(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】金属張積層板及び回路基板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/088 20060101AFI20220622BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220622BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220622BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B32B15/088
B32B27/34
C08G73/10
H05K1/03 610N
H05K1/03 630D
(21)【出願番号】P 2018186216
(22)【出願日】2018-09-29
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳樹
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024265(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061727(WO,A1)
【文献】特開2014-195947(JP,A)
【文献】特開2017-144730(JP,A)
【文献】特開平11-291392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08J 5/00- 5/02
C08J 5/12- 5/22
C08G 73/00-73/26
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリイミド層を含む樹脂積層体と、前記樹脂積層体の少なくとも片面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記樹脂積層体は、非熱可塑性ポリイミドから構成される少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミドから構成される少なくとも4つの熱可塑性ポリイミド層を含み、
前記樹脂積層体の最外層は、前記熱可塑性ポリイミド層からなり、
前記非熱可塑性ポリイミド層は、前記熱可塑性ポリイミド層を介して積層されており、
前記非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、全ジアミン残基の100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が20モル部以上であることを特徴とする金属張積層板。
【化1】
[式(1)において、連結基Zは単結合又は-COO-を示し、Yは独立にハロゲン元素若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素基又は炭素数1~3のアルコキシ基あるいは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。]
【請求項2】
前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも2つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、前記一般式(1)において、Yが炭素数1~3の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基であり、nが1又は2の整数であるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を70モル部以上98モル部以下の範囲内で含有するとともに、下記一般式(C1)~(C4)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を2~15モル部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の金属張積層板。
【化2】
[式(C1)~(C4)において、R
2は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を示し、連結基A’は独立に-O-、-SO
2-、-CH
2-又は-C(CH
3)
2-から選ばれる2価の基を示し、連結基X1は独立に-CH
2-、-O-CH
2-O-、-O-C
2H
4-O-、-O-C
3H
6-O-、-O-C
4H
8-O-、-O-C
5H
10-O-、-O-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-又は-SO
2-を示し、n
3は独立に1~4の整数を示し、n
4は独立に0~4の整数を示すが、式(C3)において、連結基A’が、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-又は-SO
2-を含まない場合、n
4のいずれかは1以上である。]
【請求項3】
前記非熱可塑性ポリイミドの少なくとも2つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を30~60モル部の範囲内、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を40~70モル部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、前記一般式(1)において、Yが炭素数1~3の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基であり、nが1又は2の整数であるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を70モル部以上含有するとともに、前記一般式(C1)~(C4)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を2~15モル部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項5】
前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を30~60モル部の範囲内、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を40~70モル部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項6】
前記樹脂積層体の最外層の熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、 下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が60モル部以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【化3】
[式(B1)~(B7)において、R
1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO
2-、-COO、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n
1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。]
【請求項7】
前記非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度がいずれも33%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項8】
前記樹脂積層体は、全体の厚みが25~180μmの範囲内であり、前記樹脂積層体の全体の厚みに対して、前記非熱可塑性ポリイミド層の総厚みが50~97%の範囲内であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項9】
前記樹脂積層体は、その厚み方向の中心を基準にして、厚み方向に対称な層構造を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線回路加工してなる回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品として有用な金属張積層板及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
【0003】
上述した高密度化に加えて、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に、伝送経路における伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。そのため、今後はFPCにおいても、伝送損失の低減が重要となる。高周波信号伝送に対応するために、FPC材料として汎用されているポリイミドの代わりに、より低誘電率、低誘電正接の液晶ポリマーを誘電体層とするものが用いられている。しかしながら、液晶ポリマーは、誘電特性に優れているものの、耐熱性や金属層との接着性に改善の余地がある。
【0004】
また、フッ素系樹脂も低誘電率、低誘電正接を示すポリマーとして知られている。例えば、高周波信号伝送への対応が可能で接着性に優れたFPC材料として、フッ素系樹脂層の両面に、それぞれ、熱可塑性ポリイミド層と高耐熱性ポリイミド層とを有するポリイミド接着フィルムを貼り合わせてなる絶縁フィルムが提案されている(特許文献1)。特許文献1の絶縁フィルムは、フッ素系樹脂を使用しているため、誘電特性の点では優れているが、寸法安定性に課題があり、特に、FPCに適用した場合、エッチングによる回路加工の前後の寸法変化が大きくなることが懸念される。そのため、フッ素系樹脂の厚みを厚くすること及び厚み比率を高くすることが困難となる。
【0005】
また、二つの片面銅張積層板のポリイミド樹脂面を貼り合わせることによって、絶縁樹脂層の厚みが50μm以上の両面銅張積層板を製造することも提案されている(例えば、特許文献2、3)。しかしながら、特許文献2及び3では、高周波伝送への対応については考慮されておらず、厚膜の絶縁樹脂層を採用する場合のポリイミドの構成についても検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-24265号公報
