(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】家畜舎暖房システム
(51)【国際特許分類】
A01K 31/20 20060101AFI20220623BHJP
A01K 1/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A01K31/20
A01K1/00 D
(21)【出願番号】P 2018103735
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村木 隆芳
(72)【発明者】
【氏名】北山 英博
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 忠吉
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02316263(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0046884(KR,A)
【文献】特開2005-237241(JP,A)
【文献】特開昭62-048326(JP,A)
【文献】特開平09-280789(JP,A)
【文献】特開2001-355996(JP,A)
【文献】特開2017-172926(JP,A)
【文献】国際公開第2007/002700(WO,A2)
【文献】特許第6548338(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 3/00
A01K 31/00 - 31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜が養育される複数の家畜舎と、
冷熱および温熱を同時に取り出し可能なヒートポンプと、を有し、
前記ヒートポンプは、一の前記家畜舎から出る廃熱を取り込んで、他の前記家畜舎に前記温熱として供給
し、
前記ヒートポンプは、
第1流路、第2流路、および第3流路を備え、前記第2流路および前記第3流路は前記第1流路から分岐されかつ前記第1流路に合流するように構成されるとともに、冷媒が循環する冷媒流路と、
前記第1流路に設けられ、前記第1流路を通過する前記冷媒を圧縮して、前記冷媒を温度上昇させる圧縮機と、
前記冷媒を膨張して、当該冷媒を温度下降させる膨張弁と、
前記第1流路に設けられ、前記圧縮機から前記膨張弁に向かって循環する前記冷媒により、第1媒体を加熱する温水熱交換器と、
前記第2流路に設けられ、前記膨張弁から前記圧縮機に向かって循環する前記冷媒により、第2媒体を冷却する冷水熱交換器と、
前記第3流路に設けられ、前記膨張弁から前記圧縮機に向かって循環する前記冷媒により、前記一の家畜舎から取り込んだ前記廃熱を備える空気を冷却する空気熱交換器と、
前記空気熱交換器によって冷却された前記空気を外部に排出する排出ファンと、
前記第1流路を通過する前記冷媒の供給を、前記第2流路または前記第3流路に切り替える切替え弁と、を有する家畜舎暖房システム。
【請求項2】
前記空気熱交換器のフィンを洗浄する洗浄部をさらに有する、請求項
1に記載の家畜舎暖房システム。
【請求項3】
前記一の家畜舎では成鶏が飼育され、前記他の家畜舎では幼雛が飼育される、請求項1
または2に記載の家畜舎暖房システム。
【請求項4】
前記一の家畜舎から出る前記廃熱は、換気扇を回転させるモータの発熱から取り出される、請求項1~3のいずれか1項に記載の家畜舎暖房システム。
【請求項5】
前記一の家畜舎から出る前記廃熱は、ランプから発生する熱から取り出される、請求項1~4のいずれか1項に記載の家畜舎暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜舎暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜舎暖房システムでは、家畜の養育環境を良好に保つことが求められている。例えば、養鶏システムでは、鶏の養育環境を良好に保つため、冬期の寒さ対策と、夏期の暑さ対策を講じる必要がある。特に生まれたての幼雛は、脆弱であるために、高温の環境で飼育する必要がある。
