオキシなどが挙げられ、当該「ポリオキシアルキレン」の「ポリ」は、特に限定されないが、例えば、2~50が挙げられ、好ましくは2~30である。また、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける「アルキル」は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、当該「アルキル」の炭素数は好ましくは4~30、より好ましくは4~22であり、例えば、2-プロピルヘプチル、イソノニル、イソデシル、2-ブチルヘキシルなどの分岐鎖が挙げられるが、これらに限定されない。当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、これらから1種又は2種以上を選択することができる。
【0065】
本発明に用いる薬剤として、上記界面活性剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜、任意成分を含んでもよい。当該任意成分として、特に限定されないが、例えば、pH調整剤、消泡剤、防食剤、スケール防止剤、殺菌剤、殺藻剤などの種々の水処理剤から選択される1種又は2種以上を使用してもよい。当該消泡剤は、本発明に用いる薬剤中に、実質的に含まれないことが、薬剤の貯蔵安定性の観点から好適であり、例えば0.001質量%以下が好適である。
【0066】
本発明に用いる界面活性剤を含む薬剤の添加場所は、特に限定されないが、循環冷却水系内のいずれの場所でもよく、単数又は複数のいずれの場所でもよい。
薬剤添加場所として、より好ましくは循環水路及び/又は冷却塔であり、さらに好ましくは冷却塔及びこの入口及び/又は出口付近の循環水路であり、さらにより好ましくは冷却塔である。より好適には、薬剤注入手段にて、界面活性剤を含む薬剤を、冷却水に添加することである。
本発明に用いる界面活性剤を含む薬剤は、循環冷却水系に、連続的に又は断続的に添加してもよい。
また、本発明に用いる界面活性剤を含む薬剤の添加量は、上述の「(a)冷却水の動的接触角」及び「(b)冷却水の泡かさ高さ」の条件を満たすように添加することが好適である。
【0067】
なお、本発明の実施形態に係る冷却性能向上方法では、後述する「2.」、「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0068】
2.冷却塔を有する循環冷却水系に使用する冷却水の調製方法
本発明の実施形態に係る調製方法では、上記「1.」、後述する「3.」などの構成と重複する、界面活性剤、冷却塔などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」、「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0069】
本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系に使用する冷却水の調製方法であって、当該循環冷却水系の冷却水に、界面活性剤を含む薬剤を添加して、(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下の冷却水に調製する、冷却水の調製方法を提供することができる。前記冷却塔を有する循環冷却水系は、開放式冷却塔を有する開放循環冷却水系であることが好適である。
前記冷却水が、前記(a)動的接触角52°以下、かつ、(b)泡かさ高さ230mL以下が好適である。
前記界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤が好適であり、このうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好適である。
前記冷却水中における界面活性剤の含有量又は使用量は、特に限定されないが、例えば前記冷却水中に、10~500mg/Lであってもよい。
【0070】
本発明の調製方法にて得られた冷却水は、濡れ向上作用、冷却性能向上作用、泡立ち抑制作用を有するので、濡れ向上用冷却水、冷却性向上用冷却水、泡立ち抑制用冷却水として使用することができる。本発明で用いる界面活性剤を含む薬剤は、これらの作用を冷却水に付与することができる。
本発明の調製方法にて得られた冷却水は、濡れ向上作用、冷却性能向上作用、泡立ち抑制作用の目的のために使用することができる。本発明の調製方法にて得られた冷却水は、濡れ向上方法、冷却性能向上方法、泡立ち抑制方法に用いることができる。
当該冷却水の調製方法は、開放式又は密閉式の冷却塔のいずれに使用してもよいが、開放式が好適である。また、当該冷却水の調製方法は、開放又は密閉の循環冷却水系のいずれでもよいが、開放循環冷却水系が好適である。
