(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】アルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/28 20060101AFI20220621BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20220621BHJP
H01M 4/32 20060101ALI20220621BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220621BHJP
H01M 4/50 20100101ALI20220621BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220621BHJP
H01M 10/34 20060101ALI20220621BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M4/24 J
H01M4/32
H01M4/38 A
H01M4/50
H01M4/52
H01M10/34
H01M12/08 S
(21)【出願番号】P 2018199923
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 治通
(72)【発明者】
【氏名】小島 由継
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/28
H01M 4/32
H01M 4/24
H01M 4/38
H01M 4/50
H01M 4/52
H01M 10/34
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、正極、負極および電解液を少なくとも含み、
前記筐体は前記正極、前記負極および前記電解液を収納しており、
前記正極は二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルを含み、
前記負極は水素吸蔵合金を含
み、
前記水素吸蔵合金は0.2MPa以上の平衡解離圧を有し、
前記筐体に水素ガスが充填されており、
前記水素ガスは、前記水素吸蔵合金の前記平衡解離圧以上の圧力を有する、
アルカリ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアルカリ二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2-223150号公報(特許文献1)は、正極の主たる構成材料が二酸化マンガンであり、かつ負極の主たる構成材料が水素吸蔵合金であるアルカリ蓄電池(アルカリ二次電池)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニッケル金属水素化物(Ni-MH)電池が実用化されている。Ni-MH電池は「ニッケル水素電池」とも称されている。
【0005】
Ni-MH電池はアルカリ二次電池の一種である。Ni-MH電池では、正極活物質に水酸化ニッケル〔Ni(OH)2〕が使用され、負極活物質に水素吸蔵合金が使用される。ニッケルは比較的高価であり、かつ価格変動が大きい傾向がある。水酸化ニッケルに代わる安価な正極活物質が求められている。
【0006】
特許文献1では、正極活物質に二酸化マンガン(MnO2)を使用することが提案されている。二酸化マンガンは、例えばアルカリマンガン乾電池等の正極活物質として使用されている。二酸化マンガンは水酸化ニッケルよりも安価であることが期待される。
【0007】
しかしながら、二酸化マンガンの構成元素には水素が含まれていない。電池の組み立て当初、水素吸蔵合金にも水素が含まれていない。アルカリ二次電池の電荷担体は水素イオンである。正極活物質および負極活物質の両方に水素が含まれていない場合、理論上、正極活物質(二酸化マンガン)が充放電できないと考えられる。
【0008】
本開示の目的は、正極に二酸化マンガンを含み、負極に水素吸蔵合金を含むアルカリ二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本開示の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムの正否により特許請求の範囲が限定されるべきではない。
【0010】
〔1〕本開示のアルカリ二次電池は、筐体、正極、負極および電解液を少なくとも含む。筐体は正極、負極および電解液を収納している。正極は二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルを含む。負極は水素吸蔵合金を含む。
