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  • 特許-1,3‐ブタジエンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】1,3‐ブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/00 20060101AFI20220621BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20220621BHJP
   C07C 5/48 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
C07C7/00
C07C11/167
C07C5/48
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020527912
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2019001437
(87)【国際公開番号】W WO2019168276
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0023838
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュン ハン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュン モー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュヒョク
(72)【発明者】
【氏名】チョウイ、デフン
(72)【発明者】
【氏名】スー、ミュンジ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、イェ スル
(72)【発明者】
【氏名】ファン、スンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンミン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512843(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1577759(KR,B1)
【文献】特開2011-001341(JP,A)
【文献】特開昭60-115531(JP,A)
【文献】特開2016-172721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェライト系触媒を用いて、ブテンを含む反応物から、軽質(light)成分、1,3‐ブタジエンおよび重質(heavy)成分を含む第1の生成物を得るステップと、
(B)前記第1の生成物を熱交換させた後、前記重質成分を凝縮し、前記1,3‐ブタジエンおよび前記軽質成分を含む第2の生成物から前記重質成分を分離するステップと、
(C)前記凝縮した重質成分を再加熱し、濃縮された前記重質成分を分離するステップと
を含み、
前記1,3‐ブタジエンおよび前記軽質成分を含む前記第2の生成物を精製し、1,3‐ブタジエンを得るステップをさらに含み、
前記(B)ステップの凝縮された重質成分は、凝縮水を含み、
前記(C)ステップで前記凝縮した重質成分を再加熱して得られた水蒸気を回収し、前記ブテンを含む反応物に前記水蒸気を供給するステップをさらに含み、
前記(B)ステップにおいて前記重質成分を凝縮する温度は、90℃~100℃であり、
前記軽質成分は、水素、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、メタン、エチレン、アセトアルデヒド、1‐ブテン、2‐ブテンおよびビニルアセチレンからなる群から選択される1以上の成分であり、
前記重質成分は、アクロレイン、フラン、ブタノン、ベンゼン、4‐ビニルシクロヘキセン、スチレン、4‐ホルミルシクロヘキセン、ベンゾフラン、3‐アセチル‐1‐シクロヘキセン、シクロヘキセンジカルボキシ、ベンゾフェノンおよび9‐フルオレノンからなる群から選択される1以上の成分である、
1,3‐ブタジエンの製造方法。
【請求項2】
前記(A)ステップは、前記ブテンを含む反応物を予熱するステップをさらに含む、
請求項1記載の1,3‐ブタジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年2月27日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0023838号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、1,3‐ブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1,3‐ブタジエン(1,3‐butadiene)は、石油化学製品の中間体として世界的にその需要と価値が高まりつつある。前記1,3‐ブタジエンは、ナフサ分解(naphtha cracking)、ブテンの直接脱水素化反応、ブテンの酸化的脱水素化反応などを用いて製造されている。
【0004】
