(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220622BHJP
C08F 289/00 20060101ALI20220622BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220622BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08F289/00
C08F2/44 C
B01J20/26 D
(21)【出願番号】P 2019563204
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 KR2018009353
(87)【国際公開番号】W WO2019050184
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0113134
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュ-パル
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、スル-ア
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン-キ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522880(JP,A)
【文献】国際公開第99/003577(WO,A1)
【文献】特表2014-533312(JP,A)
【文献】特表2007-514833(JP,A)
【文献】特開平10-114801(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00、C08F2/00-2/60、
C08F251/00-283/00,510、283/02-289/00、291/00-297/08、
C08C19/00-19/44、C08F6/00-246/00、301/00、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
B01J20/00-20/28、20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体がカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成されている表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂から形成されるシェルを含む構造を有し、膨張する前の平均直径が5~
20μmであり、膨張後に多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径で示される空気中での最大膨張大きさは
50~190μmであり、
前記カプセル化された発泡剤は、膨張する前の平均直径に対する膨張後に多く膨張した粒子順に上位10重量%の平均直径の比率で定義される空気中最大膨張比率が
8.5~10倍であり、
前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張大きさ及び空気中最大膨張比率は、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150℃で予熱されたホットプレートの上に10分間放置し、カプセル化された発泡剤を熱によって膨張させた後に光学顕微鏡で観察して測定しており、
前記カプセル化された発泡剤は発泡しており、
粒径が300~425μmである高吸水性樹脂粒子(M
0)中の表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する高吸水性樹脂粒子(M
1)の比率(M
1/M
0×100)が10%以上であり、
蒸留水に対する吸収能が150g/g以上である高吸水性樹脂。
【請求項2】
生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が30~45g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
粒径が300~425μmである高吸水性樹脂粒子(M
0)中の表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する高吸水性樹脂粒子(M
1)の比率(M
1/M
0×100)が20~70%であり、蒸留水に対する吸収能が150~500g/gである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張大きさは70~190μmである、請求項1~3のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記カプセル化された発泡剤は、膨張する前の平均直径が7~17μmである、請求項1~4のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【請求項6】
前記炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンからなる群より選択された1種以上である、請求項1~5のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル、およびハロゲン化ビニリデンからなる群より選択された1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項1~6のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体をカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を含み、
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂から形成されるシェルを含む構造を有し、膨張前の平均直径が5~
20μmであり、膨張後に多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径で示される空気中での最大膨張大きさは
50~190μmであり、
前記カプセル化された発泡剤は、膨張する前の平均直径に対する膨張後に多く膨張した粒子順に上位10重量%の平均直径の比率で定義される空気中最大膨張比率が
