(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20220623BHJP
C23C 14/58 20060101ALI20220623BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
C23C14/50 E
C23C14/58 C
C23C14/12
(21)【出願番号】P 2020559717
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019034003
(87)【国際公開番号】W WO2020115962
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018226773
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】矢島 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 文生
(72)【発明者】
【氏名】植 喜信
(72)【発明者】
【氏名】小倉 祥吾
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064187(JP,A)
【文献】特開2011-018772(JP,A)
【文献】特表2018-519426(JP,A)
【文献】特開2010-106370(JP,A)
【文献】特開2002-115051(JP,A)
【文献】特開2016-184610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/50
C23C 14/58
C23C 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する支持面と前記支持面に連なる側面部とを有し、前記支持面に支持される前記基板の外周端が前記側面部から突き出るように構成された冷却ステージと、
前記冷却ステージの前記側面部を囲むように配置され、前記基板の前記外周端に対向する位置に凹部が設けられ、前記凹部により前記側面部が囲まれた環状の防着枠部と、
前記支持面に向けてエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを供給するガス供給部と、
前記支持面に対向し、前記エネルギ線硬化樹脂を硬化させるエネルギ線を前記支持面に向けて照射する照射源と、
前記冷却ステージの前記側面部と前記防着枠部との間に設けられた第1隙間と、
前記防着枠部と前記基板との間に設けられた第2隙間と、
前記冷却ステージに設けられ、前記第1隙間を経由して前記第2隙間から前記真空槽の側壁に向けて不活性ガスを噴射するガス噴射機構と、
前記冷却ステージ、前記防着枠部、前記ガス供給部、及び前記照射源を収容する真空槽と
を具備する成膜装置。
【請求項2】
請求項
1に記載された成膜装置であって、
前記防着枠部に設けられた前記凹部は、
底面部と、
前記底面部に連設され、前記冷却ステージの前記側面部に対向する側壁部と、
前記底面部に連設され、前記底面部及び前記側壁部を囲む外周部と
によって構成され、
前記凹部には、前記側壁部に対向し、前記冷却ステージを囲む衝立部が付設され、
前記衝立部と前記側壁部との間には、前記第1隙間と並設する第3隙間が設けられ、
前記衝立部と前記基板との間には、第4隙間が設けられ、
前記ガス噴射機構は、前記第1隙間を経由して、前記第2隙間及び前記第4隙間から前記真空槽の前記側壁に向かって前記不活性ガスを噴射するとともに、前記第3隙間を経由して前記第4隙間から前記側壁に向かって前記不活性ガスを噴射する
成膜装置。
【請求項3】
請求項
2に記載された成膜装置であって、
前記第4隙間の幅は、前記第2隙間の幅よりも広い
成膜装置。
【請求項4】
請求項2
または3に記載された成膜装置であって、
前記冷却ステージの前記支持面は、矩形であり、
前記ガス噴射機構は、
前記支持面の角部に対向する前記第3隙間を流れる前記不活性ガスの流量と、前記角部以外の前記支持面の辺部に対向する前記第3隙間を流れる前記不活性ガスの流量とを独立して制御する
成膜装置。
【請求項5】
基板を支持する支持面と前記支持面に連なる側面部とを有する冷却ステージの前記支持面に前記基板の外周端が前記側面部から突き出るよう前記基板を支持し、
