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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ケイ素含有膜の高温原子層堆積
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20220621BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/42
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019112867
(22)【出願日】2019-06-18
(62)【分割の表示】P 2017008324の分割
【原出願日】2017-01-20
(65)【公開番号】P2019186562
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-01-20
(31)【優先権主張番号】62/280,886
(32)【優先日】2016-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/404,376
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ワン メイリヤン
(72)【発明者】
【氏名】シンジエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】アヌパマ マリカージュナン
(72)【発明者】
【氏名】ハリピン チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ビン
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135475(JP,A)
【文献】特開2015-188087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0207283(US,A1)
【文献】特開2017-112145(JP,A)
【文献】特開2004-260192(JP,A)
【文献】特開2013-236073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1が、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
f.ヒドロキシル含有源を反応器中に導入する工程と、
g.パージガスで反応器をパージする工程と
を含む、基材の少なくとも表面上に酸化ケイ素膜を堆積するための方法であって、
所望の厚さの酸化ケイ素が堆積されるまで、工程b~eが繰り返され、
プロセスが、650~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で行われ、前記方法は、触媒を実質的に含まずに行われる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体が、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシロキサン、1,1,3,3-テトラクロロジシロキサン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,5-ジクロロ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パージガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
前記酸素源が、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、二酸化炭素と酸素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、窒素と酸素とを含む組成物、水蒸気、水蒸気プラズマ、水とオゾンとを含む組成物、過酸化水素、オゾン源、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1が、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
f.ヒドロキシル含有源を反応器中に導入する工程と、
g.パージガスで反応器をパージする工程と
を含む、酸化ケイ素膜を堆積するための方法であって、
所望の厚さが堆積されるまで工程b~gが繰り返され、プロセスの温度が650℃~1000℃の範囲であり、圧力が50ミリTorr(mT)~760Torrの範囲であり、前記方法は、触媒を実質的に含まずに行われる、方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体が、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシロキサン、1,1,3,3-テトラクロロジシロキサン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,5-ジクロロ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記パージガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5の方法。
【請求項8】
前記酸素源が、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、二酸化炭素と酸素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、窒素と酸素とを含む組成物、水蒸気、水蒸気プラズマ、水とオゾンとを含む組成物、過酸化水素、オゾン源、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1が、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
f.ヒドロキシル含有源を反応器中に導入する工程と、
g.パージガスで反応器をパージする工程と
を含む、酸化ケイ素膜を堆積するための方法であって、