【文献】特許第5886027号公報
【文献】特許第6031396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、絶縁樹脂層の厚みが十分に確保され、寸法安定性に優れ、電子機器の高性能化に伴う高周波伝送への対応を可能とする金属張積層板及び回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属張積層板は、複数のポリイミド層を含む樹脂積層体と、前記樹脂積層体の少なくとも片面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板である。本発明の金属張積層板において、前記樹脂積層体は、非熱可塑性ポリイミドから構成される少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミドから構成される少なくとも4つの熱可塑性ポリイミド層を含んでいる。そして、本発明の金属張積層板における前記樹脂積層体の最外層は、前記熱可塑性ポリイミド層からなり、前記非熱可塑性ポリイミド層は、前記熱可塑性ポリイミド層を介して積層されており、前記非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、全ジアミン残基の100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が20モル部以上である。
【0009】
【0010】
式(1)において、連結基Zは単結合又は-COO-を示し、Yは独立にハロゲン元素若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素基又は炭素数1~3のアルコキシ基あるいは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。
【0011】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも2つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、前記一般式(1)において、Yが炭素数1~3の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基であり、nが1又は2の整数であるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を70モル部以上98モル部以下の範囲内で含有してもよく、下記一般式(C1)~(C4)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を2~15モル部の範囲内で含有してもよい。
【0012】
【0013】
式(C1)~(C4)において、R2は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を示し、連結基A’は独立に-O-、-SO2-、-CH2-又は-C(CH3)2-から選ばれる2価の基を示し、連結基X1は独立に-CH2-、-O-CH2-O-、-O-C2H4-O-、-O-C3H6-O-、-O-C4H8-O-、-O-C5H10-O-、-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は-SO2-を示し、n3は独立に1~4の整数を示し、n4は独立に0~4の整数を示すが、式(C3)において、連結基A’が、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は-SO2-を含まない場合、n4のいずれかは1以上である。
【0014】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミドの少なくとも2つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を30~60モル部の範囲内、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を40~70モル部の範囲内で含有してもよい。
【0015】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、前記一般式(1)において、Yが炭素数1~3の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基であり、nが1又は2の整数であるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を70モル部以上含有するとともに、前記一般式(C1)~(C4)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を2~15モル部の範囲内で含有してもよい。
【0016】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を30~60モル部の範囲内、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を40~70モル部の範囲内で含有してもよい。
【0017】
本発明の金属張積層板において、前記樹脂積層体の最外層の熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が60モル部以上であってもよい。
【0018】
【0019】
式(B1)~(B7)において、R1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO2-、-COO、-CH2-、-C(CH3)2-、NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
【0020】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度がいずれも33%以下であってもよい。
【0021】
本発明の金属張積層板において、前記樹脂積層体は、全体の厚みが25~180μmの範囲内であり、前記樹脂積層体の全体の厚みに対して、前記非熱可塑性ポリイミド層の総厚みが50~97%の範囲内であってもよい。
【0022】
本発明の金属張積層板において、前記樹脂積層体は、その厚み方向の中心を基準にして、厚み方向に対称な層構造を有するものであってもよい。
【0023】
本発明の回路基板は、上記いずれかの金属張積層板の前記金属層を配線回路加工してなるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の金属張積層板は、十分な厚みを有するとともに、寸法安定性の確保が可能である。また、10GHz以上という高周波信号を伝送する回路基板等への適用した際に、伝送損失を低減することが可能となる。従って、回路基板において信頼性と歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】エッチング後寸法変化率の測定に使用した位置測定用ターゲットの説明図である。
【
図2】エッチング後寸法変化率の測定に使用した評価サンプルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
[金属張積層板]
本実施の形態の金属張積層板は、複数のポリイミド層を含む樹脂積層体と、この樹脂積層体の少なくとも片面に積層された金属層と、を備えている。
【0028】
<樹脂積層体>
樹脂積層体は、非熱可塑性ポリイミドから構成される少なくとも3つの非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミドから構成される少なくとも4つの熱可塑性ポリイミド層を含んでいる。樹脂積層体の最外層は、熱可塑性ポリイミド層からなり、非熱可塑性ポリイミド層は、熱可塑性ポリイミド層を介して積層されている。
ここで、熱可塑性ポリイミドとは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が1.0×108Pa未満であるポリイミドをいう。また、非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上であるポリイミドをいう。
なお、樹脂積層体は、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層以外の任意の樹脂層を有していてもよい。
【0029】
樹脂積層体の全体の厚みは、好ましくは25~180μm、より好ましくは40~180μmの範囲内、更に好ましくは50~160μmの範囲内である。樹脂積層体の全体の厚みが25μmに満たないと十分な高周波伝送特性が得られなくなるおそれがあり、180μmを超えると寸法安定性や屈曲性等において問題が生じるおそれがある。
【0030】
また、樹脂積層体は、樹脂積層体の全体の厚みに対する非熱可塑性ポリイミド層の厚み(なお、樹脂積層体に非熱可塑性ポリイミド層が複数層含まれる場合は、複数層の合計の厚みを意味する)の比率が、50~97%の範囲内であり、70~97%の範囲内が好ましく、75~95%の範囲内であることがより好ましい。樹脂積層体の全体の厚みに対する非熱可塑性ポリイミド層の厚みの比率を上記範囲内に制御することによって、優れた高周波伝送特性を有するFPC等の回路基板を製造できる。樹脂積層体の全体の厚みに対する非熱可塑性ポリイミド層の厚みの比率が50%に満たないと、絶縁樹脂層における非熱可塑性ポリイミド層の割合が小さくなり過ぎるため、反りや寸法安定性の低下などの不具合が生じ、97%を超えると、熱可塑性ポリイミド層が薄くなるため、樹脂積層体と金属層との接着信頼性が低下しやすくなる。
【0031】
<非熱可塑性ポリイミド層>
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものである。非熱可塑性ポリイミド層を少なくとも3つ含むことによって、例えば樹脂積層体の厚みを厚くする場合においても、反りの発生や寸法安定性の低下を防止することがきる。このような観点から、樹脂積層体の厚み方向の中心を基準にして、厚み方向に対称な層構造を有することが好ましい。また、後述する特定のモノマーによって形成された非熱可塑性ポリイミドから構成される非熱可塑性ポリイミド層を、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上有することで、樹脂積層体の寸法安定性の担保と誘電特性を向上させることができる。
なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。また、本発明において、「ジアミン化合物」とは、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR3R4(ここで、R3,R4は、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0032】
(ジアミン残基)
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、ジアミン残基として、全ジアミン残基の100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を20モル部以上、好ましくは70~95モル部の範囲内、より好ましくは80~90モル部の範囲内で含有することがよい。
【0033】
【0034】
一般式(1)において、連結基Zは単結合又は-COO-を示し、Yは独立にハロゲン元素若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素基又は炭素数1~3のアルコキシ基あるいは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。「独立に」とは、上記式(1)において、複数の置換基Y、整数p、qが同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0035】
一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基(以下、「ジアミン残基(1)」と記すことがある)は、秩序構造を形成しやすく、寸法安定性を高めることができる。
【0036】
ジアミン(1)としては、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)等を挙げることができる。
【0037】
また、樹脂積層体の誘電特性を向上させるため、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、前記一般式(1)において、Yが炭素数1~3の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基であり、nが1又は2の整数であるジアミン化合物(以下、「ジアミン(A1)」と記すことがある)から誘導されるジアミン残基が好ましい。
【0038】
ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基(以下、「ジアミン残基(A1)」と記すことがある)は、2つ又は3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン残基(A1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ガス透過性が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。ここで、連結基Zとしては、単結合が好ましい。
【0039】
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、ジアミン残基(A1)を、全ジアミン残基の100モル部に対して、好ましくは70モル部以上、より好ましくは70~90モル部の範囲内、さらに好ましくは80~90モル部の範囲内で含有することがよい。ジアミン残基(A1)を上記範囲内の量で含有することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されやすくなり、ガス透過性が低く、低吸湿性、かつ低誘電正接である非熱可塑性ポリイミドが得られやすい。一方でジアミン残基(A1)が90モル部を超えるとフィルムの伸度が低下することがある。
【0040】
また、非熱可塑性ポリイミドは、一般式(C1)~(C4)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有することが好ましい。ジアミン(C1)~(C4)は、嵩高い置換基や屈曲性の部位を有するので、ポリイミドに柔軟性を付与することができる。また、ジアミン(C1)~(C4)は、気体透過性を向上させることができるため、金属張積層板製造時における発泡を抑制する効果がある。このような観点から、全ジアミン残基の100モル部に対し、ジアミン(C1)~(C4)から選ばれる1種以上のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を2~15モル部の範囲内で含有することが好ましい。ジアミン(C1)~(C4)から誘導されるジアミン残基が2モル部未満であると、金属張積層板を製造した場合に発泡が発生することがある。またジアミン(C1)~(C4)から誘導されるジアミン残基が15モル部を超えると分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となる。
【0041】
【0042】
上記式(C1)~(C4)において、R2は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を示し、連結基A’は独立に-O-、-SO2-、-CH2-又は-C(CH3)2-から選ばれる2価の基、好ましくは-O-、-CH2-又は-C(CH3)2-から選ばれる2価の基を示し、連結基X1は独立に-CH2-、-O-CH2-O-、-O-C2H4-O-、-O-C3H6-O-、-O-C4H8-O-、-O-C5H10-O-、-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は-SO2-を示し、n3は独立に1~4の整数を示し、n4は独立に0~4の整数を示すが、式(C3)において、連結基A’が、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は-SO2-を含まない場合、n4のいずれかは1以上である。ただし、n3=0の場合、式(C1)中の2つのアミノ基はパラ位ではないものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(C1)~(C4)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A’、複数の連結基X1、複数の置換基R2若しくは複数のn3、n4が、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(C1)~(C4)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR3R4(ここで、R3,R4は、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0043】
一般式(C1)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエンなどを挙げることができる。
【0044】
一般式(C2)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば、2,4-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルフェニル)メタンなどを挙げることができる。
【0045】
一般式(C3)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼンなどを挙げることができる。
【0046】
一般式(C4)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどを挙げることができる。
【0047】
以上のように、非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基を70モル部以上、好ましくは70~90モル部の範囲内、ジアミン(C1)~(C4)から誘導されるジアミン残基を2~15モル部の範囲内で含有するように制御することがよい。
【0048】
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるその他のジアミン残基としては、例えば、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-トリフルオロ-4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)2,3,6-トリメチル-ベンゼン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシメチル)プロパン、1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)メタン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)エタン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)ブタン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)ペンタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)2-フェニル-ベンゼン、1,4-ビス(2-トリフルオロメチル-4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、2-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0049】
(テトラカルボン酸残基)
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基として、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基並びにピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することが好ましい。
