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特許7092248硫化物系固体電解質及びその製造方法、固体電解質層並びにリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】硫化物系固体電解質及びその製造方法、固体電解質層並びにリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/10 20060101AFI20220621BHJP
   C01B 25/14 20060101ALI20220621BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220621BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220621BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220621BHJP
【FI】
H01B1/10
C01B25/14
H01B13/00 Z
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021162229
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2021-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直樹
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176895(WO,A1)
【文献】特開2019-199394(JP,A)
【文献】特開2018-097954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/10
C01B 25/14
H01B 13/00
H01M 10/0562
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li、P及びHaを含む硫化物系固体電解質であって、前記Haはハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素であり、X線光電子分光法により測定される、表面からの深さ5nmにおける硫黄(S)の元素比率をS5nm、表面からの深さ100nmにおける硫黄(S)の元素比率をS100nmとして、S5nm/S100nmの値が0.6以下であり、X線光電子分光法により測定される表面からの深さ5nmにおける前記Haの元素比率をHa 5nm 、表面からの深さ100nmにおける前記Haの元素比率をHa 100nm として、Ha 5nm /Ha 100nm の値が0.9よりも大きい、硫化物系固体電解質。
【請求項2】
比表面積が3m/g以上である、請求項1に記載の硫化物系固体電解質。
【請求項3】
結晶相を含む、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質。
【請求項4】
アルジロダイト型の結晶を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質の製造方法であって、硫化物系固体電解質の表面を、Sを可溶な有機溶媒に曝すことを含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、極性率が0.1~4.0である、請求項に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質の製造方法であって、硫化物系固体電解質の表面を酸化することを含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質の製造方法であって、硫化物系固体電解質の表面を水分に曝すことを含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項9】
前記硫化物系固体電解質の表面を酸化すること又は水分に曝すことの前に、硫化物系固体電解質を200℃以上で加熱処理することをさらに含む、請求項7又は8に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質を含む固体電解質層。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化物系固体電解質及びその製造方法、固体電解質層並びにリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に広く用いられている。従来、リチウムイオン二次電池においては液体の電解質が使用されてきた。一方で、安全性の向上や高速充放電、ケースの小型化等が期待できる点から、近年、固体電解質をリチウムイオン二次電池の電解質として用いる全固体型リチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
全固体型リチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質として、硫化物系固体電解質が挙げられる。例えば、特許文献1にはアルジロダイト型の結晶構造を有する硫化物系固体電解質が開示されている。特許文献1に開示された硫化物系固体電解質は、立方晶で空間群F-43mに属する結晶構造を有し、組成式:Li7-xPS6-xHa(HaはCl若しくはBr)(x=0.2~1.8)で表される化合物を含有し、かつL表色系の明度L値が60.0以上である。これは、リチウムイオン伝導性を高め、電子伝導性を低くすることにより、充放電効率やサイクル特性を高めることを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/012042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、硫化物系固体電解質は、酸素が共存する環境下において着火源があると火が点きやすい。そのため、例えばリチウムイオン二次電池が破損して、硫化物系固体電解質が大気雰囲気下に置かれた状態では、着火源が近づいてくると硫化物系固体電解質に着火して燃え広がる恐れがあった。また、硫化物系固体電解質やそれを用いたリチウムイオン二次電池の製造工程等において、例えばドライエアー雰囲気下に置かれていても、硫化物系固体電解質に着火源が近づいてくると、着火して燃え広がる恐れがあった。
【0006】
さらには、硫化物系固体電解質は着火した場合、燃え広がるだけでなく、有毒なSOガスやHSガスが発生してしまうという危険性もあった。かかる事情から、着火源が近づいてきた際に着火しにくい硫化物系固体電解質が求められている。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、着火しにくく、より安全な硫化物系固体電解質及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、硫化物系固体電解質の表面に硫黄(S)が多く存在する場合、着火しやすいことを見出した。具体的には、硫化物系固体電解質の表面に存在するS-S結合が着火の原因となることがわかった。S-S結合は硫黄単体成分に由来するものであるが、硫化物系固体電解質の組成や結晶構造等によって、表面での硫黄の構造がS2-である場合も、着火源が接近した際、加熱によりS-S結合を形成するため、結果的に着火しやすいことがわかった。
