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特許7093192原子層堆積による多孔質体の耐プラズマ性コーティング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】原子層堆積による多孔質体の耐プラズマ性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/87 20060101AFI20220622BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220622BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
C04B41/87 A
C23C16/40
C04B41/85 C
H01L21/302 101G
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018021866
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2018162205
(43)【公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】15/462,718
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/849,277
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】バヒド フィロウズドル
(72)【発明者】
【氏名】サマンス バンダ
(72)【発明者】
【氏名】ラジンダー ディンドサ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ビュン
(72)【発明者】
【氏名】ダナ マリー ロベル
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508728(JP,A)
【文献】特表2016-501988(JP,A)
【文献】特開2013-232641(JP,A)
【文献】特表2005-528790(JP,A)
【文献】特表2017-514991(JP,A)
【文献】国際公開第2015/164638(WO,A1)
【文献】特開2018-082201(JP,A)
【文献】特表2018-506859(JP,A)
【文献】国際公開第2016/131024(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158613(US,A1)
【文献】特開2018-168472(JP,A)
【文献】特開2005-306625(JP,A)
【文献】特開2008-273823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141661(US,A1)
【文献】特表2013-525599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/87
C04B 41/85
C23C 16/40
H01L 21/3065
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体内に複数の細孔を含む多孔質体であって、複数の細孔は、それぞれ細孔壁を含み、多孔質体は、ガスを透過可能である多孔質体と、
多孔質体の表面上及び多孔質体内の複数の細孔の細孔壁上の耐プラズマ性コーティングであって、耐プラズマ性コーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有し、耐プラズマ性コーティングは、細孔壁をフッ素プラズマによる浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質体は、ガスを透過可能のままであり、耐プラズマ性コーティングは約0の空孔率と、±20%未満の厚さ変動を有する均一な厚さを有する耐プラズマ性コーティングとを含む物品であって、
耐プラズマ性コーティングは、
酸化アルミニウムである高純度金属酸化物層と、
、Er 、Y Al 12 (YAG)、ZrO 、Gd 、Y とEr とZrO の2つの組合わせ、Y -ZrO の固溶体、及びY Al とY -ZrO 固溶体とを含むセラミックス化合物からなる群から選択された材料を含む希土類金属含有酸化物層とから実質的になり、
半導体処理チャンバコンポーネントである物品。
【請求項2】
物品は、静電チャック用のセラミックスプラグである、請求項1記載の物品。
【請求項3】
多孔質体は、約5%~約60%の空孔率を有する、請求項1記載の物品。
【請求項4】
耐プラズマ性コーティングは、
第1のタイプの層と第2のタイプの層の交互層のスタックを含み、
第1のタイプの層は、約1オングストローム~約20オングストロームの厚さを有する酸化アルミニウム層である高純度金属酸化物層であり、
第2のタイプの層は、約5オングストローム~約100オングストロームの厚さを有する希土類金属含有酸化物である、請求項1記載の物品。
【請求項5】
多孔質体は、第1の酸化物の焼結粒子と、第1の酸化物の焼結粒子に対して結合剤として作用する第2の酸化物とを含む二相材料から本質的になり、第1の酸化物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択され、第2の酸化物は二酸化ケイ素である、請求項1記載の物品。
【請求項6】
多孔質体は、a)酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合物、b)酸化アルミニウムと酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との混合物、c)炭化ケイ素、d)窒化ケイ素、及びe)窒化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合物からなる群から選択される、請求項1記載の物品。
【請求項7】
複数の細孔を含む多孔質チャンバコンポーネント上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるために原子層堆積を実行するステップであって、複数の細孔は、それぞれ細孔壁を含み、多孔質チャンバコンポーネントは、ガスを透過可能であり、
耐プラズマ性コーティングは、
酸化アルミニウムである高純度金属酸化物層と、
、Er 、Y Al 12 (YAG)、ZrO 、Gd 、Y とEr とZrO の2つの組合わせ、Y -ZrO の固溶体、及びY Al とY -ZrO 固溶体とを含むセラミックス化合物からなる群から選択された材料を含む希土類金属含有酸化物層とから実質的になるステップを含み、
原子層堆積を実行するステップは、
耐プラズマ性コーティングを多孔質チャンバコンポーネントの表面上に堆積させるステップと、
多孔質チャンバコンポーネント内の複数の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップとを含み、
耐プラズマ性コーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有し、耐プラズマ性コーティングは、細孔壁をフッ素プラズマによる浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質チャンバコンポーネントは、原子層堆積を実施した後にガスを透過可能のままであり、耐プラズマ性コーティングは約0の空孔率を有し、
多孔質チャンバコンポーネントは、半導体処理チャンバコンポーネントである方法。
【請求項8】
耐プラズマ性コーティングは、本質的に酸化アルミニウムと希土類金属含有酸化物からなり、耐プラズマ性コーティングを堆積するステップは、
堆積サイクルを実行するステップであって、
アルミニウム含有前駆体を細孔壁上に吸着させて第1の半反応を形成するために、チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にアルミニウム含有前駆体を注入するステップと、
第2の半反応を形成するために、酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入するステップとを含む実行するステップと、
目標厚さが達成されるまで堆積サイクルを1回以上繰り返すステップとを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
耐プラズマ性コーティングは、ジルコニウム、エルビウム又はアルミニウム含有酸化物とイットリウム含有酸化物との交互層のスタックを含み、耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップは、
堆積サイクルを実行するステップであって、
イットリウム含有前駆体を細孔壁上に吸着させて第1の半反応を形成するために、チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にイットリウム含有前駆体を注入するステップと、
第2の半反応及び第1の層を形成するために、酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入するステップと、
ジルコニウム、エルビウム又はアルミニウム前駆体を第1の層の表面上に吸着させて第3の半反応を形成するために、ジルコニウム、エルビウム又はアルミニウム前駆体を堆積チャンバ内に注入するステップと、
第4の半反応及び第2の層を形成するために、酸素含有反応物質又は代替の酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入するステップとを含む実行するステップと、
目標厚さが達成されるまで堆積サイクルを1回以上繰り返すステップとによって、単相又は多相イットリウム含有酸化物を形成するために、イットリウム含有酸化物と金属酸化物の堆積を交互に行うステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップは、
堆積サイクルを実行するステップであって、
第1の前駆体及び第2の前駆体を細孔壁上に吸着させて第1の半反応を形成するために、チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にイットリウム含有酸化物用の第1の前駆体とジルコニウム、エルビウム又はアルミニウム含有酸化物用の第2の前駆体との混合物を同時注入するステップと、
第2の半反応を形成するために、酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入するステップとを含む実行するステップと、
目標厚さが達成されるまで堆積サイクルを1回以上繰り返すステップとによって、イットリウム含有酸化物と1以上のジルコニウム、エルビウム又はアルミニウム含有酸化物とを同時堆積させて、単相又は多相イットリウム含有酸化物を形成するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
多孔質チャンバコンポーネントは、第1の酸化物の焼結粒子と、第1の酸化物の焼結粒子に対して結合剤として作用する第2の酸化物とを含む二相材料から本質的になり、第1の酸化物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択され、第2の酸化物は二酸化ケイ素である、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、物品、コーティングされたチャンバコンポーネント、及び耐プラズマ性コーティングをチャンバコンポーネントにコーティングする方法に関する。耐プラズマ性コーティングは、コンポーネント内の細孔壁を含む多孔質コンポーネントの全ての表面をコーティングする高純度酸化物層を含むことができる。オプションとして、耐プラズマ性コーティングは、希土類金属含有酸化物層及び/又は酸化アルミニウム層を含むことができる。このコーティングは、原子層堆積のような非直線性技術を用いて形成される。
