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特許7093718不透明な弾球遊技用樹脂基盤とその製造方法、及び、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤
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  • 特許-不透明な弾球遊技用樹脂基盤とその製造方法、及び、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】不透明な弾球遊技用樹脂基盤とその製造方法、及び、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20220623BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220623BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220623BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220623BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220623BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20220623BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220623BHJP
【FI】
A63F7/02 310C
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
B32B7/023
C08J5/18 CEY
C08L33/12
C08K3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018225631
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020081741
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大澤 侑史
(72)【発明者】
【氏名】多賀 翔
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 透
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-080504(JP,A)
【文献】特開2014-023717(JP,A)
【文献】特開2012-081173(JP,A)
【文献】特開2016-107085(JP,A)
【文献】特開2005-006758(JP,A)
【文献】特開2016-222744(JP,A)
【文献】特開2017-094666(JP,A)
【文献】特開2010-279466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
85~50質量%のメタクリル系樹脂(PM)と15~50質量%の多層構造ゴム粒子(RP)とを含有し、厚みが8~22mmであるメタクリル系樹脂層を含む樹脂シートからなる弾球遊技用樹脂基盤であって
前記メタクリル系樹脂層が白色顔料を含有し、
前記白色顔料は、酸化チタンであり、
前記メタクリル系樹脂層中の酸化チタンの濃度が0.0005~0.2質量%であり、
前記メタクリル系樹脂層の全原料樹脂のうち100~70質量%が、前記弾球遊技用樹脂基盤に使用される前に1回以上成形加工に使用されたことのあるリワーク材であり、
全光線透過率が50%以下であり
前記弾球遊技用樹脂基盤のヘイズをH(%)とし、全光線透過率をT(%)としたとき、下記式(1)を充足する、弾球遊技用樹脂基盤。
H/T≧1.0・・・(1)
【請求項2】
全光線透過率が30%以下である、請求項1に記載の弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項3】
JIS K 8722に準拠して測定される反射モードでの測色データにおいて、L*が30以上、a*の絶対値が40以下、b*の絶対値が40以下である、請求項1又は2に記載の弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項4】
JIS K7111に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が3.5kJ/m以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項5】
JIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率が1800~2500MPaである、請求項1~4のいずれか1項に記載の弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項6】
前記樹脂シートは、前記メタクリル系樹脂層と1つ以上の他の樹脂層とからなる積層シートである、請求項1~5のいずれか1項に記載の弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の前記弾球遊技用樹脂基盤の一方の面に、接着剤層を介して、透明フィルムの一方の面に印刷加工が施された印刷フィルムが直接積層された、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項8】
前記印刷フィルム側から当該印刷フィルムを貫通して前記弾球遊技用樹脂基盤の内部又は裏面に到達する釘打ち用の孔が形成された、請求項7に記載の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項9】
前記釘打ち用の孔の内部に釘が打ち込まれた、請求項8に記載の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤。
【請求項10】
前記メタクリル系樹脂層の全原料樹脂のうち100~70質量%は、前記弾球遊技用樹脂基盤に使用される前に1回以上成形加工に使用されたことのあるリワーク材を使用して、前記樹脂シートを成形する、請求項1~6のいずれか1項に記載の弾球遊技用樹脂基盤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不透明な弾球遊技用樹脂基盤とその製造方法、及び、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ台及びスロットマシーン等の弾球遊技機の基盤(以下、単に「弾球遊技用基盤」と言う。)の素材として、ベニア合板が広く用いられている。ベニア合板を用いた弾球遊技盤では、ベニア合板の遊技者側の表面に、透明フィルムの一方の面に印刷加工が施されたフィルム(以下、「印刷フィルム」とも言う。)が貼り合わされ、さらに、印刷フィルムを貫通する形でベニア合板に対して釘打ち用の孔開け及び釘打ちがなされる。
【0003】
