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特許7092292カチオン重合性組成物の包装容器及びそれを使用した包装方法
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  • 特許-カチオン重合性組成物の包装容器及びそれを使用した包装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】カチオン重合性組成物の包装容器及びそれを使用した包装方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/22 20060101AFI20220621BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20220621BHJP
   C08G 65/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B65D77/22
C08G59/68
C08G65/18
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020180008
(22)【出願日】2020-10-27
(62)【分割の表示】P 2019511472の分割
【原出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2021035864
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2016-0181396
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、エー-レム
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ジェ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン-ヒョン
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-504850(JP,A)
【文献】特許第4376060(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/048119(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/041409(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/093672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/22
B65D 81/24
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C08L 1/00-101/14
C08G 59/68
C08G 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とが収容されているカチオン重合性組成物の包装容器であって、
前記包装容器の材質は、合成樹脂であり、
前記包装容器内の空気は、カチオン重合性組成物100体積%を基準に2540体積%含まれる、
カチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項2】
前記包装容器は、溶剤、ガス、可視光線及びエネルギー線のうち、1種以上を遮断する遮断層を1層以上含む請求項1に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項3】
前記遮断層は、アルミニウムポーチフィルムである請求項2に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項4】
前記カチオン重合性組成物は、ベゼルパターン印刷用である請求項1から3のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項5】
前記カチオン重合性組成物は、着色剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びヨードニウム塩光重合開始剤を含み、
前記エポキシ化合物:前記オキセタン化合物の含量の比率が、1:0.5~1:4である請求項1から4のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項6】
前記オキセタン化合物は、1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物及び2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物を含む請求項5に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項7】
前記1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物:2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物の含量の比率が、1:16~1:3である請求項6に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項8】
前記エポキシ化合物の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して5~60重量%である請求項5から7のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項9】
前記オキセタン化合物の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して15~80重量%である請求項5から8のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項10】
前記ヨードニウム塩光重合開始剤の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して0.5~15重量%である請求項5から9のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項11】
前記カチオン重合性組成物は、5~50℃で30日~90日経過後の増粘率が200%以下である請求項10に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項12】
前記着色剤の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して1~15重量%である請求項5から11のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項13】