前記ナフサ分解工程は、高い反応温度によってエネルギー消費量が多いだけでなく、1,3‐ブタジエンの生産だけのための単独の工程ではないため、1,3‐ブタジエン以外に他の基礎留分が過剰に生産されるという問題がある。また、n‐ブテンの直接脱水素化反応は、熱力学的に不都合があるだけでなく、吸熱反応によって高い収率の1,3‐ブタジエンを生産するために高温および低圧の条件が求められ、1,3‐ブタジエンを生産する商用化工程としては適していない。
【0005】
したがって、ブテンの酸化的脱水素化反応を用いて、1,3‐ブタジエンを製造する技術が広く知られている。一方、ブテンの酸化的脱水素化反応工程は、クエンチング(quenching)工程の後段で発生する廃水をリサイクル(recycle)し、反応物として回収する工程を含む。しかし、反応器に回収された廃水(recycle water)には軽質成分が含まれており、ブテンの転化率を減少させる現象が生じる。
【0006】
そこで、廃水に含まれた軽質成分を除去するための技術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、1,3‐ブタジエンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施態様は、
(A)ブテンを含む反応物から、軽質(light)成分、1,3‐ブタジエンおよび重質(heavy)成分を含む第1の生成物を得るステップと、
(B)前記第1の生成物を熱交換させた後、前記重質成分を凝縮し、前記1,3‐ブタジエンおよび前記軽質成分を含む第2の生成物から分離するステップと、
(C)前記凝縮した重質成分を再加熱し、濃縮された重質成分を分離するステップとを含む、1,3‐ブタジエンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書の一実施態様に係る1,3‐ブタジエンの製造方法は、ブテンの酸化的脱水素化反応で得られた生成物に対して熱交換および凝縮を施し、軽質成分以外の廃水を得ることができる。
【0010】
これにより、軽質成分が反応物に含まれて酸素(O)と反応することを遮断し、廃水(recycle water)の使用時に生じるブテンの転化率の減少を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書の一実施態様に係る1,3‐ブタジエンの製造方法を実施するための工程図である。
図2】本明細書の比較例1による1,3‐ブタジエンの製造方法を実施するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本明細書について、より詳細に説明する。
【0013】
本明細書において、「収率(%)」は、酸化的脱水素化反応の生成物である1,3‐ブタジエン(BD)の重量を、原料であるブテン(BE)の重量で除した値として定義される。例えば、収率は、下記の式で表され得る。
収率(%)=[(生成された1,3‐ブタジエンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0014】
本明細書において、「転化率(conversion、%)」は、反応物が生成物に転化する比率を意味し、例えば、ブテンの転化率は、下記の式で定義され得る。
転化率(%)=[(反応したブテンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0015】
本明細書において、「選択度(%)」は、ブタジエンの変化量をブテンの変化量で除した値として定義される。例えば、選択度は、下記の式で表され得る。
選択度(%)=[(生成された1,3‐ブタジエンまたはCOxのモル数)/(反応したブテンのモル数)]×100
【0016】
本明細書の一実施態様は、(A)ブテンを含む反応物から、軽質(light)成分、1,3‐ブタジエンおよび重質(heavy)成分を含む第1の生成物を得るステップと、(B)前記第1の生成物を熱交換させた後、前記重質成分を凝縮し、前記1,3‐ブタジエンおよび前記軽質成分を含む第2の生成物から分離するステップと、(C)前記凝縮した重質成分を再加熱し、濃縮された重質成分を分離するステップとを含む、1,3‐ブタジエンの製造方法を提供する。
【0017】
ブテンの酸化的脱水素化反応工程には、生成物を精製する工程が含まれる。特に、精製工程のうちクエンチング(quenching)工程の後段で発生する廃水(recycle water)をリサイクルするために、カラム(column)を用いて再加熱(reboiling)した後、反応物(feed)に供給する。しかし、この過程で、廃水に含まれた軽質成分が反応物に流入されて、反応器内で酸素(O)と反応し、反応物であるブテンの転化率を減少させる現象が生じる。
【0018】
しかし、本発明は、ブテンの酸化的脱水素化反応の後に得られた生成物をクエンチング(quenching)する前に熱交換および凝縮で冷却し、軽質成分以外の廃水を反応器へリサイクルすることができる。したがって、軽質成分が反応物内の酸素と反応することを遮断することで、軽質成分が含まれた廃水の使用時に生じるブテンの転化率の減少を防止するという利点がある。また、精製工程において軽質成分を除去するためのカラムを設けなくても良く、費用を削減できるという利点もある。
【0019】
