(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
H01L21/304 643A
H01L21/304 644G
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2020173962
(22)【出願日】2020-10-15
(62)【分割の表示】P 2016191977の分割
【原出願日】2016-09-29
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】半田 直廉
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 聡美
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089797(JP,A)
【文献】特開2002-134452(JP,A)
【文献】特開2015-201627(JP,A)
【文献】特開2016-136580(JP,A)
【文献】特開2013-162044(JP,A)
【文献】特開2016-157778(JP,A)
【文献】特開2012-199407(JP,A)
【文献】特開2014-209605(JP,A)
【文献】特開2008-258437(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067563(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/001761(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0221531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
保持された前記基板の少なくとも中心部分に接触して該基板を洗浄する洗浄部と、
保持された前記基板の一部に洗浄液を供給する1または複数のノズルと、
少なくとも1つの前記ノズルによる洗浄液の供給位置を調整するノズル制御部と、を備え、
前記洗浄部が前記基板に接触して前記基板の洗浄が行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給し、
前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが前記基板の少なくとも中心部分に洗浄液を供給
し、
前記ノズル制御部は、
モータと、
前記モータによって回転される円板またはカムと、
一端が前記円板またはカムに接続され、他端が前記ノズルに固定されるシャフトと、を有し、
前記ノズル制御部は、前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際に、前記洗浄液の供給位置を前記基板の中心部分から外周へと移動させる、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズル制御部は、
前記ノズルが嵌まる開口が設けられたガイドと、
前記ノズルが貫通する開口が設けられた固定具と、を有する、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズル制御部は、
ローラと、
前記ノズルが嵌まる開口が設けられたガイドと、を有し、
前記シャフトは、前記ローラを介して前記カムと接続される、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
基板を保持する基板保持部と、
保持された前記基板の少なくとも中心部分に接触して該基板を洗浄する洗浄部と、
保持された前記基板の一部に洗浄液を供給する1または複数のノズルと、
少なくとも1つの前記ノズルによる洗浄液の供給位置を調整するノズル制御部と、を備え、
前記洗浄部が前記基板に接触して前記基板の洗浄が行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給し、
前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが前記基板の少なくとも中心部分に洗浄液を供給し、
前記1または複数のノズルの少なくとも1つの前記ノズルからの洗浄液照射角度を調整可能であり、
前記ノズル制御部は、前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際に、前記洗浄液の供給位置を前記基板の中心部分から外周へと移動させる、基板洗浄装置。
【請求項5】
基板を保持する基板保持部と、
保持された前記基板の少なくとも中心部分に接触して該基板を洗浄する洗浄部と、
保持された前記基板の一部に洗浄液を供給する1または複数のノズルと、
少なくとも1つの前記ノズルによる洗浄液の供給位置を調整するノズル制御部と、を備え、
前記洗浄部が前記基板に接触して前記基板の洗浄が行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給し、
前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが前記基板の少なくとも中心部分に洗浄液を供給し、
前記ノズル制御部は、
前記ノズルを保持する保持具と、
前記保持具が取り付けられ、回転軸を中心として回動可能であるロボットアームと、を有し、前記ロボットアームが回動することで前記保持具に保持された前記ノズルの方向が変化し、
前記ノズル制御部は、前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際に、前記洗浄液の供給位置を前記基板の中心部分から外周へと移動させる、基板洗浄装置。
【請求項6】
基板を保持する基板保持部と、
保持された前記基板の少なくとも中心部分に接触して該基板を洗浄する洗浄部と、
保持された前記基板の一部に洗浄液を供給する1または複数のノズルと、