前記冷却ステージの前記側面部を囲む環状の防着枠部であって、前記基板の前記外周端に対向する位置に凹部が設けられ、前記側面部が前記凹部によって囲まれた前記防着枠部を前記冷却ステージの周りに配置し、
前記基板に向けてエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを供給し、
前記エネルギ線硬化樹脂を硬化させるエネルギ線を前記基板に向けて照射することにより、前記基板上に樹脂層を形成する
成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂等のエネルギ線硬化樹脂を硬化して樹脂層を基板上に形成する際、典型的には、以下の2工程が行われる。すなわち、冷却ステージによって基板を支持し、当該樹脂を含む原料ガスを冷却ステージに支持された基板上に供給する工程と、基板上に紫外線等の光を照射し、基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とである。
【0003】
特に最近では、このような複数の工程をそれぞれ別の真空チャンバで行うことはせず、基板上に原料ガス供給する工程と、紫外線等によって基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とを1つの真空チャンバ内で行う成膜装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、減圧雰囲気では基板の脇部(基板の外周端から先の部分)に相当する冷却ステージに原料ガスが付着しやすい。この原料ガスが硬化して樹脂層として厚く堆積すると、該樹脂層に基板が乗り上がるという現象がおこる。これにより、冷却ステージによる基板の冷却効果が落ちて、基板の面内温度分布が均一にならず、所望の膜厚分布が得られない状況に陥る。
【0006】
これを解決する手段として、冷却ステージの周りに、冷却ステージの側面部を囲む防着板を取り付ける手法がある。しかし、このような防着板を設けたとしても、基板の脇部での防着板に樹脂層が堆積し、結局のところ、同様の現象がおこり得る。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、基板上に良好な膜厚分布で樹脂層を形成することができる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜装置は、冷却ステージと、防着枠部と、ガス供給部と、照射源と、真空槽とを具備する。
上記冷却ステージは、基板を支持する支持面と上記支持面に連なる側面部とを有し、上記支持面に支持される上記基板の外周端が上記側面部から突き出るように構成される。
上記防着枠部は、環状であり、上記冷却ステージの上記側面部を囲むように配置され、上記基板の上記外周端に対向する位置に凹部が設けられ、上記凹部により上記側面部が囲まれる。
上記ガス供給部は、上記支持面に向けてエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを供給する。
上記照射源は、上記支持面に対向し、上記エネルギ線硬化樹脂を硬化させるエネルギ線を上記支持面に向けて照射する。
上記真空槽は、上記冷却ステージ、上記防着枠部、上記ガス供給部、及び上記照射源を収容する。
【0009】
このような成膜装置によれば、冷却ステージの側面部を囲むように防着枠部が配置されたので、冷却ステージには樹脂層が堆積しにくくなる。さらに、防着枠部には基板の外周端に対向する位置に凹部が設けられているので、防着枠部に樹脂層が堆積したとしても、樹脂層が基板にまで届かず、基板が冷却ステージから離れにくくなる。これにより、基板の面内温度分布は均一になり、基板上に良好な膜厚分布で樹脂層を形成することができる。
【0010】
成膜装置においては、
上記冷却ステージの上記側面部と上記防着枠部との間には、第1隙間が設けられ、
上記防着枠部と上記基板との間には、第2隙間が設けられ、
上記冷却ステージには、上記第1隙間を経由して上記第2隙間から上記真空槽の側壁に向けて不活性ガスを噴射するガス噴射機構が設けられてもよい。
【0011】
このような成膜装置によれば、防着枠部と基板との間の第1隙間から噴射される不活性ガスにより原料ガスがステージから真空槽の側壁に向かう方向に押し返される。これにより、第1隙間には樹脂層が形成されにくくなり、より確実に基板が冷却ステージから離れにくくなる。
