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  • 特許-具材入り成形食品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】具材入り成形食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20220621BHJP
   A23L 11/00 20210101ALN20220621BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23L11/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017231873
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019097479
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆将
(72)【発明者】
【氏名】諸田 広一郎
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】Abbott's new snack brand Curate takes "sophistecated approach" to crowded bar category,2016年02月17日,pp.1-3,retrieved on 2021.09.30, retrieved from the internet: <https://www.foodnavigator-usa.com/Article/2016/02/17/Abbott-s-brand-Curate-takes-sophisticated-approach-to-bar-category>
【文献】Snack Bar Trends: Savory Satisfaction,2016年03月30日,pp.1-4,retrieved on 2021.09.30, retrieved from the internet: <https://www.candyindustry.com/articles/87209-snack-bar-trends-savory-satisfaction>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/49
A23L 7/00-7/25
A23L 11/00-11/70
A23G 3/00-3/56
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状及び/又はフレーク状の具材と、前記具材と混合させる蛋白粉と、前記具材及びこれに混合させた蛋白粉を結着させる糖液組成物と、前記糖液組成物に含有せしめた食用酢及び/又は食用酸とを含み、非焼成で所定形状に成形されている、具材入り成形食品。
【請求項2】
前記具材の含有量が40~75質量%である、請求項1記載の具材入り成形食品。
【請求項3】
前記蛋白粉を前記具材の全体量100質量部に対して2~45質量部含有する、請求項1又は2記載の具材入り成形食品。
【請求項4】
水分活性が0.7以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の具材入り成形食品。
【請求項5】
更に風味材を含有し、チキン味、野菜味、ビーフ味、ポーク味、コンソメ味、カレー味、ポタージュ味、塩味、チーズ味、シーフード味、中華風味、又は韓国風味とされている、請求項1~4のいずれか1項に記載の具材入り成形食品。
【請求項6】
粒状及び/又はフレーク状の具材と、前記具材を結着させるための糖液組成物とを混合し、非焼成で所定形状に成形する具材入り成形食品の製造方法であって、前記糖液組成物は、食用酢及び/又は食用酸を含有し、前記具材を蛋白粉と混合し、その後、前記糖液組成物と混合することを特徴とする具材入り成形食品の製造方法。
【請求項7】
前記糖液組成物は、pHが3.0~6.0である糖含有原料を煮詰めて調製されたものである、請求項6記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項8】
前記蛋白粉を前記具材の全体量100質量部に対して2~45質量部含有する、請求項7記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項9】
前記具材入り成形食品として、前記具材の含有量が40~75質量%であるものを得る、請求項6~8のいずれか1項に記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項10】
前記具材入り成形食品として、水分活性が0.7以下であるものを得る、請求項6~9のいずれか1項に記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項11】
更に風味材を含有し、前記具材入り成形食品として、チキン味、野菜味、ビーフ味、ポーク味、コンソメ味、カレー味、ポタージュ味、塩味、チーズ味、シーフード味、中華風味、又は韓国風味とされているものを得る、請求項6~10のいずれか1項に記載の具材入り成形食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手軽に喫食するのに適した、具材入り成形食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物類やドライフルーツなどの具材を使用して手軽に栄養補給できるようにした、シリアルバーやグラノーラバーなどの具材入り成形食品が知られている。具材がないものは単一食感で飽きてしまうが、具材が含まれていると様々な食感が付与され、単なる栄養補給を目的とするだけではなく、食行為自体を楽しむことにもつながっている。
