(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ディップ用先供給型半導体封止材、それを用いた半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20220624BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20220624BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220624BHJP
C08K 5/3437 20060101ALI20220624BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220624BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220624BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220624BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/40
C08L63/00 C
C08K5/3437
C08K3/36
H01L23/30 R
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2018111178
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】明道 太樹
(72)【発明者】
【氏名】宗村 真一
(72)【発明者】
【氏名】池田 行宏
(72)【発明者】
【氏名】星山 正明
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153942(JP,A)
【文献】特開2016-027174(JP,A)
【文献】特開2017-220519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/20
C08G 59/40
C08L 63/00
C08K 5/3437
C08K 3/36
H01L 23/29
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)フラックス剤、
(D)チクソトロピー付与剤、
(E)溶剤を含み、
前記(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の反応基の当量比が、0.15から0.62であり、成分(A)~(E)の合計を100質量部とした時に、成分(E)を35~75質量部含み、チクソトロピー指数(T.I.)が1.2~5.2であることを特徴とするディップ用先供給型半導体封止材。
なお、E型粘度計を用いて、前記ディップ用先供給型半導体封止材の1rpmで25℃における粘度(Pa・s)、および、前記ディップ用先供給型半導体封止材の10rpmで25℃における粘度(Pa・s)を測定し、1rpmで測定した粘度の測定値を、10rpmで測定した粘度の測定値により除した値を、前記チクソトロピー指数として示す。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂が、液状エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項3】
前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、および、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項4】
前記(B)硬化剤が、アミノ硬化剤、酸無水物硬化剤、および、フェノール硬化剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1~3のいずれかに記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項5】
前記(C)フラックス剤が、8-キノリノールである、請求項1~4のいずれかに記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項6】
前記(D)チクソトロピー付与剤が、ブチラール、および、平均粒径5nm~50nmのシリカフィラーからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~5のいずれかに記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項7】
(E)溶剤が、エチレングリコールモノフェニルエーテル、および、ジエチルジグリコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれかに記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項8】
さらに、(F)硬化促進剤を含有する、請求項1~7のいずれかに記載のディップ用先供給型半導体封止材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のディップ型先供給型半導体封止剤を用いた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップ用先供給型半導体封止材、それを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ(半導体素子)を基板(またはパッケージ)に実装する手法の一つにフリップチップ実装がある。フリップチップ実装は、半導体チップと基板とをバンプ(はんだボール)を用いて電気的に接続する技術である。バンプの周辺を補強するため、半導体チップと基板の間には半導体封止材が充填される。フリップチップ実装においては、従来、半導体チップと基板とを接続した後、半導体チップと基板との間隙(ギャップ)に、ディスペンサを用いて、液状の半導体封止材を充填させるプロセス(以下「後供給型」プロセスという)が広く用いられている。
【0003】