【0012】
成膜装置においては、
上記防着枠部に設けられた上記凹部は、
底面部と、
上記底面部に連設され、上記冷却ステージの上記側面部に対向する側壁部と、
上記底面部に連設され、上記底面部及び上記側壁部を囲む外周部と
によって構成され、
上記凹部には、上記側壁部に対向し、上記冷却ステージを囲む衝立部が付設され、
上記衝立部と上記側壁部との間には、上記第1隙間と並設する第3隙間が設けられ、
上記衝立部と上記基板との間には、第4隙間が設けられ、
上記ガス噴射機構は、上記第1隙間を経由して、上記第2隙間及び上記第4隙間から上記真空槽の上記側壁に向かって上記不活性ガスを噴射するとともに、上記第3隙間を経由して上記第4隙間から上記側壁に向かって上記不活性ガスを噴射してもよい。
【0013】
このような成膜装置によれば、第1隙間のみならず、第3隙間にも不活性ガスが導入される。これにより、凹部を構成する側壁部に原料ガスが付着しにくくなり、該側壁部に樹脂層が形成されにくくなる。この結果、より確実に基板が冷却ステージから離れにくくなる。
【0014】
成膜装置においては、上記第4隙間の幅は、上記第2隙間の幅よりも広くてもよい。
【0015】
このような成膜装置によれば、第4隙間の幅が第2隙間の幅よりも広く構成されているので、衝立部の上部に樹脂層が形成されたとしても、該樹脂層は基板に届きにくくなる。この結果、より確実に基板が冷却ステージから離れにくくなる。
【0016】
成膜装置においては、
上記冷却ステージの上記支持面は、矩形であり、
上記ガス噴射機構は、
上記支持面の角部に対向する上記第3隙間を流れる上記不活性ガスの流量と、上記角部以外の上記支持面の辺部に対向する上記第3隙間を流れる上記不活性ガスの流量とを独立して制御してもよい。
【0017】
このような成膜装置によれば、冷却ステージの角部付近に存在する原料ガスの濃度と、冷却ステージの辺部付近に存在する原料ガスの濃度とが異なったとしても、角部付近及び辺部付近のそれぞれにおける第3隙間を流れる不活性ガスの流量を独立して制御できる。これにより、角部付近及び辺部付近のそれぞれにおける凹部に堆積する樹脂層の厚みを均一に制御できる。この結果、より確実に基板が冷却ステージから離れにくくなる。
【0018】
本発明の一形態に係る成膜方法では、基板を支持する支持面と上記支持面に連なる側面部とを有する冷却ステージの上記支持面に上記基板の外周端が上記側面部から突き出るよう上記基板が支持される。
上記冷却ステージの上記側面部を囲む環状の防着枠部であって、上記基板の上記外周端に対向する位置に凹部が設けられ、上記側面部が上記凹部によって囲まれた上記防着枠部が上記冷却ステージの周りに配置される。
上記基板に向けてエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスが供給される。
上記エネルギ線硬化樹脂を硬化させるエネルギ線を上記基板に向けて照射することにより、上記基板上に樹脂層が形成する。
【0019】
このような成膜方法によれば、冷却ステージの側面部を囲むように防着枠部が配置されたので、冷却ステージに樹脂層が堆積しにくくなる。さらに、防着枠部には基板の外周端に対向する位置に凹部が設けられているので、防着枠部に樹脂層が堆積したとしても、樹脂層は基板にまで届かず、基板が冷却ステージから離れにくくなる。これにより、基板の面内温度分布は均一になり、基板上に良好な膜厚分布で樹脂層を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明によれば、基板上に良好な膜厚分布で樹脂層を形成することができる成膜装置及び成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
【
図2】図(a)は、
図1の第1領域S1を鉛直方向から上面視した模式的平面図である。図(b)は、図(a)のA-A線に沿った模式的断面図である。
【
図4】本実施形態の変形例1に係る成膜装置の模式的断面図である。
【
図5】本実施形態の変形例2に係る成膜装置の模式的断面図である。
【
図6】本実施形態の変形例3に係る成膜装置の模式的平面図である。
【