【0050】
BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)及びTAHQから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「TAHQ残基」ともいう。)は、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。しかし、一方でBPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、イミド化後のCTEを増大させるとともに、ガラス転移温度を低くして耐熱性を低下させる傾向になる。
【0051】
このような観点から、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドが、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、BPDA残基及びTAHQ残基の合計を好ましくは30モル部以上60モル部以下の範囲内、より好ましくは40モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するように制御する。BPDA残基及びTAHQ残基の合計が30モル部未満では、ポリマーの秩序構造の形成が不十分となって、耐吸湿性が低下したり、誘電正接の低減が不十分となり、60モル部を超えると、CTEの増加や耐熱性が低下したりするおそれがある。
【0052】
また、ピロメリット酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「PMDA残基」ともいう。)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「NTCDA残基」ともいう。)は、剛直性を有するため、面内配向性を高め、CTEを低く抑えるとともに、面内リタデーション(RO)の制御や、ガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。一方で、PMDA残基は、分子量が小さいため、その量が多くなり過ぎると、ポリマーのイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して吸湿性が大きくなってしまい、分子鎖内部の水分の影響により誘電正接が増加する。また、NTCDA残基は、剛直性が高いナフタレン骨格によりフィルムが脆くなりやすく、弾性率を増大させる傾向になる。
そのため、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、PMDA残基及びNTCDA残基の合計を好ましくは40モル部以上70モル部以下の範囲内、より好ましくは50モル部以上60モル部以下の範囲内、さらに好ましくは50~55モル部の範囲内で含有する。PMDA残基及びNTCDA残基の合計が40モル部未満では、CTEが増加したり、耐熱性が低下したりするおそれがあり、70モル部を超えると、ポリマーのイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して低吸湿性が損なわれ、誘電正接が増加するおそれやフィルムが脆くなりフィルムの自己支持性が低下するおそれがある。
【0053】
また、BPDA残基及びTAHQ残基の少なくとも1種並びにPMDA残基及びNTCDA残基の少なくとも1種の合計が、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して80モル部以上、好ましくは90モル部以上であることがよい。
【0054】
また、BPDA残基及びTAHQ残基の少なくとも1種と、PMDA残基及びNTCDA残基少なくとも1種のモル比{(BPDA残基+TAHQ残基)/(PMDA残基+NTCDA残基)}を0.4以上1.5以下の範囲内、好ましくは0.6以上1.3以下の範囲内、より好ましくは0.8以上1.2以下の範囲内とし、CTEとポリマーの秩序構造の形成を制御することがよい。
【0055】
PMDA及びNTCDAは、剛直骨格を有するため、他の一般的な酸無水物成分に比べて、ポリイミド中の分子の面内配向性の制御が可能であり、熱膨張係数(CTE)の抑制とガラス転移温度(Tg)の向上効果がある。また、BPDA及びTAHQは、PMDAと比較し分子量が大きいため、仕込み比率の増加によりイミド基濃度が低下することで、誘電正接の低下や吸湿率の低下に効果がある。一方でBPDA及びTAHQの仕込み比率が増加すると、ポリイミド中の分子の面内配向性が低下し、CTEの増加に繋がる。さらに分子内の秩序構造の形成が進み、ヘイズ値が増加する。このような観点から、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量は、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、40~70モル部の範囲内、好ましくは50~60モル部の範囲内、より好ましくは50~55モル部の範囲内がよい。原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量が40モル部未満であると、分子の面内配向性が低下し、低CTE化が困難となり、またTgの低下による加熱時におけるフィルムの耐熱性や寸法安定性が低下する。一方、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量が70モル部を超えると、イミド基濃度の増加により吸湿率が悪化し、弾性率を増大させる傾向になる。
【0056】
また、BPDA及びTAHQは、分子運動の抑制やイミド基濃度の低下による低誘電正接化、吸湿率低下に効果があるが、イミド化後のポリイミドフィルムとしてのCTEを増大させる。このような観点から、BPDA及びTAHQの合計の仕込み量は、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、30~60モル部の範囲内、好ましくは40~50モル部の範囲内、より好ましくは40~45モル部の範囲内がよい。
【0057】
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれる、上記BPDA残基、TAHQ残基、PMDA残基、NTCDA残基以外のテトラカルボン酸残基としては、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0058】
非熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよい。
【0059】
なお、非熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、ポリイミドフィルムの高温環境下での寸法精度を向上させることができるため好ましい。
【0060】
非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、33%以下であることが好ましく、32%以下であることがより好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)2-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が33%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。上記酸無水物とジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、非熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御することで、イミド基濃度低下に伴うCTEの増加を抑制し、低吸湿性を担保している。
【0061】
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0062】
非熱可塑性ポリイミド層の厚みは、ベース層としての機能を確保し、且つ製造時および熱可塑性ポリイミド塗工時の搬送性の観点から、6μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましく、9μm以上50μm以下の範囲内がより好ましい。非熱可塑性ポリイミド層の厚みが上記の下限値未満である場合、電気絶縁性やハンドリング性が不十分となり、上限値を超えると、生産性が低下する。
【0063】
非熱可塑性ポリイミド層は、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上であることが好ましい。
【0064】
また、反りを抑制する観点から、非熱可塑性ポリイミド層の熱膨張係数は、1pm/K以上30ppm/K以下の範囲内、好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内にあることがよい。
【0065】
また、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドには、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
【0066】
<熱可塑性ポリイミド層>
熱可塑性ポリイミド層は、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含む熱可塑性ポリイミドから構成されるものであり、樹脂積層体における非熱可塑性ポリイミド層同士の接着層としての機能を有する。また金属層との接着層としての機能を有するため、樹脂積層体の最外層に位置し、更に後述する特定のモノマーによって形成された熱可塑性ポリイミドから構成される熱可塑性ポリイミド層とすることで、低粗度銅箔に対しても接着性を向上させ、ガス透過性を低減させ、優れた長期耐熱接着性を備えることができる。熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、高膨張性であり、好適な接着層とするために、ガラス転移温度(Tg)が、例えば360℃以下であるものが好ましく、200~320℃の範囲内にあるものがより好ましい。
【0067】
(テトラカルボン酸残基)
