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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】積層体、及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20220621BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B32B17/10
C03C17/34 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021155672
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2021-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃右
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076069(JP,A)
【文献】特開2004-082530(JP,A)
【文献】特開2014-150221(JP,A)
【文献】特開2021-062571(JP,A)
【文献】特開2018-108677(JP,A)
【文献】特表2019-508522(JP,A)
【文献】特開2018-128655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0175850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 17/34
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、密着層と、樹脂層とをこの順に有する積層体であって、
前記密着層が、前記ガラス基板の表面の法線方向から前記積層体を観察した際に前記樹脂層の外縁の全周の全周の25~99%の範囲から、前記外縁よりも外側に位置し、前記樹脂層の側面の少なくとも一部と接している側面接触部を有する、積層体。
【請求項2】
前記樹脂層が四角形状であり、前記側面接触部が前記樹脂層の4つの角部のうち、最大で3つの角部に設けられている、請求項に記載の積層体。
【請求項3】
前記側面接触部は、前記樹脂層の側面の厚み方向の長さに対して70%以下の領域と接している、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記側面接触部は、前記樹脂層の前記外縁に沿って連続して、又は前記樹脂層の前記外縁に沿って間隔をあけて設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
樹脂層と密着層とを有する密着層付き樹脂層とガラス基板とを、前記密着層と前記ガラス基板とが対向するように、貼合する工程1と、
前記工程1で得られた積層基材に対して、前記密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2とを有
前記密着層の軟化点以上の温度で前記加熱処理を施す前記工程2は、前記ガラス基板の表面の法線方向から前記積層基材を観察した際に前記樹脂層の外縁において、前記密着層の軟化点以上の温度に加熱する領域と、前記密着層の軟化点未満の温度に加熱する領域とに分けて前記加熱処理を施し、
前記密着層の軟化点未満の温度に加熱する前記領域は、前記樹脂層の前記外縁の全周の1~75%の範囲である、積層体の製造方法。
【請求項6】
前記密着層の軟化点以上の温度で前記加熱処理を施す前記工程2は、前記ガラス基板の表面の法線方向から前記積層基材を観察した際に前記樹脂層の外縁の少なくとも一部を、加熱プレートの縁から突出させて、前記積層基材を前記加熱プレート上に配置する配置工程を含み、
前記配置工程の後に、前記加熱プレートにより、前記積層基材に対して前記密着層の前記軟化点以上の温度で前記加熱処理を施す、請求項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記密着層の軟化点以上の温度で前記加熱処理を施す前記工程2は、前記ガラス基板の表面の法線方向から前記積層基材を観察した際に前記樹脂層の外縁において、前記密着層の軟化点以上の温度に加熱する領域と、前記密着層の軟化点未満の温度に加熱する領域とに分け、前記密着層の軟化点以上の温度に加熱する前記領域に、温風を当てるか又は光を照射して前記加熱処理を施す、請求項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
樹脂層と密着層とを有する密着層付き樹脂層とガラス基板とを、前記密着層と前記ガラス基板とが対向するように、貼合する工程1と、
前記工程1で得られた積層基材に対して、前記密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2とを有し、
前記密着層の軟化点以上の温度で前記加熱処理を施す前記工程2は、前記ガラス基板の表面の法線方向から前記積層基材を観察した際に前記樹脂層の外縁に断熱材又は冷却部材を配置する配置工程を含み、
前記配置工程の後に、前記積層基材に対して、前記密着層の前記軟化点以上の温度で前記加熱処理を施し、
前記配置工程では、前記樹脂層の前記外縁の全周の1~75%の範囲に、前記断熱材又は冷却部材を配置する、積層体の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層が四角形状であり、前記配置工程では、前記断熱材又は冷却部材を前記樹脂層の4つの角部のうち、最大で3つの角部に設ける、請求項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記配置工程では、前記断熱材又は冷却部材を、前記樹脂層の前記外縁に沿って連続して、又は前記樹脂層の前記外縁に沿って間隔をあけて配置する、請求項8又は9に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池;液晶パネル(LCD);有機EL表示装置(OLED);電磁波、X線、紫外線、可視光線、赤外線等を感知する受信センサーパネル;等の電子デバイスを製造する際に、ポリイミド樹脂層が基板として用いられる。ポリイミド樹脂層は、ガラス基板上に設けられた積層体の状態で用いられ、積層体が電子デバイスの製造に提供されている。電子デバイスを形成した後、ポリイミド樹脂層とガラス基板とが分離される。
ポリイミド樹脂層とガラス基板との分離は、例えば、特許文献1に示されているように、レーザー光を用いて分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-185807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、ポリイミド樹脂層とガラス基板との分離には、レーザー光が用いられる。しかしながら、本発明者等は、密着層上にポリイミドワニスを塗布してポリイミド基板を作製して、ポリイミド基板を、物理的な力により剥離する方法を見出した。
ここで、上記密着層の形成方法としては、保護層となる樹脂層上に密着層を形成して、その密着層をガラス基板に貼合して、密着層付きガラス基板、すなわち、積層体を製造する。積層体の樹脂層を剥がして、密着層上に、例えば、ポリイミドワニスを塗布し、ポリイミド樹脂層を形成する。
ポリイミド樹脂層を形成するために使用する密着層上に、保護層である樹脂層が積層された積層体の取り扱い性に関して問題があった。ポリイミド樹脂層を形成する前では、搬送時等で保護層が剥がれにくく、ポリイミド樹脂層を形成する際に保護層を剥がす際には、剥がれやすいことが望まれている。
本発明は、取り扱い時に樹脂層が剥がれにくく、樹脂層を剥離する処理の際には樹脂層を剥離できる、積層体、及び積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上述の目的を達成できることを見出した。
本発明の一態様は、ガラス基板と、密着層と、樹脂層とをこの順に有する積層体であって、密着層が、ガラス基板の表面の法線方向から積層体を観察した際に樹脂層の外縁の全周の一部から、外縁よりも外側に位置し、樹脂層の側面の少なくとも一部と接している側面接触部を有する、積層体である。
密着層が、樹脂層の外縁の全周の25~99%の範囲から、外縁よりも外側に位置する側面接触部を有することが好ましい。
樹脂層が四角形状であり、側面接触部が樹脂層の4つの角部のうち、最大で3つの角部に設けられていることが好ましい。
側面接触部は、樹脂層の側面の厚み方向の長さに対して70%以下の領域と接していることが好ましい。