【0009】
そこで、本発明者らは、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-を欠乏させることで、硫化物系固体電解質が着火しにくくなり、これにより、安全性に優れた硫化物系固体電解質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)~(14)に関する。
(1)ドライエアー雰囲気下において、以下の試験方法で着火試験を行った際に、着火時間が5秒以上または不着火である、硫化物系固体電解質。
(試験方法)
温度20±5℃、露点-30℃で大気圧下の、熱線式風速計で測定した際の風速が0.05m/s以下である試験場所において、下記1~7を実施する。
1.3cm程度の硫化物系固体電解質を厚さ10mm以上の無機質断熱板の上に置く。
2.ガスバーナーの拡散炎の長さを上部に向けた状態で70mmとなるように調整する。
3.炎と硫化物系固体電解質の接触面積が1~2cm、接触角度が約30°となるように接触させる。
4.炎を硫化物系固体電解質に接触させてから10秒後に炎を離す。
5.炎を硫化物系固体電解質に接触させてから硫化物系固体電解質に着火するまでの時間を測定し、硫化物系固体電解質が燃焼を継続するか否かを観察する。10秒間接触させて着火しない場合は不着火とする。
6.1~5を5回繰り返す。
7.燃焼を継続した場合に測定された着火するまでの時間のうち、最も短いものを着火時間とする。
(2)X線光電子分光法により測定される、表面からの深さ5nmにおける硫黄(S)の元素比率をS5nm、表面からの深さ100nmにおける硫黄(S)の元素比率をS100nmとして、S5nm/S100nmの値が0.6以下である、前記(1)に記載の硫化物系固体電解質。
(3)Li、P及びSを含む硫化物系固体電解質であって、X線光電子分光法により測定される、表面からの深さ5nmにおける硫黄(S)の元素比率をS5nm、表面からの深さ100nmにおける硫黄(S)の元素比率をS100nmとして、S5nm/S100nmの値が0.6以下である、硫化物系固体電解質。
(4)Li、P、S及びHaを含み、前記Haはハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素である、前記(1)~(3)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質。
(5)X線光電子分光法により測定される表面からの深さ5nmにおける前記Haの元素比率をHa5nm、表面からの深さ100nmにおける前記Haの元素比率をHa100nmとして、Ha5nm/Ha100nmの値が0.9よりも大きい、前記(4)に記載の硫化物系固体電解質。
(6)比表面積が3m/g以上である、前記(1)~(5)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質。
(7)結晶相を含む、前記(1)~(6)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質。
(8)アルジロダイト型の結晶を含む、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質。
(9)前記(1)~(8)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法であって、硫化物系固体電解質の表面を、Sを可溶な有機溶媒に曝すことを含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
(10)前記有機溶媒は、極性率が0.1~4.0である、前記(9)に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
(11)前記(1)~(8)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法であって、硫化物系固体電解質の表面を酸化することを含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
(12)前記(1)~(8)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法であって、硫化物系固体電解質の表面を水分に曝すことを含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
(13)前記(1)~(8)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質を含む固体電解質層。
(14)前記(1)~(8)のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硫化物系固体電解質が着火しにくいことにより、安全性に優れた硫化物系固体電解質及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
(硫化物系固体電解質)
本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質(以下、本固体電解質ともいう。)において、硫化物系固体電解質の種類や組成は特に限定されず、用途や所望の物性等に応じて適宜選択できる。硫化物系固体電解質としては、例えばLi、P及びSを含む硫化物系固体電解質、Li、P、S及びHaを含む硫化物系固体電解質等が挙げられる。ここで、Haはハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。Haは、具体的には、例えば、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。アルジロダイト型の結晶構造を取るためには、Haとして、Cl及びBrの少なくとも一方を含むことがより好ましく、Clを含むことがさらに好ましく、Cl単体又はCl及びBrの混合体がよりさらに好ましい。
【0014】
硫化物系固体電解質は、その目的に応じて、非晶質の硫化物系固体電解質であってもよく、特定の結晶構造を有する硫化物系固体電解質であってもよく、結晶相と非晶質相とを含む硫化物系固体電解質であってもよい。
【0015】
硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導性を向上する観点から結晶相を含むことが好ましい。硫化物系固体電解質が結晶相を含む場合、硫化物系固体電解質に含有される結晶は、好ましくはイオン伝導性結晶である。イオン伝導性結晶とは、具体的には、リチウムイオン伝導率が好ましくは10-4S/cmより大きく、より好ましくは10-3S/cmより大きい結晶である。
【0016】
硫化物系固体電解質が結晶相を含む場合、その含有量は硫化物系固体電解質に対し10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。結晶相の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、一般的には99質量%以下となる。
【0017】