【0003】
具材入り成形食品のなかには、糖液を煮詰めてバインダー液となし、これを所定加温下に具材と混合した後、成形し、常温にして固めてなるものがある。これによれば、バインダー液が発揮する結着力により具材どうしを結着させて、通常、非焼成でも一定の保形性を維持することができ、原料素材の本来の風味が変化したり、劣化したり、他に配合されるビタミンなどの熱に弱い栄養成分が過度の加熱により分解してしまう、などの問題が防がれるメリットがある。
【0004】
しかしながら、そのようなバインダー液には砂糖や水あめが含まれているので、甘味の強い製品となり、甘すぎない風味のものを提供しづらいという側面があった。近年では、風味をさまざま楽しめるようにして、消費者の多様な嗜好の要請を満たす製品の提供が求められている。
【0005】
このような問題に関連して、例えば、特許文献1には、糖を含む結合剤によって塊を形成した穀物を含むクリスピーな食感のセイボリースナック食品が開示されている(特許文献1の請求項1)。そして、弱い知覚甘味(low perceived sweetness)および特定の糖の機械的特性の両方をうまく利用して、風味の良いスナック食品を提供できると記載されている(特許文献1の段落0008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2004-508062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、溶液状にした糖を加熱して糖ガラスを形成させて具材を結着させる手法を基本としており、加熱による風味劣化等の問題があった。
【0008】
また、本発明者らの研究によれば、甘すぎない味を指向して、具材を結着させる目的で配合する糖分の量を減らすと、結合力が低下して、製品の保形性に悪影響を与えるという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、保形性向上のための加熱の工程を経ずとも所定形状に成形が可能であって、具材を結着させる目的で配合する糖分の量を減らしても、一定の保形性が保たれるようにした、具材入り成形食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意研究した結果、具材どうしを結合させるために用いるバインダー液に食用酢や食用酸を含有せしめることで、具材入り成形食品の保形性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1は、粒状及び/又はフレーク状の具材と、前記具材を結着させる糖液組成物とを含み、非焼成で所定形状に成形されており、前記糖液組成物は食用酢及び/又は食用酸を含有する、具材入り成形食品を提供するものである。
【0012】
本発明の具材入り成形食品によれば、具材どうしを結着させる糖液組成物に食用酢及び/又は食用酸が含有されているので、その食用酢及び/又は食用酸により、全体に糖分の量を減量しても、一定の保形性が保たれる。また、非焼成で所定形状に成形されているので、原料素材の本来の風味や熱に弱い栄養成分が良好に保持される。よって、甘すぎない味を指向して、さまざまに風味付けされた具材入り成形食品の提供が容易となる。
【0013】
本発明の具材入り成形食品においては、前記具材の含有量が40~75質量%であることが好ましい。これによれば、具材の食感や風味をよく味わえる具材入り成形食品を提供することができる。
【0014】
また、水分活性が0.7以下であることが好ましい。これによれば、保存性の良好な具材入り成形食品を提供することができる。
【0015】
また、更に蛋白粉を含有することが好ましい。これによれば、より良好に保形性が備わる具材入り成形食品を提供することができる。
【0016】
また、更に風味材を含有し、チキン味、野菜味、ビーフ味、ポーク味、コンソメ味、カレー味、ポタージュ味、塩味、チーズ味、シーフード味、中華風味、又は韓国風味とされていることが好ましい。これによれば、バラエティに富む風味を伴う具材入り成形食品を提供することができる。
【0017】
一方、本発明の第2は、粒状及び/又はフレーク状の具材と、前記具材を結着させるための糖液組成物とを混合し、非焼成で所定形状に成形する具材入り成形食品の製造方法であって、前記糖液組成物は、食用酢及び/又は食用酸を含有することを特徴とする具材入り成形食品の製造方法を提供するものである。
【0018】
本発明の具材入り成形食品の製造方法によれば、具材どうしを結着させるための糖液組成物に食用酢及び/又は食用酸が含有されているので、その食用酢及び/又は食用酸により、全体に糖分の量を減量しても、一定の保形性が保たれる。また、非焼成で所定形状に成形されているので、原料素材の本来の風味や熱に弱い栄養成分が良好に保持される。よって、甘すぎない味を指向して、さまざまに風味付けされた具材入り成形食品の提供が容易となる。
【0019】
本発明の具材入り成形食品の製造方法においては、前記糖液組成物のpHが3.0~6.0となるように、前記食用酢及び/又は食用酸を含有させることが好ましい。
【0020】
