(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】光反応性液晶組成物、調光素子、調光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 19/38 20060101AFI20220621BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220621BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20220621BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220621BHJP
C08K 5/315 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C09K19/38
G02F1/13 505
G02F1/13 500
C09K19/54 Z
C08L33/14
C08K5/315
(21)【出願番号】P 2020136888
(22)【出願日】2020-08-14
(62)【分割の表示】P 2016557786の分割
【原出願日】2015-11-05
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2014225710
(32)【優先日】2014-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友之
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】川月 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】南 悟志
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297606(JP,A)
【文献】特開2007-131765(JP,A)
【文献】特開2014-215360(JP,A)
【文献】特開2015-063684(JP,A)
【文献】特開平11-237612(JP,A)
【文献】特開2000-081612(JP,A)
【文献】国際公開第2008/001817(WO,A1)
【文献】特開2002-241757(JP,A)
【文献】特開2006-201388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00-19/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) (A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶
(重合性基を有するもの及びディスコティック液晶化合物を除く);を有する光反応性液晶組成物であって、
(A)光反応性高分子液晶と(B)低分子液晶との重量比((A)光反応性高分子液晶:(B)低分子液晶)が、3:97~20:80である、上記光反応性液晶組成物。
【請求項2】
前記(A)光反応性高分子液晶が、
(A-2)光異性化
反応を生じる光反応性側鎖
を有する、請求項1
に記載の光反応性液晶組成物。
【請求項3】
前記(A)光反応性高分子液晶が、(A-1)光架橋反応を生じる光反応性側鎖を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A)光反応性高分子液晶が、下記式(1)~(6)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y
1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR
0(式中、R
0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y
2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY
1と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。)
からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有する請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【化1】
【請求項5】
前記(A)光反応性高分子液晶が、下記式(7)~(10)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Y
1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR
0(式中、R
0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは1~12の整数を表す;
mは、0~2の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す;
nは0~12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す;
Y
2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY
1と同じ定義を表す)
からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】
【請求項6】
前記(A)光反応性高分子液晶が、下記式(11)~(13)
(式中、Aは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは、1~12の整数を表し、mは0~2の整数を表し、m1は1~3の整数を表す;
Rは、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR
0(式中、R
0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良いか、又はヒドロキシ基もしくは炭素数1~6のアルコキシ基を表す)
からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】
【請求項7】
前記(A)光反応性高分子液晶が、下記式(14)又は(15)
(式中、Aはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Y
1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR
