IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和産業株式会社の特許一覧

特許7093632麺皮類用品質改良剤、麺皮類用組成物、及び麺皮類、並びに該麺皮類を用いた包餡食品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】麺皮類用品質改良剤、麺皮類用組成物、及び麺皮類、並びに該麺皮類を用いた包餡食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220623BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20220623BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20220623BHJP
【FI】
A23L7/109 D
A23L29/212
A23L35/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017252311
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019115319
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 健二
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-223713(JP,A)
【文献】特開2000-093105(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132752(WO,A1)
【文献】特開2017-042108(JP,A)
【文献】特開2001-120195(JP,A)
【文献】特開2018-191547(JP,A)
【文献】国産米粉100%使用! モランボン「お米で作った餃子の皮 20枚」 2013年10月1日(火) 新発売, [online], 2013.09.25, [検索日:2021.07.15], <URL: https://www.atpress.ne.jp/news/39021>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂加工澱粉(融点が5~80℃の食用油脂0.1~5重量%の量を表面付着力が75%以上となるようにコーティングした油脂コーティング澱粉、微結晶油脂を分散させた澱粉、および油脂α化澱粉を除く)、麺皮類に用いられる粉体材料100質量部当たり10~50質量部含有する包餡食品(春巻きを除く)用の包餡作業性向上剤。
【請求項2】
油脂加工澱粉(融点が5~80℃の食用油脂0.1~5重量%の量を表面付着力が75%以上となるようにコーティングした油脂コーティング澱粉、微結晶油脂を分散させた澱粉、および油脂α化澱粉を除く)、麺皮類に用いられる粉体材料100質量部当たり10~50質量部含有する包餡食品(春巻きを除く)用の包餡作業性向上用組成物。
【請求項3】
請求項1記載の包餡作業性向上剤又は請求項2記載の包餡作業性向上用組成物を使用した包餡食品(春巻きを除く)用の麺皮類。
【請求項4】
請求項3に記載の麺皮類を用いた包餡食品(春巻きを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、麺皮類用品質改良剤に関する。より詳しくは、所定の澱粉類を含有する麺皮類用品質改良剤、麺皮類用組成物、及び麺皮類、並びに該麺皮類を用いた包餡食品に関する。
【背景技術】
【0002】
包餡食品は、各種の具材を麺皮で包餡して製造されており、当該包餡食品には、餃子、焼売、ワンタン、包子、小籠包、ラビオリ等麺皮を使用した食品が挙げられる。包餡食品に使用される麺皮は、小麦粉、澱粉類(生澱粉及び/又は加工澱粉)等を原料として得られた生地から製造されている。
【0003】
近年、食品産業の進歩により、麺皮類や麺皮類を用いた包餡食品を工業的に製造して流通させる技術が発展してきた。例えば、特許文献1には、でん粉を主体とし、でん粉100gに対し米粉1.0g~50g(好ましくはでん粉100gに対し米粉1.0g~43g、より好ましくはでん粉100gに対し米粉1.0g~26g、さらに好ましくはでん粉100gに対し米粉2.5g~12g)を含むことにより、調理後の食品同士の付着防止、喫食時の破れを防止した食品生地に関する技術が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、小麦粉に対し、馬鈴薯澱粉、ワキシコーンスターチ、タピオカ澱粉の内の1種もしくは2種以上、糖類、油脂と水を混合した生地を複合機等で複合し、得た麺帯を、10~20℃で6時間以上熟成させることにより、冷凍中に皮のひび割れが生じなく、また、冷凍後に調理しても、食感、外観共に良好な麺皮類食品を製造する技術が開示されている。
【0005】
