(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ナノ銀ペーストを用いた半導体チップ接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L21/52 D
(21)【出願番号】P 2018035225
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】509202237
【氏名又は名称】株式会社応用ナノ粒子研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 孝之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】丹治 淳
(72)【発明者】
【氏名】深江 信邦
(72)【発明者】
【氏名】川上 三郎
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071826(JP,A)
【文献】特開2008-166086(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155615(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
H01L 21/52
H01L 21/58-21/607
B22F 1/00-12/90
B23K 20/00
H05K 3/32-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ銀ペーストを用いた半導体チップの接合方法であって、
銀原子の集合体からなる銀核の周囲に炭素数が10以下のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含むナノ銀ペーストを基板に塗着してペースト層を形成し、
前記ペースト層上に半導体チップを配置し、
加圧条件下で加熱して前記ペースト層を270℃以下で焼成した後、次いで、所定の加圧条件下で200℃以下まで
150秒以上かけて冷却して前記基板と前記半導体チップとを接合することを特徴とする接合方法
。
【請求項2】
前記冷却における前記加圧の圧力が5~15MPaである請求項
1に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ銀ペーストを用いた半導体チップの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイボンディング用途において、ナノ銀ペーストを用いた半導体チップの接合は、ナノ銀ペーストの特性から加圧焼成接合が一般的に用いられている。その理由として、ナノ銀ペーストは、溶剤やナノ銀粒子の有機被膜等の有意成分を含み、焼成時に有機成分が燃焼する際、加圧により焼成層の密度の低下を抑制し、高強度の銀化した接合層を形成することができるためである。
【0003】
また、当該用途における半導体チップの接合では、一般に、所定の温度まで半導体チップおよび基板を加圧・加熱して、ナノ銀ペーストを焼成して焼結させることにより接合層を形成し、その後、冷却する工程を採用している。
上梓されているナノ銀ペーストには焼成可能温度が200℃程度と低温の条件で焼成が可能であることを打ち出しているものもあるが、実際には焼成後の接合強度が低く、ダイボンディングには適しておらず、ダイボンディング用途に使用可能なナノ銀ペーストの多くは、焼成温度が300℃程度である。
そして、300℃以上の高温で焼成を行うと、半導体チップにかかる負荷が大きくなるとの懸念があるため、より低温の焼成で半導体チップの接合を行うことが望まれている。
また、生産性の向上や半導体チップへの負荷軽減の観点より、焼成時間を短縮することも望まれている。
【0004】
例えば、ナノ銀ペーストを用いた半導体装置の製造方法としては、焼成温度を200℃~400℃、加圧条件を2MPa~30MPaに調整することが知られている(特許文献1の請求項20、24など)。しかしながら、焼成から冷却に至るまでの条件や、特に300℃未満で焼成した場合の接合強度については不明である。
【0005】
また、半導体基板の少なくとも一面が窒化シリコン膜で覆われ、前記窒化シリコン膜が前記シリコン酸化膜を介して焼結銀被覆膜と密着しており、前記焼結銀被覆膜は、前記塗布膜を換気型のオーブンにより湿度12.1g/m3~24.2g/m3の雰囲気下で温度100℃~250℃に加熱して得られる半導体装置が知られている(特許文献2)。
前記半導体装置の製造では、焼成処理の温度条件は、100℃から200℃まで約40minで昇温し、200℃を60min保持した後、約80℃まで約80minで降下させて、焼成装置の外へ取り出しており、実に、加熱開始から焼成温度まで40分、焼成に60分という長時間をかける方法である。また、得られる焼結銀被覆膜の接着強度は、粘着テープ(3M社製のスコッチテープ:610-1PK,テープ強度3.7N/cm)を圧着して貼り付け、この粘着テープをその端を持って一方向に引き剥がした場合に剥がれないという程度であり、低い接着強度となっている(段落[0053])。