弾球遊技用基盤の素材として、従来主流であったベニア合板に代わり、資源保護等の観点から、透明樹脂シート(透明樹脂板)の使用が検討されている(特許文献1の請求項1等)。本明細書において、特に明記しない限り、「シート」は可撓性を有しない板状物である。透明樹脂シートを用いた弾球遊技用基盤では、透明樹脂シートの裏面(遊技者側とは反対の面)に、印刷フィルムが貼り合わされ、遊技者側から透明樹脂シートに対して釘打ち用の孔開け及び釘打ちがなされる場合と、透明樹脂シートの表面(遊技者側の面)に印刷フィルムが貼り合わされ、さらに、印刷フィルムを貫通する形で透明樹脂シートに対して釘打ち用の孔開け及び釘打ちがなされる場合がある。
【0004】
透明樹脂シートの構成樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂及びメタクリル系樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂シートは、表面硬度が比較的低いため、遊技球との摩擦又は遊技球の衝突で傷が付きやすい傾向がある。メタクリル系樹脂シートは表面硬度が比較的高いため、遊技球との摩擦又は遊技球の衝突でも、傷が付きにくい。しかしながら、一般的なメタクリル系樹脂は耐衝撃性が不充分であり、釘打ち時に打ち釘の周辺に白化又は割れ(ミクロクラック)が発生する恐れがある。打ち釘の周辺に樹脂割れが生じると、釘の保持力が低下し、外観上も好ましくない。特許文献2には、釘打ち時の樹脂割れを抑制するために、メタクリル系樹脂にアクリル系ゴム粒子を添加して、耐衝撃性を改善した弾球遊技用基盤が開示されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-61047号公報
【文献】特開2008-49137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベニア合板を用いた弾球遊技盤では、以下の課題がある。ベニア合板では、一対の板を接着剤を用いて貼り合わせる際に空洞が形成されることがある。このように空洞が形成された場合、釘を打ち込んだ後の釘の保持力が不均一となり、釘の保持力の弱い部分では釘の緩みが生じる恐れがある。また、ベニア合板の表面に印刷フィルムを直接積層すると、印刷フィルムの演色性が低下する傾向があるため、通常はベニア合板の遊技者側の表面に白フィルム又は白紙を貼った後、印刷フィルムを貼る必要がある。この場合、工程数が増えるためコスト増に繋がり、好ましくない。さらに、ベニア合板は輸入に頼っていることから、供給国の自然災害、木材伐採による環境破壊、及び輸入に伴う諸問題等により、安定供給が難しい。
【0007】
一方、透明樹脂シートを用いた弾球遊技盤では、以下の課題がある。透明樹脂シートの表面に印刷フィルムを直接積層すると、印刷フィルムの演色性が低下する傾向があるため、透明樹脂シートの表面に白フィルム又は白紙を貼った後、印刷フィルムを貼ることが好ましい。この場合、工程数が増えるためコスト増に繋がり、好ましくない。また、一般的に、メタクリル系樹脂組成物中のゴム粒子の濃度を高くすれば、釘打ち時の樹脂割れを効果的に抑制できるが、孔開け加工又は切削加工の際には、樹脂融着により適切な加工が困難となる恐れがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、釘打ち時の樹脂割れが抑制され、打ち釘の保持力が良好で、切削加工性が良好で、印刷フィルムを直接積層した場合にも印刷フィルムの演色性が良好な弾球遊技用樹脂基盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の[1]~[13]の不透明な弾球遊技用樹脂基盤とその製造方法、及び印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤を提供する。
[1] 85~50質量%のメタクリル系樹脂(PM)と15~50質量%の多層構造ゴム粒子(RP)とを含有し、厚みが8~22mmであるメタクリル系樹脂層を含む樹脂シートからなり、全光線透過率が50%以下である、弾球遊技用樹脂基盤。
[2] 前記弾球遊技用樹脂基盤のヘイズをH(%)とし、全光線透過率をT(%)としたとき、下記式(1)を充足する、[1]の弾球遊技用樹脂基盤。
H/T≧1.0・・・(1)
[3] JIS K 8722に準拠して測定される反射モードでの測色データにおいて、L*が30以上、a*の絶対値が40以下、b*の絶対値が40以下である、[1]又は[2]の弾球遊技用樹脂基盤。
[4] 前記メタクリル系樹脂層が白色顔料を含有する、[1]~[3]のいずれかの弾球遊技用樹脂基盤。
[5] 前記白色顔料は、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[4]の弾球遊技用樹脂基盤。
【0010】
[6] JIS K7111に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が3.5kJ/m以上である、[1]~[5]のいずれかの弾球遊技用樹脂基盤。
[7] JIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率が1800~2500MPaである、[1]~[6]のいずれかの弾球遊技用樹脂基盤。
[8] 前記メタクリル系樹脂層の全原料樹脂のうち100~61質量%が、前記弾球遊技用樹脂基盤に使用される前に1回以上成形加工に使用されたことのあるリワーク材である、[1]~[7]のいずれかの弾球遊技用樹脂基盤。
[9] 前記樹脂シートは、前記メタクリル系樹脂層と1つ以上の他の樹脂層とからなる積層シートである、[1]~[8]のいずれかの弾球遊技用樹脂基盤。
【0011】
[10] [1]~[9]のいずれかの前記弾球遊技用樹脂基盤の一方の面に、接着剤層を介して、透明フィルムの一方の面に印刷加工が施された印刷フィルムが積層された、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤。
[11] 前記印刷フィルム側から当該印刷フィルムを貫通して前記弾球遊技用樹脂基盤の内部又は裏面に到達する釘打ち用の孔が形成された、[10]の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤。
[12] 前記釘打ち用の孔の内部に釘が打ち込まれた、[11]の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤。
【0012】
[13] 前記メタクリル系樹脂層の全原料樹脂のうち100~61質量%は、前記弾球遊技用樹脂基盤に使用される前に1回以上成形加工に使用されたことのあるリワーク材を使用して、前記樹脂シートを成形する、[1]~[9]のいずれかの弾球遊技用樹脂基盤の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、釘打ち時の樹脂割れが抑制され、打ち釘の保持力が良好で、切削加工性が良好で、印刷フィルムを直接積層した場合にも印刷フィルムの演色性が良好な弾球遊技用樹脂基盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る一実施形態の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[不透明な弾球遊技用樹脂基盤]
本発明の弾球遊技用樹脂基盤は、メタクリル系樹脂(PM)と多層構造ゴム粒子(RP)とを含有するメタクリル系樹脂層を含む樹脂シートからなる。樹脂シートは、上記メタクリル系樹脂層と1つ以上の他の樹脂層とからなる積層シートであってもよい。本発明の弾球遊技用樹脂基盤中のメタクリル樹脂組成物の含有量は特に制限されず、好ましくは20~100質量%である。