硫化物系固体電解質として、より具体的にはLi10GeP12等のLGPS型の結晶を含む硫化物系固体電解質、LiPSCl、Li5.4PS4.4Cl1.6及びLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8等のアルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質、Li-P-S-Ha系の結晶化ガラス、並びにLi11等のLPS結晶化ガラス等が挙げられる。硫化物系固体電解質はこれらを組み合わせたものや、組成や結晶構造が異なる複数種の結晶を含有するものであってもよい。リチウムイオン伝導性に優れる点から、硫化物系固体電解質としてはアルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質が好ましい。
【0018】
硫化物系固体電解質がアルジロダイト型の結晶を含む場合、その含有量は硫化物系固体電解質に対し10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。アルジロダイト型の結晶の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、一般的には99質量%以下となる。なお、アルジロダイト型の結晶は同一組成の1種のみでも、異なる組成の2種以上が含まれていてもよい。
【0019】
アルジロダイト型の結晶構造を取るためには、結晶相はLi、P及びSに加えてHaを含む。Haは、Cl及びBrの少なくとも一方を含むことがより好ましく、Clを含むことがさらに好ましく、Cl単体又はCl及びBrの混合体がよりさらに好ましい。
【0020】
アルジロダイト型の結晶は、Li、P、S及びHaを含み、X線粉末回折(XRD)パターンにおいて、2θ=15.7±0.5°及び30.2±0.5°の位置にピークを有するものであると定義できる。XRDパターンは上記に加え、さらに2θ=18.0±0.5°の位置にもピークを有することが好ましく、さらに2θ=25.7±0.5°の位置にもピークを有することがより好ましい。
【0021】
アルジロダイト型の結晶は、LiPSHaで表した際に、5<a<7、4<b<6かつ0<c<2の関係を満たすことが、結晶がアルジロダイト型となりやすいことから好ましい。かかる元素比は、5.1<a<6.3、4<b<5.3かつ0.7<c<1.9の関係を満たすことがより好ましく、5.2<a<6.2、4.1<b<5.2かつ0.8<c<1.8の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0022】
すなわち、aについて、5<a<7が好ましく、5.1<a<6.3がより好ましく、5.2<a<6.2がさらに好ましい。bについて、4<b<6が好ましく、4<b<5.3がより好ましく、4.1<b<5.2がさらに好ましい。cについて、0<c<2が好ましく、0.7<c<1.9がより好ましく、0.8<c<1.8がさらに好ましい。なお、本明細書において、「元素比」は、元素の含有量(at%)の比を意味する。
【0023】
アルジロダイト型の結晶の場合、好ましい結晶構造は、例えばF-43m等の立方晶であるが、対称性が落ちた、六方晶、正方晶、直方晶、単斜晶等や、更に対称性が落ちた三斜晶等が存在してもよい。
【0024】
アルジロダイト型の結晶を構成するHaがCl及びBrを含む場合、アルジロダイト型の結晶におけるClの含有量をx(at%)、Brの含有量をy(at%)とした場合に、(x/y)で表される比は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。また、(x/y)で表される比は10以下が好ましく、3以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。
【0025】
(x/y)で表される比が上記範囲を満たすことで、リチウムイオンとハロゲン化物イオンとの相互作用が弱まり、硫化物系固体電解質のリチウムイオン伝導率が良好となりやすい。これは、塩化物イオンよりもイオン半径の大きな臭化物イオンを混合することで、カチオンとアニオンとの間の相互作用を弱める混合アニオン効果の影響だと考えられる。また、(x/y)で表される比が上記範囲を満たすことでリチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上しやすい。
【0026】
また、HaがCl及びBrを含む場合、アルジロダイト型の結晶を構成する元素の含有量(at%)の比をLi-P-S-Clc1-Brc2で表した際に、c1は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。c1は1.5以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.3以下がさらに好ましい。c2は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。c2は1.9以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましい。
【0027】
c1及びc2がそれぞれ上記範囲を満たすことで、結晶中のハロゲン化物イオンの存在割合を最適なものとし、結晶中のアニオンとリチウムイオンとの相互作用を低くしながら、安定なアルジロダイト型の結晶が得られる。これにより、固体電解質のリチウムイオン伝導率が良好となりやすい。また、c1及びc2が上記範囲を満たすことでリチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上しやすい。
ここでa、b及び(c1+c2)は、上述のa、b及びcと同様の関係を満たすことが好ましい。
【0028】
結晶相を構成する結晶の結晶子サイズは、電池化した際に良好なリチウムイオン伝導性を得る観点から、小さい方が好ましい。具体的には、結晶子サイズは1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、250nm以下がさらに好ましい。結晶子サイズの下限は特に限定されないが、通常5nm以上である。
結晶子サイズは、XRDパターンのピークの半値幅とシェラーの式を用いることにより算出できる。
【0029】
硫化物系固体電解質の組成は、例えばICP発光分析、原子吸光法、イオンクロマトグラフ法などを用いた組成分析により求められる。また、硫化物系固体電解質に含有される結晶の種類は、X線粉末回折(XRD)パターンから解析できる。硫化物系固体電解質における結晶相の割合や各結晶の含有量等は、上記組成分析の結果及びX線粉末回折(XRD)パターンを用いて、リートベルト法により結晶構造の精密化を行うことで解析できる。
【0030】
本固体電解質は、ドライエアー雰囲気下において、以下の試験方法で着火試験を行った際に、着火時間が5秒以上または「不着火」である。
(試験方法)
温度20±5℃、露点-30℃で大気圧下の無風に近い状態の試験場所において、下記1~7を実施する。
1.3cm程度の硫化物系固体電解質を厚さ10mm以上の無機質断熱板の上に置く。
2.ガスバーナーの拡散炎の長さを上部に向けた状態で70mmとなるように調整する。
3.炎と硫化物系固体電解質の接触面積が1~2cm、接触角度が約30°となるように接触させる。
4.炎を硫化物系固体電解質に接触させてから10秒後に炎を離す。
5.炎を硫化物系固体電解質に接触させてから硫化物系固体電解質に着火するまでの時間を測定し、硫化物系固体電解質が燃焼を継続するか否かを観察する。10秒間接触させて着火しない場合は「不着火」とする。
6.1~5を5回繰り返す。