側面接触部は、樹脂層の外縁に沿って連続して、又は樹脂層の外縁に沿って間隔をあけて設けられていることが好ましい。
【0006】
本発明の一態様は、樹脂層と密着層とを有する密着層付き樹脂層とガラス基板とを、密着層とガラス基板とが対向するように、貼合する工程1と、工程1で得られた積層基材に対して、密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2とを有する、積層体の製造方法である。
密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2は、ガラス基板の表面の法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層の外縁において、密着層の軟化点以上の温度に加熱する領域と、密着層の軟化点未満の温度に加熱する領域とに分けて加熱処理を施すことが好ましい。
密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2は、ガラス基板の表面の法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層の外縁の少なくとも一部を、加熱プレートの縁から突出させて、積層基材を加熱プレート上に配置する配置工程を含み、配置工程の後に、加熱プレートにより、積層基材に対して密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施すことが好ましい。
密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2は、ガラス基板の表面の法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層の外縁において、密着層の軟化点以上の温度に加熱する領域と、密着層の軟化点未満の温度に加熱する領域とに分け、密着層の軟化点以上の温度に加熱する領域に、温風を当てるか又は光を照射して加熱処理を施すことが好ましい。
【0007】
密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2は、ガラス基板の表面の法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層の外縁に断熱材又は冷却部材を配置する配置工程を含み、配置工程の後に、積層基材に対して、密着層の軟化点以上の温度で加熱処理を施すことが好ましい。
配置工程では、樹脂層の外縁の全周の1~75%の範囲に、断熱材又は冷却部材を配置することが好ましい。
樹脂層が四角形状であり、配置工程では、断熱材又は冷却部材を樹脂層の4つの角部のうち、最大で3つの角部に設けることが好ましい。
配置工程では、断熱材又は冷却部材を、樹脂層の外縁に沿って連続して、又は樹脂層の外縁に沿って間隔をあけて配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取り扱い時に樹脂層が剥がれにくく、樹脂層を剥離する処理の際には樹脂層を剥離できる、積層体、及び積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の実施形態の積層体の第1の例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は本発明の実施形態の積層体の第1の例の一部を模式的に示す断面図である。
図3図3は本発明の実施形態の積層体の第2の例を模式的に示す平面図である。
図4図4は本発明の実施形態の積層体の第3の例を模式的に示す平面図である。
図5図5は本発明の実施形態の積層体の第4の例を模式的に示す平面図である。
図6図6は本発明の実施形態の積層体の第5の例を模式的に示す平面図である。
図7図7は本発明の実施形態の積層体の第6の例を模式的に示す平面図である。
図8図8は本発明の実施形態の積層体の第7の例を模式的に示す平面図である。
図9図9は本発明の実施形態の積層体の第8の例を模式的に示す平面図である。
図10図10は本発明の実施形態の積層体の第9の例を模式的に示す平面図である。
図11図11は本発明の実施形態の積層体の第10の例を模式的に示す平面図である。
図12図12は本発明の実施形態の積層体の第11の例を模式的に示す平面図である。
図13図13は側面接触部の除去方法の第1の例を模式的に示す断面図である。
図14図14は側面接触部の除去方法の第2の例を模式的に示す断面図である。
図15図15は側面接触部の除去方法の第3の例を模式的に示す断面図である。
図16図16は側面接触部の除去方法の第4の例を模式的に示す断面図である。
図17図17は側面接触部の除去方法の第5の例を模式的に示す断面図である。
図18図18は側面接触部の除去方法の第5の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を説明するための例示的なものであり、本発明は以下に示す実施形態に制限されることはない。なお、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明の積層体の特徴点としては、ガラス基板と、密着層と、樹脂層とをこの順に有する積層体において、密着層が、ガラス基板の表面の法線方向から積層体を観察した際に樹脂層の外縁の全周の一部から、外縁よりも外側に位置し、樹脂層の側面の少なくとも一部と接している側面接触部を有する点が挙げられる。
上述の構成の側面接触部があることにより、樹脂層と密着層との界面の密着力が弱くても、積層体の取り扱い時に樹脂層が剥がれにくく、樹脂層を剥離する処理の際には樹脂層を剥離できることを知見している。これにより、所望の効果が得られる。
【0012】
<積層体>
[積層体の第1の例]
図1は本発明の実施形態の積層体の第1の例を模式的に示す斜視図であり、図2は本発明の実施形態の積層体の第1の例の一部を模式的に示す断面図である。
図1に示す第1の例の積層体10は、ガラス基板12と、密着層14と、樹脂層16とをこの順に有する。図2に示すように、ガラス基板12の表面12aに密着層14が配置され、密着層14の表面14aに樹脂層16が配置されている。図1に示すようにガラス基板12、密着層14及び樹脂層16は、平面視四角形状である。ガラス基板12と、密着層14と、樹脂層16とは、それぞれ、互いに辺を平行にして配置されている。密着層14と樹脂層16とは略同じ大きさであり、ガラス基板12は、密着層14及び樹脂層16よりも大きい。
なお、平面視は、樹脂層16の表面16a側から観察することであり、後述のガラス基板12の表面12aの法線方向から積層体10を観察したことと同じ意味である。
【0013】
密着層14が、ガラス基板12の表面12aの法線方向から積層体10を観察した際に樹脂層16の外縁17の全周の一部から、外縁17よりも外側に位置し、樹脂層16の側面16b(図2参照)の少なくとも一部と接している側面接触部15を有する。例えば、図1に示す積層体10では、四角形の樹脂層16の一辺に側面接触部15が設けられている。
図2に示すように、側面接触部15は、樹脂層16の側面16bよりもガラス基板12の外縁側に延出している。側面接触部15は、ガラス基板12の表面12a上に延出している延出部分15aと、樹脂層16の側面16bにおいて、樹脂層16の表面16a側に這い上がっている這い上がり部分15bとを有する。
側面接触部15は、樹脂層16の側面16bの厚み方向Dtの長さLに対して70%以下の領域と接していることが好ましい。これにより、積層体10の搬送時等では、樹脂層16が剥がれにくく、樹脂層16を剥がすときにはより剥がれやすくなる。
図2の例では、這い上がっている這い上がり部分15bの長さをLbとするとき、長さLbが、樹脂層16の厚み方向Dtの長さLの70%以下であることが好ましい。側面接触部15は存在していればよく、這い上がり部分15bの長さLbの下限値は、樹脂層16の厚み方向Dtの長さLの0%超である。
【0014】
側面接触部15は、樹脂層16の外縁17よりも外側に位置するものであり、樹脂層16の外縁17の全周の25~99%の範囲に設けられていることが好ましく、30~70%の範囲に設けられていることがより好ましい。図1の例では、樹脂層16は四角形であり、四角形の4辺の合計の長さが、樹脂層16の外縁17の全周の長さである。
側面接触部15は、樹脂層16の外縁17の全周の25~99%の範囲に設けられていれば、取り扱い時に樹脂層16が剥がれにくく、樹脂層16を剥離する際には樹脂層16を剥離できる。
図1に示すように、樹脂層16が四角形状である場合、側面接触部15が樹脂層16の角部16dの少なくとも1つには位置しないことが好ましい。これにより、樹脂層16を剥がす際に、剥がしやすい。すなわち、樹脂層16の角部16dに側面接触部15を設けないことにより、樹脂層16を剥がす際には剥がしやすくなる。