【背景】
【0002】
様々な製造プロセスは、高温、高エネルギープラズマ、腐食性ガスの混合物、高ストレス、及びそれらの組み合わせに半導体処理チャンバコンポーネントを曝露させる。これらの極端な条件は、チャンバコンポーネントを腐食及び/又は浸食させ、チャンバコンポーネントの欠陥に対する感受性を増加させる可能性がある。このような極端な環境において、これらの欠陥を低減し、コンポーネントの耐腐食性及び/又は耐浸食性を改善することが望ましい。
【0003】
保護コーティング膜は、典型的には、様々な方法(例えば、溶射、スパッタリング、イオンアシスト蒸着(IAD)、プラズマ溶射、又は蒸発技術)によってチャンバコンポーネント上に堆積される。これらの技術は、一般的に、そのようなチャンバコンポーネント内の細孔の細孔壁上にコーティングを堆積させることができない。
【概要】
【0004】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、コーティングされた多孔質物品(例えば、静電チャックからの多孔質プラグ)を含む。物品は、多孔質体内に複数の細孔を含み、複数の細孔のそれぞれが細孔壁を含む多孔質体を含む。多孔質体はガスを透過可能である。物品は、多孔質体の表面上及び多孔質体内の複数の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティングを更に含む。耐プラズマ性コーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有することができる。耐プラズマ性コーティングは、細孔壁を浸食から保護する。耐プラズマ性コーティングを有する多孔質体は、ガスを透過可能のままである
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の細孔を含む多孔質チャンバコンポーネント上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるために原子層堆積を実行するステップを含み、複数の細孔は、それぞれ細孔壁を含む。多孔質体は、ガスを透過可能である。原子層堆積を実行するステップは、耐プラズマ性コーティングを多孔質チャンバコンポーネントの表面上に堆積させるステップと、多孔質チャンバコンポーネント内の複数の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップとを含む。耐プラズマ性コーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有することができ、耐プラズマ性コーティングは、細孔壁を浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質チャンバコンポーネントは、原子層堆積を実施した後にガスを透過可能のままである。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の多孔質セラミックスプラグを一緒に堆積チャンバ内にロードするステップを含む。複数の多孔質セラミックスプラグのうちの1つの多孔質セラミックスプラグはガスを透過可能であり、複数の細孔を含み、複数の細孔はそれぞれ細孔壁を含む。本方法は、複数の多孔質セラミックスプラグ上に酸化アルミニウムコーティングを同時に堆積させるために原子層堆積を実行するステップを更に含む。複数の多孔質セラミックスプラグのうちの1つの多孔質セラミックスプラグのための原子層堆積を実行するステップは、多孔質セラミックスプラグの表面上に酸化アルミニウムコーティングを堆積させるステップと、多孔質セラミックスプラグ内の複数の細孔の細孔壁上に酸化アルミニウムコーティングを堆積させるステップとを含む。酸化アルミニウムコーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有することができる。酸化アルミニウムコーティングは、細孔壁を浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質セラミックスプラグは、原子層堆積を行った後、ガスを透過可能なままである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面の図において、限定としてではなく例として示されている。本開示における「1つの」又は「一」実施形態への異なる参照は、必ずしも同じ実施形態への参照ではなく、そのような参照は少なくとも1つを意味することが留意されるべきである。
図1】処理チャンバの断面図を示す。
図2A】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの一実施形態を示す。
図2B】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
図2C】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
図2D】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
図3A】本明細書に記載の原子層堆積を使用して耐プラズマ性コーティングを生成する方法を示す。
図3B】本明細書に記載の原子層堆積を使用して耐プラズマ性コーティングを生成する方法を示す。
図4A】実施形態に係る、静電チャックチャンバコンポーネントのためのプラグを示す。
図4B】静電チャック用のプラグ内の細孔の拡大図を示し、各細孔の内面は、本明細書に記載されているような耐プラズマ性コーティングでコーティングされている。
図4C】本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた複数の多孔質セラミックスプラグを含む基板支持アセンブリを示す。
図5A】本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの形態を示す上面図である。
図5B】本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの断面図である。
図6】新規及び使用済みのセラミックス多孔質プラグのエネルギー分散型X線微量分析の結果を示すチャートである。
【詳細な説明】
【0008】
本明細書に記載の実施形態は、物品の多孔質セラミックス体内の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティングを堆積させた物品、コーティングされたチャンバコンポーネント、及び方法を網羅する。耐プラズマ性コーティングは、高純度金属酸化物層(例えば、高純度酸化アルミニウム)又は希土類金属含有酸化物層(例えば、イットリウム含有酸化物層)とすることができる。耐プラズマ性コーティングはまた、1以上の金属酸化物層並びに1以上の希土類金属含有酸化物層を含む多層コーティングであってもよい。本明細書で使用される場合、耐プラズマ性という用語は、少なくとも1つのタイプのガス並びに少なくとも1つのタイプのガスの化学物質及びラジカルのプラズマに耐性があることを意味する。物品は、多孔質セラミック材料とすることができる。堆積プロセスは、非直線的プロセス(例えば、原子層堆積(ALD)プロセス)である。
【0009】
耐プラズマ性コーティングの厚さは、いくつかの実施形態では、約5nm~約300nmとすることができる。耐プラズマ性コーティングは、チャンバコンポーネントの表面ならびにチャンバコンポーネント内の細孔の細孔壁を実質的に均一な厚さでコンフォーマルに覆うことができる。一実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、±20%未満の厚さ変動、又は±10%未満の厚さ変動、又は±5%未満の厚さ変動、又はより小さい厚さ変動を有する均一な厚さでコーティングされた下地表面(コーティングされた細孔壁を含む)のコンフォーマルな被覆を有する。
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、多孔質セラミックス体(例えば、静電チャック用の多孔質セラミックスプラグ)内の細孔壁が、耐プラズマ性コーティングで効果的にコーティングされることを可能にする。多孔質セラミックス体は、1以上のガスを透過可能とすることができる。細孔壁上の耐プラズマ性コーティングは、多孔質セラミックス体を詰まらせることなく、細孔壁を1以上のガスによる浸食から保護することができる。したがって、多孔質セラミックス体は、耐プラズマ性コーティングによってコーティングされた後、1以上のガスを透過可能なままとすることができる。耐プラズマ性コーティングはまた、約0%の空孔率で緻密である(例えば、耐プラズマ性コーティングは、実施形態では空孔無しとすることができる)。耐プラズマ性コーティングは、プラズマエッチング化学物質(例えば、CCl/CHFプラズマエッチング化学物質、HClSiエッチング化学物質、及びNFエッチング化学物質)からの腐食及び浸食に対して耐性があることが可能である。
【0011】
ALDは、物品の表面との化学反応を介して材料の制御された自己制限的堆積を可能にする。コンフォーマルプロセスではなく、ALDも均一プロセスである。高アスペクト比構造(例えば、約3:1~300:1)を含む物品の露出された全ての面は、堆積された材料と同じ又はほぼ同じ量を有する。本明細書で述べるように、多孔質セラミックス体内の細孔の内壁も、多孔質セラミックス体を詰まらせることなく、又は多孔質セラミックス体の透過性を低下させることなく、ALDプロセスを用いてコーティングされる。ALDプロセスの典型的な反応サイクルは、前駆体(すなわち、単一の化学物質A)をALDチャンバ内に溢れさせて、(物品内の細孔壁の表面を含む)物品の表面上に吸着されることから始まる。その後、反応物質(すなわち、単一の化学物質R)がALDチャンバに導入され、続いて洗い流される(フラッシュされる)前に、過剰の前駆体はALDチャンバから洗い流される。ALDの場合、材料の最終的な厚さは、各反応サイクルが1原子層又は1原子層の一部とすることができるある一定の厚さの層を成長するため、実行される反応サイクルの数に依存する。
【0012】
高アスペクト比構造(例えば、細孔)を有する多孔質コンポーネント上にコーティングを堆積するために典型的に使用される他の技術(例えば、プラズマ溶射コーティング及びイオンアシスト蒸着)とは異なり、ALD技術は、そのような構造内(すなわち、多孔質コンポーネント内の細孔の細孔壁上)に材料の層を堆積させることができる。更に、ALD技術は、堆積中の亀裂形成を排除することができる、空隙の無い(すなわち、ピンホールの無い)比較的薄い(すなわち、1μm以下の)コーティングを生成する。本明細書で使用される「空孔の無い」という用語は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定されたとき、コーティングの深さ全体に沿って、細孔、ピンホール、空隙、又は亀裂が無いことを意味する。TEMは、明視野、暗視野、又は高解像度モードで、200kVで操作されるTEMを用いて、集束イオンビームミリングによって調製された厚さ100nmのTEM薄片を用いて行うことができる。対照的に、従来の電子ビームIAD又はプラズマ溶射技術では、多孔質コンポーネント内の細孔の細孔壁はコーティングされない。その代わりに、多孔質コンポーネントの表面は、細孔を覆って塞ぐようにコーティングされ、多孔質コンポーネントの透過性を減少又は排除する。
【0013】
多孔質の処理チャンバコンポーネント(例えば、静電チャック(ESC)用のプラグ)は、これらの耐プラズマ性コーティングを有することにより、それらの性能に影響を与えずに過酷なエッチング環境内でコンポーネントを保護することからの恩恵を受ける。従来の堆積方法はまた、プラグの空孔率を減少させ、したがってそれらの性能に影響を及ぼすコーティングをもたらす可能性がある。プラグは、少なくともいくつかのガスを透過可能であり、ガス粒子を濾過するか、又はESCの空洞内へのラジカル浸透を遮断し、ESCにおける二次プラズマ光を防止するように設計される。したがって、いくつかの実施形態の目的は、プラグの空孔率及び/又は透過率を維持することである。本明細書に記載された実施形態は、多孔質セラミック物品(例えば、前述の多孔質チャンバコンポーネント)の内部細孔壁が、それらの空孔率又は透過率に影響を及ぼすことなく物品を保護する耐プラズマ性コーティングでコーティングされることを可能にする。