図7】本実施形態の変形例4に係る成膜装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。例えば、図においてX軸方向とY軸方向とは、互いに直交する方向を示し、これらは、実施形態において水平方向を示す。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向を示し、鉛直方向(重力方向)を示す。
【0023】
また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0024】
(成膜装置)
【0025】
図1は、本実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
図2(a)は、
図1の第1領域S1を鉛直方向から上面視した模式的平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA-A線に沿った模式的断面図である。
【0026】
成膜装置1は、基板W上に、エネルギ線硬化樹脂である紫外線硬化樹脂層を形成するための成膜装置である。成膜装置1は、真空槽10と、冷却ステージ15と、防着枠部18と、隔壁16と、ガス供給部13と、照射源14と、ガス供給ライン100とを具備する。基板Wは、例えば、ガラス基板、半導体基板等であり、その平面形状は、例えば、矩形でもよく、円形でもよい。
【0027】
真空槽10は、上部において大気であり、下部において減圧状態が維持可能な真空容器である。真空槽10は、第1チャンバ本体11と、第1チャンバ本体11の上に配置された第2チャンバ本体12とを有する。真空槽10は、冷却ステージ15、防着枠部18、ガス供給部13、照射源14、及び隔壁16を収容する。
【0028】
真空槽10において、第1チャンバ本体11と第2チャンバ本体12とは、隔壁16によって区画されている。第1チャンバ本体11の内部は、第1領域S1を構成する。第2チャンバ本体12の内部は、第2領域S2をそれぞれ構成する。
【0029】
第1領域S1は真空排気系19によって所定の真空度に調圧される。調圧時の真空度は、特に制限されないが、一般に、1×10-3Pa以上500Pa以下に設定される。また、第1領域S1には、ガス供給部13が配置される。第2領域S2は、例えば、大気雰囲気に維持されている。第2領域S2には、冷却ステージ15に対向するように紫外線光源である照射源14が配置されている。
【0030】
真空槽10をZ軸方向から眺めた外形は、例えば、冷却ステージ15の外形に合うように設計されている。例えば、真空槽10の外形は、矩形状である。但し、この外形は、矩形に限らない。
【0031】
冷却ステージ15は、図示しないシール機構等を介して、第1チャンバ本体11に取り付けられ、第1領域S1に設置される。冷却ステージ15は、基板Wを配置するための基板支持台151を有する。冷却ステージ15は、基板支持台151は、第1領域S1の略中央に配置され、処理対象である基板Wを支持する支持面151aを有する。
【0032】
支持面151aは、Z軸方向に直交するX-Y軸平面において、特に形状は限られないが、矩形状になっている。冷却ステージ15は、支持面151aのほかに支持面151aに連なる側面部151wを有している。また、冷却ステージ15は、基板Wが支持面151aに支持されたとき、基板Wの外周端Eが側面部151wから突き出るように構成されている。換言すれば、支持面151aの面積は、基板Wの面積よりも小さい。
【0033】
さらに、基板支持台151は、基板Wを所定温度に冷却するための図示しない冷却機構(温度:-30℃以上0℃以下)を内蔵する。これにより、基板Wは、冷却ステージ15によって所定の温度に冷却され、原料ガス中の紫外線硬化樹脂が基板W上で冷却されて凝縮する。この結果、基板W上には、紫外線硬化樹脂層を形成することが可能となる。基板Wに均一な膜厚の紫外線硬化樹脂層を形成するには、冷却ステージ15に支持されたときの基板Wの面内温度分布が極力ばらつかないことが望ましい。
【0034】
また、冷却ステージ15は、図示しない駆動機構によって、基板支持台151をZ軸方向に昇降させてもよい。また、冷却ステージ15は、支持面151aをX-Y軸平面内において回転させる回転機構を備えてもよい。
【0035】