7.燃焼を継続した場合に測定された着火するまでの時間のうち、最も短いものを着火時間とする。
【0031】
なお、上記着火試験において、無風に近い状態の試験場所は、熱線式風速計で測定した際の風速が0.05m/s以下である場所が好ましい。また、硫化物系固体電解質が粉末状または粒状の場合は、上記1において、硫化物系固体電解質が半球状となるように堆積させる。無機質断熱板としては、例えばセラミックファイバーボード、アルミナ、石英ガラス等が使用できる。
【0032】
本固体電解質は、上記着火試験において着火時間が5秒以上または不着火であることで、着火源が近づいてきても着火しにくい。これにより、本固体電解質は安全性に優れる。
【0033】
本発明者らは上述の通り、硫化物系固体電解質の表面に硫黄(S)が多く存在する場合、着火しやすいことを見出した。具体的には、硫化物系固体電解質の表面に存在するS-S結合が着火の原因となることがわかった。S-S結合は硫黄単体成分に由来するものであるが、硫化物系固体電解質の組成や結晶構造等によって、表面での硫黄の構造がS2-である場合も、着火源が接近した際、加熱によりS-S結合を形成するため、結果的に着火しやすいことがわかった。
【0034】
そこで、本発明者らは、表面のS-S結合やS2-を欠乏させることで、硫化物系固体電解質が着火しにくくなり、これにより、安全性に優れた硫化物系固体電解質が得られることを見出した。すなわち、本固体電解質は、その表面のS-S結合やS2-を少なくすることで、着火試験における着火時間を5秒以上または「不着火」とでき、これにより安全性を向上できることを見出したものである。以下、硫化物系固体電解質の着火しにくさについて、「耐着火性」という場合がある。
【0035】
本固体電解質の形状は特に限定されないが、リチウムイオン二次電池に用いた際に活物質粒子等との密着性を向上させ、電池特性を向上する観点からは粉末状が好ましい。ここで、本固体電解質が粉末状である場合、本固体電解質の表面とは、硫化物系固体電解質粉末に含有される硫化物系固体電解質粒子の表面のことをいう。
【0036】
本固体電解質の表面からの深さ5nmにおける硫黄(S)の元素比率をS5nm、表面からの深さ100nmにおける硫黄(S)の元素比率をS100nmとして、S5nm/S100nmの値は0.6以下であることが好ましい。S5nm/S100nmの値が1より小さいことは、硫化物系固体電解質において、表面近傍の硫黄元素比率が表面から比較的深い内部の硫黄元素比率に比べて小さいことを意味する。そして、S5nm/S100nmの値が0.6以下であることで、硫化物系固体電解質の耐着火性が向上しやすく、好ましい。S5nm/S100nmの値は0.5以下がより好ましく、0.4以下がさらに好ましい。
【0037】
一方で、S5nm/S100nmの値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。S5nm/S100nmの値が上記値以上であることで、硫化物系固体電解質の表面の硫黄が欠乏しすぎるのを抑制し、リチウムイオン伝導性の低下を抑制できる。
【0038】
5nm及びS100nmはそれぞれ、X線光電分子光法(以下、XPSともいう。)により測定できる。具体的には、硫化物系固体電解質に対し、トランスファーベッセルを使用して光電子分光装置(アルバック・ファイ社製、ESCA5500)を用いたワイドスキャン分析によるXPS分析を行って測定できる。条件は下記のとおりとする。
パスエネルギー:93.9eV、ステップエネルギー:0.8eV、分析エリア:直径800μm、検出角度:試料面に対して45°、X線源:Al線、モノクロ14kV、300W、スパッタ種:C60イオン、スパッタレート:0.74nm/min(熱酸化膜SiO換算)
【0039】
すなわち、本固体電解質は例えば、Li、P及びSを含む硫化物系固体電解質であって、X線光電子分光法により測定される、表面からの深さ5nmにおける硫黄(S)の元素比率をS5nm、表面からの深さ100nmにおける硫黄(S)の元素比率をS100nmとして、S5nm/S100nmの値が0.6以下であることが好ましい。
【0040】
本固体電解質は、表面にS-S結合を有しないことが好ましい。上述の通り、S2-も加熱によりS-S結合を形成し、硫化物系固体電解質を着火しやすくする一因ではあるものの、S-S結合はより直接的な着火の原因になると考えられる。したがって、本固体電解質が表面にある程度の硫黄元素を、例えばS2-の形で有したとしても、表面にS-S結合を有しないことで耐着火性をより向上できると考えられる。S-S結合の有無は、ラマン分光法やXPS分析により測定できる。ラマン分光法による分析では、バルクの情報も含まれてくるため、より詳細に表面の情報を選択的に得るためには、XPS分析が好ましい。
【0041】
本固体電解質の表面からの深さ5nmにおけるHaの元素比率をHa5nm、表面からの深さ100nmにおけるHaの元素比率をHa100nmとして、Ha5nm/Ha100nmの値は0.9よりも大きいことが好ましい。本固体電解質の表面においてSが欠乏すると、相対的に、表面近傍のハロゲン元素比率が表面から比較的深い内部のハロゲン元素比率に比べて大きくなる。したがって、Ha5nm/Ha100nmの値が0.9よりも大きいことでも、本固体電解質の表面において硫黄元素が欠乏していることを間接的に評価し得る。また、ハロゲン元素は一般的に難燃性であることから、本固体電解質の表面においてハロゲン元素比率が比較的大きくなること自体も、耐着火性の向上に寄与すると考えられる。Ha5nm/Ha100nmの値は1.0以上がより好ましく、1.1以上がさらに好ましく、1.2以上が特に好ましい。
【0042】
Ha5nm/Ha100nmの値の上限は特に限定されないが、表面の硫黄が欠乏しすぎるのを抑制し、リチウムイオン伝導性の低下を抑制する観点から1.6以下が好ましく、1.4以下がより好ましい。
Ha5nm及びHa100nmはそれぞれ、XPSによりS5nm及びS100nmと同様の方法で測定できる。また、例えばHa5nm/Ha100nmの値が0.9よりも大きい場合、STEM-EDX分析により、表面近傍および内部(バルク部分)の組成を比べ、表面近傍のHaが多いことでも判断できる。Haの値はSTEM-EDXで得られるHa元素由来のシグナル強度で比較できる。
【0043】
本固体電解質の比表面積は、用途や所望の電池特性等に応じて適宜調整できる。例えばリチウムイオン二次電池に用いられる際に電池特性を向上する観点から、比表面積は3m/g以上が好ましく、5m/g以上がより好ましく、10m/g以上がさらに好ましい。一方で、特に上限は設けないが、電池化のスラリー作製時に粉を凝集なく上手く分散させる観点から、比表面積は30m/g以下が好ましく、20m/g以下がより好ましい。比表面積としては、BET比表面積が用いられる。BET比表面積は、窒素などのガスの吸脱着測定により得られた吸着等温線を用い、BET法と呼ばれるBETの式を適用して得られた単分子層吸着量から、単位重量あたりの表面積として求められる。
【0044】
硫化物系固体電解質の平均粒子径は、比表面積と同様、用途や所望の電池特性等に応じて適宜調整できる。例えばリチウムイオン二次電池に用いられる際に電池特性を向上する観点から、平均粒子径は5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましく、1.0μm以下がよりさらに好ましい。一方で、粉体の取り扱いやすさの観点から、平均粒子径は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。本明細書において平均粒子径とは、Microtrac社製 レーザー回折粒度分布測定機 MT3300EXIIを用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートから求められるメジアン径(D50)をいう。