また、前記具材を蛋白粉と混合し、その後、前記糖液組成物と混合することが好ましい。これによれば、より良好に保形性が備わる具材入り成形食品を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、具材入り成形食品において、具材どうしを結着させる糖液組成物に食用酢及び/又は食用酸が含有されているので、その食用酢及び/又は食用酸により、全体に糖分の量を減量しても、一定の保形性が保たれる。また、非焼成で所定形状に成形されているので、原料素材の本来の風味や熱に弱い栄養成分が良好に保持される。よって、甘すぎない味を指向して、さまざまに風味付けされた具材入り成形食品の提供が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】最大荷重測定試験を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に用いられる粒状及び/又はフレーク状の具材としては、例えば、ドライベジタブル、穀物加工品、種実類、肉加工品などが挙げられる。
【0024】
ドライベジタブルとしては、ニンジン、カボチャ、オニオン、サツマイモ、ジャガイモ、ピーマン、トマト、ごぼう、レンコン、ネギ等、種々のものを用いることができ、特に制限はない。例えば、果実・野菜類からの採取部分をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な細断手段で長径およそ1~10mm程度にカットして用いてもよい。
【0025】
穀物加工品としては、小麦、オーツ麦、ライ麦、大麦、大豆、玄米、精米、トウモロコシ等、種々のものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、穀物全粒及び/又はその粉砕物を膨化したり(例えば、パフ状にしたり)、焙煎したりして用いることが好ましい。また、コーンフレーク、ブランフレーク、米フレーク等、穀物全粒の粉状物や粒状物に加水して、加熱・圧扁してフレーク状にして用いてもよい。これにより、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与したり、穀物の香ばしい風味を増したりすることができる。また、穀物加工品は、例えば、穀物全粒をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な粉砕手段で長径およそ1~10mm程度にカットして用いてもよい。
【0026】
種実類としては、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、クルミ、ヘイゼルナッツ、ピスタチオ、クリ、ヒマワリの種、カボチャの種等、種々のものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、種実全粒及び/又はその粉砕物を乾燥したり、焙煎したりして用いることが好ましい。これにより、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与したり、種実類の香ばしい風味を増したりすることができる。また、種実類は、例えば、種実全粒をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な細断手段で長径およそ1~10mm程度にカットして用いてもよい。
【0027】
肉加工品としては、乾燥肉、ジャーキー等のそのまま食することができるもの、または、それらの加工品を用いることができ、特に制限はない。この場合、例えば、加工品をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な細断手段で長径およそ1~10mm程度にカットして用いてもよい。
【0028】
上記具材は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。2種類以上を用いると、よりバリエーションに富む食感と風味を味わうことができる。その大きさとしては、長径が1~10mm程度であることが好ましい。また、その含有量としては、具材入り成形食品の全体中に、具材全量として40~75質量%含有することが好ましく、50~70質量%含有することがより好ましい。
【0029】
本発明の好ましい態様においては、上記具材の少なくとも一部が蛋白素材からなることが好ましい。これによれば、その蛋白素材による食感や風味を味わうことができるとともに、具材入り成形食品の蛋白含量を高めることができる。
【0030】
そのような目的に用いられる蛋白素材としては、例えば、大豆パフ、大豆蛋白粒状物、ホエイパフ等が挙げられる。これら素材としては、蛋白含量が30~90質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。これによれば、効果的に蛋白含量を高めることができる。また、水分含量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。これによれば、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与することができるとともに、カリカリとした食感を付与することができる。なお、大豆パフとは、大豆の全粒及び/又はその粉砕物を膨化してパフ状に調製された大豆加工食品であり、例えば、不二製油株式会社製の「ソヤパフ30」、「ソヤパフ40」等を用いることができる。また、大豆蛋白粒状物とは、脱脂大豆を押出成型して長径1~10mmの粒状に調製された大豆蛋白素材であり、例えば、昭和産業株式会社製の「昭和ミーテックスK-13」等を用いることができる。また、ホエイパフとは、例えば、乳性蛋白を、澱粉原料と膨張剤とともに、押出し成形したり、または、蒸練して乾燥してペレットにした後、膨化して長径1~10mmの粒状に調製された乳蛋白素材であり、例えば、Body360 Nutritionals製の「BodyCrunch Whey Protein Puffs」等を用いることができる。蛋白素材は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0031】
