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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】CVDリアクタのためのサセプタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20220621BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220621BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 N
C23C16/458
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019551707
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018055457
(87)【国際公開番号】W WO2018172063
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102017105947.4
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】シェーン、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ルダ・イ・ヴィット、フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】シャフラート、マルクス
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507779(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132948(WO,A1)
【文献】特開平06-208959(JP,A)
【文献】特開2009-270143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/683
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CVDリアクタのためのサセプタであって、広い方の面(2)上で平面内に配置され基板ホルダ(13)が載置される少なくとも1つの円形の部分表面(3)を具備する平坦な本体(1)を有し、前記部分表面(3)は、前記基板ホルダ(13)の方に開いた複数のチャネル(5)を有し、前記チャネルがガス供給ライン(8)の端部に配置された供給口(9)と流体的に接続されることによって、各前記チャネル(5)による記基板ホルダ(13)の下面と前記部分表面(3)の前記平面との間の間隙へのガス流の供給によって前記基板ホルダ(13)がエアリング位置に持ち上げられかつ前記ガス流の方位角方向の速度成分により回転駆動され、
局所的熱伝導に影響する1又は複数の影響要素が前記部分表面(3)に配置され、
前記影響要素は、曲線上に配置されており、中心(Z)の周りの円弧の円周角の少なくとも40°に亘って延在する凸部により形成されており、又は、
局所的熱伝導に影響する1又は複数の、平面に開いた凹部(10)が前記影響要素として前記部分表面(3)に配置されている、前記サセプタにおいて、
凸部又は凹部(10)として形成された前記影響要素が、連続的な壁により囲まれた閉じた基面を有し、
前記影響要素が前記凸部の場合、前記壁は前記凸部の基面から下方へ前記平面の縁まで延在し、
前記影響要素が前記平面に開いた凹部(10)の場合、前記壁は前記凹部(10)の基面から上方へ前記平面の縁まで延在していることを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
CVDリアクタのためのサセプタであって、広い方の面(2)上で平面内に配置され基板ホルダ(13)が載置される少なくとも1つの円形の部分表面(3)を具備する平坦な本体(1)を有し、前記部分表面(3)は、前記基板ホルダ(13)の方に開いた複数のチャネル(5)を有し、前記チャネルがガス供給ライン(8)の端部に配置された供給口(9)と流体的に接続されることによって、各前記チャネル(5)による記基板ホルダ(13)の下面と前記部分表面(3)の前記平面との間の間隙へのガス流の供給によって前記基板ホルダ(13)がエアリング位置に持ち上げられかつ前記ガス流の方位角方向の速度成分により回転駆動され、
局所的熱伝導に影響する1又は複数の影響要素が前記部分表面(3)に配置され、
前記影響要素は、曲線上に配置されており、中心(Z)の周りの円弧の円周角の少なくとも40°に亘って延在する凸部により形成されており、又は、