【0011】
本開示のアルカリ二次電池は、正極に二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルの両方を含む。水酸化ニッケルの一部が二酸化マンガンで代替されることにより、材料費の低減が期待される。メカニズムの詳細は不明ながら、二酸化マンガンと水酸化ニッケルとが共存することにより、二酸化マンガンの充放電が可能になる。さらに本開示のアルカリ二次電池は、従来のNi-MH電池と略同等の性能(充放電容量、電圧)を有し得る。
【0012】
〔2〕本開示のアルカリ二次電池は以下の構成をさらに含んでいてもよい。
すなわち水素吸蔵合金は0.2MPa以上の平衡解離圧を有する。筐体に水素ガスが充填されている。水素ガスは、水素吸蔵合金の平衡解離圧以上の圧力を有する。
【0013】
従来のNi-MH電池において、水素吸蔵合金は0.1MPa以下の平衡解離圧を有している。「平衡解離圧」とは、水素吸蔵合金が可逆的に水素を吸蔵し、放出できる圧力を示す。本明細書では、0.1MPa以下の平衡解離圧を有する水素吸蔵合金が「低解離圧合金」とも記される。0.2MPa以上の平衡解離圧を有する水素吸蔵合金が「高解離圧合金」とも記される。
【0014】
高解離圧合金は、低解離圧合金に比して水素吸蔵量が大きい傾向がある。高解離圧合金の使用により、負極容量ひいては電池容量の増加が期待される。さらに高解離圧合金の使用により、放電電圧が高くなる傾向がある。この理由は例えばネルンストの式によって説明できる。高解離圧合金の使用により、出力の向上も期待される。
【0015】
ただし高解離圧合金では、その平衡解離圧以上の圧力下でない限り、水素の吸蔵放出が安定しない。そこで上記〔2〕の構成では、筐体に水素ガスが充填されている。水素ガスは平衡解離圧以上の圧力を有する。これにより高解離圧合金が安定して水素を吸蔵し、放出することが期待される。
【0016】
さらに筐体に充填された水素ガスは、負極活物質として機能することも期待される。すなわち水素ガスの解離反応により、電気エネルギーが取り出され得る。この動作原理は、例えばニッケル水素ガス(Ni-H2)電池における負極の動作原理と同様である。水素ガスが負極活物質として機能することにより、負極容量の増加が期待される。
【0017】
通常ガスは大きな体積を有する。しかし上記〔2〕の水素ガスは0.2MPa以上の圧力を有するように圧縮されている。よって上記〔2〕の構成を含むアルカリ二次電池は、高い体積エネルギー密度(単位体積あたりのエネルギー)を有することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本実施形態のアルカリ二次電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2はAB
5型合金の水素圧-組成-等温線図(PCT線図)の一例である。
【
図3】
図3はA
5B
19型合金のPCT線図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態(本明細書では「本実施形態」とも記される)が説明される。ただし以下の説明は、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0020】
<アルカリ二次電池>
図1は本実施形態のアルカリ二次電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100はアルカリ二次電池である。電池100は筐体20、電極群10および電解液(不図示)を少なくとも含む。筐体20の形状は特に限定されるべきではない。筐体20は、例えば円筒形、角形、コイン形等であってもよい。
【0021】
筐体20に水素ガスが充填されていてもよい。その場合、筐体20は水素ガスの圧力に耐え得る構造を有する。例えば筐体20は、高圧水素ガス用の圧力容器等であってもよい。
【0022】
電極群10は正極11、負極12およびセパレータ13を含む。すなわち電池100が筐体20、正極11、負極12および電解液を少なくとも含む。電極群10は例えば巻回型であってもよい。すなわち電極群10は、正極11とセパレータ13と負極12とがこの順序で積層され、さらにこれらが渦巻状に巻回されることにより形成されていてもよい。電極群10は例えば積層型であってもよい。すなわち電極群10は正極11と負極12とが交互にそれぞれ1枚以上積層されることにより形成されていてもよい。正極11と負極12との各間にはセパレータ13が配置される。
【0023】
《正極》