【0006】
ナノ銀ペーストに関しては、本件出願人の一人である株式会社応用ナノ粒子研究所も銀原子の集合体からなる平均粒径が1~20nmの範囲にある銀核の周囲に、炭素数が1~12のアルコール分子誘導体、アルコール分子残基、又はアルコール分子の一種以上からなる有機被覆層を形成した複合銀ナノ粒子を含有し、溶剤及び/又は粘性付与剤を添加している複合銀ナノペーストを提案している(特許文献3)。ただし、前記複合銀ナノペーストを300℃より低い温度で焼成した場合の接着強度は高いものの、60MPa以上のような非常に強い接合強度を発揮する手法についてはまだ十分に検討されているとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-178334号公報
【文献】特開2014-192209号公報
【文献】国際公開第2009/090846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ダイボンディング用途において、ナノ銀ペーストを300℃よりさらに低い270℃以下で加圧焼成した場合でも、接合時間を短縮でき、半導体チップを基板に高い接着強度で接合できる半導体チップの接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本件発明者らは、前記課題を解決すべく、低温での焼成が良好なナノ銀ペーストとして、炭素数が10以下のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含むナノ銀ペーストを用い、加圧しながらより低温での接合条件を検討したところ、250℃以下であっても、その焼結特性が300℃以上の焼成と遜色ない接合特性を生じることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
(1)ダイボンディング用途において、ナノ銀ペーストを用いた半導体チップの接合方法であって、銀原子の集合体からなる銀核の周囲に炭素数が10以下のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含むナノ銀ペーストを基板に塗着してペースト層を形成し、
前記ペースト層上に半導体チップを配置し、
加圧条件下で加熱して前記ペースト層を270℃以下で焼成した後、次いで、所定の加圧条件下で200℃以下まで150秒以上かけて冷却して前記基板と前記半導体チップとを接合することを特徴とする接合方法、
(2)前記冷却における前記加圧の圧力が5~15MPaである前記(1)に記載の接合方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接合方法によれば、ダイボンディング用途において、270℃以下の加熱温度でナノ銀ペーストを用いて焼成を行った場合にも、短時間で半導体チップを基板に強固に接合できる。従って、焼成時の温度による負荷を低減させ、半導体チップが接合されたパワーモジュール等の電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】後述の接合部材Aを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【
図2】後述の接合部材Bを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【
図3】後述の接合部材Cを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【
図4】後述の接合部材Dを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【
図5】後述の接合部材Eを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【
図6】後述の接合部材Fを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【
図7】後述の接合部材Gを作製する際の加熱・冷却のプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ナノ銀ペースト
本発明で用いるナノ銀ペーストは、銀原子の集合体からなる銀核の周囲に炭素数が10以下のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含む。この結晶子径3nm以下のナノ銀粒子は、ナノ銀ペースト全体の0.1wt%~1wt%程度含んでいれば、ナノ銀ペーストに含まれる10nmからサブミクロンサイズまでの金属粒子の焼結に寄与できる。
【0014】
本発明に用いるナノ銀粒子は、銀の融点(961.8℃)に比べて金属化温度が顕著に低く、しかも、従来の半田と比べて、Pbを含有せず、腐食性が無く、さらに電気伝導性や熱伝導性が良好であるなどの利点がある。また、前記有機被膜層は、加熱焼成すると主にH2OとCO2しか発生しないため、半導体などの電子部品接合に有効に適用することができるという利点もある。