8.5~10倍である請求項1~7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタン、およびシクロオクタンからなる群より選択された1種以上である、請求項8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル、およびハロゲン化ビニリデンからなる群より選択された1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項8または9に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2017年9月5日付韓国特許出願第10-2017-0113134号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた初期吸収能を示す高吸水性樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自分の重量の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で命名している。前記のような高吸水性樹脂は生理用具として実用化され始めて、現在は子供用紙おむつや生理帯などの衛生用品以外に園芸用土壌補修剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理帯など衛生材分野で広く使用されており、最近、おむつや生理帯などの衛生材に対して速い乾燥能力が要求されている。このような要求を充足させるためには高吸水性樹脂の表面積が十分に広くて優れた初期吸収能を示す必要がある。
【0005】
高吸水性樹脂を製造する方法には懸濁重合および溶液重合がある。懸濁重合は広い表面積を有する高吸水性樹脂を製造することができるため速い乾燥能力が要求される衛生材に有用に使用できる。しかし、懸濁重合は、有機溶媒を使用するため大量生産が難しく、有機溶媒を再循環させる追加の工程によって生産費用が増大する問題がある。溶液重合は、有機溶媒を使用しないため経済的に高吸水性樹脂を大量生産することができるが、重合体を粉砕することによって不定形の粒子が得られ、相対的に表面積の狭い高吸水性樹脂が得られる問題がある。
【0006】
よって、溶液重合を通じて高吸水性樹脂を製造し、高吸水性樹脂の表面積を広くするために炭酸塩発泡剤を使用する技術が紹介されたが、未だに十分な初期吸収能を示す高吸水性樹脂を開発できずにいるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた初期吸収能を示す高吸水性樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、発明の具体的な実施形態による高吸水性樹脂とその製造方法などについて説明する。
【0009】
発明の一実施形態によれば、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体がカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記架橋重合体が追加架橋され、前記ベース樹脂粉末上に形成されている表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、粒径が300~425μmである高吸水性樹脂粒子(M0)に対する表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する高吸水性樹脂粒子(M1)の比率(M1/M0×100)が10%以上であり、蒸留水に対する吸収能が150g/g以上である高吸水性樹脂が提供される。
【0010】
一方、発明の他の一実施形態によれば、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体がカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記架橋重合体が追加架橋され、前記ベース樹脂粉末上に形成されている表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、蒸留水に対する吸収能が150g/g以上である高吸水性樹脂が提供される。
【0011】
発明のまた他の実施形態によれば、前記高吸水性樹脂の製造方法が提供される。このような高吸水性樹脂の製造方法は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体をカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を含み、
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂から形成されるシェルを含む構造を有し、膨張前の平均直径が5~50μmであり、空気中での最大膨張大きさは20~190μmであるものであってもよい。
【0012】
以下、発明の実施形態による高吸水性樹脂およびその製造方法についてより具体的に説明する。
【0013】
高吸水性樹脂を製造する方法には懸濁重合および溶液重合がある。懸濁重合は広い表面積を有する高吸水性樹脂を製造することができるが、有機溶媒を使用するため大量生産が難しく有機溶媒を再循環させる追加の工程によって生産費用が増大する問題がある。溶液重合は有機溶媒を使用しないため経済的に高吸水性樹脂を大量生産することができるが、重合体を粉砕することによって不定形の粒子が得られ相対的に表面積の狭い高吸水性樹脂が得られる問題がある。
【0014】
しかし、本発明者は実験の結果、溶液重合を用いても大きな気孔が形成された樹脂粒子を一定含量以上に含む高吸水性樹脂を製造すれば高吸水性樹脂が十分に広い表面積を有し優れた初期吸収能を示すことを確認した。その結果、このような高吸水性樹脂は体液を急速に吸収してふわふわした感触を付与できるおむつや生理帯などの衛生材を提供することができる。
【0015】
前記高吸水性樹脂は粒子形態を有するので、本明細書で高吸水性樹脂を構成する個々の粒子を樹脂粒子と呼ぶ。
【0016】
前記高吸水性樹脂に含まれている粒径が300~425μmである樹脂粒子(M0)の中の表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する樹脂粒子(M1)の比率(M1/M0×100)が10%以上、20%以上、30%以上、40%以上あるいは50%以上であれば、前記高吸水性樹脂は広い比表面積を有し優れた初期吸収能を示すことができる。特定粒径範囲の樹脂粒子の中の大きな気孔が存在する樹脂粒子が占める比率を測定する方法は後述の試験例に詳しく記載されており、前記比率の上限は特に限定されず、例えば、100%以下、あるいは70%以下、あるいは60%以下であってもよい。前記単位%は300~425μmの粒径を有する樹脂粒子全体個数に対する表面に20~200μm直径の気孔が3個以上形成された樹脂粒子の個数の比率を意味する。
【0017】