上記蛋白素材を上記具材の少なくとも一部として用いる場合には、その含有量は、上記具材全体中の含有量として(複数種類含む場合はその合量として)、10~100質量%であることが好ましく、40~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることがさらにより好ましい。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として(複数種類含む場合はその合量として)、5~70質量%であることが好ましく、10~65質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらにより好ましい。
【0032】
また、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ドライフルーツや焼き菓子粉砕品等の他の具材を配合することもできる。
【0033】
本発明に用いられる糖液組成物としては、上記に説明した具材どうしを結着させることができるバインダーとしての機能を有しているものであればよく、特に制限はないが、例えば、単糖、二糖、異性化糖、糖アルコール、オリゴ糖、デキストリン、多糖類、澱粉等を含有する、例えば、コーンシロップ、シロップ、水飴等、それら糖類を溶解した水溶液など、あるいはそれらの混合物などである。また、そのBrix値が75~85程度になるよう煮詰めて調製されたものなどを用いることが好ましい。糖液組成物には、本発明の構成を損なわない範囲であれば、糖類以外にも、水溶性食物繊維、油脂、ビタミン、ミネラル等の成分が含有されていてもよいし、また、風味材、香料、調味料、乳化剤、粘調剤等を添加・配合してもよい。なお、求める具材の硬さや食感によっては、その具材は、事前に糖液組成物に添加しておいてもよい。また、上記糖液組成物に水溶性食物繊維が含有されると、甘味が抑えられ食べやすい風味と成し易い。水溶性食物繊維としては、例えば、イソマルトデキストリン、イヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、サイリウム、ベータグルカン、アガロース等が好ましく、水溶性食物繊維を多く含む野菜類や穀物類等を粉末加工したものでもよい。
【0034】
上記糖液組成物は、上記具材の全体量100質量部に対し、35~80質量部配合することが好ましく、50~70質量部配合することがより好ましい。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として30~60質量%であることが好ましく、35~45質量%であることがより好ましい。
【0035】
本発明の具材入り成形食品は、上記に説明した具材が、上記に説明した糖液組成物を介し、その具材どうしが結着して、非焼成で所定形状に成形されているものである。以下、その調製方法について更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する調製方法に限定されるものではない。
【0036】
まず、糖液組成物を準備する。このとき、糖液組成物には、食用酢及び/又は食用酸を含有せしめる必要がある。これにより、具材入り成形食品から糖分を減量しても、一定の保形性が保たれる効果が得られる。食用酢としては、リンゴ酢、ブドウ酢、イチジク酢、ザクロ酢、レモン酢、パイナップル酢、梅酢等の果実酢、米酢、米黒酢、大麦黒酢、玄米酢、キビ酢等の穀物酢、黒豆酢、紅芋酢、白ワイン酢、アルコール酢等が挙げられる。食用酸としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、フィチン酸等の有機酸、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。
【0037】
食用酢及び/又は食用酸の含有量は、得られる具材入り成形食品の保形性を維持するのに有効量であればよく、適宜に設定すればよいが、典型的には、例えば、糖液組成物に0.5~15v/w%含有せしめることが好ましく、2~8v/w%含有せしめることがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、糖液組成物のpHがpH3.0~6.0となるように含有せしめることが好ましく、pH3.0~5.0となるように含有せしめることが好ましい。
【0038】
糖液組成物の糖分としては、所望する風味に応じて適宜その値を選択することが可能であるが、甘すぎないものを提供する観点からは、その糖液組成物の甘味度は、1w/w%砂糖水溶液の甘味度を1とし、50w/w%砂糖水溶液の甘味度を50としたときの相対値が、25~50となるようにすることが好ましく、30~45となるようにすることがより好ましい。このような範囲にすることで、甘味が過度に付与されることを防ぎ、得られる具材入り成形食品の風味を多様化することができる。なお、甘味度は、複数人の専門パネラーによる官能評価により、客観的な測定も可能である。また、典型的な糖類、糖アルコール類の甘味度は、例えば下表に示すように、当業者に知られた甘味度の値があるので、そのように周知の各成分に固有の甘味度を、下記計算式にあてはめることによっても、糖液組成物の甘味度が客観的に評価可能である。