所望の厚さが堆積されるまで工程b~eが繰り返され、
前記方法の温度が650~1000℃の範囲であり、圧力が50ミリTorr(mTorr)~760Torrの範囲であり、前記前駆体が、Si-Me又はSi-Cl基を含む少なくとも1つのアンカー官能基及び不動態化官能基を含み、前記方法は、触媒を実質的に含まずに行われる、方法。
【請求項10】
前記酸素源が、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、二酸化炭素と酸素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、窒素と酸素とを含む組成物、水蒸気、水蒸気プラズマ、水とオゾンとを含む組成物、過酸化水素、オゾン源、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法の温度が700~850℃の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力が50ミリTorr(mTorr)~100Torrの範囲である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年1月20日に出願した米国特許出願第62/280886号の利益を主張する。特許出願第62/280886号の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で説明するのは、ケイ素含有膜を形成するための組成物及び方法である。より具体的には、本明細書で説明するのは、原子層堆積(ALD)プロセスを使用して、約500℃以上の1つ又は複数の堆積温度で酸化ケイ素膜を形成するための組成物及び方法である。
【背景技術】
【0003】
熱酸化は、半導体用途において、高純度で高コンフォーマルな酸化ケイ素膜、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)膜を堆積するのに一般的に使用されるプロセスである。しかしながら、熱酸化プロセスは極めて低い堆積速度、例えば、700℃で0.0007Å/秒未満を有し(B.E.Deal and A.S.Grove ”General Relationship for the Thermal Oxidation of Silicon.” Journal of Applied Physics Vol36,page3770(1965)参照)、それは、高容量の製造プロセスを商業的に採用することを非実用的にする。
【0004】
原子層堆積(ALD)及びプラズマ原子層堆積(PEALD)は、低温(500℃未満)で二酸化ケイ素(SiO2)のコンフォーマル膜を堆積するのに使用されるプロセスである。ALD及びPEALDプロセスの両方において、前駆体及び反応性ガス(例えば、酸素又はオゾン)は、一定のサイクル数で独立してパルス化され、各サイクルで二酸化ケイ素(SiO2)の単分子層を形成する。しかしながら、これらのプロセスを使用して低温で堆積された二酸化ケイ素(SiO2)は、半導体用途に有害である、炭素(C)、窒素(N)、又は両方のような不純物のレベルを含有することがある。これを改善するために、1つの可能な解決は、堆積温度を500℃超の温度に増加することである。しかしながら、これらのより高い温度で、半導体産業で用いられる従来の前駆体は、自己反応し、熱的分解し、ALDモードよりむしろCVDモードで堆積する傾向がある。CVDモード堆積は、特に、NAND及びV-NANDのような高アスペクト比構造を有する半導体用途に対して、ALD堆積と比較して減少したコンフォーマリティーを有する。それに加えて、CVDモード堆積は、ALDモードの堆積より低い膜又は材料厚の制御性を有する。
【0005】
米国特許出願公開第2014/0170858号明細書では、サイクルを所定回数行うことで、所定の元素と、酸素と、窒素、炭素、及びホウ素からなる群より選択される少なくとも1つの元素とを含む膜を、基材上に形成する方法であって、サイクルが基材に原料ガスを供給することを含み、原料ガスが、所定の元素と酸素との化学結合を含む所定の元素、塩素及び酸素を含有し、基材に反応性ガスを供給することを含み、反応性ガスが、窒素、炭素、及びホウ素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含有する、方法を説明する。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0111545号明細書では、半導体デバイス製作において、堆積速度を促進し段差被覆性を改善するために、ALDを使用して二酸化ケイ素層を形成する方法を説明する。
【0007】
米国特許第7498273号明細書では、低多孔率、高エッチング選択性、及びより少ないひび割れを持つ膜を与えるPECVDでシロキサンを使用して、基材上で形成されたギャップ中に低k誘電体層を堆積する方法を説明する。方法は、有機Si前駆体及びO前駆体を堆積チャンバーへ導入することを含む。有機Si前駆体は、8未満のC:Si原子比を有し、O前駆体は、堆積チャンバーの外側で作り出された原子Oを含む。
【0008】
米国特許第7084076号明細書では、原子層堆積(ALD)を使用して二酸化ケイ素膜を形成するための方法を説明し、ハロゲン-又はNCO-置換シロキサンがSi源として使用される。
【0009】
米国特許出願公開第2013/0295779号明細書では、約500℃以上の1つ又は複数の堆積温度で、酸化ケイ素含有膜を形成するための組成物及びALDを説明する。
【0010】