【0045】
本固体電解質は、リチウムイオン二次電池に用いられるにあたり、必要に応じてバインダー等の他の成分とともに固体電解質層を形成する。バインダーや他の成分は、従来公知の物が用いられる。
固体電解質層全体に対して、本固体電解質の含有量は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0046】
固体電解質層の形成方法も従来公知の方法が用いられる。例えば、固体電解質層を構成する成分を溶媒に分散あるいは溶解させてスラリーとし、層状(シート状)に塗工し、乾燥させ、任意にプレスすることで固体電解質層を形成できる。必要に応じて、熱をかけて脱バインダー処理を行ってもよい。当該スラリーの塗工量等を調整することで、固体電解質層の厚みを容易に調整できる。
また、湿式成形ではなく、固体電解質粉末等を、正極又は負極等の表面上において乾式でプレス成形することで固体電解質層を形成してもよい。その他に、他の基材上に固体電解質層を形成し、これを、正極又は負極等の表面上に転写してもよい。
【0047】
本固体電解質は、正極活物質又は負極活物質と混合して、正極層又は負極層として用いてもよい。正極層又は負極層に用いられる正極活物質又は負極活物質、集電体、バインダー、導電助剤等は、従来公知の物が用いられる。
【0048】
本固体電解質が用いられるリチウムイオン二次電池は、本固体電解質を含有するものであればよく、例えば上記固体電解質層と、正極層と、負極層とを含む。
リチウムイオン二次電池の外装体の材料も、従来公知の物を使用できる。リチウムイオン二次電池の形状も従来公知の物を使用できるが、例えば、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等が挙げられ、用途に応じて適宜選択できる。
【0049】
本固体電解質は、着火源が近づいても着火しにくく、耐着火性に優れる。かかる本固体電解質は、リチウムイオン二次電池に用いられる際や、各種製造工程において、着火して燃え広がったり、それにより有毒なSOガスを発生させたりする危険性が少なく、安全性に優れる。
【0050】
(硫化物系固体電解質の製造方法)
本実施形態に係る硫化物系固体電解質の製造方法(以下、本製造方法ともいう。)は特に限定されないが、例えば以下の(i)~(iii)の少なくとも1つを含む方法が好ましい。(i)~(iii)はそれぞれ、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-を欠乏させ得る工程である。
(i)硫化物系固体電解質の表面を、Sを可溶な有機溶媒に曝す工程。
(ii)硫化物系固体電解質の表面を酸化する工程。
(iii)硫化物系固体電解質の表面を水分に曝す工程。
【0051】
本製造方法において、硫化物系固体電解質としては、上述した種々の硫化物系固体電解質を使用できる。また、硫化物系固体電解質として市販の硫化物系固体電解質を用いてもよく、原材料から硫化物系固体電解質を製造して用いてもよい。本発明の効果を妨げない範囲において、これらの硫化物系固体電解質に公知の処理を施した上で用いてもよい。すなわち、本製造方法は、硫化物系固体電解質を製造する工程や、硫化物系固体電解質に公知の処理を施す工程を適宜含んでもよい。公知の処理としては、特に限定されないが、例えば硫化物系固体電解質を所望の平均粒子径となるよう粉砕する工程等が挙げられる。
【0052】
原材料から硫化物系固体電解質を製造して用いる場合、その原材料や製造方法は所望の組成等に応じ、公知の原材料や製造方法から適宜選択できる。製造方法の一例として、リチウム元素、硫黄元素およびリン元素、並びに必要に応じてハロゲン元素を含む原材料を加熱溶融する方法が挙げられる。かかる製造方法において、原材料を加熱溶融する前に加熱処理し、得られる中間体を加熱溶融してもよい。
【0053】
加熱処理や加熱溶融の具体的な方法として、特に限定されないが、例えば耐熱性の容器に原材料や中間体を入れ、加熱炉で加熱する方法が挙げられる。耐熱性の容器としては、特に限定されないが、カーボン製の耐熱容器、石英、石英ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミナ、ジルコニア、ムライト等の酸化物を含有した耐熱容器、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物を含有した耐熱容器、炭化ケイ素などの炭化物を含有した耐熱容器等が挙げられる。また、これらの耐熱性容器は、上記の材質でバルクが形成されていてもよいし、カーボン、酸化物、窒化物、炭化物等の層が形成された容器であってもよい。
【0054】
加熱溶融は、不活性雰囲気中で行うことが好ましい。不活性雰囲気とは、例えばAr雰囲気、窒素雰囲気等が挙げられるが、生産費用の観点から、窒素雰囲気がより好ましい。また、加熱溶融は、硫化水素ガス雰囲気、硫黄ガス雰囲気、二酸化硫黄ガス雰囲気、又はそれらのガスの混合ガス雰囲気で行ってもよい。また、加熱溶融は、真空封管した状態で行ってもよい。
【0055】
このように準備された硫化物系固体電解質に対し、(i)~(iii)のいずれか1以上が行われることが好ましい。
【0056】
(有機溶媒に曝す工程)
まず、(i)を含む方法について説明する。(i)を含む方法において、硫化物系固体電解質の表面を、Sを可溶な有機溶媒に曝す工程(以下、単に有機溶媒に曝す工程ともいう。)により、硫化物系固体電解質表面の硫黄元素(S)が有機溶媒に溶出するため、表面のS-S結合やS2-を欠乏させられる。
【0057】
有機溶媒に曝す工程において、Sを可溶な有機溶媒としては、例えば極性率が0.1~4.0である有機溶媒が好ましい。極性率が0.1以上であることで、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-を欠乏させやすいため好ましい。極性率は0.5以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。一方、極性率が4.0以下であることで、S-S結合やS2-を過剰に溶出させることを抑制でき、リチウムイオン伝導率の低下を必要最低限に抑制できる。極性率は3.5以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。また、適度にS-S結合やS2-を欠乏させることで、リチウムイオン伝導率の向上も期待できる。極性率とは、Rohrschneiderの極性パラメータのことを指す。また、Rohrschneiderの極性パラメータは、溶解度パラメータ(δ、δ、δ)の(δ +δ 0.5の値と相関を持つことが知られているので、これを用いて求めても良い。
【0058】
上記のような極性率を有する有機溶媒として、極性率が上記の好適範囲内にある有機溶媒を単独で用いてもよいし、極性率が上記の好適範囲内となるよう調整された混合溶媒を用いてもよい。具体的に好ましい有機溶媒として、例えば、トルエン、酪酸ブチル、トルエンとへプタンの混合溶媒(混合比1:1)、へプタンとジブチルエーテルの混合溶媒(混合比1:1)等が挙げられ、トルエンとへプタンの混合溶媒(混合比1:1)、へプタンとジブチルエーテルの混合溶媒(混合比1:1)が好ましい。ここで、上記混合比は体積比を表す。