更に、例えば、特許文献3には、アルファー化処理された糯種澱粉を小麦粉に添加して包皮用生地を製造することにより、包皮用麺生地の伸展性、保水性等の作業性が著しく改善される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-223205号公報
【文献】特開2000-270796号公報
【文献】特開平06-86647号公報
【文献】特開2014-82994号公報
【文献】特開2000-106832号公報
【文献】WO2016/132752
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、包餡食品に使用される麺皮類を製造する技術において、様々な技術が開発されつつあるが、一方で、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観についても、要求されるレベルが向上しつつある。麺皮類の技術分野では、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を得るために、澱粉類が麺皮類に用いられている。
【0008】
しかしながら、麺皮類に澱粉類を用いると、生地がべたつき、作業性が低下するという問題があった。このように、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観について、要求されるレベルに達するためには、逆に、工業的な生産における作業性を低下させてしまうという問題が発生しているのが実情である。
【0009】
そこで、本技術では、麺皮類や麺皮類を用いた包餡食品の製造において、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を、所望の状態に保ちつつ、作業性も向上させる技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、麺皮類の製造技術について鋭意研究を行ったところ、油脂加工澱粉に着目した。油脂加工澱粉は、例えば、特許文献4及び5に示すように、揚げ物分野において、具材と衣との結着性を高める目的で使用されてきたものであるが、本願発明者は、麺皮類に油脂加工澱粉を使用すると、結着性とは相反する作用ともいえる、澱粉類の付着性を低下させることを見出した。その結果、麺皮類の生地のべたつきを抑制し、作業性を向上させることに成功した。更に、油脂加工澱粉を用いることで、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を、澱粉類を用いた場合と同等に、所望の状態に保つことができることも確認し、本技術を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本技術では、まず、油脂加工澱粉を含有する麺皮類用品質改良剤、及び油脂加工澱粉を含有する麺皮類用組成物を提供する。
本技術では、また、油脂加工澱粉を含有する麺皮類、及び、本技術に係る麺皮類用品質改良剤又は本技術に係る麺皮類用組成物を使用した麺皮類を提供する。
本技術では、更に、本技術に係る麺皮類を用いた包餡食品を提供する。
【0012】
ここで、本技術に用いる技術用語の定義付けを行う。
本技術において、「麺皮類」とは、小麦粉及び/又は小麦粉以外の穀粉、澱粉、及び他の原材料を加水混練してシート状に伸ばしたものを指し、特定の麺皮類に限定するものではない。例えば、餃子の皮、焼売の皮、小龍包の皮、包子の皮、ワンタンの皮、ラビオリ等のフィリング入りパスタの皮等が挙げられる。
【0013】
なお、例えば、特許文献5の使用例2や、特許文献6に示すように、油脂加工澱粉を麺類に用いる技術は存在するが、いずれも食感等の改善を目的としたものであり、作業性に関しての示唆は全くなく、課題提起すらされていない。また、麺類と麺皮類とでは、求められる食感や外観も異なり、更に、最終食品となるまでの製造工程も異なることから、必要とされる作業性についても異なるものである。
【発明の効果】
【0014】
本技術によれば、麺皮類や麺皮類を用いた包餡食品の製造において、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を、所望の状態に保ちつつ、作業性も向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
<油脂加工澱粉>
まず、本技術に用いる油脂加工澱粉について説明する。本技術に係る麺皮類用品質改良剤、麺皮類用組成物、及び麺皮類は、以下に説明する油脂加工澱粉を含有する。
【0017】
油脂加工澱粉は、前述の通り、揚げ物分野において、具材と衣との結着性を高める目的で使用されてきたものであるが、油脂加工澱粉を麺皮類に用いると、意外にも、澱粉類の付着性を低下させて、生地のべたつきを抑制しつつ、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を、所望の状態に保てることが分かった。
【0018】