より具体的に、前記300~425μmの粒径を有する樹脂粒子の中の10%以上の樹脂粒子の表面に20~200μm、40~200μm、60~200μmあるいは100~200μm直径の気孔が3個、4個あるいは5個以上形成できる。
【0018】
前記高吸水性樹脂は、大きな気孔を有する樹脂粒子を一定含量以上含むことによって広い表面積を有し速い初期吸収能を示すことができる。具体的に、前記高吸水性樹脂は蒸留水に対する吸収能が150g/g以上、200g/g以上、220g/g以上あるいは230g/g以上であってもよい。前記蒸留水に対する吸収能を測定する方法は後述の試験例に詳しく記載されており、蒸留水に対する吸収能の上限は500g/g以下、あるいは400g/g以下、あるいは300g/g以下であってもよい。
【0019】
また、前記高吸水性樹脂は、生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が30~45g/gあるいは35~40g/gであってもよい。前記生理食塩水に対する遠心分離保水能を測定する方法は後述の試験例に詳しく記載されている。
【0020】
一実施形態による高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体がカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記架橋重合体が追加架橋され、前記ベース樹脂粉末上に形成されている表面架橋層を含むことができる。
【0021】
前記カプセル化された発泡剤は、例えば、膨張する前に測定された平均直径が5~50μm、5~30μm、5~20μmあるいは7~17μmに調節されて大きな気孔が均一に形成された樹脂粒子を製造することができる。
【0022】
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂から形成されるシェルを含む構造を有することができる。このようなカプセル化された発泡剤は所望の大きさに膨張させることができるため高吸水性樹脂の製造時に使用されて、高吸水性樹脂が前述の大きな気孔が形成された樹脂粒子を一定含量以上に含むようにすることができる。
【0023】
前述の大きさの気孔が形成された樹脂粒子を多量製造するためにはカプセル化された発泡剤の膨張特性を把握する必要がある。しかし、高吸水性樹脂内でカプセル化された発泡剤が発泡された形態は高吸水性樹脂の製造条件によって変わることがあるので、一つの形態に定義するのが難しい。したがって、カプセル化された発泡剤を空気中で発泡させて膨張比率および大きさを確認することによって、大きな気孔が形成された樹脂粒子を形成するのに適するか確認することができる。
【0024】
具体的に、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤を塗布した後、空気中で熱を10分間加えてカプセル化された発泡剤を膨張させる。この時、カプセル化された発泡剤が3~15倍、5~15倍、あるいは8.5~10倍の空気中での最大膨張比率を示せば、前述の大きさの気孔が形成された樹脂粒子を大量生成するのに適合する。
【0025】
また、カプセル化された発泡剤が190μm以下の空気中での最大膨張大きさを示してこそ前述の大きさの気孔が形成された樹脂粒子を多く製造することができる。具体的に、カプセル化された発泡剤が20~190μm、50~190μm、70~190μm、あるいは75~190μmの空気中での最大膨張大きさを示せば、前述の大きさの気孔が形成された樹脂粒子を大量生成するのに適合する。
【0026】
カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率および最大膨張大きさは後述の製造例に詳しく記載されている。
【0027】
前記カプセル化された発泡剤のコアを構成する炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタン、およびシクロオクタンからなる群より選択された1種以上であってもよい。この中でも、炭素数3~5の炭化水素(n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン)が前述の大きさの気孔を形成するのに適合し、iso-ブタンが最も適合する。
【0028】
そして、前記カプセル化された発泡剤のシェルを構成する熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル、およびハロゲン化ビニリデンからなる群より選択された1種以上のモノマーから形成されるポリマーであってもよい。この中でも、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体が前述の大きさの気孔を形成するのに最も適合する。
【0029】
前記カプセル化された発泡剤は、全体カプセル化された発泡剤重量に対して炭化水素を10~30重量%で含むことができる。このような範囲内で前述の大きさの気孔が形成された樹脂粒子を多量製造することができる。
【0030】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法などについてより具体的に説明する。
【0031】
前記一実施形態による高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体をカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を通じて製造できる。
【0032】
前記カプセル化された発泡剤は前述で詳しく説明したので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0033】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ソルビン酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0034】
本明細書で用語‘少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体’は、水溶性エチレン系不飽和単量体に酸性基を有する単量体が含まれており、前記酸性基を有する単量体の酸性基のうちの少なくとも一部が中和されているのを意味する。
【0035】
特に、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、少なくとも一部が前記陰イオン性単量体に含まれている酸性基を中和させた単量体(陰イオン性単量体の塩)から構成できる。
【0036】
