(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】真空蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20220621BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C23C14/00 B
C23C14/24 G
(21)【出願番号】P 2018082553
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】梅原 政司
(72)【発明者】
【氏名】北沢 僚也
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-140695(JP,A)
【文献】特開平07-093752(JP,A)
【文献】特開平07-098863(JP,A)
【文献】特開平07-065370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に蒸着源を備え、真空雰囲気中にてこの蒸着源で蒸着物質を昇華または気化させ、この昇華または気化した蒸着物質を被蒸着物に蒸着する真空蒸着装置であって、
真空チャンバ内に設けた支持体で片持ち支持されて、蒸着源から被蒸着物に向けて飛散する蒸着物質の飛散範囲を規制する規制板を更に備え、規制板のうち蒸着源側を向く一方の面を下面、その他方を上面として、規制板の自由端に、下面と鈍角で且つ上面端部と鋭角で交差する傾斜面が形成されるものにおいて、
前記支持体が、前記蒸着源が設置される真空チャンバの
底面に立設された支柱で構成され、前記支柱に規制板の複数枚が取り付けられ、各規制板を蒸着物質の飛散範囲を制限しない退避位置に夫々移動させる移動手段を更に設け、
前記移動手段は、最下段に位置する規制板のみを支持するアクチュエータを含み、当該規制板に所定以上の堆積物が形成されると、アクチュエータの動作により当該規制板が支柱に案内されて真空チャンバ底面側の退避位置に移動されるように構成したことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項2】
真空チャンバ内に蒸着源を備え、真空雰囲気中にてこの蒸着源で蒸着物質を昇華または気化させ、この昇華または気化した蒸着物質を被蒸着物に蒸着する真空蒸着装置であって、
真空チャンバ内に設けた支持体で片持ち支持されて、蒸着源から被蒸着物に向けて飛散する蒸着物質の飛散範囲を規制する規制板を更に備え、規制板のうち蒸着源側を向く一方の面を下面、その他方を上面として、規制板の自由端に、下面と鈍角で且つ上面端部と鋭角で交差する傾斜面が形成されるものにおいて、
前記支持体が回転軸を有し、この回転軸を回転駆動する駆動モータを設
け、前記規制板の複数枚が回転軸回りに間隔を存して取り付けられていることを特徴とする真空蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内に蒸着源を備え、真空雰囲気中にてこの蒸着源で蒸着物質を昇華または気化させ、この昇華または気化した蒸着物質を被蒸着物に蒸着する真空蒸着装置に関し、より詳しくは、蒸着源から被蒸着物に向けて飛散する蒸着物質の飛散範囲を規制する規制板を更に備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の真空蒸着装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、真空チャンバを有し、真空チャンバの底部には、成膜しようとする薄膜に応じて適宜選択される蒸着物質が収容される蒸着源としてのルツボが配置されている。そして、真空雰囲気中の真空チャンバ内で一方向に所定速度で被蒸着物を移動させながら、蒸着源にて蒸着物質を加熱することで昇華または気化させ、この昇華または気化した、蒸着源から飛散する蒸着物質を被蒸着物に付着、堆積させて所定膜厚の薄膜が蒸着されるようにしている。このとき、真空チャンバ内で被蒸着物と蒸着源との間に位置させて規制手段(遮蔽手段)を設け、昇華または気化させた蒸着物質の被蒸着物への蒸着領域を規制するようにしている。規制手段としては、蒸着源の周囲に位置させて真空チャンバの底部に立設した支柱で片持ち支持される板状部材(規制板)が用いられる。
【0003】