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドに用いるテトラカルボン酸残基としては、上記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドにおけるテトラカルボン酸残基として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0068】
(ジアミン残基)
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
【0069】
【0070】
式(B1)~(B7)において、R1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO2-、-COO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR1若しくは複数のn1が、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0071】
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-CO-、-SO2-、-S-が好ましい。
【0072】
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0073】
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0074】
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0075】
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0076】
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0077】
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-、-CONH-が好ましい。
【0078】
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
【0079】
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0080】
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0081】
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH3)2-、-O-、-SO2-、-CO-が好ましい。
【0082】
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
【0083】
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0084】
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
【0085】
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン(B1)~ジアミン(B7)から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を60モル部以上、好ましくは60モル部以上99モル部以下の範囲内、より好ましくは70モル部以上95モル部以下の範囲内で含有することがよい。ジアミン(B1)~ジアミン(B7)は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。ジアミン(B1)~ジアミン(B7)の合計量が全ジアミン成分の100モル部に対して60モル部未満であるとポリイミド樹脂の柔軟性不足で十分な熱可塑性が得られない。
【0086】
また、熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、ジアミン残基(A1)も好ましい。ジアミン(A1)及びジアミン(A1)については、非熱可塑性ポリイミドの説明で述べたとおりである。ジアミン残基(A1)は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。更に、熱可塑性ポリイミドの原料として使用することで、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
【0087】
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、ジアミン残基(A1)を、好ましくは1モル部以上40モル部以下の範囲内、より好ましくは5モル部以上30モル部以下の範囲内で含有してもよい。ジアミン残基(A1)を上記範囲内の量で含むことによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、ガス透過性及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
【0088】
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、ジアミン(A1)、(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。
【0089】
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0090】
なお、熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、ポリイミドフィルムの高温環境下での寸法精度を向上させることができる。
【0091】
熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、33%以下であることが好ましく、32%以下であることがより好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)2-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が33%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。上記ジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御することで、イミド基濃度低下に伴うCTEの増加を抑制し、低吸湿性を担保している。
【0092】
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0093】
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、例えば回路基板の絶縁樹脂における接着層となるため、銅の拡散を抑制するために完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出される。
【0094】
熱可塑性ポリイミド層の厚みは、接着機能を確保する観点から、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上5μm以下の範囲内がより好ましい。熱可塑性ポリイミド層の厚みが上記の下限値未満である場合、接着性が不十分となり、上限値を超えると、寸法安定性が悪化する傾向となる。
【0095】
熱可塑性ポリイミド層は、反りを抑制する観点から、熱膨張係数が、30ppm/K以上、好ましくは30ppm/K以上100ppm/K以下の範囲内、より好ましくは30ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内にあることがよい。
【0096】
また、熱可塑性ポリイミド層に用いる樹脂には、ポリイミドの他に、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
【0097】
(ポリイミドの合成)
樹脂積層体を構成するポリイミドは、上記酸無水物及びジアミンを溶媒中で反応させ、前駆体樹脂を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶剤の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0098】
ポリイミドの合成において、上記酸無水物及びジアミンはそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
【0099】
合成された前駆体は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0100】
<金属層>
金属層としては、金属箔を好ましく使用できる。金属箔の材質に特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。
【0101】
金属層として使用する金属箔は、表面に、例えば防錆処理、サイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等の表面処理が施されていてもよい。
【0102】
本実施の形態の金属張積層板において、例えばFPCの製造に用いる場合の金属層の好ましい厚みは3~50μmの範囲内であり、より好ましくは5~30μmの範囲内であるが、回路パターンの線幅を細線化するために、5~20μmの範囲内が最も好ましい。金属層の厚みは、高周波伝送における導体損失の増大を抑制する観点では厚い方が好ましいが、一方で、厚みが大きくなり過ぎると微細化への適用が困難になるとともに、屈曲性が低下して回路加工した場合の配線層と絶縁樹脂層との接着性が損なわれるおそれがある。このようなトレード・オフの関係を考慮して、金属層の厚みは上記範囲内とすることがよい。
【0103】
また、高周波伝送特性と、樹脂積層体に対する接着性を両立させる観点から、金属層の熱可塑性ポリイミド層と接する表面の十点平均粗さ(Rz)は、1.2μm以下であり、0.05~1.0μmの範囲内であることが好ましい。同様の観点から、金属層の熱可塑性ポリイミド層と接する表面の算術平均高さ(Ra)は、0.2μm以下であることが好ましい。
【0104】
本実施の形態の金属張積層板では、金属層としては、市販されている銅箔を用いることができる。その具体例としては、福田金属箔粉工業社製の銅箔CF-T49A-DS-HD(商品名)、三井金属鉱業株式会社製の銅箔TQ-M4-VSP(商品名)、JX金属株式会社製の銅箔GHY5-HA-V2(商品名)、同BHY(X)-HA-V2(商品名)などが挙げられる。