前で特定した特許及び特許出願は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、600℃超の温度での熱に基づく堆積プロセスを垂直NAND(V-NAND)メモリー技術のために置き換えるために、堆積プロセス原子層堆積(ALD)又はALD型(ALD-like)プロセス、例えば、限定されないが、周期的化学気相堆積プロセスを使用して、高品質、低不純物、高コンフォーマルな(共形的な)酸化ケイ素膜を形成するためのプロセスを開発する必要性が存在する。さらに、V-NANDメモリーの製作のためのALD又はALD型プロセスにおいて、1つ又は複数の膜性質、例えば、純度及び/又は密度を改善するために、高温堆積(650℃以上の1つ又は複数の温度での堆積)を開発することが望ましいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書で説明するのは、原子層堆積(ALD)又はALD型プロセスにおいて、高温で、例えば、約650℃以上の1つ又は複数の温度で、酸化ケイ素材料又は膜の堆積のための方法である。本明細書で説明される組成物又は方法を使用して堆積された酸化ケイ素膜は、少なくとも1つ又は複数の以下の特性を含む:約2.1g/cm3以上の密度、熱酸化物に対して約6以下の、0.5wt%のdHF中でのウェットエッチング速度(WER)、炭素含有量が2×1019原子/cm3以下である。
【0013】
1つの態様において、
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と
を含む、酸化ケイ素の膜又は材料を堆積するための方法であって、所望の厚さの酸化ケイ素が堆積されるまで、工程b~eが繰り返され、プロセスが約650℃~850℃の範囲の1つ又は複数の温度で行われる方法が提供される。この又は他の実施形態において、方法は、約50ミリTorr(mTorr)~約760Torrの範囲の1つ又は複数の圧力で行われる。この又は他の実施形態において、酸素源は、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、二酸化炭素と酸素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、窒素と酸素とを含む組成物(すなわち、亜酸化窒素N2O又は酸化窒素NO)、水蒸気、水蒸気プラズマ、水とオゾンとを含む組成物、過酸化水素、オゾン源、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの要素である。
【0014】
別の態様において、
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
f.水蒸気又はヒドロキシル源を反応器中に導入する工程と、
g.パージガスで反応器をパージする工程と
を含む、酸化ケイ素の膜又は材料を堆積するための方法であって、所望の厚さの酸化ケイ素が堆積されるまで、工程b~gが繰り返され、プロセスが650℃~850℃の範囲の1つ又は複数の温度で行われる方法が提供される。
【0015】
上で説明した方法の1つ又は複数の実施形態において、方法は、約50ミリTorr(mTorr)~約760Torrの範囲の1つ又は複数の圧力で行われる。
【0016】
上で説明した方法の1つ又は複数の実施形態において、パージガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0017】
上で説明した方法の1つ又は複数の実施形態において、酸素源は、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、二酸化炭素と酸素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、窒素と酸素とを含む組成物(すなわち、亜酸化窒素N2O又は酸化窒素NO)、水蒸気、水蒸気プラズマ、水とオゾンとを含む組成物、過酸化水素、オゾン源、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0018】
更なる態様において、以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を含む、酸化ケイ素の膜を堆積するための組成物が提供される。これらのハライドシロキサン前駆体は以下の表Iに示される。
【0019】
【表1】
【0020】
本発明の1つの実施形態は、以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を含むケイ素含有膜を堆積するのに使用するための組成物に関連する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、任意の前述の方法によって作られたケイ素含有膜に関連する。本発明の更なる実施形態は、約2.1g/cm3以上の密度、熱酸化物に対して約6以下の、0.5wt%のdHF中でのウェットエッチング速度(WER)、2×1019原子/cm3以下の炭素含有量を有するケイ素含有膜に関連する。
【0022】
本発明の様々な態様及び実施形態は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヘキサクロロジシロキサン(HCDSO)及びオクタクロロトリシロキサン(OCTSO)についての、それぞれ760℃及び750℃の基材温度での、Å/サイクルで測定される堆積した酸化ケイ素膜のサイクルあたりの成長と、ケイ素前駆体のパルス時間(秒で測定された)との間の関係を図示する。
図2】例1で説明される、760℃での、ヘキサクロロジシロキサン(HCDSO)及びオゾンを使用してサイクル数に対してÅで測定した酸化ケイ素膜厚を図示する。
図3】760℃でヘキサクロロジシロキサン(HCDSO)及びオゾンを使用して堆積した酸化ケイ素膜の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図4】例4で説明されるように、HCDSO及びオゾンを使用して、異なる温度で堆積した酸化ケイ素膜の塩化物含有量を図示する。