【0015】
前記ナノ銀粒子は、その銀核の結晶子径が3nm以下であればよく、ナノ銀粒子の平均粒径、前記銀核の大きさ、前記有機被膜層の厚みなどは特に限定はない。
前記銀核の結晶子径は、X線回折装置で測定することができる。前記銀核は、一つの結晶子から形成されていてもよいし、複数の結晶子から形成されていてもよい。
【0016】
本発明に用いるナノ銀ペーストは、前記ナノ銀粒子を含有し、溶剤及び/又は粘性付与剤を添加した組成物である。
【0017】
前記溶剤は、ナノ銀粒子を分散させて溶液化する材料であり、例えばアルコール、アセトン、トルエン、キシレン、プロパノール、エーテル、石油エーテル、ベンゼンなどが利用できる。前記粘性付与剤は前記溶液に添加して塗着し易い粘性を付与する材料であり、例えばテレピンオイル、ターピネオール、メチルセルロース、エチルセルロース、ブチラール、各種テルペン誘導体、IBCH(イソボルニルシクロヘキサノール)、グリセリン、C14以上の常温で固形のアルコールなどが利用できる。
テルペン誘導体としては1,8-テルピンモノアセテート、1,8-テルピンジアセテートなどがある。IBCHは松脂状、グリセリンはシロップ状、C14以上のアルコールは固液変化する性質を有し、10℃以下では非流動性を有する。
前記非流動性粘性付与剤に本発明のナノ銀粒子を混合分散させて非流動性ペーストにすれば、10℃以下の低温ではナノ銀粒子が分散状に固定されているから、ナノ銀粒子同士の凝集が生起しにくい。
使用する直前に前記非流動性ペーストを室温にすることにより、流動化してペーストとして塗着可能になり、ペーストとしての機能を発揮できる。
【0018】
また、ペースト全体として銀含有率を高めるためには、銀微粒子を前記ナノ銀ペースト中に配合してもよい。銀微粒子の粒径は小さいほど全融解する温度が低下するが、接合対象の種類や特性に応じて、例えば50nm~5μmの範囲が適当であるが、より好適には0.1μm~1μmの銀微粒子が良く、ナノ銀粒子とのサイズ適合性がある。ナノ銀粒子と銀微粒子の質量比は適切に調整できる。
【0019】
前記ナノ銀ペースト中の金属含有率としては、70重量%以上が好ましい。
【0020】
なお、前記ナノ銀粒子およびナノ銀ペーストについては、国際公開第2009/090846号に記載の方法により得られたものが含まれる。
【0021】
2.接合方法
本発明の接合方法は、前記ナノ銀ペーストを基板に塗着してペースト層を形成し、
前記ペースト層上に半導体チップを配置し、
加圧条件下で加熱して前記ペースト層を270℃以下で焼成した後、次いで、所定の加圧条件下で200℃以下まで冷却して前記基板と前記半導体チップとを接合することを特徴とする。
【0022】
前記ナノ銀ペーストを基板に塗着させる方法、前記ペースト層を形成させる方法、前記ペースト層上に半導体チップを配置する方法については、いずれも、一般的な半導体チップの実装に使用される方法に基づいていればよく、特に限定はない。
【0023】
また、前記ペースト層は、半導体チップと基板とを接合するのに必要な面積をカバーできる面積となるように塗着されていればよく、特に限定はない。
【0024】
前記接合における加圧方法については、半導体チップ実装用の製造装置で実施されている方法であればよい。
例えば、その平面形状が半導体チップよりも大きく形成された平坦面を有する剛体材料により形成された加圧部材と、加圧部材の平坦面の周囲に配置された弾性体とを備える加圧ツールを用いて、加圧部材の平坦面により半導体チップの上面を押圧して、半導体チップのそれぞれの素子電極と基板のそれぞれの基板電極とを、前記ナノ銀ペーストからなるペースト層を介して接続する方法などが挙げられるが、特に限定はない。
【0025】
また、一般的な半導体チップ製造装置においては、前記加圧ツールは、加熱用または冷却用の熱媒体が導入されることで、前記加圧ツールに挟まれた半導体チップおよび基板を所望の温度に加熱または冷却することができる。
前記加圧応力、加熱における加熱速度、前記冷却における冷却速度などは、半導体チップ製造装置に加圧応力、加熱温度、冷却温度などの各条件を予めプログラムしておくことで、半導体チップおよび基板との間のペースト層を所望の温度で焼成し、次いで所望の温度へ冷却することができる。
【0026】
本発明では、前記焼成の条件としては、半導体チップへの熱の影響を抑える観点から、270℃以下、好ましくは250℃以下で行う。また、前記焼成温度の下限は、用いるナノ銀粒子に被覆しているカルボン酸等の有機物が蒸散する温度であれば特に制限はない。
【0027】
また、前記焼成を開始するまでの加熱は、急速加熱で行うことで、高い接合強度を得ることができる。本発明で、急速加熱とは、加熱を開始する温度から焼成温度に到達するまで時間が60秒以下である加熱をいう。
【0028】
前記焼成における加圧の条件としては、使用される基板および半導体チップの強度などに応じて適宜決定すればよいが、例えば、2MPa以上であればよく、チップへの影響を考慮すると5~15MPaが好ましい。
更に、半導体チップおよび基板の間にあるペースト層に熱が速やかに伝導されることで、前記ペースト層の焼成を効率よく行うことができる。