本明細書の一実施態様によると、前記(B)ステップにおいて前記重質成分を凝縮する温度は、60℃~100℃であってもよい。好ましくは、前記凝縮する温度は、80℃~100℃であってもよく、より好ましくは、90℃~100℃であってもよい。前記凝縮する温度が前記範囲を満たす場合、ブテンの酸化的脱水素化反応の後に得られた生成物のうち重質成分が凝縮し、軽質成分および1,3‐ブタジエンから効果的に分離することができる。
【0020】
本明細書の一実施態様によると、前記(B)ステップにおいて前記第1の生成物の熱交換は、当技術分野において使用される熱交換器を用いて行われ得る。例えば、多管式(Shell & Tube type)熱交換器、ブロック式(Block type)熱交換器、ジャケット式(Jacket type)熱交換器、空冷式(Air cooled type)熱交換器、スパイラル(Spiral type)熱交換器、プレート式(Plate type)熱交換器などがあるが、これに限定されるものではない。また、前記熱交換器は、1個または2個以上を用いてもよい。
【0021】
本明細書の一実施態様によると、前記第1の生成物の温度は、200℃~400℃であってもよい。具体的には、前記第1の生成物の温度は、230℃~370℃であってもよい。
【0022】
本明細書の一実施態様によると、前記(B)ステップの前記第1の生成物を熱交換させることは、前記第1の生成物を冷却することを意味し得る。前記(A)ステップで得られた第1の生成物の温度は、200℃~400℃であってもよく、前記(B)ステップの熱交換の後の温度が60℃~100℃になるように熱交換により冷却することができる。前記熱交換させるステップを経て第1の生成物の温度が前記範囲まで冷却したときに、その次の工程である凝縮する工程が可能になり、特に、前記重質成分を凝縮するための最適の温度であり得る。
【0023】
本明細書の一実施態様によると、前記重質成分を凝縮するステップは、当技術分野において使用される凝縮器を用いて行われ得る。例えば、水冷式凝縮器、空冷式凝縮器、蒸発式凝縮器などがあるが、これに限定されるものではない。前記凝縮器の内部は、60℃~100℃の温度、好ましくは、80℃~100℃の温度、より好ましくは、90℃~100℃の温度、0.1kgf/cm~1.0kgf/cmの圧力を満たすことができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本明細書の一実施態様によると、前記(B)ステップの凝縮された重質成分は、凝縮水を含み、前記(C)ステップにおいて再加熱して得られた水蒸気を回収し、前記ブテンを含む反応物に供給するステップをさらに含んでもよい。具体的には、前記凝縮された重質成分を再加熱すると、濃縮された重質成分と水蒸気が分離され得る。
【0025】
本明細書の一実施態様によると、濃縮された重質成分から分離された前記水蒸気をブテンを含む反応物にまた供給する場合、軽質成分が反応物内の酸素と反応することを遮断することができる。これにより、軽質成分が含まれた廃水の使用時に生じるブテンの転化率の減少を防止することができる。
【0026】
本明細書の一実施態様によると、前記1,3‐ブタジエンの製造方法は、前記第2の生成物を精製し、1,3‐ブタジエンを得るステップをさらに含んでもよい。前記精製するステップは、クエンチング(quenching)するステップを含んでもよい。前記精製するステップは、当技術分野において、1,3‐ブタジエンを不純物から精製するときに使用される通常の方法であれば、これに制限されない。
【0027】
本明細書の一実施態様によると、前記(A)ステップは、前記ブテンを含む反応物を予熱(pre‐heating)するステップをさらに含んでもよい。前記反応物を予熱するステップを経る場合、ブテンを含む酸化的脱水素化反応物が活性を示すことになり、短時間で効率的な反応が起こり得る。
【0028】
本明細書の一実施態様によると、前記予熱するステップにおける圧力は、0.5kgf/cm~1.5kgf/cmであってもよい。前記予熱するステップにおける圧力が前記範囲を満たす場合、ブテンを含む酸化的脱水素化反応物が活性を示すことになり、短時間で効率的な反応が起こり得る。
【0029】
本明細書の一実施態様によると、前記(A)ステップの第1の生成物を得るステップは、一つの反応器内で行われ得る。
【0030】
本明細書の一実施態様によると、前記(A)ステップの第1の生成物を得るステップは、二つ以上の反応器、すなわち、多段反応器内で行われ得る。前記多段反応器は、直列に連結されても並列に連結されてもよく、当技術分野において使用される反応器であれば、これに制限されない。
【0031】
本明細書の一実施態様によると、前記(A)ステップの第1の生成物を得るステップの圧力は、0.2kgf/cm~1.5kgf/cmであってもよい。好ましくは、0.4kgf/cm~1.0kgf/cmであってもよい。前記圧力範囲を満たした場合に最適化した転化率および選択度を維持することができる。また、前記圧力が、0.2kgf/cm未満の場合には、ブテン転化率が減少する可能性があり、1.5kgf/cmを超える場合には、ブタジエン選択度が減少する可能性がある。
【0032】