前記カチオン重合性組成物は、250~450nmの波長範囲の紫外線を吸収して硬化される請求項5から12のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項14】
前記カチオン重合性組成物は、360~410nmの波長範囲の紫外線を吸収して硬化される請求項13に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
【請求項15】
ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とを収容させるカチオン重合性組成物の包装方法であって、
前記カチオン重合性組成物と前記空気とを収容する包装容器の材質は、合成樹脂であり、
前記包装容器内の空気は、カチオン重合性組成物100体積%を基準に2540体積%含まれる、
カチオン重合性組成物の包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年12月28日付の韓国特許出願第10-2016-0181396号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、カチオン重合性組成物の包装容器及びそれを使用した包装方法に係り、より詳細には、ベゼルパターンの形成のためのカチオン重合性組成物の経時安定性を確保することができるカチオン重合性組成物の包装容器及びそれを使用した包装方法に関する。
【背景技術】
【0003】
TV、モニタなどのディスプレイ機器の周辺には、機器駆動のための金属配線が位置している。従来、それを遮幣するために、別途のプラスチックケース(ベゼル)を組立てしたが、最近、インクジェットなどの印刷方法を用いてベゼルパターンを直接印刷する方法が使われている。
【0004】
最近、使われているベゼルパターン印刷用組成物としては、ガラス基板に優れた付着特性を有するカチオン重合性組成物を使用しているが、カチオン重合性組成物を容器内に保管する場合、可視光や紫外光で内容物が変質されるか、長期間保管や高温での放置によって、容器が変形されて溶剤の蒸発や内容物の漏れが発生してしまうなどの問題を抱えている。
【0005】
このようなカチオン重合性組成物は、水分(湿気)による重合障害(硬化)は受けるが、空気による重合障害は受けないために、容器内に空気を含ませたが、これによっても、増粘現象が表われるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術の問題点を解決するために、本発明は、カチオン重合性組成物を保管する容器内で増粘現象が表われる場合、それを空気注入によって改善することができるカチオン重合性組成物の包装形態を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とが収容されていることを特徴とするカチオン重合性組成物の包装容器を提供する。
【0008】
また、本発明は、ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とを収容させることを特徴とするカチオン重合性組成物の包装方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、包装容器内にカチオン重合性組成物を保管するに当たって、容器内で増粘現象などの問題点が発生することを空気注入によって改善して、保管時に、時間進行による安定性を確保することができる包装容器及びそれを使用した方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による包装容器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者は、多様な試みを通じてカチオン重合性組成物で増粘現象が表われる場合、特別な光重合開始剤を使用すれば、空気注入によってカチオン重合性組成物の安定性を確保することができるということを見つけた。
【0012】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0013】
本発明は、図1でのように、ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とが収容されていることを特徴とするカチオン重合性組成物の包装容器を提供する。
【0014】
本発明において、前記包装容器は、溶剤、ガス、可視光線及びエネルギー線のうち、1種以上を遮断する遮断層を1層以上含ませて、内容物の変質、変色などを防止することができる。そのために、ガスバリア性や耐透湿性を向上させるためには、前記のような遮断層を含む2層以上のポーチ状にしたものを使用し、望ましくは、前記遮断層は、アルミニウムポーチフィルムを使用することができる。
【0015】
前記包装容器の材質は、溶剤、ガス、可視光線及びエネルギー線のうち、1種以上を遮断することができるものであれば、特に制限はないが、望ましくは、合成樹脂、ガラス及び金属からなる群から選択される1つ以上であるものを使用することができる。
【0016】
本発明の包装容器において、包装容器内に別途の空気注入過程を経ずに、カチオン重合性組成物注入時に自然に空気が混入されうる。前記空気は、乾燥空気や湿り空気に関係なく使用することができるが、組成物の増粘現象を防止するために、窒素を含まないことが望ましい。
【0017】
本発明の包装容器において、包装容器内に含まれる空気の量としては、充填するカチオン重合性組成物100体積%を基準に20~100体積%が望ましい。前記空気の量が20体積%未満であれば、カチオン重合性組成物の安定性が十分ではなくなり、空気が100体積%を超過すれば、包装効率が低くなり、運送時に気泡が発生しやすくなるという問題がある。
【0018】
本発明の包装容器において、包装容器内に含まれるカチオン重合性組成物は、ベゼルパターン印刷用カチオン重合性組成物であり得る。
【0019】
紫外線硬化型インク組成物には、通常のラジカル重合型組成物とカチオン重合性組成物とが主に使われるが、ラジカル重合型組成物の場合、酸素による硬化障害を受けるために、薄膜の硬化に適せず、また、硬化収縮が大きいために、ガラス基材との密着性が低くて、ベゼルパターンの形成に適しない。一方、カチオン重合性組成物の場合、通常の硬化収縮率が低く、酸素による影響が小さいために、薄膜の硬化に有利である。
【0020】
本発明において、前記カチオン重合性組成物は、具体的に、着色剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物及び光重合開始剤を含み、前記エポキシ化合物:オキセタン化合物の含量の比率が、1:0.5~1:4であり得る。
【0021】
本発明で使用するカチオン重合性組成物は、陽イオン性硬化成分であって、エポキシ化合物を含む。前記エポキシ化合物は、具体的に、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、線形脂肪族エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、及び脂環式エポキシ化合物のうちから選択される1種または2種以上の混合物であり得る。