0(式中、R
0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
lは1~12の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す)
で表される光反応性側鎖を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【化4】
【請求項8】
前記(A)光反応性高分子液晶が、下記式(16)又は(17)(式中、Aは単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは、1~12の整数を表し、mは0~2の整数を表す)
で表される光反応性側鎖を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【化5】
【請求項9】
前記(A)光反応性高分子液晶が、下記式(20)(式中、Aは、単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Y
1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR
0(式中、R
0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは1~12の整数を表し、mは0~2の整数を表す)で表される光反応性側鎖を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【化6】
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の光反応性液晶組成物を有する液晶セルを有して形成される調光素子。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の光反応性液晶組成物を有する液晶セルを有して形成される調光素子であって、前記液晶セル内で(B)低分子液晶が所定の配向性を有する、上記調光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応性液晶組成物、該光反応性液晶組成物を有して形成される調光素子、及び該調光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の液晶表示素子は、高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal、PDLC)などの一部の素子を除いて、液晶を均一配向させるために配向処理を施した液晶配向膜を用いている(非特許文献1)。液晶配向膜の配向処理は液晶配向膜を塗布した後に、一般的にはラビング処理と呼ばれる、布を巻きつけたローラーで膜表面を擦る手法がとられているが、本手法は膜表面を物理的に擦る手法であるため、ラビングによる傷や削れカスが液晶表示素子の表示性能を低下させる問題点がある。さらに、この配向処理には、液晶配向膜形成工程、液晶配向処理工程、液晶配向膜の洗浄工程と数多くの工程を経る必要があり、製造工程を煩雑化していた。
そのため、該液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性が制御できる液晶セルが作製できるとプロセス面及びコスト面で大きなメリットとなる。
【0003】
一方、PDLCは、あらかじめ光で反応する重合性化合物を混合した低分子液晶を用いて液晶セルを作成し、その後、セル外から紫外線を照射することで重合性化合物を重合させて液晶を固定化する技術である。しかしながら、本技術は液晶の配向処理が施されていないため、液晶の配向が制御されておらず、該素子を調光素子又は表示素子に応用するには電気光学特性が不十分であるといった問題がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-201388号公報。
【文献】特開2003-307720号公報。
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には調光素子を提供すること、及び/又は該素子を作製するための光反応性液晶組成物を提供することにある。
また、上記目的に加えて、又は上記目的以外に、本発明の目的は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には調光素子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の発明を見出した。
<1> (A) (A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する光反応性液晶組成物であって、
(A)光反応性高分子液晶と(B)低分子液晶との重量比((A)光反応性高分子液晶:(B)低分子液晶)が、3:97~20:80、好ましくは4:96~15:85、より好ましくは5:95~13:87である、上記光反応性液晶組成物。
【0008】
<2> (A) (A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する光反応性液晶組成物であって、
該組成物を偏光紫外線に露光し、且つ(A)光反応性高分子液晶が液晶性を発現する温度範囲の下限値より50℃低い温度以上、好ましくは65~150℃、より好ましくは70~120℃に該組成物を加熱することにより、(B)低分子液晶が所定の配向性を有する、上記光反応性液晶組成物。
<3> 上記<1>において、該組成物を偏光紫外線に露光し、且つ(A)光反応性高分子液晶が液晶性を発現する温度範囲の下限値より50℃低い温度以上、好ましくは65~150℃、より好ましくは70~120℃に該組成物を加熱することにより、(B)低分子液晶が所定の配向性を有するのがよい。
<4> 上記<1>~<3>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、(A-1)光架橋反応を生じる光反応性側鎖を有するのがよい。
【0009】
<5> 上記<1>~<4>のいずれかにおいて、
(A)光反応性高分子液晶が、下記式(1)~(6)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY1と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。)
からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有するのがよい。
【0010】
【0011】
