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特許7092442液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220621BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020560757
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2020001118
(87)【国際公開番号】W WO2020171401
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0020506
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クォン、スーンホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヒョンスク
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ミン、スンジョーン
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045180(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0061376(KR,A)
【文献】国際公開第2015/016121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合型液晶配向重合体;および
下記化学式1で表される触媒前駆体化合物を含
前記重合型液晶配向重合体は、
下記化学式2で表される繰り返し単位、下記化学式3で表される繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む、
液晶配向剤組成物:
[化学式1]
【化1】
上記化学式1中、
は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、または炭素数6~20のアリールオキシ基のうちの一つであり、
およびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり、
は少なくとも1個以上のヒドロキシ基(-OH)で置換された炭素数2~10のアルキル基、炭素数2~30のアリールアルキル基、炭素数2~30のシクロアルキルアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基である。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
上記化学式2~4中、
およびR のうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
~X はそれぞれ独立して、4価の官能基であり、
~Y はそれぞれ独立して、光重合性反応基を含む2価の官能基である。
【請求項2】
前記X~Xはそれぞれ独立して、下記化学式5で表される4価の官能基のうちの一つである、請求項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式5]
【化5】
上記化学式5中、
~R10はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、
は単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CR1112-、-CONH-、-COO-、-(CH-、-O(CHO-、-COO-(CH-OCO-、-R13N-(CH-NR14-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであり、
前記R11~R14はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のハロアルキル基のうちの一つであり、
bはそれぞれ独立して、1~10の整数である。
【請求項3】
上記化学式1は下記化学式1-1で表される、請求項1又は2に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式1-1]
【化6】
上記化学式1-1中、
は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、または炭素数6~20のアリールオキシ基のうちの一つであり、
およびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つである。
【請求項4】
上記化学式1は下記化学式1-2で表される、請求項1又は2に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式1-2]
【化7】
上記化学式1-2中、
は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、または炭素数6~20のアリールオキシ基のうちの一つであり、
およびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり、
は水素、炭素数1~のアルキル基、炭素数1~のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~28のアリール基のうちの一つである。
【請求項5】
上記化学式1-2中、
、R、R それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R は炭素数1~8のアルキル基である、請求項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項6】
上記化学式1で表される触媒前駆体化合物は、前記重合型液晶配向重合体100重量部に対して0.1重量部~30重量部で含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項7】
下記数式1による粘度変化率が5%以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物:
[数式1]
粘度変化率(%)=(常温で7日間保管後の液晶配向剤組成物の粘度-最初の液晶配向剤組成物の粘度)/最初の液晶配向剤組成物の粘度*100
上記数式1中の液晶配向剤組成物の粘度は25℃の温度、ウベローデ粘度計(Ubbelohde Viscometer)を用いて測定する。
【請求項8】
前記光重合性反応基を含む2価の官能基は、下記化学式6-1~下記化学式6-3で表される2価の有機基のうちの一つを含む、請求項1又は2に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式6-1]
【化8】
[化学式6-2]
【化9】
[化学式6-3]
【化10】
上記化学式6-1~化学式6-3中、
~Aは直接結合、-O-、-S-、-NH-、または炭素数1~10のアルキレン基のうちの一つであり、
15~R20はそれぞれ独立して、水素または炭素数1~10のアルキル基のうちの一つである。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と;
前記塗膜を乾燥する段階と;
