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特許7093937地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/20 20180101AFI20220624BHJP
   F24T 50/00 20180101ALI20220624BHJP
【FI】
F24T10/20
F24T50/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020548586
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036722
(87)【国際公開番号】W WO2020059788
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2018175985
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】崔 林日
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正頌
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 正喜
(72)【発明者】
【氏名】中曽 康壽
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-162141(JP,A)
【文献】特開2014-205086(JP,A)
【文献】特開2011-021804(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1513572(GB,A)
【文献】特開平09-280689(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1021578(KR,B1)
【文献】米国特許第4448237(US,A)
【文献】特開昭60-228855(JP,A)
【文献】特開2010-117081(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181586(WO,A1)
【文献】特開2020-026933(JP,A)
【文献】特開2020-026934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 10/20
F24T 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、
前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、
第一配管と、
第二配管と、
前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、
前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、を備え、
前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から前記第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、
前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から前記第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能であり、
前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの一方から送水させる前記地下水として、温水を揚水すると同時に、
前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの他方から送水させる前記地下水として、冷水を揚水する地中熱利用システム。
【請求項2】
第一熱交換器に接続されている暖房器と、
第二熱交換器に接続されている冷房器と、をさらに備える
請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
さらに、前記第二配管を介して、前記第二上部開口部から前記第一上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、
さらに、前記第一配管を介して、前記第一下部開口部から前記第二下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能である
請求項1又は2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記第一井戸が、
前記第一上部開口部の上方に設けられ、第一ポンプを有する第一貯留部と、
前記第一貯留部と前記第一上部開口部とを接続するモードと、前記第一貯留部と前記第一下部開口部とを接続するモードと、を切り換え可能な第一切換部と、をさらに備え、
前記第二井戸が、
前記第二上部開口部の上方に設けられ、第二ポンプを有する第二貯留部と、
前記第二貯留部と前記第二上部開口部とを接続するモードと、前記第二貯留部と前記第二下部開口部とを接続するモードと、を切り換え可能な第二切換部と、をさらに備える
請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
前記第一配管は、第一端に前記第一井戸内に延びている第一揚水管を備え、
前記第二配管は、第一端に前記第二井戸内に延びている第二揚水管を備え、
前記第一配管は、第二端に前記第二井戸内に延びている第二注水管を備え、
前記第二配管は、第二端に前記第一井戸内に延びている第一注水管を備え、
前記第一揚水管と前記第二揚水管との各揚水管は、前記上部帯水層から揚水可能に開口している上部揚水口と、前記上部揚水口を開閉可能な第一開閉筒と、前記下部帯水層から揚水可能に開口している下部揚水口と、前記下部揚水口を開閉可能な第二開閉筒と、を備え、
前記第一注水管と前記第二注水管との各注水管は、前記上部帯水層へ注水可能に開口している上部注水口と、前記上部注水口を開閉可能な第三開閉筒と、前記下部帯水層へ注水可能に開口している下部注水口と、前記下部注水口を開閉可能な第四開閉筒と、を備える
請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項6】
前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対と、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対と、を連動させる連動機構をさらに備える
請求項5に記載の地中熱利用システム。
【請求項7】
前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対に吊り下げられている第一錘と、
前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対に吊り下げられている第二錘と、をさら備える
請求項5に記載の地中熱利用システム。
【請求項8】
前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対と、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対と、を一緒に吊り上げるリフト機構をさら備える
請求項7に記載の地中熱利用システム。
【請求項9】
前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対を摺動可能な第一シリンダと、
前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対を摺動可能な第二シリンダと、をさら備える
請求項5に記載の地中熱利用システム。
【請求項10】
前記第一開閉筒を摺動可能な第一駆動機構と、
前記第二開閉筒を摺動可能な第二駆動機構と、
前記第三開閉筒を摺動可能な第三駆動機構と、
前記第四開閉筒を摺動可能な第四駆動機構と、をさらに備える
請求項5に記載の地中熱利用システム。
【請求項11】
上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、
前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、
第一配管と、
第二配管と、
前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、
前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、
を備える地中熱利用システムの運転方法であって、
前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水させるステップと、
前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水させるステップと、を含み、
前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの一方から送水させる前記地下水として、温水を揚水すると同時に、
前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの他方から送水させる前記地下水として、冷水を揚水する
地中熱利用システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法に関する。
本願は、2018年9月20日に日本に出願された特願2018-175985号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯水層の地下水を井戸からくみ上げて、温熱源又は冷熱源として利用する地中熱利用システムが提案されている。
【0003】
これに関連する技術として、特許文献1には、井戸の開口部において、上部帯水層の地下水を取水し、下部帯水層へ環水する地中熱利用システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-280689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上部帯水層の地下水の水質と、下部帯水層の地下水の水質が異なっている場合、特許文献1のような地中熱利用システムを利用すると、上部帯水層の地下水と下部帯水層の地下水が混ざってしまう。地下水が混ざると、生成された反応物によって井戸の開口部が閉塞されることがある。
【0006】
本発明は、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞を抑制できる地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の地中熱利用システムは、上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、第一配管と、第二配管と、前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、を備え、前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から前記第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から前記第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能であり、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの一方から送水させる前記地下水として、温水を揚水すると同時に、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの他方から送水させる前記地下水として、冷水を揚水する。
【0008】
本態様によれば、上部帯水層の地下水と、下部帯水層の地下水とが別々に送水可能であるため、上部帯水層の地下水と下部帯水層の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
したがって、本態様の地中熱利用システムでは、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
さらに、本態様の地中熱利用システムは、上部帯水層及び下部帯水層のうちの一方から温水を揚水すると同時に、上部帯水層及び下部帯水層のうちの他方から冷水を揚水する。このため、温水と冷水とを同時に活用することができる。
【0009】
第2の態様の地中熱利用システムは、第一熱交換器に接続されている暖房器と、第二熱交換器に接続されている冷房器と、をさらに備える第1の態様の地中熱利用システムである。
【0010】