<6> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、
(A)光反応性高分子液晶が、下記式(7)~(10)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは1~12の整数を表す;
mは、0~2の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す;
nは0~12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す;
Y2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY1と同じ定義を表す)
からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有するのがよい。
【0012】
【0013】
<7> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、
(A)光反応性高分子液晶が、下記式(11)~(13)
(式中、Aは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは、1~12の整数を表し、mは0~2の整数を表し、m1は1~3の整数を表す;
Rは、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良いか、又はヒドロキシ基もしくは炭素数1~6のアルコキシ基を表す)
からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有するのがよい。
【0014】
【0015】
<8> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、
(A)光反応性高分子液晶が、下記式(14)又は(15)
(式中、Aはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
lは1~12の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す)
で表される光反応性側鎖を有するのがよい。
【0016】
【0017】
<9> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、
(A)光反応性高分子液晶が、下記式(16)又は(17)(式中、Aは単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは、1~12の整数を表し、mは0~2の整数を表す)
で表される光反応性側鎖を有するのがよい。
【0018】
【0019】
<10> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、
(A)光反応性高分子液晶が、下記式(20)(式中、Aは、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
lは1~12の整数を表し、mは0~2の整数を表す)で表される光反応性側鎖を有するのがよい。
【0020】
【0021】
<11> 上記<1>~<10>のいずれかの光反応性液晶組成物を有する液晶セルを有して形成される調光素子。
<12> 上記<1>~<10>のいずれかの光反応性液晶組成物を有する液晶セルを有して形成される調光素子であって、前記液晶セル内で(B)低分子液晶が所定の配向性を有する、前記素子。
【0022】
<13> [I] (A) (A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する光反応性液晶組成物を、平行離間配置された2枚の透明基体間に形成される空間に充填して液晶セルを形成する工程;
[II] [I]で得られた液晶セルに、前記2枚の透明基体のいずれか一方から、偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] (A)光反応性高分子液晶が液晶性を発現する温度範囲の下限値より50℃低い温度以上、好ましくは65~150℃、より好ましくは70~120℃に液晶セルを加熱する工程;
を有することにより、液晶セル内で(B)低分子液晶が所定の配向性を有する調光素子が形成される、調光素子の製造方法。
【0023】
<14> 上記<13>において、[III]工程を[II]工程中に行うのがよい。
<15> 上記<13>又は<14>において、[III]工程を[II]工程後に行うのがよい。
【0024】
<16> 上記<13>~<15>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶と(B)低分子液晶との重量比((A)光反応性高分子液晶:(B)低分子液晶)が、3:97~20:80、好ましくは4:96~15:85、より好ましくは5:95~13:87であるのがよい。
<17> 上記<13>~<16>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、(A-1)光架橋反応を生じる光反応性側鎖を有するのがよい。
【0025】
<18> 上記<13>~<17>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、上記式(1)~(6)(式中、A、B、D、S、T、Y1、Y2、R、X、Cou、q1、q2、q3、P、Q、l1、l2、H及びIは、上述と同じ定義を有する)からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有するのがよい。
<19> 上記<13>~<18>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、上記式(7)~(10)(式中、A、B、D、Y1、X、l、m、m1、m2、n、Y2及びRは、上述と同じ定義を有する)からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有するのがよい。
【0026】
<20> 上記<13>~<18>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、上記式(11)~(13)(式中、A、X、l、m、m1及びRは、上述と同じ定義を有する)からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖を有するのがよい。