防着枠部18は、冷却ステージ15の側面部151wを囲むように配置される。すなわち、防着枠部18は、X-Y軸平面において環状の部材である。防着枠部18のX-Y軸平面における外形は、例えば、矩形である。この防着枠部18には、基板Wの外周端Eに対向する位置に、凹部181hが設けられている。凹部181hは、底面部181bと、側壁部181wと、外周部181eとによって構成される。
【0036】
底面部181bは、凹部181hにおける下地となる部分である。側壁部181wは、底面部181bに連設され、冷却ステージ15の側面部151wに対向する衝立部である。外周部181eは、底面部181bに連設され、底面部181b及び側壁部181wを囲む肉厚部分である。防着枠部18がX-Y軸平面において環状であることから、凹部181hもX-Y軸平面において環状に構成されている。これにより、冷却ステージ15の側面部151wは、凹部181hによって囲まれた構成になる。
【0037】
また、防着枠部18と、冷却ステージ15の側面部151wとは密着してなく、冷却ステージ15の側面部151wと防着枠部18(側壁部181w)との間には、例えば、隙間幅が0.01mm以上0.5mm以下の第1隙間C1が設けられている。防着枠部18と、基板Wとは密着してなく、防着枠部18(側壁部181w)と基板Wとの間には、例えば、隙間幅が0.01mm以上0.2mm以下の第2隙間C2が設けられている。第2隙間C2は、第1隙間C1に連通している。なお、第2隙間C2は、側壁部181wと支持面151aとの高さの差でもある。
【0038】
外枠部材20は、冷却ステージ15及び防着枠部18を囲むように配置される。すなわち、外枠部材20は、X-Y軸平面において環状になっている。外枠部材20のX-Y軸平面における外形は、例えば、矩形である。外枠部材20には、冷却ステージ15及び防着枠部18を囲む排気溝201が設けられている。排気溝201は、第1領域S1に連通し、第1領域S1に存在するガスを吸引する。そして、第1領域S1に存在するガスは、真空排気系19により、排気溝201を経由して真空槽10外に排気される。
【0039】
ガス供給部13は、紫外線硬化樹脂を含む原料ガスを生成するガス供給ライン100に接続されている。ガス供給部13は、複数の分岐配管部131を有する。ガス供給部13は、後述するシャワープレートでもよい。照射源14は、エネルギ線である紫外線UVを支持面151aに向けて照射する。これにより、基板W上に塗布された紫外線硬化樹脂が硬化する。照射源14は、第2領域S2に配置される。反射板17は、照射源14から照射される紫外線UVを効率よく基板Wへ集光させる。
【0040】
隔壁16は、第1チャンバ本体11と、第2チャンバ本体12との間に位置する。隔壁16は、真空槽10の内部を区画し、Z軸方向に直交するX-Y軸平面を含む板状構造を有する。隔壁16は、紫外線UVを透過する透過部161を有する。透過部161は、隔壁16の全体であっても、一部であっても可能である。透過部161は、例えば、4箇所に設けられた矩形状の窓部で構成される。また、透過部161を構成する材料は、紫外線UVを透過する材料であれば特に限られず、例えば、石英ガラスが採用される。このような隔壁16によって、第1領域S1と第2領域S2との雰囲気を遮断しつつ、照射源14から照射された紫外線UVの透過が可能とされる。
【0041】
紫外線硬化樹脂材料は、例えば、アクリル系樹脂を用いることができる。また、上記樹脂には重合開始剤等を添加して用いることも可能である。このような樹脂を含む原料ガスは、真空槽10の外部に設置されるガス供給ライン100によって生成される。ガス供給ライン100は、ガス供給部13に接続され、真空槽10内へ上記樹脂を含む原料ガスが供給される。
【0042】
ガス供給ライン100は、樹脂材料供給ライン110と、気化器120と、配管130とを有する。
【0043】
樹脂材料供給ライン110は、液状の樹脂材料が充填されたタンク111と、タンク111から樹脂材料を気化器120へ運搬する配管112とで構成される。タンク111から気化器120へ樹脂材料を運搬する方法として、例えば、不活性ガスからなるキャリアガスを用いる方法があげられる。また、配管112には、バルブV1や、図示しない液体流量制御器等を取り付けることも可能である。
【0044】
気化器120の内部には、配管112の一方の端部が配置されている。気化器120は、配管112から運搬された樹脂材料のミストを生成することで、原料ガスを生成する。ここでは、樹脂材料のミストの生成をすることを、樹脂材料を気化させるという意味で用いる。気化器120は、図示しない加熱機構によって加熱されることで、樹脂材料の気化した状態を維持することが可能に構成されている。