図2に示すように、密着層14の側面14bと、樹脂層16の側面16bとが、厚み方向Dtで面一である場合、樹脂層16は剥がれやすい。なお、密着層14の側面14bと、樹脂層16の側面16bとが厚み方向Dtで面一である状態は、側面接触部15がない状態であり、樹脂層16の側面16bに密着層14が存在しておらず、側面接触部15がない状態である。
【0015】
[積層体の第2~第11の例]
積層体10の構成は、図1に示すものに限定されるものではない。
ここで、図3は本発明の実施形態の積層体の第2の例を模式的に示す平面図であり、図4は本発明の実施形態の積層体の第3の例を模式的に示す平面図であり、図5は本発明の実施形態の積層体の第4の例を模式的に示す平面図であり、図6は本発明の実施形態の積層体の第5の例を模式的に示す平面図であり、図7は本発明の実施形態の積層体の第6の例を模式的に示す平面図であり、図8は本発明の実施形態の積層体の第7の例を模式的に示す平面図であり、図9は本発明の実施形態の積層体の第8の例を模式的に示す平面図である。なお、図3図9において、図1及び図2に示す構成と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。図3図9に示す積層体10は、いずれも図1の積層体10と同様にガラス基板12、密着層14及び樹脂層16は平面視四角形状である。
【0016】
例えば、図3に示すように、樹脂層16の外縁17の全周において、4辺のうち接続された2辺に連続的に側面接触部15を設ける構成でもよい。図4に示すように、樹脂層16の外縁17の全周において、4辺のうち接続された3辺にわたり、連続的に側面接触部15を設ける構成でもよい。3辺のうち、2辺に挟まれた1辺は側面接触部15が全域に設けられ、対向する2辺には側面接触部15が辺全域に設けられていない構成である。
図5に示すように、樹脂層16の外縁17の全周において、1つの角部16d以外に連続的に側面接触部15を設ける構成でもよい。言い換えれば、樹脂層16の外縁17の全周において、4つの角部16d、16e、16f、16gのうち、最大で3つの角部16e、16f、16gに側面接触部15を設ける構成でもよい。1つの角部16dに側面接触部15を設けないことにより、樹脂層16を剥がす際に、テープを貼る等して樹脂層16を剥がしやすい。
【0017】
また、側面接触部15は、樹脂層16の外縁17に沿って連続的に設けることに限定されるものではなく、樹脂層16の外縁17に沿って間隔18をあけて設ける構成でもよい。例えば、図6に示すように、樹脂層16の連続する3辺において、1辺の全域、及び2つある角部16e、16fに側面接触部15を設け、2つの角部16e、16fを接続する辺において、間隔18をあけて側面接触部15を設ける構成でもよい。
図7に示すように、樹脂層16の4つの辺のうち、1辺の全域に側面接触部15を設け、残りの3辺においては中央部付近に側面接触部15を設ける構成でもよい。
図8に示すように、樹脂層16の4つの辺のうち、対向する2辺において、各辺の全域に側面接触部15を設ける構成でもよい。このように側面接触部15を離間して設ける構成でもよい。
図9に示すように、樹脂層16の外縁17の全周において、全ての角部16d、16e、16f、16gに側面接触部15を設け、4つの辺のうち、対向する2辺に間隔18をあけて側面接触部15を設ける構成でもよい。このように側面接触部15を、4つの角部16d、16e、16f、16gに設け、かつ樹脂層16の外縁17の全周において、一部離間して設ける構成でもよい。
【0018】
積層体10は、四角形状に限定されるものではなく、他の形状でもよく、例えば、円形形状でもよい。
図10は本発明の実施形態の積層体の第9の例を模式的に示す平面図であり、図11は本発明の実施形態の積層体の第10の例を模式的に示す平面図であり、図12は本発明の実施形態の積層体の第11の例を模式的に示す平面図である。なお、図10図12において、図1及び図2に示す構成と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図10図12に示す積層体10は、いずれもガラス基板12、密着層14及び樹脂層16が平面視円形形状であり、ガラス基板12が、密着層14及び樹脂層16よりも大きい。
【0019】
図10に示すように円形形状の樹脂層16の外縁17の全周のうち、一部に連続的に側面接触部15に設ける構成でもよい。
図11に示すように円形形状の樹脂層16の外縁17の全周のうち、一部を除いて連続的に側面接触部15に設ける構成でもよい。
図12に示すように円形形状の樹脂層16の外縁17において、対向する円弧部19に、それぞれ側面接触部15を設ける構成でもよい。
上述のように、積層体10においては、側面接触部15は、樹脂層16の外縁17に沿って連続して、又は樹脂層16の外縁17に沿って間隔18をあけて設ける構成とすることができる。
側面接触部15を樹脂層16の外縁17に沿って連続して、又は間隔18をあけて設けた場合、ガラス基板12又は樹脂層16の大きさが類似の積層体について、側面接触部15の連続又は非連続の配置レイアウトにより、積層体の方向又は積層体の品種を区別できる。
また、側面接触部15を樹脂層16の外縁17に沿って間隔18をあけて設けた場合、例えば、側面接触部15において密着層18が存在しているエリアと存在していないエリアの境界は目で見てわかるため、この境界をアライメント基準にしてカメラ撮像等によるアライメント調整ができる。
【0020】
以下、積層体10を構成するガラス基板12、密着層14及び樹脂層16について詳述する。
【0021】
(ガラス基板)
ガラス基板12は、密着層14を支持して補強する部材である。また、ガラス基板12は搬送基板として機能する。
ガラスの種類としては、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
ガラス板として、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(AGC株式会社製商品名「AN100」、及び線膨張係数38×10-7/℃、AGC株式会社製 商品名「AN-Wizus」)が挙げられる。
ガラス板の製造方法は、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法が挙げられる。
ガラス基板12は、フレキシブルでないことが好ましい。そのため、ガラス基板12の厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
一方、ガラス基板12の厚みは、1.0mm以下が好ましい。
【0022】
ガラス基板12は、ガラス基板12の表面12aの法線方向から観察した際の形状は、特に制限されず、四角形でも円形でもよいが、四角形が好ましい。
【0023】
ガラス基板12は、密着層14及び樹脂層16よりも大きく、ガラス基板12の表面12aには密着層14及び樹脂層16が配置されていない周辺領域があり、ガラス基板12の周縁領域の表面12aは露出している。
周縁領域の幅は特に制限されないが、1~30mmが好ましく、3~10mmがより好ましい。周縁領域の幅とは、図1に示すガラス基板12の外周縁から樹脂層16の外縁17までの距離に該当する。
周縁領域の幅が30mm以下であれば、電子デバイス等を形成する際の有効面積がより広くなり、電子デバイスの作製効率が向上する。また、周縁領域の幅が1mm以上であることにより、密着層14上にポリイミド膜を作製する場合に、ポリイミド膜の剥離がより生じにくくなる。
【0024】
(密着層)
密着層14は、その上に配置されるポリイミド膜(図示せず)の剥離を防止するための膜である。
密着層14は、ガラス基板12に密着層14と接触しない周縁領域が残るように、ガラス基板12の表面12a上に配置されている。また、密着層14は、上述の側面接触部15を有する。
【0025】
密着層14は、有機層であっても、無機層であってもよい。
有機層の材質としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。また、いくつかの種類の樹脂を混合して密着層14を構成することもできる。
無機層の材質としては、例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、珪化物、弗化物が挙げられる。酸化物(好ましくは、金属酸化物)、窒化物(好ましくは、金属窒化物)、酸窒化物(好ましくは、金属酸窒化物)としては、例えば、Si、Hf、Zr、Ta、Ti、Y、Nb、Na、Co、Al、Zn、Pb、Mg、Bi、La、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Sr、Sn、In及びBaから選ばれる1種以上の元素の酸化物、窒化物、酸窒化物が挙げられる。