【0071】
3.冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法
本発明の実施形態に係る運転方法では、上記「1.」、「2.」などの構成と重複する、界面活性剤、冷却塔などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」、「2.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0072】
本発明は、冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法であって、当該循環冷却水系に使用する冷却水が(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を添加することを特徴とする、循環冷却水系の運転方法を提供することができる。当該運転方法は、管理方法として適用してもよい。当該運転方法は、散水系冷却塔に使用することが好適である。また、当該運転方法は、開放式又は密閉式の冷却塔のいずれに使用してもよいが、開放式が好適である。また、当該運転方法は、開放又は密閉の循環冷却水系のいずれでもよいが、開放循環冷却水系が好適である。
【0073】
より好適な態様について、図1を参照して、説明するが、本発明は、これに特に限定されない。
開放循環冷却水系1は、開放式冷却塔10と、移送ポンプを備える循環水路20と、熱交換器30とを有する。開放式冷却塔10は、上方から順に、送風手段11、散水手段12、充填材領域13、側方から大気を取り込む空間14、ピット15を備え、さらに、補給水供給手段16及び薬剤注入手段17を備える。当該開放式冷却塔10は、散水系の冷却塔の構成も備えていてもよい。
【0074】
本発明に用いる界面活性剤を含む薬剤は、薬剤注入手段17から、ピット15に貯留されている冷却水に添加される。この薬剤と冷却水とは、撹拌羽などの撹拌、流路の循環、ポンプ吐出などの混合手段により十分に混合することができる。
【0075】
前記薬剤を含む冷却水は、開放式冷却塔10の出口に接続されている循環水路20に移送され、移送ポンプ21を用いて循環水路20を通じて、熱交換器30に移送される。前記薬剤を含む冷却水は、熱交換器30の循環水路内を通過する際に熱交換器30から熱を受け取り、加温される。加温された前記薬剤を含む冷却水は、開放式冷却塔10の入口に接続されている循環水路20を通じて開放式冷却塔10に移送される。
【0076】
移送された前記薬剤を含む冷却水は、散水手段に備えられている散水管から、送風手段の下方にある充填材領域13に備えられている充填材に、下流に散布される。一方で、充填材領域13の下方にあるルーパ18間の隙間から流入した大気が、送風手段11にて上方に移送され、このときに充填材領域13を通過する。このとき、大気にて、充填材上の冷却水の一部を蒸発させることで放冷され、前記薬剤を含む冷却水が冷却される。そして、前記薬剤を含む冷却水は、充填材に対する濡れ性が向上しているため、充填材の表面上に広がって流れ、これにより伝熱面積が増大し、熱交換効率がより増加する。これによって、冷却塔の冷却性能が、薬剤無添加の冷却水と比較し、向上することができる。
【0077】
冷却された前記薬剤を含む冷却水は、充填材領域13を通過し、空間14の下に冷却水が貯留されているピット15に叩き落ちる。このとき、界面活性剤を含む薬剤を含む冷却水は、泡立ち抑制されるように界面活性剤が調整されているため、ピット15において界面活性剤に起因する泡立ちは冷却塔内で増加しないようになっている。ピット15には、冷却水から蒸発した水を補給するための補給水が補給水供給手段にて供給され、薬剤を含む冷却水は一定のピット量になるように調整されている。ピット内に貯留されている薬剤を含む冷却水は、開放式冷却塔10の出口から循環水路を通じて、熱交換器30に移送される。これを繰り返すことで、熱交換器30で発生する熱を良好に奪うことができる。なお、開放式冷却塔10の入口及び出口には、冷却温度を計測するために、冷却水の水温を計測するための温度計を設置してもよい。
なお、開放式又は密閉式の冷却塔の水系運転時の冷却温度は、冷却塔の入口の水温の平均値と、冷却塔の出口の水温の平均値から、算出した、平均冷却水温でもよい。
【0078】