少なくとも1つの前記ノズルによる洗浄液の供給位置を調整するノズル制御部と、を備え、
前記洗浄部が前記基板に接触して前記基板の洗浄が行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給し、
前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが前記基板の少なくとも中心部分に洗浄液を供給し、
前記ノズル制御部は、前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際に、前記洗浄液の供給位置を、前記基板の外周から中心部分へと移動させることなく、前記基板の中心部分から外周へと移動させる、基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板洗浄装置および基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置用のロールスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
基板研磨装置は、まず基板を研磨し、その後に基板を洗浄する。基板洗浄には、例えばロールスポンジが用いられる。従来の基板研磨装置が有する基板洗浄装置は必ずしも効果的に基板を洗浄できているとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-246190号公報
【文献】特開2009-267368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題点に鑑み、効果的に基板を洗浄できる基板洗浄装置および基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置用のロールスポンジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、基板を保持する基板保持部と、保持された前記基板に対して5度以上30度未満の照射角度で洗浄液を供給するノズル洗浄液供給部と、を備える基板洗浄装置が提供される。
適切な照射角度で洗浄液を基板に供給することで、効果的に基板を洗浄できる。
【0006】
本開示の別の態様によれば、基板を保持する基板保持部と、保持された前記基板に対して洗浄液を供給するノズルと、を備え、洗浄液供給時に前記洗浄液が前記基板に与える力の、前記基板と平行な方向の力成分Fxと、前記基板と直交する方向の力成分Fyとの比Fy/Fxは、0.0875以上0.577未満である、基板洗浄装置が提供される。
適切な照射角度で洗浄液を基板に供給することで、効果的に基板を洗浄できる。
【0007】
本開示の別の態様によれば、基板を保持する基板保持部と、保持された前記基板の少なくとも中心部分に接触して該基板を洗浄する洗浄部と、保持された前記基板の一部に洗浄液を供給する1または複数のノズルと、を備え、前記洗浄部が前記基板に接触して前記基板の洗浄が行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給し、前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる際には、少なくとも1つの前記ノズルが前記基板の少なくとも中心部分に洗浄液を供給する、基板洗浄装置が提供される。
これにより、基板の中心部分も効果的に洗浄できる。
【0008】
少なくとも1つの前記ノズルによる洗浄液の供給位置を調整するノズル制御部を備えるのが望ましい。
これにより、洗浄時に基板上の洗浄部とは異なる位置に、リンス時には基板上の中心部分に洗浄液を供給できる。
【0009】
前記ノズル制御部は、前記洗浄部が前記基板に接触せずに前記基板のリンスが行われる
際に、前記洗浄液の供給位置を前記基板の中心部分から外周へと移動させるのが望ましい。
これにより、洗浄液を効率よく基板の外に排出できる。
【0010】
本開示の別の態様によれば、基板を保持する基板保持部と、保持された前記基板に洗浄液を供給する第1ノズルと、保持された前記基板に洗浄液を供給する第2ノズルと、を備え、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルは、同時には前記基板に洗浄液を供給しない、基板洗浄装置が提供される。
これにより、第1ノズルからの洗浄液と第2ノズルからの洗浄液とが混ざることが抑えられ、効果的に基板Wを洗浄できる。
【0011】
保持された前記基板の少なくとも中心部分に接触して該基板を洗浄する洗浄部を備え、前記第1ノズルは、前記基板上の少なくとも中心部分に洗浄液を供給し、前記第2ノズルは、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給するのが望ましい。
これにより、基板の中心部分も効果的に洗浄できる。
【0012】
本開示の別の態様によれば、基板を保持する基板保持部と、保持された前記基板に非定常的に洗浄液を供給するノズルと、を備える基板洗浄装置が提供される。
非定常的に洗浄液を供給することで基板に圧力変動を与えることができ、基板を効果的に洗浄できる。
【0013】
前記ノズルは、間欠的に洗浄液を供給してもよいし、洗浄液の供給量を変動させてもよい。
【0014】
本開示の別の態様によれば、基板の少なくとも中心部分に洗浄部を接触させる工程と、前記基板上の前記洗浄部とは異なる位置に洗浄液を供給しつつ、前記洗浄部が前記基板を洗浄する工程と、前記洗浄部を前記基板から離間させる工程と、前記基板上の少なくとも中心部分に洗浄液を供給する工程と、を備える基板洗浄方法が提供される。
これにより、基板の中心部分も効果的に洗浄できる。
【0015】
本開示の別の態様によれば、円筒状のロール本体と、その外周面から外側に円柱状に突出した複数のノジュール部と、を備え、前記複数のノジュール部の表面の少なくとも一部はスキン層が欠如している、基板洗浄装置用のロールスポンジが提供される。