製品の小型化や高信頼性化の要求から、ギャップをより狭くすることが求められている。しかし、後供給型プロセスでは狭ギャップ化への対応に問題があった。
これに対し、近年、基板上の所定の部位に液状の半導体封止材を、ディスペンサを用いて塗布し、その上から半導体チップを載せ、その後、半導体封止材の硬化および半導体チップと基板との接続を行うプロセス(以下「先供給型」プロセスという)が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、先供給型プロセスでは、従来、基板上の所定の部位に、液状の半導体封止材を、ディスペンサを用いて塗布しているが、基板上に載置する半導体チップに対し、ディッピングにより、液状の半導体封止材を塗布した後、基板上にダイマウントし、その後、半導体封止材の硬化および半導体チップと基板との接続を行う新たなプロセスとすれば、作業性が向上するため好ましい。
【0006】
本発明は、ディップ用先供給型半導体封止材、および、それを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本願発明者らは、ディップ用先供給型半導体封止材について鋭意検討した。その結果、以下が課題となることを見出した。
上記した新たなプロセスでは、ディッピングにより液状の半導体封止材を塗布した半導体チップを、常温で基板上にダイマウントした後、所定の温度に加熱して、半導体封止材をリフローさせて半導体チップと基板とを接続し、その後、半導体封止材を加熱硬化する。ここで、半導体封止材のリフロー時には、ダイが固定されていないため、半導体チップが移動して位置がずれるダイシフトや、基板電極とはんだ電極との間に半導体封止材が挟まり接続不良を生じるおそれがある。
【0008】
本願発明は、上記課題を解決するため、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)フラックス剤、(D)チクソトロピー付与剤、(E)溶剤を含み、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の反応基の当量比が、0.15から0.62であり、成分(A)~(E)の合計を100質量部とした時に、成分(E)を35~75質量部含み、チクソトロピー指数(T.I.)が1.2~5.2であることを特徴とするディップ用先供給型半導体封止材を提供する。
【0009】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材において、前記(A)エポキシ樹脂が、液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材において、前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、および、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0011】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材において、前記(B)硬化剤が、アミノ硬化剤、酸無水物硬化剤、および、フェノール硬化剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0012】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材において、前記(C)フラックス剤が、8-キノリノールであることが好ましい。
【0013】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材において、前記(D)チクソトロピー付与剤が、ブチラール、および、平均粒径5nm~50nmのシリカフィラーからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0014】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材において、(E)溶剤が、エチレングリコールモノフェニルエーテル、および、ジエチルジグリコールからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0015】
本発明のディップ用先供給型半導体封止材は、さらに、(F)硬化促進剤を含有することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、本発明のディップ型先供給型半導体封止剤を用いた半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のディップ型先供給型半導体封止材によれば、半導体封止材のリフロー時におけるダイシフトや基板電極とはんだ電極との間に半導体封止材が挟まることによる接続不良が防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のディップ型先供給型半導体封止材について詳細に説明する。
本発明のディップ型先供給型半導体封止材(以下、「本発明の半導体封止材」と記載する。)は、以下に示す成分(A)~成分(E)を必須成分として含有する。
【0019】
(A)エポキシ樹脂
成分(A)のエポキシ樹脂は、本発明の半導体封止材の主剤をなす成分である。
成分(A)のエポキシ樹脂は、常温で液状である液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。常温で固体のエポキシ樹脂であっても、液状のエポキシ樹脂と併用することにより、混合物として液状を示す場合は好ましく用いることができる。
【0020】
成分(A)のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、および、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0021】
成分(A)のエポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0022】
(B)硬化剤
成分(B)の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