正極11は例えば板状、シート状等の形態を有し得る。正極11は例えば10μm以上1mm以下の厚さを有していてもよい。正極11は正極活物質を少なくとも含む。正極活物質は例えば粒子群(粉体)であってもよい。正極活物質は例えば1μm以上30μm以下のD50を有していてもよい。「D50」は、体積基準の粒度分布において微粒側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を示す。
【0024】
(二酸化マンガンおよび水酸化ニッケル)
本実施形態の正極活物質は二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルである。すなわち正極11は二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルを含む。正極11が二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルの両方を含むことにより、二酸化マンガンが正極活物質として機能すると考えられる。二酸化マンガンは各種の結晶構造を有し得る。二酸化マンガンは例えばβ型等であってもよい。水酸化ニッケルも各種の結晶構造を有し得る。水酸化ニッケルは例えばβ型等であってもよい。
【0025】
例えば正極11は多層構造を含んでいてもよい。例えば多層構造は、二酸化マンガンを含む第1層と、水酸化ニッケルを含む第2層とが積層されたものであってもよい。例えば二酸化マンガンと水酸化ニッケルとが複合粒子を形成していてもよい。例えば二酸化マンガンが水酸化ニッケルの表面を被覆していてもよい。
【0026】
正極11において、二酸化マンガンと水酸化ニッケルとの質量比は、例えば「二酸化マンガン:水酸化ニッケル=40:60~60:40」であってもよい。二酸化マンガンと水酸化ニッケルとの質量比は、例えば「二酸化マンガン:水酸化ニッケル=50:50」であってもよい。
【0027】
(その他の構成)
正極11は実質的に正極活物質のみからなっていてもよい。正極11は正極活物質に加えて、例えば集電体、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。
【0028】
集電体は特に限定されるべきではない。集電体は、例えば多孔質金属、穿孔金属板(パンチングメタル)等であってもよい。例えば多孔質金属に正極活物質等が充填されることにより正極11が製造され得る。多孔質金属は、例えば多孔質ニッケルシート等であってもよい。例えば住友電工社製の「セルメット(登録商標)」等が集電体として使用されてもよい。
【0029】
導電材は特に限定されるべきではない。導電材は例えば水酸化コバルト〔Co(OH)2〕、酸化コバルト(CoO)等であってもよい。導電材の含量は、例えば100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部以上20質量部以下であってもよい。
【0030】
バインダは特に限定されるべきではない。バインダは例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等であってもよい。バインダの含量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部以上20質量部以下であってもよい。
【0031】
《負極》
負極12は板状、シート状等の形態を有し得る。負極12は例えば10μm以上1mm以下の厚さを有していてもよい。負極12は負極活物質を少なくとも含む。負極活物質は粒子群であってもよい。負極活物質は例えば1μm以上30μm以下のD50を有していてもよい。
【0032】
(水素吸蔵合金)
本実施形態の負極活物質は水素吸蔵合金である。すなわち負極12は水素吸蔵合金を含む。水素吸蔵合金は水素を可逆的に吸蔵し、放出する。水素吸蔵合金は特に限定されるべきではない。水素吸蔵合金は、例えばAB型合金(例えばTiFe等)、AB2型合金(例えばZrMn2、ZrV2、ZrNi2等)、A2B型合金(例えばMg2Ni、Mg2Cu等)、AB5型合金(例えばCaNi5、LaNi5、MmNi5等)、A2B7型合金(例えばLa2Ni7等)、A5B19型合金(例えばPr4MgNi19等)等であってもよい。負極12に1種の水素吸蔵合金が単独で含まれていてもよい。負極12に2種以上の水素吸蔵合金が含まれていてもよい。例えば負極12にAB5型合金、A2B7型合金およびA5B19型合金からなる群より選択される少なくとも1種が含まれていてもよい。
【0033】
例えば「MmNi5」における「Mm」はミッシュメタルを示す。「ミッシュメタル」はCeおよびLaが主成分である希土類元素の混合物を示す。「CeおよびLaが主成分である」とは、CeおよびLaの合計が混合物全体の50質量%以上を占めることを示す。Mmは、CeおよびLaの他、Nd、Pr、Sm、Mg、Al、Fe等を含んでいてもよい。Mmは、例えば40質量%以上60質量%以下のCe、10質量%以上35質量%以下のLa、ならびに残部のNd、PrおよびSm等を含んでいてもよい。Mmは、例えば53.7質量%のCe、24.1質量%のLa、16.5質量%のNd、および5.8質量%のPrを含んでいてもよい。