より具体的に、前記水溶性エチレン系不飽和単量体としてはアクリル酸またはその塩を使用することができ、アクリル酸を使用する場合には少なくとも一部を中和させて使用することができる。このような単量体の使用によってより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能になる。一例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体として、アクリル酸のアルカリ金属塩を使用する場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)のような中和剤で中和させて使用することができる。この時、前記アクリル酸の中和程度は約50~95モル%あるいは約60~85モル%に調節でき、このような範囲内で中和時、析出の恐れ無く保水能に優れた高吸水性樹脂を提供することができる。
【0037】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体を含む単量体混合物中で、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、後述の各原料物質、重合開始剤、および溶媒などを含む全体単量体混合物に対して約20~約60重量%、あるいは約25~約50重量%であってもよく、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度にすることができる。但し、前記単量体の濃度が過度に低くなれば高吸水性樹脂の収率が低くなり経済性に問題が発生することがあり、逆に濃度が過度に高くなれば単量体の一部が析出されるか重合された含水ゲル重合体の粉砕時に粉砕効率が低く示されるなど工程上問題が発生することがあり高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0038】
前記含水ゲル重合体を形成する段階では、水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合するために内部架橋剤を使用することができる。内部架橋剤は、分子内に2つ以上の架橋性官能基を含む化合物から構成される。前記内部架橋剤は、前述の水溶性エチレン系不飽和単量体の円滑な架橋重合反応のために架橋性官能基として炭素間の二重結合を含むことができる。このような内部架橋剤のより具体的な例としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、非改質またはエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)およびヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0039】
前記内部架橋剤は前記単量体混合物に対して約0.01~約2重量%の濃度で含まれ、保水能および加圧下吸収能が優れていながら速い吸収速度を示す架橋重合体を形成することができる。
【0040】
また、前記単量体混合物は、高吸水性樹脂の製造に一般に使用されていた重合開始剤をさらに含むことができる。
【0041】
具体的に、前記重合開始剤は重合方法によって適切に選択でき、熱重合方法を用いる場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を用いる場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光を全て使用する方法)を用いる場合には熱重合開始剤と光重合開始剤を全て使用することができる。但し、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0042】
前記光重合開始剤は、紫外線のような光によってラジカルを形成することができる化合物であればその構成の限定なく使用できる。
【0043】
前記光重合開始剤としては例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタル(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著書の“UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)”115ページによく明示されており、上述の例に限定されない。
【0044】
前記光重合開始剤は、前記単量体混合物に対して約0.0001~約2.0重量%の濃度で含まれてもよい。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合には重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になることがある。
【0045】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid)などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdian著書の‘Principle of Polymerization(Wiley、1981)’、203ページによく明示されており、上述の例に限定されない。
【0046】
前記熱重合開始剤は、前記単量体混合物に対して約0.001~約2.0重量%の濃度で含まれてもよい。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合には追加的な熱重合がほとんど起こらなく熱重合開始剤の追加による効果が微小なことがあり、熱重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になることがある。
【0047】
一方、前述の単量体混合物は、前記カプセル化された発泡剤を全体単量体混合物に対して約0.05~約5重量%、あるいは約0.1~約3重量%の濃度で含むことができる。これにより、前述の気孔特性および諸般物性を充足する高吸水性樹脂を適切に得ることができる。
【0048】
また、前述の単量体混合物は必要によって増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0049】
前述の水溶性エチレン系不飽和単量体、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤、重合開始剤、および添加剤のような原料物質は、溶媒に溶解された形態に準備されてもよい。
【0050】
この時、使用できる前記溶媒は上述の成分を溶解することができればその構成の限定無く使用でき、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、およびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
前記溶媒は、単量体混合物の総含量に対して前述の成分を除いた残量で含まれ得る。
【0052】