【0059】
硫化物系固体電解質を上記で例示したような有機溶媒に混合することで、硫化物系固体電解質の表面を、Sを可溶な有機溶媒に曝せる。このとき、有機溶媒と硫化物系固体電解質の合計量に対し、硫化物系固体電解質が5質量%以上となるよう混合することが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。硫化物系固体電解質の濃度が上記下限値以上であることで硫化物系固体電解質を処理できる量が多くなり、効率的に処理を行える。
【0060】
一方、有機溶媒と硫化物系固体電解質の合計量に対し、硫化物系固体電解質が40質量%以下となるよう混合することが好ましく、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。硫化物系固体電解質の濃度が上記上限値以下であることで、硫化物系固体電解質に対する有機溶媒の量が十分なものとなり、両者を効率的に接触させられる。
【0061】
有機溶媒に曝す工程において、有機溶媒に硫化物系固体電解質が混合された状態で所定時間保持されることが好ましく、撹拌しながら保持されることがより好ましい。撹拌により有機溶媒と硫化物系固体電解質との接触効率を向上できる。
【0062】
保持時間は、Sを十分に溶出させる観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、1.5時間以上がさらに好ましい。保持時間は処理時間を短くし、効率的に処理する観点から12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
【0063】
有機溶媒に曝した後、乾燥させて有機溶媒を除去することで表面のS-S結合やS2-が欠乏した硫化物系固体電解質が得られる。乾燥の条件は使用する有機溶媒の種類や硫化物系固体電解質の種類等に応じて適宜調整できるが、一例として露点-60℃~-50℃、温度200~250℃で2~4時間程度が好ましい。
【0064】
次に、(ii)を含む方法及び(iii)を含む方法について説明する。(ii)を含む方法及び(iii)を含む方法においては、硫化物系固体電解質に対し、硫黄を除去する工程を行った上で(ii)及び(iii)の少なくとも一方を行うことが好ましい。
【0065】
硫黄を除去する工程とは、硫化物系固体電解質を加熱処理することを含む工程である。硫黄を除去する工程により、表層のS-S結合を有する硫黄が容易に除去できるため、その後の(ii)又は(iii)によってより効率的にS-S結合やS2-の量を少なくできる。
【0066】
硫黄を除去する工程において、加熱処理の温度は、硫黄を効率よく取り除く観点から200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。加熱処理の温度は硫化物が固結してしまうのを防ぐ観点から500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましい。
【0067】
硫黄を除去する工程において、加熱処理の時間は十分に硫黄を除去する観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、1.5時間以上がさらに好ましい。加熱処理の時間は効率的に処理を行う観点から12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
【0068】
硫黄を除去する工程において、加熱処理は不活性雰囲気下で行われることが好ましい。不活性雰囲気としては、例えば窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等が挙げられる。
【0069】
(酸化する工程)
(ii)を含む方法について説明する。(ii)を含む方法において、硫化物系固体電解質の表面を酸化する工程(以下、単に酸化する工程ともいう。)により、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-を欠乏させられる。硫化物系固体電解質の表面を酸化することで、表面のS-S結合やS2-は単体Sや、SOとなり、揮発していくため、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-の量が少なくなると考えられる。
【0070】
酸化する方法としては、硫化物系固体電解質の表面を酸化できるものであれば特に限定されないが、例えば硫化物系固体電解質をドライエアー雰囲気下で所定時間保持すること、同様の雰囲気下で混合すること、酸素濃度を調整した雰囲気下で保持すること、同様の雰囲気下で混合することが好ましい。処理条件を適切に調整しやすいことから、酸素濃度を調整した雰囲気下で所定時間保持することがより好ましい。酸素濃度は100ppm以上が好ましく、500ppm以上がより好ましく、1000ppm以上がさらに好ましい。酸素濃度の上限は特に限定されないが、10000ppm以下であってもよく、5000ppm以下であってもよい。酸素濃度について、ppmは体積基準の割合(体積ppm)を意味する。
【0071】
硫化物系固体電解質をドライエアー雰囲気下や酸素濃度を調整した雰囲気下で所定時間保持する際、硫化物系固体電解質が撹拌されることがより好ましい。これにより、硫化物系固体電解質の表面を効率的に酸化させられる。
【0072】
保持時間は硫化物系固体電解質の表面を十分に酸化させる観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、1.5時間以上がさらに好ましい。保持時間は効率的に処理を行う観点から12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
【0073】
温度や露点等の条件は、硫化物系固体電解質の表面を酸化できるものであれば特に限定されない。温度は例えば室温下が好ましい。かかる工程を経ることで表面のS-S結合やS2-が欠乏した硫化物系固体電解質が得られる。
【0074】
(水分に曝す工程)
(iii)を含む方法について説明する。(iii)を含む方法において、硫化物系固体電解質の表面を水分に曝す工程(以下、単に水分に曝す工程ともいう。)により、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-を欠乏させられる。硫化物系固体電解質の表面を水分に曝すことで、表面のS-S結合やS2-はHSとなり揮発するため、硫化物系固体電解質表面のS-S結合やS2-の量が少なくなると考えられる。
【0075】
水分に曝す方法としては、硫化物系固体電解質の表面が水分に曝されるものであれば特に限定されないが、例えば硫化物系固体電解質を露点が所定値以上の雰囲気下で所定時間保持すること、同様の雰囲気下で混合すること等が挙げられ、露点が所定値以上の雰囲気下で所定時間保持することが好ましい。
【0076】
露点が所定値以上の雰囲気において、具体的に、雰囲気中の水分量を十分なものとする観点から露点は-50℃以上が好ましく、-40℃以上がより好ましく、-30℃以上がさらに好ましい。露点は、適度な処理量に制御する観点から0℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。
【0077】