本技術で用いる油脂加工澱粉は、本技術の効果を損なわない限り、公知の方法で製造された油脂加工澱粉を1種又は2種以上用いることができる。例えば、澱粉と食用油脂や乳化剤等を混合して、加熱や熟成等を行うことで得られる油脂加工澱粉を用いることができる。
【0019】
油脂加工澱粉の原料となる澱粉の種類は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、麺皮類に用いることが可能な澱粉を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシー澱粉等の生澱粉及びそれらの加工澱粉が挙げられる。加工澱粉として、例えば、アセチル化澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化澱粉、グリコール酸澱粉、架橋澱粉(例えば、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉)及びそれら加工を組み合わせた加工澱粉(例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロキル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0020】
油脂加工澱粉に用いる食用油脂の種類も、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の食用油脂を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、植物油脂(例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油またはハイオレイックヒマワリ油等)及び動物油脂(例えば、牛脂、ラード、魚油及び乳脂等)、さらにこれら動植物油脂を分別、水素添加またはエステル交換したものあるいは中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる。
【0021】
油脂加工澱粉に用いる乳化剤の種類も、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の乳化剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。
【0022】
上記以外の油脂加工澱粉の製造原料としては、大豆粉砕物(全脂大豆粉・脱脂大豆粉等)、pH調整剤などが挙げられる(例えば、特開2012-29602、WO2012/164801参照)。
【0023】
<麺皮類用品質改良剤>
本技術に係る麺皮類用品質改良剤は、前述した油脂加工澱粉を含有することを特徴とする。本技術に係る麺皮類用品質改良剤は、前述した油脂加工澱粉を含有していれば、前述した油脂加工澱粉のみで構成されていてもよいし、本技術の効果を損なわない限り、他の成分を1種又は2種以上、自由に選択して含有させることもできる。他の成分としては、例えば、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、乳化剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される機能を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0024】
<麺皮類用組成物>
本技術に係る麺皮類用組成物は、前述した油脂加工澱粉を含有することを特徴とする。本技術に係る麺皮類用組成物は、前述した油脂加工澱粉を含有していれば、前述した油脂加工澱粉のみで構成して、麺皮類の製造時に麺皮類に必要な原料と混合して用いても良いし、麺皮類に必要な原料の一部又は全部と混合した状態(所謂、ミックス製品)とすることもできる。
【0025】
ミックス製品とする場合、その目的に合わせて、麺皮類の原材料として用いられる澱粉類の一部又は全部を、油脂加工澱粉で置き換えることもできるし、麺皮類の原材料として用いられる澱粉類に加えて、油脂加工澱粉を含有させることもできる。
【0026】
<麺皮類>
本技術に係る麺皮類は、前述した油脂加工澱粉を含有する、又は、本技術に係る麺皮類用品質改良剤又は本技術に係る麺皮類用組成物を使用することを特徴とする。本技術に係る麺皮類は、油脂加工澱粉を用いているため、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を、所望の状態に保ちつつ、生地のべたつきを抑制して、製造時の作業性を向上させることができる。また、麺皮類や麺皮類を用いた包餡食品の製造時に、通常よりも、加水量を増やすことができる。そして、加水量を増やした場合でも、製造時の作業性が低下することなく、むしろ、製造時の作業性を向上させることができる。
【0027】
本技術に係る麺皮類の種類は特に限定されず、自由な形態の麺皮類に適用することができる。例えば、餃子の皮、焼売の皮、小龍包の皮、包子の皮、ワンタンの皮、ラビオリ等のフィリング入りパスタの皮等が挙げられる。