図5】例4で説明されるように、HCDSO及びオゾンと共に、様々な基材温度で堆積した酸化ケイ素膜についての熱酸化に対する相対WERを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で説明するのは、酸化ケイ素膜を形成するための方法及び組成物である。酸化ケイ素の膜又は材料という用語は、限定されないが、化学量論的又は非化学量論的な酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、酸炭化ケイ素膜、酸炭窒化ケイ素膜、及びそれらの組み合わせを含む。1つの特定の実施形態において、酸化ケイ素膜は、原子層堆積(ALD)又はALD型堆積プロセス、例えば、限定されないが、周期的化学気相堆積プロセス(CCVD)で、約650℃以上の1つ又は複数の温度で堆積される。説明を通じて、「ALD又はALD型」という用語は、限定されないが、以下のプロセス、a)ハライドシラン前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤が、反応器中に、例えば、枚葉式ウエハALD反応器、半バッチ式ALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器中に連続して導入されるプロセス、b)ハライドシラン前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤が、反応器の異なるセクションに基材を移動する又は回転することで基材に晒され、各セクションが不活性ガスカーテン、すなわち、空間的ALD反応器又はロールツーロールALD反応器によって分離されるプロセス、を含むプロセスを示す。
【0025】
本明細書で説明される方法は、約650℃~約950℃又は約700~約850℃の範囲の1つ又は複数の堆積温度で、周期的プロセスにおいて、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体及び酸素源を使用して、酸化ケイ素膜を提供する。本明細書で説明される堆積プロセスの1つの実施形態において、方法は、以下の工程、
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と
を含み、所望の厚さの酸化ケイ素膜が、基材の少なくとも表面上に堆積されるまで、工程b~eが繰り返される。
【0026】
理論又は説明によって拘束されることを望むわけではないが、本明細書で説明される少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体は、少なくとも1つのアンカー官能基と、四塩化ケイ素又はジメチルアミノトリメチルシランのような1つのケイ素原子のみを有する従来のケイ素前駆体と比較して、特に、第1の酸化ケイ素の幾つかの層の形成中に、基材表面上の幾つかの反応部位と反応して、酸素源と基材の間の任意の不要な相互作用を防ぐためのバリア層として機能することができるSi-O-Si種の単分子層を固定する既存のSi-O-Si結合と、を有するべきであると考えられる。アンカー官能基は、ハライド(Cl、Br、I)基から選択することができる。ハライドシロキサン前駆体はまた、更なる表面反応を防ぎ、自己制御的プロセスをもたらすことについて化学的に安定であるという点で不動態化官能基を有するべきである。不動態化官能基は、異なるアルキル基、例えば、Cl又はBrのようなハライド、メチル、フェニル基、好ましくはCl又はメチル基から選択される。次いで、表面上の残りの基は酸化されて、更なるSi-O-Si結合並びにヒドロキシル基を形成することができる。それに加えて、ヒドロキシル源、例えば、H2O又は水プラズマはまた、反応器中に導入されて、次のALDサイクルのための反応部位として更なるヒドロキシル基を形成することができる。
【0027】
前に述べたように、以下の式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
(式中、X=Cl、Br、又はIであり、R及びR1は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され、n=1、2、又は3であり、m=0、1、又は2であり、及びp=0又は1である)を有する化合物の群から選択される、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を含む酸化ケイ素膜を堆積するための組成物が提供される。式I及びIIを有する前駆体の例としては、限定されないが、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシロキサン、1,1,3,3-テトラクロロジシロキサン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、1,5-ジクロロ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、及び1,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチルトリシロキサンが挙げられる。
【0028】
1つの特定の実施形態において、ハライドシロキサン前駆体は、少なくとも1つのアンカー官能基(例えば、Si-Cl)及び少なくとも1つの不動態化官能基(例えば、Si-Meであって、Meはメチル基)で構成される。そのような前駆体の例は以下の表2に示される。
【0029】
【表2】
【0030】
幾つかの実施形態において、本明細書で説明される方法を使用して堆積した酸化ケイ素膜は、酸素源、試薬又は酸素を含む前駆体を使用して、酸素の存在下で形成される。酸素源は、少なくとも1つの酸素源の形態で反応器中に導入されることがある、及び/又は堆積プロセスで使用された他の前駆体中に偶然に存在することがある。適切な酸素源のガスとしては、例えば、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、二酸化炭素と酸素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、窒素と酸素とを含む組成物(すなわち、亜酸化窒素N2O又は酸化窒素NO)、水蒸気、水蒸気プラズマ、水とオゾンとを含む組成物、過酸化水素、オゾン源、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。幾つかの実施形態において、酸素源は、約1~約10000標準立方センチメートル(sccm)又は約1~約2000標準立方センチメートル(sccm)又は約1~約1000sccmの範囲の流速で、反応器中に導入される酸素源ガスを含む。酸素源を、約0.1~約100秒間の範囲である時間で導入することができる。1つの特定の実施形態において、酸素源は、10℃以上の温度を有する水を含む。膜がALD又は周期的CVDプロセスによって堆積される実施形態において、前駆体パルスは、0.01秒超であるパルス幅を有することができ、酸素源は0.01秒未満であるパルス幅を有することができ、水パルス幅は0.01秒未満であるパルス幅を有することができる。また別の実施形態において、パルス間のパージ時間は、0秒と同じくらい低い場合があり、又はパージの間がなく連続的にパルス化される。