さらに、前記薬剤を含む冷却水の(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さについて、上述した<界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水の性状>に従って、動的接触角測定装置及び泡かさ高さ測定装置などの測定装置にて測定することができる。測定場所は、開放式冷却塔のピット15又は出口であることが好適である。この測定結果は、冷却水の調製を制御する制御部に送信される。
【0079】
制御部は、この測定結果に基づき、前記薬剤を含む冷却水が、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下の条件を満たすように、薬剤注入及び/又は補給水供給を調整することができる。なお、制御部は、上述した温度計などの各測定装置の動作を制御してもよく、これらの測定結果やこれらに対する指示などの信号を送受信してもよい。なお、制御部は、開放又は密閉の循環冷却水系、開放式又は密閉式の冷却塔などの運転や管理などを行ってもよい。
【0080】
一例として、制御部は、前記薬剤を含む冷却水が、上述の(a)動的接触角、かつ、(b)泡かさ高さの条件を満たすかどうかを、判別する。制御部は、この判別結果に基づき、以下のステップS100及び/又はS200を行うことで、上述の(a)動的接触角、かつ、(b)泡かさ高さの条件を満たすような冷却水を調製してもよい。なお、オペレータの手動によって、上述の(a)動的接触角、かつ、(b)泡かさ高さの条件を満たすような冷却水を調製することも可能である。
【0081】
(ステップS100:(a)動的接触角の調整)
制御部は、上述の所定の(a)動的接触角を満たさずに越える場合には、冷却水中の界面活性剤の含有量が不足していると判断する。不足の場合には、制御部は、薬剤注入手段17に、薬剤注入場所(好適にはピット15)に、界面活性剤を含む薬剤の注入を開始又は注入量を増加させるように指示又は制御する。及び/又は、制御部は、補給水供給手段16に、補給水供給場所(好適にはピット15)に、補給水の供給を停止又は供給量を減少させるように指示又は制御する。
【0082】
(ステップS200:(b)泡かさ高さの調整)
また、制御部は、上述の所定の(b)泡かさ高さを満たさず越える場合には、冷却水中の界面活性剤の含有量が過剰であると判断する。過剰の場合には、制御部は、薬剤注入手段17に、薬剤注入場所(好適にはピット15)に、界面活性剤を含む薬剤の注入を停止又は注入量を減少させるように指示又は制御する。及び/又は、制御部は、補給水供給手段16に、補給水供給場所(好適にはピット15)に、補給水の供給を開始又は供給量を増加させるように指示又は制御する。
【0083】
また、本発明は、冷却塔で使用する冷却水の(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さを測定する測定工程と、
冷却塔で使用する冷却水が(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を調整する薬剤調整工程とを含む、冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法を提供することができる。
さらに、前記薬剤調整工程において、界面活性剤を含む薬剤の注入量及び/又は補給水の供給量を調整することが好適である。前記冷却塔は、散水系が好適である。また、前記冷却塔は、開放式又は密閉式のいずれでもよいが、開放式冷却塔が好適である。循環冷却水系は、開放又は密閉のいずれでもよいが、開放循環冷却水系が好適である。
【0084】
なお、上述した本発明の測定工程及び薬剤調整工程を含む、冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法は、冷却塔の冷却性能向上方法、冷却水の調製方法に適用してもよい。
【0085】
また、本発明の方法を、上述した循環冷却水系の冷却性能向上方法又は運転方法、これに使用する冷却水の調製方法などの方法を実施又は管理するための装置(例えば、コンピュータ、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレットPC、PLC、サーバ、クラウドサービスなど)又は当該装置に備える制御部(当該制御部はCPUなどを含む)によって実現させることも可能である。また、本発明の方法を、記録媒体(不揮発性メモリ(USBメモリなど)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、CD、DVD、ブルーレイなど)などを備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、前記制御部によって実現させることも可能である。前記制御部によって、冷却水の(a)動的接触角及び(b)泡かさ高さを制御する循環冷却水系の冷却性能向上などのシステムなど、当該制御部もしくは当該システムを備える装置を提供することも可能である。また、当該管理装置には、タッチパネルやキーボードなどの入力部、ネットワークなどの通信部、タッチパネルやディスプレイなどの表示部などを備えてもよい。