【0034】
(平衡解離圧)
水素吸蔵合金は平衡解離圧を有する。水素吸蔵合金は例えば0.01MPa以上10MPa以下の平衡解離圧を有していてもよい。水素吸蔵合金は例えば0.1MPa以下の平衡解離圧を有していてもよい。すなわち水素吸蔵合金は低解離圧合金であってもよい。低解離圧合金は、例えばMmNi4.14Co0.29Mn0.49Al0.30(平衡解離圧 0.01MPa)等であってもよい。
【0035】
水素吸蔵合金は例えば0.2MPa以上の平衡解離圧を有していてもよい。すなわち水素吸蔵合金は高解離圧合金であってもよい。高解離圧合金は低解離圧合金に比して水素吸蔵量が大きい傾向がある。水素吸蔵合金が高解離圧合金であることにより、負極容量の増加が期待される。さらに高解離圧合金の使用により放電電圧が高くなる傾向がある。水素吸蔵合金が高解離圧合金であることにより、出力の向上も期待される。水素吸蔵合金は例えば2MPa以上の平衡解離圧を有していてもよい。水素吸蔵合金は例えば0.2MPa以上2MPa以下の平衡解離圧を有していてもよい。
【0036】
高解離圧合金は、例えばPr4MgNi19(平衡解離圧 0.2MPa)、MmNi4.7Fe0.3(平衡解離圧 1.6MPa)、MmNi4.5Cr0.5(平衡解離圧 0.57MPa)、MmNi4.5Mn0.5(平衡解離圧 0.33MPa)、MmNi4.5Al0.5(平衡解離圧 0.38MPa)、MmNi4.5Cr0.45Mn0.05(平衡解離圧 0.30MPa)、MmNi4.5Cr0.25Mn0.25(平衡解離圧 0.2MPa)、MmNi5(平衡解離圧 2.3MPa)、MmNi4.2Co0.8(平衡解離圧 2.1MPa)、MmNi4.12Co0.79(平衡解離圧 2MPa)等であってもよい。高解離圧合金は、例えばPr4MgNi19およびMmNi4.12Co0.79からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0037】
(測定方法)
図2はAB
5型合金の水素圧-組成-等温線図(PCT線図)の一例である。
図3はA
5B
19型合金のPCT線図の一例である。
図2および
図3は、いずれも高解離圧合金のPCT線図である。
図2のAB
5型合金は2MPa程度の平衡解離圧を有する。
図3のA
5B
19型合金は0.2MPa程度の平衡解離圧を有する。
【0038】
本明細書の「平衡解離圧」は23℃での測定値である。平衡解離圧はPCT線図から求められる。PCT線図はジーベルツ法により求められる。PCT線図の放出線は「JIS H 7201」に準拠した方法により測定される。測定には、従来公知のジーベルツ装置が使用され得る。測定時、測定室(恒温槽)内に配置された温度計が「23℃±1℃」を示していれば、23℃において放出線が測定されたとみなされる。
【0039】
PCT線図(
図2および
図3)の縦軸は水素圧である。縦軸は常用対数目盛を有する。横軸は水素吸蔵量である。少なくとも10点の測定点が結ばれることにより、放出線が形成される。望ましくは20点の測定点が結ばれることにより、放出線が形成される。
【0040】
放出線の中で連続する3点を通る直線が描かれる。直線の傾きが求められる。3点が一つの直線に載らない場合は、最小二乗法により、直線の傾きが求められる。傾きが最も小さくなる3点の組み合わせが決定される。該3点の水素圧の算術平均が、本明細書の「平衡解離圧」である。
【0041】
(その他の構成)
負極12は実質的に負極活物質のみからなっていてもよい。負極12は負極活物質に加えて、例えば集電体、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。
【0042】
集電体は特に限定されるべきではない。集電体は例えば正極11の集電体として例示された材料であってもよい。例えば多孔質金属に負極活物質等が充填されることにより負極12が製造され得る。
【0043】
導電材は特に限定されるべきではない。導電材は例えばカーボンブラック等であってもよい。導電材の含量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば0.1質量部以上20質量部以下であってもよい。バインダは特に限定されるべきではない。バインダは正極11のバインダとして例示された材料であってもよい。バインダの含量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば0.1質量部以上20質量部以下であってもよい。