本態様によれば、暖房と冷房とを同時に行うことができる。
【0011】
第3の態様の地中熱利用システムは、さらに、前記第二配管を介して、前記第二上部開口部から前記第一上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、さらに、前記第一配管を介して、前記第一下部開口部から前記第二下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能である第1又は第2の態様の地中熱利用システムである。
【0012】
本態様によれば、上部帯水層及び下部帯水層の各帯水層において、送水により貯蓄した熱を、逆に送ることができる。このため、送水により貯蓄した熱を利用することができる。
【0013】
第4の態様の地中熱利用システムは、前記第一井戸が、前記第一上部開口部の上方に設けられ、第一ポンプを有する第一貯留部と、前記第一貯留部と前記第一上部開口部とを接続するモードと、前記第一貯留部と前記第一下部開口部とを接続するモードと、を切り換え可能な第一切換部と、をさらに備え、前記第二井戸が、前記第二上部開口部の上方に設けられ、第二ポンプを有する第二貯留部と、前記第二貯留部と前記第二上部開口部とを接続するモードと、前記第二貯留部と前記第二下部開口部とを接続するモードと、を切り換え可能な第二切換部と、をさらに備える第1から第3の何れかの態様の地中熱利用システムである。
【0014】
本態様によれば、第一ポンプによって、上部帯水層の地下水を揚水できると共に、下部帯水層の地下水を揚水できる。同様に、本態様によれば、第二ポンプによって、上部帯水層の地下水を揚水できると共に、下部帯水層の地下水を揚水できる。このため、各井戸のポンプの利用効率を上げることができる。
【0015】
第5の態様の地中熱利用システムは、前記第一配管は、第一端に前記第一井戸内に延びている第一揚水管を備え、前記第二配管は、第一端に前記第二井戸内に延びている第二揚水管を備え、前記第一配管は、第二端に前記第二井戸内に延びている第一注水管を備え、前記第二配管は、第二端に前記第一井戸内に延びている第二注水管を備え、前記第一揚水管と前記第二揚水管との各揚水管は、前記上部帯水層から揚水可能に開口している上部揚水口と、前記上部揚水口を開閉可能な第一開閉筒と、前記下部帯水層から揚水可能に開口している下部揚水口と、前記下部揚水口を開閉可能な第二開閉筒と、を備え、前記第一注水管と前記第二注水管との各注水管は、前記上部帯水層へ注水可能に開口している上部注水口と、前記上部注水口を開閉可能な第三開閉筒と、前記下部帯水層へ注水可能に開口している下部注水口と、前記下部注水口を開閉可能な第四開閉筒と、を備える第1から第3の何れかの態様の地中熱利用システムである。
【0016】
本態様によれば、第一井戸及び第二井戸の各井戸において、各開閉筒により、上部揚水口、下部揚水口、上部注水口、及び下部注水口がそれぞれ開閉される。
そのため、各井戸内の機構をコンパクト化できる。
【0017】
第6の態様の地中熱利用システムは、前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対と、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対と、を連動させる連動機構をさらに備える第5の態様に記載の地中熱利用システムである。
【0018】
本態様によれば、地中熱利用システムは、連動機構を有するため、上部揚水口及び下部揚水口と、上部注水口及び下部注水口との各開閉動作を連動できる。
【0019】
第7の態様の地中熱利用システムは、前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対に吊り下げられている第一錘と、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対に吊り下げられている第二錘と、をさら備える第5の態様に記載の地中熱利用システムである。
【0020】
本態様によれば、地中熱利用システムは、第一錘に掛かる重力により、第一開閉筒及び第二開閉筒の対は、下へ引っ張られる。また、第二錘に掛かる重力により、第三開閉筒及び第四開閉筒の対は、下へ引っ張られる。
このため、地中熱利用システムは、第一開閉筒及び第二開閉筒の対と、第三開閉筒及び第四開閉筒の対と、の開閉筒の各対を下に動かしやすい。
【0021】
第8の態様の地中熱利用システムは、前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対と、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対と、を一緒に吊り上げるリフト機構をさら備える第7の態様に記載の地中熱利用システムである。
【0022】
本態様によれば、地中熱利用システムは、前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対と、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対と、を一緒に吊り上げることで、上部揚水口及び下部揚水口と、上部注水口及び下部注水口との各開閉動作を連動できる。
このため、地中熱利用システムにおいて、各開閉動作を行う機構が単純化できる。
【0023】
第9の態様の地中熱利用システムは、前記第一開閉筒及び前記第二開閉筒の対を摺動可能な第一シリンダと、前記第三開閉筒及び前記第四開閉筒の対を摺動可能な第二シリンダと、をさら備える第5の態様に記載の地中熱利用システムである。
【0024】
本態様によれば、第一シリンダの駆動力により、第一シリンダは、第一開閉筒及び第二開閉筒の対を上下に動かすことができる。また、第二シリンダの駆動力により、第二シリンダは、第三開閉筒及び第四開閉筒の対を上下に動かすことができる。
このため、地中熱利用システムは、第一開閉筒及び第二開閉筒の対と、第三開閉筒及び第四開閉筒の対と、の開閉筒の各対を下に動かしやすい。
【0025】
第10の態様の地中熱利用システムは、前記第一開閉筒を摺動可能な第一駆動機構と、前記第二開閉筒を摺動可能な第二駆動機構と、前記第三開閉筒を摺動可能な第三駆動機構と、前記第四開閉筒を摺動可能な第四駆動機構と、をさらに備える第5の態様に記載の地中熱利用システムである。
【0026】
本態様によれば、各駆動機構の駆動力により、第一開閉筒と、第二開閉筒と、第三開閉筒と、第四開閉筒と、の各開閉筒を上下に動かすことができる。
このため、地中熱利用システムは、第一開閉筒及び第二開閉筒の対と、第三開閉筒及び第四開閉筒の対と、の開閉筒の各対を下に動かしやすい。
【0027】
第11の態様の地中熱利用システムの運転方法は、上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、第一配管と、第二配管と、前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、を備える地中熱利用システムの運転方法であって、前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水させるステップと、前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水させるステップと、を含み、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの一方から送水させる前記地下水として、温水を揚水すると同時に、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの他方から送水させる前記地下水として、冷水を揚水する。
【0028】
本態様によれば、上部帯水層の地下水と、下部帯水層の地下水とが別々に送水可能であるため、上部帯水層の地下水と下部帯水層の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
したがって、本態様の地中熱利用システムの運転方法では、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
さらに、本態様の運転方法では、上部帯水層及び下部帯水層のうちの一方から温水を揚水すると同時に、上部帯水層及び下部帯水層のうちの他方から冷水を揚水する。このため、温水と冷水とを同時に活用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法は、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第一実施形態における地中熱利用システムの斜視図である。
図2】第一実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
図3】第一実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
図4】第一実施形態の切換部の例の斜視図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6図4のVI-VI線断面図である。
図7】第一実施形態の切換部の例の斜視図である。
図8】第一実施形態の切換部の例の斜視図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11】第一実施形態の切換部の例の斜視図である。
図12】第一実施形態の切換部の例の系統図である。
図13】第一実施形態の切換部の例の系統図である。
図14】第一実施形態の切換部の例の系統図である。
図15】第一実施形態の切換部の例の系統図である。
図16】第一実施形態の切換部の例の部分断面図である。
図17】第一実施形態の切換部の例の部分断面図である。
図18】第一実施形態の切換部の例の部分断面図である。
図19】第一実施形態の切換部の例の部分断面図である。
図20】第一実施形態における地中熱利用システムの運転方法のフローチャートである。
図21】第二実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
図22】第二実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
図23】第二実施形態における地中熱利用システムの各井戸内の構成の正面図である。
図24】第二実施形態における地中熱利用システムの各井戸内の構成の正面図である。
図25】サポートリングの斜視図である。
図26】第三実施形態における地中熱利用システムの各井戸内の構成の正面図である。
図27】第四実施形態における地中熱利用システムの各井戸内の構成の正面図である。
図28】第五実施形態における地中熱利用システムの各井戸内の構成の正面図である。
図29】第六実施形態における地中熱利用システムの各井戸内の構成の正面図である。
図30】リフト機構の斜視図である。
図31】リフト機構の部分斜視図である。
図32】リフト機構の機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0032】
<第一実施形態>
地中熱利用システムの第一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
なお、図1図3において、矢印は、各部分における(地下水を含む)熱媒体の流れを示す。
白塗の矢印は冷水を示し、黒塗の矢印は温水を示す。
【0033】
(地中熱利用システムの構成)
地中熱利用システム10は、2つの異なる帯水層である上部帯水層LY1と下部帯水層LY2とに蓄熱する。上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2は、例えば、洪積粘土層LYmを挟んで形成されている。
図1に示すように、地中熱利用システム10は、第一井戸20と第二井戸30とを備える。
地中熱利用システム10は、第一配管40と、第二配管50と、第一熱交換器60と、第二熱交換器70と、をさらに備える。
地中熱利用システム10は、暖房器80と、冷房器90と、をさらに備える。
暖房器80は、建物BLD内の暖房設備として用いられる。
冷房器90は、建物BLD内の冷房設備として用いられる。
地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの一方から送水させる地下水として、温水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの他方から送水させる地下水として、冷水を揚水するように構成されている。
【0034】
(第一井戸の構成)
第一井戸20は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
図2に示すように、第一井戸20は、第一貯留部21と、第一切換部22と、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、を備える。