【0086】
一例として、本発明は、コンピュータに、冷却塔に使用する冷却水の(a)動的接触角(b)泡かさ高さを測定する機能と、
冷却塔に使用する冷却水が(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を調整する機能と、を含む、冷却塔を有する循環冷却水系の運転を、実現させるプログラムを提供することができ、これに限定されない。前記冷却塔は、散水系が好適である。また、前記冷却塔は、開放式又は閉鎖式のいずれでもよいが、開放式が好適である。循環冷却水系は、開放又は閉鎖のいずれでもよいが、開放循環冷却水系が好適である。
【0087】
本技術は、以下の構成を採用することができる。
〔1〕
冷却塔を有する循環冷却水系における、冷却塔の冷却性能向上方法であって、
当該循環冷却水系に使用する冷却水が、界面活性剤を含む薬剤が添加された冷却水であり、
当該冷却水が、(a)動的接触角55°以下、かつ、(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすことを特徴とする、冷却性能向上方法。なお、当該冷却塔は、散水系が好適である。また、当該冷却塔は開放式冷却塔又は閉鎖式冷却塔のいずれでもよく、循環冷却水系は、開放循環冷却水系又は閉鎖循環冷却水のいずれでもよい。
〔2〕
冷却塔を有する循環冷却水系に使用する冷却水の調製方法であって、
当該冷却水系の冷却水に、界面活性剤を含む薬剤を添加して、(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下の冷却水に調製する、冷却水の調製方法。当該冷却塔は、散水系が好適である。
〔3〕
冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法であって、
当該循環冷却水系に使用する冷却水が(a)動的接触角55°
以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を添加することを特徴とする、循環冷却水系の運転方法。当該冷却塔は、散水系が好適である。
〔4〕
冷却塔に使用する冷却水の(a)動的接触角(b)泡かさ高さを測定する測定工程と、
冷却塔に使用する冷却水が(a)動的接触角55°以下かつ(b)泡かさ高さ250mL以下を満たすように、界面活性剤を含む薬剤を調整する薬剤調整工程とを含む、方法。
前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法は、冷却塔を有する循環冷却水系における冷却塔の冷却性能向上方法、冷却塔を有する循環冷却水系に使用する冷却水の調製方法、又は冷却塔を有する循環冷却水系の運転方法が好適である。
前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法は、開放式冷却塔及び/又は開放循環冷却水系が、好適であり、開放式冷却塔を有する開放循環冷却水系は、さらに閉鎖式冷却塔を備えてもよい。
【0088】
〔5〕
前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の方法。
〔6〕
前記界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の方法。
〔7〕
前記界面活性剤の使用量が、前記冷却水中に200~900mg/Lである、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の方法。
〔8〕
前記冷却水が、動的接触角52°以下、かつ、泡かさ高さが230mL以下である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の方法。
〔9〕
以下の(a)及び(b)である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の方法。
前記(a)冷却水の動的接触角(°)は、室温(25℃)にて、薬剤が添加された冷却水(4μL、25℃)を、試験板の上に滴下した場合における、滴下1秒後の当該冷却水の動的接触角であること。当該試験板が、硬質塩化ビニル樹脂製板であることが好適である。
(b)冷却水の泡かさ高さ(mL)は、薬剤が添加された冷却水300mLを、2mL/minで20秒間曝気したときの泡かさ高さであること。