【0029】
また、前記加圧のタイミングは、ナノ銀ペーストの焼成が均一に行えることが出来れば特に制限はなく、前記焼成温度に到達するまでのいずれかの段階で行ってもよいし、前記焼成温度に到達した後に速やかに行ってもよい。
【0030】
本発明では、前記焼成の温度に達した後、前記加圧条件下で所定の時間、前記焼成の温度を維持することで、ナノ銀粒子の銀化を促進することができる。
前記所定の時間としては、使用される基板および半導体チップのサイズに応じて適宜決定すればよいが、半導体チップへの影響を考慮すると、例えば、60秒~180秒(1~3分間)が好ましい。
【0031】
次いで、前記焼成後、所定の加圧条件下で少なくとも200℃以下まで冷却して前記基板と前記半導体チップとを接合する。
前記冷却は、前記焼成の後から200℃以下まで150秒以上かけて緩やかに冷却することが好ましい。
例えば、焼成後、常温まで100秒間足らずで急冷する従来法では、接合する半導体チップのサイズによるが、得られた半導体チップと基板との間のペースト層の接合強度が顕著に低くなる恐れがある。
これに対して、上記のように焼成後から200℃以下まで150秒以上かけて穏やかに冷却することで、接合強度を顕著に高くすることができる。
【0032】
前記冷却について、例えば、200℃以下になるまでは、一定の冷却速度で穏やかな冷却を行ってもよい。
【0033】
前記冷却において、200℃になるまでにかかる時間としては、接合強度を維持しながら、接合処理にかかる時間を抑える観点から、150秒以上、600秒以下が好ましい。
【0034】
前記冷却において、200℃以下になるまでの加圧条件としては、使用される基板および半導体チップの強度などに応じて適宜決定すればよいが、2MPa以上であればよく、半導体チップへの影響を考慮すると5~15MPaが好ましい。
前記加圧条件について、例えば、200℃以下になるまでは、一定の加圧状態を維持していてもよいし、2~15MPaの範囲で前記加圧応力を増減させてもよいが、焼成時に付加する荷重と同等であれば工程管理の簡略化が期待できる。
【0035】
また、200℃未満から冷却終了温度(50℃以下)までの冷却条件や加圧条件については、特に限定はない。
前記冷却条件については、例えば、200℃までの冷却速度を維持して、冷却終了温度まで冷却してもよいし、200℃未満になった後に急冷を行ってもよい。
前記加圧条件については、例えば、200℃までの加圧条件を、冷却終了温度になるまで維持してもよいし、200℃未満になった後に段階的に加圧応力を下げていってもよい。
【0036】
前記冷却では、例えば、予め設定した冷却温度、加圧応力、冷却にかける時間などに従って温度制御しながらゆっくりと温度下げていくことができる温度制御手段を有する加圧焼成装置を用いればよい。
【0037】
なお、本発明に用いられる半導体チップ、基板については、それぞれの材質、サイズ、形状にについて、特に限定はない。
【0038】
本発明の接合方法により、半導体チップと基板とを高い接合強度で接合することができる。
例えば、本発明の接合方法による接合強度としては、後述の実施例に記載のように、A&D社製 テンシロン万能試験機を用いて測定した場合に、平均で60MPa以上の高い接合強度を有する。
【実施例】
【0039】
(試験例)
半導体チップの代わりに銅製の試験片(サイズ:厚み2mm、直径5mm)と、銅製の基板(サイズ:厚み5mm、直径10mm)との間に、ナノ銀ペーストを塗着して、以下の手順で接合を行った。
前記ナノ銀ペーストとしては、銀原子の集合体からなる銀核の周囲に炭素数が10のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含むナノ銀ペースト((株)応用ナノ粒子研究所製)を用いた。
前記接合には、市販の加圧焼成装置(明昌機工株式会社、「Model HTM-3000」)を用いて行った。前記加加圧焼成装置は、加圧条件に加えて、前記加圧部材に熱媒体を導入することで、200℃~450℃までの設定が可能な焼成装置である。なお、前記加圧部材における加熱温度を、焼成温度とする。また、焼成後、前記加圧加熱焼成装置において試験片が接触している加圧部材で測定される温度を冷却温度とする。
【0040】
前記基板の表面に、接合する前記試験片の断面とほぼ同じ面積になるように、ナノ銀ペーストを塗着させ、厚み50μmのペースト層を形成させた後、130℃にセットしたホットプレート上にて約90秒放置し、ペースト層をプリヒート処理を行った。
次いで、前記製造装置の加圧部材の間に、前記基板をセットし、プリヒート処理後のペースト層上に前記試験片を載せて、加圧部材で加圧可能な状態とした。
【0041】
次いで、
図1~7に示す加熱・冷却パターンで、接合を行った。