【0031】
幾つかの実施形態において、酸化ケイ素膜は窒素をさらに含む。これらの実施形態において、膜は、本明細書で説明される方法を使用して堆積され、窒素含有源の存在下で形成される。窒素含有源は、少なくとも1つの窒素源の形態で反応器中に導入されることがある、及び/又は堆積プロセスで使用された他の前駆体中に偶然に存在することがある。適切な窒素含有源のガスとしては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、及びそれらの混合物を挙げることができる。幾つかの実施形態において、窒素含有源は、約1~約2000標準立方センチメートル(sccm)又は約1~約1000sccmの範囲の流速で、反応器中に導入されるアンモニアプラズマ又は水素/窒素プラズマ源のガスを含む。窒素含有源を、約0.1~約100秒間の範囲である時間で導入することができる。膜がALD又は周期的CVDプロセスによって堆積される実施形態において、前駆体パルスは、0.01秒超であるパルス幅を有することができ、窒素含有源は0.01秒未満であるパルス幅を有することができ、水パルス幅は0.01秒未満であるパルス幅を有することができる。また別の実施形態において、パルス間のパージ時間は、0秒と同じくらい低い場合があり、又はパージの間がなく連続的にパルス化される。
【0032】
本明細書で説明される堆積方法は、1つ又は複数のパージガスを含むことができる。消費されてない反応剤及び/又は反応副生成物をパージするために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示のパージガスとしては、限定されないが、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H2)、及びそれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態において、Arのようなパージガスは、0.1~1000秒間、約10~約6000sccmの範囲の流速で反応器中に供給され、それによって、反応器中に残ることがある未反応材料及び任意の副生成物をパージする。
【0033】
前駆体、酸素源、窒素含有源、及び/又は他の前駆体、原料ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、得られる誘電体膜の化学量論組成を変えるために、それらを供給するための時間を変えることで行われることがある。
【0034】
パージガスは、前の工程からの残留ガスと組み合わさり組成物を形成することができる。例えば、組成物は、パージガスと少なくとも1つの本発明の前駆体とを含むことができる。パージガスは、この組成物の約1%~約95%を含む。
【0035】
エネルギーが、ケイ素前駆体、酸素含有源、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つに適用され、反応を誘導し基材上に誘電体の膜又はコーティングを形成する。そのようなエネルギーは、限定されないが、熱、プラズマ、パルス化プラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合型プラズマ、X線、e-ビーム、光子、リモート式プラズマ法、及びそれらの組み合わせによって供給することができる。幾つかの実施形態において、二次RF周波源を使用して基材表面でプラズマ特性を改質することができる。堆積がプラズマを含む実施形態において、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器中に直接生成される直接プラズマ生成プロセスを含むことがあるか、又は代替的に、プラズマが反応器の外側で生成されて反応器中に供給されるリモートプラズマ生成プロセスを含むことがある。
【0036】
少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体を、様々な方法で、周期的CVD又はALD反応器のような反応チャンバーに送ることができる。1つの実施形態において、液体輸送システムを利用することができる。代替的な実施形態において、組み合わされた液体輸送プロセスとフラッシュ気化プロセスとのユニット、例えば、ショアビュー(MN)のMSPコーポレイションによって製造されるターボ気化器を用いることができ、低揮発性材料を大量に輸送することを可能とし、それは、前駆体が熱分解することなく再現性のある輸送及び堆積をもたらす。液体輸送製剤において、本明細書で説明される前駆体は、原液の液体形態で輸送されることがあり、又は代替的に、溶媒製剤又は同じものを含む組成物中で用いられることがある。したがって、幾つかの実施形態において、前駆体製剤は、所与の最終使用用途で望ましくかつ有利であることがある場合は、基材上に膜を形成するために、適切な特徴の1つ又は複数の溶媒成分を含むことができる。
【0037】
本明細書で説明される方法の1つの実施形態において、ALD型、ALD又はPEALDのような周期的堆積プロセスを使用することができ、堆積は、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体及び酸素源を使用して行われる。ALD型プロセスは、周期的CVDプロセスとして規定されるが、高コンフォーマル酸化ケイ素膜をなお提供する。
【0038】
幾つかの実施形態において、前駆体容器から反応チャンバーまで接続するガスラインは、プロセスの要求に応じて1つ又は複数の温度に加熱され、少なくとも1つのハライドシロキサン前駆体の容器は、泡立たせるために1つ又は複数の温度で保たれる。他の実施形態において、少なくとも1つのハライドシロキサンを含む溶液は、直接液体注入のために、1つ又は複数の温度で保たれた気化器中に注入される。
【0039】