スキン層の特性を活かし、効果的に基板を洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る基板洗浄装置を備える基板処理装置の概略平面図。
【
図2】第1の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す斜視図。
【
図3】基板Wとその表面上に付着した異物Pとを模式的に示す断面図。
【
図4】照射角度θと除去率との関係を模式的に示すグラフ。
【
図5】第2の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す斜視図。
【
図6】洗浄工程における洗浄液供給を模式的に示す斜視図。
【
図7】リンス工程における洗浄液供給を模式的に示す斜視図。
【
図8】第3の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
【
図9】第4の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
【
図10】第5の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
【
図11】第6の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
【
図12】第7の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す斜視図。
【
図13】ノズル32a,32bによる洗浄液供給タイミングを示す図。
【
図14】第8の実施形態の一例に係る洗浄液の供給流量を模式的に示す図。
【
図15】第8の実施形態の別の例に係る洗浄液の供給流量を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る基板洗浄装置を備える基板処理装置の概略平面図である。
図1に示すように、この基板処理装置は、略矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は隔壁1a,1bによってロード/アンロード部2と研磨部3と洗浄部4とに区画されている。これらのロード/アンロード部2、研磨部3、および洗浄部4は、それぞれ独立に組み立てられ、独立に排気される。研磨部3では基板の研磨が行われる。洗浄部4では研磨された基板の洗浄および乾燥が行われる。また、基板処理装置は基板処理動作を制御する制御部5を有している。
【0019】
ロード/アンロード部2は、多数の基板(例えば半導体ウエハ)をストックする基板カセットが載置される2つ以上(本実施形態では4つ)のフロントロード部20を備えている。これらのフロントロード部20はハウジング1に隣接して配置され、基板処理装置の幅方向(長手方向と垂直な方向)に沿って配列されている。
【0020】
また、ロード/アンロード部2には、フロントロード部20の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上に基板カセットの配列方向に沿って移動可能な2台の搬送ロボット(ローダー)22が設置されている。搬送ロボット22は走行機構21上を移動することによってフロントロード部20に搭載された基板カセットにアクセスできるようになっている。各搬送ロボット22は上下に2つのハンドを備えている。そして、処理された基板を基板カセットに戻すときに上側のハンドを使用し、処理前の基板を基板カセットから取り出すときに下側のハンドを使用して、上下のハンドを使い分けることができるようになっている。さらに、搬送ロボット22の下側のハンドは、その軸心周りに回転することで、基板を反転させることができるように構成されている。
【0021】
研磨部3は、基板の研磨(平坦化)が行われる領域であり、例えばロード/アンロード部2側から順に並んだ4つの基板研磨装置3A~3Dを備える。
【0022】
洗浄部4は、基板の洗浄および乾燥が行われる領域であり、ロード/アンロード部2とは反対側から順に洗浄室190と、搬送室191と、洗浄室192と、搬送室193と、乾燥室194とに区画されている。
【0023】
洗浄室190内には、垂直方向に沿って配列された2つの基板洗浄装置201(
図1に
は1つのみ図示される)が配置されている。同様に、洗浄室192内には、垂直方向に沿って配列された2つの基板洗浄装置202(
図1には1つのみ図示される)が配置されている。基板洗浄装置201,202は、洗浄液を用いて基板を洗浄する洗浄機である。これらの基板洗浄装置201,202は垂直方向に沿って配列されているので、フットプリント面積が小さいという利点が得られる。
【0024】
乾燥室194内には、縦方向に沿って配列された2つの基板乾燥装置203(
図1には1つのみ図示される)が配置されている。これら2つの基板乾燥装置203は互いに隔離されている。基板乾燥装置203の上部には、清浄な空気を基板乾燥装置203内にそれぞれ供給するフィルタファンユニットが設けられている。
【0025】
なお、基板処理装置が制御部5を備えて基板洗浄装置201,202などを制御してもよいし、基板洗浄装置201,202のそれぞれが制御部(制御装置)を備えていてもよい。
【0026】
次に、基板を搬送するための搬送機構について説明する。
図1に示すように、基板研磨装置3A,3Bに隣接して、リニアトランスポータ6が配置されている。このリニアトランスポータ6は、これら基板研磨装置3A,3Bが配列する方向に沿った4つの搬送位置(ロード/アンロード部2側から順に搬送位置TP1~TP4とする)の間で基板を搬送する。
【0027】
また、基板研磨装置3C,3Dに隣接して、リニアトランスポータ7が配置されている。このリニアトランスポータ7は、これら基板研磨装置3C,3Dが配列する方向に沿った3つの搬送位置(ロード/アンロード部2側から順に搬送位置TP5~TP7とする)の間で基板を搬送する。