【0003】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、ボイラーによって養鶏舎等の畜産施設における給湯・暖房を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、化石燃料が用いられるため、二酸化炭素が発生することによって、地球規模の環境悪化の一因となる。
【0006】
一方、従来から家畜から発生される熱量や新鮮空気換気取入れの為の換気扇駆動熱等々内部発生熱は、無駄に外部に廃棄されている。これに対し、本発明者らは、これらの低温度廃熱を有効活用して、家畜舎暖房システムに於けるヒートポンプの効率(成績係数、以下COP)を向上させることを鋭意検討した。
【0007】
本発明は、このような検討の結果なされたものであり、環境を考慮するとともに、より高いCOPを実現することのできる家畜舎暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る家畜舎暖房システムは、家畜が養育される複数の家畜舎と、冷熱および温熱を同時に取り出し可能なヒートポンプと、を有し、前記ヒートポンプは、一の前記家畜舎から出る廃熱を取り込んで、他の前記家畜舎に前記温熱として供給する。また、前記ヒートポンプは、第1流路、第2流路、および第3流路を備え、前記第2流路および前記第3流路は前記第1流路から分岐されかつ前記第1流路に合流するように構成されるとともに、冷媒が循環する冷媒流路と、前記第1流路に設けられ、前記第1流路を通過する前記冷媒を圧縮して、前記冷媒を温度上昇させる圧縮機と、前記冷媒を膨張して、当該冷媒を温度下降させる膨張弁と、前記第1流路に設けられ、前記圧縮機から前記膨張弁に向かって循環する前記冷媒により、第1媒体を加熱する温水熱交換器と、前記第2流路に設けられ、前記膨張弁から前記圧縮機に向かって循環する前記冷媒により、第2媒体を冷却する冷水熱交換器と、前記第3流路に設けられ、前記膨張弁から前記圧縮機に向かって循環する前記冷媒により、前記一の家畜舎から取り込んだ前記廃熱を備える空気を冷却する空気熱交換器と、前記空気熱交換器によって冷却された前記空気を外部に排出する排出ファンと、前記第1流路を通過する前記冷媒の供給を、前記第2流路または前記第3流路に切り替える切替え弁と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上述のように構成した家畜舎暖房システムによれば、暖房用の電源として、化石燃料によるブリーダー装置やボイラーを使用しないで、電気式のヒートポンプを使用する。このため、二酸化炭素の排出を抑制することができる。また、ヒートポンプは、一の家畜舎から出る廃熱を取り込んで、他の家畜舎に温熱として供給するため、より高いCOPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る養鶏システムを示す系統図である。
【
図2】本実施形態に係る養鶏システムのヒートポンプを示す系統図である。
【
図3】洗浄部の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、
図1~
図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態では、家畜舎暖房システムとして、鶏を養育する養鶏システムを例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る養鶏システム1を示す系統図である。
図2は、本実施形態に係る養鶏システム1のヒートポンプ20を示す系統図である。
図3は、洗浄部50の構成を説明するための概略図である。
【0014】
養鶏システム1は、
図1に示すように、鶏が養育される2つの鶏舎10(10A、10B)と、冷熱および温熱を同時に取り出し可能なヒートポンプ20と、鶏舎10を加熱する加熱経路30と、鶏に供給する飲み水を冷却する冷却経路40と、鶏に給水するための給水管60と、給水管60の内部を流れる飲み水を冷却するための給水管熱交換器70と、を有する。
【0015】
本実施形態において、養鶏システム1は、2つの鶏舎10A、10Bを有する。第1鶏舎10Aでは、成鶏C2が飼育される。また第2鶏舎10Bでは、幼雛C1が飼育される。2つの鶏舎10A、10Bは同じ構成を備える。以下、第1鶏舎10Aおよび第2鶏舎10Bを総称して鶏舎10として、鶏舎10の構成を説明する。
【0016】