【0022】
前記脂環式エポキシ化合物は、エポキシ化脂肪族環基を1つ以上含む化合物を意味する。
【0023】
エポキシ化脂肪族環基を含む前記脂環族エポキシ化合物で、前記エポキシ化脂肪族環基は、脂環式環に結合されたエポキシ基を意味するものであって、例えば、3,4-エポキシシクロペンチル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、3,4-エポキシシクロペンチルメチル基、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル基、2-(3,4-エポキシシクロペンチル)エチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロペンチル)プロピル基または3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基などの官能基が例示されうる。前記で脂環式環を構成する水素原子は、任意的にアルキル基などの置換基によって置換されることもある。前記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、以下で具体的に例示される化合物を使用することができるが、使えるエポキシ化合物が、下記の種類に制限されるものではない。
【0024】
例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、シクロヘキセンオキシド、4-ビニル-1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンモノオキシド、リモネンジオキシド、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルアルコール、(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル)メチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボン酸塩、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル、3,4-エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ダイセル社のセロキサイド8000などを使用することができる。
【0025】
前記エポキシ化合物の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して5~60重量%であることが望ましく、より望ましくは、10~30重量%であり得る。60重量%を超過すれば、組成物の粘度が上昇し、5重量%未満であれば、硬化感度が低下する。
【0026】
前記カチオン重合性組成物は、他のカチオン重合性単量体としてオキセタン化合物を含む。
【0027】
オキセタン化合物は、分子構造内に4員環状エーテル基を有する化合物であって、陽イオン性硬化されたインク組成物の粘度を低める(一例として、25℃で50cP未満)作用ができる。
【0028】
具体的には、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-シクロヘキシルオキシメチルオキセタンまたはフェノールノボラックオキセタンなどが例示されうる。オキセタン化合物としては、例えば、東亞合成(株式会社)の「アロンオキセタンOXT-101」、「アロンオキセタンOXT-121」、「アロンオキセタンOXT-211」、「アロンオキセタンOXT-221」または「アロンオキセタンOXT-212」などを使用することができる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組合わせで利用することができる。
【0029】
前記オキセタン化合物の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して15~80重量%であることが望ましく、より望ましくは、40~60重量%であり得る。80重量%を超過すれば、前記カチオン重合性組成物の硬化感度が低く、15重量%未満であれば、前記カチオン重合性組成物の粘度が上昇して、コーティング性が低下する。
【0030】
また、本発明のオキセタン化合物は、1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物及び2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物を含んで使用することができる。前記1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物及び2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物を共に使用する場合には、粘度及び膜の柔軟性を調節することができるという長所がある。前記のように、2種のオキセタン化合物を共に使用する場合、1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物:2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物の含量の比率は、1:16~1:3に使用することが望ましい。
【0031】
また、本発明は、前記エポキシ化合物:オキセタン化合物の含量の比率が、1:0.5~1:4であることを特徴とする。エポキシ化合物とオキセタン化合物との比率が1:4を超過する場合には、前記カチオン重合性組成物の粘度が低いことによって、組成物のコーティング性は優れているが、硬化感度が低下し、エポキシ化合物とオキセタン化合物との比率が1:0.5未満である場合には、前記カチオン重合性組成物の粘度が高いことによって、組成物のコーティング性が低下する。
【0032】
本発明のインク組成物は、光カチオン重合開始剤であって、ヨードニウム塩光重合開始剤を使用する。従来、光カチオン重合開始剤として使用するスルホニウム塩の場合には、相対的にエポキシ化合物、オキセタン化合物、バインダー、ソルベントに対する溶解度が不足であり、重合反応の硬化感度が落ち、重合反応のための活性エネルギー線の波長が制限される短所がある。
【0033】
一方、ヨードニウム塩を使用する場合には、エポキシ、オキセタン、バインダー、ソルベントに対する溶解度に優れ、硬化感度が高く、活性エネルギー線の波長選択が相対的に自在であるが、上述したように、保存時の安定性が落ちるために、それを改善する必要がある。
【0034】
前記ヨードニウム塩光重合開始剤の含量は、前記カチオン重合性組成物の総重量に対して0.5~15重量%であり得る。前記ヨードニウム塩光重合開始剤の含量が0.5重量%未満であれば、硬化反応が十分ではなく、15重量%を超過すれば、いずれも溶解されないか、粘度が増加して、コーティング性が低下する。
【0035】