局所的熱伝導に影響する1又は複数の影響要素が前記部分表面(3)に配置され、前記影響要素は、凹部(10)に挿入された挿入片(11)として形成され、前記挿入片(11)は前記サセプタ(1)とは異なる熱伝導率を有する材料から形成されており、又は、
局所的熱伝導に影響する1又は複数の、平面に開いた凹部(10)が前記影響要素として前記部分表面(3)に配置され、前記凹部(10)は、前記チャネル(5)内にガス流を供給するときに前記凹部(10)内にガス流を形成しないように構成されている、前記サセプタにおいて、
前記1又は複数の影響要素の少なくとも一部及び前記チャネル(5)の少なくとも一部が、前記中心(Z)を中心とする円形の前記部分表面(3)と同心の、共通する方位角方向のライン上に配置されていることを特徴とするサセプタ。
【請求項3】
少なくとも一部の前記影響要素及び少なくとも一部の前記チャネル(5)が、前記方位角方向に互いに前後して配置されていることを特徴とする請求項に記載のサセプタ。
【請求項4】
前記凸部又は前記凹部(10)、又はその中に挿入片(11)が挿入された前記凹部(10)が、空間的に前記チャネル(5)から離れているか、又は、空間的に前記チャネル(5)と接続されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項5】
曲線上に配置された前記影響要素(10、11)が、少なくとも40°の、中心(Z)の周りの円弧の中心角に亘って延在することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項6】
前記チャネル(5)及び前記影響要素10、11)の、前記中心(Z)の周りの多重対称性の配置を特徴とする請求項1~のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項7】
前記供給口(9)が、円形の前記部分表面(3)の中心に関して、中心にあるガス分散凹部(12)に開口し、前記ガス分散凹部(12)は、径方向に延在するチャネル開口部(7)により、渦巻状曲線上に延在するチャネル(5)と接続されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項8】
前記凹部(10)が、平面視にて多角形であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項9】
前記凹部(10)の深さが、前記部分表面(3)の中心から前記部分表面(3)の縁に向かって減小していることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項10】
チャネル(5)が少なくとも2つ延在する前記中心(Z)の周りの第1の扇形部(A)、及び、チャネル(5)が1つのみ延在する前記中心(Z)の周りの第2の扇形部(B)を有し、
全ての前記第1の扇形部(A)の角度の和>180°であり、かつ/又は、全ての前記第2の扇形部(B)の角度の和>90°であり、かつ/又は、全ての前記第1の扇形部(A)の角度の和が全ての前記第2の扇形部(B)の角度の和より大きく、
なくとも1つの前記第1の扇形部(A)において、少なくとも2つの前記チャネル(5)同士の間又は径方向外側の前記チャネル(5)の径方向外側にて少なくとも部分的に影響要素(10、11)が延在し、かつ/又は、
少なくとも1つの前記第2の扇形部(B)において、前記チャネル(5)の径方向内側にて少なくとも部分的に影響要素(10、11)が延在し、かつ/又は、
少なくとも2つの前記チャネル(5)が延在する、前記中心(Z)の周りの全ての前記第1の扇形部(A)の角度の和が180°より大きく、かつ/又は、
少なくとも1つの前記第1の扇形部(A)において、少なくとも2つの前記チャネル(5)同士の間又は径方向外側の前記チャネル(5)の径方向外側にて少なくとも部分的に影響要素(10、11)が延在することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項11】
前記部分表面(3)が、基板ホルダ(13)が載置されるポケット(16)の基面を形成する、CVDリアクタにおける請求項1~1のいずれかに記載のサセプタの使用。
【請求項12】
前記部分表面(3)が、円形ディスク形状の基板ホルダ(13)が載置されるポケット(16)の基面を形成し、前記基板ホルダ(13)を、前記供給口(9)を通るパージガスの供給によりガスクッション上に置いて前記中心(Z)の周りで回動運動させることができる、請求項1~1のいずれかに記載のサセプタを具備する基板ホルダ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVDリアクタのためのサセプタに関し、広い方の面上に配置され基板ホルダが載置される少なくとも1つの円形の部分表面を具備する平坦な本体を有し、その部分表面は、基板ホルダの方に開いたチャネルを有し、そのチャネルはガス供給ラインの端部に配置された供給口と流体的に接続されている。