第一井戸20は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL1に埋め込まれたケーシング20aを備える。
ケーシング20a内において、第一貯留部21と、第一切換部22と、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、の各間には、パッキングPKが設けられており、各間での地下水の行き来を抑制している。
【0035】
第一貯留部21は、第一上部開口部23の上方に設けられている。
第一貯留部21は、第一貯留部21内の地下水を揚水可能な第一ポンプ21aを有する。
【0036】
第一切換部22は、第一貯留部21と第一上部開口部23との間に設けられている。
第一切換部22は、第一貯留部21に開口している第一ポート22aと、第二配管50に接続されている第二ポート22bとを備える。
第一切換部22は、第一上部開口部23に開口している第三ポート22cと、第一上部開口部23を通り過ぎて第一下部開口部24に向かって延びて開口している第四ポート22dと、をさらに備える。
第一切換部22は、内部配管の切り換えによって、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続するモードと、第一貯留部21と第一下部開口部24とを接続するモードと、を切り換え可能である。
例えば、図2に示す場合、第一切換部22は、第一ポート22aと第三ポート22cとを接続することによって、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続している。
また、図2に示す場合、第一切換部22は、第二ポート22bと第四ポート22dとを接続することによって、第二配管50と第一下部開口部24とを接続している。
【0037】
第一上部開口部23は、上部帯水層LY1で開口している。
第一上部開口部23は、第一井戸20のうち、上部帯水層LY1に相当する深さに位置する部分である。
第一上部開口部23には、地下水が貯留されている。
例えば、ケーシング20aには、上部帯水層LY1において、複数のスリットからなるストレーナー23aが設けられている。ストレーナー23aを介して、第一上部開口部23は、上部帯水層LY1の地下水をケーシング20aの内部に取り込んだり、ケーシング20aの内部から上部帯水層LY1へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0038】
第一下部開口部24は、下部帯水層LY2で開口している。
第一下部開口部24は、第一井戸20のうち、下部帯水層LY2に相当する深さに位置する部分である。
第一下部開口部24には、地下水が貯留されている。
第一上部開口部23と、第一下部開口部24とは、上下に並んでいる。
例えば、ケーシング20aには、下部帯水層LY2において、複数のスリットからなるストレーナー24aが設けられている。ストレーナー24aを介して、第一下部開口部24は、下部帯水層LY2の地下水をケーシング20aの内部に取り込んだり、ケーシング20aの内部から下部帯水層LY2へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0039】
(第二井戸の構成)
第二井戸30は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第二井戸30は、第一井戸20と所定の距離を隔て設けられている。
図2に示すように、第二井戸30は、第二貯留部31と、第二切換部32と、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、を備える。
第二井戸30は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL2に埋め込まれたケーシング30aを備える。
ケーシング30a内において、第二貯留部31と、第二切換部32と、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、の各間には、パッキングPKが設けられており、各間での地下水の行き来を抑制している。
【0040】
第二貯留部31は、第二上部開口部33の上方に設けられている。
第二貯留部31は、第二貯留部31内の地下水を揚水可能な第二ポンプ31aを有する。
【0041】
第二切換部32は、第二貯留部31と第二上部開口部33との間に設けられている。
第二切換部32は、第二貯留部31に開口している第一ポート32aと、第一配管40に接続されている第二ポート32bとを備える。
第二切換部32は、第二上部開口部33に開口している第三ポート32cと、第二上部開口部33を通り過ぎて第二下部開口部34に向かって延びて開口している第四ポート32dと、をさらに備える。
第二切換部32は、内部配管の切り換えによって、第二貯留部31と第二上部開口部33とを接続するモードと、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続するモードと、を切り換え可能である。
例えば、図2に示す場合、第二切換部32は、第一ポート32aと第四ポート32dとを接続することによって、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続している。
また、図2に示す場合、第二切換部32は、第二ポート32bと第三ポート32cとを接続することによって、第一配管40と第二上部開口部33とを接続している。
【0042】
第二上部開口部33は、上部帯水層LY1で開口している。
第二上部開口部33は、第二井戸30のうち、上部帯水層LY1に相当する深さに位置する部分である。
第二上部開口部33には、地下水が貯留されている。
例えば、ケーシング30aには、上部帯水層LY1において、複数のスリットからなるストレーナー33aが設けられている。ストレーナー33aを介して、第二上部開口部33は、上部帯水層LY1の地下水をケーシング30aの内部に取り込んだり、ケーシング30aの内部から上部帯水層LY1へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0043】
第二下部開口部34は、下部帯水層LY2で開口している。
第二下部開口部34は、第二井戸30のうち、下部帯水層LY2に相当する深さに位置する部分である。
第二下部開口部34には、地下水が貯留されている。
第二上部開口部33と、第二下部開口部34とは、上下に並んでいる。
例えば、ケーシング30aには、下部帯水層LY2において、複数のスリットからなるストレーナー34aが設けられている。ストレーナー34aを介して、第二下部開口部34は、下部帯水層LY2の地下水をケーシング30aの内部に取り込んだり、ケーシング30aの内部から下部帯水層LY2へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0044】
また、地中熱利用システム10は、第一ポンプ21aと第二ポンプ31aとを同時に運転させる。このため、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの一方から地下水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの他方から地下水を揚水する。
【0045】
(第一配管の構成)
第一配管40は、第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)を介して、第一端40aから第二端40bへ延びている。
第一配管40の第一端40aは、第一ポンプ21aから第一配管40へ揚水可能に、第一ポンプ21aに接続されている。
第一配管40の第一端40aは、第一ポンプ21aに向かって、第一井戸20内に延びている。
第一配管40の第二端40bは、開閉弁、逆止弁等を介して、第二切換部32の第二ポート32bに向かって送水可能に、第二切換部32の第二ポート32bに接続されている。
第一配管40の第二端40bは、第二切換部32の第二ポート32bに向かって、第二井戸30内に延びている。
【0046】
(第二配管の構成)
第二配管50は、第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)を介して、第一端50aから第二端50bへ延びている。
第二配管50の第一端50aは、第二ポンプ31aから第二配管50へ揚水可能に、第二ポンプ31aに接続されている。
第二配管50の第一端50aは、第二ポンプ31aに向かって、第二井戸30内に延びている。
第二配管50の第二端50bは、開閉弁、逆止弁等を介して、第一切換部22の第二ポート22bに向かって送水可能に、第一切換部22の第二ポート22bに接続されている。
第二配管50の第二端50bは、第一切換部22の第二ポート22bに向かって、第一井戸20内に延びている。
【0047】
(第一熱交換器の構成)
第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)は、第一配管40の途中に接続されている。
第一熱交換器60の二次側(二次側配管60b)は、暖房器80に接続されている。
第一熱交換器60は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
地中熱利用システム10は、第一熱交換器60の二次側と暖房器80との間で、熱媒体を循環させている。
【0048】
(第二熱交換器の構成)
第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)は、第二配管50の途中に接続されている。
第二熱交換器70の二次側(二次側配管70b)は、冷房器90に接続されている。
第二熱交換器70は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
地中熱利用システム10は、第二熱交換器70の二次側と冷房器90との間で、熱媒体を循環させている。
【0049】
(動作)
本実施形態の地中熱利用システム10の動作について説明する。
【0050】
まず、図2に示す場合(第一モード)について説明する。
図2に示す場合、上述のとおり、第一切換部22は、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続する。これにより、第一上部開口部23において取水される地下水は、第一配管40へ揚水される。
例えば初期状態として、第一上部開口部23周辺の上部帯水層LY1には、温水が貯留されている。
この場合、少なくとも第一モード開始時において、第一上部開口部23において取水される温水が、第一配管40へ揚水される。
【0051】
図2に示す場合、上述のとおり、第二切換部32は、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続する。これにより、第二下部開口部34において取水される地下水は、第二配管50へ揚水される。
例えば初期状態として、第二下部開口部34周辺の上部帯水層LY1には、冷水が貯留されている。
この場合、少なくとも第一モード開始時において、第二下部開口部34において取水される冷水が、第二配管50へ揚水される。
【0052】
以上の動作により、地中熱利用システム10は、第一配管40を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
さらに、地中熱利用システム10は、第二配管50を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
したがって、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の蓄温熱を第一熱交換器60に供給でき、下部帯水層LY2の地下水の蓄冷熱を第二熱交換器70に供給できる。
さらに、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60から得た冷熱を上部帯水層LY1に蓄熱でき、第二熱交換器70から得た温熱を下部帯水層LY2に蓄熱できる。
【0053】
例えば、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1から取得した温水を、第一上部開口部23を介して第一熱交換器60に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60において取得した冷水を、第二上部開口部33を介して上部帯水層LY1に供給することによって貯蓄している。
また、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、下部帯水層LY2から取得した温水を、第二下部開口部34を介して第二熱交換器70に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第二熱交換器70において取得した冷水を、第一下部開口部24を介して下部帯水層LY2に供給することによって貯蓄している。