<21> 上記<13>~<18>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、上記式(14)又は(15)(式中、A、Y1、l、m1及びm2は、上述と同じ定義を有する)で表される光反応性側鎖を有するのがよい。
【0027】
<22> 上記<13>~<18>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、上記式(16)又は(17)(式中、A、X、l及びmは、上述と同じ定義を有する)で表される光反応性側鎖を有するのがよい。
<23> 上記<13>~<18>のいずれかにおいて、(A)光反応性高分子液晶が、上記式(20)(式中、A、Y1、X、l及びmは、上述と同じ定義を有する)で表される光反応性側鎖を有するのがよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には調光素子を提供すること、及び/又は該素子を作製するための光反応性液晶組成物を提供することができる。
また、上記効果に加えて、又は上記効果以外に、本発明により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には調光素子を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の調光素子を製造するための紫外線照射装置の一例を示す。
【
図2】実施例
、比較例1及び参考例1~4の偏光露光後に得られた液晶セルの透過回折光の強度を測定する実験系の概略図を示す。
【
図3】
図2に示す実験系において、実施例1並びに
参考例1及び
参考例2の液晶セルを回転させた時(横軸:角度)の透過光強度(縦軸)を測定した結果を示す。
【
図4】
図2に示す実験系において、実施例2並びに
参考例3及び
参考例4の液晶セルを回転させた時(横軸:角度)の透過光強度(縦軸)を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には調光素子、及び/又は該素子を作製するための光反応性液晶組成物を提供する。
また、本願は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には調光素子を製造する方法を提供する。
以下、光反応性液晶組成物、該組成物によって得られる素子、具体的には調光素子、該素子の製造方法を説明する。
【0031】
<光反応性液晶組成物>
本発明の光反応性液晶組成物は、(A) (A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する。
本発明の光反応性液晶組成物は、(A)光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;のみからなっても、該(A)及び(B)の性質が変化しない程度のその他の成分を有する(A)及び(B)のみから本質的になってもよい。また、本発明の光反応性液晶組成物は、(A)又は(B)以外に、その他の成分を有してもよい。
【0032】
<<(B)低分子液晶>>
本発明の光反応性液晶組成物に含まれる(B)低分子液晶は、従来、液晶表示素子などに用いられているネマチック液晶や強誘電性液晶などをそのまま用いることができる。
具体的には、(B)低分子液晶として、4-シアノ-4’-n-ペンチルビフェニル、4-シアノ-4’-n-フェプチロキシビフェニル等のシアノビフェニル類;コレステリルアセテート、コレステリルベンゾエート等のコレステリルエステル類;4-カ ルボキシフェニルエチルカーボネート、4-カルボキシフェニル-n-ブチルカーボネート等の炭酸エステル類;安息香酸フェニルエステル、フタル酸ビフェニ ルエステル等のフェニルエステル類;ベンジリデン-2-ナフチルアミン、4’-n-ブトキシベンジリデン-4-アセチルアニリン等のシッフ塩基類;N,N’-ビスベンジリデンベンジジン、p-ジアニスアルベンジジン等のベンジジン類;4,4’-アゾキシジアニソール、4,4’-ジ-n-ブトキシ アゾキシベンゼン等のアゾキシベンゼン類;以下に具体的に示すフェニルシクロヘキシル系、ターフェニル系、フェニルビシクロヘキシル系などの液晶;などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
<<(A)光反応性高分子液晶>>
本発明の光反応性液晶組成物に含まれる、(A) 光反応性高分子液晶(以降、単に「(A)成分」と略記する場合がある)は、(A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有すれば、特に限定されない。
本明細書において光反応性とは、(A-1)光架橋、又は(A-2)光異性化、のいずれかの反応;及び双方の反応;を生じる性質をいう。
(A)成分は、好ましくは(A-1)光架橋反応を生じる側鎖を有するのがよい。
【0037】
(A)成分は、i)所定の温度範囲で液晶性を発現する高分子であって、光反応性側鎖を有する高分子である。
(A)成分は、ii)250nm~400nmの波長範囲の光で反応し、かつ50~300℃の温度範囲で液晶性を示すのがよい。
(A)成分は、iii)250nm~400nmの波長範囲の光、特に偏光紫外線に反応する光反応性側鎖を有することが好ましい。
(A)成分は、iv)50~300℃の温度範囲で液晶性を示すためメソゲン基を有することが好ましい。
【0038】
本発明の光反応性液晶組成物において、(A)光反応性高分子液晶と(B)低分子液晶との重量比((A)光反応性高分子液晶:(B)低分子液晶)は、3:97~20:80、好ましくは4:96~15:85、より好ましくは5:95~13:87であるのがよい。
(A):(B)における(A)の比率が、上記範囲であると、i)液晶を配向させるために必要な配向性基の量が確保できる、ii)均一な液晶配向を得ることができる、iii)光反応性高分子液晶(A)が偏光紫外線で反応した後の高分子マトリックスの密度が所望の値となる、iv)電圧を印可した際の低分子液晶(B)が所望の応答を行う、などの点で良い。
【0039】
(A)成分は、上述のように、光反応性を有する光反応性側鎖を有する。該側鎖の構造は、特に限定されないが、上記(A-1)及び/又は(A-2)に示す反応を生じる構造を有し、(A-1)光架橋反応を生じる構造を有するのが好ましい。(A-1)光架橋反応を生じる構造は、その反応後の構造が、熱などの外部ストレスに曝されたとしても、(A)成分の配向性を長期間安定に保持できる点で好ましい。
(A)成分の側鎖の構造は、剛直なメソゲン成分を有する方が、液晶の配向が安定するため、好ましい。
【0040】
メソゲン成分として、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0041】