【実施例
【0089】
以下の実施例及び比較例などを挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は実施例などに限定されるものではない。
【0090】
試験例1~3を、以下の<冷却塔試験>及び表1~3に示す試験水の条件にて行い、それぞれの試験結果を表1~3に示した。
【0091】
<冷却塔試験>
開放式の丸形向流型冷却塔(NSクーリングタワー、日本ピストンリング製)に、35℃に加温した試験水を、35L/minの流量で通水を開始し、当該冷却塔内で冷却水を冷却処理し、当該冷却塔から熱交換器へと冷却水を循環させた。通水を開始し、30分経過したときに、冷却塔の入口と出口とにおける冷却水の水温(℃)を測定した。熱交換器を通過した加温された冷却水が冷却塔の入口に入るときの水温(℃)を冷却塔の入口の冷却水の水温とし、冷却塔の出口から出るときの水温(℃)を冷却塔の出口の冷却水の水温とした。冷却塔におけるそれぞれの冷却水の水温を求め、この入口の水温と出口の水温との温度差を冷却温度(℃)とした。
各評価は、冷却塔のファンが回転している条件において冷却水を採取し、実施した。また、試験時には、目視で冷却塔内の泡が経時的に増加するかを確認した。
界面活性剤が添加された冷却水のpH(25℃)は、7.8~8.0であった。冷却水の水温は、10~50℃の範囲内にあった。
【0092】
<開放式の丸形向流型冷却塔>
NSクーリングタワー(日本スピンドル製)
型式 CTA-10NL
冷却能力 45.35kW
処理水量 7.8 t/h (130L/min)
充填材 硬質塩化ビニル樹脂製
【0093】
本実施例にて使用した開放式の丸形向流型冷却塔の基本的な構成は、当該冷却塔の外部に熱交換器を配置し、当該冷却塔と熱交換器との間で冷却水が循環できる循環水路を有する。開放式冷却塔を有する開放循環冷却水系は、冷却塔、熱交換器、循環水路を含み、熱源を冷却するように構成されている。
より具体的には、開放式の丸形向流型冷却塔は、熱交換器を通過した開放循環冷却水を冷却する開放式向流型冷却塔であり、充填材に前記冷却水を散布する散水手段と、充填材に大気を送風する送風手段と、前記冷却水を前記大気と接触させて蒸発させることで当該冷却水を冷却するように構成されている充填材を含む充填材領域を備え、前記冷却水に、界面活性剤を含む薬剤が添加されるように構成されている。当該冷却塔は、散水系の構成を有している。充填材領域には、硬質塩化ビニル樹脂製の充填材が複数存在し、複数の充填材は、大気が通過可能なようにかつ積層状に配置されている。
さらに、当該冷却塔には、冷却水の蒸散飛散による損失分を補うための補給水を供給するための流路、及び薬剤を冷却水に注入するための薬剤注入流路が、接続されている。補給水の補給により、ピットの水位を一定に保つことができる。ピット内の冷却水への薬剤を注入することができる。
【0094】
<試験水>
試験例1~3において、以下の界面活性剤を使用した。当該界面活性剤を、冷却水中に表1及び2に示す濃度(mg/L)になるように、添加した冷却水を、試験水とした。
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー:BASF製品 Burst EP6200
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルA:BASF製品 PLURAFAC LF901(エチレンオキシド・プロピレンオキシド重合物のモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル(CAS番号:166736-08-9))
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルB:栗田工業製品 クリフォーム C-803
・アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:三洋化成工業製品 サンデットALH
【0095】
<動的接触角評価試験>
冷却塔充填材と同材質である硬質塩化ビニル板に、試験水(4μL、25℃)を滴下した時点から1秒後の接触角を、動的接触角試験装置(DAT1100 MkII Dynamic Absorption Tester、FIBRO社製)を用いて、室温(25℃)にて、測定した。
【0096】
試験水は、冷却塔から熱交換器の間で、冷却塔の出口から出たときの冷却水を、試験水として採取した。