【0045】
気化器120は、配管130に接続されている。気化器120で生成された原料ガスは、配管130を介してガス供給部13へ供給される。この際、配管130にバルブV2を取り付け、ガス供給部13へのガスの流入を調節することも可能である。さらに図示しない流量制御器を取り付けることによって、ガス供給部13へ流入するガスの流量を制御することも可能となる。なお、配管130も、図示しない加熱機構によって原料ガスの気化状態を維持することが可能な温度に加熱されている。
【0046】
(成膜方法)
【0047】
成膜装置1を用いた成膜方法は、主に以下の2工程を有する。すなわち、ガス供給部13から紫外線硬化樹脂を含む原料ガスを基板W上に供給することによって、基板W上に紫外線硬化樹脂層を形成する工程と、照射源14から紫外線UVを照射することによって、紫外線硬化樹脂層を硬化する工程とである。
【0048】
(紫外線硬化樹脂層の形成工程)
【0049】
まず、
図1のように、基板Wを支持面151a上へ配置する。ここで、支持面151aには、基板Wの外周端Eが側面部151wから突き出るよう基板Wを支持する。また、環状の防着枠部18を冷却ステージ15の周りに配置する。
【0050】
次に、第1領域S1を真空排気系19によって所定の真空度に調圧する。ここで、非成膜部分を遮蔽することが可能なマスク等が基板W上へ配置されてもよく、これにより紫外線硬化樹脂層のパターン形成を容易に行うことができる。
【0051】
ガス供給ライン100は、樹脂材料から原料ガスを生成し、ガス供給部13を介して原料ガスを真空槽10内へ供給する。気化器120は、樹脂材料を気化させ、紫外線硬化樹脂を含む原料ガスを生成する。生成された原料ガスは、配管130を介してガス供給部13へ供給され、ガス供給部13より基板Wへ向かって原料ガスが吐出される。原料ガスが基板W上に到達すると、原料ガス中の樹脂が基板W上に凝縮し、紫外線硬化樹脂層を形成する。
【0052】
(紫外線硬化樹脂層の硬化工程)
【0053】
次に、第1チャンバ本体11を所定の真空度に維持した状態で、照射源14から基板W上に紫外線UVを照射し、紫外線硬化樹脂層を硬化する。照射源14から照射された紫外線UVは、隔壁16の透過部161を透過する。透過部161を透過した紫外線UVは、分岐配管部131間の間隙を介して基板W上に照射される。また、第2チャンバ本体12の側壁の方向へ照射された一部の紫外線UVは、反射板17で反射し、支持面151aに配置された基板W上へ集光される。
【0054】
ガス供給部13が相互に間隔をあけて配列された複数の分岐配管部131で構成されているため、照射源14から照射される紫外線UVを遮蔽することなく基板W上へ到達させることが可能となる。これにより紫外線硬化樹脂層を効率よく硬化することができる。
【0055】
(作用)
【0056】
【0057】
図3に示すように、紫外線UVの照射によって形成される紫外線硬化樹脂層30は、基板W上のほかにも、基板Wの外周に配置された防着枠部18上にも堆積する。特に、連続成膜を継続するほど、紫外線硬化樹脂層30の堆積が顕著になる。
【0058】
このような場合、冷却ステージ15の周りを凹部181hが形成された防着枠部18で取り囲むことにより、基板Wの外周付近では、冷却ステージ15と防着枠部18との高さのオフセットが生じて、側面部151w上での紫外線硬化樹脂層30の堆積が抑えられる(
図3)。
【0059】
仮に、凹部181hがないとすると、基板Wの搬送ずれ(基板Wが支持面151aに載置される際の支持位置のばらつき)によって、基板Wの外周端Wの下に紫外線硬化樹脂層30が堆積したりする。基板Wの外周端Wの下に紫外線硬化樹脂層30が堆積すると、基板Wが紫外線硬化樹脂層30に乗り上げ、基板Wが支持面151aから離れるという現象がおこる。
【0060】
このような現象がおこると、基板Wが支持面151aから離れることになり、冷却ステージ15による冷却効率が落ちる。このため、基板Wの面内温度分布は均一になり、基板W上に形成される紫外線硬化樹脂層30の膜厚分布が不均一になってしまう。
【0061】