(A)成分の主鎖の構造として、例えば、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができるがこれに限定されない。
また、(A)成分の側鎖として、下記式(1)~(6)の少なくとも1種からなる側鎖であるのが好ましい。
【0042】
【0043】
式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY1と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。
【0044】
側鎖は、下記式(7)~(10)からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖であるのがよい。
式中、A、B、D、Y1、X、Y2、及びRは、上記と同じ定義を有する;
lは1~12の整数を表す;
mは、0~2の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す;
nは0~12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す。
【0045】
【0046】
側鎖は、下記式(11)~(13)からなる群から選ばれるいずれか1種の光反応性側鎖であるのがよい。
式中、A、X、l、m、m1及びRは、上記と同じ定義を有する。
【0047】
【0048】
側鎖は、下記式(14)又は(15)で表される光反応性側鎖であるのがよい。
式中、A、Y1、l、m1及びm2は上記と同じ定義を有する。
【0049】
【0050】
側鎖は、下記式(16)又は(17)で表される光反応性側鎖であるのがよい。
式中、A、X、l及びmは、上記と同じ定義を有する。
【0051】
【0052】
側鎖は、下記式(20)で表される光反応性側鎖であるのがよい。
式中、A、Y1、X、l及びmは上記と同じ定義を有する。
【0053】
【0054】
また、(A)成分は、下記式(21)~(31)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有してもよい。例えば、(A)成分の光反応性側鎖が液晶性を有しない場合、又は、(A)成分の主鎖が液晶性を有しない場合、(A)成分は、下記式(21)~(31)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有するのがよい。
式中、A、B、q1及びq2は上記と同じ定義を有する;
Y3は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
R3は、水素原子、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を表す;
lは1~12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(23)~(24)において、全てのmの合計は2以上であり、式(25)~(26)において、全てのmの合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1~3の整数を表す;
R2は、水素原子、-NO2、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
Z1、Z2は単結合、-CO-、-CH2O-、-CH=N-、-CF2-を表す。
【0055】
【0056】
<<(A)成分の製法>>
(A)成分は、上記光反応性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーを重合することによって、場合によっては該光反応性側鎖モノマーと上記液晶性側鎖を有するモノマーとを共重合することによって、得ることができる。
【0057】
[光反応性側鎖モノマー]
光反応性側鎖モノマーとは、本明細書において、高分子を形成した場合に、高分子の側鎖部位に光反応性側鎖を有する高分子を形成することができるモノマーのことをいう。
側鎖が有する光反応性基としては下記の構造およびその誘導体が好ましい。
【0058】
【0059】
光反応性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(1)~(6)の少なくとも1種からなる光反応性側鎖、好ましくは、例えば、上記式(7)~(10)の少なくとも1種からなる光反応性側鎖、上記式(11)~(13)の少なくとも1種からなる光反応性側鎖、上記式(14)又は(15)で表される光反応性側鎖、上記式(16)又は(17)で表される光反応性側鎖、上記式(20)で表される光反応性側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0060】
光反応性側鎖モノマーとして、例えば、下記式PRM-1~PRM-11(式中、nは1~6の整数を示し、mは0~4の整数を示し、Xは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、もしくはニトロ基を示し、R1~R3は各々独立に、水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルコキシ基、もしくはハロゲン原子を示し、pは1~4の整数を示す)で表される化合物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0061】
【0062】
[液晶性側鎖モノマー]
液晶性側鎖モノマーとは、本明細書において、該モノマー由来の高分子が液晶性を発現し、該高分子が側鎖部位にメソゲン基を形成することができるモノマーをいう。
側鎖が有するメソゲン基として、ビフェニルやフェニルベンゾエートなどの単独でメソゲン構造となる基であっても、安息香酸などのように側鎖同士が水素結合することでメソゲン構造となる基であってもよい。側鎖が有するメソゲン基としては下記の構造が好ましい。
【0063】
【0064】
液晶性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(21)~(31)の少なくとも1種からなる側鎖を有する構造であることが好ましい。
具体的には、液晶性側鎖モノマーとして、例えば、下記式LCM-1~LCM-9(式中、nは1~6の整数を示し、Xは水素原子又はメチル基を示し、R4、R6及びR61~R63は各々独立に水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、もしくはニトロ基を示し、R5は水素原子、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す)で表される化合物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0065】