前記乾燥された塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階と;を含む、液晶配向膜の製造方法。
【請求項10】
前記塗膜を乾燥する段階は50℃~130℃の温度で行われる、請求項9に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項11】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階をさらに含む、請求項または1に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項12】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、
前記配向処理された塗膜を100℃~150℃で熱処理する段階を含む、請求項1に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項13】
前記乾燥された塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階で、
配向処理された塗膜に下記化学式7で表される触媒化合物が含まれる、請求項から1のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法:
[化学式7]
【化11】
上記化学式7中、
、RおよびRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~10のアルキル基である。
【請求項14】
請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜。
【請求項15】
請求項1に記載の液晶配向膜を含む、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年2月21日付の韓国特許出願第10-2019-0020506号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、低温の焼成過程で十分なイミド化率を示し、優れた電気的特性および配向特性を実現できる液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、情報伝達の高速化および高密度化、伝達媒体の多様化および多機能化に応じて、消費者が大画面、高画質、多機能および高機能性などの高品質の製品を要求するに伴い、大画面の平板ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)が登場するようになった。ディスプレイの大型化および薄型化とノートパソコンの需要が増加するに伴い、LCDやPDP、リアプロジェクション(Rear-projection)TVなどの様々な形態の平板ディスプレイが開発され商用化されている。
【0004】
しかし、このようなディスプレイは自然光などの外部光に露出する場合、表面反射光により利用者の目に疲労感を与えるか頭痛を誘発し、ディスプレイ内部で作られるイメージが鮮明な像として認識できない問題などが発生している。すなわち、有機電界発光素子(OLED)または液晶表示素子(LCD)などの画像表示装置においては眩しさ現象、カラーシフト、外光の反射または像の映り込みによるコントラストの低下や視認性の低下を防止することが要求される。
【0005】
光散乱または光干渉などを用いて像の映り込みや反射などを減らすために、画像表示装置の表面に反射防止フィルムなどの光学積層フィルムを形成するか、または有機電界発光素子(OLED)パネルの構造を変更するなどの方法が提示されている。
【0006】
一方、液晶表示素子において、液晶配向膜は、液晶を一定の方向に配向させる役割を担当している。具体的には、液晶配向膜は、液晶分子の配列に方向子(director)の役割を果たして電場(electric field)により液晶が動いて画像を形成する時、適当な方向を定めるようにする。液晶表示素子において、均一な輝度(brightness)と高い明暗比(contrast ratio)を得るためには液晶を均一に配向することが必須である。
【0007】
従来の液晶を配向させる方法の一つとして、ガラスなどの基板にポリイミドなどの高分子膜を塗布し、この表面をナイロンやポリエステルなどの繊維を用いて一定の方向に擦るラビング(rubbing)方法が用いられた。しかし、ラビング方法は、繊維質と高分子膜が摩擦する時に微細なホコリや静電気(electrical discharge:ESD)が発生することがあり、液晶パネルの製造時に深刻な問題を引き起こすことがある。
【0008】
前記ラビング方法の問題を解決するために、最近では摩擦でなく光照射によって高分子膜に異方性(非等方性、anisotropy)を誘導し、これを用いて液晶を配列する光配向法が研究されている。
【0009】
前記光配向法に使用できる材料としては多様な材料が紹介されており、その中でも液晶配向膜の良好な諸般性能のためにポリイミドが主に使用されている。しかし、ポリイミドは、溶媒の溶解性が劣り、溶液状態でコーティングして配向膜を形成させる製造工程上に直ちに適用するには困難がある。
【0010】
したがって、溶解性に優れたポリアミック酸またはポリアミック酸エステルなどの前駆体形態でコーティングした後、200℃~230℃の温度で熱処理工程を経てポリイミドを形成させ、そこに光照射を行って配向処理を行うことになる。
【0011】
しかし、高温の焼成過程で、ポリイミド中に残留するポリアミック酸やポリイミドからデポリメリゼーション(depolymerization)反応が行われて形成されたポリアミック酸の副反応が進行するため、液晶表示素子で高品位の駆動特性を実現するための高い水準の残像特性を満たさない限界があった。
【0012】
そこで、低温の焼成過程で十分なイミド化率が具現されて電気的特性を高め、液晶配向膜としての配向特性を達成しながらも、効果的に視認性の低下を防止できる液晶配向剤組成物の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、低温の焼成過程で十分なイミド化率を示し、優れた電気的特性および配向特性を実現できる液晶配向剤組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記の液晶配向剤組成物を用いた液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とこれを含む液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、重合型液晶配向重合体および下記化学式1で表される触媒前駆体化合物を含む、液晶配向剤組成物が提供される。
【0017】
[化学式1]
【化1】
【0018】
上記化学式1中、
は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、または炭素数6~20のアリールオキシ基のうちの一つであり、
およびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり、
は少なくとも1個以上のヒドロキシ基(-OH)で置換された炭素数2~10のアルキル基、炭素数2~30のアリールアルキル基、炭素数2~30のシクロアルキルアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基である。