鶏舎10の床下には、
図1に示すように、加熱経路30が配設されている。また、鶏舎10の左側壁11には、換気扇12が取り付けられている。
【0017】
換気扇12は、不図示のモータによって回転される。ここで、モータの回転によってモータ自体が発熱し、換気扇12から廃熱として鶏舎10の外部に廃棄され、ヒートポンプ20に取り込まれる。
【0018】
鶏舎10の床面には、例えば敷きわらが配置され、その上で成鶏C2、幼雛C1が飼育される。成鶏C2は、代謝による放熱をしており、その熱は廃熱として鶏舎10の外部に廃棄され、ヒートポンプ20に取り込まれる(
図1の点線矢印参照)。
【0019】
鶏舎10の天井には、鶏舎10内を照らすランプ(不図示)が取り付けられている。ここで、ランプから発生する熱は廃熱として鶏舎10の外部に廃棄され、ヒートポンプ20に取り込まれる。
【0020】
ヒートポンプ20は、冷熱および温熱を同時に取り出し可能に構成されている。また、ヒートポンプ20は、温熱のみを取り出し可能にも構成されている。ヒートポンプ20は電気式であるため、火気を使用することがなく、火災の心配が不要である。以下、ヒートポンプ20の構成について、
図2を参照して、詳述する。
【0021】
ヒートポンプ20は、
図2に示すように、冷媒が循環する冷媒流路21と、冷媒を圧縮する圧縮機22と、冷媒を膨張する膨張弁23と、加熱経路30内を循環する第1媒体に温熱を供給する温水熱交換器24と、冷却経路40内を循環する第2媒体に冷熱を供給する冷水熱交換器25と、第1鶏舎10Aから取り込んだ廃熱を備える空気を冷却する空気熱交換器26と、空気熱交換器26によって冷却された空気を外部に排出する排出ファン27と、温水熱交換器24の下流側に設けられる切替え弁28と、を有する。なお、冷媒流路21を循環する冷媒としては、特に限定されないが、例えば二酸化炭素を用いることができる。
【0022】
ここで、第1鶏舎10Aから取り出す廃熱としては、成鶏C2の代謝による放熱、換気扇12による発熱、鶏舎10内のライトによる発熱、および日光による輻射熱などがあげられる。
【0023】
冷媒流路21は、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱する第1流路21aと、冷却経路40内を循環する第2媒体を冷却する第2流路21bと、第1鶏舎10Aから取り込んだ廃熱を備える空気を冷却する第3流路21cと、を有する。
【0024】
第1流路21aは、
図2に示すように、切替え弁28が設けられる位置において、第2流路21bおよび第3流路21cに分岐する。また、分岐された第2流路21bおよび第3流路21cは、合流部21dにおいて、第1流路21aに合流する。
【0025】
圧縮機22は、第1流路21aに設けられる。圧縮機22は、特に限定されないが、例えば、CO2冷凍機を用いることができる。冷媒が圧縮機22を通過する際に圧縮されることによって、圧縮機22は冷媒の温度を上昇させる。圧縮機22を通過する前の冷媒の温度は、例えば、5℃であって、圧縮機22を通過した後の冷媒の温度は、例えば、90℃である。
【0026】
膨張弁23は、第2流路21bおよび第3流路21cにそれぞれ設けられる。第2流路21bに設けられる膨張弁23は、切替え弁28および冷水熱交換器25の間に配置される。第3流路21cに設けられる膨張弁23は、切替え弁28および空気熱交換器26の間に配置される。なお、膨張弁23は、温水熱交換器24および切替え弁28の間に1つだけ配置されてもよい。冷媒が膨張弁23を通過する際に膨張されることによって、膨張弁23は冷媒の温度を低下させる。膨張弁23を通過する前の冷媒の温度は、例えば、60℃であって、膨張弁23を通過した後の冷媒の温度は、例えば、5℃である。
【0027】
温水熱交換器24は、第1流路21aのうち、圧縮機22から膨張弁23までの間に配置される。温水熱交換器24は、圧縮機22から膨張弁23に向かって循環する高温の冷媒により、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱する。
【0028】
冷水熱交換器25は、第2流路21bのうち、膨張弁23から圧縮機22までの間に配置される。冷水熱交換器25は、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する低温の冷媒により、冷却経路40内を循環する第2媒体を冷却する。