ここで、蒸着時に蒸着源から飛散した蒸着物質は、被蒸着物だけでなく、規制板のうち蒸着源側を向く一方の面やその側面にも付着、堆積するが、通常は、蒸着源に近い規制板の自由端側でその堆積量が最も多くなり易い。すると、規制板の一方の面から自由端に位置する規制板の側面にかけて蒸着物質が堆積し、この堆積物が昇華または気化した蒸着物質の被蒸着物に向かう飛散経路を遮るように膨出する。このため、この膨出した堆積物によって被処理物における蒸着領域が狭く制限されてしまうという不具合が生じる。このような場合、板状部材を頻繁に交換する必要が生じ、これでは、量産性が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、蒸着物質が付着、堆積しても、昇華または気化した蒸着物質の被蒸着物に向かう飛散経路を遮ることが可及的に抑制されるようにした規制板を有する真空蒸着装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内に蒸着源を備え、真空雰囲気中にてこの蒸着源で蒸着物質を昇華または気化させ、この昇華または気化した蒸着物質を被蒸着物に蒸着する本発明の真空蒸着装置は、真空チャンバ内に設けた支持体で片持ち支持されて、蒸着源から被蒸着物に向けて飛散する蒸着物質の飛散範囲を規制する規制板を更に備え、規制板のうち蒸着源側を向く一方の面を下面、その他方を上面として、規制板の自由端に、下面と鈍角で且つ上面端部と鋭角で交差する傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、真空チャンバ内で被蒸着物と蒸着源との間に位置させると共に、自由端側で昇華または気化させた蒸着物質の被蒸着物への蒸着領域を規制するように規制板を配置した状態で被蒸着物に対して蒸着すると、蒸着源から飛散した蒸着物質は、規制板のうち蒸着源側を向く規制板の一方の面及び傾斜面にも付着、堆積するが、規制板の側面が省略されるように傾斜面が形成されているため、この堆積物が昇華または気化した蒸着物質の被蒸着物に向かう飛散経路を遮るように膨出することが可及的に抑制される。その結果、堆積物によって被処理物における蒸着領域が狭く制限されるといった不具合が抑制され、規制板の交換頻度を上記従来例ものより大幅に少なくすることができる。
【0008】
ここで、蒸着源から飛散した蒸着物質が規制板に所定以上の厚さで堆積したとき、この堆積物が例えばパーティクルの発生源となる等の不具合が生じるため、所定の成膜時間を超えると、規制板を交換する必要がある。このとき、その都度、真空チャンバを大気開放して交換するのでは、量産性が損なわれる。本発明において、前記支持体が、前記蒸着源が設置される真空チャンバの底面に立設された支柱で構成される場合、前記支柱に規制板の複数枚が取り付けられ、各規制板を蒸着物質の飛散範囲を制限しない退避位置に夫々移動させる移動手段を更に設ける構成を採用してもよい。この場合、前記移動手段は、最下段に位置する規制板のみを支持するアクチュエータを含み、当該規制板に所定以上の堆積物が形成されると、アクチュエータの動作により当該規制板が支柱に案内されて真空チャンバ底面側の退避位置に移動されるように構成すればよい。また、前記支持体が回転軸を有し、この回転軸を回転駆動する駆動モータを設けられている場合、前記規制板の複数枚が回転軸回りに間隔を存して取り付けられている構成を採用してもよい。更に、前記支持体が複数本のローラとローラの周囲に無端状に巻き掛けられた搬送ベルトとを有する場合、前記規制板の複数枚が搬送ベルトに間隔を存して取り付けられている構成を採用してもよい。これにより、真空チャンバを大気開放して規制板を交換する頻度を少なくでき、高い量産性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の規制板を備える真空蒸着装置を模式的に示す断面図。
【
図2】(a)は従来例の規制板への蒸着物質の堆積を説明する拡大図、(b)は本実施形態の規制板への蒸着物質の堆積を説明する拡大図。
【
図3】
図1に示す真空蒸着装置の一部を拡大して示す部分断面図。
【
図4】複数枚の規制板を設ける場合の変形例を説明する図。
【
図5】複数枚の規制板を設ける場合の他の変形例を説明する図。
【
図6】複数枚の規制板を設ける場合の更に他の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、被成膜物を矩形の輪郭を持つ所定厚さのガラス基板(以下、「基板Sw」という)、蒸着物質5を、液相を経て気相に転移する金属等の材料とし、基板Swの一方の面に所定の薄膜を蒸着する場合を例に本発明の真空蒸着装置の実施形態を説明する。以下において、「上」、「下」といった方向を示す用語は、真空蒸着装置の設置姿勢を示す