【0028】
なお、本技術に係る麺皮類は、冷蔵又は冷凍して保存・流通させることも可能である。
【0029】
<包餡食品>
本技術に係る麺皮類は、モチモチ感等の食感や、透明性等の外観を、所望の状態にしつつ、製造時の作業性が良いという特徴から、包餡食品に好適に用いることができる。本技術に係る包餡食品としては、餃子、焼売、小龍包、包子、ワンタン、ラビオリ等のフィリング入りパスタ等が挙げられる。なお、本技術に係る包餡食品も、冷蔵又は冷凍して保存・流通させることも可能である。
【実施例
【0030】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0031】
本実施例では、加工澱粉、油脂加工澱粉として、以下のものを用いた。
〔加工澱粉A〕リン酸架橋タピオカ澱粉(商品名 SF-1700:昭和産業株式会社)
〔油脂加工澱粉A〕油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉(商品名 サナスバインドA:株式会社サナス)
〔加工澱粉B〕アセチル化タピオカ澱粉(商品名 SF-500:昭和産業株式会社)
〔油脂加工澱粉B〕前記加工澱粉B100質量部に対し、サフラワー油(昭和産業株式会社)0.2質量部を添加して、カッターミキサーにて撹拌混合して混合物を得、該混合物をアルミバットに薄く広げ、140℃で3時間加熱熟成した後、室温にて冷却して、得られた油脂加工アセチル化タピオカ澱粉
【0032】
(1)評価方法
生地感、製皮性、包餡作業性の各評価項目における適正レベルとは、べたつき等の生地特性に伴う不具合(裂け、剥離、装置等への付着など)が問題とならないレベルであることを示す。
〔生地感〕
ミキシング工程における生地感について、5点を適正レベルの生地感とし、数字が大きいほど生地感が良好であるとして、10点満点で評価を行った。
【0033】
〔製皮性〕
圧延~型抜き工程における製皮性について、5点を適正レベルの製皮性とし、数字が大きいほど製皮性が良好であるとして、10点満点で評価を行った。
【0034】
〔包餡作業性〕
包餡工程における包餡作業性について、5点を適正レベルの作業性とし、数字が大きいほど作業性が良好であるとして、10点満点で評価を行った。
【0035】
〔食味評価〕
専門パネル5名により、皮部の食感・食味を対応する比較例(対照品)と対比して評価した。
◎ 全員が対照品より優れると評価した
○ 全員が対照品と同等以上の評価であった
× 対照品よりも劣ると評価した者が1名以上いた
【0036】
(2)麺皮類及び包餡食品の製造、評価
<実施例1、2及び比較例1、2:焼き餃子>
〔焼き餃子の製造〕
下記表1に示す各生地配合で、常法に従い、ミキシング、生地熟成、ロール製麺機による圧延(4回)を行い、麺帯を作製した。この麺帯を型抜きして、実施例1、2及び比較例1、2の各餃子皮(厚さ1mm・直径90mm)を製造した。
製造した実施例1、2及び比較例1、2の各餃子皮に、予め調製した餡17gを包餡した、各生餃子を作製した。これらを凍結し、冷凍餃子とした。冷凍保存10日後に、餃子焼成機を使って焼成(7分)し、各焼き餃子を製造した。
【0037】
〔評価〕
各餃子皮の製造時の生地感(ミキシング工程)、及び製皮性(圧延~型抜き工程での作業性)、並びに各餃子製造時の包餡作業性について、前記の評価基準に基づいて評価を行った。また、実施例1の焼き餃子については比較例1の焼き餃子を対照品とし、実施例2の焼き餃子については比較例2の焼き餃子を対照品とし、前記の評価基準で食味評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
〔考察〕
表1に示す通り、焼き餃子の皮に使用する澱粉類を、油脂加工澱粉に、置き換えることで、焼き餃子の皮の製造時の作業性(生地感、製皮性)や包餡作業性が大幅に改善された。一方で、油脂加工澱粉は、焼き餃子の食味や外観には、何ら影響を与えることなく、澱粉類を使用する目的通りの品質の焼き餃子が得られることが確認された。
【0040】
また、焼き餃子の皮に使用する澱粉類を、油脂加工澱粉に、置き換えることで、加水量を増やすことができた。通常、加水量を増やせば、生地にべたつきが生じて、作業性が低下するのが技術常識であるが、本技術を用いれば、加水量が増えるにも関わらず、作業性も向上するという効果があることが証明された。
【0041】
<実施例3及び比較例3:水餃子>
〔水餃子の製造〕
表2に示す各生地配合で、常法に従い、ミキシング、生地熟成、ロール製麺機による圧延(4回)を行い、麺帯を作製した。この麺帯を型抜きして、実施例3及び比較例3の各餃子皮(厚さ1.4mm・直径90mm)を製造した。
製造した実施例3及び比較例3の各餃子皮に、予め調製した餡17gを包餡し、各生餃子を作製した。これらを凍結し、冷凍餃子とした。冷凍保存10日後に、沸騰水中で7分茹でて、各水餃子を製造した。
【0042】
〔評価〕