【0054】
また、地中熱利用システム10は、第一ポンプ21aと第二ポンプ31aとを同時に運転させることで、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの一方から温水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの他方から冷水を揚水する。
本実施形態の第一モードの場合、地中熱利用システム10は、第一ポンプ21aと第二ポンプ31aとを同時に運転させることで、上部帯水層LY1から温水を揚水すると同時に、下部帯水層LY2から冷水を揚水する。
【0055】
ここで「温水」とは、各帯水層の地下水の初期地中温度より高い温度の水のことをいい、「冷水」とは、各帯水層の地下水の初期地中温度より低い温度の水のことをいう。
例えば、各帯水層の地下水の初期地中温度は18℃である。
【0056】
次に、図3に示す場合(第二モード)について説明する。
図3は、第一切換部22及び第二切換部32の各内部配管を、図2に実線で示す接続から図2に点線で示す接続に切り換えた状態を示す。
この場合、第一切換部22は、第二ポート22bと第三ポート22cとを接続することによって、第二配管50と第一上部開口部23とを接続する。
また、第一切換部22は、第一ポート22aと第四ポート22dとを接続することによって、第一貯留部21と第一下部開口部24とを接続する。
また、第二切換部32は、第一ポート32aと第三ポート32cとを接続することによって、第二貯留部31と第二上部開口部33とを接続する。
また、第二切換部32は、第二ポート32bと第四ポート32dとを接続することによって、第一配管40と第二下部開口部34とを接続する。
これにより、第一下部開口部24において取水される地下水は、第一配管40へ揚水され、第二上部開口部33において取水される地下水は、第二配管50へ揚水される。
【0057】
例えば、第一モードを実施した後に第二モードを開始してもよい。
この場合、少なくとも第二モード開始時において、第二上部開口部33周辺の上部帯水層LY1には、冷水が貯留されている。
このため、第二上部開口部33において取水される冷水が、第二配管50へ揚水される。
またこの場合、少なくとも第二モード開始時において、第一下部開口部24周辺の下部帯水層LY2には、温水が貯留されている。
このため、第一下部開口部24において取水される温水が、第一配管40へ揚水される。
【0058】
以上の動作により、地中熱利用システム10は、第一配管40を介して、第一下部開口部24から第二下部開口部34へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
さらに、地中熱利用システム10は、第二配管50を介して、第二上部開口部33から第一上部開口部23へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
したがって、地中熱利用システム10は、下部帯水層LY2の蓄温熱を第一熱交換器60に供給でき、上部帯水層LY1の蓄冷熱を第二熱交換器70に供給できる。
さらに、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60から得た冷熱を下部帯水層LY2に蓄熱でき、第二熱交換器70から得た温熱を上部帯水層LY1に蓄熱できる。
【0059】
例えば、本実施形態の第二モードの場合、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1から取得した冷水を、第二上部開口部33を介して第二熱交換器70に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第二熱交換器70において取得した温水を、第一上部開口部23を介して上部帯水層LY1に供給することによって貯蓄している。
また、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、下部帯水層LY2から取得した温水を、第一下部開口部24を介して第一熱交換器60に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60において取得した冷水を、第二下部開口部34を介して下部帯水層LY2に供給することによって貯蓄している。
【0060】
(作用及び効果)
本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の地下水と、下部帯水層LY2の地下水とを別々に送水可能であるため、上部帯水層LY1の地下水と下部帯水層LY2の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
したがって、本実施形態の地中熱利用システム10では、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
例えば、上部帯水層LY1の地下水が酸素リッチであって、下部帯水層LY2の地下水が鉄分リッチである場合、上部帯水層LY1の地下水と下部帯水層LY2の地下水との両地下水が混ざると、酸化鉄が生成され、各井戸の開口部のストレーナーが閉塞されてしまう。
これに対し、本実施形態の地中熱利用システム10は、両地下水が混合しにくい構造であるため、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の利用に際し、井戸の閉塞を抑制することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1及び下部帯水層のうちの一方から送水させる地下水として、温水を揚水すると同時に、上部帯水層及び下部帯水層のうちの他方から送水させる地下水として、冷水を揚水する。
このため、温水と冷水とを同時に活用することができる。
例えば、建物BLD内において、ある部屋を暖房すると同時に、他の部屋を冷房することができる。
【0062】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の各帯水層において、送水により貯蓄した熱を、逆に送ることができる。このため、送水により貯蓄した熱を利用することができる。
【0063】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一ポンプ21aによって、第一モードにおいて上部帯水層LY1の地下水を揚水できると共に、第二モードにおいて下部帯水層LY2の地下水を揚水できる。同様に、本実施形態の地中熱利用システム10は、第二ポンプ31aによって、第二モードにおいて上部帯水層LY1の地下水を揚水できると共に、第一モードにおいて下部帯水層LY2の地下水を揚水できる。このため、各モードにわたって各ポンプを利用でき、各ポンプの利用効率を上げることができる。
【0064】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の地下水を揚水及び環水できると共に、下部帯水層LY2の地下水を揚水及び環水できる。
このため、1つの帯水層の地下水を揚水及び還水する地中熱利用システムに比べて、蓄熱容量を2倍とすることができる。
【0065】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一上部開口部23と、第一下部開口部24とは、上下に並んでおり、第二上部開口部33と、第二下部開口部34とは、上下に並んでいるため、敷地面積を有効に利用することができる。
特に、熱需要の高い高層ビルが密集する市街地では、大容量の熱源システムの実装が必要とされる一方で、敷地面積が限られているため、本実施形態の地中熱利用システム10は有効である。
例えば、本実施形態の地中熱利用システム10によれば、大都市域に共通した沖積平野に広く存在する地下水の熱利用ポテンシャルを生かした帯水層蓄熱利用が可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水させる一方、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水させている。
すなわち、各井戸において一方の帯水層から揚水する一方で、他方の帯水層に環水している。
このため、本実施形態の地中熱利用システム10は、地盤沈下や地盤上昇を抑制することができる。
【0067】
<切換部の例>
上述の熱利用システムの実施形態における第一切換部22の各例を、図4図19に示す。以下、第一切換部22の各例について説明するが、第二切換部32についても同様な構成とすることができる。
【0068】
例えば、第一切換部22は、図4図7に示すように、リボルバー22Rを備えてもよい。
リボルバー22Rを、図4に示す状態から、図7に示す状態に90°回転することにより、第一切換部22は、流路を変えることができる。
【0069】
例えば、第一切換部22は、図8図11に示すように、複数の三方弁22Tを備えてもよい。
三方弁22Tを切り換えることにより、第一切換部22は、流路を変えることができる。
なお、図8は、第一切換部22を正面から見た斜視図であり、図11は、第一切換部22を側面から見た斜視図である。
三方弁22Tは、例えば、ボール弁であってもよい。
【0070】
例えば、第一切換部22は、図12に示すように、複数の三方弁22Tと複数の注水弁22Pを備えてもよい。
三方弁22Tと注水弁22Pとを切り換えることにより、第一切換部22は、流路を変えることができる。
他の例として、第一切換部22は、図13に示すような複数の注水弁22Pの組み合わせや、図14に示すような複数の三方弁22Tと複数の注水弁22Pとの組み合わせであってもよい。
【0071】
例えば、第一切換部22は、図15に示すように、複数の四方弁22Fと複数の注水弁22Pを備えてもよい。
四方弁22Fと注水弁22Pとを切り換えることにより、第一切換部22は、流路を変えることができる。
【0072】
例えば、第一切換部22は、図16及び図17に示すように、2つのスライド機構22Sを備えてもよい。
スライド機構22Sを、図16に示す状態から、図17に示す状態に切り換えることにより、第一切換部22は、流路を変えることができる。
なお、第一切換部22は、さらに注水弁22Pを備えてもよい。
他の例として、図18及び図19に示すように、第一切換部22は、2つのスライド機構22Sが一体化された構成であってもよい。その際、図18に示す状態から、図19に示す状態に切り換えることにより、第一切換部22は、流路を変えることができる。
【0073】
<地中熱利用システムの運転方法の実施形態>
地中熱利用システムの運転方法の実施形態を図20に沿って説明する。
本運転方法は、上述の実施形態の地中熱利用システム10を用いて実行する。
【0074】
まず、図20に示すように、第一配管40を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水させる(ST1:上部帯水層の地下水を送水させるステップ)。
ST1の実行と同時に、第二配管50を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水させる(ST2:下部帯水層の地下水を送水させるステップ)。
また、地中熱利用システム10の運転方法は、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの一方から送水させる地下水として、温水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの他方から送水させる地下水として、冷水を揚水する。
【0075】
<第二実施形態>
地中熱利用システムの第二実施形態について、図21図23を参照して説明する。
なお、図21及び図22において、矢印は、各部分における(地下水を含む)熱媒体の流れを示す。
白塗の矢印は冷水を示し、黒塗の矢印は温水を示す。
【0076】
第二実施形態の地中熱利用システム100は、第一井戸、第二井戸、第一配管、及び第二配管の構成が異なる以外は、第一実施形態の地中熱利用システム10と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明については省略する。
【0077】
(地中熱利用システムの構成)
図21及び図22に示すように、地中熱利用システム100は、第一井戸120と第二井戸130とを備える。
地中熱利用システム100は、第一配管140と、第二配管150と、第一熱交換器60と、第二熱交換器70と、をさらに備える。
地中熱利用システム100は、暖房器80と、冷房器90と、をさらに備える。
例えば、地中熱利用システム100は、第一ポンプ180と、第二ポンプ190と、をさらに備えてもよい。
【0078】
第一ポンプ180は、第一井戸120から第一熱交換器60へ送水するように、第一配管140の途中に設けられる。
例えば、第一ポンプ180は、第一井戸120の真上に設けられてもよい。
【0079】