炭化物(好ましくは、金属炭化物)、炭窒化物(好ましくは、金属炭窒化物)としては、例えば、Ti、W、Si、Zr、及び、Nbから選ばれる1種以上の元素の炭化物、炭窒化物、炭酸化物が挙げられる。
珪化物(好ましくは、金属珪化物)としては、例えば、Mo、W、及び、Crから選ばれる1種以上の元素の珪化物が挙げられる。
弗化物(好ましくは、金属弗化物)としては、例えば、Mg、Y、La、及び、Baから選ばれる1種以上の元素の弗化物が挙げられる。
【0026】
密着層14は、プラズマ重合膜であってもよい。
密着層14がプラズマ重合膜である場合、プラズマ重合膜を形成する材料は、CF4、CHF3、C26、C36、C22、CH3F、C48等のフルオロカーボンモノマー、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン等のハイドロカーボンモノマー、水素、SF6等が挙げられる。
【0027】
なかでも、耐熱性や剥離性の点から、密着層14の材質として、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましく、縮合反応型シリコーンより形成されるシリコーン樹脂がより好ましい。
以下では、密着層がシリコーン樹脂層である態様について詳述する。
【0028】
シリコーン樹脂とは、所定のオルガノシロキシ単位を含む樹脂であり、通常、硬化性シリコーンを硬化させて得られる。硬化性シリコーンは、その硬化機構により付加反応型シリコーン、縮合反応型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン及び電子線硬化型シリコーンに分類されるが、いずれも使用できる。なかでも、縮合反応型シリコーンが好ましい。
縮合反応型シリコーンとしては、モノマーである加水分解性オルガノシラン化合物若しくはその混合物(モノマー混合物)、又は、モノマー又はモノマー混合物を部分加水分解縮合反応させて得られる部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)を好適に用いることができる。
この縮合反応型シリコーンを用いて、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)を進行させることにより、シリコーン樹脂を形成することができる。
【0029】
密着層14は、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を用いて形成されることが好ましい。
硬化性組成物は、硬化性シリコーンのほかに、溶媒、白金触媒(硬化性シリコーンとして付加反応型シリコーンを用いる場合)、レベリング剤、金属化合物等を含んでいてもよい。金属化合物に含まれる金属元素としては、例えば、3d遷移金属、4d遷移金属、ランタノイド系金属、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)が挙げられる。金属化合物の含有量は、特に制限されず、適宜調整される。
【0030】
密着層14は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。密着層14のシリコーン樹脂を構成するSi-O-Si結合の一部が切れて、ヒドロキシ基が現れ得る。また、縮合反応型シリコーンを用いる場合には、そのヒドロキシ基が、密着層14のヒドロキシ基になり得る。
【0031】
密着層14のガラス基板12の表面12aの法線方向の厚みは、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましい。一方、密着層14の厚みは、1μm超が好ましく、異物埋め込み性がより優れる点で、6μm以上がより好ましい。上記厚みは、5点以上の任意の位置における密着層14の厚みを接触式膜厚測定装置で測定し、それらを算術平均したものである。
なお、異物埋め込み性に優れるとは、ガラス基板12と密着層14との間に異物があっても、密着層14によって異物が埋め込まれことを意味する。異物の埋め込み性が優れると、密着層に異物による凸部が生じにくく、ポリイミド膜上に電子デバイス用部材を形成した際に、凸部による電子デバイス用部材中での断線等のリスクが抑制される。なお、上記凸部の発生の際に形成される空隙が気泡として観察されるため、気泡の発生の有無により異物埋め込み性を評価できる。
【0032】
ガラス基板12上にポリイミド膜を形成し、高温熱処理を行うと、ポリイミド膜が黄変するため、透明な電子デバイスへの適用が難しくなる。ところが、メカニズムは不明だが、ガラス基板12上に密着層14を形成し、密着層14上にポリイミド膜を形成することで、高温熱処理によるポリイミド膜の黄変を抑制することができる。
【0033】
(樹脂層)
積層体10は、密着層14を覆うように配置された樹脂層16を有する。樹脂層16は保護層として機能するものであり、保護フィルムとも呼ばれる。
樹脂層16は後述するポリイミドワニスが密着層14上に塗布されるまで、例えば、積層体10の搬送時において、密着層14の表面を保護する。このため、樹脂層16は、取り扱い時に剥がれにくく、樹脂層を剥離する処理の際には剥離しやすい必要がある。
【0034】
樹脂層16を構成する材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリウレタン樹脂が挙げられる。なかでも、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0035】
樹脂層16の厚みは、外部から受けた力の影響を低減するために、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。樹脂層16の厚みの上限値としては、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0036】
樹脂層16は、密着層14側の表面に、さらに第2密着層を有していてもよい。すなわち、密着層14と樹脂層16との間に、第2密着層を有する構成でもよい。
第2密着層としては、公知の粘着層を用いることができる。粘着層を構成する粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
また、第2密着層は樹脂で構成されていてもよく、樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレンエラストマーが挙げられる。
樹脂層16の表面粗さ(Ra)は、樹脂層16を剥離した際の剥離力が低減するため、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、15nm以下がさらに好ましい。また、Raは、樹脂層16と密着層が密着した状態を維持できるため、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。表面粗さ(Ra)は、三菱ケミカルシステム株式会社製の非接触表面・層断面形状計測システム「Vertscan R3300-lite」を用いて測定する。
【0037】
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法は、樹脂層16と密着層14とを有する密着層付き樹脂層(図示せず)とガラス基板12とを、密着層14とガラス基板12とが対向するように、貼合する工程1と、工程1で得られた積層基材に対して、密着層14の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2とを有する。
工程2の加熱処理を施すことにより、上述の側面接触部15を有する密着層14が形成される。
密着層14は、例えば、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を塗布して、形成される塗膜に加熱処理を施して形成される。塗膜の加熱処理の加熱温度としては、50~200℃が好ましく、加熱時間としては5~20分間が好ましい。
【0038】
上記のように、工程2において、積層基材に対して、密着層14の軟化点以上の温度で加熱処理を施すことにより、側面接触部15を形成できる。密着層14の軟化点以上の温度が、密着層14の這い上がり開始温度である。
密着層14の軟化点とは、保護フィルムに形成した密着層を削り出し、『JIS(Japanese Industrial Standards) K 5601-2-2_軟化点の測定方法』で実施して得られた値である。密着層14がシリコーン樹脂である場合、軟化点の温度は80℃である。