【0044】
《水素ガス》
筐体20に水素ガスが充填されていてもよい。水素ガスは水素吸蔵合金の平衡解離圧以上の圧力を有していてもよい。これにより水素吸蔵合金(特に高解離圧合金)が安定して水素を吸蔵し、放出することが期待される。
【0045】
筐体20に充填された水素ガスは、負極活物質として機能することも期待される。水素ガスが負極活物質として機能することにより、負極容量の増加が期待される。水素ガスの圧力が高い程(すなわち水素ガスが圧縮されている程)、体積エネルギー密度が高くなることが期待される。
【0046】
水素ガスは例えば0.015MPa以上の圧力を有していてもよい。水素ガスは例えば0.2MPa以上の圧力を有していてもよい。水素ガスは例えば0.3MPa以上の圧力を有していてもよい。水素ガスは例えば2MPa以上の圧力を有していてもよい。水素ガスは例えば3MPa以上の圧力を有していてもよい。水素ガスは例えば10MPa以上の圧力を有していてもよい。ただし水素ガスの圧力が高くなる程、筐体20に高い強度等が求められることになる。水素ガスは例えば20MPa以下の圧力を有していてもよい。
【0047】
《セパレータ》
セパレータ13は多孔質である。セパレータ13は例えば10μm以上1mm以下の厚さを有していてもよい。セパレータ13は電気絶縁性である。セパレータ13は例えばポリオレフィン製の不織布等であってもよい。セパレータ13は例えばポリオレフィン製の微多孔質フィルム等であってもよい。
【0048】
《電解液》
電解液はアルカリ水溶液である。電解液は、例えば水酸化カリウム(KOH)水溶液、水酸化リチウム(LiOH)水溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液等であってもよい。アルカリ水溶液にKOH、LiOHおよびNaOHからなる群より選択される少なくとも1種が溶解していてもよい。アルカリ水溶液の濃度は、例えば1mоl/L以上10mоl/L以下であってもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本開示の実施例(本明細書では「本実施例」とも記される)が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0050】
<アルカリ二次電池の作製>
以下のように各種の電池100(アルカリ二次電池)が作製された。本実施例の電池100は、20~21mAhの充電容量を有するように設計されている。
【0051】
《実施例1》
第1電極が準備された。第1電極は円板状である。第1電極は10mmの直径を有する。第1電極はβ-MnO2(理論容量 308mAh/g、標準電極電位 0.15V)を正極活物質として含む。
【0052】
第2電極が準備された。第2電極は円板状である。第2電極は10mmの直径を有する。第2電極はβ-Ni(OH)2(理論容量 289mAh/g、標準電極電位 0.52V)を正極活物質として含む。
【0053】
第1電極と第2電極とが積層されることにより、正極11が準備された。正極11は円板状である。正極11は10mmの直径を有する。第1電極と第2電極との質量比は50:50である。すなわち正極11において、β-MnO2とβ-Ni(OH)2との質量比は「β-MnO2:β-Ni(OH)2=50:50」である。
【0054】
負極12が準備された。負極12は円板状である。負極12は10mmの直径を有する。負極12はMmNi4.14Co0.29Mn0.49Al0.30(平衡解離圧 0.01MPa)を負極活物質として含む。
【0055】
セパレータ13が準備された。セパレータ13はポリオレフィン系樹脂繊維の不織布である。セパレータ13は0.15mmの厚さを有する。セパレータ13を挟んで、正極11と負極12とが対向するように、これらが積層された。これにより電極群10が形成された。
【0056】
筐体20が準備された。筐体20に電極群10が収納された。筐体20内における水素ガスの圧力は0.015MPaである。所定量の電解液が筐体20に注入された。電解液は水酸化カリウム水溶液(濃度 6mоl/L)である。以上より実施例1の電池100が作製された。
【0057】
《比較例1-1》
正極が準備された。正極は円板状である。正極は10mmの直径を有する。正極はβ-Ni(OH)2を正極活物質として含む。正極は20mAhの充電容量を有するように設計されている。該正極が使用されることを除いては、実施例1と同様に電池100が作製された。
【0058】
《比較例1-2》
正極が準備された。正極は円板状である。正極は10mmの直径を有する。正極はβ-MnO2を正極活物質として含む。該正極が使用されることを除いては、実施例1と同様に電池100が作製された。