【0019】
本発明ではまた、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と;前記塗膜を乾燥する段階と;前記乾燥された塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階と;前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階とを含む、液晶配向膜の製造方法が提供される。
【0020】
本発明ではまた、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とこれを含む液晶表示素子が提供される。
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態による液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子についてより詳細に説明する。
【0022】
本明細書において特別な制限がない限り、次の用語は下記のように定義される。
【0023】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0024】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物中の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0025】
本明細書において「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうち1個以上を含むヘテロ環基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換または非置換のものを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。すなわち、ビフェニル基はアリール基であり得、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。
【0026】
本明細書において、
【化2】
または
【化3】
は、他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0027】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分岐鎖であり得、炭素数は特に限定されないが、1~10であることが好ましい。他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書において、ハロアルキル基は、上述したアルキル基にハロゲン基が置換された官能基を意味し、ハロゲン基の例としてはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。前記ハロアルキル基は置換または非置換され得る。
【0029】
本明細書において、アリール基は、アレーン(arene)に由来する1価の官能基であって、特に限定されないが炭素数6~20であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であり得る。前記単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記アリール基は置換または非置換され得る。
【0030】
本明細書において、炭素数6~20のアリールカルボニル基は、カルボニル基の一末端にアリール基が結合した官能基であって、上述したアリール基に関する説明が適用される。前記アリールカルボニル基は置換または非置換され得る。
【0031】
本明細書において、炭素数6~20のアリールオキシ基は、酸素の一末端にアリール基が結合した官能基であって、上述したアリール基に関する説明が適用される。前記アリールオキシ基は置換または非置換され得る。
【0032】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来する2価の官能基であって、これらは2価の官能基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。例えば、直鎖状または分岐状であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などであり得る。前記アルキレン基は置換または非置換され得る。
【0033】
本明細書において、アリーレン基は、アレーン(arene)に由来する2価の官能基であって、これらは2価の官能基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。
【0034】
本明細書において、炭素数1~10のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状または環状のアルコキシ基であり得る。具体的には、炭素数1~10のアルコキシ基は、炭素数1~10の直鎖状のアルコキシ基;炭素数1~5の直鎖状のアルコキシ基;炭素数3~10の分岐鎖または環状のアルコキシ基;または炭素数3~6の分岐鎖または環状のアルコキシ基であり得る。より具体的には、炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基またはシクロヘプトキシ基などが挙げられる。前記アルコキシ基は置換または非置換され得る。
【0035】
本明細書において、多価官能基は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基で、例えば2価の官能基、3価の官能基、4価の官能基が挙げられる。一例として、シクロブタンに由来する4価の官能基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4個が除去された形態の残基を意味する。
【0036】
本明細書において、直接結合または単結合は、当該位置にいかなる原子または原子団も存在せず、結合線で連結されることを意味する。具体的には、化学式中のRまたはL(aおよびbは、それぞれ1~20の整数)で表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0037】
本明細書において、重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例としては、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は40℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線によりMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0038】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0039】
I.液晶配向剤組成物
本発明の一実施形態によれば、重合型液晶配向重合体;および上記化学式1で表される触媒前駆体化合物を含む液晶配向剤組成物が提供され得る。
【0040】