【0039】
・甘味度={(糖1の甘味度×糖1の含有量(%))+(糖2の甘味度×糖2の含有量(%))+・・・+(糖nの甘味度×糖nの含有量(%))}×100
【0040】
【表1】
[出展:https://sugar.alic.go.jp/tisiki/ti_0109.htm(デキストリンについては、http://www.fresh-food.jp/lineup/glucide/saccharides.html)]
【0041】
また、糖液組成物の単糖、二糖、異性化糖、糖アルコール、及びオリゴ糖の合計含有量(水溶性食物繊維を含めない)は、45~85質量%であることが好ましく、65~75質量%であることがより好ましい。これらの糖は、甘味を付与する傾向があるが、その含有量を上記の範囲にすることによって、甘味が過度に付与されることを防ぎ、得られる具材入り成形食品の風味を多様化することができる。
【0042】
また、甘味を抑えることができる糖類として、乳糖、デキストリン、麦芽糖、イソマルトース、ソルビトール、マンニトール、還元パラチノースなどの糖類が挙げられるので、これら甘味を抑えることができる糖類を所定量含有することが好ましい。乳糖、デキストリンが特に好ましい。その含有量も、所望する風味や食感等に応じて適宜その値を選択することができるが、典型的に、例えば、乳糖等であれば、糖液組成物に5~30質量%含有することが好ましく、15~25質量%含有することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、例えば、デキストリン等であれば、糖液組成物に5~30質量%含有することが好ましく、15~25質量%質量%含有することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。
【0043】
また、上述のとおり、糖液組成物に水溶性食物繊維が含有されると、甘味が抑えられ食べやすい風味と成し易い。この場合、水溶性食物繊維の含有量としては、糖液組成物に2~30質量%含有することが好ましく、2~10質量%含有することがより好ましく、2~6質量%が更に好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。
【0044】
また、上記糖液組成物は、その糖液組成物の調製から具材との混合にわたる工程を考慮して、その糖液組成物の流動性が損なわれない程度の温度に調整されることが好ましく、具材と混合する際には、例えば、典型的には90~110℃程度に調整されることがより好ましい。
【0045】
別途、具材を準備する。この際、具材には、本発明の構成を損なわない範囲であれば、他の素材として蛋白粉、水溶性食物繊維、油脂、ビタミン、ミネラル、甘味料、風味材、香料、調味料、乳化剤、粘調剤等を添加・配合してもよい。例えば、蛋白粉を添加・配合することによって、得られる具材入り成形食品の保形性を向上する効果は、更により促進され得る。この場合、具材と蛋白質粉との混合は、蛋白粉を具材にまぶすようにして行ってもよい。また、油脂を添加・配合することによって、シットリとした食感を付与することができる。
【0046】
上記蛋白粉としては、例えば、大豆パウダー、グルテンパウダー、ホエイパウダー、脱脂粉乳、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、ミルクプロテインパウダー等が挙げられる。これら素材としては、蛋白含量が30~95質量%であることが好ましく、80~95質量%であることがより好ましい。これによれば、効果的に蛋白含量を高めることができる。また、水分含量が7質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。更に、粒度として、粒径100μm以下のものが80質量%以上含まれていることが好ましく、60μm以下のものが90質量%以上含まれていることがより好ましい。なお、大豆パウダーとしては、例えば、不二製油株式会社製の「フジプロAL」、「フジプロSEH」、「プロリーナ800」等を用いることができる。また、グルテンパウダーとしては、例えば、熊本製粉株式会社製の「小麦グルテンFX-75」等を用いることができる。また、ホエイパウダーとしては、例えば、フォンテラ社製の「WPC392」、「WPC472」、「WPI894」等を用いることができる。また、カゼインカルシウムとしては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Calcium Caseinate S」等を用いることができる。また、カゼインナトリウムとしては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Sodium Caseinate S」等を用いることができる。また、ミルクプロテインパウダーとしては、例えば、FrieslandCampina Domo社製の「Refit MPC80」等を用いることができる。蛋白粉は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0047】