上記雰囲気に主として含有されるガスは特に限定されないが、硫化物系固体電解質に対し、所望の処理以外の影響を最小限とする観点から、例えば窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが好ましい。
【0078】
硫化物系固体電解質を上記雰囲気下で所定時間保持する際、硫化物系固体電解質が撹拌されることがより好ましい。これにより、硫化物系固体電解質の表面を効率的に水分と接触させられる。
【0079】
上記雰囲気での保持時間は硫化物系固体電解質の表面を十分に水分と接触させる観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、1.5時間以上がさらに好ましい。保持時間は効率的に処理を行う観点から12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
【0080】
このほか、温度等の条件は、硫化物系固体電解質の表面が水分と反応するものであれば特に限定されないが、例えば温度は室温が好ましい。かかる工程を経ることで表面のS-S結合やS2-が欠乏した硫化物系固体電解質が得られる。
【0081】
以上例示した(i)~(iii)の少なくとも1つを含む方法によれば、表面のS-S結合やS2-が欠乏した硫化物系固体電解質が得られ、これにより、本実施形態に係る硫化物系固体電解質が得られる。なお、上記(i)~(iii)はそれぞれ、同時に硫化物系固体電解質を粉砕することを含んでもよい。例えば、硫化物系固体電解質を所定の有機溶媒中や所定の雰囲気下で保持する際に、硫化物系固体電解質の撹拌と同時に粉砕を行ってもよい。
【実施例
【0082】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1-2~例1-4、例2-1~例2-4、例3-2~例3-7は実施例であり、例1-1、例3-1、例3-8は比較例である。
【0083】
各試験例において、以下の方法で各評価を行った。
【0084】
(比表面積)
硫化物系固体電解質粉末について、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロメリティクス社製、細孔分布測定装置ASAP-2020)を用いてクリプトン吸着BET多点法により測定を行い、比表面積を求めた。サンプリングから測定を含め、大気に触れないようにして測定を実施した。
具体的には、前処理として、室温にて12時間以上減圧を行った。試料重量は0.15gとし、分析温度-196℃で、相対圧(P/P)が0.1~0.25の範囲で5点以上測定を行い、BETプロットを作成した。得られたプロットから比表面積を算出した。
【0085】
(平均粒子径)
Microtrac社製 レーザー回折粒度分布測定機 MT3300EXIIを用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートから求められるメジアン径(D50)を平均粒子径とした。
【0086】
(リチウムイオン伝導率)
リチウムイオン伝導率は、測定対象の硫化物系固体電解質粉末を380MPaの圧力で圧粉体として測定サンプルとし、交流インピーダンス測定装置(Bio-Logic Sciences Instruments社製、ポテンショスタット/ガルバノスタット VSP)を用いて測定した。
測定条件は、測定周波数:100Hz~1MHz、測定電圧:100mV、測定温度:25℃とした。
【0087】
(S-S結合)
S-S結合の有無は下記(1)の方法により評価した。あわせて、XPSを用いて評価する場合の評価条件例を(2)に示す。
(1)ラマン分光法による方法
硫化物系固体電解質表面にS-S結合が存在することは、ラマンスペクトル測定(装置名:株式会社堀場製作所製LabRAM HR Evolution)を行い、ラマンシフト140~170cm-1、205~235cm-1および460~490cm-1の少なくとも1以上にピークを有することで判定した。
(2)XPSによる方法
硫化物系固体電解質表面にS-S結合が存在することは、トランスファーベッセルを使用して光電子分光装置(アルバック・ファイ社製、ESCA5500)を用いたワイドスキャン分析によるXPS分析を下記の条件で行い、深さ5nmを分析することで判定可能である。具体的には、163.5±0.5eVの位置にピークが見られることで判定できる。
(条件)パスエネルギー:93.9eV、ステップエネルギー:0.8eV、分析エリア:直径800μm、検出角度:試料面に対して45°、X線源:Al線、モノクロ14kV、300W、スパッタ種:C60イオン、スパッタレート:0.74nm/min(熱酸化膜SiO換算)
【0088】
(S溶出量)
硫化物系固体電解質粉末を混合し、撹拌しながら保持した後の溶媒について、上澄み液を回収し、0.45μmのメンブレンろ過フィルター(メルクミリポア製)でろ過して固形分を除去した。得られたろ液について、ICP発光分光分析(装置:日立ハイテクサイエンス社製、型番PS3520UVDDII)を行い、濾液中のSの含有率(質量ppm)を測定し、「S溶出量」とした。
【0089】
(S5nm/S100nm、Ha5nm/Ha100nm
X線光電分子光法により、以下の条件で測定し、S5nm/S100nm及びHa5nm/Ha100nmを求めた。なお、試験例1では、試料が含有するハロゲン元素はClのみであるため、Ha5nm/Ha100nmはCl5nm/Cl100nmとした。具体的には、硫化物系固体電解質に対し、トランスファーベッセルを使用して光電子分光装置(アルバック・ファイ社製、ESCA5500)を用いたワイドスキャン分析によるXPS分析を行い、深さ5nm及び100nmについて元素比率を求めた。条件は下記のとおりとした。
パスエネルギー:93.9eV、ステップエネルギー:0.8eV、分析エリア:直径800μm、検出角度:試料面に対して45°、X線源:Al線、モノクロ14kV、300W、スパッタ種:C60イオン、スパッタレート:0.74nm/min(熱酸化膜SiO換算)
【0090】
(着火試験)
ドライエアー雰囲気下において、以下の試験方法で着火試験を行い、以下の評価基準で評価した。
(試験方法)
温度20℃、露点-30℃で大気圧下、3面を覆われた、熱線式風速計で測定される風速が0.05m/s以下である試験場所において、下記1~7を実施した。
1.3cmの硫化物系固体電解質を厚さ10mmの無機質断熱板(ITM社製ファイバーエクセルボード1300H)の上に半球状になるように堆積させた。
2.ガスバーナーの拡散炎の長さを上部に向けた状態で70mmとなるように調整した。
3.炎と硫化物系固体電解質の接触面積が1~2cm、接触角度が約30°となるように接触させた。
4.炎を硫化物系固体電解質に接触させてから10秒後に炎を離した。
5.炎を硫化物系固体電解質に接触させてから硫化物系固体電解質に着火するまでの時間を測定し、硫化物系固体電解質が燃焼を継続するか否かを観察した。10秒間接触させて着火しない場合は「不着火」とした。
6.1~5を5回繰り返した。
7.燃焼を継続した場合に測定された着火するまでの時間のうち、最も短いものを着火時間とした。
(評価基準)
A:炎を10秒間接触させても着火せず、「不着火」であった。
B:着火時間が5秒以上であった。
C:着火時間が5秒未満であった。
【0091】
[試験例1]
(製造例1)