【0028】
基板は、リニアトランスポータ6によって基板研磨装置3A,3Bに搬送される。基板研磨装置3Aへの基板の受け渡しは搬送位置TP2で行われる。研磨装置3Bへの基板の受け渡しは搬送位置TP3で行われる。基板研磨装置3Cへの基板の受け渡しは搬送位置TP6で行われる。基板研磨装置3Dへの基板の受け渡しは第7搬送位置TP7で行われる。
【0029】
搬送位置TP1には、搬送ロボット22から基板を受け取るためのリフタ11が配置されている。基板はこのリフタ11を介して搬送ロボット22からリニアトランスポータ6に渡される。リフタ11と搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ(図示せず)が隔壁1aに設けられており、基板の搬送時にはシャッタが開かれて搬送ロボット22からリフタ11に基板が渡されるようになっている。
【0030】
また、リニアトランスポータ6,7と、洗浄部4との間にはスイングトランスポータ12が配置されている。このスイングトランスポータ12は、搬送位置TP4,TP5との間を移動可能なハンドを有しており、リニアトランスポータ6からリニアトランスポータ7への基板の受け渡しは、スイングトランスポータ12によって行われる。
【0031】
基板は、リニアトランスポータ7によって基板研磨装置3Cおよび/または基板研磨装置3Dに搬送される。また、研磨部3で研磨された基板はスイングトランスポータ12を経由して洗浄部4に搬送される。スイングトランスポータ12の側方には、図示しないフレームに設置された基板の仮置き台180が配置されている。この仮置き台180は、
図1に示すように、リニアトランスポータ6に隣接して配置されており、リニアトランスポータ6と洗浄部4との間に位置している。
【0032】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、基板洗浄装置において、洗浄対象基板に対する洗浄液の好ましい照射角度に関する。
【0033】
図2は、第1の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す斜視図である。基板洗浄装置は、洗浄対象の基板Wをほぼ水平に保持して回転させる基板保持部31と、保持された基板Wに対して洗浄液を供給するノズル32とを備えている。ノズル32は、例えば直径1mmの単管ノズルであり、基板W上の狭い範囲に洗浄液を照射する。洗浄液は純水や薬液などである。本明細書では、基板面と、ノズル32から照射される洗浄液とがなす角を照射角度θと定義する。
【0034】
まずは、簡略化したモデルを用いて適切な照射角度θを理論的に導く。
図3は、基板Wとその表面上に付着した異物Pとを模式的に示す断面図である。ここでは、異物Pを半径aの球体と仮定し、照射角度θで洗浄液が供給されたとする。この場合、洗浄液に起因する力Fが異物Pのノズル32側の半球に作用すると考えることができる。そして、基板Wと異物Pとの接点Aを軸とするモーメントMが大きいほど、異物Pを除去できる。このモーメントMは次のようにして導出できる。
【0035】
【0036】
途中、Fx=Fcosθ,Fy=Fsinθであることを考慮した。この結果、モーメントMはcosθに比例する。すなわち、照射角度θが小さいほど、異物Pを除去できることが分かった。
【0037】
次に、適切な照射角度θを実験的に考察する。基板Wを汚染させ、種々の照射角度θで基板Wの中心に洗浄液を供給して異物の除去率を計測する実験を行った。
【0038】
図4は、照射角度θと除去率との関係を模式的に示すグラフである。図示のように、θ=15~40度の範囲では、照射角度θが大きくなるほど除去率が低下する。このことは
図3を用いて導かれた結果と一致する。照射角度θが40度を超えると除去率はほぼ一定となるが、これは洗浄液の流体力が一定になるためと考えられる。いずれにしても、照射角度θが大きいと洗浄力は低く好ましくない。
【0039】
一方、照射角度θが10度以下の範囲では、照射角度θが小さくなるほど除去率が低下し、特に5度未満の場合に除去率は低くなる。これは、照射角度θが小さすぎる場合、供
給された洗浄液が基板W上で分岐し(いわゆる液糸)、異物まで到達する洗浄液の量が減るためと考えられる。また、ノズル32の機構的な制約上、照射角度θをあまり小さくするのは困難である。
【0040】
以上から、照射角度θは5度以上40度未満とするのが好ましく、5度以上30度未満とするのがさらに好ましい。
【0041】
ここで、洗浄液が基板Wに与える水平方向(正確には、基板Wと平行な方向)の力成分Fxおよび同鉛直方向(正確には、基板Wと直交する方向)の力成分Fyと、照射角度θは次の関係を満たす。
tanθ=Fy/Fx
【0042】
よって、上記の好ましい照射角度θを言い換えると、水平方向の力Fxに対する鉛直方向の力Fyの比Fy/Fxの範囲が0.0875(=tan5)以上0.839(=tan40)未満とするのが好ましく、0.0875(=tan5)以上0.577(=tan30)未満とするのがさらに好ましい。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態では洗浄液の照射角度θを適切な値とするため、基板Wを効果的に洗浄できる。なお、本実施形態の考え方は基板洗浄装置の具体的な構成に関わらず適用可能であり、例えば基板Wを鉛直方向に保持するものであってもよい。また、ノズル32は基板Wの上面でなく下面に洗浄液を供給するものであってもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
次に説明する第2の実施形態は、ロールスポンジなどの洗浄部を用いて基板洗浄を行う基板洗浄装置におけるノズル32による洗浄液の供給位置に関する。
【0045】