メタクリル系樹脂層の厚みは8~22mmであり、好ましくは8~19mm、より好ましくは8~16mmである。メタクリル系樹脂層は、厚みが8mm以上であれば、釘を良好に保持することができ、厚みが22mm以下であれば、切削加工性が良好となる。
本発明の弾球遊技用樹脂基盤は、全光線透過率が50%以下である不透明な基盤である。
【0016】
(メタクリル系樹脂層)
メタクリル系樹脂層は、メタクリル系樹脂(PM)と多層構造ゴム粒子(RP)とを含有するメタクリル系樹脂組成物からなる。
メタクリル系樹脂(PM)は光沢、透明性、及び表面硬度等に優れる樹脂であるが、一般的にメタクリル系樹脂単独では耐衝撃性が不充分である。メタクリル系樹脂(PM)に多層構造ゴム粒子(RP)を添加することで、耐衝撃性が改善され、釘打ち時の樹脂割れが抑制される。釘打ち時の樹脂割れが抑制される結果、樹脂割れによる打ち釘の保持力の低下が抑制される。
メタクリル系樹脂組成物中の多層構造ゴム粒子(RP)の濃度が高くなる程、耐衝撃性が高くなるが、NC(numerical control machining)加工機(多軸孔開け機)等を用いた孔開け加工又はルータ(トリミング)等を用いた切削加工の際には、樹脂融着により適切な加工が困難となる恐れがある。
メタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(PM)の含有量は85~50質量%であり、好ましくは80~55質量%、より好ましくは78~60質量%、特に好ましくは76~64質量%である。メタクリル系樹脂組成物中の多層構造ゴム粒子(RP)の含有量は15~50質量%であり、好ましくは20~45質量%、より好ましくは22~40質量%、特に好ましくは24~36質量%である。メタクリル系樹脂組成物の組成をこのように設計することで、釘打ち時の樹脂割れが抑制され、打ち釘の保持力が良好で、切削加工性が良好な弾球遊技用樹脂基盤が安定的に得られる。
【0017】
加熱溶融成形の安定性の観点から、メタクリル系樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは1~10g/10分、より好ましくは1.5~7g/10分、特に好ましくは2~4g/10分である。本明細書において、メタクリル系樹脂組成物のMFRは、特に明記しない限り、メルトインデクサーを用いて、温度230℃、3.8kg荷重下で測定される値である。
【0018】
<メタクリル系樹脂(PM)>
メタクリル系樹脂(PM)は、好ましくはメタクリル酸メチル(MMA)を含む1種以上のメタクリル酸炭化水素エステル(以下、単に「メタクリル酸エステル」とも言う。)に由来する構造単位を含む単独重合体又は共重合体である。メタクリル酸エステル中の炭化水素基は、メチル基、エチル基、及びプロピル基等の非環状脂肪族炭化水素基であっても、脂環式炭化水素基であっても、フェニル基等の芳香族炭化水素基であってもよい。メタクリル系樹脂(PM)中のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0019】
メタクリル系樹脂(PM)は、メタクリル酸エステル以外の1種以上の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、及びアクリル酸3-ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、入手性の観点から、MA、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、及びアクリル酸tert-ブチル等が好ましく、MA及びアクリル酸エチル等がより好ましく、MAが特に好ましい。メタクリル系樹脂(PM)における他の単量体に由来する構造単位の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0020】
メタクリル系樹脂(PM)は、好ましくはMMAを含む1種以上のメタクリル酸エステル、及び必要に応じて他の単量体を重合することで得られる。複数種の単量体を用いる場合は、通常、複数種の単量体を混合して単量体混合物を調製した後、重合を行う。重合方法としては特に制限されず、生産性の観点から、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、及び乳化重合法等のラジカル重合法が好ましい。
【0021】
メタクリル系樹脂(PM)の重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、好ましくは40,000~500,000である。Mwが40,000以上であることでメタクリル系樹脂層は耐擦傷性及び耐熱性に優れるものとなり、Mwが500,000以下であることでメタクリル系樹脂層は成形性に優れるものとなる。本明細書において、特に明記しない限り、「Mw」はゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0022】
<多層構造ゴム粒子(RP)>
多層構造ゴム粒子(RP)は、好ましくはアクリル系多層構造ゴム粒子である。多層構造ゴム粒子(RP)としては、1種以上のアクリル酸アルキルエステル共重合体を含む1層以上のグラフト共重合体層を含むアクリル系多層構造ゴム粒子が挙げられる。かかるアクリル系多層構造ゴム粒子としては、特開2004-352837号公報等に開示のものを使用できる。アクリル系多層構造ゴム粒子は好ましくは、炭素数6~12のアクリル酸アルキルエステル単位を含む架橋重合体層を含むことができる。
多層構造ゴム粒子(RP)の層数は特に制限されず、2層でも3層以上でもよい。好ましくは、多層構造ゴム粒子(RP)は、最内層(RP-a)と1層以上の中間層(RP-b)と最外層(RP-c)とを含む3層以上のコアシェル多層構造粒子である。
【0023】
最内層(RP-a)の構成重合体は、MMA単位とグラフト性又は架橋性単量体単位とを含み、さらに必要に応じて1種以上の他の単量体単位を含むことができる。最内層(RP-a)の構成重合体中のMMA単位の含有量は、好ましくは80~99.99質量%、より好ましくは85~99質量%、特に好ましくは90~98質量%である。3層以上の多層構造粒子(RP)中の最内層(RP-a)の割合は、好ましくは0~15質量%、より好ましくは7~13質量%である。最内層(RP-a)の割合がかかる範囲内にあることで、メタクリル系樹脂層の耐熱性を高めることができる。
【0024】
中間層(RP-b)の構成重合体は、炭素数6~12のアクリル酸アルキルエステル単位とグラフト性又は架橋性単量体単位とを含み、さらに必要に応じて1種以上の他の単量体単位を含むことができる。中間層(RP-b)の構成重合体中のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、好ましくは70~99.8質量%、より好ましくは75~90質量%、特に好ましくは78~86質量%である。3層以上の多層構造ゴム粒子(RP)中の中間層(RP-b)の割合は、好ましくは40~60質量%、より好ましくは45~55質量%である。中間層(RP-b)の割合がかかる範囲内であることで、メタクリル系樹脂層の表面硬度を高め、メタクリル系樹脂層を割れ難くすることができる。
【0025】