一方、このような単量体組成物を熱重合、光重合または混成重合して含水ゲル重合体を形成する方法も、また通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0053】
具体的に、重合方法は、重合エネルギー源によって大きく熱重合および光重合に分けることができる。通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行うことができる。この時、前記単量体混合物の重合温度は約30~110℃に調節され適切な架橋構造を有する含水ゲル重合体を形成することができる。上述の範囲の重合温度を達成するための手段は特に限定されず、前記反応器に熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油のような昇温した流体などを使用することができるが、これに限定されるのではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述の例に限定されるのではない。
【0054】
反面、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行うことができるが、上述の重合方法は一例であり、本発明は上述の重合方法に限定されない。
【0055】
一例として、前述のように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)のような反応器に、熱媒体を供給するか反応器を加熱して熱重合を行う場合、反応器排出口に排出される含水ゲル重合体を得ることができる。このように得られた含水ゲル重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、数センチメートル~数ミリメートルの大きさで得ることができる。具体的に、得られる含水ゲル重合体の大きさは、注入される単量体混合物の濃度および注入速度などによって多様に示され得る。
【0056】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体混合物の濃度および注入速度によって変わるが、通常約0.5~約10cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体混合物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体混合物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが10cmを超過する場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚にかけて均一に起こらないことがある。
【0057】
前記単量体混合物の重合時間は特に限定されず、約30秒~60分に調節されてもよい。
【0058】
このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は、約30~約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体で“含水率”は、全体含水ゲル重合体重量に対して占める水分の含量であって、含水ゲル重合体の重量で乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は常温から約180℃まで温度を上昇させた後に180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで40分に設定して、含水率を測定する。
【0059】
そして、前記単量体を架橋重合させた後には、乾燥、粉砕、および分級などの工程を経てベース樹脂粉末を得ることができ、このような粉砕および分級などの工程を通じて、ベース樹脂粉末およびこれから得られる高吸水性樹脂は約150~850μmの粒径を有するように製造および提供されるのが適切である。より具体的に、前記ベース樹脂粉末およびこれから得られる高吸水性樹脂の少なくとも約95重量%以上が約150~850μmの粒径を有し、約150μm未満の粒径を有する微粉が約3重量%未満であってもよい。
【0060】
このように前記ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂の粒径分布が好ましい範囲に調節されることによって、最終製造された高吸水性樹脂が優れた吸収諸般物性を示すことができる。
【0061】
一方、前記乾燥、粉砕、および分級の進行方法についてより具体的に説明すれば次のとおりである。
【0062】
前記ベース樹脂粉末を形成する段階では、乾燥効率を高めるために含水ゲル重合体を乾燥する前に粗粉砕する工程を含むことができる。
【0063】
この時、使用される粉砕機は構成の限定がなく、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、断片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、上述の例に限定されない。
【0064】
このような粗粉砕工程を通じて、含水ゲル重合体の粒径は約0.1~約10mmに調節できる。粒径が0.1mm未満になるように粉砕することは含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集される現象が現れることもある。一方、粒径が10mmを超過するように粉砕する場合、その後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小であることがある。
【0065】
前記のように粗粉砕工程を経るか、あるいは粗粉砕工程を経ない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約50~約250℃であってもよい。
【0066】
乾燥温度が約50℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が約250℃を超過する場合、過度に重合体表面のみ乾燥され、その後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。
【0067】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20分~約15時間行われてもよいが、これに限定されない。
【0068】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定がなく選択して使用できる。具体的に、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は約0.1~約10重量%であってもよい。