【0002】
本発明はさらに、サセプタの使用、及び、基板ホルダとサセプタとから構成されたサセプタ機構に関する。
【背景技術】
【0003】
CVDリアクタは、特許文献1から公知であり、ヒーターにより下方から加熱可能なサセプタがリアクタハウジング内に配置されている。サセプタは、複数の円形の部分表面を有し、それらの上に円形の基板ホルダが配置される。部分表面の中心にはガス供給ラインが開口している。3つの供給口がそこに形成され、それらは中心の周りに渦巻状に延在するチャネルと径方向内側端でそれぞれ接続されている。それらのチャネルは、部分表面内に延在する平面に開いているが、その上を基板ホルダにより覆われる。パージガスが、供給口を通って基板ホルダの下面と部分表面の平面との間の間隙に導入されることによって、基板ホルダがエアリング位置に持ち上げられ、そこでガスクッション上に置かれることになる。平面内でのチャネルの渦巻状配置の結果として、基板ホルダと部分表面の支持面との間のガス間隙において指向性のガス流が形成されることによって、1又は複数の基板を搭載する基板ホルダが回転させられる。ガス供給は、ここでは円形のサセプタの中心で行われる。
【0004】
CVDリアクタを追求したガス供給の別のコンセプトのサセプタが、特許文献2に記載されている。そこでは、プロセスガスが、サセプタの表面全体に亘って延在するシャワーヘッドのようなガス出口表面からプロセスチャンバに導入される。ここでも、サセプタには熱エネルギーが下方から供給される。しかしながらここでは基板が、回転可能な基板ホルダ上ではなくポケット内にあり、そのポケットは直接サセプタに組み込まれた凹部によって形成されている。サセプタから基板への熱の流れに影響を与えるために、ポケットの基面が深さ方向に形状付けされている。その場合、基板の縁は、支持リブ又はそれ以外の支持突起上で載置される。
【0005】
特許文献3は、コーティングの作製時に用いられるサセプタ内の挿入片を開示している。
【0006】
汎用的装置においては、サセプタから基板ホルダに熱が永続的に伝達され、そこから熱が、基板ホルダに対して反対側に位置する冷却されたプロセスチャンバに伝達される。熱の流れは、基板ホルダ上に載置された基板の光学特性により影響される。基板が赤外線を透過する場合、基板ホルダの中心領域の温度が低下する可能性がある。一方、基板が例えばシリコン基板で反射性の場合、基板の下側の中心部の温度が基板ホルダの縁近傍よりも高くなる。その場合、縁部に対して中心部を冷却しなければならない。それに替えて、中心部に対して縁部を加熱することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第0 242 898号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2014 100 024号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2014 103 505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、サセプタ上面と基板ホルダ下面との間の間隙にパージガスが供給されるとき、基板ホルダの局所的な温度不均一及び、特に基板ホルダ中心部の温度と基板ホルダ縁部の温度との差を簡易な手段で補償するための汎用的なサセプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求の範囲で特定された発明により解決される。最初にかつ本質的に、基板ホルダの載置のために設けられる部分表面において、特にガス回転ベアリングの生成のために中心の周りに渦巻状に配置されるチャネルだけでなく、熱伝導の影響要素も設けられる。それらの影響要素は、基板から基板ホルダへの熱の流れに局所的に影響を与えることができるように配置されている。影響要素は、凸部、凹部、又は、凹部内に挿入された挿入片のいずれかとして形成される。
第1の変形形態では、開いた凹部として影響要素が構成され、凹部基面を形成されており、その凹部基面は、好ましくは部分表面の延在面に平行に延在するか又は適宜形状付けされている。