最外層(RP-c)の構成重合体は、MMA単位を含み、さらに必要に応じて1種以上の他の単量体単位を含むことができる。最外層(RP-c)の構成重合体中のMMA単位の含有量は、好ましくは80~100質量%、より好ましくは85~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。3層以上の多層構造粒子(RP)中の最外層(RP-c)の割合は、好ましくは35~50質量%、より好ましくは37~45質量%である。最外層(RP-c)の割合がかかる範囲内であることで、メタクリル系樹脂層の表面硬度を高め、メタクリル系樹脂層を割れ難くすることができる。
【0026】
多層構造ゴム粒子(RP)の粒子怪は、好ましくは0.05~0.3μmである。粒子径は、電子顕微鏡観察及び動的光散乱測定等の公知方法により測定することができる。電子顕微鏡観察による測定は例えば、電子染色法により多層構造ゴム粒子(RP)の特定の層を選択的に染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて複数の粒子の粒子径を実測し、それらの平均値を求めることによって行うことができる。動的光散乱法は、粒子径が大きくなる程、粒子のブラウン運動が大きくなるという原理を利用する測定法である。
【0027】
多層構造ゴム粒子(RP)は、多層構造ゴム粒子(RP)同士の膠着による取り扱い性の低下、及び、溶融混練時の分散不良による耐衝撃性の低下を抑制するため、多層構造ゴム粒子(RP)と分散用粒子(D)とを含むラテックス又は粉体の形態で用いることができる。分散用粒子(D)は例えば、MMAを主とする1種以上の単量体の(共)重合体からなり、多層構造ゴム粒子(RP)よりも相対的に粒子径の小さい粒子を用いることができる。
【0028】
分散用粒子(D)の粒子径は、分散性向上の観点から、できるだけ小さいことが好ましく、乳化重合法による製造再現性の観点から、好ましくは40~120nm、より好ましくは50~100nmである。分散用粒子(D)の添加量は、分散性向上効果の観点から、多層構造ゴム粒子(RP)と分散用粒子(D)との合計量に対して、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%である。
【0029】
<全光線透過率T>
本発明の弾球遊技用樹脂基盤は、全光線透過率Tが50%以下であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。全光線透過率Tが50%以下であれば、本発明の弾球遊技用樹脂基盤は充分に不透明となり、表面に印刷フィルムを直接貼り合わせても、印刷フィルムの演色性が優れ、好ましい。上記全光線透過率Tは例えば、メタクリル系樹脂組成物に着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂を添加することで、実現することができる。
【0030】
<ヘイズH>
本発明の弾球遊技用樹脂基盤は、ヘイズHが好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。ヘイズHが50%以下であれば、本発明の弾球遊技用樹脂基盤は充分に不透明となり、表面に印刷フィルムを直接貼り合わせても、印刷フィルムの演色性が優れ、好ましい。上記へイズHは例えば、メタクリル系樹脂組成物に着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂を添加することで、実現することができる。
また、本発明の弾球遊技用樹脂基盤は、以下の式(1)を充足することが好ましい。
H/T≧1.0・・・(1)
ここで、Hは弾球遊技用樹脂基盤のヘイズ(%)であり、Tは弾球遊技用樹脂基盤の全光線透過率(%)である。つまり、H/Tは弾球遊技用樹脂基盤のヘイズHと全光線透過率Tとの比を表しており、上記式(1)を充足することで、本発明の弾球遊技用樹脂基盤は充分に不透明となり、表面に印刷フィルムを直接貼り合わせても、印刷フィルムの演色性が優れ、好ましい。H/Tは好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上、特に好ましくは5.0以上、最も好ましくは7.0以上である。なお、全光線透過率Tの測定値が0%であった場合は、Tが0.1であると見做して式(1)を計算する。
【0031】
<色調>
本発明の弾球遊技用樹脂基盤の色調は特に制限されず、JIS K 8722に準拠して測定される反射モード(ただし、正反射は含まない)での測色データにおいて、L*(明度)の値が好ましくは30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは50以上、最も好ましくは70以上である。また、a*の絶対値、b*の絶対値はいずれも、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは5以下である。この場合、弾球遊技用樹脂基盤は色調が白色に近づき、光を強く反射するため、弾球遊技用樹脂基盤の表面に印刷フィルムを直接貼り合わせても、印刷フィルムの演色性が優れ、好ましい。上記色調は例えば、メタクリル系樹脂組成物に着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂を添加することで、実現することができる。
【0032】
<着色剤>
着色剤としては、顔料及び有機染料が挙げられる。着色剤は、1種または2種以上用いることができる。
顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料;酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、及び酸化亜鉛等の白色顔料等が挙げられる。複数種の顔料を併用してもよい。中でも、弾球遊技用樹脂基盤の表面に印刷フィルムを直接貼り合わせた際の印刷フィルムの演色性の良さの観点から、白色顔料が好ましく、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及びこれらの組合せが特に好ましい。
有機染料としては、アンスラキノン類、アゾ類、アントラピリドン類、ペリレン類、アントラセン類、ペリノン類、インダンスロン類、キナクリドン類、キサンテン類、チオキサンテン類、オキサジン類、オキサゾリン類、インジゴイド類、チオインジゴイド類、キノフタロン類、ナフタルイミド類、シアニン類、メチン類、キノリン類、ピラゾロン類、ラクトン類、クマリン類、ビス-ベンズオキサゾリルチオフェン類、ナフタレンテトラカルボン酸類、フタロシアニン類、トリアリールメタン類、アミノケトン類、ビス(スチリル)ビフェニル類、アジン類、ローダミン類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。中でも、弾球遊技用樹脂基盤の表面に印刷フィルムを直接貼り合わせた際の印刷フィルムの演色性の良さの観点から、白色染料が好ましい。
【0033】
メタクリル系樹脂組成物中の着色剤の添加濃度は、メタクリル系樹脂層の厚み及び所望の全光線透過率に応じて適宜設計される。添加量は、過少では全光線透過率が50%超となる恐れがあり、過多では、弾球遊技用樹脂基盤の靭性が低下して、釘打ち時又は切削加工時に樹脂割れが発生する恐れがある。添加濃度は、好ましくは0.0001~0.5質量%、より好ましく0.0005~0.2質量%、さらに好ましくは0.001~0.1質量%、特に好ましくは0.0012~0.08質量%、最も好ましくは0.0014~0.06質量%である。