本明細書の一実施態様によると、前記ブテンを含む反応物は、C4留分、スチーム(steam)、酸素(O)および窒素(N)を含む原料であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施態様によると、前記軽質成分は、水素、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、メタン、エチレン、アセトアルデヒド、1‐ブテン、2‐ブテンおよびビニルアセチレンからなる群から選択される1以上の成分であってもよい。ただし、これに制限されるものではなく、ブテンの酸化的脱水素化反応において通常添加される軽質成分の不純物をさらに含んでもよい。
【0034】
本明細書の一実施態様によると、前記重質成分は、アクロレイン、フラン、ブタノン、ベンゼン、4‐ビニルシクロヘキセン、スチレン、4‐ホルミルシクロヘキセン、ベンゾフラン、3‐アセチル‐1‐シクロヘキセン、シクロヘキセンジカルボキシ、ベンゾフェノンおよび9‐フルオレノンからなる群から選択される1以上の成分であってもよい。ただし、これに制限されるものではなく、ブテンの酸化的脱水素化反応において通常添加される重質成分の不純物をさらに含んでもよい。
【0035】
本明細書の一実施態様によると、前記軽質成分は、1,3‐ブタジエンよりも分子量が低い化合物を意味し得る、前記重質成分は、1,3‐ブタジエンよりも分子量が高い化合物を意味し得る。
【0036】
本明細書の一実施態様によると、ブテンの酸化的脱水素化反応の際、一般的に知られているビズマス‐モリブデン触媒、フェライト系触媒などが触媒として使用され得るが、これに制限されるものではない。
【0037】
本明細書の一実施態様によると、前記ブタジエンを製造するステップは、C4留分、スチーム(steam)、酸素(O)および窒素(N)を含む原料を300℃~500℃の反応温度、0.1kgf/cm~1.5kgf/cmの圧力条件で、GHSV(Gas Hourly Space Velocity)30h-1~200h-1の条件で反応させるものであってもよい。
【0038】
前記C4留分は、ナフサ分解によって生産されたC4混合物から有用な化合物を分離して残ったC4ラフィネート‐1,2,3を意味してもよく、エチレンの二量化(dimerization)により得られるC4類を意味してもよい。
【0039】
本明細書の一実施態様によると、前記C4留分は、n‐ブタン(n‐butane)、トランス‐2‐ブテン(trans‐2‐butene)、シス‐2‐ブテン(cis‐2‐butene)、および1‐ブテン(1‐butene)からなる群から選択される1または2以上の混合物であってもよい。
【0040】
本明細書の一実施態様によると、前記スチーム(steam)または窒素(N)は、酸化的脱水素化反応において、反応物の爆発の恐れを低減し、且つ触媒のコーキング(coking)防止および反応熱の除去などのために投入される希釈ガスである。
【0041】
本明細書の一実施態様によると、前記酸素(O)は、酸化剤(oxidant)としてC4留分と反応し、脱水素化反応を起こす。
【0042】
本明細書の一実施態様によると、酸化的脱水素化反応は、下記の反応式1または反応式2によって製造され得る。
[反応式1]
+1/2O→C+H
[反応式2]
10+O→C+2H
【0043】
前記酸化的脱水素化反応によりブタンまたはブテンの水素が除去されることで、ブタジエン(butadiene)が製造される。一方、前記酸化的脱水素化反応は、前記反応式1または2のような主反応の他、一酸化炭素(CO)、または二酸化炭素(CO)などを含む副反応生成物が生成され得る。前記副反応生成物は、工程内で蓄積され続けないように分離されて系外に排出される工程を含むことができる。
【0044】
本明細書の一実施態様によると、前記ブタジエンの製造方法において、ブテンの転化率は、83%以上であってもよく、好ましくは、83.2%以上であってもよい。
【0045】
本明細書の一実施態様によると、前記ブタジエンの製造方法において、ブタジエンの選択度は、89%以上であってもよく、好ましくは、89.4%以上であってもよい。
【0046】
本明細書の一実施態様によると、前記ブタジエンの収率(Yield)は、74%以上であってもよく、好ましくは、74.4%以上であってもよい。
【0047】
図1は本明細書の一実施態様に係る1,3‐ブタジエンの製造方法を実施するための例示的な工程図である。
【0048】
図1によると、反応器に、C4留分、スチーム(steam)、酸素(O)および窒素(N)を含む原料が導入されて、酸化的脱水素化反応が行われる。反応器は、1個であってもよく、2個以上の多段反応器であってもよい。前記反応器の前に反応物である原料を予熱(pre‐heating)するステップがさらに含まれてもよい。
【0049】
酸化的脱水素化反応の後に得られた第1の生成物は、クエンチング(Quenching、QC)ステップの前に、熱交換(Heat exchange)器を経て冷却する。次いで、凝縮器(Condenser)を通過すると、軽質成分、および1,3‐ブタジエンから、重質成分が分離される。この際、前記凝縮器の温度は、60℃~100℃であってもよく、80℃~100℃であってもよく、90℃~100℃であってもよい。前記温度範囲は、重質成分が凝縮されて分離され得る温度範囲である。
【0050】
次に、分離された重質成分は、再加熱(Reboiler)器を介して重質成分を濃縮し、水蒸気を分離する。分離した水蒸気(Water recycle)は、また反応物に流入されてリサイクルされ得る。