アルゴン及び/又は他のガスの流れは、前駆体パルスの間、少なくとも1つのハライドシロキサンの蒸気を反応チャンバーに輸送するのを助けるためのキャリアガスとして用いることができる。幾つかの実施形態において、反応チャンバーのプロセス圧力は約1Torrである。
【0040】
典型的なALD又はALD型プロセス、例えばCCVDプロセスにおいて、酸化ケイ素基材のような基材が反応チャンバー中のヒーターステージ上で加熱され、ケイ素前駆体に最初に晒されて、複合体が基材の表面上で化学的に吸着することを可能とする。
【0041】
アルゴンのようなパージガスは、プロセスチャンバーから吸着しない過剰な複合体をパージする。十分なパージを行った後、酸素源が反応チャンバーに導入され、吸着した表面と反応した後に別のガスでパージして、チャンバーから反応副生成物を除去することができる。プロセスサイクルは、所望の膜厚を得るために繰り返される場合がある。幾つかの場合において、ポンピングはパージを不活性ガスと置き換えることができ、又は両方を未反応のケイ素前駆体を除去するために用いることができる。
【0042】
本発明のALDプロセスは、約0.5Å/サイクル~約4Å/サイクル、約0.8Å/サイクル~約3.5Å/サイクル、及び幾つかの好ましい場合は約1Å/サイクル~約3.5Å/サイクルの範囲であることができる膜成長速度を得ることができる。堆積した膜の反射率(RI)は、約1.35~約1.55、約1.40~約1.50、及び幾つかの場合は約1.44~約1.48の範囲であることができる。熱酸化物に対する、堆積した膜の希釈後のHF(脱イオン水中に約0.5wt%のHF)相対エッチ速度は、約0.5~約8.0、約1.0~約6.0、及び幾つかの好ましい場合は約1.0~約4.0の範囲であることができる。
【0043】
この又は他の実施形態において、本明細書で説明される方法の工程を様々な順序で行うことができ、連続して行うことができ、同時に(例えば、別の工程の少なくとも一部の間に)行うことができ、及びそれらの組み合わせであることが理解される。前駆体及び酸素源ガスを供給する連続工程は、得られる誘電体膜の化学量論組成を変えるためにそれらを供給するための時間を変えることで行うことができる。堆積した膜の誘電率(k)は、約3.0~約6.0、約3.5~約5.0、及び幾つかの好ましい場合は約3.8~約4.2の範囲であることができる。
【0044】
約650℃以上の1つ又は複数の堆積温度で、基材上に酸化ケイ素膜を堆積するための、本明細書で説明される方法の1つの特定の実施形態は、以下の工程
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.本明細書で説明される式I及びII、
I.R3-nnSi-O-SiXn3-n
II.R3-nnSi-O-SiXm1 p2-m-p-O-SiXn3-n
を有する少なくともハライドシロキサン前駆体を反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.酸素源を反応器中に導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と
を含み、所望の厚さの酸化ケイ素が堆積されるまで、工程b~eが繰り返される。
【0045】
本明細書で説明される方法の別の実施形態は、酸化工程の後に、ヒドロキシル(例えば、堆積プロセス中に形成されたOH断片)、例えば、H2O蒸気又はH2Oプラズマを含む酸素源を導入する。この実施形態において、ヒドロキシル基は表面に再移入(repopulate)して、表面上に固定され単分子層を形成するハライドシロキサン前駆体のための反応部位を作ると考えられる。堆積工程は、
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.上で説明された式I又はIIを有する少なくとも1つのハライドシロキサンを、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.水、過酸化水素、又は水を含むプラズマから選択される少なくとも1つを含む酸素源を反応器中に導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
f.酸素源を反応器中に導入する工程と、
g.パージガスで反応器をパージする工程と
で構成され、所望の厚さの酸化ケイ素膜が堆積されるまで、工程b~gが繰り返される。
【0046】
本明細書で説明される方法の代替的な実施形態において、堆積工程は、
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.本明細書で説明される式I及びIIを有する少なくともハライドシロキサン前駆体を、反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器中に酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
f.OH含有源を反応器中に導入する工程と、
g.パージガスで反応器をパージする工程と
で構成され、所望の厚さの酸化ケイ素膜が堆積されるまで、工程b~gが繰り返される。
【0047】
また別の実施形態は、過酸化水素、オゾン、水素と酸素とを含む組成物、又は酸素プラズマを用いて、不動態化官能基又はメチル若しくは塩素のような基を除去する。堆積工程は、以下のようである。
a.反応器中に基材を提供する工程と、
b.本明細書で説明される式I及びIIを有する少なくともハライドシロキサン前駆体を反応器中に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.オゾン、過酸化水素、水素と酸素とを含む組成物、及び酸素プラズマから選択される少なくとも1つを含む源を反応器中に導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と
であり、所望の厚さの酸化ケイ素が堆積されるまで、工程b~eが繰り返される。
【0048】
本明細書で説明される方法において、少なくとも1つの堆積温度は、任意の1つ又は複数の以下の端点、650、675、600、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1000℃からの範囲である。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの堆積温度は、約650℃~約1000℃、又は約650℃~約750℃、又は約700℃~約850℃、又は約750℃~約850℃の範囲である。