【0034】
<メタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂>
メタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、メタクリル系樹脂(PM)との屈折率差が0.01以上である樹脂が好ましい。具体的には、変性メタクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、及びABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹;ポリ塩化ビニル;ポリエステル;ポリアミド;ポリフェニレンサルファイド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリスルホン;ポリフェニレンオキサイド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
【0035】
<その他の添加剤>
メタクリル系樹脂組成物は必要に応じて、着色剤及びメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂以外の他の各種添加剤を含むことができる。他の添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、光拡散剤、艶消し剤、ブロック共重合体等の耐衝撃性改質剤、及び蛍光体等が挙げられる。メタクリル系樹脂組成物中のこれら添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。メタクリル系樹脂(PM)と多層構造ゴム粒子(RP)との合計100質量部に対して、例えば、酸化防止剤の含有量は0.01~1質量部、紫外線吸収剤の含有量は0.01~3質量部、光安定剤の含有量は0.01~3質量部、滑剤の含有量は0.01~3質量部が好ましい。
メタクリル系樹脂組成物に、着色剤、メタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂、又は他の各種添加剤を添加させる場合、添加タイミングは特に制限されず、メタクリル系樹脂(PM)の重合時、多層構造ゴム粒子(RP)の重合時、メタクリル系樹脂(PM)と多層構造ゴム粒子(RP)の混合時のいずれのタイミングでもよい。
【0036】
<シャルピー衝撃強度と曲げ弾性率>
本発明の弾球遊技用樹脂基盤のJIS K7111に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度(測定条件:ノッチあり)は特に制限されず、釘打ち時の樹脂割れを効果的に抑制する観点から、好ましくは3.5kJ/m以上、より好ましくは3.7kJ/m以上、さらに好ましくは3.9kJ/m以上、特に好ましくは4.0kJ/m以上、最も好ましくは4.5kJ/m以上である。
本発明の弾球遊技用樹脂基盤のJIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率は特に制限されず、打ち釘の保持力を良好とする観点から、好ましくは1800~2500MPa、より好ましくは1900~2400MPa、特に好ましくは2000~2300MPaである。
シャルピー衝撃強度及び曲げ弾性率は、メタクリル系樹脂層中の多層構造ゴム粒子(RP)及び/又は着色剤の含有量等によって調整することができる。
【0037】
(他の樹脂層)
本発明の弾球遊技用樹脂基盤を構成する樹脂シートは、メタクリル系樹脂層と1つ以上の他の樹脂層とからなる積層シートであってもよい。他の樹脂層の構成樹脂としては特に制限されず、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びこれらの樹脂を含む組成物等が挙げられる。
【0038】
(樹脂シートの成形方法)
メタクリル系樹脂層を含む単層構造又は積層構造の樹脂シートは、押出成形法、キャスト成形法、及び射出成形法等の公知の成形方法を用いて成形することができる。メタクリル系樹脂層中の多層構造ゴム粒子(RP)の均一分散性等の観点から、押出成形法が好ましい。積層シートの場合は、共押出成形法が好ましい。
メタクリル系樹脂(PM)、多層構造ゴム粒子(RP)、必要に応じて着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂、及び必要に応じて他の添加剤を押出機に投入し、溶融混練し、得られた溶融状態の樹脂組成物をTダイからシート状の形態で押出し、複数の冷却ロールを用いて加圧及び冷却し、引取りロールによって引き取ることで、単層構造の樹脂シートを成形することができる。
積層構造の場合は、溶融状態の各層の樹脂原料をTダイ流入前に積層するフィードブロック方式又はTダイ内部で積層するマルチマニホールド方式にて積層した後、Tダイから積層シート状の形態で押出し、複数の冷却ロールを用いて加圧及び冷却し、引取りロールによって引き取ることで、成形することができる。
【0039】
すべての原料樹脂についてバージン材を用いてもよいが、本発明では、弾球遊技用樹脂基盤の不透明化の観点から、少なくとも一部の原料樹脂はリワーク材を用いることが好ましい。すべての原料樹脂について、リワーク材を用いてもよい。
「バージン材」とは、過去に成形加工に供されたことが一度もない成形材料である。
「リワーク材」とは、過去に、シート、フィルム、又は他の任意の形状の成形品として1回以上成形加工されたことのある成形材料である。リワーク材として利用される成形品としては、押出成形においてシート幅方向の両端部のトリミング処理によって生成された端材、押出成形において生産条件の調整時等に発生する板厚等の物性が規格外である規格外品、弾球遊技用樹脂基盤の切削加工によって生じる端材、押出成形以外の方法で成形された規格外成形品(射出成形品等)等が挙げられる。製品として出荷されない端材及び規格外品等を用いて得られたリワーク材を用いることで、資源を有効利用でき、好ましい。
リワーク材の形態としては、端材及び規格外品等のリワーク材用成形品を公知方法にて粉砕して得られた粉砕物、又は、この粉砕物を押出機等を用いて溶融混練し、ペレット等の形態に加工した加工物等が挙げられる。粉砕物を用いる場合、粉砕の程度は、押出機による溶融混練が安定して行える範囲であれば特に限定されない。粉砕物は例えば、最長長さが1~15mm程度のフレーク状不定形物であることが好ましい。
【0040】
リワーク材の使用量が増加するにつれて、メタクリル系樹脂層の全光線透過率が低下する傾向がある。リワーク材を使用することで、着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂の使用量を低減しても、又は使用せずとも、弾球遊技用樹脂基盤の全光線透過率を低下させることができる。例えば、着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂の種類によっては、その添加により弾球遊技用樹脂基盤の靭性が低下する場合があるが、着色剤及び/又はメタクリル系樹脂(PM)と屈折率の異なる樹脂の使用を低減する又は不使用とすることで、弾球遊技用樹脂基盤の靭性低下を抑制することができる。
【0041】