第二ポンプ190は、第二井戸130から第二熱交換器70へ送水するように、第一配管140の途中に設けられる。
例えば、第二ポンプ190は、第二井戸130の真上に設けられてもよい。
【0080】
地中熱利用システム100は、第一ポンプ180と、第二ポンプ190と、を同時に運転させる。このため、地中熱利用システム100は、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの一方から地下水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの他方から地下水を揚水する。
【0081】
(第一井戸の構成)
第一井戸120は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第一井戸120は、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、を備える。
第一井戸120は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL1に埋め込まれたケーシング20aを備える。
ケーシング20a内において、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、の各間には、パッキングPKが設けられており、各間での地下水の行き来を抑制している。
【0082】
(第二井戸の構成)
第二井戸130は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第二井戸130は、第一井戸120と所定の距離を隔て設けられている。
第二井戸130は、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、を備える。
第二井戸130は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL2に埋め込まれたケーシング30aを備える。
ケーシング30a内において、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、の各間には、パッキングPKが設けられており、各間での地下水の行き来を抑制している。
【0083】
(第一配管の構成)
第一配管140は、第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)を介して、第一端140aから第二端140bへ延びている。
【0084】
第一配管140は、第一端140aに第一井戸120内に延びている第一揚水管141を備える。
例えば、第一揚水管141は、第一上部開口部23を貫通し、第一下部開口部24内まで延びていてもよい。
【0085】
第一配管140は、第二端140bに第二井戸130内に延びている第二注水管142をさらに備える。
例えば、第二注水管142は、第二上部開口部33を貫通し、第二下部開口部34内まで延びていてもよい。
【0086】
(第二配管の構成)
第二配管150は、第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)を介して、第一端150aから第二端150bへ延びている。
【0087】
第二配管150は、第一端150aに第二井戸130内に延びている第二揚水管152を備える。
例えば、第二揚水管152は、第二上部開口部33を貫通し、第二下部開口部34内まで延びていてもよい。
【0088】
第二配管150は、第二端150bに第一井戸120内に延びている第一注水管151をさらに備える。
例えば、第一注水管151は、第一上部開口部23を貫通し、第一下部開口部24内まで延びていてもよい。
【0089】
(揚水管の構成)
図23に示すように、第一揚水管141と第二揚水管152との各揚水管は、上部揚水口101と、下部揚水口103と、を有する。
第一揚水管141と第二揚水管152との各揚水管は、第一開閉筒102と、第二開閉筒104と、を備える。
例えば、第一揚水管141と第二揚水管152との各揚水管は、下部揚水口103より下で閉じていてもよい。
以下、第一揚水管141について説明するが、第二揚水管152は、第一揚水管141と同様に構成されている。
【0090】
上部揚水口101は、上部帯水層LY1から揚水可能に開口している。
すなわち、上部揚水口101は、上部帯水層LY1から、第一上部開口部23内に取り込んだ地下水を、揚水可能に開口している。
例えば、第一揚水管141は、上部揚水口101として、管周に並ぶ複数の開口OPを有してもよい。
【0091】
上部揚水口101は、パッキングPKより上であれば、どのような深さ位置に設けられてもよい。
例えば、上部揚水口101は、上部帯水層LY1に相当する深さに位置に設けられてもよい。
さらに、上部揚水口101は、深さ位置について、第一上部開口部23が設けられている範囲内に設けられてもよい。
【0092】
第一開閉筒102は、上部揚水口101を開閉可能である。
例えば、第一開閉筒102は、第一揚水管141の外周に、第一揚水管141と同軸に設けられてもよい。
また、第一開閉筒102は、上部揚水口101の開口OPを覆う上部揚水口101と並ぶ位置に摺動することにより、上部揚水口101の上下おける第一揚水管141の管周に設けられてる一対のOリングORGを介して、上部揚水口101を密閉可能に構成されている。
【0093】
第一開閉筒102は、上下に摺動可能である。
例えば、第一開閉筒102は、上部揚水口101と並ぶ位置と、上部揚水口101より下の位置と、の間で上下に摺動可能であってもよい。
これにより、第一開閉筒102は、上部揚水口101と並ぶ位置にあるとき、上部揚水口101を閉塞し、上部揚水口101より下の位置にあるとき、上部揚水口101を開放する。
【0094】
下部揚水口103は、下部帯水層LY2から揚水可能に開口している。
すなわち、下部揚水口103は、下部帯水層LY2から、第一下部開口部24内に取り込んだ地下水を、揚水可能に開口している。
例えば、第一揚水管141は、下部揚水口103として、管周に並ぶ複数の開口OPを有してもよい。
【0095】
下部揚水口103は、パッキングPKより下であれば、どのような深さ位置に設けられてもよい。
例えば、下部揚水口103は、下部帯水層LY2に相当する深さに位置に設けられてもよい。
さらに、下部揚水口103は、深さ位置について、第一下部開口部24が設けられている範囲内に設けられてもよい。
【0096】
第二開閉筒104は、下部揚水口103を開閉可能である。
例えば、第二開閉筒104は、第一揚水管141の外周に、第一揚水管141と同軸に設けられてもよい。
また、第二開閉筒104は、下部揚水口103の開口OPを覆う下部揚水口103と並ぶ位置に摺動することにより、下部揚水口103の上下おける第一揚水管141の管周に設けられてる一対のOリングORGを介して、下部揚水口103を密閉可能に構成されている。
【0097】
第二開閉筒104は、上下に摺動可能である。
例えば、第二開閉筒104は、下部揚水口103と並ぶ位置と、下部揚水口103より上の位置と、の間で上下に摺動可能であってもよい。
これにより、第二開閉筒104は、下部揚水口103と並ぶ位置にあるとき、下部揚水口103を閉塞し、下部揚水口103より上の位置にあるとき、下部揚水口103を開放する。
【0098】
第一開閉筒102と、第二開閉筒104とは、第一揚水管141の外周を上下に延びるリンクLNK1を介して連結されている。
例えば、リンクLNK1は、上下に延びる金属棒であってもよい。
例えば、リンクLNK1は、パッキングPKによる地下水の行き来の抑制を維持しつつ、パッキングPKを貫通して、上下に延びていてもよい。
このため、第一開閉筒102と、第二開閉筒104とは、上下方向について連動して摺動する。
【0099】
例えば、第一開閉筒102と第二開閉筒104とは、第一開閉筒102が上部揚水口101より下の位置にあるとき、第二開閉筒104は、下部揚水口103と並ぶ位置にあるように、連結されてもよい。
これにより、第一開閉筒102が上部揚水口101を開放したとき、第二開閉筒104は、下部揚水口103を閉塞可能となっている。
【0100】
例えば、第一開閉筒102と第二開閉筒104とは、第一開閉筒102が上部揚水口101と並ぶ位置にあるとき、第二開閉筒104は、下部揚水口103より上の位置にあるように、連結されてもよい。
これにより、第一開閉筒102が上部揚水口101を閉塞したとき、第二開閉筒104は、下部揚水口103を開放可能となっている。
【0101】
(注水管の構成)
図23に示すように、第一注水管151と第二注水管142との各注水管は、上部注水口105と、下部注水口107と、を有する。
第一注水管151と第二注水管142との各注水管は、第三開閉筒106と、第四開閉筒108と、を備える。
例えば、第一注水管151と第二注水管142との各注水管は、下部注水口107より下で閉じていてもよい。
以下、第一注水管151について説明するが、第二注水管142は、第一注水管151と同様に構成されている。
【0102】
上部注水口105は、上部帯水層LY1へ注水可能に開口している。
すなわち、上部注水口105は第一上部開口部23内へ、第一注水管151内の地下水を注水可能に開口している。
例えば、第一注水管151は、上部注水口105として、管周に並ぶ複数の開口OPを有してもよい。
【0103】
上部注水口105は、パッキングPKより上であれば、どのような深さ位置に設けられてもよい。
例えば、上部注水口105は、上部帯水層LY1に相当する深さに位置に設けられてもよい。
さらに、上部注水口105は、深さ位置について、第一上部開口部23が設けられている範囲内に設けられてもよい。
【0104】
第三開閉筒106は、上部注水口105を開閉可能である。
例えば、第三開閉筒106は、第一注水管151の外周に、第一注水管151と同軸に設けられてもよい。
また、第三開閉筒106は、上部注水口105の開口OPを覆う上部注水口105と並ぶ位置に摺動することにより、上部注水口105の上下おける第一注水管151の管周に設けられてる一対のOリングORGを介して、上部注水口105を密閉可能に構成されている。
【0105】
第三開閉筒106は、上下に摺動可能である。
例えば、第三開閉筒106は、上部注水口105と並ぶ位置と、上部注水口105より下の位置と、の間で上下に摺動可能であってもよい。
これにより、第三開閉筒106は、上部注水口105と並ぶ位置にあるとき、上部注水口105を閉塞し、上部注水口105より下の位置にあるとき、上部注水口105を開放する。
【0106】
下部注水口107は、下部帯水層LY2へ注水可能に開口している。
すなわち、下部注水口107は、第一下部開口部24内へ、第一注水管151の地下水を、注水可能に開口している。
例えば、第一注水管151は、下部注水口107として、管周に並ぶ複数の開口OPを有してもよい。
【0107】
下部注水口107は、パッキングPKより下であれば、どのような深さ位置に設けられてもよい。
例えば、下部注水口107は、下部帯水層LY2に相当する深さに位置に設けられてもよい。
さらに、下部注水口107は、深さ位置について、第一下部開口部24が設けられている範囲内に設けられてもよい。
【0108】
第四開閉筒108は、下部注水口107を開閉可能である。
例えば、第四開閉筒108は、第一注水管151の外周に、第一注水管151と同軸に設けられてもよい。
また、第四開閉筒108は、下部注水口107の開口OPを覆う下部注水口107と並ぶ位置に摺動することにより、下部注水口107の上下おける第一注水管151の管周に設けられてる一対のOリングORGを介して、下部注水口107を密閉可能に構成されている。
【0109】
第四開閉筒108は、上下に摺動可能である。
例えば、第四開閉筒108は、下部注水口107と並ぶ位置と、下部注水口107より上の位置と、の間で上下に摺動可能であってもよい。
これにより、第四開閉筒108は、下部注水口107と並ぶ位置にあるとき、下部注水口107を閉塞し、下部注水口107より上の位置にあるとき、下部注水口107を開放する。
【0110】
第三開閉筒106と、第四開閉筒108とは、第一注水管151の外周を上下に延びるリンクLNK2を介して連結されている。
例えば、リンクLNK2は、上下に延びる金属棒であってもよい。
例えば、リンクLNK2は、パッキングPKによる地下水の行き来の抑制を維持しつつ、パッキングPKを貫通して、上下に延びていてもよい。
このため、第三開閉筒106と、第四開閉筒108とは、上下方向について連動して摺動する。
【0111】
例えば、第三開閉筒106と第四開閉筒108とは、第三開閉筒106が上部注水口105より下の位置にあるとき、第四開閉筒108は、下部注水口107と並ぶ位置にあるように、連結されてもよい。
これにより、第三開閉筒106が上部注水口105を開放したとき、第四開閉筒108は、下部注水口107を閉塞可能となっている。
【0112】