【0014】
図1は、実施形態に係る耐プラズマ性コーティングでコーティングされた1以上のチャンバコンポーネントを有する半導体処理チャンバ100の断面図である。処理チャンバ100は、プラズマ処理条件を有する腐食性プラズマ環境が提供されるプロセスに使用することができる。例えば、処理チャンバ100は、プラズマエッチング装置又はプラズマエッチングリアクタ、プラズマ洗浄装置、プラズマ強化CVD、又はALDリアクタなどのためのチャンバとすることができる。耐プラズマ性コーティングを含むことができるチャンバコンポーネントの例には、静電チャック(ESC)150の多孔質セラミックスプラグが含まれる。以下でより詳細に説明される耐プラズマ性コーティングは、ALDプロセスによって施される。ALDは、複雑な形状及び高アスペクト比を有する構造を有する多孔質コンポーネントを含む全てのタイプのコンポーネントに空孔の無い実質的に均一な厚さのコンフォーマルなコーティングを施すことができる。
【0015】
耐プラズマ性コーティングは、金属酸化物層用の前駆体(例えば、アルミニウム含有前駆体)を用いてALDを用いて成長させるか又は堆積させることができる。耐プラズマ性コーティングは、追加的又は代替的に、希土類金属含有酸化物を堆積するための、又は希土類金属含有酸化物を1以上の追加の酸化物と組み合わせて同時堆積するための1以上の前駆体を用いてALDを用いて成長又は堆積させ、希土類含有酸化物層を形成することができる。一実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、多結晶構造を有する。あるいはまた、希土類含有酸化物層は、非晶質構造を有していてもよい。希土類金属含有酸化物は、イットリウム、タンタル、ジルコニウム、及び/又はエルビウムを含むことができる。例えば、希土類金属含有酸化物は、イットリア(Y)、酸化エルビウム(Er)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)等とすることができる。実施形態では、希土類金属含有酸化物は、多結晶イットリアである。他の実施形態では、希土類金属含有酸化物は、アモルファスイットリアである。希土類金属含有酸化物はまた、1以上の希土類元素(例えば、イットリウム、ジルコニウム、及び/又はエルビウム)と混合されたアルミニウムを含むことができる。希土類金属含有酸化物層を形成するために、希土類金属含有酸化物と同時堆積することができる追加の1又は複数の酸化物は、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化エルビウム(Er)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。多層耐プラズマ性コーティングのためのイットリウム含有酸化物層は、例えば、YZr、YaZrAl、YAl、又はYErとすることができる。イットリウム含有酸化物は、空間群Ia-3(206)を有する立方体構造を有するイットリア石を有するイットリア(Y)であってもよい。
【0016】
一実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、Y、Er、YAl12(YAG)、ErAl12(EAG)、又はYAl(YAM)のうちの1つである。希土類金属含有酸化物層はまた、YAlO(YAP)、ErAl(EAM)、ErAlO(EAP)、Y-ZrOの固溶体、及び/又はYAlとY-ZrO固溶体とを含むセラミックス化合物であってもよい。
【0017】
-ZrOの固溶体に関して、希土類金属含有酸化物層は、10~90モル分率(モル%)の濃度のYと、10~90モル%のZrOとを含むことができる。いくつかの例では、Y-ZrOの固溶体は、10~20モル%のYと、80~90モル%のZrOとを含むことができる、20~30モル%のYと、70~80モル%のZrOとを含むことができる、30~40モルのYと、60~70モル%のZrOとを含むことができる、40~50モル%のYと、50~60モル%のZrOとを含むことができる、60~70モル%のYと、30~40モル%のZrOとを含むことができる、70~80モル%のYと、20~30モル%のZrOとを含むことができる、80~90モル%のYと、10~20モル%のZrOとを含むことができる、などである。
【0018】
AlとY-ZrO固溶体とを含むセラミックス化合物に関して、一実施形態では、セラミックス化合物は、62.93モル分率(モル%)のYと、23.23モル%のZrOと、13.94モル%のAlとを含む。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、50~75モル%の範囲のYと、10~30モル%のZrOと、10~30モル%の範囲のAlとを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~100モル%の範囲のYと、0.1~60モル%のZrOと、0.1~10モル%の範囲のAlとを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~60モル%の範囲のYと、30~50モル%のZrOと、10~20モル%の範囲のAlとを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~50モル%の範囲のYと、20~40モル%のZrOと、20~40モル%の範囲のAlとを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、70~90モル%の範囲のYと、0.1~20モル%のZrOと、10~20モル%の範囲のAlとを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、60~80モル%の範囲のYと、0.1~10モル%のZrOと、20~40モル%の範囲のAlとを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~60モル%の範囲のYと、0.1~20モル%のZrOと、30~40モル%の範囲のAlとを含むことができる。他の実施形態では、セラミックス化合物に対して他の配分を使用することもできる。
【0019】
一実施形態では、希土類金属含有酸化物層に対して、Y、ZrO、Er、Gd、及びSiOの組み合わせを含む代替のセラミックス化合物が使用される。一実施形態では、代替のセラミックス化合物は、40~45モル%の範囲のYと、0~10モル%のZrOと、35~40モル%のErと、5~10モル%の範囲のGdと、5~15モル%のSiOとを含むことができる。第1の例では、代替のセラミックス化合物は、40モル%のYと、5モル%のZrOと、35モル%のErと、5モル%のGdと、15モル%のSiOとを含む。第2の例では、代替のセラミックス化合物は、45モル%のYと、5モル%のZrOと、35モル%のErと、10モル%のGdと、5モル%のSiOとを含む。第3の例では、代替のセラミックス化合物は、40モル%のYと、5モル%のZrOと、40モル%のErと、7モル%のGdと、8モル%のSiOとを含む。
【0020】
上記希土類金属含有酸化物層のいずれも、微量の他の物質(例えば、ZrO、Al、SiO、B、Er、Nd、Nb、CeO、Sm、Yb、又は他の酸化物)を含んでいてもよい。
【0021】
金属酸化物層は、単独で使用される場合、少なくともいくつかのプラズマに対するプラズマ浸食からコンポーネントを保護する高純度酸化アルミニウム又は同様の材料を含むことができる。これはまた、希土類金属含有酸化物層(使用された場合)のチャンバコンポーネントへの接着を改善し、実施形態では最高約350℃(又は約200℃又は約200℃~約350℃)の温度で耐プラズマ性コーティングの割れ及び剥離に対する耐熱性を提供する。
【0022】
一実施形態では、処理チャンバ100は、内部容積106を囲むチャンバ本体102とシャワーヘッド130とを含む。シャワーヘッド130は、シャワーヘッドベース及びシャワーヘッドガス分配プレートを含むことができる。あるいはまた、シャワーヘッド130は、いくつかの実施形態では、蓋及びノズルによって置き換えてもよく、又は他の実施形態では、複数のパイ形のシャワーヘッド区画及びプラズマ生成ユニットによって置き換えてもよい。チャンバ本体102は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の適切な材料から製造することができる。チャンバ本体102は、一般的に、側壁108及び底部110を含む。
【0023】
外側ライナー116は、側壁108に隣接して配置され、チャンバ本体102を保護することができる。外側ライナー116は、二層コーティングで製造及び/又はコーティングすることができる。一実施形態では、外側ライナー116は、酸化アルミニウムから製造される。
【0024】
排気ポート126は、チャンバ本体102内に画定されることができ、内部容積106をポンプシステム128に結合することができる。ポンプシステム128は、排気して処理チャンバ100の内部容積106の圧力を調節するために使用される1以上のポンプ及びスロットルバルブを含むことができる。
【0025】
シャワーヘッド130は、チャンバ本体102の側壁108上に支持することができる。シャワーヘッド130(又は蓋)は、処理チャンバ100の内部容積106へのアクセスを可能にするように開放することができ、閉じている間は、処理チャンバ100に対してシールを提供することができる。ガスパネル158は、処理チャンバ100に結合されて、処理ガス及び/又は洗浄ガスを、シャワーヘッド130又は蓋及びノズルを介して内部容積106に提供することができる。シャワーヘッド130は、誘電体エッチング(誘電体材料のエッチング)に使用される処理チャンバ用に使用することができる。シャワーヘッド130は、ガス分配プレート(GDP)133を含み、GDP133は、GDP133の全域にわたって複数のガス供給穴132を有する。シャワーヘッド130は、アルミニウムベース又は陽極酸化アルミニウムベースに接合されたGDP133を含むことができる。GDP133は、Si又はSiCから製造することができる、又はセラミックス(例えば、Y、Al、YAl12(YAG)など)とすることができる。
【0026】
導体エッチング(導電性材料のエッチング)用に使用される処理チャンバでは、シャワーヘッドではなく蓋を使用することができる。蓋は、蓋の中心穴に嵌合する中心ノズルを含むことができる。蓋は、セラミックス(例えば、Al、Y、YAG)、又はYAlとY-ZrOの固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。ノズルもまた、セラミックス(例えば、Y、YAG)、又はYAlとY-ZrOの固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。
【0027】
処理チャンバ100内で基板を処理するために使用することができる処理ガスの例は、ハロゲン含有ガス(例えば、とりわけ、C、SF、SiCl、HBr、NF、CF、CHF、CH、F、NF、Cl、CCl、BCl、及びSiF)、及び他のガス(例えば、O又はNO)を含む。キャリアガスの例は、N、He、Ar、及び処理ガスに対して不活性な他のガス(例えば、非反応性ガス)を含む。基板支持アセンブリ148は、シャワーヘッド130又は蓋の下方の処理チャンバ100の内部容積106内に配置される。基板支持アセンブリ148は、処理中に基板144を保持する。リング146(例えば、単一のリング)は、静電チャック150の一部を覆うことができ、覆われた部分が処理中にプラズマに曝露されないように保護することができる。一実施形態では、リング146はシリコン又は石英であってもよい。
【0028】