上記蛋白粉は、上記具材の全体量100質量部に対し、2~45質量部配合することが好ましく、4~35質量部配合することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として1~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。
【0048】
上記油脂としては、一般的な食用油脂であればよく、例えば粉末油脂や半固形もしくは液状油脂を用いることができる。油脂は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0049】
上記油脂は、上記具材の全体量100質量部に対し、1~10質量部配合することが好ましく、1.5~5質量部配合することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として0.5質量%以上5質量%未満であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。上記範囲未満では、油脂を配合したことによる前述した作用効果が乏しくなる傾向がある。また、上記範囲を超えると、油脂の含有量が多くなり、消費者に好まれなくなる傾向がある。
【0050】
次いで、糖液組成物と、具材、あるいは場合によっては、具材と蛋白粉、油脂等の他の素材との混合物とを混合する。このとき、これら具材の混合から後述の成形にわたる工程を考慮して、その糖液組成物の流動性が損なわれない程度の温度に調整して混合することが好ましく、例えば、典型的には50~75℃程度に調整することがより好ましい。
【0051】
また、このときの混合においても、上記同様に、本発明の構成を損なわない範囲であれば、糖液組成物と具材以外にも、蛋白粉、水溶性食物繊維、油脂、ビタミン、ミネラル、甘味料、風味材、香料、調味料、乳化剤、粘調剤等を添加・配合してもよい。
【0052】
最後に、具材と糖液組成物との混合物、あるいは場合によっては、更に蛋白粉、油脂等の他の素材を含む混合物を、焼成せずに非焼成で所定形状に成形する。ここで、非焼成とは、焼成工程や乾燥工程を含まないことを意味し、好ましくは60℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは35℃以上に加熱しないことを意味する。成形は、バー成形機、シート成型機、おにぎり成型機などの手段で行えばよいが、特にバー成形機であれば生産効率が良いので、好ましい。このような成形装置としては、例えば本出願人による特許第5379322号公報に記載された装置などが挙げられる。成形物の形状としては、棒形状、直方体形状、板形状、球形状、不定形状など、種々の形状にすることができるが、例えば棒形状(バー製品)であれば、手に持って食べやすいので、好ましい。その大きさは、厚さが10~20mm、幅が20~35mm、長さが50~130mmのとなるようにすることが好ましい。大きすぎると、保形性が悪くなったり、包装から取り出しにくくなったり、手に持って食べづらくなったりするので、好ましくない。
【0053】
本発明の具材入り成形食品は、例えば保存性の観点から、その水分含量が、15質量%以下であることが好ましく、10~13質量%であることがより好ましい。また、その水分活性が、0.70以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましい。
【0054】
本発明の具材入り成形食品は、水分透過性の低い包装材で包装して、保管中における吸湿を抑制することが好ましい。そのような包装材としては、例えばアルミニウム等の金属箔と、合成樹脂フィルムとのラミネートフィルムや、片面にアルミニウム等の金属を蒸着した合成樹脂フィルム等が用いられる。
【0055】
本発明の具材入り成形食品は、蛋白含量が15質量%以上とされていることが好ましく、15~50質量%とされていることがより好ましく、20~40質量%とされていることが更により好ましい。これによれば、蛋白含量が高められた具材入り成形食品を提供することができる。また、油脂の含有量が5質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%未満であることがより好ましく、0.5~3質量%であることが更により好ましい。これによれば、油脂含量が高くない具材入り成形食品を提供することができる。
【0056】
本発明の具材入り成形食品は、甘すぎない味を呈しているので、所定の風味を呈する風味材の配合により、多様な風味の付与が容易である。例えば、チキン調味料によるチキン味、野菜ブイヨンによる野菜味、ビーフ調味料によるビーフ味、ポーク調味料によるポーク味、コンソメによるコンソメ味、カレー調味料によるカレー味、ポタージュによるポタージュ味、塩による塩味、チーズによるチーズ味、魚介類によるシーフード味、中華風味、韓国風味などが挙げられる。
【0057】
なお、本明細書における「蛋白含量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、ケルダール法で測定した値を意味している。
【0058】
また、本明細書における「油脂の含有量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、酸分解法で測定した値を意味している。
【0059】
また、本明細書における「水分活性」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、重量平衡法で測定した値を意味している。