例えば、第三開閉筒106と第四開閉筒108とは、第三開閉筒106が上部注水口105と並ぶ位置にあるとき、第四開閉筒108は、下部注水口107より上の位置にあるように、連結されてもよい。
これにより、第三開閉筒106が上部注水口105を閉塞したとき、第四開閉筒108は、下部注水口107を開放可能となっている。
【0113】
(連動機構の構成)
例えば、地中熱利用システム100は、連動機構160をさらに備えてもよい。
連動機構160は、第一井戸120及び第二井戸130の各井戸内に設けられている。
以下、第一井戸120内に設けられている連動機構160について説明するが、第二井戸130内に設けられている連動機構160も、同様に構成されている。
【0114】
連動機構160は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、を連動させる。
【0115】
連動機構160は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対とを、上下方向に関し、逆方向に連動させてもよい。
例えば、図23に示すように、連動機構160は、リンクLNK1に固定されているラックギヤ161と、リンクLNK2に固定されているラックギヤ162と、ピニオンギア163と、を備えてもよい。
ラックギヤ161とラックギヤ162とは、第一揚水管141と第一注水管151の並ぶ方向に並んでいる。
ラックギヤ161とラックギヤ162とは、ピニオンギア163を介して結合されている。
ラックギヤ161とラックギヤ162とは、ピニオンギア163を挟んで対向している。
これにより、ラックギヤ161とラックギヤ162とは、上下方向に関し、逆方向に連動する。
【0116】
例えば、ラックギヤ161及びラックギヤ162の各ラックギヤは、吊り環HGRを備えてもよい。
操作者又は装置が、吊り環HGRに固定されたロッドやワイヤ等を地上から引き上げることにより、各ラックギヤを上に動かすことが可能である。
【0117】
(動作)
地中熱利用システム100の動作について説明する。
【0118】
まず、図21に示す場合(第一モード)について説明する。
第一井戸120では、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対が上に動かされ、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対が下へ動かされる。
例えば、ロッドやワイヤ等を地上から引き上げることにより、図23に示すように、ラックギヤ162が上に動かされ、連動機構160による連動により、ラックギヤ161は下に動かされてもよい。
【0119】
第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対が下に動くと、第一開閉筒102は上部揚水口101より下の位置に動き、第二開閉筒104は、下部揚水口103と並ぶ位置に動く。
これにより、第一井戸120では、第一開閉筒102は、上部揚水口101を開放し、第二開閉筒104は、下部揚水口103を閉塞する。
【0120】
他方、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対が上に動くと、第三開閉筒106は上部注水口105と並ぶ位置に動き、第四開閉筒108は、下部注水口107より上の位置に動く。
これにより、第一井戸120では、第三開閉筒106は、上部注水口105を閉塞し、第四開閉筒108は、下部注水口107を開放する。
【0121】
第一井戸120において、上部揚水口101が開放され、下部揚水口103が閉塞されると、図21に示すように、第一揚水管141は、第一上部開口部23を介して、上部帯水層LY1から地下水を揚水する。
他方、上部注水口105が閉塞され、下部注水口107が開放されると、第一注水管151は、第一下部開口部24を介して、下部帯水層LY2へ地下水を注水する。
【0122】
このとき、第二井戸130では、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対が上に動かされ、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対が下に動かされる。
これにより、第二井戸130では、下部揚水口103と上部注水口105とが開放され、上部揚水口101と下部注水口107とが閉塞される。
【0123】
第二井戸130において、下部揚水口103が開放され、上部揚水口101が閉塞されると、第二揚水管152は、第二下部開口部34を介して、下部帯水層LY2から地下水を揚水する。
他方、下部注水口107が閉塞され、上部注水口105が開放されると、第二注水管142は、第二上部開口部33を介して、上部帯水層LY1へ地下水を注水する。
【0124】
以上の動作により、第一実施形態と同様に、本実施形態の第一モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一配管140を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
また、地中熱利用システム100は、第二配管150を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
さらに、第一実施形態と同様に、本実施形態の第一モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一ポンプ180と第二ポンプ190とを同時に運転させることで、上部帯水層LY1から温水を揚水すると同時に、下部帯水層LY2から冷水を揚水する。
【0125】
次に、図22に示す場合(第二モード)について説明する。
第一井戸120では、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対が上に動かされ、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対が下へ動かされる。
例えば、ロッドやワイヤ等を地上から引き上げることにより、ラックギヤ161が上に動かされ、連動機構160による連動により、ラックギヤ162は下に動かされてもよい。
【0126】
第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対が上に動くと、第一開閉筒102は上部揚水口101と並ぶ位置に動き、第二開閉筒104は、下部揚水口103より上の位置に動く。
これにより、第一井戸120では、第一開閉筒102は、上部揚水口101を閉塞し、第二開閉筒104は、下部揚水口103を開放する。
【0127】
他方、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対が下に動くと、第三開閉筒106は上部注水口105より下の位置に動き、第四開閉筒108は、下部注水口107と並ぶ位置に動く。
これにより、第一井戸120では、第三開閉筒106は、上部注水口105を開放し、第四開閉筒108は、下部注水口107を閉塞する。
【0128】
第一井戸120では、上部揚水口101が閉塞され、下部揚水口103が開放されると、第一揚水管141は、第一下部開口部24を介して、下部帯水層LY2から地下水を揚水する。
他方、上部注水口105が開放され、下部注水口107が閉塞されると、第一注水管151は、第一上部開口部23を介して、上部帯水層LY1へ地下水を注水する。
【0129】
このとき、第二井戸130では、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対が上に動かされ、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対が下に動かされる。
これにより、第二井戸130では、下部揚水口103と上部注水口105とが閉塞され、上部揚水口101と下部注水口107とが開放される。
第二井戸130において、下部揚水口103が閉塞され、上部揚水口101が開放されると、第二揚水管152は、第二上部開口部33を介して、上部帯水層LY1から地下水を揚水する。
他方、下部注水口107が開放され、上部注水口105が閉塞されると、第二注水管142は、第二下部開口部34を介して、下部帯水層LY2へ地下水を注水する。
【0130】
以上の動作により、第一実施形態と同様に、本実施形態の第二モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一配管140を介して、第一下部開口部24から第二下部開口部34へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
また、地中熱利用システム100は、第二配管150を介して、第二上部開口部33から第一上部開口部23へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
さらに、第一実施形態と同様に、本実施形態の第二モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一ポンプ180と第二ポンプ190とを同時に運転させることで、下部帯水層LY2から温水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1から冷水を揚水する。
【0131】
(作用及び効果)
本実施形態の地中熱利用システム100は、第一実施形態と同様に、上部帯水層LY1の地下水と、下部帯水層LY2の地下水とを別々に送水可能であるため、上部帯水層LY1の地下水と下部帯水層LY2の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
このため、本実施形態の地中熱利用システム100によれば、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【0132】
また、本実施形態の地中熱利用システム100によれば、第一井戸120及び第二井戸130の各井戸において、各開閉筒により、上部揚水口101、下部揚水口103、上部注水口105、及び下部注水口107がそれぞれ開閉される。
そのため、各井戸内の機構をコンパクト化できる。
【0133】
また、本実施形態の一例によれば、地中熱利用システム100は、連動機構160を有するため、上部揚水口101及び下部揚水口103と、上部注水口105及び下部注水口107との各開閉動作を連動できる。
【0134】
また、本実施形態の一例によれば、地中熱利用システム100は、連動機構160を備えるため、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、のいずれか一方の開閉筒の対を上に動かすことで、他方の開閉筒の対を下に動かすことができる。
【0135】
比較例として、地中熱利用システムが、連動機構160を備えず、ばねの付勢力により、開閉筒の各対を下へ動かす構成であるとする。
この場合、ばねは、変位長さに関連して付勢力が変化するため、一定の力で開閉筒の各対を下へ動かしにくい。
これに対し、本実施形態によれば、連動機構160により、開閉筒の各対を下へ動かす構成であるため、一定の力で開閉筒の各対を下へ動かしやすい。
【0136】
(第二実施形態の変形例)
本実施形態の一例では、連動機構として、ラックギヤ161と、ラックギヤ162と、ピニオンギア163と、を備える連動機構160が用いられている。
連動機構は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対とを、上下方向に関し、逆方向に連動できるなら、どのように構成されてもよい。
変形例として、連動機構として、図24に示すような連動機構160’が用いられてもよい。
【0137】
連動機構160’は、チェーン164aと、チェーン164bと、スプロケット165aと、スプロケット165bと、を備える。
地中熱利用システム100は、サポートリング109と、吊り環HGRと、をさらに備える。
【0138】
チェーン164aの一端は、第一開閉筒102の上端に固定され、チェーン164aの他端は、第三開閉筒106の上端に固定されている。
【0139】
チェーン164bの一端は、第二開閉筒104の下端に固定され、チェーン164bの他端は、第四開閉筒108の下端に固定されている。
【0140】
スプロケット165aは、チェーン164aと結合している。
スプロケット165aは、チェーン164aの延びる方向へのチェーン164aの動きに連動して、回転可能となっている。
【0141】
スプロケット165bは、チェーン164bと結合している。
スプロケット165bは、チェーン164bの延びる方向へのチェーン164bの動きに連動して、回転可能となっている。
【0142】
サポートリング109は、リンクLNK1とリンクLNK2との各リンクに設けられている。
吊り環HGRは、各サポートリング109に固定されている。
【0143】
サポートリング109は、第一揚水管141と、第一注水管151と、第二揚水管152と、第二注水管142との各管の外周を摺動可能に設けられている。