【0069】
その次に、このような乾燥工程を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する工程を行う。
【0070】
粉砕工程後に得られる重合体粉末は、粒径が約150~約850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために粉砕機としてピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを使用することができるが、上述の例に限定されるのではない。
【0071】
そして、このような粉砕段階以後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径によって分級する別途の過程を経てもよい。好ましくは、粒径が約150~約850μmである重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粉末のみに対して表面架橋反応段階を経て製品化することができる。このような過程を通じて得られたベース樹脂粉末の粒径分布に関しては既に詳述したことがあるので、これに関するそれ以上の具体的な説明は省略する。
【0072】
一方、前述のベース樹脂粉末を形成した後には、表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成することができ、これによって高吸水性樹脂を製造することができる。
【0073】
前記表面架橋剤としては、従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特別な制限なく全て使用することができる。そのより具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択された1種以上のポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択された1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;あるいは環状ウレア化合物;などが挙げられる。
【0074】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂粉末100重量部に対して約0.01~3重量部の含量で使用することができる。表面架橋剤の含量範囲を上述の範囲に調節して優れた吸収諸般物性を示す高吸水性樹脂を提供することができる。
【0075】
そして、前記表面架橋工程では前記表面架橋剤に加えてシリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群より選択された1種以上の無機物質などを追加的に添加して表面架橋反応を行うことができる。前記無機物質は粉末形態または液状形態で使用することができ、特にアルミナ粉末、シリカ-アルミナ粉末、チタニア粉末、またはナノシリカ溶液を使用することができる。また、前記無機物質は、ベース樹脂粉末100重量部に対して約0.001~約2重量部の含量で使用することができる。
【0076】
また、前記表面架橋工程では、前記無機物質の代わりに、あるいは無機物質と共に、多価の金属陽イオンを添加して表面架橋を行うことによって、高吸水性樹脂の表面架橋構造をさらに最適化することができる。これは、このような金属陽イオンが高吸水性樹脂のカルボキシ基(COOH)とキレートを形成することによって架橋距離をさらに減らすことができるためと予測される。
【0077】
また、前記表面架橋剤をベース樹脂粉末に添加する方法についてはその構成の限定はない。例えば、表面架橋剤とベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂粉末と表面架橋剤を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0078】
前記表面架橋剤の添加時、追加的に水およびメタノールを共に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤がベース樹脂粉末に均一に分散され得る利点がある。この時、追加される水およびメタノールの含量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導しベース樹脂粉末の凝集現象を防止すると同時に架橋剤の表面浸透深さを最適化するために適切に調節できる。
【0079】
前記表面架橋剤が添加されたベース樹脂粉末に対して約100℃以上で約20分以上加熱させることによって表面架橋結合反応が行われ得る。特に、前述の効果をより優秀に示すことができる高吸水性樹脂を製造するために、前記表面架橋工程条件は最大反応温度を約100~250℃に調節することができる。
【0080】
そして、最大反応温度での維持時間を約20分以上、あるいは約20分以上2時間以下の条件に調節することができる。また、最初反応開始時の温度、例えば、約100℃以上の温度から、前記最大反応温度に至るまでの昇温時間を約5分以上、あるいは約5分以上1時間以下に制御することができる。
【0081】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されず、単量体混合物を重合するために使用された昇温手段が使用できる。
【0082】
前述の製造方法によって得られた高吸水性樹脂は、発泡剤を熱可塑性樹脂が囲むコア-シェル構造を有するカプセル化された発泡剤を用いて大きな気孔が形成された樹脂粒子を一定含量以上に含むことによって広い表面積と優れた初期吸収能を示すことができる。したがって、前記高吸水性樹脂を用いれば体液を急速に吸収してふわふわした感触を付与することができるおむつや生理帯などの衛生材を提供することができる。
【発明の効果】
【0083】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、大きな気孔が形成された樹脂粒子を一定含量以上に含むことによって広い表面積と優れた初期吸収能を示すことができる。したがって、前記高吸水性樹脂を用いれば体液を急速に吸収してふわふわした感触を付与することができるおむつや生理帯などの衛生材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】実施例1によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。
【
図2】実施例2によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。
【
図3】比較例1によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。
【