本発明者らは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物のように、重合型液晶配向重合体と一緒に化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を混合することによって、液晶配向膜の製造工程で上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物がイソシアネートと後述する化学式7で表される触媒化合物に分解され、低温で焼成しても十分なイミド化率を示し、これにより、優れた液晶配向特性および電気的特性を有する液晶配向膜を製造することができることを実験により確認して発明を完成した。
【0041】
また、上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を液晶配向剤組成物に含む場合、液晶配向剤組成物の長期保管時にも優れた安定性を示すことを確認した。
【0042】
具体的には、本発明では触媒として化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を用いることによって、従来使用されてきた触媒に比べて副反応による物質発生を減少させて貯蔵安定性を確保しながらも、低温で焼成過程を経ても、配向膜内に十分なイミド化率を確保することによって優れた配向膜物性を確保できることを確認することができた。
【0043】
また、上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を液晶配向剤組成物に含む場合、液晶配向膜の製造時に触媒前駆体化合物が分解されることによって作られるイソシアネートが液晶配向剤用重合体と反応してアミド(Amide)または尿素(urea)を形成して、液晶配向膜の電気的特性を向上させることができることを確認して発明を完成した。
【0044】
(1)重合型液晶配向重合体
前記一実施形態においての液晶配向剤組成物は重合型液晶配向重合体が含まれる。前記液晶配向剤組成物では液晶配向用重合体を使用することができ、前記液晶配向用重合体を配向させる多様な方法により前記液晶配向用重合体は分解型、重合型、硬化型、異性化型などに分類される。
【0045】
本発明では液晶配向用重合体の重合によって配向性が確保される重合型液晶配向重合体を使用することができる。前記重合型液晶配向重合体は、光配向またはラビング配向処理時に反応して最終製造される液晶配向膜の異方性を誘導することができ、配向以後の焼成工程によりイミド化に転換されて液晶を配向させることができる。
【0046】
具体的には、重合型液晶配向重合体は、液晶配向重合体の主鎖または側鎖に光重合性反応基が導入された構造を使用することにより具現される。光重合性反応基とは、紫外線を照射することによってシクロ添加による重合反応を起こすことができる反応基を意味する。光重合性反応基が主鎖に含まれる場合、主鎖間の結合で配向が起こるため、AC駆動条件でも液晶配向性能が一定に維持される。
【0047】
前記光重合性反応基は特に限定されないが、例えばケイ皮酸(cinnamate)、シンナミド(cinnamide)またはカルコン(chalcone)などの反応基であり得る。
【0048】
前記重合型液晶配向重合体としては、光重合性反応基が導入されたポリイミド、その前駆体(ポリアミック酸またはポリアミック酸エステル)、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0049】
主鎖または側鎖に光重合性反応基が導入されたポリアミック酸エステルおよびポリアミック酸などのポリイミド前駆体またはポリイミドに偏光した紫外線を照射すると[2+2]シクロ添加(Cycloaddition)反応が誘導されるが、この反応によって液晶は照射された偏光紫外線の垂直な方向にまたは平行な方向に長軸が配向される。また、前記重合体に導入されたC=C結合の追加的な光反応によって、光反応速度および安定性をさらに向上させることができる。
【0050】
より具体的には、前記一実施形態の液晶配向剤組成物に含まれる重合型液晶配向重合体は、下記化学式2で表される繰り返し単位、下記化学式3で表される繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含み得る。
【0051】
[化学式2]
【化4】
[化学式3]
【化5】
[化学式4]
【化6】
【0052】
上記化学式2~4中、RおよびRのうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、X~Xはそれぞれ独立して、4価の官能基であり、Y~Yはそれぞれ独立して、光重合性反応基を含む2価の官能基である。
【0053】
すなわち、前記重合体は、ポリアミック酸繰り返し単位の1種からなる重合体、ポリアミック酸エステル繰り返し単位の1種からなる重合体、ポリイミド繰り返し単位の1種からなる重合体、またはこれらの2種以上の繰り返し単位が混合した共重合体を含み得る。
【0054】
上記化学式2で表される繰り返し単位、上記化学式3で表される繰り返し単位、および上記化学式4で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位は、前記重合体の主鎖を形成することができる。
【0055】
具体的には、前記ポリイミド繰り返し単位は上記化学式2で表される繰り返し単位を含み、前記ポリアミック酸エステル繰り返し単位は上記化学式3で表される繰り返し単位を含み、ポリアミック酸繰り返し単位は上記化学式4で表される繰り返し単位を含み得る。
【0056】
上記化学式2~4中、X~Xは互いに同一または異なり、それぞれ独立して、4価の官能基であり得る。前記X~Xはポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミドの合成時に使用されるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来する官能基であり得る。
【0057】
より具体的には、前記X~Xはそれぞれ独立して、下記化学式5で表される4価の官能基のうちの一つであり得る。
【0058】
[化学式5]
【化7】
【0059】
上記化学式5中、R~R10はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Lは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CR1112-、-CONH-、-COO-、-(CH-、-O(CHO-、-COO-(CH-OCO-、-R13N-(CH-NR14-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであり、前記R11~R14はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のハロアルキル基のうちの一つであり、bはそれぞれ独立して、1~10の整数である。
【0060】
好ましくは、前記X~Xはそれぞれ独立して、下記化学式からなる群から選択される:
【0061】
【化8】
【0062】
一方、上記化学式2~4中のY~Yは互いに同一または異なり、それぞれ独立して、光重合性反応基を含む2価の官能基であり得る。前記Y~Yはポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミドの合成時に使用されるジアミン化合物に由来する官能基であり得る。すなわち、光重合性反応基を含むジアミン化合物に由来する官能基であり得る。
【0063】
具体的には、前記光重合性反応基を含む2価の官能基は、下記化学式6-1~下記化学式6-3で表される2価の有機基のうちの一つを含み得る。