リワーク材の使用量は、メタクリル系樹脂層の全光線透過率を低減でき、かつ、メタクリル系樹脂層として必要な光学特性、表面硬度、外観、及び耐熱性等の物性を損なわない範囲内で、調整することができる。メタクリル系樹脂層の全原料樹脂のうち100~61質量%、好ましくは95~70質量%、特に好ましくは90~75質量%、最も好ましくは85~80質量%が、弾球遊技用樹脂基盤に使用される前に1回以上成形加工に使用されたことのあるリワーク材であることが好ましい。
バージン材とリワーク材とを併用する場合、リワーク材は、メタクリル系樹脂(PM)単独材料でもよいし、メタクリル系樹脂(PM)と多層構造ゴム粒子(RP)との混合材料でもよいし、メタクリル系樹脂(PM)及び多層構造ゴム粒子(RP)以外の1種以上の任意の樹脂(混合物)(例えば、AS樹脂等)でもよい。
【0042】
[印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤]
本発明の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤は、メタクリル系樹脂(PM)と多層構造ゴム粒子(RP)とを含有するメタクリル系樹脂層を含む上記の本発明の不透明な弾球遊技用樹脂基盤の一方の面に、接着剤層を介して、印刷加工を施された透明フィルムが積層されたものである。
【0043】
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤の構成について、説明する。図1は要部模式断面図である。
本実施形態の印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤1は、85~50質量%のメタクリル系樹脂(PM)と15~50質量%の多層構造ゴム粒子(RP)とを含有し、厚みが8~22mmであるメタクリル系樹脂層を含み、全光線透過率が50%以下である弾球遊技用樹脂基盤10と、その一方の面に積層された印刷フィルム20とを含む。印刷フィルム20は、弾球遊技用樹脂基盤10の一方の面(遊技者側の面)に接着剤層30を介して積層されている。
【0044】
印刷フィルム20は、基材フィルムである透明フィルム21の一方の面に、文字、数字、記号、模様、パターン、図形、及び写真等の印刷加工が施されて、印刷層22が形成されたものである。印刷フィルム20の弾球遊技用樹脂基盤10との貼合せ面には、弾球遊技用樹脂基盤10の表面に貼り合わされる前にあらかじめ接着剤層30が形成されていてもよい。接着剤層30は、弾球遊技用樹脂基盤10の印刷フィルム20との貼合せ面にあらかじめ形成されていてもよい。弾球遊技用樹脂基盤10の表面に印刷フィルム20を貼り合わせることで、意匠性が向上し、娯楽性が向上する。また、印刷フィルム20は、弾球遊技用樹脂基盤10の表面に隠蔽性を有する白色等の紙又はフィルムを介して、接着されていてもよい。
【0045】
印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤1には、印刷フィルム20側から印刷フィルム20を貫通して弾球遊技用樹脂基盤10の内部又は裏面に到達する1つ以上の釘打ち用の孔(図示略)が形成され、各釘打ち用の孔の内部に釘(図示略)が打ち込まれる。
遊技者は、図示上方から矢印Aの方向に印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤1を視認する。本実施形態では、弾球遊技用樹脂基盤10が全光線透過率が50%以下の不透明な基盤であるので、弾球遊技用樹脂基盤10の表面に印刷フィルム20を直接貼り合わせても、印刷フィルム20の演色性が優れ、好ましい。
印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤1は、上記以外の構成要素を有していてもよい。例えば、演出効果向上のために、印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤1の裏面側(図示下側)に、液晶表示パネル等の表示パネル及びLED(発光ダイオード)等の照明装置等を取り付けてもよい。
【0046】
(印刷フィルム)
印刷フィルムの基材フィルムである透明フィルムとしては特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルム;メタクリル系樹脂フィルム;メタクリル系樹脂とアクリル系ゴム粒子とを含む耐衝撃メタクリル系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニル樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)フィルム;セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)フィルム等が挙げられる。中でも、印刷性、メタクリル系樹脂層を含む弾球遊技用樹脂基盤との貼り合わせやすさ、孔開け加工性、切削加工性、環境試験における弾球遊技用樹脂基盤の反り抑制、及び環境試験における印刷フィルムの剥離の抑制等の観点から、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系ゴム粒子を含む耐衝撃メタクリル系樹脂フィルム、及びポリ塩化ビニル系樹脂フィルム等が好ましい。
印刷加工は、公知方法にて行うことができる。
【0047】
印刷フィルムの厚みを厚くすると、印刷性及び取り扱い性を向上でき、また、接着剤層の厚みを厚くできるため、環境試験において印刷フィルムの弾球遊技用樹脂基盤からの浮き又は剥離を効果的に抑制できる傾向がある。透明フィルムの厚みを薄くすると、印刷加工時の作業性を向上でき、また、切削加工時のバリ(切削屑)及び剥離を効果的に抑制できる傾向がある。かかる観点から、印刷フィルムの厚みは、好ましくは30~100μm、より好ましくは50~80μmである。
【0048】
接着剤層に用いて好適な接着剤は、弾球遊技用樹脂基盤と印刷フィルムとを良好に貼り付けることができればよく、特に制限されないが、アクリル酸エステル共重合体を含む公知のアクリル系接着剤が好ましい。アクリル酸エステル共重合体を含む接着剤は、常温(20~25℃)でも接着剤としての機能を良好に発現することができ、接着時に熱をかけても、印刷フィルムの剥がれが起こらないため好ましい。アクリル酸エステル共重合体中のアルキル基としては特に制限されず、メチル基、エチル基、ブチル基、及び2-エチルヘキシル基等が挙げられる。中でも、エチル基が好ましい。すなわち、アクリル酸エステル共重合体としては、アクリル酸エチル共重合体が好ましい。
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、釘打ち時の樹脂割れが抑制され、打ち釘の保持力が良好で、切削加工性が良好で、印刷フィルムを直接積層した場合にも印刷フィルムの演色性が良好な弾球遊技用樹脂基盤を提供することができる。
【実施例
【0050】
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
[評価項目及び評価方法]
評価項目及び評価方法は、以下の通りである。
(重量平均分子量(Mw))