図4】比較例2によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。
【
図5】比較例4によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。
【
図6】比較例5によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。但し、これは発明の例示として提示されたものであって、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるのではない。
【実施例】
【0086】
製造例1:カプセル化された発泡剤の準備
コア-シェル構造を有し、コアはiso-ブタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体から形成されるカプセル化された発泡剤を準備した。全体カプセル化された発泡剤重量に対してiso-ブタンは25重量%で含まれた。
【0087】
前記カプセル化された発泡剤の平均直径は13μmであった。それぞれのカプセル化された発泡剤の直径は光学顕微鏡を通じて平均フェレ(Feret)径として測定された。そして、カプセル化された発泡剤の直径の平均値を求めてカプセル化された発泡剤の平均直径と規定した。
【0088】
ガラスペトリ皿(Glass Petri dish)の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150℃で予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した。カプセル化された発泡剤は熱によって徐々に膨張し、これを光学顕微鏡で観察してカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率および最大膨張大きさを測定した。
【0089】
カプセル化された発泡剤に熱を加えた後、多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径を測定して最大膨張大きさと規定し、カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D0)に対する熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(DM)の比率(DM/D0)を求めて最大膨張比率と規定した。前記直径および平均直径は全てカプセル化された発泡剤の直径および平均直径と同様に測定した。
【0090】
前記カプセル化された発泡剤の空気中最大膨張比率は約9倍であり、最大膨張大きさは約80~150μmであった。
【0091】
製造例2:カプセル化された発泡剤の準備
コア-シェル構造を有し、コアはiso-ブタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体から形成されるカプセル化された発泡剤を準備した。全体カプセル化された発泡剤の重量に対してiso-ブタンは25重量%で含まれた。
【0092】
前記カプセル化された発泡剤の平均直径は15μmであり、空気中最大膨張比率は約9倍であり、最大膨張大きさは約90~180μmであった。
【0093】
製造例3:カプセル化された発泡剤の準備
コア-シェル構造を有し、コアはiso-ペンタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体から形成されるカプセル化された発泡剤を準備した。全体カプセル化された発泡剤の重量に対してiso-ペンタンは20重量%で含まれた。
【0094】
前記カプセル化された発泡剤の平均直径は40μmであり、空気中最大膨張比率は約12倍であり、最大膨張大きさは約400~540μmであった。
【0095】
製造例4:カプセル化された発泡剤の準備
コア-シェル構造を有し、コアはiso-オクタンおよびiso-ペンタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体から形成されるカプセル化された発泡剤を準備した。全体カプセル化された発泡剤の重量に対してiso-オクタンは10重量%、iso-ペンタンは5重量%で含まれた。
【0096】
前記カプセル化された発泡剤の平均直径は30μmであり、空気中最大膨張比率は約8倍であり、最大膨張大きさは約200~300μmであった。
【0097】
実施例1:高吸水性樹脂の製造
ガラス反応器にアクリル酸100gを注入し、32重量%苛性ソーダ溶液123.5gを徐々に滴加して混合した。前記苛性ソーダ溶液の滴加時には中和熱によって混合溶液の温度が上昇して混合溶液が冷却されるのを待った。前記混合溶液の温度が約45℃に冷却されれば、混合溶液に過硫酸ナトリウム0.2g、Irgacure TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)0.008g、製造例1で準備したカプセル化された発泡剤0.3g、トリエチレングリコールジアクリレート0.18g、コカミドモノエタノールアミン(Cocamide monoethanolamine)0.1gおよび水47gを添加して単量体混合物を製造した。
【0098】
幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に単量体混合物を500~2000mL/minの速度で供給した。そして、単量体混合物の供給と同時に10mW/cm2の強さを有する紫外線を照射して60秒間重合反応を行った。
【0099】
そして、前記重合反応を通じて得られた重合体をミートチョッパ(meat chopper)を用いて粉(crump)に製造した。その次に、上下に風量転移が可能なオーブンを用いて185℃のホットエアー(hot air)を20分間下方から上方に流れるようにし、再び20分間上方から下方に流れるようにして前記粉(crump)を均一に乾燥させた。乾燥された粉を粉砕機で粉砕した後に分級して150~850μm大きさのベース樹脂粉末を得た。
【0100】
前記で製造したベース樹脂粉末100gに超純水5.0g、メタノール6.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04g、シリカ(商品名:Aerosil200)0.02gを混合した溶液を投与して1分間混合した後、180℃で60分間表面架橋反応を行わせた。
【0101】
そして、得られた生成物を粉砕し分級して粒径が150~850μmである高吸水性樹脂を得た。
【0102】
実施例2:高吸水性樹脂の製造
製造例1で準備したカプセル化された発泡剤の代わりに製造例2で準備したカプセル化された発泡剤を使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0103】