側面接触部15の配置形態及び設ける範囲は、上述のように様々である。例えば、工程2における加熱処理の際の加熱範囲を調整することにより、側面接触部15の配置形態及び設ける範囲を制御できる。
この場合、例えば、上述の加熱処理を施す工程2は、ガラス基板12の表面12aの法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層16の外縁17において、密着層14の軟化点以上の温度に加熱する領域と、密着層14の軟化点未満の温度に加熱する領域とに分けて加熱処理を施す。密着層14の軟化点以上の温度に加熱する領域は、連続して設けられても、間隔をあけて設けられてもよい。密着層14の軟化点以上の温度に加熱する領域を変えることにより、上述の図1及び図3~12に示す側面接触部15の配置形態にできる。
密着層14の軟化点以上の温度に加熱する領域と、密着層14の軟化点未満の温度に加熱する領域とは、例えば、後述のように断熱材又は冷却部材を配置することにより分けることができる。
【0039】
例えば、加熱プレート(図示せず)を用いて側面接触部15を形成することもできる。この場合、上述の加熱処理を施す工程2は、ガラス基板12の表面12aの法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層16の外縁17の少なくとも一部を、加熱プレートの縁から突出させて、積層基材を加熱プレート上に配置する配置工程を含む。樹脂層16の外縁17のうち、突出した領域は、密着層14の軟化点以上の温度で加熱されない領域となる。
配置工程の後に、加熱プレートにより、積層基材に対して密着層14の軟化点以上の温度で加熱処理を施す。これにより、樹脂層16の外縁17のうち、加熱プレートの縁から突出した領域には側面接触部15が形成されず、加熱プレート上に配置されていた樹脂層16の外縁17に側面接触部15が形成される。加熱プレートには、例えば、ホットプレートが用いられる。
また、上述の加熱処理を施す工程2は、ガラス基板12の表面12aの法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層16の外縁17において、密着層14の軟化点以上の温度に加熱する領域と、密着層14の軟化点未満の温度に加熱する領域とに分け、密着層14の軟化点以上の温度に加熱する領域に、温風を当てるか又は光を照射して加熱処理を施すこともできる。
上述のように密着層14の側面接触部15を形成する領域を樹脂層16側から選択的に、温風を当てるか又は光を照射して加熱して、側面接触部15を形成することもできる。これにより、上述の図1及び図3~12に示す側面接触部15の配置形態にできる。温風には、例えば、ドライヤー、又は熱風ヒータ等の温風機が用いられ、軟化点以上の温度の温風を当てて密着層14を加熱する。また、光の照射にはランプヒーター、又はハロゲンランプが用いられ、光により、密着層14を軟化点以上の温度に加熱する。
【0040】
また、上述の加熱処理を施す工程2は、ガラス基板12の表面12aの法線方向から積層基材を観察した際に樹脂層16の外縁17に断熱材(図示せず)又は冷却部材(図示せず)を配置する配置工程を含み、配置工程の後に、積層基材に対して、密着層14の軟化点以上の温度で加熱処理を施すことが好ましい。
具体的には、工程2において、樹脂層16の外縁17において側面接触部15を存在させたくない領域に、断熱材又は冷却部材を設置する。この状態で、上述の加熱処理を実施する。これにより、樹脂層16の外縁の外周において、断熱材又は冷却部材が配置された領域では密着層14は染み出すことなく、側面接触部15が形成されない。断熱材又は冷却部材の配置パターンを変えることにより、上述の図1及び図3~12に示す側面接触部15の配置形態にできる。
【0041】
断熱材は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリカクロス、及びアルミナファイバーを用いることができる。
断熱材は、密着層14への熱の伝導を抑制して、密着層14の側面接触部15を形成させないようにするためのものである。このため、断熱材は、加熱源と密着層14との間に配置することが好ましい。例えば、積層基材をガラス基板12側から加熱する場合には、ガラス基板12の表面12aの反対の面側において、樹脂層16の外縁17に相当する位置に断熱材を配置する。一方、樹脂層16側から加熱する場合には、樹脂層16の表面16a側において、樹脂層16の外縁17に相当する位置に断熱材を配置する。
上述の断熱材を用いた方法と同様に、冷却部材を用いた場合でも、密着層14への熱の伝導を抑制して、密着層14の側面接触部15を形成させないようにすることができる。
冷却部材として、例えば、ペルチェ素子、水冷式の冷却プレート、及び空冷式の冷却プレートを用いることができる。
【0042】
上述のことから、熱処理を施す工程2は、積層基材の樹脂層の外縁に断熱材又は冷却部材を配置する配置工程を含むことが好ましい。断熱材又は冷却部材の配置工程の後に、積層基材に対して、密着層14の軟化点以上の温度で加熱処理を施すことが好ましい。
例えば、側面接触部15を、樹脂層16の外縁17の全周の25~99%の範囲に設ける場合、配置工程では、樹脂層16の外縁17の全周の1~75%の範囲に、断熱材又は冷却部材を配置する。また、例えば、上述の密着層14の軟化点未満の温度に加熱する領域は、樹脂層16の外縁17の全周の1~75%の範囲である。
樹脂層16が四角形状である場合、側面接触部15が樹脂層16の角部16dの少なくとも1つには位置しないようにする場合、例えば、配置工程では、断熱材又は冷却部材を樹脂層の4つの角部のうち、最大で3つの角部に設ける。
側面接触部15を、樹脂層16の外縁17に沿って連続して、又は樹脂層16の外縁17に沿って間隔をあけて設ける場合、配置工程では、断熱材又は冷却部材を、樹脂層16の外縁17に沿って連続して、又は樹脂層16の外縁17に沿って間隔をあけて配置することが好ましい。
【0043】
上述のように貼合する工程1の後、工程1で得られた積層基材に対して、密着層14の軟化点以上の温度で加熱処理を施す工程2とを有するが、工程2は、第1の加熱処理と第2の加熱処理とを有する。
第1の加熱処理は、例えば、密着層14の軟化点未満の温度の条件で、オートクレーブを用いて加熱及び加圧する加熱処理である。第1の加熱処理では、ガラス基板12と密着層14との界面の密着力が高められる。第2の加熱処理は、例えば、加熱プレートを用いて、密着層の軟化点以上で加熱する加熱処理である。第2の加熱処理により、樹脂層16の側面16bに密着層14を這い上がらせて側面接触部15を形成する。上述の第2の加熱処理の工程が、上述の側面接触部15を形成する工程であり、加熱処理を施す工程2である。
なお、第1の加熱処理の際の加熱温度としては、樹脂層16の軟化点未満の温度であれば、特に限定されるものではない。加熱時間としては、10~60分間が好ましく、20~40分間がより好ましい。
加圧処理の際の圧力としては、0.5~1.5MPaが好ましく、0.8~1.0MPaがより好ましい。
【0044】
また、密着層14の軟化点以下の温度条件であれば、加熱処理は、複数回行ってもよい。加熱処理を複数回実施する場合、それぞれの加熱条件は変更してもよい。
また、複数回の加熱処理を実施する場合、加圧処理の有無を変えてもよい。例えば、2回の加熱処理を実施する場合、1回目の加熱処理では加圧処理を合わせて実施し、2回目の加熱処理では加圧処理を実施しない形であってもよい。
なお、転写フィルムを用いて積層体を製造する際、仮支持体を剥離した後、上記加熱処理を実施してもよいし、仮支持体が密着層上に配置された状態のまま加熱処理を実施してもよい。また、複数回の加熱処理を実施する場合、各加熱処理の間で仮支持体を剥離してもよい。例えば、1回目の加熱処理を実施した後、仮支持体を剥離して、2回目の加熱処理を実施してもよい。
【0045】
積層体において、樹脂層16を剥離した後、密着層の表面に表面処理を施してもよい。
表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理が挙げられ、コロナ処理が好ましい。
後述するように密着層の上にポリイミド膜を形成する場合、密着層の表面粗さ(Ra)は、ポリイミド膜の表面粗さが低減されるため、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、15nm以下がさらに好ましい。また、Raは、ポリイミド膜と密着層が密着した状態を維持できるため、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。
【0046】
<側面接触部の除去方法>
樹脂層16は、例えば、密着層14上にポリイミド膜を形成する際には剥がされる。樹脂層16を剥がす場合、側面接触部15を取り除く必要がある。側面接触部15の除去方法は、特に限定されるものではないが、図13図18に示す方法が例示される。