内側ライナー118は、基板支持アセンブリ148の周囲を覆うことができる。内側ライナー118は、ハロゲン含有ガス耐性材料(例えば、外側ライナー116を参照して論じられたもの)とすることができる。一実施形態では、内側ライナー118は、外側ライナー116と同じ材料から製造されてもよい。
【0029】
一実施形態では、基板支持アセンブリ148は、台座152を支持する取り付けプレート162と、静電チャック150とを含む。静電チャック150は、熱伝導ベース164と、熱伝導ベースに接合剤138によって接合された静電パック166とを更に含み、接合剤138は、一実施形態では、シリコーン接合剤とすることができる。静電パック166の上面は、図示の実施形態では、耐プラズマ性コーティング136によって覆うことができる。耐プラズマ性コーティング136は、熱伝導性ベース164及び静電パック166の外側及び側部周縁部を含む静電チャック150の露出面全体、ならびに静電チャック内でアスペクト比の大きい他の幾何学的に複雑な部品又は穴に配置することができる。一実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、静電パック166の1以上の穴に挿入されるセラミックスプラグ(図示せず)内の細孔の細孔壁をコーティングする。セラミックスプラグは、図4A図4Cに関連して、以下でより詳細に説明する。取り付けプレート162は、チャンバ本体102の底部110に結合され、ユーティリティ(例えば、流体、電力線、センサリードなど)を熱伝導ベース164及び静電パック166に経路付ける(ルーティングする)ための通路を含む。
【0030】
熱伝導ベース164及び/又は静電パック166は、1以上のオプションの埋設された加熱素子176、埋設された熱アイソレータ174、及び/又は導管168、170を含み、基板支持アセンブリ148の横方向の温度プロファイルを制御することができる。導管168、170は、導管168、170を介して温度調節流体を循環させる流体源172に流体的に結合することができる。一実施形態では、埋設されたアイソレータ174は、導管168、170の間に配置することができる。ヒータ176は、ヒータ電源178によって調整される。導管168、170及びヒータ176を使用して、熱伝導ベース164の温度を制御することができる。導管及びヒータは、静電パック166及び処理される基板(例えば、ウェハ)144を加熱及び/又は冷却する。静電パック166及び熱伝導ベース164の温度は、コントローラ195を使用して監視することができる複数の温度センサ190、192を使用して監視することができる。
【0031】
静電パック166は、複数のガス通路(例えば、溝、メサ、及びパック166の上面に形成することができる他の表面構造)を更に含むことができる。ガス通路は、静電パック166内に穿孔された孔を介して熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、He)の供給源に流体結合させることができる。動作中、裏面ガスは、制御された圧力でガス通路内に供給され、静電パック166と基板144との間の熱伝達を向上させることができる。Heビア孔は、Heを透過可能な多孔質セラミックスプラグによって塞がれてもよい。多孔質セラミックスプラグはまた、半導体処理チャンバ100を洗浄するために使用される腐食性ガス及びプラズマを少なくとも部分的に透過可能とすることができる。多孔質セラミックスプラグは、腐食性ガスのガス粒子を濾過し、そのような腐食性ガスが基板支持体アセンブリ内に侵入するのを防止することができる。多孔質セラミックスプラグは、静電パック166内のHeビア内に二次プラズマが形成されるのを更に防止することができる。しかしながら、多孔質セラミックスプラグは、繰り返しの洗浄サイクルの後に腐食する可能性がある。更に、多孔質セラミックスプラグの化学的性質は、多孔質セラミックスプラグがフッ素に曝されると変化する可能性がある(例えば、多孔質セラミックスプラグは、Siを失い、フッ素を獲得する可能性がある)。したがって、多孔質セラミックスプラグは、多孔質セラミックスプラグの寿命を延ばすために、本明細書の実施形態に従ってコーティングすることができる。
【0032】
静電パック166は、チャッキング電源182によって制御される少なくとも1つのクランプ電極180を含む。クランプ電極180(又は静電パック166又はベース164内に配置された他の電極)は、処理チャンバ100内の処理ガス及び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持するための整合回路188を介して1以上のRF電源184、186に更に結合することができる。RF電源184、186は、一般的に、約50kHz~約3GHzの周波数と、最大約10000ワットの電力を有するRF信号を生成することができる。
【0033】
図2Aは、(物品内の細孔壁を含む)物品上に耐プラズマ性コーティングを成長又は堆積させるためのALD技術による堆積プロセスの一実施形態を示す。図2Bは、(物品内の細孔壁を含む)物品上に多層耐プラズマ性コーティングを成長又は堆積させるためのALD技術による堆積プロセスの一実施形態を示す。図2Cは、本明細書に記載されるような原子層堆積技術による堆積プロセスの別の一実施形態を示す。図2Dは、本明細書に記載されるような原子層堆積技術による堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【0034】
様々なタイプのALDプロセスが存在し、特定のタイプは、いくつかの要因(例えば、コーティングされるべき表面、コーティング材料、表面とコーティング材料との間の化学的相互作用など)に基づいて選択することができる。様々なALDプロセスの一般的な原理は、自己限定的に一度に1つずつ表面と化学的に反応するガス状化学前駆体のパルスにコーティングされる表面を繰り返し曝露させることによって薄膜層を成長させることを含む。
【0035】
図2A図2Dは、表面を有する物品210を示す。物品210は、静電チャック又は基板支持アセンブリのための多孔質セラミックスプラグを含むが、これに限定されない種々の多孔質処理チャンバコンポーネント(例えば、半導体処理チャンバコンポーネント)を表すことができる。物品210は、セラミックス、金属-セラミックス複合材料(例えば、AlO/SiO、AlO/MgO/SiO、SiC、SiN、AlN/SiOなど)、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)、ポリマー、ポリマーセラミック複合材料、マイラー、ポリエステル、又は他の適切な材料から製造され、AlN、Si、SiC、Al、SiOなどの材料を更に含むことができる。一実施形態では、物品210は、第1の酸化物の焼結粒子と、第1の酸化物の焼結粒子の結合剤として作用する第2の酸化物とを含む二相材料から構成されるセラミックス多孔質プラグである。二相材料は、多孔質マトリックス中に配置することができる。例えば、第1の酸化物はAl又はAlNとすることができ、第2の酸化物はSiOとすることができる。これらの材料の課題は、SiO含有相がフッ素化学物質に対してほとんど耐性が無く、非常に速くエッチング除去されて多孔質マトリックスを破壊し、微粒子の生成を招くことである。
【0036】
ALDの場合、表面上への前駆体の吸着又は吸着された前駆体との反応物質の反応は、「半反応」と呼ぶことができる。第1の半反応の間、前駆体は、前駆体を表面上に完全に吸着可能にするのに十分な時間の間、(物品210内の細孔壁の表面上を含む)物品210の表面上にパルスされる。前駆体が表面上の有限数の利用可能な部位に吸着され、表面上に均一な連続吸着層を形成するので、吸着は自己限定的である。前駆体によって既に吸着された任意の部位は、吸着した部位が均一な連続コーティング上に新たな利用可能な部位を形成する処理に付されない限り、及び/又はそのような処理に付されるまで、同じ前駆体によって更に吸着することができなくなる。例示的な処理は、プラズマ処理、均一な連続吸着層をラジカルに曝露することによる処理、又は表面に吸着された直近の均一な連続層と反応することができる異なる前駆体の導入とすることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、2以上の前駆体が共に注入され、物品の表面上に吸着される。過剰な前駆体は、酸素含有反応物質が注入されて固体の単相又は多相層(例えば、YAGの層、Y-ZrOの相など)を形成するために吸着物と反応するまで汲み出される。この新鮮な層は、次のサイクルで前駆体を吸着する準備ができている。
【0038】
図2Aにおいて、物品210の表面が第1の前駆体260で完全に吸着されて吸着層214を形成するまで、物品210は、第1の期間の間、前駆体260に導入することができる。続いて、物品210は、第1の反応物質265に導入され、吸着層214と反応して、固体層216を成長させることができる(例えば、これによって層216は、完全に成長又は堆積される。ここで成長及び堆積という用語は、本明細書内で交換可能に使用することができる)。第1前駆体260は、高純度金属酸化物(例えば、高純度酸化アルミニウム)のための前駆体とすることができる。層216が酸化物である場合、第1の反応物質265は、酸素、水蒸気、オゾン、純酸素、酸素ラジカル、又は別の酸素源とすることができる。従って、ALDを用いて層216を形成することができる。層216は、耐プラズマ性コーティングとすることができるか、又は多層耐プラズマ性コーティングのうちの1つの層とすることができる。
【0039】
層216が高純度アルミナ(HP-Al)層である一例では、(細孔の内部を含む)物品の表面上のすべての反応部位が消費されるまでの第1の期間の間、第1の前駆体260(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))に物品210(例えば、ESC用の多孔質セラミックスプラグ)を導入することができる。残りの第1の前駆体260を洗い流し、次いでHOの第1の反応物質265をリアクタに注入して、第2の半サイクルを開始する。HO分子が第1の半反応によって生成されたAl含有吸着層と反応した後、HP-Alの層216が形成される。
【0040】
層216は、均一で、連続的であり、コンフォーマルとすることができる。層216は、実施形態において空孔が無い(例えば、ゼロの空孔率を有する)、又は約ゼロの空孔率(例えば、0%~0.01%の空孔率)を有することができる。層216は、単一のALD堆積サイクル後、いくつかの実施形態では、1原子層未満~数原子の厚さを有することができる。いくつかの有機金属前駆体分子は大きい。反応物質265と反応した後、大きな有機配位子は無くなり、はるかに小さな金属原子を残す可能性がある。(例えば、前駆体260の導入に続いて反応物質265が導入されるステップを含む)1つの完全なALDサイクルは、単一の原子層未満になる可能性がある。例えば、TMA及びHOによって成長させたAl単分子層は、典型的には、約0.9Å/サイクル~約1.3Å/サイクルの成長速度を有し、一方、Al格子定数は、a=4.7Å及びc=13Å(三方晶構造の場合)である。
【0041】
複数の完全なALD堆積サイクルを実施して、1原子~数原子の追加の部分によって厚さに追加する(例えば、前駆体260の導入、洗い流し、反応物質265の導入、及び再び洗い流しを含む)各完全サイクルによって、より厚い層216を堆積させることができる。図示されているように、最高n回の完全サイクルが実行され、層216を成長させることができ、ただし、nは1よりも大きい整数値である。実施形態では、層216は、約5nm~約3μmの厚さを有する。更なる一実施形態では、層216は、約5nm~約300nmの厚さを有する。層216は、実施形態において約10nm~約150nm、他の実施形態において約50nm~100nmの厚さを有することができる。
【0042】