影響要素が凸部である場合、それらは部分表面から起立し、その場合、凸部の基面は、特に平坦な部分表面の上方に位置する。その基面は、平面から所定の距離だけ離間しており、かつ連続的な周囲の壁により囲まれることができる。その壁は、凸部又は凹部の基面と凹部の縁を形成する平面との間の距離(空間距離)である高さを全体的に有している。基面と同様に、壁もまた全体的に閉じていることが好ましく、かつ開口部がないことが好ましく、それによって、ガスが壁又は基面を通って凹部に入り込むことができず、ガスが壁又は基面を通って凹部から逃げることもできない。しかしながら、凹部を流体力学的にチャネルと接続することもできるが、その場合、その流体力学的な接続は、凹部内に検知可能な程度のガス流を形成しないように行われる。
しかしながら、チャネル内にはガス流を生じるべきであり、その目的は基板ホルダの回転駆動である。このためにチャネルは、方位角方向の速度成分をもつガス流を生成する。中心において供給されるガス流に回転駆動する速度成分を付与するために、チャネルは渦巻状曲線上に延在する。しかしながら、チャネルは、開口のみから形成されることができ、そこから指向性のガス流が出て来る。動作中、基板ホルダは、チャネルに供給されるガス流によりエアリング位置に持ち上げられる。その場合、平面と基板ホルダの下面との間の間隙が、チャネルからのガスの流出に関係して所定のシールを生じさせ、そのために特に、基板ホルダの下面がその全面に亘って実質的に平坦に延在するように設けられる。しかしながら、その下面は、曲面であってもよく又は異なる構造を有してもよい。したがって、流れは、実質的にチャネル内で形成される。チャネルの方向によって、ガス流が方位角成分を有するようになる。これは、好ましくはチャネルがアルキメデスの渦巻線上に延在することにより実現される。
本発明の変形形態では、凹部に挿入される挿入片が設けられる。この挿入片は、好ましくはグラファイトからなるサセプタとは異なる熱伝導率を有する材料から形成されることが好ましい。
好ましくは複数配置され、好ましくは中心の周りに3回対称で配置されたチャネルの各々が曲線上に延在する。その場合、中心を通る半径直線が複数のチャネルと交差できることによって半径が第1のチャネルの径方向内側部分と第2のチャネルの径方向外側部分とを通るように、チャネルがその長さ有しかつ曲線がその形状を有することができる。
好ましくは、部分表面が、少なくとも2つのチャネルが延在する第1の扇形部を形成する。この第1の扇形部に対して、各々1つのチャネルのみが延在する第2の扇形部が隣り合うことができる。本発明の好ましい実施形態では、影響要素が、第1の扇形部において好ましくは全体的に又は少なくとも部分的に延在する。しかしながら、影響要素は、第2の扇形部に全体的又は部分的に延在することもできる。第1の扇形部が延在する範囲の角度の和は、好ましくは180°より大きい。第2の扇形部が延在する範囲の角度の和は、好ましくは90°より大きい。第1の扇形部の角度の和は、第2の扇形部の角度の和よりも大きいことが好ましい。影響要素の両端が、互いに異なる第1の扇形部に位置することによって、影響要素が2つの扇形部に跨がって延在することができる。
本発明の更なる形態では、影響要素が、第1の扇形部内及び/又は第2の扇形部内で2つのチャネルの間、又は、2つのチャネルの径方向外側に延在するように設けられる。影響要素は、曲線上に延在することができ、その曲線は、チャネルが沿って延在する曲線と類似している。したがって、影響要素は、渦巻状に延在する曲線上に延在することができるが、自由な形状の曲線上に延在することもできる。影響要素は、チャネルの径方向外側端を延長した渦巻状曲線上に連係することができ、それにより特にチャネルが延在する曲線の延長上に延在することができる。しかしながら、凹部はまた、渦巻状曲線上で始まるチャネルの径方向外側端から径方向内側にずれて延在するようにも設けられる。
部分表面に追加的に導入される影響要素は、部分表面により基面が形成されるサセプタのポケットに配置される基板ホルダへの熱の流れに対して局所的な影響を及ぼす効果を有する。これは、影響要素が凹部として形成される場合における熱の流れの減小により、又は、影響要素がサセプタよりも大きい熱伝導率を有する挿入片である場合における熱の流れの増加により行われる。熱の流れの局所的増加は、影響要素が凸部として形成されることによっても実現される。それらは、基板ホルダの下面と部分表面との間の間隙に突き出ている。それによって、基板ホルダの下面と部分表面との間のガス回転ベアリングを形成する間隙が局所的に小さくなる。凸部は、特に、凹部に挿入される挿入片により形成することができる。それらは、特に、基板ホルダにより覆われる部分表面内における島状の突起である。
方位角方向の速度成分を有して基板ホルダを回転駆動するガス流を形成するように、チャネルが、凹部を除いて水平な又は平坦な部分表面内に延在する。好ましくは、チャネルが、個々の部分表面の中心の周りに渦巻状に延在する。