【0059】
《実施例2》
実施例1と同様に正極11が作製された。負極12が準備された。実施例2の負極12はMmNi4.12Co0.79(平衡解離圧 2MPa)を負極活物質として含む。実施例1と同様に電極群10が形成された。筐体20に電極群10が収納された。さらに実施例2では、筐体20に水素ガスが充填された。筐体20内における水素ガスの圧力は3MPaである。所定量の電解液が筐体20に注入された。電解液は水酸化カリウム水溶液(濃度 6mol/L)である。以上より実施例2の電池100が作製された。
【0060】
《比較例2-1》
正極が準備された。正極は円板状である。正極は10mmの直径を有する。正極はβ-Ni(OH)2を正極活物質として含む。該正極が使用されることを除いては、実施例2と同様に電池100が作製された。
【0061】
《比較例2-2》
正極が準備された。正極は円板状である。正極は10mmの直径を有する。正極はβ-MnO2を正極活物質として含む。該正極が使用されることを除いては、実施例2と同様に電池100が作製された。
【0062】
《実施例3》
実施例1と同様に正極11が作製された。負極12が準備された。実施例3の負極12はPr4MgNi19(平衡解離圧 0.2MPa)を負極活物質として含む。Pr4MgNi19はコバルトフリーのA5B19型合金である。実施例1と同様に電極群10が形成された。筐体20に電極群10が収納された。さらに実施例2では、筐体20に水素ガスが充填された。筐体20内における水素ガスの圧力は0.3MPaである。所定量の電解液が筐体20に注入された。電解液は水酸化カリウム水溶液(濃度 6mol/L)である。以上より実施例3の電池100が作製された。
【0063】
<充放電試験>
0.08Cの電流レートにより、電池100が充放電された。「C」は電流レートの単位である。「1C」の電流レートでは、電池の設計容量が1時間で充電される。下記表1に充電容量、放電容量、充電平均電圧、充電最大電圧、放電平均電圧、放電終止電圧および平均電圧が示される。
【0064】
なお充電平均電圧は、充電曲線において、充電容量が50%である時の電圧を示す。放電平均電圧は、放電曲線において、放電容量が50%である時の電圧を示す。平均電圧は充電平均電圧と放電平均電圧との算術平均である。
【0065】
【0066】
<実験結果>
実施例1では、正極11が二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルの両方を含む。実施例1では略設計どおりの充電容量および放電容量が得られている。よって二酸化マンガンが正極活物質として機能していると考えられる。
【0067】
比較例1-1は従来のNi-MH電池と同様の構成を有する。実施例1は比較例1-1と略同等の性能を示している。
【0068】
実施例2および実施例3では、正極11が二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルの両方を含む。実施例2および実施例3でも、実施例1と同様に二酸化マンガンが正極活物質として機能していると考えられる。
【0069】
実施例2および実施例3では、負極12が高解離圧合金を含んでいる。さらに筐体20に水素ガスが充填されている。実施例2および実施例3では、高解離圧合金と水素ガスとが負極活物質として機能していると考えられる。実施例2および実施例3の負極12は、高解離圧合金と水素ガスとのハイブリッド負極といえる。実施例2および実施例3は、実施例1に比して放電平均電圧が高くなっている。
【0070】
図4は実施例2の充放電結果である。
図5は比較例2-1の充放電結果である。
図4および
図5の横軸は充放電容量である。
図4および
図5の縦軸は電圧である。
図4および
図5に示されるように、実施例2および比較例2-1は充放電が可能である。実施例2と比較例2-1とは、略同等の性能(充放電容量、電圧)を示している。
【0071】
図4および
図5において、第1領域R1では主に水素吸蔵合金が充放電していると考えられる。第2領域R2では主に水素ガスが充放電していると考えられる。
【0072】
上記表1に示されるように、比較例1-2および比較例2-2は充放電できなかった。比較例1-2および比較例2-2では、正極11に二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルの両方が含まれていないため、二酸化マンガンが充放電できないと考えられる。
【0073】
本開示の実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0074】
10 電極群、11 正極、12 負極、13 セパレータ、20 筐体、100 電池(アルカリ二次電池)。