前記ヨードニウム塩光重合開始剤は、紫外線硬化過程でインクに含有された不飽和二重結合を有するモノマーが反応して高分子を形成する硬化反応が起こるようにし、重合効率によって光増減剤を使用することもできる。
【0036】
一例として、前記光重合開始剤は、SbF-、AsF-、BF-、(CB-、PF-あるいはRf -nに表示される陰イオンを有するものであるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0037】
前記光重合開始剤は、カチオン重合性組成物の総重量に対して1~15重量%に含まれることが望ましく、より望ましくは、2~10重量%に含まれうる。光重合開始剤の含量が1重量%未満であれば、硬化反応が十分ではなく、15重量%を超過すれば、いずれも溶解されないか、粘度が増加して、コーティング性が低下する。
【0038】
前記カチオン重合性組成物は、前記のような組成を有することによって、5~50℃で30日~90日経過後の増粘率が200%以下であり得る。前記範囲に増粘率が調節されることによって、経時的な粘度の変化が大きくなくて、カチオン重合性組成物の安定性が保持されうる。
【0039】
前記カチオン重合性組成物は、着色剤を含む。
【0040】
前記着色剤としては、1種以上の顔料、染料またはこれらの混合物を使用し、必要による色を発現することができるならば、特に限定するものではない。
【0041】
本発明の一具体例としては、黒色顔料としてカーボンブラック、黒鉛、金属酸化物、有機ブラック顔料などを使用することができる。
【0042】
カーボンブラックの例としては、シスト5HIISAF-HS、シストKH、シスト3HHAF-HS、シストNH、シスト3M、シスト300HAF-LS、シスト116HMMAF-HS、シスト116MAF、シストFMFEF-HS、シストSOFEF、シストVGPF、シストSVHSRF-HS及びシストSSRF(東海カーボン(株式会社));ダイヤグラムブラックII、ダイヤグラムブラックN339、ダイヤグラムブラックSH、ダイヤグラムブラックH、ダイヤグラムLH、ダイヤグラムHA、ダイヤグラムSF、ダイヤグラムN550M、ダイヤグラムM、ダイヤグラムE、ダイヤグラムG、ダイヤグラムR、ダイヤグラムN760M、ダイヤグラムLR、#2700、#2600、#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#900、MCF88、#52、#50、#47、#45、#45L、#25、#CF9、#95、#3030、#3050、MA7、MA77、MA8、MA11、MA100、MA40、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B及びOIL31B(三菱化学(株式会社));PRINTEX-U、PRINTEX-V、PRINTEX-140U、PRINTEX-140V、PRINTEX-95、PRINTEX-85、PRINTEX-75、PRINTEX-55、PRINTEX-45、PRINTEX-300、PRINTEX-35、PRINTEX-25、PRINTEX-200、PRINTEX-40、PRINTEX-30、PRINTEX-3、PRINTEX-A、SPECIAL BLACK-550、SPECIAL BLACK-350、SPECIAL BLACK-250、SPECIAL BLACK-100、及びLAMP BLACK-101(テクサ(株式会社));RAVEN-1100ULTRA、RAVEN-1080ULTRA、RAVEN-1060ULTRA、RAVEN-1040、RAVEN-1035、RAVEN-1020、RAVEN-1000、RAVEN-890H、RAVEN-890、RAVEN-880ULTRA、RAVEN-860ULTRA、RAVEN-850、RAVEN-820、RAVEN-790ULTRA、RAVEN-780ULTRA、RAVEN-760ULTRA、RAVEN-520、RAVEN-500、RAVEN-460、RAVEN-450、RAVEN-430ULTRA、RAVEN-420、RAVEN-410、RAVEN-2500ULTRA、RAVEN-2000、RAVEN-1500、RAVEN-1255、RAVEN-1250、RAVEN-1200、RAVEN-1190ULTRA、及びRAVEN-1170(コロンビアカーボン(株式会社))またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0043】
前記有機ブラック顔料としてアニリンブラック、ラクタムブラックまたはペリレンブラック系などを使用することができるが、これらに限定するものではない。
【0044】
本発明において、カチオン重合性組成物は、紫外線(一例として、250または450nm)、より望ましくは、長波長の紫外線(一例として、360~410nm)の照射によって硬化されて、一定レベルのOD(optical density)を有することを特徴とする。このために、前記着色剤の含量は、カチオン重合性組成物の全体重量に対して1~15重量%であることが望ましく、より望ましくは、3~10重量%であり得る。着色剤の含量が1重量%未満である場合、ベゼルに適用するほどのレベルのODが表われず、15重量%超過である場合、過量の着色剤がインクに分散されず、沈殿物が形成されうる。
【0045】
また、本発明は、前記包装容器を使用するカチオン重合性組成物の包装方法であって、ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とを収容させることを特徴とするカチオン重合性組成物の包装方法を提供する。
【0046】
本発明の包装方法において、前記包装容器、陽イオン重合性組成物及び空気についての具体的な説明は、前記本発明のカチオン重合性組成物の包装容器で説明した通りである。
【0047】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲に記載の範囲及びその置き換え及び変更を含み、実施例の範囲に限定されるものではない。
【0048】
実施例
【0049】
実施例1~実施例5及び比較例1~比較例4
ベゼルパターン用カチオン重合性インク組成物(LG-751M、LG化学製)99重量%に、下記表1のように、ジアリールヨードニウム塩の光重合開始剤を1重量%混合した。以後、この組成物を下記表1のように、ガラス瓶または合成樹脂材の容器に一定量の空気が存在するように注入した後、安定性を評価した。容器に前記カチオン重合性インク組成物及び空気を注入する時、相対湿度50%のクリーンルームまたは相対湿度0%のドライルームで行った。
【表1】
【0050】
<光重合開始剤>
ジアリールヨードニウム塩:オムニキャット440(IGMレジン)、ロードシル2074(ブルースターシリコン社製)、イルガキュア250(BASF社製)、WPI-170(和光社製)
【0051】
<包装容器材質>
ガラス瓶:定格容量20ccのガラスバイアル試験瓶(広津理化学製)
合成樹脂瓶:定格容量60ccのポリプロピレン材の試験瓶(Nalgene製)