【0064】
[化学式6-1]
【化9】
[化学式6-2]
【化10】
[化学式6-3]
【化11】
【0065】
上記化学式6-1~化学式6-3中、A~Aは直接結合、-O-、-S-、-NH-、または炭素数1~10のアルキレン基のうちの一つであり、R15~R20はそれぞれ独立して、水素または炭素数1~10のアルキル基のうちの一つである。
【0066】
好ましくは、上記化学式6-1~化学式6-3中の前記R15~R20はそれぞれ独立して、水素、2-メチル、3-メチル、2,3-ジメチル、2,6-ジメチル、3,5-ジメチルであり得る。
【0067】
また、好ましくは、前記A~Aは-O-、-NH-、-(CH)-、または-(CH-であり得る。
【0068】
(2)触媒前駆体化合物
前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、上述した重合体以外に、触媒前駆体化合物を含むことができ、前記触媒前駆体化合物は、上記化学式1で表される特定の化学構造を有し得る。前記触媒前駆体化合物の物理/化学的特性は、上記化学式1の特定構造に起因したと考えられる。
【0069】
前記触媒前駆体化合物は、常温の液晶配向剤組成物内では前駆体として存在するが、液晶配向膜の製造工程で触媒化合物により分解される化合物を意味する。
【0070】
具体的には、上記化学式1で表される触媒前駆体化合物は、常温の液晶配向剤組成物内では安定的に維持されるが、100℃以上の高温ではCurtius rearrangementによってアミノアルコールとイソシアネートに分解される。
【0071】
前記Curtius rearrangementによって得られるアミノアルコールは強力な触媒化合物として作用することができ、前記Curtius rearrangementによって得られるイソシアネートは、液晶配向剤用重合体中にカルボン酸と反応してアミドを形成するか、アミンと反応して尿素を形成して、液晶配向膜の電気的特性を向上させることができる。
【0072】
このような特徴を用いて、本発明者らは液晶配向剤組成物内に上記化学式1で表される触媒前駆体化合物を含んで、常温の液晶配向剤組成物の溶液安定性を向上させた。そして、液晶配向剤組成物を100℃以上の高温で熱処理する液晶配向膜の形成工程で上記化学式1で表される触媒前駆体化合物をアミノアルコールおよびイソシアネートで分解させてアミノアルコールの触媒作用によって重合反応を誘導することができる。このように触媒として作用するアミノアルコールは、触媒作用と共に液晶配向膜の硬化を誘導して膜強度の向上に寄与できる。
【0073】
具体的には、上記化学式1で表される触媒前駆体化合物の分解によって生成されるアミノアルコールによってポリアミック酸またはポリアミック酸エステルの繰り返し単位がポリイミドの繰り返し単位に転換されるように反応を誘導して高いイミド化転換率の液晶配向膜を形成することができるだけでなく、非溶解性物質が生成される副反応が抑制されて安定性を向上させることができる。
【0074】
上記化学式1中、Rは炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、または炭素数6~20のアリールオキシ基のうちの一つであり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり、Rは少なくとも1個以上のヒドロキシ基(-OH)が置換された炭素数2~10のアルキル基、炭素数2~30のアリールアルキル基、炭素数2~30のシクロアルキルアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり得る。
【0075】
上記化学式1中、アリールアルキル基、シクロアルキルアルキル基、およびアルコキシアルキル基は置換されたアルキル基を意味する。具体的には、アリールアルキル基はアリール基で置換されたアルキル基を意味し、シクロアルキルアルキル基はシクロアルキル基で置換されたアルキル基を意味し、アルコキシアルキル基はアルコキシ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0076】
上記化学式1は、下記化学式1-1で表される。
【0077】
[化学式1-1]
【化12】
【0078】
上記化学式1-1中、R、RおよびRは上記化学式1で定義したとおりであり、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり得る。
【0079】
具体的には、上記化学式1-1中、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの一つは水素であり、残りは水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり得る。すなわち、上記化学式1は下記化学式1-2で表される。
【0080】
[化学式1-2]
【化13】
【0081】
上記化学式1-2中、R、RおよびRは上記化学式1で定義したとおりであり、Rは水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基のうちの一つであり得る。
【0082】
好ましくは、上記化学式1-2中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり得る。前記炭素数1~10のアルキル基の例としてはメチル基、エチル基などが挙げられる。
【0083】
より好ましくは、上記化学式1で表される触媒前駆体化合物は、下記化学式1-aで表される化合物または下記化学式1-bで表される化合物を含み得る。
【0084】
[化学式1-a]
【化14】
[化学式1-b]
【化15】
【0085】
上記化学式1で表される触媒前駆体化合物は、前記重合体100重量部に対して0.1重量部~30重量部、または1重量部~30重量部、または1重量部~20重量部、または1重量部~10重量部で含まれることが好ましい。
【0086】
上記化学式1で表される触媒前駆体化合物は、100℃以上の温度で下記化学式7で表される触媒化合物および化学式8で表されるイソシアネートで分解される。
【0087】
[化学式7]
【化16】
[化学式8]
【化17】
【0088】
上記化学式7および化学式8中のR、R、RおよびRに関する内容は、上記化学式1-2で定義したとおりである。
【0089】
上記化学式1で表される触媒前駆体化合物の分解によって生成される上記化学式7で表される触媒化合物は重合反応の触媒として作用することができ、具体的にはイミド重合反応の触媒として作用することができる。
【0090】
より具体的には、上記化学式1-2で表される触媒前駆体化合物は、100℃以上の温度で下記化学式7で表される触媒化合物および化学式8で表されるイソシアネートで分解されるCurtius rearrangementは下記反応式1のメカニズムによるものである。
【0091】
[反応式1]
【化18】
【0092】
(3)液晶配向剤組成物
本発明者らは前記一実施形態の液晶配向剤組成物のように、重合型液晶配向重合体と一緒に化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を混合することによって、液晶配向膜の製造工程で上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物がイソシアネートとアミノアルコールで分解され、高いイミド化転換率により優れた液晶配向特性を有する液晶配向膜を製造することができることを実験を通して確認した。