しかしながら、本実施形態のように、防着枠部18に凹部181hを形成することにより、基板Wが紫外線硬化樹脂層30の乗り上げによって支持面151aから離れるという現象が抑制され、基板Wが支持面151aの全面に接触する。これにより、冷却ステージ15の冷却効果によって基板Wの面内温度分布が均一になる。この結果、基板W上に良好な膜厚分布で紫外線硬化樹脂層30が形成されることになる。
【0062】
しかし、第2隙間C2は閉塞していないため、長時間駆動では、第2隙間C2に紫外線硬化樹脂層30が堆積する可能性がある。
【0063】
(変形例1)
【0064】
上記で生じ得る現象は、変形例1によって解決される。
【0065】
図4は、本実施形態の変形例1に係る成膜装置の模式的断面図である。
図4は、
図2(a)のA-A線に沿った位置での断面図に対応している。
【0066】
図4に示すように、冷却ステージ15には、第1隙間C1を経由して第2隙間C2から真空槽10の側壁に向けて不活性ガスGを噴射するガス噴射機構153が設けられている。不活性ガスGは、例えば、N
2、Ar等である。ガス噴射機構153は、例えば、冷却ステージ15に付設されたガス導入管153aと、第1隙間C1に連通する流路153bと、第1隙間C1と、第2隙間C2とにより構成される。流路153bは、ガス導入管153a内及び冷却ステージ15内に設けられている。ガス導入管153a及び流路153bのは、特に限定されることなく、例えば、第1隙間C1に沿って複数配置してもよい。また、流れる第1領域S1に導入する不活性ガスGの全流量は、例えば、0.01slm以上1slm以下である。
【0067】
ガス噴射機構153によって、第2隙間C2から不活性ガスGが真空槽10の側壁に向かって噴射されると、不活性ガスGは、排気溝201により吸引されて、真空排気系19によって真空槽10外に排気される。すなわち、冷却ステージ15の外周では、第2隙間C2から真空槽10の側壁に向かう不活性ガスGの気流が形成される。
【0068】
これにより、凹部181h付近に存在する原料ガスは、不活性ガスGによりが冷却ステージ15から真空槽10の側壁に向かって押し返される。従って、第1隙間C1には原料ガスが入りにくく、第1隙間C1に紫外線硬化樹脂層30がより形成されにくくなる。この結果、紫外線硬化樹脂層30に基板Wが乗り上げるという現象がより確実に防止され、基板Wが冷却ステージ15から離れにくくなる。
【0069】
但し、変形例1の構成では、第1隙間C1における紫外線硬化樹脂層30の形成は防止されるものの、凹部181hでは、側壁部181wに紫外線硬化樹脂層30が堆積する現象がおこり得る(
図3)。これは、減圧雰囲気では、不活性ガスGが第1隙間C1から離れていくほど、不活性ガスGの濃度が希薄になり、原料ガスを反発する効果が薄れるためである。側壁部181wに堆積した紫外線硬化樹脂層30が成長し続けると、この紫外線硬化樹脂層30によって基板Wが持ち上げられる現象がおきる可能性がある。特に、側壁部181wにおける紫外線硬化樹脂層30の成長は、長時間に渡る連続成膜を試みた場合に顕著になる。
【0070】
(変形例2)
【0071】
変形例1で生じ得る現象は、変形例2によって解決される。
【0072】
図5(a)、(b)は、本実施形態の変形例2に係る成膜装置の模式的断面図である。
図5(a)は、
図2(a)のA-A線に沿った位置での断面図に対応している。
図5(b)は、
図5(a)の拡大図である。
【0073】
図5(a)に示すように、防着枠部18には、凹部181hにおいて側壁部181wに対向する衝立部181pが付設されている。衝立部181pは、環状であり、冷却ステージ15を囲む。衝立部181pと側壁部181wとの間には、第1隙間C1と並設する第3隙間C3が設けられている。第3隙間C3の隙間幅は、0.01mm以上0.5mm以下である。
【0074】
衝立部181pと基板Wとの間には、第2隙間C2及び第3隙間C3と連通する第4隙間C4が設けられている。流路153bは、第1隙間C1のみならず、第3隙間C3に連通している。換言すれば、流路153bの下流が第1隙間C1と第3隙間C3とによって二股に分れている。また、第4隙間C4の幅は、第2隙間C2の幅よりも広い。なお、第4隙間C4は、衝立部181pと支持面151aとの高さの差でもある。第4隙間C4の隙間幅は、0.01mm以上1mm以下である。
【0075】