サポートリング109は、上下に向かって一定の姿勢を維持しながら、上下に摺動可能である。
【0144】
例えば、図25に示すように、サポートリング109は、上下に離れている一対のリング109aと、一対のリング109aをつないでいる複数の連結棒109bと、を備えてもよい。
各リング109aは、第一揚水管141と、第一注水管151と、第二揚水管152と、第二注水管142との各管と同軸に設けられている。
各連結棒109bは、上下に延びている。
複数の連結棒109bは、各リング109aの周方向に並んでいる。
【0145】
複数の連結棒109bの少なくとも一つには、吊り環HGRが固定されている。
例えば、リング109aの径方向に対向する一対の連結棒109bの各連結棒109bに、吊り環HGRが固定されてもよい。
【0146】
本変形例によれば、連動機構160’は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対とを、上下方向に関し、逆方向に連動できる。
【0147】
本変形例によれば、サポートリング109は、上下に向かって一定の姿勢を維持できる。
例えば、1つの吊り環HGRに固定されたロッドやワイヤ等で引き上げても、リンクLNK1とリンクLNK2との各リンクが、上下に対し傾きにくい。
このため、地中熱利用システム100は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、の開閉筒の各対を上下に移動しやすい。
【0148】
本変形例では、吊り環HGRに固定されたロッドやワイヤ等で引き上げて開閉筒の各対を上下に動かしているが、開閉筒の各対を上下に動かすことができるならどのように動かしてもよい。
例えば、スプロケット165a及びスプロケット165bのうち、少なくとも一方のスプロケットに結合させた他のスプロケットを回転させることにより、開閉筒の各対を上下に動かしてもよい。
例えば、スプロケット165a及びスプロケット165bのうち、少なくとも一方のスプロケットに結合させたモータ等の回転軸を回転させることにより、開閉筒の各対を上下に動かしてもよい。
【0149】
<第三実施形態>
地中熱利用システムの第三実施形態について、図26を参照して説明する。
【0150】
第二実施形態の一例では、地中熱利用システム100が連動機構を備えるのに対し、本実施形態の一例では、地中熱利用システム100が第一錘と、第二錘と、を備える点が異なる。
なお、当該異なる以外は、第二実施形態の地中熱利用システム100と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明については省略する。
【0151】
例えば、地中熱利用システム100は、第一錘166aと、第二錘166bと、をさらに備えてもよい。
また、地中熱利用システム100は、第二実施形態の変形例と同様に、サポートリング109と、サポートリング109に固定された吊り環HGRと、をさらに備えてもよい。
【0152】
図26に示すように、第一錘166aは、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対に吊り下げられている。
例えば、第一錘166aは、第二開閉筒104の下端に吊り下げられてもよい。
【0153】
第二錘166bは、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対に吊り下げられている。
例えば、第二錘166bは、第四開閉筒108の下端に吊り下げられてもよい。
【0154】
本実施形態の一例によれば、第一錘166aに掛かる重力により、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対は、下へ引っ張られる。また、第二錘166bに掛かる重力により、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対は、下へ引っ張られる。
このため、例えば、操作者又は装置が、吊り環HGRに固定されたロッドやワイヤ等を地上から引き上げたり、緩めたりすることで、開閉筒の各対を、上下移動させることができる。
したがって、本実施形態の一例によれば、地中熱利用システム100は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、の開閉筒の各対を下に動かしやすい。
【0155】
<第四実施形態>
地中熱利用システムの第四実施形態について、図27を参照して説明する。
【0156】
第二実施形態の一例では、地中熱利用システム100が連動機構を備えるのに対し、本実施形態の一例では、地中熱利用システム100が第一シリンダと、第二シリンダと、を備える点が異なる。
なお、当該異なる以外は、第二実施形態の地中熱利用システム100と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明については省略する。
【0157】
例えば、地中熱利用システム100は、第一シリンダ167aと、第二シリンダ167bと、をさらに備えてもよい。
【0158】
図27に示すように、第一シリンダ167aは、リンクLNK3を介して、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と連結されている。
第一シリンダ167aは、油圧シリンダ、水圧シリンダ等であって、リンクLNK3を上下に駆動できる。
例えば、リンクLNK3の上端が、第二開閉筒104の下端に固定されてもよい。
例えば、リンクLNK3は、上下に延びる金属棒であってもよい。
【0159】
第二シリンダ167bは、リンクLNK4を介して、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と連結されている。
第二シリンダ167bは、油圧シリンダ、水圧シリンダ等であって、リンクLNK4を上下に駆動できる。
例えば、リンクLNK4の上端が、第四開閉筒108の下端に固定されてもよい。
例えば、リンクLNK4は、上下に延びる金属棒であってもよい。
【0160】
本実施形態の一例によれば、第一シリンダ167aの駆動力により、第一シリンダ167aは、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対を上下に動かすことができる。また、第二シリンダ167bの駆動力により、第二シリンダ167bは、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対を上下に動かすことができる。
したがって、本実施形態の一例によれば、地中熱利用システム100は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、の開閉筒の各対を上下に動かしやすい。
【0161】
<第五実施形態>
地中熱利用システムの第五実施形態について、図28を参照して説明する。
【0162】
第二実施形態の一例では、地中熱利用システム100が連動機構を備えるのに対し、本実施形態の一例では、地中熱利用システム100が第一駆動機構と、第二駆動機構と、第三駆動機構と、第四駆動機構と、を備える点が異なる。
なお、当該異なる以外は、第二実施形態の地中熱利用システム100と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明については省略する。
【0163】
例えば、地中熱利用システム100は、第一駆動機構168aと、第二駆動機構168bと、第三駆動機構168cと、第四駆動機構168dと、をさらに備えてもよい。
また、第一駆動機構168aと、第二駆動機構168bと、第三駆動機構168cと、第四駆動機構168dとは、互いに独立に駆動可能であってもよい。
【0164】
図28に示すように、第一駆動機構168aは、第一開閉筒102に結合されている。
第一駆動機構168aは、油圧アクチュエータ、水圧アクチュエータ等であって、第一開閉筒102を上下方向に駆動できる。
【0165】
第二駆動機構168bは、第二開閉筒104に結合されている。
第二駆動機構168bは、油圧アクチュエータ、水圧アクチュエータ等であって、第二開閉筒104を上下方向に駆動できる。
【0166】
第三駆動機構168cは、第三開閉筒106に結合されている。
第三駆動機構168cは、油圧アクチュエータ、水圧アクチュエータ等であって、第三開閉筒106を上下方向に駆動できる。
【0167】
第四駆動機構168dは、第四開閉筒108に結合されている。
第四駆動機構168dは、油圧アクチュエータ、水圧アクチュエータ等であって、第四開閉筒108を上下方向に駆動できる。
【0168】
本実施形態の一例によれば、各駆動機構の駆動力により、第一開閉筒102と、第二開閉筒104と、第三開閉筒106と、第四開閉筒108と、の各開閉筒を上下に動かすことができる。
したがって、本実施形態の一例によれば、地中熱利用システム100は、第一開閉筒102と、第二開閉筒104と、第三開閉筒106と、第四開閉筒108と、の各開閉筒を上下に動かしやすい。
【0169】
<第六実施形態>
地中熱利用システムの第六実施形態について、図29図32を参照して説明する。
【0170】
第三実施形態の一例では、地中熱利用システム100が、開閉筒の各対を、上下移動させるのに対し、本実施形態の一例では、地中熱利用システム100が開閉筒の各対を一緒に吊り上げる点が異なる。
また、第三実施形態の一例に対し、本実施形態の一例では、上部注水口105に対する第三開閉筒106の移動範囲が異なっている。
また、第三実施形態の一例に対し、本実施形態の一例では、下部注水口107に対する第四開閉筒108の移動範囲と、が異なっている。
なお、当該異なる以外は、第三実施形態の地中熱利用システム100と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明については省略する。
【0171】
例えば、地中熱利用システム100は、リフト機構170をさら備えてもよい。
【0172】
また、第三開閉筒106は、上部注水口105より上の位置と、上部注水口105と並ぶ位置と、の間で上下に摺動可能であってもよい。
これにより、第三開閉筒106は、上部注水口105と並ぶ位置にあるとき、上部注水口105を閉塞し、上部注水口105より上の位置にあるとき、上部注水口105を開放する。
【0173】
また、第四開閉筒108は、下部注水口107と並ぶ位置と、下部注水口107より下の位置と、の間で上下に摺動可能であってもよい。
これにより、第四開閉筒108は、下部注水口107より下の位置にあるとき、下部注水口107を開放し、下部注水口107と並ぶ位置にあるとき、下部注水口107を閉塞する。
【0174】
また、図29に示すように、第三開閉筒106と第四開閉筒108とは、第三開閉筒106が上部注水口105と並ぶ位置にあるとき、第四開閉筒108は、下部注水口107より下の位置にあるように、連結されてもよい。
これにより、第三開閉筒106が上部注水口105を閉塞したとき、第四開閉筒108は、下部注水口107を開放可能となっている。
【0175】
さらに、第三開閉筒106と第四開閉筒108とは、第三開閉筒106が上部注水口105より上の位置にあるとき、第四開閉筒108は、下部注水口107と並ぶ位置にあるように、連結されてもよい。
これにより、第三開閉筒106が上部注水口105を開放したとき、第四開閉筒108は、下部注水口107を閉塞可能となっている。
【0176】
(リフト機構の構成)
リフト機構170は、地上において、第一井戸120及び第二井戸130の各井戸の真上に、設けられている。
図30及び図31に示すように、リフト機構170は、ガイド板171と、天板172と、4本の上支柱173と、4本の下支柱174と、を備える。
リフト機構170は、一対のジャッキ175と、一対のボールねじ176と、一対のジャッキガイド177と、吊り上げ板178と、ロッド群179と、を備える。
【0177】
ガイド板171は、上を向く上板面171aと下を向く下板面171bを有する。
上板面171aの四隅の各隅から、上支柱173が下に延びている。
下板面171bの四隅の各隅から、下支柱174が下に延びている。
下支柱174の下端は、地表SGに固定されている。
【0178】
天板172は、ガイド板171と平行に距離を隔てて設けられている。
天板172の下を向く下板面172bの四隅の各隅には、上支柱173が固定されている。
【0179】
天板172の下板面172bには、上支柱173より中央寄りに一対のボールねじ176が軸回転可能に固定されている。
一対のボールねじ176は、下板面172bから下に延びており、吊り上げ板178及びガイド板171を貫通して一対のジャッキ175まで延びている。
【0180】
天板172の下板面172bには、上支柱173より中央寄りに一対のジャッキガイド177が固定されている。
一対のジャッキガイド177は、一対のボールねじ176の並びと直交するように並んでいる。