図1を基準にする。
【0011】
図1を参照して、DMは、本実施形態の真空蒸着装置である。真空蒸着装置DMは、真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、排気管を介して真空ポンプが接続され、所定圧力(真空度)に真空引きして保持できるようになっている。また、真空チャンバ1の上部には基板搬送装置2が設けられている。基板搬送装置2は、成膜面としての下面を開放した状態で基板Swを保持するキャリア21を有し、図外の駆動装置によってキャリア21、ひいては基板Swを真空チャンバ1内の一方向に所定速度で移動するようになっている。基板搬送装置2としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。また、以下において、蒸着源4に対する基板Swの相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板Swの幅方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する
図1中の上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
基板搬送装置2によって搬送される基板Swと後述の蒸着源4との間には、板状のマスクプレート3が設けられている。本実施形態では、マスクプレート3は、基板Swと一体に取り付けられて基板Swと共に基板搬送装置2によって搬送されるようになっている。なお、マスクプレート3は、真空チャンバ1に予め固定配置しておくこともできる。マスクプレート3には、板厚方向に貫通する複数の開口31が形成され、これら開口31がない位置にて蒸着物質の基板Swに対する付着範囲が制限されることで所定のパターンで基板Swに成膜されるようになっている。マスクプレート3としては、インバー、アルミ、アルミナやステンレス等の金属製の他、ポリイミド等の樹脂製のものが用いられる。そして、真空チャンバ1の底面には、X軸方向に移動される基板Swに対向させて本実施形態の蒸着源4が設けられている。
【0013】
蒸着源4は蒸着物質5を収容する収容箱41を有する。蒸着物質5としては、基板Swに成膜しようとする薄膜に応じて金属や樹脂等の材料から適宜選択され、顆粒状またはタブレット状のものが利用される。収容箱41の下部には、金属製の受け皿42が設けられ、受け皿42上に蒸着物質5が設置されるようになっている。受け皿42と収容箱41の底壁との間には加熱手段(図示せず)が設けられ、受け皿42を介して蒸着物質5が気化温度まで加熱されるようになっている。加熱手段としては、シースヒータやランプヒータ等の公知のものが利用でき、このような加熱手段は収容箱41の外側に配置することもできる。なお、特に図示して説明しないが、収容箱41内には、受け皿42の上方に位置させて分散板が設けられ、気化した蒸着物質5を後述の各噴射ノズルから略均等な流量で噴射できるようになっている。
【0014】
収容箱41の上面(基板Swとの対向面)41aには、所定高さの筒体で構成される、気化した蒸着物質5を噴射する噴射ノズル43a,43bがY軸方向に所定の間隔で(本実施形態では、6本)列設されている。この場合、Y軸方向両端に位置する2本の噴射ノズル43aは、その孔軸がZ軸方向に対して所定角度でY軸方向外方に傾斜するように立設され、それ以外の各噴射ノズル43bは、Z軸方向に沿って立設されている。なお、噴射ノズル43a,43bの本数及び相互間の間隔、傾斜させる噴射ノズル43a,43bの本数及びその傾斜角、各噴射ノズル43a,43bのノズル径や、上面41aからノズル先端までの高さは、例えば基板Swに蒸着したときのY軸方向の膜厚分布や、蒸着中の(上面41aに堆積したものによる)ノズル詰まりの回避を考慮して適宜設定される。
【0015】