LiS、P、LiClの各原料粉末を1.85:0.475:1.6(mol比)になるように調合した。この原料粉末を耐熱性の容器に入れ、30g試験炉に入れ、露点-50℃の窒素ガス雰囲気下、圧力:1気圧、温度:300℃(昇温速度5℃/分)の条件で0.5時間保持することで加熱処理し、中間体を得た。
得られた中間体を耐熱性の容器に入れ、露点-60℃の雰囲気下において、圧力:1気圧、温度:730℃の条件で0.5時間加熱溶融した。
その後、冷却速度10~1000℃/secで冷却し、結晶相の割合が90質量%以上のアルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質としてLi5.6PS4.6Cl1.7を得た。得られた硫化物系固体電解質をミキサーで粉砕し、粉砕助剤としてトルエンを少量添加して遊星ボールミルにより乾式粉砕を実施した。得られた粉末を解砕し、メッシュに通して平均粒子径が1.5μmの硫化物系固体電解質粉末A(粉末A)を得た。
なお、結晶相は、XRD測定(装置名:株式会社リガク製SmartLab)により同定した。XRD測定の結果、結晶相はアルジロダイト型の結晶の単一相であった。
【0092】
製造例1で得られた粉末Aを用いて例1-1~例1-4の試料を作製し、各評価を行った。具体的には、試料表面のS-S結合の有無、S5nm/S100nm、Cl5nm/Cl100nm及び着火性を評価した。試験例1の結果を表1に示す。
【0093】
(例1-1)
粉末Aをそのまま試料として使用した。
(例1-2)
溶媒Aとしてトルエンとへプタンの混合溶媒(混合比1:1、体積比、水分濃度20体積ppm未満)を用いた。溶媒Aに粉末Aを混合し、撹拌しながら6時間保持した。このとき、粉末Aが、溶媒Aと粉末Aの合計量の10質量%となるように混合した。
その後、露点-50℃、200℃、酸素濃度5体積ppm未満の条件で2時間乾燥させ、試料を用意した。
(例1-3)
粉末Aに対し、硫黄を除去する工程として、不活性雰囲気中、350℃の条件で2時間加熱処理した。その後、温度を室温に下げて、露点-50±5℃のドライエアー雰囲気下で6時間、撹拌しながら保持した。得られた粉末を解砕し、メッシュに通し、平均粒子径が1.5μmから変化していないことを確認し、これを試料とした。
(例1-4)
粉末Aに対し、硫黄を除去する工程として、不活性雰囲気中、350℃の条件で2時間加熱処理した。その後、温度を室温に下げて、露点-35±5℃の窒素ガス雰囲気下で6時間、撹拌しながら保持した。得られた粉末を解砕し、メッシュに通し、平均粒子径が1.5μmから変化していないことを確認し、これを試料とした。
【0094】
【表1】
【0095】
表1から、粉末Aをそのまま試料とした例1-1では着火試験における着火時間が5秒未満であった。これに対し、粉末Aにさらに有機溶媒に曝す工程を行った例1-2、酸化する工程を行った例1-3、及び水分に曝す工程を行った例1-4では、着火時間が5秒以上または「不着火」であり、耐着火性に優れる硫化物系固体電解質が得られた。
【0096】
[試験例2]
例2-1~例2-4の通り試料を作製し、各評価を行った。具体的には、各試料について表面のS-S結合の有無、S5nm/S100nm、Ha5nm/Ha100nm、比表面積、着火性及びリチウムイオン伝導率を評価した。試験例2の結果を表2に示す。
【0097】
(例2-1)
例1-2と同じ試料を使用した。
【0098】
(例2-2)
ミキサーによる粉砕前の組成が表2に記載の通りとなるよう原料粉末の混合比を変更し、かつ、加熱溶融後の冷却速度を大きくした以外は製造例1と同様にして、Li、P、S及びClを含む非晶質の硫化物系固体電解質を作製した。これを製造例1と同様に粉砕して平均粒子径が1.5μmの硫化物系固体電解質粉末を得た。得られた粉末に対し、例1-2と同様の手順で溶媒Aによる処理及び乾燥を行うことで、試料を用意した。
【0099】
(例2-3)
ミキサーによる粉砕前の組成が表2に記載の通りとなるよう原料粉末の混合比を変更した以外は製造例1と同様にして、アルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質を作製した。これを製造例1と同様に粉砕して平均粒子径が1.5μmの硫化物系固体電解質粉末を得た。得られた粉末に対し、溶媒Bを用いた以外は例1-2と同様の手順で処理及び乾燥を行うことで、試料を用意した。ここで、溶媒Bとしては、イソプロピルアルコールを単独で使用した。
【0100】
(例2-4)
ミキサーによる粉砕前の組成が表2に記載の通りとなるよう原料粉末の混合比を変更した以外は製造例1と同様にして、アルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質を作製した。なお、原料粉末において、Br源としてLiBr粉末を使用した。得られた硫化物系固体電解質を製造例1と同様に粉砕して平均粒子径が1.5μmの硫化物系固体電解質粉末を得た。得られた粉末に対し、例1-2と同様の手順で溶媒Aによる処理及び乾燥を行うことで、試料を用意した。
【0101】
【表2】
【0102】
表2において、「粉砕前組成」の列に示される各元素の数値は、ミキサーで粉砕される前の硫化物系固体電解質について、各元素の含有割合(at%)の比を、P=1.00として表したものである。表2に示す通り、硫化物系固体電解質の組成が試験例1と異なる場合や、硫化物系固体電解質が非晶質である場合も、有機溶媒に曝す工程を経ることで耐着火性に優れる硫化物系固体電解質が得られた。
【0103】
[試験例3]
(製造例2)
製造例1と同様の方法でアルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質(Li5.6PS4.6Cl1.7)を作製し、ミキサーで粉砕して粉末状にした。その後、得られた粉末をメッシュに通し、平均粒子径が5μmの硫化物系固体電解質粉末B(粉末B)を得た。
【0104】
製造例2で得られた粉末Bを用いて例3-1~例3-8の試料を作製し、各評価を行った。具体的には、試料の表面のS-S結合の有無、粉末Bを混合し、撹拌しながら保持した後の各溶媒へのS溶出量、及び溶媒浸漬前後での硫化物系固体電解質のリチウムイオン伝導率の変化について評価した。なお、リチウムイオン伝導率の変化は、下記式により変化率を求めて評価した。試験例3の結果を表3に示す。表3において、溶媒の混合比は体積比で表している。
伝導率変化=(各例で得られた試料のリチウムイオン伝導率)/(各例において、粉末Bを溶媒A~Gにそれぞれ混合する前のリチウムイオン伝導率)
【0105】
(例3-1)
粉末Bをそのまま試料として使用した。
(例3-2~例3-8)
粉末Bに対し表3に示す溶媒A~G(水分濃度50体積ppm未満)をそれぞれ用いた以外は例1-2と同様の手順で処理及び乾燥を行うことで、各試料を用意した。
【0106】
【表3】
【0107】
表3から、硫化物系固体電解質を浸漬した溶媒の極性率の大きさに伴ってS溶出量が変化する傾向があり、極性率が適度に大きい溶媒で処理することにより、表面の硫黄を適切に欠乏させられることがわかった。また、浸漬により表面から硫黄を適切に欠乏させた場合、耐着火性に優れる硫化物系固体電解質を得られると考えられる。
【要約】
【課題】着火しにくく、より安全な硫化物系固体電解質及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ドライエアー雰囲気下において、所定の試験方法で着火試験を行った際に、着火時間が5秒以上または不着火である、硫化物系固体電解質に関する。
【選択図】なし