(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸エステル、およびそれから誘導されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体の合成法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20220624BHJP
C07D 495/04 20060101ALN20220624BHJP
H01B 1/12 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
C08G61/12
C07D495/04 101
H01B1/12 F
(21)【出願番号】P 2018082905
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2017092596
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 映一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 学
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西山 正一
(72)【発明者】
【氏名】粟野 裕
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007299(WO,A1)
【文献】特開昭63-039916(JP,A)
【文献】国際公開第2003/054052(WO,A1)
【文献】特開2013-077549(JP,A)
【文献】特開2017-101104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
H01B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(5a)
【化1】
(式中、aは2または3の整数を表す。
L
1は、下記一般式(2)
【化2】
(式中、bは2~12の整数を表す)
および下記一般式(3)
【化3】
(式中、cは2~5の整数を表す。)
から選ばれる2価の有機基を表す。
Rは、水素原子またはメチル基を表す。
M
+は、水素イオン、アルカリ金属イオンまたは第四級アンモニウムイオンを表す。)
で表される繰り返し単位を有する自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自己ドープ型導電性ポリマーおよびその前駆体として有用な3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸エステル、それから誘導されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体、およびその合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)はフレキシブル基板回路、透明電極、キャパシタ、静電気除去剤など、最も応用が進んだ導電性ポリマーの一つである。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は、通常はポリスチレンスルホン酸(PSS)と複合化し、水分散液として供されるが、このポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):PSS複合体の水への分散は容易ではなく、安定なコロイド様分散水溶液とするためには過剰のPSSを要する。しかし、強酸性のスルホン酸基を有するPSSを過剰量用いることによって、腐食性、あるいは高い吸水性を示すことから電子デバイスへの悪影響が懸念されている。その解決策の一つとして自己ドープ型のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体を用いることが提案されている。例えば特許文献1~3ではスルホン酸基を有する3,4-エチレンジオキシチオフェン誘導体を水溶液中で酸化重合することによって自己ドープ型のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体が得られることが開示されている。自己ドープ型のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体はポリマー鎖の側鎖にスルホン酸(塩)を有するため水への溶解性の改善が期待されるものの、重合溶液中でドープ状態となるためポリマー鎖が凝集しやすく、実際にはコロイド様分散水溶液となる。すなわち重合反応時の凝集体の形成およびその水分散性が導電性ポリマーとして使用する際の導電性に大きく影響してしまう。これまで3,4-エチレンジオキシチオフェン誘導体の重合時のドーピングを抑制することによって均一溶液中でポリマーを合成し、さらに後処理によって自己ドープ型のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体とした例はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5,111,327号明細書(1992年).
【文献】国際公開2014/007299号パンフレット(2014年).
【文献】国際公開2015/194657号パンフレット(2015年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来公知の手法では、重合時に自己ドープが生じるため、粘度の上昇やゲル状物の生成等が起こり、均一溶液中での重合反応が困難で、重合反応を制御し難いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、スルホン酸アルキルエステル基を有する3,4-エチレンジオキシチオフェン誘導体を重合することによって有機溶媒に可溶な側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体を製造でき、さらにこれを加水分解することによって自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0007】
【0008】
(式中、aは2または3の整数を表す。
Lは、単結合、または下記一般式(2)
【0009】
【0010】
(式中、bは、2~12の整数を表す)
および下記一般式(3)
【0011】
【0012】
(式中、cは、2~5の整数を表す。)
から選ばれる2価の有機基を表す。
Rは、水素原子またはメチル基を表す。
X1およびX2は、独立に水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す。
Zは、炭素数1~8のアルキル基を表す。)
で表される3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸エステルに関するものであり、これを重合して得られる下記一般式(4)
【0013】
【0014】
(式中、a,L,R、およびZは、前記と同じ意味を表す。)
で表される繰り返し単位を有する側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体、さらには、下記一般式(5a)
【0015】
【0016】
(式中、aおよびRは、前記と同じ意味を表す。
L1は、一般式(2)および一般式(3)から選ばれる2価の有機基を表す。
M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または無置換もしくは置換アンモニウムイオンを表す。)
で表される繰り返し単位を有する自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体に関するものである。
【0017】
また、本発明は、側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4)および/または自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5)を含むことを特徴とする導電性ポリマーに関するものであり、さらに該導電性ポリマーを用いることを特徴とする電極または電子デバイスに関するものである。
【0018】