図13は側面接触部の除去方法の第1の例を模式的に示す断面図であり、図14は側面接触部の除去方法の第2の例を模式的に示す断面図であり、図15は側面接触部の除去方法の第3の例を模式的に示す断面図であり、図16は側面接触部の除去方法の第4の例を模式的に示す断面図であり、図17は側面接触部の除去方法の第5の例を模式的に示す断面図であり、図18は側面接触部の除去方法の第5の例を模式的に示す断面図である。なお、図13図18において、図1及び図2に示す構成と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0047】
側面接触部15の除去方法の第1の例は、密着層14を溶解する溶剤を用いて、図13に示す側面接触部15を溶解して除去する方法である。溶解以外に、側面接触部15をテープを用いて物理的に除去してもよく、ヤスリ等を用いて側面接触部15を削って除去してもよい。
図14に示す側面接触部15の除去方法の第2の例は、切断線CLで、樹脂層16及び密着層14を切断して、側面接触部15を除去する方法である。切断線CLは、樹脂層16の側面16bよりも内側である。切断線CLで切断することにより、切断により形成される樹脂層16の新たな側面には側面接触部15がない状態となる。
図15に示す側面接触部15の除去方法の第3の例は、樹脂層16の側面16bに沿った切断線CLで側面接触部15を、樹脂層16側から切断して除去する方法である。
図16に示す側面接触部15の除去方法の第4の例は、予め密着層14の側面14bよりも樹脂層16をはみ出して貼合しておき、軟化点以下の温度での加熱処理工程による密着層14の染み出しで、密着層14の側面14bを延出させて樹脂層16のはみ出した部分を密着層14で接合する方法である。
図17に示す側面接触部15の除去方法の第5の例は、樹脂層16の側面16bに沿った切断線CLで側面接触部15を、ガラス基板12側から切断して除去する方法である。この場合、図18に示すように、切断後のガラス基板12の側面12b、密着層14の側面14b及び樹脂層16の側面16bが一致した状態となる。
上述のようにして、密着層14の側面接触部15を取り除いた後に、例えば、樹脂層16はテープを用いて剥がされる。
【0048】
<積層基板及びその製造方法>
上述した積層体10を用いて、ガラス基板12と密着層14とポリイミド膜(図示せず)とを有する積層基板を製造することができる。
具体的には、積層基板の製造方法としては、樹脂層16を剥がし、ガラス基板12の密着層14側に、ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを塗布して、周縁領域上及び密着層14上にポリイミド膜を形成して、ガラス基板12と、密着層14と、ポリイミド膜とをこの順に有する積層基板を形成する方法が挙げられる。
積層基板において、密着層上のポリイミド膜上に、電子デバイスを作製した後、ポリイミド膜を物理的な力でガラス基板から剥離することができる。
以下では、積層基板の製造方法について詳述し、その後、ポリイミド膜の構成について詳述する。
【0049】
(ポリイミドワニス)
ポリイミドワニスは、ポリイミド又はその前駆体及び溶媒を含む。
ポリイミドは、通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重縮合し、イミド化することにより得られる。ポリイミドとしては、溶剤可溶性を有することが好ましい。
用いるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。用いるジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミンが挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物があり、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’-オキシジアミノベンゼン(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼンが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等の非環式脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の環式脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0050】
ポリイミドの前駆体とは、イミド化する前の状態であるポリアミド酸(いわゆる、ポリアミック酸及び/又はポリアミック酸エステル)を意味する。
【0051】
溶媒は、ポリイミド又はその前駆体を溶解する溶媒であればよく、例えば、フェノール系溶媒(例えば、m-クレゾール)、アミド系溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、ラクトン系溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-クロトノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、δ-ヘキサノラクトン)、スルホキシド系溶媒(例えば、N,N-ジメチルスルホキシド)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル系溶媒(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル)が挙げられる。
【0052】
(手順)
積層体10の密着層14側にポリイミドワニスを塗布する方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法が挙げられる。
【0053】
塗布後、必要に応じて、加熱処理を実施してもよい。
加熱処理の条件として、温度条件は、50~500℃が好ましく、50~450℃がより好ましい。加熱時間は、10~300分間が好ましく、20~200分間がより好ましい。
また、加熱処理は、複数回行ってもよい。加熱処理を複数回実施する場合、それぞれの加熱条件は変更してもよい。
【0054】
ポリイミド膜の厚みは、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。柔軟性の点からは、1mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
ポリイミド膜上に電子デバイスの高精細な配線等を形成するために、ポリイミド膜の表面は平滑であることが好ましい。具体的には、ポリイミド膜の表面粗度Raは、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
ポリイミド膜の熱膨張係数は、ガラス基板12との熱膨張係数差が小さい方が加熱後又は冷却後の積層基板の反りを抑制できるため好ましい。具体的には、ポリイミド膜とガラス基板12との熱膨張係数の差は、0~90×10-6/℃が好ましく、0~30×10-6/℃がより好ましい。
ポリイミド膜の面積は、特に制限されないが、電子デバイスの生産性の点から、300cm以上が好ましい。
ポリイミド膜は、有色であっても、無色透明であってもよい。
【0055】
積層基板は、種々の用途に使用でき、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウエハ、受信センサーパネル等の電子部品を製造する用途が挙げられる。これらの用途では、積層体が大気雰囲気下にて、高温条件(例えば、450℃以上)で曝される(例えば、20分以上)場合もある。
表示装置用パネルは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、マイクロLEDディスプレイパネル、MEMSシャッターパネル等を含む。
受信センサーパネルは、電磁波受信センサーパネル、X線受光センサーパネル、紫外線受光センサーパネル、可視光線受光センサーパネル、赤外線受光センサーパネル等を含む。受信センサーパネルに用いる基板は、樹脂等の補強シート等によって補強されていてもよい。
【実施例
【0056】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0057】
以下では、ガラス基板に、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(線膨張係数38×10-7/℃、AGC株式会社製 商品名「AN-Wizus」)を使用した。