【0093】
上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物は重合触媒前駆体、具体的にはイミド化触媒前駆体として作用することができる。
【0094】
本発明者らは上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を液晶配向剤組成物に含む場合、液晶配向膜の製造時に触媒前駆体化合物が分解されることによって作られるアミノアルコールがポリアミック酸またはポリアミック酸エステルなどの前駆体のイミド化触媒としての用途を有することを確認した。
【0095】
従来から使用されてきたアミン触媒の場合、ポリイミド転換率はある程度確保できるが、ポリイミド前駆体に相当するポリアミック酸またはポリアミック酸エステルとの副反応により非溶解性物質が生成されることによって液晶配向剤組成物の粘度が増加するなど貯蔵安定性が低下する限界があった。
【0096】
これに対し、本発明では触媒として化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を用いることによって、従来から使用されてきたアミン類触媒に対して副反応による物質の発生を減少させて貯蔵安定性を確保しながらも、アミン触媒としての優れたイミド化転換率を達成することによって優れた配向膜物性を確保できることが確認できた。
【0097】
また、上記化学式1で表される構造を有する触媒前駆体化合物を液晶配向剤組成物に含む場合、液晶配向膜の製造時に触媒前駆体化合物が分解されることによって作られるイソシアネートが液晶配向剤用重合体中にカルボン酸と反応してアミドを形成するか、アミンと反応して尿素を形成して、液晶配向膜の電気的特性を向上させることを確認して発明を完成した。
【0098】
上述のように、前記重合型液晶配向重合体;および上記化学式1で表される触媒前駆体化合物を含む液晶配向剤組成物は、下記数式で表される粘度変化率が5%以下、0.1%以上5%以下、1%以上5%以下、または1%以上3%以下、2%以上3%以下である。
【0099】
[数式1]
粘度変化率(%)=(常温で7日間保管後の液晶配向剤組成物の粘度-最初の液晶配向剤組成物の粘度)/最初の液晶配向剤組成物の粘度*100
【0100】
前記粘度を測定する方法の例は特に限定されるものではないが、例えば、25℃の温度でウベローデ粘度計(Ubbelohde Viscometer)を用いて測定できる。
【0101】
II.液晶配向膜の製造方法
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と;前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と;前記塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階3)と;を含む、液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0102】
前記段階1は、上述した液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記液晶配向剤組成物に関する内容は、前記一実施形態で上述した内容を全て含む。
【0103】
前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法を使用することができる。
【0104】
そして、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒に溶解または分散させたものであり得る。前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0105】
また、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒以外にも他の成分をさらに含み得る。非制限的な例として、前記液晶配向剤組成物が塗布されたとき、膜厚均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは液晶配向膜と基板との密着性を向上させるか、あるいは液晶配向膜の誘電率や導電性を変化させるか、あるいは液晶配向膜の緻密性を増加させる添加剤をさらに含み得る。このような添加剤としては各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが挙げられる。
【0106】
前記段階2は、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0107】
前記塗膜の乾燥段階はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、50℃~130℃、または70℃~130℃の温度で行うことができる。
【0108】
前記段階3は、前記塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階である。
【0109】
前記配向処理段階での塗膜は、乾燥段階直後の塗膜を意味し、前記乾燥段階以後の熱処理を経た後の塗膜でもある。前記「乾燥段階直後の塗膜」は、乾燥段階以後に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階を行わず、直ちに光を照射することを意味し、熱処理以外の他の段階は付加することができる。
【0110】
前記配向処理する段階における光照射は、150~450nmの波長の偏光した紫外線を照射することである。この時、露光の強度は、液晶配向剤用重合体の種類によって異なり、10mJ/cm~10J/cmのエネルギー、好ましくは30mJ/cm~2J/cmのエネルギーを照射することができる。
【0111】
前記紫外線としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、微細にアルミニウムまたは金属ワイヤが蒸着された偏光板、または石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線から選ばれた偏光紫外線を照射して配向処理する。この時、偏光された紫外線は、基板面に垂直に照射することもでき、特定の角で入射角を傾斜して照射することもできる。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に付与される。
【0112】
また、前記配向処理する段階におけるラビング処理は、ラビング布を用いる方法を使用することができる。より具体的には、前記ラビング処理は、金属ローラにラビング布の生地を貼り付けたラビングローラを回転させながら熱処理段階以後の塗膜の表面を一方向にラビングすることができる。
【0113】
前記配向処理する段階を経ると、配向処理された塗膜に下記化学式7で表される触媒化合物が含まれる。
【0114】
[化学式7]
【化19】
【0115】
上記化学式7中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~10のアルキル基である。
【0116】