図5は、第2の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す斜視図である。基板洗浄装置は、基板保持部31および1または複数のノズル32に加え、洗浄部であるロールスポンジ33を備えている。ロールスポンジ33は水平方向に延びており、保持された基板W上面の少なくとも中心部に接触して基板Wを洗浄する。
【0046】
基板洗浄装置は、まずロールスポンジ33を基板Wに接触させ、この状態でノズル32から基板Wの上面に洗浄液を供給して基板Wを洗浄する(以下、洗浄工程という)。次いで、基板洗浄装置はロールスポンジ33を基板Wから離間させ、この状態でノズル32から洗浄液を供給して基板Wをリンスする(以下、リンス工程という)。
【0047】
ここで、洗浄工程では、ロールスポンジ33が基板Wの中心に接触している。そのため、洗浄液がロールスポンジ33と衝突しないよう、ノズル32は基板Wの中心からずれた位置に洗浄液を供給する。つまり、洗浄工程では、基板Wの中心には洗浄液があまり供給されない。
【0048】
仮に、その後のリンス工程においてもノズル32が基板Wの中心からずれた位置に洗浄液を供給すると、基板Wの中心の洗浄が不十分となる。
【0049】
そこで本実施形態では、洗浄工程では、基板Wの中心からずれた位置、すなわち、ロールスポンジ33とは異なる位置にノズル32が洗浄液を供給する(
図6参照)。そして、ロールスポンジ33を基板Wから離間させた上で、リンス工程では、基板Wの中心部分を含む位置にノズル32が洗浄液を供給する(
図7参照)。これにより、基板Wの中心部分も効果的に洗浄できる。
【0050】
なお、洗浄液の供給位置の具体的な切替法は種々考えられる。例えば、1つのノズル32を設け、そのノズル32による洗浄液の供給位置を調整してもよい。その具体的な手法は第3~第6の実施形態で説明する。
【0051】
別の例として、2以上のノズル32(例えば、単管ノズルと、スプレー状に洗浄液を噴霧する扇形ノズル)を設け、洗浄工程において1つのノズル32が基板Wの中心からずれた位置に洗浄液を供給し、リンス工程において他のノズル32が基板Wの中心を含む位置に洗浄液を供給してもよい。
【0052】
また、2以上のノズル32を設け、そのうちの1以上のノズル32による洗浄液の供給位置を調整してもよい。
【0053】
このように、第2の実施形態では、ロールスポンジ33を用いた洗浄工程ではロールスポンジ33とは異なる位置に、ロールスポンジ33を用いないリンス工程では基板Wの中心部分に洗浄液を供給する。そのため、基板Wの中心部分も効果的に洗浄できる。
【0054】
なお、ノズル32からの照射角度θの好ましい範囲は第1の実施形態で述べた通りである。また、本実施形態の考え方は基板洗浄装置の具体的な構成に関わらず適用可能であり、例えば基板Wの下面を洗浄するロールスポンジおよび基板Wの下面に洗浄液を供給するノズルが設けられてもよい。また、基板Wを鉛直方向に保持するものであってもよい。
【0055】
(第3の実施形態)
第2の実施形態において、ノズル32による洗浄液の供給位置を調整してもよいと述べた。以下に説明する第3~6の実施形態では、洗浄液の供給位置を調整する具体的な構成例を示す。
【0056】
図8は、第3の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図である。基板洗浄装置は、4つの基板保持部31と、ノズル32と、基板Wの上下面にそれぞれ接触するロールスポンジ33a,33bと、これらのロールスポンジ33a,33bをそれぞれ回転させる回転機構34a,34bと、ガイドレール35と、昇降機構36と、ノズル32による洗浄液供給位置(供給方向)を調整するノズル制御部60とを備えている。なお、基板保持部31に保持された基板Wの上面に洗浄液を供給するノズル32と、対応するノズル制御部60のみを描いているが、基板Wの下面に洗浄液を供給するノズルと、対応するノズル制御部をさらに設けてもよい。
【0057】
基板保持部31は例えばローラであり、保持部311および肩部(支持部)312の2段構成となっている。肩部312の直径は保持部311の直径よりも大きく、肩部312上に保持部311が形成されている。4つの基板保持部31のうちの少なくとも一部(例えば隣接する2つ)が駆動機構(例えばエアシリンダ)によって、互いに近接および離間する方向に移動可能となっている。
【0058】
回転機構34aは上側のロールスポンジ33aを回転させるものである。回転機構34aは、その上下方向の動きをガイドするガイドレール35に取り付けられており、かつ、昇降機構36に支持されている。そして、回転機構34aおよび上側のロールスポンジ33aは昇降機構36によって上下方向に移動されるようになっている。
【0059】
図示しないが、下側のロールスポンジ33bを回転させる回転機構34bもガイドレールに取り付けられており、不図示の昇降機構によって回転機構34bおよび下側のロールスポンジ33bが上下方向に移動されるようになっている。
なお、昇降機構36としては、例えばボールねじを用いたモータ駆動機構またはエアシ
リンダが使用される。
【0060】
昇降機構36によってロールスポンジ33a,33bは次のように移動する。
基板Wの搬入搬出時には、ロールスポンジ33a,33bは互いに離間した位置にある。つまり、ロールスポンジ33aは上昇した状態であり、ロールスポンジ33bは下降した状態である。
【0061】
洗浄工程においては、ロールスポンジ33aが下降し、かつ、ロールスポンジ33bが上昇する。これにより、ロールスポンジ33aは基板Wの上面に接触し、ロールスポンジ33bは基板Wの下面に接触する。
【0062】
リンス工程においては、ロールスポンジ33aが上昇し、かつ、ロールスポンジ33bが下降する。これにより、ロールスポンジ33a,33bは基板Wから離れる。
【0063】