層216は、堅牢な耐プラズマ性及び機械的特性を提供する。層216は、腐食からコンポーネントを保護し、絶縁耐力を向上させることができ、希土類金属含有酸化物層の(例えば、多孔質セラミックス、又はAl6061、Al6063で形成された)コンポーネントへのより良好な接着力を提供することができ、及び最高約200℃、又は最高約250℃、又は約200℃~約250℃の温度で耐プラズマ性コーティングの割れを防止することができる。更なる実施形態では、層216は、最高約350℃の温度で耐プラズマ性コーティングの割れを防止することができる。堆積のためにALDが使用されるので、高アスペクト比の構造(例えば、シャワーヘッド内のガス送出孔又は多孔質材料内の細孔)の内面をコーティングすることができ、従って、コンポーネントの全体を腐食環境への曝露から保護することができる。
【0043】
層216は、実施形態において約89.99%~約99.99%の純度を有するHP-Alとすることができる。高純度のAは、ESCプラグに使用される典型的なセラミックス材料よりも、プラズマ腐食に対して著しく耐性がある。更に、HP-Alは、共通元素(例えば、アルミニウム及び酸素)のために、セラミックス及びアルミニウムベースのコンポーネントに対して良好な接着性を有する。同様に、HP-Alは、これもまた共通元素(すなわち、酸化物)のために、希土類金属含有酸化物に対して良好な接着性を有する。これらの改良された界面は、ひび割れを開始しやすい界面欠陥を減少させる。
【0044】
図2Bは、図2Aを参照して説明したような層216の堆積を含む堆積プロセス201を説明する。しかしながら、図2Bの堆積プロセス201は、多層耐プラズマ性コーティングを形成するための追加層220の堆積を更に含む。したがって、層216が完成した後、層216を有する物品210は、層216が1以上の追加の前駆体270で完全に吸着されて吸着層218を形成するまで、第2の持続時間の間に追加の1以上の前駆体270に導入させることができる。続いて、物品210を反応物質275に導入して、吸着層218と反応させて、固体希土類金属含有酸化物層220(単純化のために第2の層220とも呼ばれる)を成長させることができる(例えば、これによって第2の層220は完全に成長又は堆積される)。この実施形態では、層216は、アモルファス金属酸化物(例えば、アモルファスHP-Al)とすることができる。したがって、第2の層220は、ALDを用いて層216上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体270は、第1の半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体とすることができ、反応物質275は、第2の半サイクルで使用されるHOとすることができる。
【0045】
第2の層220は、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層を形成し、これは、均一で、連続的、かつコンフォーマルとすることができる。第2の層220は、実施形態では1%未満、更なる実施形態では0.1%未満、及び実施形態では約0%の非常に低い空孔率を有する、又は更なる別の実施形態では空孔が無いことが可能である。第2の層220は、単一の完全なALD堆積サイクルの後に、1原子未満~数原子(例えば、2~3原子)の厚さを有することができる。複数のALD堆積段階を実施して、より厚い第2の層220を堆積させることができ、各段階で1原子~数原子の追加の部分が厚さに追加される。図示されるように、完全堆積サイクルは、m回繰り返されて、第2の層220が目標厚さを有するようにすることができ、ただし、mは1より大きい整数値である。実施形態では、第2の層220は、約5nm~3μmの厚さを有することができる。他の実施形態では、第2の層220は、約5nm~約300nmの厚さを有することができる。第2の層220は、実施形態では、約10nm~約20nmの厚さを有することができ、又はいくつかの実施形態では、約50nm~約60nmの厚さを有することができる。他の実施形態では、第2の層220は、約90nm~約110nmの厚さを有することができる。
【0046】
層216の厚さに対する第2の層220の厚さの比は、200:1~1:200とすることができる。層216の厚さに対する第2の層220の厚さのより高い比(例えば、200:1、100:1、50:1、20:1、10:1、5:1、2:1など)は、より良好な耐腐食性及び耐浸食性を提供し、一方、層216の厚さに対する第2の層220の厚さのより低い比(例えば、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100、1:200)は、より良好な耐熱性(例えば、熱サイクルによって引き起こされる割れ及び/又は層間剥離に対する改善された耐性)を提供する。
【0047】
第2の層220は、上述の希土類金属含有酸化物層のいずれかであってもよい。例えば、第2の層220は、単独又は1以上の他の希土類金属酸化物と組み合わせたYとすることができる。いくつかの実施形態では、第2の層220は、ALDによって同時堆積された少なくとも2つの希土類金属含有酸化物前駆体の混合物から形成された単相材料(例えば、Y、Er、Al、ZrOのうちの1以上の組み合わせ)である。例えば、第2の層220は、YZr、YEr、YAl12(YAG)、YAl(YAM)、Y安定化ZrO(YSZ)、又はYAlと、Y-ZrOの固溶体とを含むセラミックス化合物のうちの1つとすることができる。一実施形態では、層216はアモルファスHP-Alであり、第2の層220は、単独又は1以上の他の希土類金属酸化物材料と単相にある多結晶又はアモルファスのイットリウム含有酸化物化合物(例えば、Y、YAl、YZr、YEr)である。従って、層216は、イットリウム含有酸化物層の堆積前に堆積された応力緩和層とすることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の層220は、Er、Y、Al、又はZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の層220は、ErAl(例えば、ErAl12)、ErZr、ErZrAl、YEr、又はErZr(例えば、Y、ZrO、及びErの単相固溶体)のうちの少なくとも1つの多成分材料である。第2の層220はまた、YAl12(YAG)、YAl(YAM)、Y安定化ZrO(YSZ)、又はYAlと、Y-ZrOの固溶体とを含むセラミックス化合物のうちの1つであってもよい。一実施形態では、第2の層220は、エルビウム含有化合物(例えば、Er、ErAl、ErZr、ErZrAl、YEr、又はErZr)である。
【0049】
図2C図2Dを参照すると、いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、3以上の層を含む。具体的には、耐プラズマ性コーティングは、酸化物層と希土類金属含有酸化物層との交互層のシーケンスを含むことができる、又は層216と、希土類金属含有酸化物層のための交互層のシーケンスとを含むことができる。いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物層は交互サブ層の層である。例えば、希土類金属含有酸化物層は、YとAlの一連の交互サブ層、YとZrOの一連の交互サブ層、YとAlとZrOとの一連の交互サブ層などとすることができる。
【0050】
図2Cを参照すると、層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入することができる。表面層216は、図2A又は図2Bを参照して説明したように形成することができる。あるいはまた、層が上に形成されていない物品210を提供することができる。物品210は、層216又は物品210が1以上の追加の前駆体280に完全に吸着されて吸着層222を形成するまでの間、1以上の前駆体280に導入することができる。続いて、物品210は、反応物質282に導入されて、吸着層222と反応して、固体金属酸化物層224を成長させることができる。従って、金属酸化物層224は、ALDを使用して表面層216の上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体280は、第1の半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体とすることができ、反応物質282は、第2の半サイクルで使用されるHOとすることができる。金属酸化物層224は、Y、ZrO、Al、Er、Ta、又は別の酸化物のうちの第1のものであってもよい。
【0051】
層216及び金属酸化物層224を有する物品210は、金属酸化物層224の表面が1以上の前駆体284で完全に吸着されて吸着層226を形成するまでの間、1以上の前駆体284に導入することができる。続いて、物品210は、反応物質286に導入されて、吸着層226と反応して、追加の固体金属酸化物層228を成長させることができる。従って、追加の金属酸化物層228は、ALDを用いて金属酸化物層224の上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体284は、第1の半サイクルで使用されるジルコニウム含有前駆体とすることができ、反応物質286は、第2の半サイクルで使用されるHOとすることができる。金属酸化物層224は、Y、ZrO、Al、Er、Ta、又は別の酸化物のうちの第2のものであってもよい。
【0052】
図示のように、金属酸化物224及び第2の金属酸化物228の堆積は、n回繰り返して、交互層のスタック237を形成することができる(ただし、nは2より大きい整数値である)。nは、目標とされる厚さ及び特性に基づいて選択される有限数の層を表すことができる。交互層のスタック237は、複数の交互サブ層を含む希土類金属含有酸化物層と考えることができる。従って、前駆体280、反応物質284、前駆体284、及び反応物質286は、順次繰り返して導入され、追加の交互層230、232、234、236などを成長又は堆積させることができる。層224、224、230、232、234、236等の各々は、単一原子層未満から数原子層の厚さを有する非常に薄い層とすることができる。例えば、TMA及びHOによって成長させたAl単分子層は、典型的には、約0.9~約1.3Å/サイクルの成長速度を有し、一方、Al格子定数は、a=4.7Å及びc=13Å(三方晶構造の場合)である。
【0053】
上述の交互層224~236は1:1の比を有し、第2の金属酸化物の各単一層に対して第1の金属酸化物の単一層が存在する。しかしながら、他の実施形態では、異なる種類の金属酸化物層の間に他の比(例えば、2:1、3:1、4:1など)が存在してもよい。例えば、一実施形態では、各ZrO層に対して2つのY層を堆積させることができる。また、交互層224~236のスタック237は、2種類の金属酸化物層の交互の連なりとして記載されている。しかしながら、他の実施形態では、3種類以上の金属酸化物層が交互スタック237内に堆積されてもよい。例えば、スタック237は、3つの異なる交互層(例えば、Yの第1の層、Alの第1の層、ZrOの第1の層、Yの第2の層、Alの第2の層、ZrOの第2の層など)を含むことができる。
【0054】
交互層のスタック237が形成された後、アニール処理が実行され、異なる材料の交互層を互いに拡散させ、単相又は多相を有する複合酸化物を形成させることができる。従って、アニール処理後、交互層237のスタックは、単一の希土類金属含有酸化物層238となることができる。例えば、スタック中の層がY、Al、及びZrOである場合、得られる希土類金属含有酸化物層238は、YAlと、Y-ZrOの固溶体とを含むセラミックス化合物となることができる。スタック中の層がY及びZrOである場合、Y-ZrOの固溶体を形成することができる。
【0055】
図2Dを参照すると、層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入することができる。あるいはまた、このような層216を有さない物品210を堆積チャンバに挿入することができる。層216は、図2A又は図2Bを参照して説明したように形成することができる。物品210は、層216又は物品210が1以上の前駆体290で完全に吸着されて吸着層240を形成するまでの間、1以上の前駆体290に導入することができる。その後、物品210は、反応物質292に導入されて、吸着層240と反応して固体希土類酸化物層242を成長させることができる。前駆体290及び反応物質292は、実施形態では、前駆体270及び反応物質275に対応することができる。従って、希土類酸化物層242は、ALDを用いて層216の上に完全に成長又は堆積される。前駆体290を導入し、次いで反応物質292を導入するプロセスは、n回繰り返して、希土類酸化物層242を目標厚さにすることができる(ただし、nは1より大きい整数)。