本発明の変形形態では、複数の凹部が異なる高さを有するように設けられる。特に、中心領域における凹部の深さが、縁領域におけるそれよりも大きいことによって、中心領域においてより大きな熱伝導抵抗が実現され、かつ、縁領域においてより小さい熱伝導抵抗が実現される。
部分表面上で基板ホルダが回転するので、異なる熱伝導特性をもつ領域を、方位角方向に互いに隣り合って配置することができる。影響要素は、特に、隣り合うチャネル同士の間の中間領域に配置することができる。影響要素は、1又は複数の島状の凹部により形成することもでき、その場合、好ましくは複数の島状の凹部が、鎖状に互いに前後して配置され、複数のそのような凹部が細長い面上に延在する。その場合、それは円弧状の面を有することもできる。それらの凹部は、好ましくは円形穴から形成されることによって、エンドミル又はドリルを用いて簡易な方法で作製することができる。加えて、それらの凹部は、並列又は直列にずらして配置することもできる。影響要素は、平面視にて多角形、特に三角形とすることもできる。部分表面内の影響要素の配置は、多重対称性に対応して行うことができる。しかしながら、非対称の変形形態もあり、その場合、影響要素は対称性なしで配置される。
挿入片は、その自由な端面が、その挿入片を囲む面と面一に位置するように構成することができる。しかしながら、挿入片は、凹部の深さより小さい高さ又は大きい高さを有することもでき、それによってその端面が、凹部の基面を形成するか又は凸部の基面を形成することができる。周囲のサセプタよりも大きい熱伝導率を有する挿入片を用いることができ、又は、サセプタよりも小さい熱伝導率を有する挿入片であっても用いることができる。
【0010】
局所的熱伝導に影響を及ぼす1又は複数の影響要素が凹部である場合、装置の適切な動作中に各チャネルにガス流を供給することにより基板ホルダをエアリング位置に持ち上げて回転駆動するとき、これらの凹部には能動的な流れが形成されない点で構造的にチャネルとは異なる。それらの開いた凹部には、たかだか、誘導された流れ又は圧力均一化を生じさせる流れが形成されるけれども、チャネルに供給されるガス流なしでは基板ホルダを持ち上げたり回転させたりするのに決して十分でないように形成されかつ配置されている。したがって、特に、凹部を通過する流れは全くない。たかだか、圧力均一化の流れが凹部に流入又は流出できるだけである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、CVDリアクタで用いられるサセプタの斜視図であり、各々が基板ホルダを受容するためのポケットの基面を形成する5つの円形の部分表面3を具備し、図では図示を簡略化するために、円形の部分表面の各々が、異なる形状の影響要素を有しているが、1つのサセプタに設けられる円形の部分表面3は互いに同じ構成であることが好ましい。
図2図2は、サセプタ1の平面図である。
図3図3は、図2のIIIの部分の図である。
図4図4は、図3のIV-IVラインの断面図である。
図5図5は、図2のVの部分の図である。
図6図6は、図2のVIの部分の図である。
図7図7は、凹部10に挿入片11を挿入した図4による図である。
図8図8は、例示的実施形態におけるサセプタを具備するCVDリアクタの概略的な縦断面図である。
図9図9は、凹部10がガス分散凹部12と流体的に接続されている更なる例示的実施形態における図5による図である。
図10図10は、凹部10がチャネル5と流体的に接続されている更なる例示的実施形態である。
図11図11は、凹部が三角形の形状を有する更なる例示的実施形態である。
図12図12は、凹部10が円柱穴として互いに直列に並んで配置されている更なる例示的実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
図8は、CVDリアクタの主要構造を概略的に示している。プロセスチャンバが、外部に対して気密である閉じたリアクタハウジングに配置され、ガス入口部材14を通してプロセスガスを供給される。下方から加熱されるサセプタ1は、複数の部分表面3を有し、各部分表面3はポケット16の基面を形成しており、その中に基板ホルダ13が配置される。基板ホルダ13の上面はプロセスチャンバに向き、そして1又は複数の基板を担持する。基板ホルダの下面と部分表面3との間の間隙にパージガスを供給することにより、ガスクッションが生成され、その上で基板ホルダ13が浮く。部分表面3の中心Zの周りに渦巻状に配置されたチャネル5により供給されたガスの流れが回転移動させられ、それが基板ホルダ13を回転駆動する。
【0013】