【0029】
空気熱交換器26は、第3流路21cのうち、膨張弁23から圧縮機22までの間に配置される。空気熱交換器26は、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する低温の冷媒により、第1鶏舎10Aから取り込んだ廃熱を備える空気を冷却する。
【0030】
空気熱交換器26は、
図3に示すように、洗浄部50によって洗浄される。一般的に、鶏舎10室内における空気は、鶏糞、抜け毛、埃による多量の粉塵が浮遊している。したがって、ヒートポンプ20の空気熱交換器26に、第1鶏舎10Aから空気を取り込むと、空気熱交換器26のフィンに粉塵が付着して目詰まりを起こしてしまい、廃熱を回収することができなくなる。
【0031】
本実施形態に係る養鶏システム1では、洗浄部50によって空気熱交換器26のフィンを洗浄するため、上記の事象が生じることを好適に防止することができる。
【0032】
洗浄部50は、
図3に示すように、エアーコンプレッサー51と、高圧エアーが通過する配管52と、切換え弁53と、間欠タイマー54と、空気管55と、を有する。このように構成された洗浄部50によれば、空気熱交換器26のフィンに付着する粉塵を、定期的に空気管55から噴出される高圧空気で吹き飛ばすことができる。また空気管55は、
図3の上下方向に移動可能に配置されていることが好ましい。この構成によれば、空気熱交換器26のフィンの全面を洗浄することができる。
【0033】
排出ファン27は、空気熱交換器26に隣り合うように配置されている。排出ファン27は、空気熱交換器26によって冷却された空気を外部に排出する。
【0034】
切替え弁28は、第1流路21aを通過する冷媒の供給を、第2流路21bまたは第3流路21cに切り替える。
【0035】
以上のように構成されたヒートポンプ20によれば、例えば、第1流路21aを通過する冷媒が第2流路21bに供給されるように、切替え弁28を切り替えることによって、第1流路21aおよび第2流路21bが連結される。この結果、温水熱交換器24は、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱するとともに、冷水熱交換器25は、冷却経路40内を循環する第2媒体を冷却する。このため、ヒートポンプ20は、温熱および冷熱を同時に取り出し可能な状態となる。
【0036】
一方、第1流路21aを通過する冷媒が第3流路21cに供給されるように、切替え弁28を切り替えることによって、第1流路21aおよび第3流路21cが連結される。この結果、温水熱交換器24は、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱するとともに、空気熱交換器26は第1鶏舎10Aから取り込んだ廃熱を備える空気を冷却して、排出ファン27によって、冷却された空気が外部に排出される。このため、ヒートポンプ20は、温熱のみを取り出し可能な状態となる。
【0037】
このとき、空気熱交換器26において、例えば、第1鶏舎10Aから廃熱を取り込むことなく冷たい外気から取り込んだ空気を使用する場合、温水熱交換器24において、第1媒体を所定の温度に上昇させる為の必要な動力は大きく成り、そのときのエネルギーをエネルギーQ1とする。これに対して、本実施形態において、第1鶏舎10Aから暖かい廃熱を取り込んだ場合、温水熱交換器24において、第1媒体を所定の温度に上昇させるため必要な動力は少なく成り、そのときのエネルギーをエネルギーQ2であるとする。
【0038】
冬期では、外気から取り込んだ空気は、第1鶏舎10Aから取り込んだ廃熱の温度よりも低いため、エネルギーQ2はエネルギーQ1よりも少なくなる。したがって、少ないエネルギーで大きな熱量を取り出せる事で、養鶏システム1のCOPをより高くすることができる。
【0039】
図1に戻って、加熱経路30は、ヒートポンプ20から取り出される温熱によって加熱される第1媒体が内部を循環することによって、鶏舎10を加熱する。加熱経路30は、
図1に示すように、鶏舎10の床下に配設される。
【0040】
加熱経路30内の第1媒体の循環は、加熱ポンプP1によって行われる。また、加熱経路30内を循環する第1媒体は、特に限定されないが、例えば水である。加熱経路30内を循環する第1媒体の温度は、例えば65℃である。