【0056】
層216及び/又は希土類酸化物層242を有する物品210は、希土類酸化物層242の表面が1以上の前駆体294で完全に吸着されて吸着層244を形成するまでの間、1以上の前駆体294に導入することができる。続いて、物品210を反応物質296に導入して、吸着層244と反応させてバリア層246を成長させることができる。前駆体294及び反応物質296は、実施形態では、前駆体260及び反応物質265に対応することができる。従って、バリア層244は、表面層216と同じ材料組成を有してもよい。バリア層246は、ALDを用いて希土類酸化物層242の上に完全に成長又は堆積される。前駆体294を導入し、次いで反応物質296を導入するプロセスは、1~2回実行して、希土類酸化物層内の結晶成長を防止することができる薄いバリア層246を形成することができる。
【0057】
図示のように、希土類酸化物242及びバリア層228の堆積をm回繰り返して、交互層のスタック248を形成することができる(ただし、mは1より大きい整数値である)。Nは、目標とされた厚さ及び特性に基づいて選択される有限数の層を表すことができる。交互層のスタック248は、複数の交互のサブ層を含む希土類金属含有酸化物層と考えることができる。
【0058】
図2Dに示される最終構造は、表面高純度金属酸化物層216(例えば、アモルファス金属酸化物)と、希土類金属含有酸化物242と第2の酸化物又は他のセラミックス228との交互層のスタック248とを含む耐プラズマ性コーティングでコーティングされた物品210の断面側面図である。
【0059】
第2の酸化物又は他のセラミックスは、いくつかの実施形態において表面層を形成するために使用される酸化物(例えば、Al)と同じ酸化物であってもよい。あるいはまた、第2の酸化物又はセラミックスは、表面層を形成するために使用される酸化物とは異なる酸化物であってもよい。
【0060】
希土類金属含有酸化物の各層は、約5~10オングストロームの厚さを有することができ、ALDプロセスの約5~約10サイクルを実行することによって形成することができ、各サイクルは、希土類金属含有酸化物の1つのナノレイヤー(又は、1つのナノレイヤーよりもわずかに少ない又は多いナノレイヤー)を形成する。一実施形態では、希土類金属含有酸化物の各層は、約6~約8ALDサイクルを使用して形成される。第2の酸化物又は他のセラミックスの各層は、単一のALDサイクル(又は数回のALDサイクル)から形成することができ、1原子未満~数原子の厚さを有することができる。希土類金属含有酸化物の層は、それぞれ、約5~100オングストロームの厚さを有することができ、第2の酸化物の層は、実施形態では、それぞれ約1~20オングストロームの厚さを有することができ、更なる実施形態では、1~4オングストロームの厚さを有することができる。希土類金属含有酸化物242及び第2の酸化物又は他のセラミックス228の交互層のスタック248は、約5nm~約3μmの合計厚さを有することができる。希土類金属含有酸化物の層242の間の第2の酸化物又は他のセラミックス246の薄層は、希土類金属含有酸化物層における結晶形成を防止することができる。これにより、アモルファスイットリア層を成長可能にすることができる。
【0061】
図2A図2Dを参照して説明された実施形態では、表面反応(例えば、半反応)が順次行われ、様々な前駆体及び反応物質は、実施形態においては接触していない。新しい前駆体又は反応物質の導入に先立って、ALDプロセスが行われるチャンバは、不活性キャリアガス(例えば、窒素又は空気)でパージして、未反応の前駆体及び/又は表面前駆体反応副生成物を除去することができる。前駆体は各層で異なり、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層のための第2の前駆体は、2つの希土類金属含有酸化物前駆体の混合物として、これらの化合物の同時堆積を促進して、単相材料層を形成することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの前駆体が使用され、他の実施形態では、少なくとも3つの前駆体が使用され、更に別の実施形態では、少なくとも4つの前駆体が使用される。
【0062】
ALDプロセスは、プロセスのタイプに応じて様々な温度で行うことができる。特定のALDプロセスに対して最適な温度範囲は、「ALD温度ウィンドウ」と呼ばれる。ALD温度ウィンドウより低い温度は、不良な成長速度と非ALDタイプの堆積をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウより高い温度は、化学気相成長(CVD)機構を介して起こる反応をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウは、約100℃~約400℃の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、ALD温度ウィンドウは、約120~300℃である。いくつかのALDプロセスは、約20℃~約400℃の温度で実施することもできる。
【0063】
ALDプロセスは、複雑な幾何学的形状、高アスペクト比の孔(例えば、細孔)、及び三次元構造を有する物品及び表面上に均一な厚さを有するコンフォーマルな耐プラズマ性コーティングを可能にする。各前駆体の表面への十分な曝露時間は、前駆体が分散し、その三次元の複雑な構造の全てを含む表面全体と完全に反応することを可能にする。高アスペクト比の構造においてコンフォーマルALDを得るために利用される曝露時間は、アスペクト比の2乗に比例し、モデリング技術を使用して予測することができる。また、ALD技術は、原材料(例えば、粉末原料及び焼結されたターゲット)の長期かつ困難な製造を必要とせずに、特定の組成物又は配合物のインサイチューでオンデマンドの材料合成を可能にするので、他の通常使用されるコーティング技術よりも有利である。いくつかの実施形態では、ALDを使用して、約3:1~約300:1のアスペクト比の物品をコーティングする。
【0064】
本明細書に記載のALD技術を用いて、多成分膜(例えば、YAl(例えば、YAl12)、YZr、YZrAl、YEr、YEr、又はYEr)を、上記で説明され、以下の例においてより詳細に説明されるように、(例えば、希土類金属含有酸化物を単独で又は1以上の他の酸化物と組み合わせて成長させるために使用される前駆体の適切な混合物によって)成長、堆積、又は同時堆積することができる。
【0065】
図3Aは、多孔質の物品(例えば、実施形態に係る多孔質処理チャンバコンポーネント(例えば、ESC用プラグ))内の多孔質壁上に耐プラズマ性コーティングを形成する方法300を示す。方法300は、本明細書に記載される任意の物品をコーティングするために使用することができる。本方法は、オプションとして、耐プラズマ性コーティングに対する組成を選択することによって開始してもよい。組成の選択及び形成方法は、同じエンティティによって、又は複数のエンティティによって実行されてもよい。
【0066】
本方法は、ブロック305において、酸性溶液で物品を洗浄することをオプションとして含むことができる。一実施形態では、物品は酸性溶液の浴中に浸される。酸性溶液は、実施形態において、フッ化水素酸(HF)溶液、塩酸(HCl)溶液、硝酸(HNO)溶液、又はそれらの組み合わせとすることができる。酸性溶液は、物品から表面汚染物質を除去することができる、及び/又は物品の表面から酸化物を除去することができる。物品を酸性溶液で洗浄することにより、ALDを用いて堆積されたコーティングの品質を改善することができる。一実施形態では、約0.1体積%~約5.0体積%のHFを含む酸性溶液を使用して、石英から作られたチャンバコンポーネントを洗浄する。一実施形態では、約0.1体積%~約20体積%のHClを含む酸性溶液を使用して、Alから作られた物品を洗浄する。一実施形態では、約5体積%~約15体積%のHNOを含む酸性溶液を使用して、アルミニウム及び他の金属から作られた物品を洗浄する。
【0067】
ブロック310において、物品は、ALD堆積チャンバ内にロードされる。ブロック320において、本方法は、ALDを使用して物品の表面上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップを含む。耐プラズマ性コーティングは更に、物品内の細孔の細孔壁上に堆積される。一実施形態では、ブロック325において、ALDが実行され、金属酸化物層(例えば、Al層などの)を堆積させる。一実施形態では、ブロック330において、ALDは、オプションとして実行され、希土類金属含有酸化物層を単独で、又は1以上の他の酸化物と共に堆積又は同時堆積させる。ALDは、耐プラズマ性コーティングの表面粗さを、コーティングされる物品の下地の表面の表面粗さと一致させることができる、実施形態において実行されるような非常にコンフォーマルなプロセスである。耐プラズマ性コーティングは、いくつかの実施形態では、約5nm~約3μmの合計厚さを有することができる。耐プラズマ性コーティングは、実施形態では約0%の空孔率を有してもよく、又は実施形態では空孔が無くてもよく、約±5%以下、±10%以下、又は±20%以下の厚さばらつきを有してもよい。
【0068】
一実施形態では、ブロック335において、ALDを実行して、希土類金属含有酸化物と追加の酸化物の交互層のスタックを堆積させる。追加の酸化物は、本明細書に記載の酸化物のいずれであってもよい。あるいはまた、単一層を形成してもよい。
【0069】
いくつかの例では、多孔質物品の空孔率及び/又は透過率を減少させることが有益な場合がある。いくつかの実施形態では、細孔の細孔壁上の耐プラズマ性コーティングの厚さは、多孔質材料の空孔率及び透過率に影響を及ぼす可能性がある。コーティングの厚さを空孔率の減少及び/又は透過率の減少に対してマッピングする特徴付けを行うことができる。特徴付けは、その後、多孔質物品の初期空孔率及び/又は初期透過率を目標空孔率及び/又は透過率まで減少させるために使用することができる。例えば、第1のコーティング厚さは、60%から50%まで空孔率を減少させることができ、第2のコーティング厚さは、60%から40%まで空孔率を減少させることができる。出発空孔率及び目標空孔率(又は出発透過率及び目標透過率)を決定することができる。出発空孔率(又は出発透過率)を目標の空孔率(又は目標透過率)に低下させるコーティング厚さを決定することができる。耐プラズマ性コーティングは、次に、空孔率及び/又は透過率が目標空孔率及び/又は目標透過率を達成するように、目標厚さまで堆積させることができる。
【0070】
イットリウム含有酸化物層は、イットリウム含有酸化物を含み、1以上の追加の希土類金属酸化物を含むことができる。イットリウムを含む希土類含有酸化物材料は、イットリウム含有酸化物が一般的に高い安定性、高い硬度、及び優れた耐浸食特性を有するので、実施形態において耐プラズマ性コーティングを形成するために使用することができる。例えば、Yは、最も安定な酸化物の1つであり、標準生成ギブス自由エネルギー(ΔG)が-1816.65kJ/molであり、Yと大部分のプロセス化学物質との反応が標準条件下では熱力学的に不利であることを示している。本明細書の実施形態に従って堆積されたYを有する第1の金属酸化物層及び希土類金属含有酸化物層を含む耐プラズマ性コーティングはまた、多くのプラズマ及び化学環境に対して低い浸食速度(例えば、200ワットのバイアス及び500℃で直接NFプラズマ化学物質に曝露されたときの約0μm/秒の浸食速度)を有することができる。例えば、200ワットと500℃での直接NFプラズマの1時間の試験では、測定可能な浸食は生じなかった。耐プラズマ性コーティングを形成することができるイットリウム含有酸化物化合物の例としては、Y、YAl(例えば、YAl12)、YZr、YZrAl、又はYErを含む。耐プラズマ性コーティング中のイットリウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができる。イットリウム含有酸化物の場合、イットリウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及び、酸素含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができる。