【0066】
(A)成分は、上述した液晶性を発現する光反応性側鎖モノマーの重合反応により得ることができる。また、液晶性を発現しない光反応性側鎖モノマーと液晶性側鎖モノマーとの共重合や、液晶性を発現する光反応性側鎖モノマーと液晶性側鎖モノマーとの共重合によって得ることができる。さらに、液晶性の発現能を損なわない範囲でその他のモノマーと共重合することができる。
【0067】
その他のモノマーとしては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。
その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0068】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0069】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。 グリシジル(メタ)アクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、および(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物も用いることができる。
【0070】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0071】
本実施の形態の側鎖型高分子の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、液晶性側鎖モノマーや光反応性側鎖モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0072】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0073】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類 (ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシ シクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0074】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジ(メトキシカルボニル)-4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’-ジ(メトキシカルボニル)-4,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジ(メトキシカルボニル)-3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(3-メチル-3H-ベンゾチアゾール-2-イリデン)-1-ナフタレン-2-イル-エタノン、又は2-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2(3H)-イリデン)-1-(2-ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0075】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0076】
(A)成分の生成反応、具体的には上述のモノマーの重合反応に用いる有機溶媒としては、生成した高分子が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0077】
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0078】
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の有機溶媒に混合して使用してもよい。
また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
【0079】
ラジカル重合の際の重合温度は30℃~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50℃~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、モノマー濃度が、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0080】
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1モル%~10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0081】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた生成物、即ち(A)成分を反応溶液から回収するには、反応溶液を貧溶媒に投入するのがよい。
沈殿に用いる貧溶媒として、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。
貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0082】
本発明の(A)成分の分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2000~1000000が好ましく、より好ましくは、5000~200000である。
【0083】
本発明の光反応性液晶組成物は、上述したように、(A)成分又は(B)成分以外に、その他の成分を有してもよい。
その他の成分として、用いる(A)成分及び(B)成分、並びに光反応性液晶組成物の用途などに依存するが、例えば、ヒンダートアミン類やヒンダートフェノール類などの酸化防止剤や1つ以上の末端に光重合または光架橋する基を有する重合性化合物などを挙げることができる。