中心Zの領域に位置する供給口9を通してパージガスを供給する結果、通常は僅かであるが、プロセスチャンバ側に向いた基板ホルダの上面における温度プロフィールの均一性に影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、温度プロフィールは、チャネル5によって実質的な影響を受ける。なぜなら間隙が熱絶縁体として大きく作用するからである。基板は、プロセスチャンバ側を向いた基板ホルダの上面における温度プロフィールの実質的な影響を受ける。基板が反射性を有することによって中心領域において温度上昇を生じる可能性があり、それにより中心を縁に対して冷却しなければならない。しかしながら、それに替えて縁を中心に対して加熱することもできる。熱輻射に対して透明な基板が用いられる場合、逆の問題が生じる。この場合、縁の側で温度上昇する可能性がある。この温度不均一性は、本発明による適切な手段によって補償されるべきである。
【0014】
例示的実施形態は、ここでは、凹部10又は凹部10に挿入された挿入片11として形成された、熱の流れの影響要素を示している。熱の影響要素が、凹部に挿入された挿入片として形成される場合、その挿入片が、凹部を形成する材料すなわち基板ホルダ13の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率をもつ材料から作製されることが好ましく、それによって熱の影響要素が、基板ホルダの上面の局所的な温度上昇を生じさせる。それに対して、熱の影響要素が凹部として形成される場合、凹部に存在するガスの絶縁効果により、基板ホルダの上面の温度降下をもたらす。
【0015】
図4に示した断面は、凹部10の形態の影響要素を示し、その凹部10は1つの基面10’と複数の壁10”とを有する。各壁10”は、基面10’を下側の境界とし凹部10の縁を上側の境界とする連続的な面から形成されている。凹部10の基面10’は、同様に、基面の縁を境界とする連続的な面から形成されている。したがって、壁10”及び基面10’から凹部10内にガス等が流入しない。同様に、壁10”又は基面10’を通って凹部10からガスが流出しない。
【0016】
図7は、影響要素の代替的な構成を示している。ここでは、固体の物理的な挿入片11として形成されており、実質的に形状充填される嵌め込み部材のように凹部10内に挿入されている。それは、周囲のサセプタ1の材料とは異なる熱伝導率を有している。
【0017】
図2、3、5及び6に示した凹部10も、代替的な実施形態における挿入片11をそれぞれ有することができる。しかしながら、以下では、それらを、熱フローに影響を及ぼすために配置された凹部10として記述する。
【0018】
図2に示したサセプタ1はグラファイトからなり、かつ円形ディスク形状を有する。しかしながら、サセプタ1は、別の形態を有することもでき、例えば、多角形で形成することができる。したがって、サセプタ1の実施形態は、長方形又は三角形の形状でも設けられる。その場合、多角形のサセプタの辺又は頂点の数は、既に基板ホルダを受容している部分表面3の数と同じとすることができる。対称性の数と部分表面3の数とが対応する対称的な多角形が好ましい。径方向外側の環状領域上に対称的配置により、例示的実施形態では5つである複数の、それぞれ境界線4で区切られた部分表面3があり、その各々がポケット16の基面(図8参照)を形成することができる。部分表面3の中心Zには供給口9があり、供給口9は、サセプタ2の内部の孔として形成されたガス供給ライン8を設けられている。供給口9は、円形のガス分散凹部12に開口しており、ガス分散凹部12は、中心Zの周りで円対称の凹部として形成されている
【0019】
ガス分散凹部12は、チャネル5の数に対応するチャネル開口部7を有し、ガス分散凹部12はチャネル開口部7により各チャネル5と流体的に接続されている。例示的実施形態では、3つのチャネル5が設けられている。チャネル開口部7は、図では狭窄部として示されている。しかしながら、チャネル開口部7がチャネル5の幅よりも小さい開口幅を有することは必須ではない(図11参照)。
【0020】
チャネル5は、チャネル開口部7によりガス分散凹部12と流体的に接続される径方向内側端6を有する。それらのチャネル5は、径方向外側端6’まで中心Zの周りの渦巻状曲線上に延在する。その場合、それらのチャネル5は、中心Zの周りの円弧の中心角が180°より大きい範囲に亘って延在する。互いに隣り合って延在する各チャネル5同士の間に、ここでは凹部10として示された影響要素が延在している。凹部10は、中心Zの周りの円弧の中心角が少なくとも30°、好適には少なくとも60°、好適には少なくとも90°の範囲に延在する。例示的実施形態では、チャネル5の幅が、凹部10の幅よりも僅かに大きい。凹部10の径方向内側端17は、チャネルの径方向内側端が位置する径方向距離とほぼ同じ距離に位置する。凹部10は、その径方向外側に位置する端部17’の領域において、2つの隣り合うチャネル5の間のほぼ中央に延在している。