樹脂のMwは、下記の手順でGPC法により求めた。GPC装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC-8320(品番)を使用した。溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。カラムとして東ソー株式会社製の「TSKgel SuperMultipore HZM-M」の2本と「SuperHZ4000」とを直列に繋いだものを用いた。樹脂4mgをテトラヒドロフラン(THF)5mlに溶解させて試料溶液を調製した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分の条件で、試料溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。分子量が400~5,000,000の範囲内にある標準ポリスチレン10点についてGPC測定を行い、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づいてMwを決定した。
【0051】
(多層構造ゴム粒子(RP)の体積基準平均粒径)
ダイヤモンドナイフを用いて弾球遊技用樹脂基盤から超薄切片を切り出し、リンタングステン酸を用いてアクリル酸ブチル部分を選択的に染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製「JSM-7600」)を用いて撮像した。粒子全体が写っている30個の多層構造ゴム粒子(RP)を無作為に選択し、各粒子について染色部分の直径を測定し、平均値を体積基準平均粒径とした。
【0052】
(多層構造ゴム粒子の含有量)
多層構造ゴム粒子と顔料を含む弾球遊技用樹脂基盤を約80℃で一昼夜(12時間以上)乾燥した後、約0.7gの小片を切り出し、精秤した(W1)。その後、80mLのアセトンで小片を溶解させ、室温で約1日間静置した。得られた懸濁液を遠沈管内に入れ、久保田製作所製の遠心分離機(テーブルトップ、多本架遠心機、7780II)を用い、15000rpmで5分間の遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションにより除いた後、新たにアセトン80mLを加え、室温で1時間静置した。さらに、上記と同一方法と条件で遠心分離とデカンテーションを3回繰り返した。以上の操作後に得られた懸濁液をビーカーに移し、80℃のホットプレートを用いて加熱することで、アセトンを除去した。得られた樹脂(この樹脂は多層構造ゴム粒子と顔料からなる)の質量を精秤した(W2)。この樹脂を白金皿上に移し、バーナーで加熱することで多層構造ゴム粒子を分解除去した。最後に残った顔料の質量を精秤した(W3)。次式により、多層構造ゴム粒子の含有量(質量%)を算出した。
多層構造ゴム粒子の含有量(質量%)={(W2-W3)/W1}×100
顔料を含まない弾球遊技用樹脂基盤の場合も、上記と同様の方法にて求めることができる。
【0053】
(全光線透過率)
弾球遊技用樹脂基盤から50×50mmの試験片を切り出し、村上色彩技術研究所製「HM-150」を用いて全光線透過率を測定した。
(色調)
弾球遊技用樹脂基盤から50×50mmの試験片を切り出した。JIS K 8722に準拠し、測定装置として島津製作所製「島津紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600」を用いて、反射モード(ただし、正反射は含まない)での吸収スペクトルを測定した。測定波長は380~780nmとした。次いで、色調として、JIS Z 8781-4で定義されるL*a*b*表色系におけるL*、a*、b*の値を求めた。
【0054】
(シャルピー衝撃強度)
ダイヤモンドソーを用いて弾球遊技用樹脂基盤を切削し、80mm×10mm×4mm(片側Vノッチ付き)の試験片を作製し、JIS-K7111に準拠して、温度23℃相対湿度47%の条件で衝撃強度を測定した。測定を10回行い、平均値をシャルピー衝撃強度とした。
(曲げ弾性率)
ダイヤモンドソーを用いて弾球遊技用樹脂基盤を切削し、80mm×10mm×4mmの試験片を作製し、JIS-K7171に準拠して、温度23℃相対湿度47%の条件で曲げ弾性率を測定した。測定を5回行い、平均値を曲げ弾性率とした。
【0055】
(釘打ち時の樹脂割れの有無)
弾球遊技用樹脂基盤に対して、ボール盤を用い、1.73mmφ径のドリルで、1個の貫通孔を形成した。次に、(株)島津製作所社製「オートグラフAG-2000B」を用い、上記貫通孔の内部に、500mm/minのスピードで、真鍮製ネジリ釘丸先(1.85mmφ径、釘頭を除いた部分の長さ26.5mm、ネジ部の長さ5.5mm)を基盤厚の深さ分だけ打ち込んだ。同操作を10回繰り返し、目視にて、打ち釘の周辺の樹脂割れの有無を下記基準にて評価した。
<判定基準>
A(良):すべての釘打ち部の周辺に、樹脂割れが発生しなかった。
B(可):1~2箇所の釘打ち部の周辺に、樹脂割れが発生した。
C(不可):3箇所以上の釘打ち部の周辺に、樹脂割れが発生した。
【0056】
(釘の保持力)
弾球遊技用樹脂基盤に対して、ボール盤を用い、1.73mmφ径のドリルで、間隔を空けて10個の貫通孔を形成した。次に、(株)島津製作所社製「オートグラフAG-2000B」を用い、各貫通孔の内部に、500mm/minのスピードで、真鍮製ネジリ釘丸先(1.85mmφ径、釘頭を除いた部分の長さ26.5mm、ネジ部の長さ5.5mm)を基盤厚の深さ分だけ打ち込んだ。次に、熱風オーブンを用い、上記基盤を吊り下げ状態で1時間45℃で加熱した後、熱風オーブンから基盤を取り出し、室温下で充分に自然冷却した。
次に、(株)島津製作所社製オートグラフ「AG-2000B」を用い、基盤に打ち込まれた10本の釘についてそれぞれ、釘頭をチャックで把持し、毎分25mmの速度で引き抜いた時の最大荷重(kg)を測定した。最大荷重の平均値を釘抜き強度として求めた。なお、釘打ち部の周辺に樹脂割れの生じているものは測定対象外とした。下記基準にて評価した。
<判定基準>
A(良):釘抜き強度が50kgf以上。
B(可):釘抜き強度が20kgf以上50kgf未満。
C(不可):釘抜き強度が20kgf未満。
【0057】
(切削加工性)
NCルータ(庄田鉄工株式会社製、ベーシックNCルータマシン「NC5001」)に超硬ルータビット(庄田鉄工株式会社製、直径:3mm、刃の角度:逃げ角17度、すくい角:25度、歯数:1、材質:超硬鋼材)を使用し、回転速度17000rpm、切削速度1.5m/分、切削長さ28mmの切削加工条件で、切削粉片吸引方式にて冷却しながら樹脂シートの孔開け切削加工を行い、加工面の表面粗さ(算術平均粗さRa(μm))を評価した。
算術平均粗さRa(μm)は、JIS B 0601(2001)に準拠して測定した。算術平均粗さRaは、株式会社小坂研究所製サーフコーダ「SE700」を使用し、測定倍率2000、測定速度0.5mm/秒、評価長さ4mm、カットオフ値0.8mmの条件にて測定した。下記基準にて評価した。
<光沢の判定基準>
A(良):切削加工面の全面が光沢を有する。
B(可):切削加工面の一部に光沢を有さない箇所がある。
C(不可):切削加工面の全面が光沢を有さない。
<欠けの判定基準>
A(良):切削加工面の全面に欠けがない。
B(可):切削加工面の一部に欠けが存在する。
C(不可):切削加工面の全面に欠けが存在する。
<融着の判定基準>
A(良):切削加工面の全面に融着がない。
B(可):切削加工面の一部に融着が存在する。
C(不可):切削加工面の全面に融着が存在する。
【0058】
(印刷フィルムの演色性)