重合性化合物の具体的な例として、以下に示す化合物(式中、Vは、単結合又は-R8O-、好ましくは-R8O-で表され、R8は炭素数1~10、好ましくは炭素数2~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。Wは、単結合又は-OR9-、好ましくは-OR9-で表され、R9は炭素数1~10、好ましくは炭素数2~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。V及びWは同一の構造でも異なっていてもよいが、同一であると合成が容易である。R7はHまたは炭素数1~4のアルキル基を示す)を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0084】
【0085】
<光反応性液晶組成物によって得られる素子及びその製造方法>
本願は、上記の光反応性液晶組成物によって得られる調光素子、及び該素子の製造方法も提供する。
本発明の素子は、上記の光反応性液晶組成物を有する液晶セルを有して形成される。
【0086】
本発明の素子は、液晶セルに上記の光反応性液晶組成物を充填して形成することができる。
具体的には、本発明の素子は、次の工程により製造することができる。
[I] (A) (A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する光反応性液晶組成物を、平行離間配置された2枚の透明基体間に形成される空間に充填して液晶セルを形成する工程;及び
[II] [I]で得られた液晶セルに、前記2枚の透明基体のいずれか一方から、偏光した紫外線を照射する工程;
を有することにより、本発明の素子、具体的には調光素子を形成することができ、具体的には、液晶セル内で(B)低分子液晶が所定の配向性を有する素子、具体的には調光素子が形成される。
【0087】
[I]工程は、上述の光反応性液晶組成物を、平行離間配置された少なくとも紫外線を照射する側の基体が透明な基体間に形成される空間に充填して液晶セルを形成する工程である。
液晶セルは、2枚の透明基体をある程度離間させて平行配置することにより空間を形成し、該空間に上述の光反応性組成物を充填して形成される。
基体は、例えば、ガラス;アクリルやポリカーボネート等のプラスチック等;を用いることができる。基体は、形成する素子に依存して、可撓性を有してもよい。
【0088】
基体は、形成する素子に依存して、空間側に、種々の膜、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、ポリエチレン、PET、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレアなどから形成される膜を形成してもよい。なお、ここで用いる膜は、例えば、次のような作用を奏するのがよい。即ち、後述の[II]工程において、(A)光反応性高分子液晶の光反応を誘起するためには、(A)光反応性高分子液晶の分子長軸が偏光を吸収するように、該(A)光反応性高分子液晶を液晶セル内に配置するのがよい。また、(A)光反応性高分子液晶は(B)低分子液晶との組成物として液晶セル中に封入されるため、(A)光反応性高分子液晶の分子長軸が液晶セル内において所望の状態で配置させるためには(B)低分子液晶も同様に液晶セル内に所望の状態で配置させるのがよい。即ち、(A)光反応性高分子液晶の光反応を十分に生じさせるためには、偏光紫外光の入射光の方向が、(A)光反応性高分子液晶の分子長軸の方向と垂直に近くなるように、偏光紫外光を露光するのがよい。
例えば、偏光紫外光を該液晶セルの法線方向から露光する場合、光反応性組成物中の(A)光反応性高分子液晶及び(B)低分子液晶の双方の分子長軸が基体面と水平な方向に配置させるのがよく、基体が有する膜はそのような膜であれば材料に限定されない。
また、(A)光反応性高分子液晶の分子長軸が、上述の基体面と水平な方向ではない場合には、該分子長軸の配置状態に合わせて、偏光紫外光の入射角を決めるのがよい。
【0089】
[II]工程は、[I]で得られた液晶セルに偏光した紫外線を照射する工程である。偏光した紫外線は、2枚の透明基体のいずれか一方の外側から照射するため、透明基体は、上述したように、偏光した紫外線を透過する基体である。
偏光した紫外線は、形成する素子に依存するが、波長100nm~400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm~400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0090】
偏光紫外線を照射すると、液晶セル内で、次のようなメカニズムが生じるものと考えられる。即ち、液晶セル内の(A)光反応性高分子液晶は、該偏光紫外線に応じた配向性を有することとなる。
また、(B)低分子液晶は、(A)光反応性高分子液晶の配向性にしたがって、配向する。
これにより、(A)光反応性高分子液晶及び(B)低分子液晶は、偏光紫外線に応じて、配向性を有することとなる。
【0091】
なお、偏光紫外線の露光のみにより、上述のように配向性を有することとできるが、不十分であるため、さらに[III]液晶セルを加熱する工程、具体的には、(A)光反応性高分子液晶が液晶性を発現する温度範囲の下限値より50℃低い温度以上に液晶セルを加熱する工程;をさらに有する必要がある。この場合、偏光紫外線の露光と共に加熱を行うか、及び/又は偏光紫外線の露光後に加熱を行うことができる。
ここで、加熱は、(A)光反応性高分子液晶が液晶性を発現する温度範囲の下限値(Tx)よりも50℃低い温度((Tx-50)℃)又はそれより高い温度、好ましくは65~150℃、より好ましくは70~120℃で行うのがよい。
例えば、i)偏光紫外線を液晶セルに露光すること;ii)上記温度範囲で液晶セルを加熱した状態で露光すること;iii)上記i)のような露光を行った後に上記温度範囲で加熱すること;又はiv)上記ii)の後にさらに上記温度範囲で加熱すること;により、(A)光反応性高分子液晶が配向性を有し、これにしたがって、(B)低分子液晶も配向性を有することとなる。このような工程を用いることにより、(B)低分子液晶が一軸に配向した調光素子を作成することができる。
【0092】
なお、本願において、「調光素子」とは、配向が制御された液晶が電圧印可により駆動することで、背面からの光の透過・非透過を制御する素子をいい、ディスプレイ(表示素子)や窓の調光フィルム(ガラス)なども含む。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
下記式P6CBで表される光反応性高分子液晶5重量部を、下記式E7で表されるメルク社製の低分子液晶(E7)95重量部に添加した後、180℃で20分間攪拌し、光反応性液晶組成物を得た。
【0094】
【0095】
その後、基板の両面にITOを備えるガラス基板から成る2μmギャップの並行平板セルに、該光反応性液晶組成物を封入することにより液晶セルA1を作製した。