ノズル制御部60はノズル32が基板W上のどこに洗浄液を供給するかを制御する。具体的には、洗浄工程において、ノズル制御部60は、ロールスポンジ33aとは異なる位置(基板Wの中心からずれた位置)に洗浄液が供給されるよう、ノズル32を制御する。また、リンス工程において、ノズル制御部60は、ノズル32から基板Wの中心部分に洗浄液が供給されるよう、ノズル32を制御する。ノズル制御部60はノズル32による洗浄液の照射方向を制御するとも言える。
【0064】
具体的には、ノズル制御部60は、チューブ61と、円板62と、モータ63と、シャフト64と、ガイド65と、固定具66とを有する。
【0065】
チューブ61はノズル32と連通しており、洗浄液をノズル32に導く。シャフト64の一端はモータ63によって回転される円板62の終端部に固定され、他端はノズル32の末端側に固定される。ガイド65には縦長の開口が形成されており、この開口にノズル32の末端が嵌まっている。固定具66には開口が形成されており、この開口にノズル32が貫通している。
【0066】
モータ63が円板62を回転させることで、シャフト64が移動する。シャフト64に固定されたノズル32はガイド65の開口に沿って上下に動き、その結果、固定具66を軸としてノズル32の角度が変化する。これにより、洗浄液の照射方向が制御される。
【0067】
(第4の実施形態)
次に説明する第4の実施形態は、ノズル制御部の構成が第3の実施形態とは異なる。以下、ノズル制御部について説明する。
【0068】
図9は、第4の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図である。同図のノズル制御部70は、カム71と、モータ72と、シャフト73と、ローラ74と、ガイド75と、固定具76とを有する。
【0069】
シャフト73の一端は、モータ72によって回転されるカム71とローラ74を介して接続され、他端はノズル32の末端側に固定されている。ガイド75には縦長の開口が形成されており、この開口にノズル32の末端が嵌まっている。固定具76には開口が形成されており、この開口にノズル32が貫通している。
【0070】
モータ72がカム71を回転させることで、カム71の形状に沿ってローラ74が動く。これにより、シャフト73が上下に移動し、シャフト73に固定されたノズル32はガイド75の開口に沿って上下に動く。その結果、固定具76を軸としてノズル32の角度
が変化する。これにより、洗浄液の照射方向が制御される。
【0071】
(第5の実施形態)
次に説明する第5の実施形態は、ノズル制御部の構成が第3の実施形態とは異なる。以下、ノズル制御部について説明する。
【0072】
図10は、第5の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図である。同図のノズル制御部80は、円板81と、モータ82と、シャフト83とを有する。なお、円板81に代えてカムを用いてもよい。
【0073】
シャフト83の一端は、モータ82によって回転される円板81と接続され、他端はノズル32の先端側に固定されている。モータ82が円板81を回転させることで、ノズル32の先端に接続されたシャフト83の位置が変化する。これにより、洗浄液の照射方向が制御される。
【0074】
(第6の実施形態)
次に説明する第6の実施形態は、ノズル制御部の構成が第3の実施形態とは異なる。以下、ノズル制御部について説明する。
【0075】
図11は、第6の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図である。同図のノズル制御部90は、ロボットアーム91と、保持具92とを有する。
【0076】
ロボットアーム91は回転軸911を中心として回動可能であり、その先端に保持具92が取り付けられている。保持具92はノズル32を保持している。ロボットアーム91が回動することで保持具92に保持されたノズル32の方向が変化する。これにより、洗浄液の照射方向が制御される。
【0077】
以上、いくつがのノズル制御部を例示したが、種々の変形例を想到できるのは言うまでもない。例えば、ノズル制御部がノズル32(またはノズル32を支持する部材)を昇降させる昇降機構を含み、ノズル32を上下方向に動かせるようにしてもよい。あるいは、ノズル制御部がノズル32(またはノズル32を支持する部材)を水平面内で搖動させる揺動機構を含んでいてもよい。その場合、リンス工程において、洗浄液の供給位置を基板Wの中心部から外周部へと移動させることで、洗浄液の排出効果を高めてもよい。
いずれにしても、ノズル制御部は、基板Wの中心部分にも、その他の位置にも洗浄液を供給できる構成であるのが望ましい。
【0078】
その他の構成例として、支柱にアームを取り付け、アームに1または複数のノズルを設置してもよい。アームにペン洗浄機構が設けられていてもよい。また、ノズルは、単管ノズル、扇形ノズル、2流体ジェットノズル、3流体ジェットノズルなどであってよく、その任意の組み合わせも可能である。さらに、ノズルは、ノズル制御部によって水平面内で平行移動可能でもよいし、支柱の動作によって鉛直方向に移動可能でもよいし、支柱を中心に回転することで基板の中心を通る(あるいは中心からずれた)軌道で移動可能であってもよい。複数のノズルを設ける場合、そのうちの1つのみが中心を通る軌道で移動し、他は中心からずれた軌道で移動してもよい。また、ノズルからの洗浄液照射角度を調整できてもよく、その適切な角度は第1の実施形態で説明した通りである。
【0079】
複数のノズルが同一の薬液を供給してもよいし、異なる薬液を供給してもよい。薬液は、アルカリ性、酸性または中性のものでもよいし、純水、ガスを混入させた純水、機能水、微量の薬液を混入させた純水であってもよい。
【0080】
(第7の実施形態)
次に説明する第7の実施形態は、複数のノズル32を備える基板洗浄装置において、各ノズル32による洗浄液の供給タイミングに関する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