【0049】
説明を通じて、本明細書で使用される場合、「段差被覆性」という用語は、ビア又はトレンチ又は両方のいずれかを有する構造基材又は特徴基材において、堆積金属ドープ窒化ケイ素誘電体膜の2つの厚さの割合として規定され、底部の段差被覆性が、フィーチャの底部の厚さをフィーチャの頂部の厚さで割った比(%)であり、中間部の段差被覆性が、フィーチャの側壁上の厚さをフィーチャの頂部の厚さで割った比(%)である。本明細書で説明する方法を使用して堆積した膜は、約60%以上、約70%以上、約80%以上、又は約90%以上の段差被覆性を示し、それは膜がコンフォーマルであることを示す。
【0050】
説明を通じて、本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル含有源」とう用語は、ヒドロキシル基を有する酸素源を言い表す。例としては、限定されないが、水、水プラズマ、水素と酸素とを含む組成物、水素とオゾンとを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、水と二酸化炭素とを含む組成物、水と酸素とを含む組成物、水とオゾンとを含む組成物、水と亜酸化窒素とを含む組成物、水と酸化窒素とを含む組成物、過酸化水素(H22)、水素と酸素とから作られたプラズマ、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
堆積圧力の範囲は、50ミリTorr(mT)~760Torr、又は500mT~100Torrの範囲の1つ又は複数の圧力である。パージは、窒素、ヘリウム又はアルゴンのような不活性ガスから選択することができる。酸化剤は、酸素、過酸化物、酸素と水素との混合物、オゾン、又はプラズマプロセスからの分子酸素から選択される。
【0052】
1つの特定の実施形態において、本明細書で説明される方法は、有機アミン(例えば、ピリジン、トリメチルアミン、米国特許第7084076号参照、参照することにより本明細書に組み込まれる)のような触媒を実質的に含まずに行われる。この又は別の実施形態において、本明細書で説明される方法は、1つ又は複数のアニール工程を要求することなく行われる。
【0053】
以下の例は、本発明の幾つかの実施形態を例示するために提供され、添付の特許請求の範囲に記載の範囲を限定するものでない。
【実施例
【0054】
比較例1a:四塩化ケイ素を用いた酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、以下の前駆体、四塩化ケイ素(SiCl4)を使用して行った。堆積を実験室規模のALD処理ツールで行った。ケイ素前駆体を蒸気ドローによってチャンバーに輸送した。全てのガス(例えば、パージ及び反応剤ガス又は前駆体及び酸素源)を、堆積ゾーンに入る前に100℃に予備加熱した。ガス及び前駆体の流速を、高速作動を持つALDダイアフラム弁で制御した。堆積で使用した基材は、12インチ長のケイ素帯であった。熱電対を試料ホルダー上に取り付けて基材温度を確認した。堆積を、酸素源ガスとしてオゾン又はH2Oを使用して行った。堆積パラメータを表IIIに提供し、パルス又は投与の用語は交換可能であり、ケイ素前駆体又は酸素源を反応器中に導入する工程を表す。
【0055】
【表3】
【0056】
工程1~6を、所望の厚さに達するまで繰り返した。膜の厚さと屈折率(RI)を、FilmTek2000SEエリプソメータを使用して、膜から事前に設定した物理模型(例えば、ローレンツ振動子模型)までの反射データをフィッティングすることで測定した。ウェットエッチ速度を、脱イオン水中で49%のフッ化水素(HF)酸の1%溶液(約0.5wt%のHF)を使用して行った。熱酸化物ウエハを、溶液の濃度を確認するために各バッチについて参照として使用した。脱イオン水溶液中の5wt%のHFについての典型的な熱酸化物ウエハのウェットエッチ速度(WER)は0.5Å/秒であった。エッチの前と後との膜厚を使用して、ウェットエッチ速度を計算した。表IVでは、800℃のウエハ温度で、酸素源としてのオゾン又はH2Oを用いてSiCl4前駆体の固定投与(2秒間)で堆積したSiO2膜の性質をまとめた。成長速度又はサイクルあたりの成長(GPC)を、オングストローム(Å)をサイクル数で割った形で酸化ケイ素の厚さとして規定した。
【0057】
【表4】
【0058】
堆積をまた、酸素源ガスとしてオゾンとH2Oとの両方を使用して行った。堆積パラメータを表Vに与えた。
【0059】
【表5】
【0060】
工程1~9を所望の厚さに達するまで繰り返した。表VIは、800℃のウエハ温度で、SiCl4前駆体の固定投与(2秒間)で堆積したSiO2膜の性質をまとめた。
【0061】
【表6】
【0062】
ALDモード堆積を確かめるために、酸素源を反応器に導入する前に、2回前駆体投与を使用して、堆積が自己制御的であることを確実にした。堆積工程を表VIIで以下に示し、膜性質を表VIIIで示した。
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
比較例1b:600℃以下の温度でHCDSOを用いた酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、表IIIで示した工程を使用して、反応剤としてHCDSO及びオゾンを用いて行った。GPCは550℃で0.23Å/サイクルで、600℃で0.26Å/サイクルであった。熱酸化物と比較してdHF(脱イオン水中の約0.5wt%のHF)中での相対WERは、550℃で約9.2であり、600℃で7.8であった。
【0066】
例1:600℃超の基材温度でヘキサクロロジシロキサンを用いた酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、比較例1aの表III及び表Vで示した工程を使用して、異なる酸素源でシリコンヘキサクロロジシロキサン(HCDSO)を用いて行った。ここで図1を参照すると、図1は自己制御的挙動を示す成長速度を示し、増加した数の前駆体パルスで飽和し、760℃でのALDモード堆積を裏付けた。表IXは、650~800℃の範囲の温度で堆積した酸化ケイ素の堆積条件及び物性をまとめ、HCDSOが、同様のALD条件下で、SiCl4よりも高い成長速度を有することを示した。