【0071】
耐プラズマ性コーティングを形成することができるエルビウム含有酸化物化合物の例としては、Er、ErAl(例えば、ErAl12)、ErZr、ErZrAl、YEr、及びErZr(例えば、Y、ZrO、及びErの単相固溶体)を含む。耐プラズマ性コーティング中のエルビウム含有量は、約0.1原子%から約100原子%近くまで及ぶことができる。エルビウム含有酸化物の場合、エルビウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができ、酸素含有量は、約0.1原子%~100原子%近くまで及ぶことができる。
【0072】
有利には、Y及びErは混和性である。YとErとの任意の組み合わせに対して単相固溶体を形成することができる。例えば、わずかに0モル%を超えるErとわずかに100モル%を下回るYとの混合物を組み合わせて同時堆積して、単相固溶体である耐プラズマ性コーティングを形成することができる。また、わずかに0モル%を超えるEとわずかに100モル%を下回るYとの混合物を組み合わせて、単相固溶体である耐プラズマ性コーティングを形成することができる。YErの耐プラズマ性コーティングは、0モル%超~100モル%未満のYと、0モル%超~100モル%未満のErとを含むことができる。いくつかの顕著な例には、90~99モル%のYと1~10モル%のEr、80~89モル%のYと11~20モル%のEr、70~79モル%のYと21~30モル%のEr、60~69モル%のYと31~40モル%のEr、50~59モル%のYと41~50モル%のEr、40~49モル%のYと51~60モル%のEr、30~39モル%のYと61~70モル%のEr、20~29モル%のYと71~80モル%のEr、10~19モル%のYと81~90モル%のEr、及び1~10モル%のYと90~99モル%のErを含む。YErの単相固溶体は、約2330℃未満の温度で単斜立方状態を有することができる。
【0073】
有利には、ZrOをY及びErと組み合わせて、ZrO、Y、及びErの混合物を含む単相固溶体を形成することができる(例えば、ErZr)。YErZrの固溶体は、立方晶系、六方晶系、正方晶系及び/又は立方体の蛍石構造を有することができる。YErZrの固溶体は、0モル%超~60モル%のZrOと、0モル%超~99モル%のErと、0モル%超~99モル%のYとを含むことができる。使用することができるZrOのいくつかの顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、30モル%、50モル%、及び60モル%を含む。使用することができるEr及び/又はYのいくつかの顕著な量は、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、及び90モル%を含む。
【0074】
ZrAlの耐プラズマ性コーティングは、0モル%超~60モル%のZrO、0モル%超~99モル%のY、及び0モル%超~60モル%のAlを含むことができる。使用することができるZrOのいくつかの顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、30モル%、50モル%、及び60モル%を含む。使用することができるYのいくつかの顕著な量は、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、及び90モル%を含む。使用することができるAlのいくつかの顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、及び60モル%を含む。一例では、YZrAlの耐プラズマ性コーティングは、42モル%のY、40モル%のZrO、及び18モル%のAlを含み、層状構造を有する。別の一例では、YZrAlの耐プラズマ性コーティングは、63モル%のY、10モル%のZrO、及び27モル%のAlを含み、層状構造を有する。
【0075】
実施形態では、表面層及びY、YAl(例えば、YAl12)、YZr、YZrAl、又はYErの希土類金属含有酸化物層を含む耐プラズマ性コーティングは、低いガス放出速度、約1000V/μmのオーダーの絶縁破壊電圧、約1E-8トール/秒未満の気密性(リークレート)、約600~約950又は約685のビッカース硬さ、スクラッチテストで測定して約75mN~約100mN又は約85mNの接着力、及び室温でのX線回折によって測定して約-1000~-2000MPa(例えば、約-1140MPa)膜応力を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、ALDのために、ジエチルアルミニウムエトキシド、トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、アルミニウムsec-ブトキシド、アルミニウムトリブロミド、アルミニウムトリクロライド、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、又はトリス(ジエチルアミド)アルミニウムから選択される酸化アルミニウム前駆体から形成することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、イットリアであるか、又はイットリアを含み、希土類金属含有酸化物層を形成するために使用される酸化イットリウム前駆体は、ALDのために、トリス(N、N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、又はイットリウム(III)ブトキシドから選択されることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、酸化ジルコニウムを含む。耐プラズマ性コーティングが酸化ジルコニウムを含む場合、酸化ジルコニウム前駆体は、ALDのために、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、又はテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)を含む。これらの酸化ジルコニウム前駆体のうちの1以上は、酸化イットリウム前駆体と共に同時堆積させてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、酸化エルビウムを更に含むことができる。酸化エルビウム前駆体は、ALDのために、トリス-メチルシクロペンタジエニルエルビウム(III)(Er(MeCp))、エルビウムボランアミド(Er(BA))、Er(TMHD)、エルビウム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、又はトリス(ブチルシクロペンタジエニル)エルビウム(III)から選択することができる。
【0080】
図3Bは、一実施形態に係る多孔質セラミックス物品(例えば、ESC用の多孔質セラミックスプラグ)上に耐プラズマ性コーティングを形成する方法350を示す。本方法は、オプションとして耐プラズマ性コーティング用の組成物を選択することによって開始することができる。組成物の選択及び形成方法は、同じエンティティによって、又は複数のエンティティによって実行されてもよい。
【0081】
方法350のブロック352では、(例えば、多孔質ESCプラグの)物品の表面を、酸性溶液を用いて洗浄する。酸性溶液は、方法300のブロック305に関して上述した酸性溶液のいずれであってもよい。その後、物品をALD堆積チャンバにロードすることができる。
【0082】
ブロック355によると、本方法は、ALDを介して(物品内の細孔の細孔壁を含む)物品の表面上にアモルファスHP-Alの第1の層を堆積させるステップを含む。アモルファスHP-Alは、約5nm~約300nmの厚さを有することができる。ブロック360によると、本方法は、ALDを介してアモルファスHP-Alの表面層上にイットリウム含有酸化物前駆体及び別の酸化物前駆体の混合物を同時堆積させる(すなわち、1ステップ内で堆積させる)ことによって第2の層を形成するステップを更に含む。第2の層は、例えば、Al又はEr又はZrOとの単一相内にYを含むことができる。あるいはまた、第2の層は、複数の相(例えば、YAlの相)と、Y-ZrOの固溶体を含む別の相とを含むことができる。
【0083】
上述のように、希土類金属含有酸化物層は、複数の異なる酸化物の混合物を含むことができる。このような希土類金属含有酸化物層を形成するために、前述のイットリア前駆体、酸化エルビウム前駆体、アルミナ前駆体、及び/又は酸化ジルコニウム前駆体の任意の組み合わせを、ALD堆積チャンバに共に導入して、様々な酸化物を同時堆積させ、単相又は多相を有する層を形成することができる。ALD堆積又は同時堆積は、オゾン、水、O-ラジカル、又は酸素供与体として機能し得る他の前駆体の存在下で実行することができる。
【0084】
ブロック370では、追加の層が追加されるべきかどうか(例えば、多層スタックが形成されるべきかどうか)を決定することができる。追加の層を追加する場合、本方法はブロック355に戻ることができ、追加のAl層を形成することができる。さもなければ、本方法はブロック375に進むことができる。
【0085】
ブロック375では、チャンバコンポーネント上の物品(例えば、チャンバコンポーネント)及び耐プラズマ性コーティングの両方の層が加熱される。加熱は、アニーリングプロセス、熱サイクルプロセス、及び/又は半導体処理中の製造ステップを介して行われてもよい。一実施形態では、熱サイクルプロセスは、製造後のチェックとして試験片(クーポン)に対して実行され、品質管理のための割れを検出し、試験片は、部品が処理中に経験する可能性のある最高温度に循環(サイクル)される。熱サイクル温度は、部品が使用される特定の1つのアプリケーション又は複数のアプリケーションに依存している。例えば、(図4A図4Cに示す)セラミックスESCの場合、試験片は、室温と250℃との間で循環させることができる。温度は、物品、表面、及び膜層の構成材料に基づいて選択され、これによってそれらの完全性を維持し、これらのコンポーネントのいずれか又は全てを変形、分解、又は溶融させないようにすることができる。
【0086】
図4A図4Cは、一実施形態に係るESC用のコーティングされた多孔質セラミックスプラグ405を示す。図4Aは、ESC用の多孔質セラミックスプラグ405を示す。多孔質セラミックスプラグ405は、セラミックス材料(例えば、AlO/SiO、AlO/MgO/SiO、SiC、SiN、AlN/SiOなど)で作ることができる。セラミックスプラグ405は、本明細書の実施形態に記載されたような耐プラズマ性コーティングの使用によって性能が改善され得る多孔質セラミックチャンバコンポーネントの一例に過ぎない。本明細書に開示された耐プラズマ性コーティングでコーティングしたときに、他の多孔質セラミックチャンバコンポーネントの性能も改善され得ることが理解されるべきである。本明細書に示されるようなプラグ405は、高いアスペクト比を有する複雑な形状及び穴(すなわち、細孔)を有する表面を有する半導体処理チャンバコンポーネントの図として選択された。セラミックスプラグ405は、腐食性化学物質(例えば、フッ素)に曝される可能性があり、耐プラズマ性コーティングでコーティングされていないときは、プラグとのプラズマ相互作用のために浸食される。
【0087】