各餃子皮の製造時の生地感(ミキシング工程)、及び製皮性(圧延~型抜き工程での作業性)、並びに各餃子製造時の包餡作業性について、前記の評価基準に基づいて評価を行った。また、実施例3の水餃子については比較例3の水餃子を対照品とし、前記の評価基準で食味評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
〔考察〕
表2に示す通り、水餃子の皮に使用する澱粉類を、油脂加工澱粉に置き換えることで、加水量が増えたにも関わらず、水餃子の皮の製造時の作業性(生地感、製皮性)や包餡作業性が大幅に改善された。特に、包餡作業性については、比較例3ではべたつきが感じられたが、油脂加工澱粉に置き換えた実施例3では、適正レベル以上の良好な結果であった。一方で、油脂加工澱粉は、水餃子の食味や外観には、何ら影響を与えることなく、澱粉類を使用する目的通りの品質の水餃子が得られることが確認された。
【0045】
参考例4及び比較例4:蒸し餃子>
〔蒸し餃子の製造〕
表3に示す各生地配合で、常法に従い、ミキシング、生地熟成、ロール製麺機による圧延(4回)を行い、麺帯を作製した。この麺帯を型抜きして、参考及び比較例4の各餃子皮(厚さ0.8mm・直径90mm)を製造した。
製造した参考例4及び比較例4の各餃子皮に、予め調製した餡17gを包餡し、各生餃子を作製した。これらを凍結し、冷凍餃子とした。冷凍保存10日後に、蒸籠で蒸し調理(7分)し、各蒸し餃子を製造した。
【0046】
〔評価〕
各餃子皮の製造時の生地感(ミキシング工程)、及び製皮性(圧延~型抜き工程での作業性)、並びに各餃子製造時の包餡作業性について、前記の評価基準に基づいて評価を行った。また、参考例4の蒸し餃子については比較例4の蒸し餃子を対照品とし、前記の評価基準で食味評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
〔考察〕
表3に示す通り、蒸し餃子の皮に使用する澱粉類の一部を、油脂加工澱粉に置き換えることで、加水量が増えたにも関わらず、蒸し餃子の皮の製造時の作業性(生地感、製皮性)や包餡作業性が大幅に改善された。特に、製皮性及び包餡作業性については、比較例4ではべたつきが感じられたが、油脂加工澱粉に置き換えた参考例4では、適正レベル以上の良好な結果であった。一方で、油脂加工澱粉は、蒸し餃子の食味や外観(皮の透明感等)には、何ら影響を与えることなく、澱粉類を使用する目的通りの品質の蒸し餃子が得られることが確認された。
【0049】
<実施例5及び比較例5:小籠包>
〔小籠包の製造〕
表4に示す各生地配合で、常法に従い、ミキシング、生地熟成、ロール製麺機による圧延(4回)を行い、麺帯を作製した。この麺帯を型抜きして、実施例5及び比較例5の各小籠包の皮(厚さ1.0mm・直径105mm)を製造した。
製造した実施例5及び比較例5の各小籠包の皮に、予め調製した餡17gを包餡した後、蒸籠で蒸し調理(7分)し、各小籠包を製造した。
【0050】
〔評価〕
各小籠包の皮の製造時の生地感(ミキシング工程)、及び製皮性(圧延~型抜き工程での作業性)、並びに小籠包製造時の包餡作業性について、前記の評価基準に基づいて評価を行った。また、実施例5の小籠包については比較例5の小籠包を対照品とし、前記の評価基準で食味評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
〔考察〕
表4に示す通り、小龍包の皮に使用する澱粉類を、油脂加工澱粉に、置き換えることで、加水量が増えたにも関わらず、小龍包の皮の製造時の作業性(生地感、製皮性)や包餡作業性が大幅に改善された。一方で、油脂加工澱粉は、小龍包の食味や外観には、何ら影響を与えることなく、澱粉類を使用する目的通りの品質の小龍包が得られることが確認された。
【0053】
<実施例6及び比較例6:焼売>
〔焼売の製造〕
表5に示す各生地配合で、常法に従い、ミキシング、生地熟成、ロール製麺機による圧延(4回)を行い、麺帯を作製した。この麺帯を型抜きして、実施例6及び比較例6の各焼売皮(厚さ0.5mm・70mm四方)を製造した。
製造した実施例6及び比較例6の各焼売皮に、予め調製した餡15gを包餡した後、蒸籠で蒸し調理(7分)し、実施例6及び比較例6の各焼売を製造した。
【0054】
〔評価〕
各焼売皮の製造時の生地感(ミキシング工程)、及び製皮性(圧延~型抜き工程での作業性)、並びに焼売製造時の包餡作業性について、前記の評価基準に基づいて評価を行った。また、実施例6の焼売については比較例6の焼売を対照品とし、前記の評価基準で食味評価を行った。結果を下記表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
〔考察〕
表5に示す通り、焼売の皮に使用する澱粉類を、油脂加工澱粉に、置き換えることで、加水量が増えたにも関わらず、焼売の皮の製造時の作業性(生地感、製皮性)や包餡作業性が大幅に改善された。一方で、油脂加工澱粉は、焼売の食味や外観には、何ら影響を与えることなく、澱粉類を使用する目的通りの品質の焼売が得られることが確認された。