一対のジャッキガイド177の各ジャッキガイドは、棒形状を有する。
一対のジャッキガイド177は、下板面172bから下に延びており、吊り上げ板178を貫通してガイド板171まで延びている。
一対のジャッキガイド177の下端は、ガイド板171に固定されている。
【0181】
一対のジャッキ175は、ガイド板171の下板面171bに固定されている。
一対のジャッキ175の各ジャッキは、関連するボールねじ176を軸回転駆動する。
一対のジャッキ175は、連結シャフトJNTにより互いに結合されている。
連結シャフトJNTにより、一対のジャッキ175は、互いに連動する。
【0182】
吊り上げ板178は、ガイド板171と平行に設けられている。
吊り上げ板178は、天板172とガイド板171との間に設けられている。
吊り上げ板178は、4本の上支柱173に囲まれている。
吊り上げ板178は、一対のジャッキガイド177に沿って、上下に移動可能である。
吊り上げ板178は、一対のボールねじ176の各ボールねじと螺合している。
一対のボールねじ176の各ボールねじが、一対のジャッキ175で回転駆動されると、吊り上げ板178は、上下に駆動される。
【0183】
ロッド群179は、吊り上げ板178に固定されている。
ロッド群179は、吊り上げ板178から、ガイド板171を貫通し、下に延びている。
ロッド群179は、ロッド179aと、ロッド179bと、ロッド179cと、ロッド179dと、を有する。
ロッド179aと、ロッド179bと、ロッド179cと、ロッド179dとは、吊り上げ板178の四隅に並んで固定されている。
ロッド179aの下端、及びロッド179bの下端は、LNK1に設けられた吊り環HGRに固定されている。
ロッド179cの下端、及びロッド179dの下端は、LNK2に設けられた吊り環HGRに固定されている。
このため、図31に示すように、一対のジャッキ175の駆動により、吊り上げ板178が上に移動されると、LNK1及びLNK2は、一緒に吊り上げられる。
【0184】
(動作)
まず、第一モードについて説明する。
第一井戸120では、リフト機構170は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、を吊り上げないように動作する。
例えば、リフト機構170は、LNK1及びLNK2を吊り上げないように動作する。
この場合、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対は、第一錘166aの重力により下に移動する。
同様に、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対は、第二錘166bの重力により下に移動する。
このため、第一井戸120では、図29に示すように、上部揚水口101及び下部注水口107が開放され、下部揚水口103及び上部注水口105が閉塞される。
【0185】
第一井戸120において、上部揚水口101が開放され、下部揚水口103が閉塞されると、図21に示すのと同様に、第一揚水管141は、第一上部開口部23を介して、上部帯水層LY1から地下水を揚水する。
他方、上部注水口105が閉塞され、下部注水口107が開放されると、第一注水管151は、第一下部開口部24を介して、下部帯水層LY2へ地下水を注水する。
【0186】
このとき、第二井戸130では、リフト機構170は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、を一緒に吊り上げるように動作する。
例えば、リフト機構170は、LNK1及びLNK2を一緒に吊り上げるように動作する。
この場合、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対は、リフト機構170の駆動力により上に移動する。
同様に、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対は、リフト機構170の駆動力により上に移動する。
このため、第二井戸130では、上部揚水口101及び下部注水口107が閉塞され、下部揚水口103及び上部注水口105が開放される。
【0187】
第二井戸130において、上部揚水口101が閉塞され、下部揚水口103が開放されると、図21に示すのと同様に、第二揚水管152は、第二下部開口部34を介して、下部帯水層LY2から地下水を揚水する。
他方、上部注水口105が開放され、下部注水口107が閉塞されると、第二注水管142は、第二上部開口部33を介して、上部帯水層LY1へ地下水を注水する。
【0188】
以上の動作により、第一実施形態と同様に、本実施形態の第一モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一配管140を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
また、地中熱利用システム100は、第二配管150を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
さらに、第一実施形態と同様に、本実施形態の第一モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一ポンプ180と第二ポンプ190とを同時に運転させることで、上部帯水層LY1から温水を揚水すると同時に、下部帯水層LY2から冷水を揚水する。
【0189】
次に、第二モードについて説明する。
第一井戸120では、リフト機構170は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、を吊り上げるように動作する。
この場合、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対は、リフト機構170の駆動力により上に移動する。
同様に、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対は、リフト機構170の駆動力により上に移動する。
このため、第一井戸120では、上部揚水口101及び下部注水口107が閉塞され、下部揚水口103及び上部注水口105が開放される。
【0190】
第一井戸120において、上部揚水口101が閉塞され、下部揚水口103が開放されると、図22に示すのと同様に、第一揚水管141は、第一下部開口部24を介して、下部帯水層LY2から地下水を揚水する。
他方、上部注水口105が開放され、下部注水口107が閉塞されると、第一注水管151は、第一上部開口部23を介して、上部帯水層LY1へ地下水を注水する。
【0191】
このとき、第二井戸130では、リフト機構170は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、を吊り上げないように動作する。
この場合、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対は、第一錘166aの重力により下に移動する。
同様に、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対は、第二錘166bの重力により下に移動する。
このため、第二井戸130では、上部揚水口101及び下部注水口107が開放され、下部揚水口103及び上部注水口105が閉塞される。
【0192】
第二井戸130において、上部揚水口101が開放され、下部揚水口103が閉塞されると、図22に示すのと同様に、第二揚水管152は、第二上部開口部33を介して、上部帯水層LY1から地下水を揚水する。
他方、上部注水口105が閉塞され、下部注水口107が開放されると、第二注水管142は、第二下部開口部34を介して、下部帯水層LY2へ地下水を注水する。
【0193】
以上の動作により、第一実施形態と同様に、本実施形態の第二モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一配管140を介して、第一下部開口部24から第二下部開口部34へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
また、地中熱利用システム100は、第二配管150を介して、第二上部開口部33から第一上部開口部23へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
さらに、第一実施形態と同様に、本実施形態の第二モードの場合も、地中熱利用システム100は、第一ポンプ180と第二ポンプ190とを同時に運転させることで、下部帯水層LY2から温水を揚水すると同時に、上部帯水層LY1から冷水を揚水する。
【0194】
本実施形態の一例によれば、地中熱利用システム100は、第一開閉筒102及び第二開閉筒104の対と、第三開閉筒106及び第四開閉筒108の対と、を一緒に吊り上げることで、上部揚水口101及び下部揚水口103と、上部注水口105及び下部注水口107との各開閉動作を連動できる。
このため、地中熱利用システム100において、各開閉動作を行う機構が単純化できる。
【0195】
<他の変形例>
上述の第二から第六実施形態では、第一開閉筒102が各揚水管の外周に設けられているが、上部揚水口101を開閉できるならどのように構成されてもよい。
変形例として、第一開閉筒102は、各揚水管の内周に設けられてもよい。
同様に、変形例として、第二開閉筒104は、各揚水管の内周に設けられてもよい。
同様に、変形例として、第三開閉筒106は、各注水管の内周に設けられてもよい。
同様に、変形例として、第四開閉筒108は、各注水管の内周に設けられてもよい。
【0196】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0197】
例えば、図20に示す地中熱利用システムの運転方法は、上述の第二から第六実施形態の地中熱利用システム100を用いても実行できる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法は、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【符号の説明】
【0199】
10 地中熱利用システム
20 第一井戸
20a ケーシング
21 第一貯留部
21a 第一ポンプ
22 第一切換部
22a 第一ポート
22b 第二ポート
22c 第三ポート
22d 第四ポート
22F 四方弁
22P 注水弁
22R リボルバー
22S スライド機構
22T 三方弁
23 第一上部開口部
23a ストレーナー
24 第一下部開口部
24a ストレーナー
30 第二井戸
30a ケーシング
31 第二貯留部
31a 第二ポンプ
32 第二切換部
32a 第一ポート
32b 第二ポート
32c 第三ポート
32d 第四ポート
33 第二上部開口部
33a ストレーナー
34 第二下部開口部
34a ストレーナー
40 第一配管
40a 第一端
40b 第二端
50 第二配管
50a 第一端
50b 第二端
60 第一熱交換器
60a 一次側配管
60b 二次側配管
70 第二熱交換器
70a 一次側配管
70b 二次側配管
80 暖房器
90 冷房器
100 地中熱利用システム
101 上部揚水口
102 第一開閉筒
103 下部揚水口
104 第二開閉筒
105 上部注水口
106 第三開閉筒
107 下部注水口
108 第四開閉筒
109 サポートリング
109a リング
109b 連結棒
120 第一井戸
130 第二井戸
140 第一配管
140a 第一端
140b 第二端
141 第一揚水管
142 第二注水管
150 第二配管
150a 第一端
150b 第二端
151 第一注水管
152 第二揚水管
160 連動機構
160’ 連動機構
161 ラックギヤ
162 ラックギヤ
163 ピニオンギア
164a チェーン
164b チェーン
165a スプロケット
165b スプロケット
166a 第一錘
166b 第二錘
167a 第一シリンダ
167b 第二シリンダ
168a 第一駆動機構
168b 第二駆動機構
168c 第三駆動機構
168d 第四駆動機構
170 リフト機構
171 ガイド板
171a 上板面
171b 下板面
172 天板
172b 下板面
173 上支柱
174 下支柱
175 ジャッキ
177 ジャッキガイド
178 吊り上げ板
179 ロッド群
179a ロッド
179b ロッド
179c ロッド
179d ロッド
180 第一ポンプ
190 第二ポンプ
BLD 建物
HGR 吊り環
HOL1 掘削孔
HOL2 掘削孔
JNT 連結シャフト
LNK1 リンク
LNK2 リンク
LNK3 リンク
LNK4 リンク
LY1 上部帯水層
LY2 下部帯水層
LYm 洪積粘土層
OP 開口
ORG Oリング
PK パッキング
SG 地表
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32