本発明は、液晶配向剤組成物内では上記化学式1で表される触媒前駆体化合物を添加して組成物内での触媒作用を抑制し、前記配向処理する段階で上記化学式1で表される触媒前駆体化合物が上記化学式7で表される触媒化合物に分離されるように誘導することができる。これにより、組成物では触媒前駆体化合物の分散性および安全性を高めることができ、配向膜では重合反応の誘導により膜強度の向上効果を実現することができる。
【0117】
前記塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階3)以後に、必要に応じて前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階4)をさらに含み得る。前記段階4は、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階である。この時、前記熱処理はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、100℃~150℃、または130℃以上150℃以下の温度で行うことができる。
【0118】
また、必要に応じて、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、前記配向処理された塗膜を100℃~150℃で熱処理する段階、および前記配向処理された塗膜を200℃以上で熱処理する段階を含み得る。
【0119】
一方、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)以後に必要に応じて、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階をさらに含み得る。前記熱処理はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、150℃~250℃で行われることが好ましい。この過程で液晶配向剤をイミド化させることができる。
【0120】
すなわち、前記液晶配向膜の製造方法は、上述した液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階(段階3)と、前記熱処理された塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階4)と、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階5)とを含み得る。
【0121】
また、必要に応じて、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階5)でも、前記配向処理された塗膜を100℃~150℃で熱処理する段階および前記配向処理された塗膜を200℃以上で熱処理する段階を含み得る。
【0122】
III.液晶配向膜
また、本発明は、上述した液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜を提供する。具体的には、前記液晶配向膜は、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含み得る。前記配向硬化物とは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向工程および硬化工程を経て得られる物質を意味する。
【0123】
上述のように、重合型液晶配向重合体;および上記化学式1で表される触媒前駆体化合物を混合して用いると、低い焼成温度でも十分なイミド化転換率が確保され、電気的特性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0124】
前記液晶配向膜の厚さは特に限定されるものではないが、例えば、0.01μm~1μmの範囲内で自由に調節可能である。前記液晶配向膜の厚さが特定の数値ほど増加または減少する場合液晶配向膜で測定される物性も一定の数値ほど変化することができる。
【0125】
前記液晶配向膜は、ATR法によりFT-IRスペクトルを測定して、前記配向膜に含まれている重合体分子内のイミド構造比率を測定して計算したイミド化転換率が70%以上、70%以上90%以下、73%以上88%以下、または75%以上86%以下である。
【0126】
IV.液晶表示素子
また、本発明は、上述した液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【0127】
前記液晶配向膜は、公知の方法によって液晶セルに導入され、前記液晶セルは、同様に公知の方法によって液晶表示素子に導入される。前記液晶配向膜は、前記一実施形態の液晶配向剤組成物から製造されて優れた諸般物性と共に優れた安定性を実現することができる。これにより、高い信頼度を示すことができる液晶表示素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0128】
本発明は、低温の焼成過程で十分なイミド化率を示し、優れた電気的特性および配向特性を実現できる液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0129】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
【0130】
製造例1:触媒前駆体化合物Aの合成
【化20】
【0131】
プロピオン酸メチル(Methyl propionate)10.6g(0.12mol)とプロピレンオキシド(propylene oxide)7g(0.12mol)、ジメチルヒドラジン(dimethyl hydrazine)7.24g(0.12mol)をイソプロピルアルコール(iso-propyl alcohol、IPA)121mlに入れて、55℃で72時間攪拌した。溶媒凝縮機を用いて溶媒を除去した後、酢酸エチル(Ethyl acetate)を用いて再結晶して得られた白い固体を真空オーブンで乾燥して、触媒前駆体化合物A 15g(0.086mol、収率71%)を製造した。
【0132】
製造例2:触媒前駆体化合物Bの合成
【化21】
【0133】
プロピオン酸メチル(Methyl propionate)の代わりにメチルアセテート(Methyl acetate)を使用したことを除いて、前記製造例1と同様の方法で、触媒前駆体化合物B 16g(0.1mol、収率83%)を製造した。
【0134】
<実施例:液晶配向剤組成物の製造>
<実施例:液晶配向剤組成物、液晶配向膜および液晶配向セルの製造>
実施例1
(1)液晶配向剤組成物の製造
機械攪拌装置に250mLの三つ口フラスコを固定し、前記フラスコを水と氷で満たした容器に浸して冷却した。その後、窒素雰囲気下、前記フラスコに(E)-4-aminophenyl 3-(4-aminophenyl)acrylate(10.288g、0.040mol)をN-メチルピロリドン(NMP)99.668gに溶解した後、1時間攪拌した。この時、フラスコの温度は、氷を使用して0℃~10℃に維持した。
【0135】
その後、窒素ガスを通過させながら前記フラスコに、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)7.3g(0.037mol)を入れて、24時間重合した。
【0136】