成分(B)の硬化剤としては、アミノ硬化剤、酸無水物硬化剤、および、フェノール硬化剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい
成分(B)の硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0023】
成分(A)のエポキシ樹脂と、成分(B)の硬化剤は、反応基の当量比(成分(B)の硬化剤の反応基/成分(A)のエポキシ樹脂の反応基)が、0.15から0.62である。
反応基の当量比が0.62以下であることにより、本発明の半導体封止材のリフロー時に、成分(A)のエポキシ樹脂が硬化して、基板電極とはんだ電極との接続不良を生じることが防止される。反応基の当量比は、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5未満である。
一方、反応基の当量比が0.15以上であることにより、本発明の半導体封止材の加熱硬化時に、成分(A)のエポキシ樹脂を完全硬化させることができる。
【0024】
(C)フラックス剤
成分(C)のフラックス剤は、フラックス活性剤をなす成分である。
本発明の半導体封止材は、成分(C)を含有することにより、電気的接続性およびその信頼性が高い。
【0025】
成分(C)のフラックス剤としては、8-キノリノールが、フラックス活性、ボイド抑制等の理由から好ましい。
【0026】
(D)チクソトロピー付与剤
本発明の半導体封止材は、成分(D)を含有することにより、チクソを発現する。これにより、本発明の半導体封止材のリフロー時に、半導体チップが移動して位置がずれるダイシフトや、基板電極とはんだ電極との間に半導体封止材が挟まり接続不良を生じることが抑制される。
【0027】
成分(D)のチクソトロピー付与剤として、ブチラール、および、平均粒径5nm~50nmのシリカフィラーからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0028】
成分(D)のチクソトロピー付与剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。例えば、ブチラールとシリカフィラーを併用してもよく、平均粒径が異なる2種以上のシリカフィラーを併用してもよい。
【0029】
成分(D)のチクソトロピー付与剤は、後述する手順で測定される本発明の半導体封止材のチクソトロピー指数(T.I.)が1.2~5.2となるようにその添加量を調整する。
本発明の半導体封止材のチクソトロピー指数(T.I.)が1.2より低いと、本発明の半導体封止材のリフロー時に、半導体チップが移動して位置がずれるダイシフトや、基板電極とはんだ電極との間に半導体封止材が挟まり接続不良を生じることを抑制できない。好ましくは1.3以上、より好ましくは2.0以上である。
本発明の半導体封止材のチクソトロピー指数(T.I.)が5.2より高いと、本発明の半導体封止材のリフロー時に、基板電極とはんだ電極との接続が阻害される。
チクソトロピー指数(T.I.)が上述した範囲の本発明の半導体封止材は、後述する手順で測定される粘度が100~550mPa・sであることが好ましい。
【0030】
(E)溶剤
本発明の半導体封止材は、成分(E)を含有することにより、ディッピングにより液状の半導体封止材を半導体チップに塗布することができ、半導体封止材のリフロー時に、成分(E)の溶剤が揮発することにより、基板電極とはんだ電極との接続が容易になる。
【0031】
成分(E)の溶剤として、エチレングリコールモノフェニルエーテル、および、ジエチルジグリコールからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
成分(E)の溶剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0032】
本発明の半導体封止材は、成分(A)~(E)の合計を100質量部とした時に、成分(E)を35~75質量部含む。成分(E)が35質量部未満だと、半導体封止材のリフロー時に、基板電極とはんだ電極との接続不良を生じるおそれがある。成分(E)が75質量部超だと、本発明の半導体封止材のリフロー時に、半導体チップが移動して位置がずれるダイシフトや、基板電極とはんだ電極との接続不良を生じるおそれがある。
【0033】
本発明の半導体封止材は、上記成分(A)~(E)以外に、以下に述べる成分を必要に応じて含有してもよい。
【0034】
(F):硬化促進剤
本発明の半導体封止材は、成分(F)として硬化促進剤を含有してもよい。
成分(F)としての硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化促進剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、イミダゾール系硬化促進剤(マイクロカプセル型、エポキシアダクト型を含む)、第三級アミン系硬化促進剤、リン化合物系硬化促進剤等が挙げられる。
これらの中でもイミダゾール系硬化促進剤が、半導体封止材の他の成分との相溶性、および、半導体封止材の硬化速度という点で優れることから好ましい。
【0035】
イミダゾール系硬化促進剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
また、マイクロカプセル型イミダゾールやエポキシアダクト型イミダゾールと呼ばれるカプセル化イミダゾールも用いることができる。すなわち、イミダゾール化合物を尿素やイソシアネート化合物でアダクトし、さらにその表面をイソシアネート化合物でブロックすることによりカプセル化したイミダゾール系潜在性硬化剤や、イミダゾール化合物をエポキシ化合物でアダクトし、さらにその表面をイソシアネート化合物でブロックすることによりカプセル化したイミダゾール系潜在性硬化剤も用いることができる。具体的には、例えば、ノバキュアHX3941HP、ノバキュアHXA3042HP、ノバキュアHXA3922HP、ノバキュアHXA3792、ノバキュアHX3748、ノバキュアHX3721、ノバキュアHX3722、ノバキュアHX3088、ノバキュアHX3741、ノバキュアHX3742、ノバキュアHX3613(いずれも旭化成ケミカルズ社製、商品名)等、アミキュアPN-40J(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名)、フジキュアFXR-1121富士化成工業株式会社製、商品名)を挙げることができる。