【0105】
<金属張積層板の製造方法>
金属張積層板は、例えば以下の方法1、方法2又は方法3で製造できる。
[方法1]
中間層(B)となるポリイミドシートを、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層(P1)と、第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層(P2)との間に配置して貼り合わせ、熱圧着させる方法。
[方法2]
中間層(B)となるポリアミド酸の溶液を、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層(P1)、又は第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層(P2)のいずれか片方、または両方に、所定の厚みで塗布・乾燥した後、塗布膜の側を貼り合わせて熱圧着させる方法。
[方法3]
金属層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミド層を形成して片面金属張積層板を調製し、片面金属張積層板の絶縁樹脂層に金属層を貼り合わせ、熱圧着させる方法。
【0106】
方法1で用いるポリイミドシートは、例えば、(1)任意の支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥し、熱処理してイミド化した後、支持基材から剥がしてポリイミドシートとする方法、(2)任意の支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、熱処理してイミド化してポリイミドシートとする方法、(3)支持基材に、上記接着性ポリイミドの溶液を塗布・乾燥した後、支持基材から剥がしてポリイミドシートとする方法、などによって製造できる。
また、上記において、ポリイミド溶液(又はポリアミド酸溶液)を支持基材や絶縁樹脂層上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0107】
以上のようにして得られる本実施の形態の金属張積層板(C)は、第1の金属層(M1)及び/又は第2の金属層(M2)をエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCなどの回路基板を製造することができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0109】
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0110】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×108Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×108Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
【0111】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0112】
[吸湿率の測定]
ポリイミドフィルムの試験片(幅4cm×長さ25cm)を2枚用意し、80℃で1時間乾燥した。乾燥後直ちに23℃/50%RHの恒温恒湿室に入れ、24時間以上静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸湿率(重量%)=[(吸湿後重量-乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0113】
[銅箔の表面粗さの測定]
1)二乗平均粗さ(Rq)の測定
触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、商品名;サーフコーダET-3000)を用い、Force;100μN、Speed;20μm、Range;800μmの測定条件によって求めた。なお、表面粗さの算出は、JIS-B0601:2001に準拠した方法により算出した。
2)算術平均高さ(Ra)の測定
触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、商品名;サーフコーダET-3000)を用い、Force;100μN、Speed;20μm、Range;800μmの測定条件によって求めた。なお、表面粗さの算出は、JIS-B0601:1994に準拠した方法により算出した。
3)十点平均粗さ(Rz)の測定
触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、商品名;サーフコーダET-3000)を用い、Force;100μN、Speed;20μm、Range;800μmの測定条件によって求めた。なお、表面粗さの算出は、JIS-B0601:1994に準拠した方法により算出した。
【0114】
[金属析出処理した銅箔の表面の金属元素の測定]
銅箔の分析面裏面をマスキングした上で、1N-硝酸にて分析面を溶解し、100mLに定容した後にパーキンエルマー社製誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)Optima4300を用いて測定した。
【0115】
[誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名E8363C)ならびにスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用いて、所定の周波数における樹脂シートの誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0116】
[イミド基濃度の計算]
イミド基部(-(CO)2-N-)の分子量をポリイミドの構造全体の分子量で除した値をイミド基濃度とした。
【0117】
[寸法変化率の測定]
80mm×80mmのサイズの金属張積層板を準備した。この積層板の金属層の上に、ドライフィルムレジストを設けた後、露光、現像して、
図1に示すように、縦方向(MD)及び横方向(TD)のそれぞれ50mm間隔で5箇所を測定可能とする16個の直径1mmのレジストパターンを形成し、位置測定用ターゲットを調製した。
温度;23±2℃、相対湿度;50±5%の雰囲気中にて、位置測定用ターゲットにおけるレジストパターンのターゲット間の距離を測定した後、レジストパターン開孔部の金属層の露出部分をエッチング(エッチング液の温度;40℃以下、エッチング時間;10分以内)により除去し、
図2に示すように、16個の金属層残存点を有する評価サンプルを調製した。この評価サンプルを温度;23±2℃、相対湿度;50±5%の雰囲気中にて24±4時間静置後、金属層残存点間の距離を測定した。縦方向及び横方向の各5箇所の常態に対する寸法変化率を算出し、各々の平均値をもってエッチング後寸法変化率とする。
次に、評価サンプルを120℃のオーブンで1時間加熱処理し、その後の金属層残存点間の距離を測定した。縦方向及び横方向の各5箇所の加熱後の寸法変化率を算出し、各々の平均値をもって加熱後寸法変化率とする。
各寸法変化率は下記数式により出した。
エッチング後寸法変化率(%)=(B-A)/A × 100
A ; レジスト現像後のターゲット間の距離
B ; 金属層エッチング後の金属層残存点間の距離
加熱後寸法変化率(%)=(C-B)/B × 100
B ; 金属層エッチング後の金属層残存点間の距離
C ; 加熱後の金属層残存点間の距離
【0118】
合成例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BTDA:3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DSDA:3,3',4,4'‐ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
p-PDA:p-フェニレンジアミン
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0119】
実施例及び参考例に用いた銅箔は、以下の銅箔を示す。
銅箔1:電解銅箔、厚さ;12μm、Rz;0.5μm、Ra;0.1μm、Rq;0.2μm、粗化処理の粗化高さの最大値;0.25μm、Ni;0.01mg/dm2、Zn;0.11mg/dm2、Cr;0.14mg/dm2、Co;0.36mg/dm2、Mo;0.23mg/dm2)
【0120】
(合成例1)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、312gのDMAcを入れた。この反応容器に14.67gのDAPE(0.073モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、23.13gのBTDA(0.072モル)を加えた。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液a(溶液粘度;2,960mPa・s)を調製した。
【0121】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(Rz;2.1μm)に、ポリアミド酸の樹脂溶液aを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムa(熱可塑性、Tg;283℃、CTE;53ppm/K、吸湿率;1.3重量%)を調製した。
【0122】
(合成例2)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、312gのDMAcを入れた。この反応容器に球状フィラー(シリカ、平均粒径1.2μm、アドマテックス社製、「SE4050」)を0.6.60g加え、超音波分散装置にて3時間分散させた。この溶液に14.67gのDAPE(0.073モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、23.13gのBTDA(0.072モル)を加えた。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液b(溶液粘度;3,160mPa・s、シリカ含有量;10体積%)を調製した。