【0060】
また、本明細書における「水分含量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、常圧加熱乾燥助剤法(99℃、4時間)で測定した値を意味している。
【実施例
【0061】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
[具材入り成形食品の製造]
表2に示す各配合で、具材入り成形食品を製造した。
【0063】
具体的には、砂糖と水あめ、更にその他の原料を含む糖液組成物を煮詰めてバインダー液(Brix値:82)を調製し、別途予め具材として大豆パフと粉末状大豆タンパクとを混合しておき、その具材とバインダー液を合わせてニーダーで混合し、得られた混合物を、幅20mm×高さ30mm×長さ110mmの型を使用して押し込み成形した。なお、配合5~8については、粉末状大豆タンパクは使用しなかった。
【0064】
【表2】
【0065】
[風味]
得られた具材入り成形食品の風味について、官能評価を行ったところ、いずれもチキン様の風味であり、また、食用酸や食用酢を添加した配合では、その風味が際立っていた。
【0066】
なお、配合1~13においては、糖液組成物に乳糖及び水溶性食物繊維であるイソマルトデキストリン、イヌリン、又は難消化性デキストリンを配合したことにより、いずれも甘さが抑えられており、その甘味とチキン風味との相性は良好であった。これに対して、配合14においては、乳糖及び当該水溶性食物繊維の代わりに、砂糖が増量されたので、甘さを強く感じ、その甘味とチキン風味との相性が良好とは言い難かった。
【0067】
[保形性・食感]
得られた具材入り成形食品の保形性・食感について、官能評価を行ったところ、いずれも手でつまんで食する食品として、十分な保形性を有していた。ただし、糖液組成物中の砂糖が減量され、且つ、食用酸や食用酢を添加せずに、更に粉末状大豆タンパクを添加しない配合5では、手試作では成形可能であるが、連続成形性や耐輸送性という点でデメリットがあった。また、糖液組成物中の砂糖が減量され、且つ、食用酸や食用酢を添加せずに、粉末状大豆タンパクは添加した配合1では、手試作では成形可能であるが、耐輸送性という点でデメリットがあった。
【0068】
[水分活性]
得られた具材入り成形食品の水分活性は、いずれも0.70以下であった。
【0069】
[最大荷重測定試験]
得られた具材入り成形食品について、最大荷重測定試験を行った。サンプルは室温(20~25℃)のものを使用した。
【0070】
具体的には、レオメーターに直径10mmの球状のプランジャーを取り付ける一方、具材入り成形食品をその長さ方向の60mmにわたって非接触の部分を設けるようにして、レオメーターのステージに載置し、毎分80mmの速度でステージを上昇させ、具材入り成形食品の長さ方向にわたる中央部に、上記球状プランジャーがサンプルに接触してから上記ステージが28mm上昇するまで成形食品に荷重をかけたときの最大荷重(単位:N)を記録した。図1には、試験の様子を模式的に示す。
【0071】
[評価1]
表3にリンゴ酢の配合量の観点から結果をまとめた。
【0072】
【表3】
【0073】
その結果、糖液組成物に食用酢であるリンゴ酢を含有せしめることで、リンゴ酢を配合しない場合に比べて、得られる具材入り成形食品が折れにくく、製品の保形性が高められることが明らかとなった。これは、リンゴ酢を含有せしめたことより糖液組成物を煮詰めてなるバインダー液の結着力が向上したためと考えられた。
【0074】
[評価2]
表4に食用酢の種類の観点から結果をまとめた。
【0075】
【表4】
【0076】
その結果、糖液組成物に食用酢としてリンゴ酢のみならず米酢や白ワイン酢を含有せしめることによっても、それら食用酢を配合しない場合に比べて、得られる具材入り成形食品が折れにくく、製品の保形性が高められることが明らかとなった。これは、食用酢を含有せしめたことより糖液組成物を煮詰めてなるバインダー液の結着力が向上したためと考えられた。なお、配合1~4に関わる評価1における最大荷重測定値よりも、配合5~8に関わる評価2における最大荷重測定値が、全体的に結果が低いのは、粉末状大豆タンパクの配合の有無が影響しており、このような蛋白粉にも製品の保形性を向上する効果があることが明らかとなった。
【0077】
[評価3]
表5に糖液組成物のpH調整の観点から結果をまとめた。
【0078】
【表5】
【0079】
その結果、糖液組成物に食用酢であるリンゴ酢のみならず食用酸であるクエン酸やリンゴ酸やリン酸を含有せしめることによっても、それら食用酸を配合しない場合に比べて、得られる具材入り成形食品が折れにくく、製品の保形性が高められることが明らかとなった。これは、食用酸を含有せしめたことより糖液組成物を煮詰めてなるバインダー液の結着力が向上したためと考えられ、糖液組成物のpH条件が一要因であると考えられた。
【0080】
[評価4]
表6に糖液組成物に含有せしめる水溶性食物繊維の種類の観点から結果をまとめた。
【0081】
【表6】
【0082】
その結果、糖液組成物に水溶性食物繊維としてイソマルトデキストリンのみならずイヌリンや難消化性デキストリンを含有せしめることによっても、上記のリンゴ酢等による製品の保形性の向上の効果が得られた。なお、甘味度が高い配合14においては、保形性は高いものの、上述のとおり、甘さを強く感じ、チキン風味と合わないものであった。
図1