【0036】
成分(F)として硬化促進剤を含有させる場合、硬化促進剤の含有量の好適範囲は硬化促進剤の種類によって異なる。イミダゾール系硬化促進剤の場合、成分(A)としてのエポキシ樹脂100質量部に対して、0.05~50質量部であることがより好ましく、0.1~30質量部であることがさらに好ましい。
本発明の半導体封止材が成分(F)を含有する場合、成分(E)の含有量は、成分(A)~(F)の合計を100質量部とした時に、35~75質量部とする。
【0037】
(その他の配合剤)
本発明の半導体封止材は、上記成分(A)~成分(F)以外の任意成分を必要に応じてさらに含有してもよい。このような任意成分の具体例としては、カップリング剤、分散剤、消泡剤、着色剤、表面調整剤、などを配合することができる。カップリング剤を配合する場合、エポキシ基、または、(メタ)アクリレート基を含有するものが好ましい。
各配合剤の種類、配合量は常法通りである。
また、本発明の半導体封止材の弾性率や応力を調整する目的でエラストマー類を含有させてもよく、本発明の半導体封止材の粘度、靭性等を調整する目的でその他固形樹脂を含有させてもよい。
本発明の半導体封止材が上記の任意成分を含有する場合、成分(E)の含有量は、成分(A)~(E)(、含有する場合はさらに成分(F))と、上記の任意成分との合計を100質量部とした時に、35~75質量部とする。
【0038】
(半導体封止材の調製)
本発明の半導体封止材は、慣用の方法により製造することができる。
例えば、成分(A)~成分(E)、および、含有させる場合はさらに成分(F)、ならびに、さらに必要に応じて配合する任意成分を添加、もしくは逐次添加し、ニーダー、3本ロール、ボールミルなどの分散装置にて分散、混合する。
【0039】
次に本発明の半導体封止材の使用手順を以下に示す。
本発明の半導体封止材を用いて、半導体チップ(半導体素子)を基板(またはパッケージ)にフリップチップ実装する場合、基板上に載置する半導体チップに対し、ディッピングにより、本発明の半導体封止材を常温にて塗布する。次に、基板上に半導体チップを常温にてダイマウントする。次に、240~250℃に加熱して、半導体封止材をリフローさせて、基板電極とはんだ電極とを接続させる。その後、180℃で4時間~5時間加熱して、半導体封止材を硬化させる。
【0040】
本発明の半導体装置は、半導体装置の製造時に、本発明の半導体封止材を使用したものである限り特に限定されない。本発明の半導体装置の具体例としては、フリップチップ構造を有する半導体装置が挙げられる。フリップチップは、バンプと呼ばれる突起状の電極を有しており、この電極を介して基板等の電極と接続される。バンプ材質としては、はんだ、金、銅等が上げられる。フリップチップと接続される基板としては、FR-4等の単層、または積層された有機基板、シリコン、ガラス、セラミックなどの無機基板があり、銅および銅上への金メッキまたはスズメッキ、はんだ層等を形成した電極が用いられるな。なお、有機基板は表面にソルダーレジストが塗布されていてもよい。
フリップチップ構造の半導体装置としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリーデバイス、CPU(Central Processing Unit)GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーデバイス、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、LCD(Liquid Crystal Display)等に使用されるドライバーIC等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1~20、比較例1~7)
下記表に示す配合割合となるように各原料を3本ロールミルを使用して混合・分散して半導体封止材を調製した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。
【0043】
半導体封止材の調製時に使用した成分は以下の通り。
成分(A)
(A1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170:新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158g/eq
(A2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名EXA835LV:DIC株式会社製、エポキシ当量165g/eq
(A3)アミノフェノール型エポキシ樹脂、製品名630:三菱化学株式会社製、エポキシ当量94g/eq
成分(B)
(B1)酸無水物硬化剤、製品名YH306:三菱化学株式会社製、反応基当量234g/eq
(B2)アミノ硬化剤、製品名KAYAHARD A-A:日本化薬株式会社製、反応基当量63.5g/eq
(B3)フェノール硬化剤、製品名MEH-8005:明和化成株式会社製、反応基当量141g/eq
成分(C)
(C1)8-キノリノール、和光純薬工業株式会社製
成分(D)
(D1)シリカフィラー、製品名AEROSIL R805:日本アエロジル株式会社製、平均粒径10nm
(D2)ポリビニルブチラール樹脂
成分(E)
(E1)製品名ハイソルブ EPH(エチレングリコールモノフェニルエーテル)、東邦化学工業株式会社製
(E2)ジエチルジグリコール、日本乳化剤株式会社製
成分(F)
(F1)潜在性イミダゾール系硬化促進剤、製品名Amicure CG-1400、エボニック・ジャパン株式会社製
(F2)イミダゾール系硬化促進剤、製品名2P4MZ、四国化成株式会社製
【0044】
上記の手順で作製した半導体封止材を用いて、以下の評価を実施した。
【0045】
(粘度)
東機産業社製E型粘度計(型番:TVE-22H)を用いて、液温25℃、50rpmで調製直後の評価用試料の粘度を測定した。
【0046】
(チクソトロピー指数(T.I.))