前記重合体20gをNMP8.65g、GBL(γ-ブチロラクトン)19.95g、2-ブトキシエタノール11.4gの混合溶媒に溶かして5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液に、製造例1の触媒前駆体化合物A 0.1gを入れて溶かした後、これをポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズ0.1μmのフィルターで加圧ろ過して、液晶配向剤組成物を製造した。
【0137】
(2)液晶配向膜の製造
2.5cmx2.7cmの大きさを有する四角形のガラス基板上に厚さ60nm、電極幅3μm、および電極間間隔が6μmの櫛歯形状のIPS(in-plane switching)モード型のITO電極パターンが形成された基板(下板)と電極パターンが形成されないガラス基板(上板)にそれぞれスピンコート方式を用いて液晶配向剤組成物を塗布した。
【0138】
次に、液晶配向剤が塗布された基板を約80℃のホットプレート上に置き、100秒間乾燥して溶媒を蒸発させた。このようにして得られた塗膜を配向処理するために、上/下板それぞれの塗膜に、線偏光子付き露光器を用いて365nmの紫外線を約0.1~1J/cm~10J/cmの露光量で照射した。その後、配向処理された上/下板を約150℃のオーブンで30分間焼成(硬化)して、膜厚さ0.1μmの液晶配向膜を得た。
【0139】
(3)液晶配向セルの製造
4.5μm大きさのボールスペーサが含浸されたシーリング剤(sealing agent)を液晶注入口を除いた上板の周縁に塗布した。そして、上板および下板に形成された液晶配向膜が互いに対向して配向方向が互いに並ぶように整列させた後、上下板を貼り合わせ、シーリング剤をUVおよび熱硬化することによって、空セルを製造した。そして、前記空セルに液晶を注入し、注入口をシーリング剤で密封して、液晶配向セルを製造した。
【0140】
実施例2
前記製造例1の触媒前駆体化合物Aの代わりに前記溶液に製造例2の触媒前駆体化合物Bを添加したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0141】
実施例3
前記(E)-4-aminophenyl 3-(4-aminophenyl)acrylateの代わりに2,4-diaminophenyl cinnamateを添加したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0142】
実施例4
前記(E)-4-aminophenyl 3-(4-aminophenyl)acrylateの代わりに(E)-phenyl 3-(2,4-diaminophenyl)acrylateを添加したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0143】
比較例1
前記製造例1の触媒前駆体化合物Aを添加しないことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0144】
比較例2
前記製造例1の触媒前駆体化合物Aの代わりに、N,N-ジメチルドデシルアミン(N,N-dimethyldodecylamine)を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0145】
比較例3
前記製造例1の触媒前駆体化合物Aの代わりに下記化学式Aで表されるアミノアルコールと下記化学式Bで表されるイソシアネートの混合物を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0146】
[化学式A]
【化22】
[化学式B]
【化23】
【0147】
【表1】
*化学式A:1-(ジメチルアミノ)プロパン-2-オール(1-(dimethylamino)propan-2-ol)
*化学式B:イソシアネートエタン(isocyanatoethane)
*CBDA:シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride)
*ジアミンA:(E)-4-アミノフェニル3-(4-アミノフェニル)アクリレート((E)-4-aminophenyl 3-(4-aminophenyl)acrylate)
*ジアミンB:2,4-ジアミノフェニルシンナメート(2,4-diaminophenyl cinnamate)
*ジアミンC:(E)-フェニル3-(2,4-ジアミノフェニル)アクリレート((E)-phenyl 3-(2,4-diaminophenyl)acrylate)
【0148】
<実験例>
1)イミド化転換率(%)
前記実施例および比較例の液晶配向剤組成物から得られた液晶配向膜に対して、ATR法によりFT-IRスペクトルを測定して、前記配向膜に含まれている重合体分子内イミド構造比率を測定した。
【0149】
2)液晶配向特性評価
前記製造した液晶配向セルの上板および下板に、偏光板を互いに垂直となるように取り付けた。そして、偏光板付き液晶配向セルを明るさ7,000cd/mのバックライト上に置き、肉眼で光漏れを観察した。この時、液晶配向膜の配向特性に優れて液晶をうまく配列させると、互いに垂直に取り付けられた上下の偏光板によって光が通過せず、不良なしに暗く観察される。この場合の配向特性を「良好」、液晶の流れ跡や輝点のような光漏れが観察されると「不良」と評価し、その結果を下記表2に示す。
【0150】
3)貯蔵安定性
前記実施例および比較例の液晶配向剤組成物に対して、最初の粘度と常温で7日間保管した以後の粘度をそれぞれ測定して、下記数式1によって粘度変化率を測定した。
【0151】
前記液晶配向剤組成物の粘度は、25℃の温度、ウベローデ粘度計(Ubbelohde Viscometer)を用いて測定して下記表2に示す。粘度変化率が低いほど、貯蔵安定性に優れた組成物である。
【0152】
[数式1]
粘度変化率(%)=(常温で7日間保管後の液晶配向剤組成物の粘度-最初の液晶配向剤組成物の粘度)/最初の液晶配向剤組成物の粘度*100
【0153】
【表2】
【0154】
前記表2に示すように、実施例1~4の液晶配向剤組成物の場合、製造例1および製造例2で合成された特定構造の触媒前駆体化合物を用いることで、150℃の硬化温度でもイミド化転換率が75%~86%に非常に高い値を示した。また、優れた配向性を示すとともに液晶配向剤組成物の粘度変化率が3%以下に示されて、貯蔵安定性に非常に優れて安定性が大きく向上し、熱処理工程を経た最終の液晶配向膜が優れた液晶配向安定性を確保できることを確認した。
【0155】
これに対し、触媒を含まない比較例1の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、イミド化転換率が52%に示され、前記実施例に比べて液晶配向安定性が顕著に劣等であることを確認した。
【0156】
また、比較例2の液晶配向剤組成物は、従来から触媒として使用されてきた3級アミンであるN,N-dimethyldodecylamineを用いることによって粘度変化率が21%に示されて、液晶配向剤組成物の特定構造の触媒前駆体化合物を使用する実施例に比べて貯蔵安定性が顕著に劣等であることを確認することができた。
【0157】
また、製造例1および製造例2で合成された触媒前駆体化合物がrearrangementされて作られるアミノアルコールおよびイソシアネートを添加剤として用いた比較例3の液晶配向剤組成物は粘度変化率が18%に示されて、液晶配向剤組成物の特定構造の触媒前駆体化合物を使用する実施例に比べて貯蔵安定性が顕著に劣等であることを確認することができた。