【0021】
凹部10は、図3図7の例示的実施形態では、細長い溝の形状を有する。しかしながら、互いに分離している複数の個々の凹部が、細長いベース面上に互いに前後して配置されることも含まれる。これらの個々の凹部は、例えば穿孔として形成され、平面視にて円形である。このようなガスポケットは、連続的な溝を形成する必要なく拡散バリアを形成することができる。
【0022】
部分表面3は、別々の扇形部に分離することができる。約90°の角度範囲に延在する第1の扇形部Aは、その扇形領域全体に2つのチャネル5を有する。2つの第1の扇形部A同士の間には、ただ1つのチャネル5が延在する第2の扇形部Bが延在している。例示的実施形態では、凹部10が、部分的に第1の扇形部Aの領域に、そして部分的に第2の扇形部Bに位置する。
【0023】
凹部10の径方向内側端17が第1の扇形部Aに、そしてその凹部10の径方向外側端17’が別の第1の扇形部Aにあり、その凹部10が第2の扇形部Bを通って延在することが有利である。
【0024】
図3に示した例示的実施形態では、凹部10の径方向外側端17’が、チャネル5の径方向外側端6’よりも径方向内側に位置する。
【0025】
チャネル5及び凹部10は、ここでは、中心Zの周りで3回対称を形成している。
【0026】
図5に示した例示的実施形態では、凹部10がチャネル5と連係している。それらは、チャネル5が延在する渦巻状曲線の延長上に位置する。それらは、ここでは、チャネル5の径方向外側端6’で連係している。ここでも、3回対称となっている。凹部10は、ここでは、渦巻状曲線上又は円弧曲線上のいずれかに延在する。
【0027】
図6に示した例示的実施形態では、同様に、凹部10がチャネル5の径方向外側端6’と連係しているが、径方向内側にずれている。凹部10は、ここで、渦巻状曲線上又は円弧曲線上に延在することができる。
【0028】
図9に示した例示的実施形態では、凹部10がガス分散凹部12と流体的に接続されている。凹部10は、平面視で実質的に三角形の形状を有するが、主要部ではないガス流のみがそれらを通るように配置されている。上述した例示的実施形態のように、凹部10に挿入片を挿入することもできる。この例示的実施形態では、凹部10が、基板ホルダの回転駆動のためのガスと流体的に接続される。ここでも、凹部10の配置が、チャネル5の配置と同じ対称性を有する。
【0029】
図10に示した例示的実施形態では、縁領域における細長い凹部10がチャネル5と流体的に接続されている。ここでもまた凹部10に挿入片を挿入することができる。その場合、凹部内に挿入された挿入片がチャネル5の壁を形成するように、凹部を形成することもできる。
【0030】
図11に示した例示的実施形態では、複数の凹部10の各々が三角形の形状で構成されている。図10及び図11に示した実施形態でも、凹部10に挿入片を挿入することができる。ガス分散凹部12は、ここでは、狭窄部なしでチャネル5へと移行している。
【0031】
図12に示した例示的実施形態でも、凹部10に挿入片を挿入することができる。ここでは、平面視にて円形である複数の凹部10が互いに前後して直列に配置されている。そこでは、止まり穴により形成された複数の凹部10が、方位角方向に延在する曲線又は直線に沿って延在する。
【0032】
全ての実施形態において、凹部10が、チャネル5のチャネル渦巻状曲線に対して反対方向に延在する渦巻上に延在することもできる。その凹部は、長さが幅の数倍の大きさの細長いスロットとすることができる。しかしながら、凹部は、自由な輪郭を有することもできる。
【0033】
上述した凹部に言及する場合、その記述は次のような例示的実施形態も含む。凹部10に挿入片が挿入されるのみでなく、符号10が、部分表面3内に底面がありかつ部分表面3の平坦な面の上方に延在する基面を有する凸部を示すような例示的実施形態も含まれる。個々の影響要素を省くことにより、影響要素の配置を非対称配置とすることもできる。
【0034】
上述した実施形態は、全体として本発明を説明するために用いられ、本発明は、以下の特徴の組合せにより各々独立しても従来技術を少なくともさらに進展させ、その場合、それらの特徴の組合せのうち2つ、複数又は全ての組合せを組み合わせることもできる。すなわち:
【0035】
局所的熱伝導に影響する1又は複数の影響要素が部分表面3に配置され、前記影響要素が、凸部として、前記平面に開いた凹部10として、又は、前記凹部10に挿入された挿入片11として形成されていることを特徴とするサセプタ。
【0036】
影響要素10、11及びチャネル5が方位角方向に互いに隣り合って配置されていることを特徴とするサセプタ。