【0051】
図1によると、前記凝縮器で分離された軽質成分と1,3‐ブタジエンは、一般的な精製工程を経て、1,3‐ブタジエンを分離することができる。
【0052】
前記のように、本明細書の一実施態様によると、1,3‐ブタジエンの製造方法は、ブテンの酸化的脱水素化反応以降の工程で、精製ステップ、特に、クエンチングするステップの前に、熱交換および凝縮により軽質成分が含まれていない廃水を得ることを目的とする。前記軽質成分が含まれていない廃水は、また反応器の反応物として回収されて酸化的脱水素化反応にリサイクルされ、この際、軽質成分が含まれていないことから、軽質成分が反応器内で酸素(O)と反応し、反応物であるブテンの転化率を減少させる現象を防止することができる。
【実施例
【0053】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0054】
<実施例>
<実験例1>
350℃、GHSV=120h-1、OBR=1、SBR=5、NBR=4の条件下で、酸化的脱水素化反応を行った。
【0055】
軽質成分および重質成分が含まれていない蒸留水を加熱して得られた水蒸気を反応物に流入した。
【0056】
<実施例1>
【0057】
350℃、GHSV=120h-1、OBR=1、SBR=5、NBR=4の条件下で、酸化的脱水素化反応を行った。
【0058】
図1の工程のように、得られた生成物を、精製工程の前に、順に、熱交換、凝縮により、軽質成分および気体と重質成分を分離した。より具体的には、熱交換工程の前の1次生成物の温度は360℃であり、2個の多管式(shell & tube)熱交換器、またはそれ以上の熱交換効果を有し得る装備を用いて、熱交換を行った。最初の熱交換器を通過した生成物の温度は250℃であり、二番目の熱交換器を通過した生成物の温度は90℃であった。
【0059】
得られた重質成分を加熱して得られた水蒸気を反応器に回収して反応物に流入し、濃縮された重質成分は、以降の精製工程で分離した。
【0060】
前記凝縮過程で分離した軽質成分と1,3‐ブタジエンは、以降の精製工程(クエンチング)により、1,3‐ブタジエンを製造した。
【0061】
<実施例2>
実施例1で、二番目の熱交換器を通過した生成物の温度を100℃に調節した以外は、実施例1と同様に行った。
【0062】
<比較例1>
350℃、GHSV=120h-1、OBR=1、SBR=5、NBR=4の条件下で、酸化的脱水素化反応を行った。
【0063】
図2の工程のように、熱交換および凝縮する工程なしに、得られた生成物をクエンチングして分離した軽質成分を含む廃水を反応器に回収し、反応物に流入した。
【0064】
前記得られた生成物を精製工程により、1,3‐ブタジエンを製造した。
(GHSV=Gas Hourly Space Velocity、OBR=Oxygen/total mixed‐butene ratio、SBR=Steam/total mixed‐butene ratio、NBR=Nitrogen/total mixed‐butene ratio)
【0065】
前記実験例1および比較例1で、ブテン転化率、ブタジエン選択度、ブタジエン収率、COx選択度および副生成物選択度を測定した結果を、下記表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
また、前記実施例1~2および比較例1の軽質および重質の分離シミュレーション結果を下記表2に示した。より具体的には、下記表2の結果は、実験により得られたブテン転化率、1,3‐ブタジエン選択度、反応温度、および生成ガスの組成などを、ASPEN plus(プロセスシミュレーションプログラム)に入力して得た。すなわち、反応で生成された水の流量と、軽質有機物の組成比は実験によって得、凝縮水と凝縮した軽質有機物の組成比はシミュレーションによって得た結果である。下記の軽質有機物の含量は、小さいほど、すなわち、0に近いほど好ましい。
【0068】
【表2】
【0069】
前記表1および表2によると、実施例1および実施例2のように、ブテンの酸化的脱水素化反応工程のうち、精製ステップ、特に、クエンチングするステップの前に、熱交換および凝縮により、軽質成分が含まれていない廃水をまたリサイクルする場合、ブテンの転化率を高めることができる。
【0070】
実験例1と比較例1とを比較すると、軽質成分が含まれた廃水をリサイクルした比較例1に比べ、軽質成分が含まれていない水蒸気を活用した実験例1の場合、ブテン転化率が高いことを確認することができる。これにより、ブタジエンの収率も高いことを確認することができる。したがって、軽質有機物の含量が比較例1よりも小さい実施例1および実施例2からも、比較例1よりも高いブテン転化率の効果を得ることができる。
【0071】
これは、軽質成分が、反応器内で酸素(O)と反応し、反応物であるブテンの転化率を減少させるが、実験例1および実施例1~2のように、軽質成分が含まれていないか、もしくは一部分離された水蒸気を反応物にリサイクルする場合、ブテンの転化率を減少させる現象を防止できるためである。
【0072】
以上、本明細書の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
図1
図2