動的接触角評価試験に用いた硬質塩化ビニル板は、ユニサンデー塩ビシート(EB235-5、光製)を用いた。試験に用いる硬質塩化ビニル板は、「試験水」に代えて「純水(イオン交換水)」を滴下したときに、当該純水の動的接触角が平均69.7°(2回測定:72.2°,67.1°)を示す表面を有するものであった。
動的接触角が55°以下のときに冷却温度(℃)が増加し良好であったので、動的接触角55°以下を合格とした。
【0097】
<動的接触角試験装置 1100DAT MkII>
当該動的接触角試験装置は、表面サイズ性に相関する接触角を動的評価することができる。当該動的接触角試験装置は、時間変化に対する接触角(濡れ特性)、滴下液容量(吸収特性)、液滴直径(広がり)をCCDカメラによる画像解析により測定することができる。
・ペンダントドロップ法により液表面張力の測定することができる。
・シャッター速度:0.001秒
・測定間隔:0.02秒(50画像/秒)
・ASTM D5725準拠
【0098】
<発泡性評価試験>
1L容のメスシリンダーに300mLの試験水(25℃)を添加し、散気管を1L容のメスシリンダーの底部に配置した。散気管を用いて2mL/minで試験水中に大気をおくり曝気を開始し、曝気開始から20秒後の泡かさ高さをメスシリンダーの目盛りを読み取り、この発泡させたときの容量(mL)-発泡前の容量300mLの値を発泡性(mL)とし、これを発泡性の評価とした。
評価基準として、発泡性250mL以下では冷却塔での泡の増加が発生しなかったので、この発泡性250mLを合格とした。
・試験水は、冷却塔から熱交換器の間で、冷却塔の出口から出たときの冷却水を試験水として採取した。
・1L容のメスシリンダー:内径58mm、一目盛り10mL、ASTM公差:6±mL。
・散気管:旭製作所製 ボールフィルター3970-20/3、フィルター径20mm、管径8mm、細孔20~30μm。
【0099】
<試験例1>
試験例1において、表1に示す界面活性剤及び当該界面活性剤の試験水中の濃度にて、上記<冷却塔試験>を行った。その結果、同一濃度であっても、界面活性剤の種類によって親水化性能が異なった。また、界面活性剤の濃度が増加するに従って、親水化性能が向上した。
【0100】
【表1】
【0101】
<試験例2>
試験例2において、表2に示す界面活性剤及び当該界面活性剤の試験水中の濃度にて、上記<冷却塔試験>を行った。その結果、同一濃度であっても、界面活性剤の種類によって発泡性が異なった。界面活性剤の濃度が増加するに従って、発泡性が増加した。
【0102】
【表2】
【0103】
<試験例3>
試験例3において、表3に示す界面活性剤及び当該界面活性剤の試験水中の濃度にて、上記<冷却塔試験>を実施した。親水化性能が高く、発泡性の低いという特徴がみられたノニオン性界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルAを用いた。この結果、界面活性剤(好適にはノニオン性界面活性剤)を300mg/冷却水1L以上になるように冷却水に含有させることで、冷却塔における冷却温度が増加した(比較例1、2、3、実施例1、2)。
また、界面活性剤(好適にはノニオン性界面活性剤)が添加された冷却水の動的接触角が、55°を下回ると、冷却温度が増加するという関係が得られた。また、界面活性剤(好適にはノニオン性界面活性剤)が添加された冷却水の泡かさ高さ(発泡性)が250mL以下になると、冷却塔での泡の増加がみられないという関係が得られた。
【0104】
このことから、冷却水の動的接触角が55°以下、かつ、冷却水の泡かさ高さが250mL以下になるように、界面活性剤(好適にはノニオン性界面活性剤)を冷却水に添加することで、冷却塔の冷却性能が向上する冷却水を得ることができ、この冷却水を使用することで冷却塔の冷却性能を向上させることができる。当該冷却水を調製し使用することで、冷却塔の冷却性能を容易に向上させることができるので、循環冷却水の運転を容易に行うことができる。また、当該冷却水を調製し使用するため、冷却塔を特段改造しなくともよく、既存の設備を用いてもよく、冷却塔の冷却性能を容易に向上させることができる。さらに、冷却塔は、散水手段と充填材領域とを少なくとも備える散水系冷却塔が好ましい。また、開放式又は閉鎖式のいずれでもよいが、開放式冷却塔が好ましい。循環冷却水系は、開放循環冷却水系又は閉鎖循環冷却水系のいずれでもよいが、開放循環冷却水が好ましい。
【0105】
【表3】
【符号の説明】
【0106】
1 開放循環冷却水系、10 開放式冷却塔、11 送風手段、12 散水手段、13 充填材領域、14 空間、15 ピット、16 補給水供給手段、17 薬剤注入手段、18 ルーパ、20 循環水路、21 移送ポンプ、30 熱交換器
図1