【0123】
(合成例3)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、308gのDMAcを入れた。この反応容器に27.14gのBAPP(0.066モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、14.86gのPMDA(0.068モル)を加えた。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液c(溶液粘度;2,850mPa・s)を調製した。
【0124】
ポリアミド酸の樹脂溶液cを用いて、合成例1と同様にして、ポリイミドフィルムc(熱可塑性、Tg;312℃、CTE;55ppm/K、吸湿率;0.5重量%)を調製した。
【0125】
(合成例4)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、250gのDMAcを入れた。この反応容器に2.561gのp-PDA(0.0237モル)及び16.813gのDAPE(0.0840モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、18.501gのPMDA(0.0848モル)及び6.239gのBPDA(0.0212モル)を加えた。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液d(溶液粘度;29,500mPa・s)を調製した。
【0126】
ポリアミド酸の樹脂溶液dを用いて、硬化後の厚みを約50μmとしたこと以外、合成例1と同様にして、ポリイミドフィルムd(非熱可塑性、Tg;375℃、CTE;17ppm/K、吸湿率;0.9重量%)を調製した。
【0127】
(合成例5)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、255gのDMAcを入れた。この反応容器に22.13gのTPE-R(0.076モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、16.17gのDSDA(0.047モル)及び6.78gのPMDA(0.031モル)を加えた。その後、2時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液e(溶液粘度;2,640mPa・s)を調製した。
【0128】
ポリアミド酸の樹脂溶液eを用いて、合成例1と同様にして、ポリイミドフィルムe(熱可塑性、Tg;277℃、CTE;61ppm/K、吸湿率;0.9重量%)を調製した。
【0129】
(合成例6)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、200gのDMAcを入れた。この反応容器に1.335gのm-TB(0.0063モル)及び10.414gのTPE-R(0.0356モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、0.932gのPMDA(0.0043モル)及び11.319gのBPDA(0.0385モル)を加えた。その後、2時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液f(溶液粘度1,420mPa・s)を調製した。
【0130】
ポリアミド酸の樹脂溶液fを用いて、合成例1と同様にして、ポリイミドフィルムf(熱可塑性、Tg;256℃、CTE;52ppm/K、吸湿率;0.4重量%)を調製した。
【0131】
(合成例7)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、250gのDMAcを入れた。この反応容器に12.323gのm-TB(0.0580モル)及び1.886gのTPE-R(0.0064モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、8.314gのPMDA(0.0381モル)及び7.477gのBPDA(0.0254モル)を加えた。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液g(溶液粘度;31,500mPa・s)を調製した。
【0132】
ポリアミド酸の樹脂溶液gを用いて、硬化後の厚みを約50μmとしたこと以外、合成例1と同様にして、ポリイミドフィルムg(非熱可塑性、Tg;342℃、CTE;16ppm/K、吸湿率;0.6重量%)を調製した。
【0133】
(合成例8)
熱電対および攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、250gのDMAcを入れた。この反応容器に21.218gのDAPE(0.1063モル)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、22.834gのPMDA(0.1047モル)を加えた。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液h(溶液粘度;26,500mPa・s)を調製した。
【0134】
ポリアミド酸の樹脂溶液hを用いて、硬化後の厚みを約50μmとしたこと以外、合成例1と同様にして、ポリイミドフィルムh(非熱可塑性、Tg;394℃、CTE;43ppm/K、吸湿率;1.2重量%)を調製した。
【0135】
(作製例1)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1の表面に、樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上に樹脂溶液gを硬化後の厚みが約21μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液aを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層の厚みが25μmの片面銅張積層板1Aを調製した。
【0136】
(作製例2)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1の表面に、樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上に樹脂溶液gを硬化後の厚みが約21μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液bを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層の厚みが25μmの片面銅張積層板2Aを調製した。
【0137】
(作製例3)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1の表面に、樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上に樹脂溶液gを硬化後の厚みが約21μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液cを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層の厚みが25μmの片面銅張積層板3Aを調製した。
【0138】
(作製例4)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1の表面に、樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上に樹脂溶液gを硬化後の厚みが約21μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液eを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層の厚みが25μmの片面銅張積層板4Aを調製した。
【0139】
(作製例5)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1の表面に、樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上に樹脂溶液gを硬化後の厚みが約21μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層の厚みが25μmの片面銅張積層板5Aを調製した。
【0140】
(作製例6)
<ポリイミドフィルムの調製>
塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板5Aの銅箔層をエッチング除去してポリイミドフィルム5B(厚み;25μm、CTE;23ppm/K、Dk;3.4、Df;0.0032)を調製した。
【0141】
(作製例7)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1の表面に、樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上に樹脂溶液gを硬化後の厚みが約46μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液fを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層の厚みが50μmの片面銅張積層板6Aを調製した。
【0142】
(作製例8)
<ポリイミドフィルムの調製>
塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板6Aの銅箔層をエッチング除去してポリイミドフィルム6B(厚み;50μm、CTE;24ppm/K、Dk;3.4、Df;0.0033)を調製した。
【0143】
[実施例1]
2枚の片面銅張積層板5Aと1枚のポリイミドフィルムdを準備し、片面銅張積層板5Aの絶縁樹脂層側の面をポリイミドフィルムdに重ね合わせ、片面銅張積層板5A、ポリイミドフィルムd、片面銅張積層板5Aの順に積層し、320℃で30分、6.8MPaの圧力をかけて圧着して、ポリイミド層の厚みが100μmで樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液d及び樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が92%の両面銅張積層板1を調製した。両面銅張積層板1の評価結果は、次のとおりである。