透明フィルムとして75μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レフィルム加工(株)製、「ルミラー タイプT-60」)を用意した。このPETフィルムの一方の面に、オフセット印刷にて、赤色、黄色、橙色、緑色、水色、青色、紫色、白色、及び黒色をそれぞれ任意の形状で印刷し、印刷層を形成した。この印刷層上にアクリル酸エステル共重合体を含む市販のアクリル系接着剤を35μm厚で塗布して、接着剤層を形成した。このようにして得られた接着剤層付き印刷フィルムを弾球遊技用樹脂基盤の一方の面に貼り付けて印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤を得た。得られた印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤を、三波長型蛍光灯を用いて照度2300~2600ルックスとなっている室内で、印刷フィルム側から目視確認し、下記基準にて評価した。
<判定基準>
A(良):印刷フィルムの演色性が良い。
B(可):印刷フィルムの演色性がやや劣る。
C(不可):印刷フィルムの演色性が悪い。
【0059】
[材料]
用いた材料は、以下の通りである。
<メタクリル系樹脂(PM)>
(PM1-1)メタクリル酸メチル(MMA)単位とアクリル酸メチル(MA)単位とからなるメタクリル系共重合体(MMA:MA(質量比)=94:6、Mw=120,000)。
【0060】
<多層構造ゴム粒子(RP)>
(RP1)
以下の組成の共重合体からなる最内層(RP-a1)、中間層(RP-b1)、及び最外層(RP-c1)を順次形成して、3層構造のアクリル系多層構造ゴム粒子(RP1)を製造した。粒子径は0.23μmであった。
最内層(RP-a1):メタクリル酸メチル(MMA)単位/アクリル酸メチル(MA)単位/架橋性単量体であるメタクリル酸アリル単位(質量比)=32.91/2.09/0.07、
中間層(RP-b1):アクリル酸ブチル単位/スチレン単位/架橋性単量体であるメタクリル酸アリル単位(質量比)=37.00/8.00/0.90、
最外層(RP-c1):メタクリル酸メチル(MMA)単位/アクリル酸メチル(MA)単位(質量比)=18.80/1.20。
【0061】
<分散用粒子(D)>
(D1)メタクリル系共重合体粒子、メタクリル酸メチル(MMA)単位/アクリル酸メチル単位(質量比)=90/10、粒子径:0.11μm。
【0062】
<多層構造ゴム粒子含有粉体(RD1)>
多層構造ゴム粒子(RP1)を含むラテックスと分散用粒子(D1)を含むラテックスとを固形分質量比67対33の割合で混合した。得られた混合ラテックスを-30℃で4時間かけて凍結させた。凍結したラテックスの2倍量の90℃温水に凍結ラテックスを投入し、溶解してスラリーとした後、20分間90℃に保持して脱水し、80℃で乾燥して多層構造ゴム粒子含有粉体(RD1)を得た。
【0063】
<着色剤>
(酸化チタン)大日精化工業株式会社製の酸化チタン。
(炭酸カルシウム)根本特殊化学工業株式会社製「ルミパール」。
(硫酸バリウム)日本化学工業株式会社製「沈降性硫酸バリウム」。
(カーボンブラック)三菱ケミカル社製のカーボンブラック「#1000」。
【0064】
[実施例1]
多層構造ゴム粒子(RP1)濃度が28.1質量%、酸化チタン濃度が0.0020質量%となるように、メタクリル系樹脂(PM1-1)、多層構造ゴム粒子含有粉体(RD1)、及び酸化チタンをドライブレンドした。なお、すべての原料樹脂についてバージン材を用いた。押出機として150mmφ単軸押出機(東芝機械株式会社製)を用いて、上記ドライブレンド材料の溶融混練を行い、溶融状態の樹脂をTダイから押出した。押出された溶融樹脂を複数の金属製冷却ロールを用いて加圧及び冷却することにより、メタクリル系樹脂シートからなる単層構造の弾球遊技用樹脂基盤(厚み10mm)を得、評価した。主な製造条件と評価結果を表1、表2に示す。
【0065】
[実施例2~13、比較例1~4]
弾球遊技用樹脂基盤(メタクリル系樹脂シート)に含まれる多層構造ゴム粒子(RP1)の濃度、弾球遊技用樹脂基盤に含まれる着色剤の種類と濃度、弾球遊技用樹脂基盤の厚みを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、弾球遊技用樹脂基盤を得、評価した。これらの例において、表1に記載のない条件は共通条件とした。評価結果を表1、表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
[結果のまとめ]
実施例1~13では、85~50質量%のメタクリル系樹脂(PM)と15~50質量%の多層構造ゴム粒子(RP)と着色剤とを含有し、厚みが8~22mmであるメタクリル系樹脂シートからなり、全光線透過率が50%以下である不透明な弾球遊技用樹脂基盤を製造した。これら実施例ではいずれも、釘打ち時の樹脂割れが抑制され、打ち釘の保持力が良好で、切削加工性が良好で、印刷フィルムを直接積層した場合にも印刷フィルムの演色性が良好な弾球遊技用樹脂基盤が得られた。
【0069】
比較例1では、メタクリル系樹脂シート中の多層構造ゴム粒子(RP)の含有量を15質量%未満としたため、得られた弾球遊技用樹脂基盤はシャルピー衝撃強度が3.5kJ/m未満と耐衝撃性が低く、釘打ち時に樹脂割れが発生した。
比較例2では、メタクリル系樹脂シート中の多層構造ゴム粒子(RP)の含有量を50質量%超としたため、得られた弾球遊技用樹脂基盤は曲げ弾性率が1800MPa未満と低く、切削加工性が不良であった。
【0070】
比較例3では、メタクリル系樹脂シートに着色剤を添加しなかったため、得られた弾球遊技用樹脂基盤は全光線透過率が90%と透明性が高く、印刷フィルムを直接積層した場合の印刷フィルムの演色性が不良であった。
比較例4では、メタクリル系樹脂シートに対する着色剤の添加量が不充分であったため、得られた弾球遊技用樹脂基盤は全光線透過率が70%と透明性が比較的高く、印刷フィルムを直接積層した場合の印刷フィルムの演色性が不良であった。
【0071】
[従来例1]
弾球遊技用樹脂基盤用として広く使用されている板厚19mmのベニア合板(ラワン材)を用意し、釘の保持力を測定した。孔開け加工をせずに、ベニア合板に直接釘を打ち付けた以外は実施例1~13、比較例1~5と同様の方法で評価を実施した。結果はC評価(18kgf)であり、表2に示すいずれの実施例、比較例よりも劣る結果であった。
【0072】
[従来例2]
比較例3で得られた透明な弾球遊技用樹脂基盤の一方の面に、白原着樹脂フィルム(染料を用いて全体が均一に白色に着色されたPETフィルム、75μm厚)を接着剤層(アクリル酸エステル共重合体を含む市販のアクリル系接着剤、35μm厚)を介して貼り合わせて、表面を不透明化した。表面を不透明化した基盤に対して、実施例1~13、比較例1~5と同様の方法で印刷フィルムを積層し、印刷フィルムの演色性の評価を行ったところ、A評価となった。このように、透明な弾球遊技用樹脂基盤上に白色フィルムを貼り合わせてから印刷フィルムを積層することで、印刷フィルムの演色性を良くすることができるが、本来不要な白色フィルムの材料費及び白色フィルムを貼り合わせる工程が増えるため、コスト増となり、好ましくない。
【0073】
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 印刷フィルム付き弾球遊技用樹脂基盤
10 弾球遊技用樹脂基盤
20 印刷フィルム
21 透明フィルム
22 印刷層
30 接着剤層
図1