また、真空チャンバ1の底面には、蒸着源4のY軸方向両側に位置させて支持体としての支柱6が夫々立設され、その先端部には、上下方向で基板Swと蒸着源4との間に位置させて規制板7が片持ち支持されている。そして、真空雰囲気中の真空チャンバ1内で収容箱41の受け皿42上に設置した固体の蒸着物質5を加熱すると、蒸着物質5が液相を経て気相に転移し、この気化した蒸着物質5が各噴射ノズル43a,43b内を通って基板Swに向けて飛散し、蒸着物質5が付着、堆積して蒸着される。このとき、規制板7により気化させた蒸着物質5の基板Swへの蒸着領域が規制され(つまり、Y軸方向両端に位置する噴射ノズル43aと基板SwのY軸方向両端とを結ぶ規制線RlよりY軸方向への蒸着物質5の飛散が制限され)、例えば、基板SwにおけるY軸方向に沿う膜厚分布を均等にできるようになっている。
【0016】
ところで、蒸着時に蒸着源4から飛散した蒸着物質5は、基板Swの下面だけでなく、規制板7のうち蒸着源4側を向く下面やその側面にも付着、堆積するが、通常は、蒸着源4に近い規制板7の自由端側でその堆積量が最も多くなる。この場合、従来例の規制板70では、
図2(a)に示すように、その下面70aからY軸方向に位置する自由端側の側面70bにかけて蒸着物質5が堆積し、この堆積物51が、蒸着源4から飛散した蒸着物質5の基板Swに向かう飛散経路を遮るように(即ち、規制線Rlを跨いでY軸方向内方まで)膨出する。このため、この膨出した堆積物51によって基板Swにおける蒸着領域が狭く制限されてしまうという不具合が生じる。
【0017】
そこで、本実施形態では、
図2(b)に示すように、規制板7の自由端に、規制板7のうち蒸着源4側を向くその下面71と鈍角で且つ上面72の端部と鋭角で交差する傾斜面73を形成することとした(つまり、Y軸方向に位置する規制板7の自由端側の側面が省略されるようにした)。この場合、規制板7の下面71と傾斜面73とが交差するときの角度α1が、5度~45度の範囲内であることが好ましい。これにより、蒸着源4から飛散した蒸着物質5は、規制板7の下面71や傾斜面73にも付着、堆積するが、この堆積物51が、蒸着源4から飛散した蒸着物質5の基板Swに向かう飛散経路を遮るように(即ち、規制線Rlを跨いでY軸方向内方まで)膨出することが可及的に抑制される。その結果、堆積物51によって基板Swにおける蒸着領域が狭く制限されるといった不具合が抑制され、規制板7の交換頻度を上記従来例ものより大幅に少なくすることができる。
【0018】
ところで、蒸着源4の噴射ノズル43a,43bから飛散した蒸着物質5が規制板7の下面71や傾斜面73に所定以上の厚さで堆積したとき、この堆積物51が例えばパーティクルの発生源となる等の不具合が生じる。このため、所定の成膜時間を超えると、規制板7を交換する必要があるが、その都度、真空チャンバ1を大気開放して交換するのでは、量産性が損なわれる。本実施形態では、
図3に示すように、支柱6の上端部に、同一形態を持つ複数枚の規制板7が片持ち支持されるようにしている。支柱6には、この支柱6から真空チャンバ1のY軸方向内方に向けて出没自在な支持竿81を有する2個のアクチュエータ8a,8bが上下方向に間隔を存して設けられている。この場合、各アクチュエータ8a,8bは、規制板7の面積(つまり、X軸方向の長さ)に応じて、X軸方向に間隔を置いて複数設けることができ、また、支持竿81の先端にX軸方向に長手のものを更に設けることもできる。各アクチュエータ8a,8bとしては、空気式や電動式など公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0019】
下方に位置する第1アクチュエータ8aは、最下段に位置する規制板7のみを支持し、この状態では、規制板7の自由端が、規制線Rl上に位置するようになっている。また、第1アクチュエータ8aより上方に位置する支柱6の部分は、Y軸方向外方に向けて傾斜され、この傾斜させた支柱6の部分に第2アクチュエータ8bが設けられている。第2アクチュエータ8bの支持竿81は、複数枚の規制板7が重ねられた状態で支持し、この状態では、各規制板7の自由端が規制線Rl上から所定間隔を存するようにY軸方向外方にオフセットされ、蒸着源4から飛散した蒸着物質5の基板Swに向かう飛散経路を遮らないようになっている(
図1参照)。そして、第1アクチュエータ8aで支持された最下段に位置する規制板7に所定以上の堆積物51が形成されると、第1アクチュエータ8aの支持竿81が没入位置に移動され、その規制板7が支柱6に案内されて真空チャンバ1の底面(退避位置)まで移動される。
【0020】
次に、第1アクチュエータ8aの支持竿81を突出位置(