【0041】
冷却経路40は、
図1に示すように、ヒートポンプ20から取り出される冷熱によって冷却される第2媒体が内部を循環することによって、鶏に供給する飲み水を冷却する。冷却経路40は、
図1に示すように、冷水熱交換器25から冷熱を受け取る。
【0042】
冷却経路40内の第2媒体の循環は、冷却ポンプP2によって行われる。また、冷却経路40内を循環する第2媒体は、特に限定されないが、例えば水である。冷却経路40内を循環する第2媒体の温度は、例えば7~10℃である。
【0043】
給水管60は、井戸85からの水をポンプP3によってくみ上げて、鶏に飲み水として供給する。給水管60には、幼雛C1または成鶏C2が水を飲むためのニップル式給水器60aが取り付けられている。ニップル式給水器60aは、幼雛C1または成鶏C2が好適に水を飲むことができるように上下移動可能に配置されている。
【0044】
給水管熱交換器70は、給水管60の上方に配置されている。給水管熱交換器70の内部には、冷却経路40が配設されている。給水管熱交換器70は、第2媒体の冷熱によって、給水管60を流れる飲み水を例えば10~20℃に冷やすことができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る養鶏システム1による鶏の養育方法について説明する。以下、季節が夏期、冬期の場合に分けて、養鶏システム1による鶏の養育方法について説明する。
【0046】
まず、夏期の場合について説明する。
【0047】
夏期では、成鶏C2および幼雛C1の飲み水を冷却する必要がある。なお、幼雛C1は、成鶏C2よりも高温環境にすることが好ましい。
【0048】
夏期では、
図2に示す切替え弁28を切り替えて、第1流路21aおよび第2流路21bを連結し、ヒートポンプ20から温熱および冷熱を同時に取り出し可能とする。この結果、加熱経路30は、第2鶏舎10Bにおいて床下から、第2鶏舎10B内を暖めることができる。したがって、幼雛C1に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0049】
一方、給水管熱交換器70は、第2媒体からの冷熱によって給水管60内の飲み水を冷やすことができる。成鶏C2は、汗腺が無く、羽毛に覆われているため、発汗による体温調節ができず、熱が放散されにくく体内に熱がこもりやすい。このため、急激な外気温度の上昇があると体温調整が追いつかず熱射病にかかり、死に至る事がある。また、成鶏C2は、他の生物よりも、水を飲む量が多い特性を備えている。このため、第2媒体からの冷熱によって冷やされた飲み水を成鶏C2が飲むことで、成鶏C2の体温を好適に調整することができる。したがって、成鶏C2に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0050】
このように、夏期において、幼雛C1を飼育する第2鶏舎10Bの高温環境の維持と、成鶏C2を飼育する第1鶏舎10Aの飲み水の冷却とが同時に達成できるため、エネルギーの有効活用を図ることができる。
【0051】
次に、冬期の場合について説明する。
【0052】
冬期では、幼雛C1および成鶏C2ともに、急激な外気気温の低下に対応できるよう、鶏舎10内を高温環境にすることが好ましい。
【0053】
冬期では、
図2に示す切替え弁28を切り替えて、第1流路21aおよび第3流路21cを連結し、ヒートポンプ20から温熱のみを取り出し可能とする。このため、冷却経路40に循環する第2媒体は冷水熱交換器25によって冷却されない。
【0054】
加熱経路30は、鶏舎10の床下から、鶏舎10内を暖めることができる。したがって、幼雛C1および成鶏C2に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0055】