図12は、第7の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す斜視図である。基板洗浄装置は、基板保持部31および2つのノズル32a,32bを備えている。一例として、ノズル32aは単管ノズルであり、ノズル32bは扇形ノズルである。その他、ノズル32a,32bは複数の流体を噴射するノズルでもよい。また、一方のノズル32aが基板Wの中心部分に洗浄液を供給し、他方のノズル32bが基板Wの中心部以外(例えば外周部分)に洗浄液を供給してもよい。ノズル32aからの洗浄液は、ノズル32bからの洗浄液と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
2つのノズル32a,32bから洗浄液を同時に供給すると、ノズル32aからの洗浄液と、ノズル32bからの洗浄液とが基板W上で混ざる領域では洗浄効果が低くなる可能性がある。
【0083】
そこで、本実施形態では、
図13に示すようにノズル32a,32bが同時に洗浄液を基板Wに供給しないようにする。より具体的には、まずノズル32aが基板Wに洗浄液を供給する。そして、ノズル32aからの洗浄液供給を停止した後に、ノズル32bが基板Wに洗浄液を供給する。その後、ノズル32bからの洗浄液供給を停止した後に、ノズル32aが基板Wに洗浄液を供給する。もちろん、ノズル32a,32bの両方が洗浄液を供給しない期間があってもよい。
【0084】
このように、第7の実施形態では、ノズル32a,32bが排他的に基板Wに洗浄液を供給するため、効果的に基板Wを洗浄できる。なお、3以上のノズルが設けられる場合であっても、これらが排他的に基板Wに洗浄液を供給すればよい。
【0085】
(第8の実施形態)
次に説明する第8の実施形態は、ノズル32から非定常的に洗浄液を供給するものである。基板洗浄装置の構成は
図2に示すものと同様である。
【0086】
図14は、第8の実施形態の一例に係る洗浄液の供給流量を模式的に示す図である。本例では、ノズル32は間欠的に洗浄液を供給する。例えば、ノズル32は期間T1,T3,T5において洗浄液を供給し、その間の期間T2,T4において洗浄液を供給しない。つまり、洗浄液を供給する期間と供給しない期間とが交互に繰り返される。
【0087】
洗浄液が供給されない期間T2,T4によって基板W上に洗浄液の膜がなくなる。そのような状態で急激に洗浄液を供給して(期間T3,T5)基板Wにショック(圧力変動)を与えることで、洗浄効果が向上する。
【0088】
このような制御は、例えばノズル32の根元にある電磁弁を開閉することによって実現される。
【0089】
図15は、第8の実施形態の別の例に係る洗浄液の供給流量を模式的に示す図である。本例では、ノズル32は洗浄液の供給量を変動させる。例えば、ノズル32は、期間T11において洗浄液の供給量を徐々に減らし、その後の期間T12において供給量を急激に増やし、その後の期間T13では供給量をほぼ一定に保ち、その後の期間T14において供給量を急激に減らす。つまり、洗浄液の供給量は、徐々に減少/増加したり、急激に減少/増加したり、ほぼ一定だったりする。
【0090】
このような態様によっても、特に洗浄液の供給量を急激に増やす期間において基板Wにショックを与えることができ、洗浄効果が向上する。
【0091】
このような制御は、例えばノズル32の根元にある供給タンクに加える圧力をレギュレータを用いて調整することによって実現される。
【0092】
このように、第8の実施形態では、1つの基板Wに対してノズルから非定常的に洗浄液を供給するため、洗浄力が向上する。
【0093】
(第9の実施形態)
次に説明する第9の実施形態は、ロールスポンジ33の表面材質に関する。
【0094】
ロールスポンジ33がポリビニルアルコール(PVA)などの樹脂を成型して製造される場合、成型時に型と接している表層部(以下、スキン層という)と、その内部の下層部とが形成される。スキン層がなく下層部が露出していることをスキン層が欠如しているともいう。
【0095】
スキン層は、厚さが1~10μm程度、気孔径が数μm~数10μmと小さく、固い層である。そのため、洗浄液を保持しやすいが、洗浄時に基板の表面を傷つけるおそれがある。
【0096】
一方、スキン層がない下層部は気孔径が10μm~数百μmと大きく、柔らかい層である。そのため、基板の表面にフィットしやすく、かつ、基板の表面を傷つけにくい。また、洗浄液が出入りしやすく、流出しやすい。
【0097】
以上の特徴を考慮し、ロールスポンジ33のどの部分をスキン層とし、どの部分においてスキン層を欠如させるかを設計するのが望ましい。具体的な態様は種々考えられる。
【0098】
図16は、ロールスポンジ33の第1例を示す図である。同図(a)はロールスポンジ33aの長手方向の側面図であり、同図(b)は同図(a)を側方から見た図である。
図16以降の図では、スポットを付した部分はスキン層が欠如していることを示している。ロールスポンジ33は、円筒状のロール本体331と、その外周面から外側に円柱状に突出した複数のノジュール部332とを有するものとする。図示のように、ロール本体331の両側面のみスキン層が欠如していてもよい。すなわち、ロール本体331の両側面以外はスキン層に覆われていてもよい。
【0099】
図17は、ロールスポンジ33の第2例を示す図である。図示のように、ロール本体331の表面と、ノジュール部332の側面のみスキン層が欠如していてもよい。すなわち、ロール本体331の側面およびノジュール部332の先端はスキン層に覆われていてもよい。
【0100】
図18は、ロールスポンジ33の第3例を示す図である。図示のように、ノジュール部332の先端のみスキン層が欠如していてもよい。すなわち、ロール本体331およびノジュール部332の側面はスキン層に覆われていてもよい。
【0101】
図19は、ロールスポンジ33の第4例を示す図である。図示のように、一部のノジュール部332の先端のみスキン層が欠如していてもよい。すなわち、これらのノジュール部332の先端以外、他のノジュール部332およびロール本体331はスキン層で覆われていてもよい。