ガス噴射機構153は、例えば、ガス導入管153aと、流路153bと、第1隙間C1と、第2隙間C2と、流路153bに連通する第3隙間C3と、第4隙間とにより構成される。ガス噴射機構153は、第1隙間C1を経由して、第2隙間C2及び第4隙間C4から真空槽10の側壁に向かって不活性ガスGを噴射するとともに、第3隙間C3を経由して第4隙間C4から該側壁に向かって不活性ガスGを噴射する。
成膜装置。
【0076】
このような構成によれば、第1隙間C1のみならず、第3隙間C3にも不活性ガスが導入される。これにより、凹部181hを構成する側壁部181wには、原料ガスが付着しにくくなり、該側壁部181wに紫外線硬化樹脂層30が形成されにくくなる。さらに、第4隙間C4の隙間幅が第2隙間C2の隙間幅よりも広く構成されているので、
図5(b)に示すように、衝立部181pの上部に紫外線硬化樹脂層30が形成されたとしても、隙間の距離が長くなった分、紫外線硬化樹脂層30は基板Wに届きにくくなる。この結果、より確実に基板Wが支持面151aから離れにくくなる。
【0077】
また、側壁部181wとは反対側の衝立部181pの上部角にテーパ部181tを設けた場合は、紫外線硬化樹脂層30が基板Wに届く時間を遅らせる効果が増す。この結果、より確実に基板Wが支持面151aから離れにくくなる。
【0078】
(変形例3)
【0079】
図6は、本実施形態の変形例3に係る成膜装置の模式的平面図である。
図6には、第1領域S1を鉛直方向から上面視した平面が示されている。
【0080】
変形例3では、ガス噴射機構153が支持面151aの角部151cに対向する第3隙間C3を流れる不活性ガスGの流量と、角部151c以外の支持面151aの辺部151sに対向する第3隙間C3を流れる不活性ガスGの流量とを独立して制御する。この場合、上記
図5で例示されたガス噴射機構153は、角部151cに対向する第1隙間C1を流れる不活性ガスGの流量と、辺部151sに対向する第1隙間C1を流れる不活性ガスGの流量とを独立して制御することになる。
【0081】
これにより、上記第4隙間C4においては、角部151cに対向する第4隙間C4から噴射する不活性ガスGの流量と、辺部151sに対向する第4隙間C4から噴射する不活性ガスGの流量とが独立して制御される。
【0082】
これにより、支持面151aの周辺で原料ガスの濃度にばらつきが生じても、該周辺におけるそれぞれの領域の濃度に応じた不活性ガスGの流量で原料ガスが冷却ステージ15から真空槽10の側壁に向かって押し返される。この結果、辺部151s付近の凹部181hに比べて、角部151c付近の凹部181hに紫外線硬化樹脂層30が優先的に堆積する現象は回避される。
【0083】
(変形例4)
【0084】
図7は、本実施形態の変形例4に係る成膜装置の模式的断面図である。
【0085】
複数の分岐配管部は、シャワープレートに置き換えられてもよい。ガス供給部13Bは、シャワープレート部1332と、空間部1330とを有する。シャワープレート部1332は、隔壁16と支持面151aとの間に配置され、厚み方向に貫通する複数のガス供給孔1331を有し、全体として紫外線透過性を有する板状のシャワープレートを構成する。空間部1330は、隔壁16と、シャワープレート部1332との間隙からなり、これらと第1のチャンバ本体11とによって区画される空間である。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…成膜装置
10…真空槽
11…第1チャンバ本体
11c…角部
12…第2チャンバ本体
13、13B…ガス供給部
14…照射源
15…冷却ステージ
16…隔壁
17…反射板
18…防着枠部
19…真空排気系
20…外枠部材
30…紫外線硬化樹脂層
100…ガス供給ライン
110…樹脂材料供給ライン
111…タンク
112…配管
120…気化器
130…配管
131…分岐配管部
151…基板支持台
151a…支持面
151w…側面部
151s…辺部
151c…角部
153…ガス噴射機構
153a…ガス導入管
153b…流路
161…透過部
181h…凹部
181e…外周部
181b…底面部
181w…側壁部
181p…衝立部
181t…テーパ部
201…排気溝
1330…空間部
1331…ガス供給孔
1332…シャワープレート部
V1、V2…バルブ
C1…第1隙間
C2…第2隙間
C3…第3隙間
C4…第4隙間
S1…第1領域
S2…第2領域
W…基板
E…外周端