比較例1:高吸水性樹脂の製造
製造例1で準備したカプセル化された発泡剤を投入しないことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0104】
比較例2:高吸水性樹脂の製造
製造例1で準備したカプセル化された発泡剤の代わりにNaHCO3を使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0105】
比較例3:高吸水性樹脂の製造
製造例1で準備したカプセル化された発泡剤の代わりにNaHCO3がポリエチレングリコールでカプセル化された発泡剤を使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0106】
比較例4:高吸水性樹脂の製造
製造例1で準備したカプセル化された発泡剤の代わりに製造例3で準備したカプセル化された発泡剤を使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0107】
比較例5:高吸水性樹脂の製造
製造例1で準備したカプセル化された発泡剤の代わりに製造例4で準備したカプセル化された発泡剤を使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0108】
試験例:高吸水性樹脂の評価
下記のような方法で実施例および比較例によって製造した高吸水性樹脂の特性を評価して下記表1に示した。
【0109】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
高吸水性樹脂の生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、EDANA法NWSP241.0.R2の方法によって測定された。
【0110】
具体的に、樹脂W0(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した。そして、常温で0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に前記封筒を浸水させた。30分後に封筒を遠心分離機を使用して250Gで3分間脱水した後に封筒の重量W2(g)を測定した。一方、樹脂を入れない空の封筒を用いて同一な操作をした後、その時の重量W1(g)を測定した。
【0111】
このように得られた各重量を用いて次の計算式1によって遠心分離保水能を確認した。
【0112】
【0113】
上記計算式1中、
W0(g)は、樹脂の初期重量(g)であり、
W1(g)は、常温で生理食塩水に樹脂を入れない不織布製の空の封筒を30分間浸水させた後、遠心分離機を使用して250Gで3分間脱水した後に測定した不織布製の空の封筒の重量であり、
W2(g)は、常温で生理食塩水に樹脂が入っている不織布製の封筒を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を使用して250Gで3分間脱水した後に、樹脂を含んで測定した不織布製封筒の重量である。
【0114】
(2)気孔粒子の比率
高吸水性樹脂のうちの米国標準40meshスクリーンは通過し、米国標準50meshスクリーンは通過しない粒径が300~425μmであるサンプルを準備した。
【0115】
走査電子顕微鏡(SEM)を通じて前記サンプルの表面に形成された気孔の直径を測定した。気孔の直径は平均フェレ(Feret)直径として測定された。
【0116】
前記サンプルのうちの表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する樹脂を選別し、粒径が300~425μmである高吸水性樹脂(M0)に対する表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する樹脂(M1)の比率(M1/M0×100)を計算した。
【0117】
実施例1および2で製造された高吸水性樹脂のSEMイメージはそれぞれ
図1および
図2に示し、比較例1、2、4、および5で製造された高吸水性樹脂のSEMイメージはそれぞれ
図3~6に示した。
図1~
図4を参照すれば、実施例1で製造された高吸水性樹脂には大きな気孔を有する粒子が複数存在するが、比較例1および2で製造された高吸水性樹脂には大きな気孔を有する粒子が存在しないのが確認される。
【0118】
また、空気中で発泡させると大きな大きさに膨張するカプセル化された発泡剤を使用した比較例4および5で製造された高吸水性樹脂のSEMイメージを見てみれば、生成された気孔の大きさが高吸水性樹脂粒子の大きさより大きく表面に気孔が適切に形成されていないことが確認される。
【0119】
(3)蒸留水吸収能
高吸水性樹脂の蒸留水吸収能を測定するために、樹脂W0(g、約1.0g)を不織布製の封筒(横:16.5cm、縦:27.5cm)に均一に入れて密封した。そして、2Lプラスチックビーカーに前記封筒を入れて、24℃の蒸留水1Lを投入した。1分間樹脂を膨潤させた後、封筒を蒸留水から持ち上げて、1分間封筒が含んでいる蒸留水が重力によって下に落ちるようにした後、封筒の重量W4(g)を測定した。一方、樹脂を入れない空の封筒を用いて同一な操作をした後、その時の重量W3(g)を測定した。
【0120】
このように得られた各重量を用いて次の計算式2によって蒸留水吸収能を確認した。
【0121】
【0122】
上記計算式2中、
W0(g)は、樹脂の初期重量(g)であり、
W3(g)は、24℃の蒸留水に樹脂が入っていない空の不織布製の封筒を1分間浸水させた後、該封筒を1分間持ち上げて自然的に脱水した後に測定した空の不織布製の封筒の重量であり、
W4(g)は、24℃の蒸留水に樹脂が入っている不織布製の封筒を1分間浸水して吸収させた後、該封筒を1分間持ち上げて自然的に脱水した後に測定した樹脂を含む不織布製の封筒の重量である。
【0123】
【0124】
上記表1を参照すれば、実施例1および2では適切な大きさに膨張できる発泡剤を用いて高吸水性樹脂を製造することによって多量の気孔粒子が形成され、非常に優れた蒸留水吸収能を示すことが確認される。
【0125】
比較例1、2、4および5のように、発泡剤を使用しないか、通常の炭酸塩発泡剤を使用するか、あるいは過度に大きく膨張するカプセル化された発泡剤を使用する場合、大きな気孔が形成された樹脂粒子が多量で生成されないことによって良好な蒸留水吸収能を示さないのが確認される。
【0126】
比較例3のように、炭酸塩をポリエチレングリコールでカプセル化した発泡剤はポリエチレングリコールが炭酸塩を安定化させて発泡時間を遅延させるだけであり、所望の大きさに膨張しないので、所望の大きさの気孔が形成された樹脂粒子を多量生成できないのが確認される。