合成樹脂フィルム:定格容量1000ccのポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ナイロン/超低密度ポリエチレン構造からなるポーチバッグ(NITE製)
【0052】
<包装ガス種類>
湿り空気:相対湿度50%の一般空気
乾燥空気:相対湿度0%の乾燥空気
窒素:窒素ガス(純度100%)
【0053】
<ガス注入量測定>
ガス注入量は、インク体積に比べて、ガスが占める体積の分率(%)で示した。ガラス瓶及び合成樹脂瓶は、組成物が溢れず、注入することができる最大の体積を全体体積にし、注入された組成物の体積を差し引いたほどを空気の体積で計算した。合成樹脂ポーチは、アルキメデスの原理を用いて、組成物が注入される前のポーチによって水槽から溢れた水の体積と、組成物が注入されたポーチによって水槽から溢れた水の体積と、を比較して、ガス注入量を計算した。
【0054】
実験例1:増粘率
前記実施例1~実施例5及び比較例1~比較例4の包装容器に対して、各容器を45に一定に保持されるコンベクションオーブン内で1月~3月間保管した。
【0055】
各容器内の組成物の粘度を25℃でViscometer DV-2(Brookfield)を使用して測定した。初期粘度を基準にした粘度の増加量(粘度増加量/初期粘度)を計算して、下記のように分類して、その結果を表2に記載した。
*反応して固体化された場合:硬化
*200%以上である場合:×
*50%~200%である場合:△
*10%~50%である場合:○
*10%以下である場合:◎
【表2】
【0056】
前記表2の結果から、本発明による実施例1~実施例5の包装容器によれば、経時的な粘度の変化が大きくなくて、カチオン重合性組成物の安定性が保持されることを確認することができた。
【0057】
これに比べて、比較例1及び比較例3の場合には、2ヶ月経過時から急激な粘度変化が発生して、3ヶ月経過時には、組成物が固くなるという問題があった。
【0058】
比較例2の場合には、窒素ガスを50体積%注入したが、空気を注入した時とは異なって、増粘を抑制する効果が表われず、3ヶ月以内に組成物の硬化が発生した。比較例4の場合のように、空気を120%注入した場合、最大3ヶ月経過時にも、増粘が表われなかったが、包装容器内にインクよりも空気が多く存在するので、包装が経済的ではなかった。
【0059】
[項目1]
ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とが収容されているカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目2]
包装容器は、溶剤、ガス、可視光線及びエネルギー線のうち、1種以上を遮断する遮断層を1層以上含む項目1に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目3]
包装容器の材質は、合成樹脂、ガラスまたは金属からなる群から選択される1つ以上である項目1または2に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目4]
遮断層は、アルミニウムポーチフィルムである項目2に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目5]
包装容器内の空気は、カチオン重合性組成物100体積%を基準に20~100体積%に含まれる項目1から4のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目6]
包装容器内の空気は、窒素を含まない項目1から5のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目7]
カチオン重合性組成物は、ベゼルパターン印刷用である項目1から6のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目8]
カチオン重合性組成物は、着色剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びヨードニウム塩光重合開始剤を含み、
エポキシ化合物:オキセタン化合物の含量の比率が、1:0.5~1:4である項目1から7のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目9]
オキセタン化合物は、1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物及び2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物を含む項目8に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目10]
1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物:2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物の含量の比率が、1:16~1:3である項目9に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目11]
エポキシ化合物の含量は、カチオン重合性組成物の総重量に対して5~60重量%である項目8から10のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目12]
オキセタン化合物の含量は、カチオン重合性組成物の総重量に対して15~80重量%である項目8から11のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目13]
ヨードニウム塩光重合開始剤の含量は、カチオン重合性組成物の総重量に対して0.5~15重量%である項目8から12のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目14]
カチオン重合性組成物は、5~50℃で30日~90日経過後の増粘率が200%以下である項目13に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目15]
着色剤の含量は、カチオン重合性組成物の総重量に対して1~15重量%である項目8から14のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目16]
カチオン重合性組成物は、250~450nmの波長範囲の紫外線を吸収して硬化される項目8から15のいずれか一項に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目17]
カチオン重合性組成物は、360~410nmの波長範囲の紫外線を吸収して硬化される項目16に記載のカチオン重合性組成物の包装容器。
[項目18]
ヨードニウム塩光重合開始剤を含むカチオン重合性組成物と空気とを収容させるカチオン重合性組成物の包装方法。
図1