以下、例2~例7、例9、例10及び例12~例14は実施例であり、例1、例8、例11及び例15は比較例である。
【0058】
<例1、例11>
(硬化性シリコーンの調製)
1Lのフラスコに、トリエトキシメチルシラン(179g)、トルエン(300g)、酢酸(5g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、60℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。洗浄された反応粗液にクロロトリメチルシラン(70g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、50℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。洗浄された反応粗液からトルエンを減圧留去し、スラリー状態にした後、真空乾燥機で終夜乾燥することにより、白色のオルガノポリシロキサン化合物である硬化性シリコーン1を得た。硬化性シリコーン1は、T単位の個数:M単位の個数=87:13(モル比)であった。硬化性シリコーン1は、M単位、T単位のモル比が13:87、有機基は全てメチル基、平均OX基数が0.02であった。平均OX基数は、Si原子1個に平均で何個のOX基(Xは水素原子又は炭化水素基)が結合しているかを表した数値である。
【0059】
(硬化性組成物の調製)
硬化性シリコーン(20g)と、金属化合物としてオクチル酸ジルコニウム化合物(「オルガチックスZC-200」、マツモトファインケミカル株式会社製)(0.16g)と、2-エチルヘキサン酸セリウム(III)(Alfa Aesar社製、金属含有率12%)(0.17g)、溶媒としてIsoper G(東燃ゼネラル石油株式会社製)(19.7g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物1を得た。
【0060】
(ガラス板とシリコーン樹脂層からなる積層体の作製)
離型フィルムとしてPETフィルム(東洋紡株式会社製、エステル(登録商標)フィルム HPE、厚み25μmと50μm)を準備し、このフィルム表面上に調製した硬化性組成物1を塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、シリコーン樹脂層(密着層)を形成した。塗布したシリコーン樹脂層の上に保護フィルム(樹脂層)として、PETフィルム(東洋紡株式会社製、エステル(登録商標)フィルム HPE、厚み50μm)を貼合し、離型フィルムのPETフィルム側からカッターを挿入し、サイズ912×722mmに切断した。
また、円形形状のフィルムは離型フィルムのPETフィルム側からコンパスカッター(オルファ株式会社製、コンパスカッター 57B)を挿入し、直径196mmに切断した。
【0061】
続いて、水系ガラス洗浄剤(株式会社パーカーコーポレーション製「PK―LCG213」)で洗浄後、純水で洗浄した920×730mm、厚み0.5mmのガラス板「AN-Wizus」(支持基材)を用意した。その後、離型フィルムのPETフィルムと、シリコーン樹脂層と、保護フィルムのPETフィルムとの順で積層されたフィルム(サイズ:912×722mm)から保護フィルムのPETフィルムを剥がし、離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層のフィルムのシリコーン樹脂層側をガラス板に貼合し、ガラス板、シリコーン樹脂層、及び離型フィルムのPETフィルム(樹脂層)がこの順で配置された矩形形状の積層基材を作製した。
また、円形形状の積層体は水系ガラス洗浄剤(株式会社パーカーコーポレーション製「PK―LCG213」)で洗浄後、純水で洗浄した直径200mm、厚み0.5mmのガラス板「AN-Wizus」を用意した。その後、離型フィルムのPETフィルムと、シリコーン樹脂層と、保護フィルムのPETフィルムとの順で積層されたフィルム(サイズ:直径196mm)から保護フィルムのPETフィルムを剥がし、離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層のフィルムのシリコーン樹脂層側をガラス板に貼合し、ガラス板、シリコーン樹脂層、及び離型フィルムのPETフィルムがこの順で配置された円形形状の積層基材を作製した。
次に、得られた矩形形状の積層基材、及び円形形状の積層基材を、それぞれオートクレーブ内に配置して、60℃、1MPaの条件にて30分間加熱した。この加熱処理工程により、矩形形状の積層体、及び円形形状の積層体を得た。
【0062】
(積層体の断面SEM観察1)
ガラス板、シリコーン樹脂層、及びPETフィルムがこの順で配置された積層基材を小片に切断し、積層基材の切断面をFE-SEM(電界放出型走査電子顕微鏡、日本電子(JEOL)株式会社製JSM-7800F Prime)で観察し、PETフィルムの側面の厚み方向のシリコーン樹脂層の側面接触幅を測長した。
【0063】
<例2~例10、例12~例15>
例1と同様に矩形形状の積層体を作製した後、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたい位置にはホットプレート(加熱プレート)の上にガラス板、シリコーン樹脂層及びPETフィルムからなる積層体を直接設置し、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたくない位置にはホットプレートと積層体の間に断熱材(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、厚み1mm)を設置し、積層体をホットプレートの上で90℃、5分間加熱した。ホットプレート加熱中の断熱材上の積層体表面温度は30~80℃で断熱材がない積層体表面温度よりも低くなっていた。ホットプレートを用いた加熱後の積層体は保管容器であるカセットに手で収納した。
例2~例10及び例12~例15では、側面接触部の配置形態、側面接触部の配置範囲、及び側面接触部を配置する角部の数を、後述する表1に示すように調整した。
【0064】
<例16~例18>
例1と同様に矩形形状の積層体を作製した後、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたい位置にはホットプレート(加熱プレート)の上にガラス板、シリコーン樹脂層及びPETフィルムからなる積層体を直接設置し、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたくない位置には冷却材として、ペルチェ素子を設置し、積層体をホットプレートの上で90℃、5分間加熱した。ホットプレート加熱中の冷却材上の積層体表面温度は20~50℃で冷却材がない積層体表面温度よりも低くなっていた。冷却材を用いた加熱後の積層体は保管容器であるカセットに手で収納した。
例16~例18では、側面接触部の配置形態、側面接触部の配置範囲、及び側面接触部を配置する角部の数を、後述する表1に示すように調整した。
【0065】
<例19~例22>
例1と同様に矩形形状の積層体を作製した後、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたい位置に積層体のガラス板側から、温風機を用いて、温風を当て、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたくない位置には温風を当てないよう設置し、シリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたい位置の積層体表面温度が90℃になるよう温風機と積層体の位置とを維持したまま、5分間加熱した。温風を当てていない積層体表面温度は30~80℃で温風が当たっている積層体表面温度よりも低くなっていた。温風加熱後積層体は保管容器であるカセットに手で収納した。
例19~例22では、側面接触部の配置形態、側面接触部の配置範囲、及び側面接触部を配置する角部の数を、後述する表1に示すように調整した。
また、温風機には、熱風ヒータを用いた。
【0066】
<例23~例25>
例1と同様に矩形形状の積層体を作製した後、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたい位置に積層体のガラス板側から赤外線ヒータを当て、PETフィルムの側面にシリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたくない位置には赤外線ヒータを当てないよう設置し、シリコーン樹脂層の側面接触部を存在させたい位置の積層体表面温度が90℃になるように、赤外線ヒータと積層体の位置とを維持したまま、5分間加熱した。赤外線ヒータを当てていない積層体表面温度は30~80℃で赤外線ヒータが当たっている積層体表面温度よりも低くなっていた。温風加熱後積層体は保管容器であるカセットに手で収納した。