東機産業社製E型粘度計(型番:TVE-22H)を用いて、1rpmで25℃における粘度(Pa・s)、および、10rpmで25℃における粘度(Pa・s)測定し、1rpmで測定した粘度の測定値を、10rpmで測定した粘度の測定値により除した値(10rpmでの粘度に対する1rpmでの粘度の比)を、チクソトロピー指数として示す。
【0047】
(実装評価)
下記のデバイスを用いて実装評価を行った。
パッケージサイズ:30.0mm×30.0mm
チップサイズ:6.0mm×6・0mm
チップ厚さ:400μm
バンプ数:264
バンプサイズ:170μm
最小バンプピッチ:300μm
【0048】
チップの実装面に対し、半導体封止材を膜厚100μmになるよう、ディッピングにより常温で塗布した。チップを基板上の所定の位置にダイマウントした後、240~250℃に加熱して、半導体封止材をリフローさせて、基板電極とはんだ電極とを接続させた。その後、180℃で2時間加熱して、半導体封止材を硬化させた。
半導体封止材の硬化後、日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてバンプの断面観察を行った。
10サンプルについて、以下の評価を行った。
ダイシフト:DAGE製X線検査装置(型番:XD7600NT)を用い、作製した半導体装置の半導体チップの銅ピラーと、基板のパッドとの位置ずれを観察した。位置ずれがない場合を「良」、位置ずれがある場合を「不良」とした。
はんだ接続:チップと基板の接合部が観察できるように切断した後、研磨して、チップと基板の接合部を露出させた。次に、日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて500倍で、露出した接合部を観察した。このとき、接合部に合金層が形成されていないものを不良とした。
バンプ補強:はんだ接続を評価した断面で、はんだの高さに対して5%以上の高さの封止樹脂があれば合格とした。
信頼性:半導体封止材を硬化させたデバイスに、-55℃、30分間と125℃、30分間を1サイクルとするサーマルサイクルを掛けた。1,000サイクル後、抵抗値が初期から5%以上変化したものを不良と判定した。
結果を下記表に示す。
【表1】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
実施例1~20は、チクソトロピー指数(T.I.)が1.2~5.2であり、ダイシフト、はんだ接続、バンプ接続、信頼性の評価が全10サンプルで合格であった。また、実施例1~20のサンプルの粘度は、粘度が一般に15000mPa・s以上の従来の先供給型半導体封止材に比べて大幅に低かった。
なお、実施例2~7、9~12は、実施例1に対し、各成分の配合割合を変えた例である。実施例8は、成分(D)のチクソトロピー付与剤を、シリカフィラー(D1)からポリビニルブチラール樹脂(D2)に変えた実施例である。実施例13~15は、成分(F)の硬化促進剤を変えた実施例である。実施例16,17は、成分(A)のエポキシ樹脂を変えた実施例である。実施例18,19は、成分(B)の硬化剤を変えた実施例である。実施例20は、成分(E)の溶剤をエチレングリコールモノフェニルエーテル(E1)からジエチルジグリコール(E2)に変えた実施例である。
成分(E)の溶剤を配合しなかった比較例1は、粘度が高く、はんだ接続の評価が全10サンプルで不合格であった。そのため、バンプ接続、信頼性の評価は実施しなかった。
チクソトロピー指数(T.I.)が1.2より低い比較例2は、ダイシフトの評価が全10サンプルで不合格であった。そのため、はんだ接続、バンプ接続、信頼性の評価は実施しなかった。成分(E)の配合量が35質量部より低い比較例3は、はんだ接続の評価が全10サンプル中4サンプルで不合格であった。そのため、残りの6サンプルについてバンプ接続、信頼性の評価を実施した。成分(E)の配合量が75質量部より高い比較例4は、ダイシフトの評価が全10サンプル中6サンプルで不合格であった。そのため、残りの4サンプルについてはんだ接続、バンプ接続、信頼性の評価を実施した。成分(A)のエポキシ樹脂と成分(B)の硬化剤の反応基の当量比が、0.15より低い比較例5は、信頼性の評価が全10サンプルで不合格であった。成分(A)のエポキシ樹脂と成分(B)の硬化剤の反応基の当量比が、0.62より高い比較例6は、はんだ接続の評価が全10サンプルで不合格であった。そのため、バンプ接続、信頼性の評価は実施しなかった。チクソトロピー指数(T.I.)が5.2より高い比較例7は、はんだ接続の評価が全10サンプルで不合格であった。そのため、バンプ接続、信頼性の評価は実施しなかった。