図3に示す状態)に移動させた後、第2アクチュエータ8bの支持竿81を没入位置に移動させると、第2アクチュエータ8bで支持された規制板7のうち最下段のものが下降して第1アクチュエータ8aで支持される(成膜位置)。本実施形態では、支柱6に設けられる各アクチュエータ8a,8bが各規制板7を蒸着物質の飛散範囲を制限しない退避位置に夫々移動させる移動手段を構成する。以降、この操作が繰り返されて、最上段に位置する規制板7に所定以上の堆積物51が形成されるまで長時間にわたって規制板7により気化させた蒸着物質5の基板Swへの蒸着領域が規制される。これにより、堆積物51に起因した規制板7自体の交換頻度を少なくできることと相俟って、真空チャンバ1を大気開放して各規制板7を交換する頻度を少なくでき(メンテナンスサイクルを長くでき)、高い量産性を達成することができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、蒸着源4として、収容箱41の上面41aに噴射ノズル43を列設したもの(所謂ラインソース)を用いるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、蒸着源4がルツボで構成されるような場合も本発明は適用可能である。また、上記実施形態では、蒸着源4のY軸方向両側に規制板7を配置して蒸着物質5の基板Swへの蒸着領域を規制するものを例に説明したが、これに限定されるものではない。特に図示して説明しないが、例えば上記蒸着源4にて収容箱41の上面41aに支柱を立設し、上記と同様にしてこの支柱に複数枚の規制板を設け、いずれかの噴射ノズル43a,43bからの蒸着物質5の飛散範囲を規制するものにも本発明は適用できる。
【0022】
また、上記実施形態では、規制板7を片持ち支持する支持体として支柱6を用いるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、真空チャンバ1の内側壁で規制板7を支持することができ、そのような場合には真空チャンバ1の内側壁に移動手段が設けられる。また、移動手段として2個のアクチュエータ8a,8bを用いるものを例に説明したが、所定以上の堆積物51が形成された規制板7を支柱6に沿って退避位置に移動できるものであれば、その形態は問わない。
【0023】
図4に示す変形例では、X軸方向に間隔を存して2本の板状の支柱60が真空チャンバ1に立設され、両支柱60には、複数本の回転軸61がZ軸方向に間隔を存して軸支され、各回転軸61に規制板7が揺動自在に取り付けられている。そして、規制板7に所定以上の堆積物51が形成されると、移動手段としての駆動モータDmで回転軸61を回転駆動させて、各規制板7を真空チャンバ1の内側壁に重なる位置(退避位置)に夫々移動できるようにしている。この場合、堆積物51が形成された各規制板7を真空チャンバ1の内側壁に沿って重ねることができるように、各回転軸61は、Z軸方向上方に向かうに従い、Y軸方向内方に向けて偏心されている。また、未使用の規制板7が蒸着源4から飛散した蒸着物質5の基板Swに向かう飛散経路を遮らないように規制板7のY軸方向の長さは、Z軸方向上方に向かうに従い、短くなるように設定されている。
【0024】
また、
図5に示す他の変形例では、真空チャンバ1内にX軸方向にのびる単一の回転軸90が設けられ、回転軸90の周囲に、周方向に間隔を置いて複数枚の規制板7が設けられている。そして、一の規制板7に所定以上の堆積物51が形成されると、移動手段としての駆動モータDmで回転軸90を所定角だけ回転駆動させて、次の規制板7により、蒸着物質5の基板Swへの蒸着領域が規制されるようにしている。
【0025】
更に、
図6に示す更に他の変形例では、真空チャンバ1内にY軸方向に間隔を置いてX軸方向にのびる少なくとも2個のローラ91と、各ローラ91の周囲に無端状に巻き掛けられた搬送ベルト92とを備え、搬送ベルト92に間隔をおいて複数枚の規制板7を設けている。そして、一の規制板7に所定以上の堆積物51が形成されると、図示省略のモータでローラ91を間欠的に回転駆動させて、次の規制板7により、蒸着物質5の基板Swへの蒸着領域が規制されるようにしている。
【符号の説明】
【0026】
DM…真空蒸着装置、1…真空チャンバ、4…蒸着源、5…蒸着物質、51…蒸着物質の堆積物、6…支柱(支持体)、7…規制板、71…規制板の下面、72…規制板の上面、73…傾斜面、8a、8b…アクチュエータ(移動手段)、91…ローラ、92…搬送ベルト、Dm…駆動モータ、Sw…基板(被成膜物)。