【0037】
前記凸部又は前記凹部10が、特にその中に挿入片11を挿入された前記凹部10が、前記チャネル5から空間的に離間しているか又は前記チャネル5と空間的に接続されていることを特徴とするサセプタ。
【0038】
曲線上に配置された前記影響要素10、11が、少なくとも40°、好ましくは60°、及び特に80°の、中心Zの周りの円弧の中心角に亘って延在することを特徴とするサセプタ。
【0039】
前記チャネル5及び前記影響要素10、11の、前記中心Zの周りの多重対称性の配置を特徴とするサセプタ。
【0040】
前記供給口9が、円形の前記部分表面3の中心に関して、中心にあるガス分散凹部12に開口し、前記ガス分散凹部12は、径方向に延在するチャネル開口部7により特に渦巻状曲線上に延在するチャネル5と接続されていることを特徴とするサセプタ。
【0041】
凸部又は凹部10として形成された前記影響要素が、連続的な壁により囲まれた閉じた基面を有し、前記壁は前記凸部又は凹部10の基面から前記平面の縁まで延在していることを特徴とするサセプタ。
【0042】
前記挿入片11が、前記サセプタ1とは異なる熱伝導率を有する材料から形成されていることを特徴とするサセプタ。
【0043】
特に円形である複数の凹部10、特にその中に挿入された挿入片11を具備する凹部が、方位角方向に互いに前後して配置されていることを特徴とするサセプタ。
【0044】
前記凹部10が、平面視にて多角形であることを特徴とするサセプタ。
【0045】
前記凹部10の深さが、前記部分表面3の中心から前記部分表面3の縁に向かって減小していることを特徴とするサセプタ。
【0046】
少なくとも2つのチャネル5が延在する、前記中心Zの周りの第1の扇形部Aと、1つのチャネル5が延在する、前記中心Zの周りの第2の扇形部Bを有し、
全ての前記第1の扇形部Aの角度の和>180°であり、かつ/又は、全ての前記第2の扇形部Bの角度の和>90°であり、かつ/又は、前記第1の扇形部Aの角度の和が、全ての前記第2の扇形部Bの角度の和より大きく、
特に少なくとも1つの、好ましくは各々の前記第1の扇形部Aにおいて、少なくとも2つの前記チャネル5同士の間又は径方向外側の前記チャネル5の径方向外側にて少なくとも部分的に影響要素10、11が延在し、かつ/又は、
少なくとも1つの、好ましくは各々の前記第2の扇形部Bにおいて、特に前記チャネルの径方向内側にて少なくとも部分的に、好ましくは前記第2の扇形部B全体に亘って影響要素10、11が延在し、かつ/又は、
少なくとも2つの前記チャネル5が延在する、前記中心Zの周りの全ての前記第1の扇形部Aの角度の和が180°より大きく、かつ/又は、
少なくとも1つの、好ましくは各々の前記第1の扇形部Aにおいて、少なくとも2つの前記チャネル5同士の間又は径方向外側の前記チャネル5の径方向外側にて少なくとも部分的に影響要素10、11が延在する、サセプタ。
【0047】
前記部分表面3が、基板ホルダ13が載置されるポケット16の基面を形成する、CVDリアクタにおけるサセプタを特徴とする使用。
【0048】
前記部分表面3が、円形ディスク形状の基板ホルダ13が載置されるポケット16の基面を形成し、前記基板ホルダ13を、供給口9を通るパージガスの供給によりガスクッション上に置いて前記中心Zの周りで回転運動させることができることを特徴とする基板ホルダ機構。
【0049】
開示されたすべての特徴は、(個々に、しかしながら互いに組み合わせても)本発明に本質的である。関連する/添付の優先書類の開示内容(先願の複写)も、本願の請求項にこれらの書類の特徴を含める目的で、本願の開示に完全に組み込まれる。従属項は、特にこれらの請求項の分割出願を行うために、特許請求の範囲の特徴がなくても、従来技術からの発明の進展とは独立したそれらの構成を特徴とする。各請求項で特定される発明は、特に参照符号および/または参照番号で与えられる、上述の説明で説明された特徴のうちの1つ以上をさらに有し得る。また、本発明は、特に、それぞれの目的に認識可能であるか、技術的に同等の他の手段で置き換えることができる限り、上記の説明で言及した特徴の個々が実現されない設計形態にも関係する。
【符号の説明】
【0050】
1 サセプタ
2 広い方の面
3 部分表面
4 境界線
5 チャネル
6 径方向内側端
6’ 径方向外側端
7 チャネル開口部
8 ガス供給ライン
9 供給口
10 凹部
10’ 基面
10” 壁
11 挿入片
12 ガス分散凹部
13 基板ホルダ
14 ガス入口部材
15 カバープレート
16 ポケット
17 径方向内側端
17’ 径方向外側端
A 扇形部
B 扇形部
Z 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12