例23~例25では、側面接触部の配置形態、側面接触部の配置範囲、及び側面接触部を配置する角部の数を、後述する表1に示すように調整した。
また、赤外線ヒータには、ハロゲンランプを用いた。
【0067】
<例6、例9、例13>
(積層体の断面SEM観察2)
ガラス板、シリコーン樹脂層、及びPETフィルムがこの順で配置された積層基材を、ホットプレートで90℃、5分間加熱した範囲を小片に切断し、積層基材の切断面をFE-SEM(JEOL製JSM-7800F Prime)で観察し、PETフィルムの側面の厚み方向のシリコーン樹脂層の側面接触幅を測長した。
【0068】
例1~10及び例16~25のPETフィルム(樹脂層)は、短辺と長辺とを含む4つの辺を有する矩形形状であり、サイズは912×722mmである。
例1は、側面接触部がない構成である。
例2、3、9、16、19、23は、側面接触部が図3に示すように2辺にある構成である。図3は2辺の全域に側面接触部15を設けているが、例2、3、9、16、19、23は、1つの角から延びる側面接触部15の長さを表1に示す比率となるように調整した。
例4は、側面接触部が図4に示す構成である。例5は、側面接触部が図6に示す構成である。例6、10、17、20、24は、側面接触部が図5に示す構成である。例7は、側面接触部が図9に示す構成である。例8、18、22、25は、4つの辺全ての範囲に側面接触部が設けられた構成である。
例11~15のPETフィルム(樹脂層)は、円形形状であり、直径が196mmである。
例11は、側面接触部がない構成である。
例12~14は、全周のうち、特定の範囲に連続して側面接触部が設けられた構成である。例12、13は、側面接触部が図10に示す構成である。例14は、側面接触部が図11に示す構成である。例15は、PETフィルム(樹脂層)の外縁の全周に側面接触部が設けられた構成である。
【0069】
表1中、「樹脂層の厚み(μm)」欄は、PETフィルムの厚みを表す。
表1中、「加熱工程の有無」欄は、シリコーン樹脂層の軟化点温度以上の加熱処理の有無を表す。
表1中、「側面接触部の配置形態」欄は、PETフィルムの外縁の全周に対して側面接触部がどのように配置されているかを表す。連続とは、途切れることなく側面接触部が連続して配置されている状態を表す。間隔ありとは、側面接触部がPETフィルムの外縁に対して、少なくとも一部が途切れて配置されている状態を表す。
表1中、「側面接触部の配置範囲(mm)」及び「側面接触部の配置範囲の比率(%)」欄は、PETフィルムの外縁に設けられた側面接触部の長さの合計と、PETフィルムの外縁の全周に対する側面接触部が設けられた長さの比率を表す。
表1中、「側面接触部が配置された角部の数」欄は、PETフィルムの角部に配置されている側面接触部の数を表す。
表1中、「樹脂層の厚み方向の長さに対する側面接触部の長さ(mm)」及び「側面接触部の配置範囲の比率(%)」欄は、PETフィルムの厚み方向の長さ対する側面接触部の這い上がりの長さと比率を表す。
【0070】
<デラミネーション評価>
ガラス板、シリコーン樹脂層(密着層)、及びPETフィルム(樹脂層)からなる積層体を10枚準備し、枚葉洗浄機に積層体を、ガラス基板の搬送方向に直交する垂線を基準として、30度の角度でエアナイフが配置されるように、1枚ずつ手で投入して、ロールブラシ(ロールブラシ先端がPETフィルム表面に接触する押込量)で積層体の表面を洗浄し、エアナイフ(圧縮エアー供給圧力0.15MPa)で乾燥させ、カセットに収納した。カセットから手で積層体のガラス基板のエッジを持って取り出し、PETフィルムの外周部を目視で確認し、シリコーン樹脂層とPETフィルムとの界面のデラミネーションの有無を、以下の基準に従って評価した。
A:10枚全てでデラミネーションが視認されない。
B:10枚のうち、1枚でもデラミネーションが視認される。
C:10枚全てでデラミネーションが視認される。
【0071】
<積層体のPETフィルムの剥離評価>
ガラス板、シリコーン樹脂層(密着層)、及びPETフィルム(樹脂層)からなる積層体を10枚準備し、1枚ずつテーブルの上に置き、積層体が矩形形状の場合にはPETフィルムの角に、積層体が円形形状の場合にはPETフィルムの外周部にテープ(3M社製、メンディングテープ810-1-18D)を貼り付けて、ピール角度180度でPETフィルムを引っ張りながらテープ剥離した。この時、シリコーン樹脂層とPETフィルムとの界面で剥離可能について、以下の基準に従って評価した。
A:10枚全てで剥離ができる。
B:10枚のうち、1枚でも剥離ができない。
C:10枚全てで剥離ができない。
【0072】
<総合評価>
デラミネーション評価及び剥離評価のうち、悪い評価を総合評価とした。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、本発明の積層体は、所望の効果を示した。
デラミネーション評価では、例1及び例11と例2~10、及び例12~25との比較より、PETフィルム(樹脂層)の外縁の全周の一部から、PETフィルムの側面部にシリコーン樹脂(側面接触部)が存在していれば、ハンドリングや枚葉洗浄でデラミネーションが起こりにくいことが分かった。
また、例2、例9、例12、例16、例19及び例23と例3~8、例10、例13~15、例17~18、例20~21及び例24~25との比較により、PETフィルムの外縁の全周の25%以上の範囲で、PETフィルムの側面部にシリコーン樹脂(側面接触部)が存在していれば、ハンドリングや枚葉洗浄でデラミネーションが、より起こりにくいことが分かった。
PETフィルムの剥離評価では、例1~例7及び例9~例14と、例8、例15、例18、例22及び例25との比較より、PETフィルム(樹脂層)の外縁の全周の全ての範囲に、PETフィルムの側面部にシリコーン樹脂(側面接触部)が存在していると、PETフィルム(樹脂層)とシリコーン樹脂層(密着層)とが剥離できないことが分かった。
また、例1~6及び例19~20と例7及び例21との比較により、PETフィルム(樹脂層)の角部の少なくとも1つに、PETフィルムの側面部にシリコーン樹脂(側面接触部)が存在しなければ、PETフィルム(樹脂層)がより剥がしやすいことが分かった。
また、例1~6及び例8と例9及び例10との比較により、PETフィルムの側面部に、PETフィルムの厚み方向の70%以下の領域でシリコーン樹脂(側面接触部)が存在している場合にはPETフィルム(樹脂層)がより剥がしやすいことが分かった。
【0075】
例2~例10、及び例12~例15では、積層体をホットプレート(加熱プレート)の上で温度90℃、5分間加熱したが、温度100℃、5分間、温度110℃、5分間、及び温度120℃、5分間でも温度90℃、5分間と同じ結果が得られたことを確認した。
例16~例18では、積層体をホットプレート(加熱プレート)の上で温度90℃、5分間加熱したが、温度100℃、5分間、温度110℃、5分間、及び温度120℃、5分間でも温度90℃、5分間と同じ結果が得られたことを確認した。
例19~例22では、積層体表面温度が温度90℃になるよう温風機と積層体の位置とを維持したまま、5分間加熱したが、温度90℃、7分間、温度100℃、5分間及び温度100℃、7分間でも、温度90℃、5分間と同じ結果が得られたことを確認した。
例23~例25では、積層体表面温度が温度90℃になるように、赤外線ヒータと積層体の位置とを維持したまま、5分間加熱したが、温度90℃、7分間、温度100℃、5分間及び温度100℃、7分間でも、温度90℃、5分間と同じ結果が得られたことを確認した。
【符号の説明】
【0076】
10 積層体
12 ガラス基板
12a 表面
12b 側面
14 密着層
14a 表面
14b 側面
15 側面接触部
15a 延出部分
15b 這い上がり部分
16 樹脂層
16a 表面
16b 側面
16d、16e、16f、16g 角部
17 外縁
19 円弧部
CL 切断線
Dt 厚み方向

【要約】
【課題】取り扱い時に樹脂層が剥がれにくく、樹脂層を剥離する処理の際には樹脂層を剥離できる、積層体、及び積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板と、密着層と、樹脂層とをこの順に有する積層体であって、密着層が、ガラス基板の表面の法線方向から積層体を観察した際に樹脂層の外縁の全周の一部から、外縁よりも外側に位置し、樹脂層の側面の少なくとも一部と接している側面接触部を有する、積層体である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図18