MD方向(長手方向)のエッチング後寸法変化率;0.04%
TD方向(幅方向)のエッチング後寸法変化率;0.04%
MD方向(長手方向)の加熱後寸法変化率;-0.05%
TD方向(幅方向)の加熱後寸法変化率;-0.04%
両面銅張積層板1は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板1における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体1(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0066であった。これらの評価結果を表1に示す。
【0144】
[実施例2]
2枚の片面銅張積層板5Aと2枚のポリイミドフィルム5Bを準備し、片面銅張積層板5Aの絶縁樹脂層側の面をポリイミドフィルム5Bに重ね合わせ、片面銅張積層板5A、ポリイミドフィルム5B、ポリイミドフィルム5B、片面銅張積層板5Aの順に積層し、320℃で30分、6.8MPaの圧力をかけて圧着して、樹脂積層体の厚みが100μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が84%の両面銅張積層板2を調製した。両面銅張積層板2の評価結果は、次のとおりである。
MD方向(長手方向)のエッチング後寸法変化率;0.00%
TD方向(幅方向)のエッチング後寸法変化率;0.00%
MD方向(長手方向)の加熱後寸法変化率;-0.07%
TD方向(幅方向)の加熱後寸法変化率;-0.08%
両面銅張積層板2は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板2における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体2(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0032であった。これらの評価結果を表1に示す。
【0145】
[参考例1]
2枚の片面銅張積層板5Aと1枚のポリイミドフィルムhを準備し、片面銅張積層板5Aの絶縁樹脂層側の面をポリイミドフィルムhに重ね合わせ、片面銅張積層板5A、ポリイミドフィルムh、片面銅張積層板5Aの順に積層し、320℃で30分、6.8MPaの圧力をかけて圧着して、樹脂積層体の厚みが100μmで樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液g及び樹脂溶液hにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が92%の両面銅張積層板3を調製した。両面銅張積層板3の評価結果は、次のとおりである。
MD方向(長手方向)のエッチング後寸法変化率;-0.03%
TD方向(幅方向)のエッチング後寸法変化率;-0.02%
MD方向(長手方向)の加熱後寸法変化率;-0.14%
TD方向(幅方向)の加熱後寸法変化率;-0.14%
両面銅張積層板の加熱後寸法変化率は±0.1%を超える大きな値となった。また、両面銅張積層板3における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体3(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.5、0.0093であった。これらの評価結果を表1に示す。
【0146】
[参考例2]
2枚の片面銅張積層板5Aと1枚のフッ素樹脂フィルム(旭硝子社製、商品名;接着パーフロロ樹脂EA-2000、厚み;50μm、Tg;なし)を準備し、片面銅張積層板5Aの絶縁樹脂層側の面をフッ素樹脂フィルムに重ね合わせ、片面銅張積層板5A、フッ素樹脂フィルム、片面銅張積層板5Aの順に積層し、320℃で5分、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、樹脂積層体の厚みが100μmの両面銅張積層板4を調製した。両面銅張積層板4の評価結果は、次のとおりである。
MD方向(長手方向)のエッチング後寸法変化率;-0.13%
TD方向(幅方向)のエッチング後寸法変化率;-0.15%
MD方向(長手方向)の加熱後寸法変化率;-0.18%
TD方向(幅方向)の加熱後寸法変化率;-0.19%
両面銅張積層板のエッチング後寸法変化率と加熱後寸法変化率は±0.1%を超える大きな値となった。また、両面銅張積層板4における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体4(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、2.9、0.0025であった。これらの評価結果を表1に示す。
【0147】
【0148】
[実施例3]
ポリイミドフィルムdの代わりに、ポリイミドフィルムgを使用したこと以外、実施例1と同様にして、樹脂積層体の厚みが100μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が92%の両面銅張積層板5を調整した。両面銅張積層板5は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板5における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体5(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0033であった。
【0149】
[実施例4]
片面銅張積層板5Aの代わりに、片面銅張積層板1Aを使用したこと以外、実施例2と同様にして、樹脂積層体の厚みが100μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が84%の両面銅張積層板6を調整した。両面銅張積層板6は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板6における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体6(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0038であった。
【0150】
[実施例5]
片面銅張積層板5Aの代わりに、片面銅張積層板2Aを使用したこと以外、実施例2と同様にして、樹脂積層体の厚みが100μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が84%の両面銅張積層板7を調整した。両面銅張積層板7は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板7における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体7(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz))はそれぞれ、3.4、0.0039であった。
【0151】
[実施例6]
片面銅張積層板5Aの代わりに、片面銅張積層板3Aを使用し、380℃で圧着したこと以外、実施例2と同様にして、樹脂積層体の厚みが100μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が84%の両面銅張積層板8を調整した。両面銅張積層板8は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板8における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体8(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.3、0.0034であった。
【0152】
[実施例7]
片面銅張積層板5Aの代わりに、片面銅張積層板4Aを使用したこと以外、実施例2と同様にして、樹脂積層体の厚みが100μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が84%の両面銅張積層板9を調整した。両面銅張積層板9は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板9における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体9(厚み;100μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0041であった。
【0153】
[実施例8]
2枚のポリイミドフィルム5Bの代わりに、1枚のポリイミドフィルム5Bを使用したこと以外、実施例2と同様にして、樹脂積層体の厚みが75μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が84%の両面銅張積層板10を調整した。両面銅張積層板10は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板10における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体10(厚み;75μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0032であった。
【0154】
[実施例9]
片面銅張積層板5A、ポリイミドフィルム5Bの代わりに、片面銅張積層板6A、ポリイミドフィルム6Bを使用したこと以外、実施例8と同様にして、樹脂積層体の厚みが150μmで、樹脂積層体全体に対する非熱可塑性ポリイミド層(樹脂溶液gにより形成されたポリイミド層)の厚み比率が92%の両面銅張積層板11を調整した。両面銅張積層板11は反りがなく、寸法変化も問題はなかった。また、両面銅張積層板11における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体11(厚み;150μm)のDk及びDf(10GHz)はそれぞれ、3.4、0.0033であった。
【0155】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。