セラミックスプラグ405は、複数の細孔を有し、そのうちの1つ408が図4Bに示されている。セラミックスプラグ405は、約5%~約60%の空孔率を有することができる。細孔408(及び/又は細孔によって形成されたセラミックスプラグ405を通るチャネル)は、長さの直径に対する比(L:D)として定義される高いアスペクト比を有することができ、高いアスペクト比は、約3:1~約300:1、又は約50:1~約100:1の範囲とすることができる。細孔408の表面415は、耐プラズマ性コーティング420を有し、これは本明細書で上記の耐プラズマ性コーティングのいずれかに対応することができる。耐プラズマ性コーティング420は、細孔408の表面415上にHP-Al材料などを含んでもよく、それは実施形態において非晶質とすることができる。いくつかの実施形態では、HP-Al層の純度は、約89.99%~約99.99%とすることができる。単層コーティング420は、単層コーティング420があっても、細孔408はその通常の動作中にHeガスを透過可能であるように、細孔408を通る流路412に殆ど又は全く影響を及ぼさない。耐プラズマ性コーティング420は、ALD技術を用いて、セラミックスプラグ405の外面上ならびにセラミックスプラグ405内の細孔408の細孔壁415上に成長又は堆積される。
【0088】
ALD技術は、複雑な幾何学的形状及び細孔の大きなアスペクト比にもかかわらず、細孔408の細孔壁415上に比較的均一な厚さ及びゼロ空孔率の(すなわち、空孔の無い)コンフォーマルなコーティングを可能にする。耐プラズマ性コーティング420は、プラズマ相互作用を低減し、その性能に影響を与えることなくプラグの耐久性を向上させることができる。ALDで堆積された耐プラズマ性コーティング420は、その機能を妨げないように、細孔408及びセラミックスプラグ405の外面の相対的な形状及び幾何学的構成を維持する。同様に、耐プラズマ性コーティングは、他の多孔質セラミックスチャンバコンポーネントに施される場合、コンポーネントの機能を損なわないように、コンポーネントの表面及び細孔壁の形状及び幾何学的構成を維持することができる。コーティングはまた、耐プラズマ性を提供し、多孔質物品の内部に対する耐浸食性及び/又は耐腐食性を改善することができる。
【0089】
耐プラズマ性コーティング420のプラズマに対する耐性は、コーティングされたコンポーネントの操作及びプラズマへの曝露期間全体を通じて、「ミクロン/時間(μm/時)」の単位を有することができる「エッチング速度」(ER)を通して測定される。異なる処理時間の後に測定を行ってもよい。例えば、測定は、処理前、又は約50処理時間に、又は約150処理時間に、又は約200処理時間などとすることができる。ESCプラグ又は任意の他の処理チャンバコンポーネント上に成長又は堆積された耐プラズマ性コーティングの組成の変化は、複数の異なるプラズマ抵抗又は浸食速度値をもたらすことができる。また、様々なプラズマに曝露された単一の組成を有する耐プラズマ性コーティング420は、複数の異なるプラズマ抵抗又は浸食速度値を有することができる。例えば、耐プラズマ性材料は、第1のタイプのプラズマに関連する第1のプラズマ抵抗又は浸食速度、及び第2のタイプのプラズマに関連する第2のプラズマ抵抗又は浸食速度を有することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティング420は、第1の層と、オプションとして第1の層の上にある第2の希土類金属含有酸化物層(図示せず)を含むことができる。第1の層はHP-Alを含むことができ、希土類金属含有酸化物層が存在するとき、第1の層は非晶質HP-Al層を含むことができる。希土類金属含有酸化物層は、単独で又は追加の希土類金属酸化物(例えば、酸化エルビウム、酸化ジルコニウムなど)と共に酸化イットリウムを含むことができる。希土類金属含有酸化物層は、任意の希土類金属含有酸化物材料(例えば、本明細書で上記したもの)を有することができる。各層は、ALDプロセスを用いてコーティングすることができる。ALDプロセスは、その高いアスペクト比にもかかわらず、細孔壁がセラミックスプラグ405の内側にあるにもかかわらず、各細孔408の細孔壁全体にわたって空孔の無い均一な厚さのコンフォーマルなコーティング層を成長させることができ、同時に、多成分コーティングは、セラミックスプラグの細孔を塞がないように十分に薄くすることができることを確実にする。
【0091】
図4Cは、本明細書に記載の実施形態に係る耐プラズマ性コーティングでコーティングされた複数の多孔質セラミックスプラグ405、435を含む基板支持アセンブリ422を示す。基板支持アセンブリ422は、取り付けプレート465、絶縁プレート460、設備プレート458、及び熱伝導ベース455と静電パック430から構成された静電チャックを含み、静電パック430は、接着剤450(例えば、シリコーン接着剤)によって熱伝導性ベース455に接合される。Oリング445を熱伝導性ベース455及び静電パック430の周囲の接着450の周りに配置して、接着剤450を保護してもよい。絶縁プレート460は、例えば、レクソライト(rexolite)又は他のプラスチックとすることができ、接地されたハードウェアの下から(例えば、取り付けプレート465から)電気的絶縁を提供することができる。基板支持アセンブリ422は、静電パック430、接着剤450、熱伝導ベース455、設備プレート458、絶縁プレート460、及び/又は取り付けプレート465を貫通する1以上の孔を含むことができる。1つ又は複数の多孔質セラミックスプラグ435、405が孔に挿入され、腐食性ガス及びプラズマが貫通孔に侵入するのを防ぐことができる。耐プラズマ性コーティングは、1以上の孔に挿入されたセラミックスプラグ405、435内の細孔の細孔壁をコーティングする。取り付けプレート465は、ユーティリティ(例えば、流体、電力線、センサリードなど)を熱伝導ベース460及び静電パック455に経路付け(ルーティング)するための通路を含む。
【0092】
静電パック455は、複数のガス通路(例えば、静電パック430の上面に形成することができる溝、メサ、及び他の表面構造)を更に含むことができる。ガス通路は、前述の細孔を介して熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、He)の供給源に流体結合することができる。動作中、裏面ガスは、制御された圧力でガス通路に供給されて、静電パック430と支持された基板との間の熱伝達を向上させることができる。上述したように、孔は、Heを透過可能な多孔質セラミックスプラグ405、435によって塞がれたHeビアホールとすることができる。多孔質セラミックスプラグはまた、半導体処理チャンバ430を洗浄するために使用される腐食性ガス及びプラズマを少なくとも部分的に透過可能とすることができる。多孔質セラミックスプラグは、腐食性ガスのガス粒子を濾過し、そのような腐食性ガスが基板支持体アセンブリ内に浸透するのを防止することができる。多孔質セラミックスプラグ405、435は更に、二次的なプラズマが基板支持アセンブリ422の孔内に形成されるのを更に防止することができる。
【0093】
静電パック430は、少なくとも1つのクランプ電極440を含む。クランプ電極440(又は静電パック430に配置された他の電極)は更に、処理チャンバ内で処理ガス及び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持するための整合回路を介して1以上のRF電源に結合することができる。多孔質セラミックスプラグ405、435上の耐プラズマ性コーティングは、処理中にプラズマに対して耐腐食性を提供する。
【0094】
以下の実施例は、本明細書に記載された実施形態の理解を助けるために記載されており、本明細書に記載され特許請求される実施形態を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者の知識の範囲内にある、現在知られているか又は後に開発される全ての均等物の置換を含むそのような変形、及び実験設計における処方の変更又は軽微な変更は、本明細書に組み込まれた実施形態の範囲内にあるとみなされるべきである。これらの実施例は、上述の方法300又は方法350を実行することによって達成することができる。
【0095】
実施例1-多孔質セラミック基板上でのHP-Al表面層を形成
図5Aは、本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの形態を示す上面図である。図5Bは、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して画像化された本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの断面図である。アモルファス酸化アルミニウム(Al)コーティングの耐プラズマ性コーティング520を、アルミナ及び二酸化ケイ素から構成される多孔質プラグ515上に堆積させた。Alの耐プラズマ性コーティング520は、原子層堆積を使用して多孔質プラグ515上に堆積され、約40nmの厚さを有する。耐プラズマ性コーティング用の前駆体は、1~数mトールから1~数トールのスケールの圧力及び約100~250℃の温度で基板に導入された。図示のように、コーティング520は、多孔質プラグ515の細孔を塞がない。
【0096】
図6は、新しい多孔質プラグ505、第1の使用済み多孔質プラグ510、及び第2の使用済み多孔質プラグ515に対するエネルギー分散型X線微量分析の結果を示す。この結果は、新しい多孔質プラグと比較して、ケイ素(Si)の著しく低い含有量と、フッ素(F)の高い含有量を示している。このようなケイ素の喪失及びフッ素の添加は、本明細書に記載されているように、多孔質プラグ内の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティングを施すことによって緩和される。
【0097】
前述の説明は、本発明のいくつかの実施形態の良好な理解を提供するために、具体的なシステム、コンポーネント、方法等の例などの多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施することができることが当業者には明らかであろう。他の例において、周知のコンポーネント又は方法は、本発明を不必要に不明瞭にしないために、詳細には説明しないか、単純なブロック図形式で提示されている。従って、説明された具体的な詳細は、単なる例示である。特定の実装では、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、依然として本発明の範囲内にあることが理解される。
【0098】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への参照は、その実施形態に関連して記載された特定の構成、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。従って、本明細書を通じて様々な場所における「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。また、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意味することを意図している。「約」又は「ほぼ」という用語が本明細書で使用される場合、これは提示される公称値が±10%以内で正確であることを意味することを意図している。
【0099】
本明細書内の本方法の操作は、特定の順序で図示され説明されているが、特定の操作を逆の順序で行うように、又は特定の操作を少なくとも部分的に他の操作と同時に実行するように、各方法の操作の順序を変更することができる。別の一実施形態では、異なる操作の命令又は副操作は、断続的及び/又は交互の方法とすることができる。
【0100】
なお、上記の説明は例示であり、限定的ではないことを意図していることが理解されるべきである。上記の説明を読み理解することにより、多くの他の実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を与える均等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6