図1に示す接合では、まず、250℃の焼成温度になるまで急速加熱し、次いで、60秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、前記焼成が終了するまで維持した。次いで、焼成後(250℃を60秒間保持した後)から約200秒で50℃以下に急速に冷却し、加圧圧力も0MPaに急激に減少させた。なお、200℃までの冷却時間は、約50秒であった。得られた接合部材を「A」とする。なお、接合部材としては、3つのサンプルを作製した(以下の接合部材B~Gも同じ。)。
【0042】
図2に示す接合では、まず、250℃の焼成温度になるまで迄急速加熱し、次いで、60秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、前記焼成が終了するまで維持した。次いで、焼成後(250℃を60秒間保持した後)から約600秒で50℃以下になるまで一定の速度で冷却し、また加圧応力も0MPaになるまで一定の速度で減少させた。なお、200℃までの冷却時間は、約120秒であった。得られた接合部材を「B」とする。
【0043】
図3に示す接合では、まず、150℃になるまで急速加熱し、次いで240秒かけて焼成温度である250℃まで一定の速度で昇温し、その後、60秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、前記焼成が終了するまで維持した。次いで、焼成後(250℃を60秒間保持した後)から約200秒で50℃以下に急速に冷却し、加圧圧力も0MPaに急激に減少させた。なお、200℃までの冷却時間は、約50秒であった。得られた接合部材を「C」とする。
【0044】
図4に示す接合では、まず、150℃になるまで急速加熱し、次いで240秒かけて焼成温度である250℃まで一定の速度で昇温し、その後、60秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、前記焼成が終了するまで維持した。次いで、焼成後(250℃を60秒間保持した後)から約300秒で50℃以下になるまで一定の速度で冷却し、また加圧応力も0MPaになるまで一定の速度で減少させた。なお、200℃までの冷却時間は、約75秒であった。得られた接合部材を「D」とする。
【0045】
図5に示す接合(本発明の接合方法)では、まず、250℃の焼成温度になるまで急速加熱し、次いで、60秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、焼成後の冷却温度が200℃になるまで維持した。次いで、焼成後(250℃を60秒間保持した後)から約200秒で200℃以下に緩やかに冷却した。次いで、50℃以下になるまで400秒かけて一定の速度で冷却し、また、加圧応力も0MPaになるまで一定の速度で減少させた。得られた接合部材を「E」とする。
【0046】
図6に示す接合では、まず、300℃の焼成温度になるまで急速加熱し、次いで、180秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、焼成が終了するまで維持した。次いで、焼成後(300℃を180秒間保持した後)に加圧を停止し、それから約300秒で50℃以下に一定の速度で冷却した。得られた接合部材を「F」とする。
【0047】
図7に示す接合では、まず、300℃の焼成温度になるまで急速加熱し、次いで、180秒間焼成を行った。加圧は、150℃に到達した際に10MPaとし、焼成後から冷却が終了するまで維持した。次いで、焼成後(300℃を180秒間保持した後)から約300秒で200℃以下に緩やかに冷却し、次いで、300秒かけて50℃以下になるまで一定の速度で冷却した。得られた接合部材を「G」とする。
【0048】
得られた接合部材A~Gについての接合強度を、A&D社製 テンシロン万能試験機を用いて測定した。
その結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1の結果より、本発明の接合方法で得られた接合部材Eは、同じ焼成温度(250℃)および加圧条件(10MPa)で得られた接合部材A~Dに比べて、顕著に高い接合強度を有していることがわかる。
また、前記接合部材Eは、300℃の焼成温度で得られた接合部材F、Gと比べると、接合強度は若干低いものの、技術的目標値である60MPaを達成したものである。
さらに、接合部材F、Gでは、加圧条件および200℃までの冷却条件の違いに関わらず、接合強度が60MPa以上となっていることから、接合部材A~Dに見られるような接合強度の低減現象は、銀原子の集合体からなる銀核の周囲に炭素数が10以下のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含むナノ銀ペーストにおける270℃以下の焼成温度に特有の現象であると考えられる。
【0051】
また、ダイボンディング用途において、本発明の銀原子の集合体からなる銀核の周囲に炭素数が10以下のアルコキシド基及び/又はカルボン酸基からなる有機被覆層が形成され、前記銀核の結晶子径が3nm以下のナノ銀粒子を含むナノ銀ペーストを用いた接合方法を用いることにより、生産時間が短縮されるだけでなく、低温にて接合が可能となるため、半導体チップへの負荷が軽減され、接合品質の向上が期待でき、パワーモジュール等に広く応用が期待できる。