得られた液晶セルA1を80℃に加熱した状態で偏光された紫外線を露光することで、液晶の配向が制御された液晶セルB1を形成した。
なお、式P6CBで表される光反応性高分子液晶は、115℃以上で液晶性を発現した。
【0096】
具体的には、
図1に示す均一露光装置(KIN-ITSU-KUN(山下電装社製))を用いて、波長313nm(22mW/cm
2)の直線偏光を露光量2J/cm
2となるように液晶セルA1の法線方向から露光した。露光中の温度はINSTEC社製温度コントローラーを用いて制御した。なお、
図1の均一露光装置1は、発光面全体に均一に紫外線を発光する紫外線発光部2、該発光部の下方に設ける偏光子3を有し、さらにその下方に試料4を載せる試料台5を有する。また、試料4と試料台5との間に温度制御部6が、該温度制御部6を介して、露光中に試料を加熱するか及び/又は露光後に試料を加熱することができるように、配置される。
【0097】
<低分子液晶の配向状態>
液晶セルB1作製後、低分子液晶の配向状態の確認のため
図2に示す実験系において、液晶セルを回転させた時の透過光強度を測定した。また、偏光顕微鏡によっても、低分子液晶の配向状態を確認した。
図2に示す実験による測定結果を
図3に、偏光顕微鏡による観察結果を表1に、それぞれ示す。
【0098】
なお、
図2の実験系11は、He-Neレーザ12、偏光子13、検光子14及びパワーメータ15を有してなり、He-Neレーザ12から照射されるレーザを偏光子13、検光子14、パワーメータ15の順で受けるように配置される。また、偏光子13と検光子14とは直交ニコルの状態で配置される。試料16は、偏光子13と検光子14との間に配置し、該試料16を回転させる際の透過光強度をパワーメータ15で検出する。
【0099】
図3から次のことがわかる。即ち、液晶セルの光学軸が偏光子と検光子に対して45度傾いた場合に最大の透過光強度を示したことから、液晶セル内の液晶が一軸に配向が制御されていることが分かる。このことから、液晶セル中の液晶は一軸に配向していることが示された。
また、表1から、偏光顕微鏡の観察結果からも液晶セル中の液晶が一軸に配向していることが分かった。
さらに、該液晶セルB1に電圧を印可するとセル中の液晶が印可電圧の大きさに伴って駆動することも確認でき、液晶セルB1が調光素子として作動できることを確認した。
【0100】
(実施例2)
実施例1と同様に、液晶セルA1を作成した。該液晶セルA1に室温で偏光された紫外線を露光した後に、該液晶セルを80℃で30分間加熱して、液晶の配向が制御された液晶セルB2を形成した。
得られた液晶セルB2を、実施例1と同様に、低分子液晶の配向状態を、
図2に示す実験及び偏光顕微鏡による観察を行った(表1)。
液晶セルB2の
図2に示す実験による測定結果を
図4に示す。
図4から、液晶セルB2中の液晶は一軸に配向していることがわかった。また、偏光顕微鏡による観察からも、液晶セルB2中の液晶は一軸に配向していることがわかった(表1、
図4)。
さらに、電圧印可による液晶の駆動も確認でき、液晶セルB2が調光素子として作動できることを確認した。
【0101】
(比較例1)
並行平板セルに封入する液晶組成物をE7のみとした以外は実施例1と同様に液晶セルCE1を作製し、該液晶セルCE1を実施例1と同様に偏光露光を行い、透過光強度を測定した。その結果、偏光露光と共に行う加熱の温度を変更したとしても透過光強度の角度依存性は見られなかった。また、偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向も確認できなかった。
【0102】
(
参考例1)
実施例1と同様に、液晶セルA1を作成した。該液晶セルA1を30℃で加熱した状態で偏光された紫外線を露光し、液晶セルCE2を形成した。
得られた液晶セルCE2を、実施例1と同様に、低分子液晶の配向状態を、
図2に示す実験及び偏光顕微鏡による観察を行った(表1、
図3)。その結果、透過光強度の角度依存性は小さく、十分な液晶の一軸配向は確認できなかった。また、偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向も不十分であった。
【0103】
(
参考例2)
実施例1と同様に、液晶セルA1を作成した。該液晶セルA1を50℃で加熱した状態で偏光された紫外線を露光し、液晶セルCE3を形成した。
得られた液晶セルCE3を、実施例1と同様に、低分子液晶の配向状態を、
図2に示す実験及び偏光顕微鏡による観察を行った(表1、
図3)。その結果、透過光強度の角度依存性は小さく、十分な液晶の一軸配向は確認できなかった。また、偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向も不十分であった。
【0104】
(
参考例3)
実施例1と同様に、液晶セルA1を作成した。該液晶セルA1に室温で偏光された紫外線を露光した後に、該液晶セルを30℃で30分間加熱して、液晶セルCE4を形成した。
得られた液晶セルCE4を、実施例1と同様に、低分子液晶の配向状態を、
図2に示す実験及び偏光顕微鏡による観察を行った(表1、
図4)。その結果、透過光強度の角度依存性は小さく、十分な液晶の一軸配向は確認できなかった。また、偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向も不十分であった。
【0105】
(
参考例4)
実施例1と同様に、液晶セルA1を作成した。該液晶セルA1に室温で偏光された紫外線を露光した後に、該液晶セルを50℃で30分間加熱して、液晶セルCE5を形成した。
得られた液晶セルCE5を、実施例1と同様に、低分子液晶の配向状態を、
図2に示す実験及び偏光顕微鏡による観察を行った(表1、
図4)。その結果、透過光強度の角度依存性は小さく、十分な液晶の一軸配向は確認できなかった。また、偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向も不十分であった。
【0106】
実施例1、2及び比較例1から、本発明の液晶組成物、即ち(A)光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する、実施例1及び2の液晶組成物は、光反応性を有する一方、比較例1の液晶組成物は、光反応性を示さないことがわかった。また、実施例1の液晶組成物を用いることにより、一軸に液晶が配向した液晶セルが作製できることがわかった。さらに、実施例1及び2と参考例1~4とを比較すると、所定の加熱工程を有することにより、一軸に液晶が配向した液晶セルが作製できることがわかった。
【0107】