なお、春期や秋期のような中間期では、その日の気温に応じて、上述した夏期のモードおよび冬期のモードを適宜切り替えて使用される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る養鶏システム1は、鶏が養育される2つの鶏舎10(10A、10B)と、冷熱および温熱を同時に取り出し可能なヒートポンプ20と、を有し、ヒートポンプ20は、第1鶏舎10Aから出る廃熱を取り込んで、第2鶏舎10Bに温熱として供給する。このように構成された養鶏システム1によれば、暖房用の電源として、化石燃料によるブリーダー装置やボイラーを使用しないで、電気式のヒートポンプ20を使用する。このため、二酸化炭素の排出を抑制することができる。また、第1鶏舎10Aから出る廃熱をヒートポンプ20に取り込んで、第2鶏舎10Bに温熱を供給するため、より高いCOPを実現することができる。
【0057】
ヒートポンプ20は、第1流路21a、第2流路21b、および第3流路21cを備え、第2流路21bおよび第3流路21cは第1流路21aから分岐されかつ第1流路21aに合流するように構成されるとともに、冷媒が循環する冷媒流路21を有する。また、ヒートポンプ20は、第1流路21aに設けられ、第1流路21aを通過する冷媒を圧縮して、冷媒を温度上昇させる圧縮機22と、冷媒を膨張して、当該冷媒を温度下降させる膨張弁23と、を有する。また、ヒートポンプ20は、第1流路21aに設けられ、圧縮機22から膨張弁23に向かって循環する冷媒により、第1媒体を加熱する温水熱交換器24と、第2流路21bに設けられ、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する冷媒により、第2媒体を冷却する冷水熱交換器25と、を有する。また、ヒートポンプ20は、第3流路21cに設けられ、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する冷媒により、外部から取り込んだ空気を冷却する空気熱交換器26と、空気熱交換器26によって冷却された空気を外部に排出する排出ファン27と、第1流路21aを通過する冷媒の供給を、第2流路21bまたは第3流路21cに切り替える切替え弁28と、を有する。
【0058】
このように構成された養鶏システム1によれば、加熱経路30を循環する第1媒体は、鶏舎10を加熱し、冷却経路40を循環する第2媒体は、家畜に供給する飲み水を冷却する。このため、季節に応じて、鶏舎10の暖房および飲み水の冷却を切り替えることができる。よって、鶏に対して好適な養育環境を与えることができる。
【0059】
また、空気熱交換器26のフィンを洗浄する洗浄部50をさらに有する。このように構成された養鶏システム1によれば、空気熱交換器26のフィンに付着する粉塵を好適に除去することができ、第1鶏舎10Aから出る廃熱をヒートポンプ20の空気熱交換器26に好適に取り込むことができる。
【0060】
また、第1鶏舎10Aでは成鶏C2が飼育され、第2鶏舎10Bでは幼雛C1が飼育される。このように構成された養鶏システム1によれば、成鶏C2が飼育される第1鶏舎10Aにおいて、成鶏C2の発熱量は幼雛C1の発熱量よりも多いため、より多くの廃熱を利用することができる。さらに、幼雛C1は成鶏C2に対して、寒さに弱いため、幼雛C1に対して温熱を供給することができるため、より効率の良い養鶏システム1を提供することができる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0062】
例えば、上述した実施形態では、家畜舎暖房システムとして鶏を養育する養鶏システムに適用されたが、豚等の養育にも適用することができる。
【0063】
また、上述した実施形態では、鶏舎システムは2つの鶏舎を有していたが、3つ以上の鶏舎を有してもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では洗浄部50は高圧のエアーを空気熱交換器26のフィンに噴射することによって洗浄を行ったが、これに限定されず、高圧の水を空気熱交換器26のフィンに噴射する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 養鶏システム(家畜舎暖房システム)、
10 鶏舎、
10A 第1鶏舎(一の鶏舎)、
10B 第2鶏舎(他の鶏舎)、
20 ヒートポンプ、
21 冷媒流路、
21a 第1流路、
21b 第2流路、
21c 第3流路、
22 圧縮機、
23 膨張弁、
24 温水熱交換器、
25 冷水熱交換器、
26 空気熱交換器、
27 排出ファン、
28 切替え弁、
30 加熱経路、
40 冷却経路、
70 給水管熱交換器、
C1 幼雛、
C2 成鶏。