【0102】
その他、ロールスポンジ33のすべての面がスキン層で覆われていてもよいし、すべての面でスキン層が欠如していてもよい。また、例示したロールスポンジ33のうちの任意の2以上の態様を組み合わせてもよく、ロール本体331の表面、同側面、ノジュール部332の側面および/または同先端の一部または全体においてスキン層が欠如していてもよいし、スキン層で覆われていてもよい。
【0103】
(第10の実施形態)
次に説明する第10の実施形態は、ロールスポンジ33以外の形状の洗浄部に関する。まずは、洗浄部が基板Wの中心を含む部分に接触して回転しながら洗浄を行うペンシルスポンジである場合について説明する。
【0104】
図20は、ペンシルスポンジ38の第1例を示す図である。同図のペンシルスポンジ38は円筒状であり、その下面が洗浄面である。図示のように、側面のみスキン層が欠如してもよい。すなわち、上面および下面はスキン層で覆われていてもよい。
【0105】
図21は、ペンシルスポンジ38の第2例を示す図である。図示のように、側面および下面のみスキン層が欠如してもよい。すなわち、上面はスキン層で覆われていてもよい。
【0106】
図22は、ペンシルスポンジ38の第3例を示す図である。図示のように、上面のみスキン層が欠如してもよい。すなわち、側面および下面はスキン層で覆われていてもよい。
【0107】
図23は、ペンシルスポンジ38の第4例を示す図である。図示のように、下面のみスキン層が欠如してもよい。すなわち、側面および上面はスキン層で覆われていてもよい。
【0108】
図24は、ペンシルスポンジ38の第5例を示す図である。同図のペンシルスポンジ38は下面から円柱状に突出した複数のノジュール部381を有する。ノジュール部381の下面のみがスキン層で覆われていてもよいし、ノジュール部381の全面においてスキン層が欠如していてもよいし、ノジュール部381の側面のみスキン層が欠如していてもよいし、ノジュール部381の先端のみスキン層が欠如していてもよいし、一部のノジュール部381の先端のみスキン層が欠如していてもよい。その他、上述したノジュール部381のいずれかを、
図20~
図23にそれぞれ示すペンシルスポンジ38に付加してもよい。
【0109】
その他、全面がスキン層で覆われていてもよいし、全面においてスキン層が欠如していてもよい。
【0110】
図25は、別の洗浄部391を示す図である。この洗浄部391は、ベース部391aのほぼ中央に取り付けられた円形のブラシ391bと、等間隔に配置されて径方向に沿って延びる4つのブラシ391cとを有し、これらの下面が洗浄面である。ベース部391a、ブラシ391bおよび/またはブラシ391cの一部または全体においてスキン層が欠如していてもよいし、両洗浄面がスキン層で覆われていてもよい。
【0111】
図26は、また別の洗浄部392を示す図である。この洗浄部392は、ベース部392aに取り付けられた十字型のブラシ392bを有し、その下面が洗浄面である。ブラシ392bの中央部は開口しており、この開口から洗浄液が供給されてもよい。ベース部392aおよび/またはブラシ392bの一部または全体においてスキン層が欠如していてもよいし、スキン層で覆われていてもよい。
【0112】
図27は、また別の洗浄部393を示す図である。この洗浄部393は、スクラブ部材
393aの一部にスポンジ部393bおよびブラシ部393cが形成されている。スクラブ部材393a、スポンジ部393bおよび/またはブラシ部393cの一部または全部においてスキン層が欠如していてもよいし、スキン層で覆われていてもよい。
【0113】
図28は、また別の洗浄部394を示す図である。この洗浄部394は、シート394a上に形成された突起394b,394cを有する。突起394bはシート394aの中心近傍から外周まで畝状に延びており、突起394cは突起394bより外周側からシート394aの外周まで畝状に延びている。突起394bおよび/または突起394cの一部または全部においてスキン層が欠如していてもよいし、スキン層で覆われていてもよい。
【0114】
図29は、また別の洗浄部395を示す図である。この洗浄部395は、台座395aと、その下面に取り付けられたブラシ395bとを有する。ブラシ395bの一部または全部においてスキン層が欠如していてもよいし、スキン層で覆われていてもよい。
【0115】
上述した各実施形態を任意に組み合わせてもよい。また、説明した基板洗浄装置は、
図1に示す基板処理装置の他、基板のベベルを研磨するベベル研磨装置、裏面を研磨する裏面研磨装置、部分的な研磨を行う部分研磨装置にも適用可能であり、さらには露光装置の洗浄装置にも応用可能である。
【0116】
各実施形態における動作は以下のソフト/システムを用いて行うことも可能である。ソフト/システムは、例えば、CPU、メモリ、記録媒体およびソフトウェアを持っているメインコントローラと、ユニットコントローラと、動作を実行するユニットとで構成されている。各実施形態の例において、ユニットとして基板洗浄装置を取り上げると、複数のノズルによる流体(洗浄液)噴射の量・角度・時間・位置移動等の制御およびロールの位置・回転速度等をユニットコントローラが行う。この制御の監視と動作指示をメインコントローラが行う。制御に必要なセンサは、ノズルへの洗浄液供給の圧力センサ、エンコーダ等の位置センサ、タイマ、および、ロールの位置センサ、摩擦力測定のロードセル、回転速度センサ等を用いることができる。また、ソフトウェアは初期のソフトウェアから更新することで後からインストール可能である。
【0117】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0118】
31 基板保持部
32,32a,32b ノズル
33,33a,33b ロールスポンジ
331 ロール本体
332 ノジュール部
60 ノズル制御部