【0067】
【表9】
【0068】
ALDモード堆積を確かめるために、酸素源を反応器に導入する前に2回前駆体投与を使用して、堆積が自己制御的であることを確実にした。堆積を例1の表VIIで示した工程を使用して行った。堆積速度及び堆積した膜性質を表Xに示した。
【0069】
【表10】
【0070】
堆積速度は自己制御的挙動を示し、増加した数の前駆体パルスで飽和し、800℃でのALDモード堆積を裏付けた。
【0071】
ALDモード堆積及び800℃で前駆体分解がないことを確かめるために、酸素源なしでHCDSOのみでの堆積を行った。堆積工程を表XIに以下で示した。
【0072】
【表11】
【0073】
堆積において膜は得られなく、それは800℃でのALD堆積中に前駆体の分解が発生しなかったことを裏付けた。
【0074】
酸素源工程が基材を有意な量まで酸化しなかったことを確かめるために、ケイ素前駆体としてのハライドシロキサンを含まないが、酸素源工程流のみを使用して堆積を行った。堆積パラメータを表XIIに与えた。実験条件下で、酸素源のみを流すことで酸化ケイ素の成長は観測されず、酸素が基材を酸化しないで酸化ケイ素を形成することを示した。
【0075】
【表12】
【0076】
例2:760℃の基材温度でヘキサクロロジシロキサンを用いた酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、表IIIで示した工程を使用して、オゾン源でシリコンヘキサクロロジシロキサン(HCDSO)を用いて行った。堆積温度は760℃あった。複数の前駆体パルスを、オゾン反応剤と共にHCDSOを使用して、堆積飽和曲線(すなわち、前駆体パルスの数に対する成長速度のグラフ中で、成長速度が水平域(プラトー)に達する)を調べるために使用した。堆積工程を表XIIIに示した。複数のパルスに対して、工程2a~2cを複数回繰り返して、次いで、工程3と工程4を、オゾン反応剤を用いて行った。図1を再度参照すると、図1は自己制御的挙動を示して、前駆体パルスに対する成長速度を示し、飽和した(すなわち、飽和が、前駆体パルスの数に対するGPCのグラフ中で前駆体投与の増加と共に水平域に達して、760℃でのALDモード堆積を裏付けたことを意味する)。GPCは2回のパルスのケイ素前駆体投与で飽和し、更なる前駆体を追加することでGPCがさらに増加しなかったことを理解することができる。
【0077】
【表13】
【0078】
ここで図2を参照すると、図2は堆積した酸化ケイ素の厚さとALDサイクル数との間での直線性、典型的なALD挙動の特性を示す。
【0079】
例3:HCDSOを用いたパターン化ケイ素基材上での酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜を、760℃でHCDSOを用いてパターン化ケイ素ウエハ上に堆積した。堆積プロセスを、酸素源ガスとしてのオゾン及び前駆体単一パルスを使用して行った。パターンは幅が約60nm、深さが約600nm、アスペクト比が1:10を有した。基材上に堆積した膜を、透過型電子顕微鏡を使用して測定した。ここで図3を参照すると、図3は(上で規定したように)優れた段差被覆性(95%超)を示した酸化ケイ素膜のTEM断面であり、例3のプロセスが実際にALDプロセスであることを確かめた。
【0080】
例4:オゾンを用いたHCDSOのALD堆積によって堆積した酸化ケイ素膜の膜組成
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、異なる温度で、表IIIで示した工程を使用して、オゾン源を用いてシリコンヘキサクロロジシロキサン(HCDSO)で行った。膜の不純物を二次イオン質量分析(SIMS)で分析して、膜の不純物を図4に示した。ここで図4を参照すると、図4は堆積した膜の塩化物含有量を示す。ここで図5を参照すると、図5は、HCDSO及びオゾンを用いて様々な基材温度で堆積した酸化ケイ素膜についての、熱酸化物に対する相対WERを示し、温度が高くなるほどWERが低くなることを示した。
【0081】
例5:オクタクロロトリシロキサンを用いた酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、表IIIで示した工程を使用して、反応剤としてのオゾンと共に、シリコン前駆体のオクタクロロトリシロキサン(OCTSO)を用いて行った。異なる数の前駆体パルスを750℃で使用して図1で示したような自己制御的挙動を示し、OCTSOが酸化ケイ素の高温堆積に適することを示した。OCTSOについてのGPCは、HCDSOよりも比較的高かった。熱酸化物に対する相対WERは約2であった。
【0082】
例6:1,1,1,3-テトラクロロ-1,3-ジメチルジシロキサンを用いた酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、表IIIで示した工程を使用して、反応剤としてのオゾンと共に1,1,1,3-テトラクロロ-1,3-ジメチルジシロキサンを用いて行った。GPCは700℃で1.18Å/サイクルであった。膜反射率は1.46であった。
【0083】
本発明は、幾つかの好ましい実施形態に従って説明されてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更がなされることがあり、等価物がそれらの要素に置き換えられることがあることが、当業者によって理解される。それに加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適応させるために、それらの必須の範囲を逸脱することなく、多くの修正がなされることがある。したがって、本発明は特定の実施形態に限定されないことが意図されるが、本発明は添付した特許請求の範囲の記載の範囲内にある全ての実施形態を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5