また、一般式(4)で表される繰り返し単位を有する側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体におけるスルホン酸エステルを加水分解することを特徴とする、下記一般式(5)
【0019】
【0020】
(式中、aは、2または3の整数を表す。
Lは、単結合、または前記一般式(2)および前記一般式(3)から選ばれる2価の有機基を表す。
Rは、水素原子またはメチル基を表す。
M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または無置換もしくは置換アンモニウムイオンを表す。)
で表される繰り返し単位を有する自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体の製造法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリチオフェン(4)は有機溶媒に可溶であるため、化学構造や分子量の明確なポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体であり、さらに不純物の除去など精製も容易となり、この本発明のポリチオフェン(4)および/または本発明のポリチオフェン(4)から誘導される本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)を用いることで、従来技術で得られる同様な導電性ポリマーに比べ導電性、酸性、吸湿性、機械強度、耐熱性などを精密に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0023】
一般式(1)で表される本発明の3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸エステル(以下、本発明のスルホン酸エステル(1)と称する。)、一般式(4)で表される本発明の側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(以下、本発明のポリチオフェン(4)と称する。)、および一般式(5)で表される本発明の自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(以下、本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)と称する。)において、Lは、単結合、または前記の一般式(2)および前記の一般式(3)から選ばれる2価の有機基を表すが、合成の容易さ、効率の良い点で単結合が好ましい。
【0024】
一般式(5a)で表される本発明の自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(以下、本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5a)と称する。)において、L1は、前記の一般式(2)および前記の一般式(3)から選ばれる2価の有機基を表す。
【0025】
本発明のスルホン酸エステル(1)、および本発明のポリチオフェン(4)において、Zの炭素数1~8のアルキル基としては、特に限定するものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、1-メチルヘプチル基、または2-エチルヘキシル基などを例示でき、これらのうち、合成が容易な点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、または2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0026】
本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)、および本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5a)において、M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または無置換もしくは置換アンモニウムイオンを表すが、該アルカリ金属イオンとしては、特に限定するものではないが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどを例示することができ、該無置換または置換アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、アンモニウムイオン(NH4
+)、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ビス(2-メチルプロピル)アンモニウムイオン、トリス(2-メチルプロピル)アンモニウムイオン、ペンチルアンモニウムイオン、ジペンチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、ジヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクチルメチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ジデシルメチルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ドデシルジメチルアンモニウムイオン、ジドデシルアンモニウムイオン、ジドデシルメチルアンモニウムイオン、テトラデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルジメチルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルアンモニウムイオンなどを例示できる。これらのうち、安価で合成しやすい点で、アンモニウムイオン(NH4
+)、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、ジヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ドデシルジメチルアンモニウムイオン、テトラデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルジメチルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、またはジメチルオクタデシルアンモニウムイオンが好ましい。
【0027】
次に本発明のスルホン酸エステル(1)の製造法について詳述する。本発明のスルホン酸エステル(1)は次の反応経路に従って製造することができる。
【0028】
【0029】
(式中、a、L、R、Zは、前記と同じ意味を表す。
XおよびX3は、独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す。
(M1)+は、スルホン酸塩の許容される対カチオンを表す。
Z1は、水酸基の保護基を表す。)
3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するアルコール(6)(上記一般式(6)で表される化合物)は、Sigma-Aldrich社やAlfa Chemistry社などから入手可能であるが、公知文献(例えば、L.Zhangら,Journal of Heterocyclic Chemistry,51巻1277~1281頁(2014年)、G.G.Rodriguez-Caleroら,Electrochimica Acta,167巻55~60頁(2015年)、Y.Yanoら,特開2015-168793公開特許公報、M.Sassiら,Advanced Functional Materials,26巻5240~5246頁(2016年)など)に従って合成することもできる。該アルコール(6)にアニオン化剤を作用させてアルコラートアニオンを生成させたところへ水酸基を保護したハロゲン化物(7)(上記一般式(7)で表される化合物)を加えて3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するエーテル化合物(8)(上記一般式(8)で表される化合物)を合成し、続いて水酸基の脱保護を行ってアルコール(9)(上記一般式(9)で表される化合物)を合成する。用いることのできるアニオン化剤としてはアルコールをアニオン化でき且つ副反応を抑制できれば特に制限は無いが、具体的には、水素化ナトリウム、フェニルリチウム、またはリチウムジイソプロピルアミドなどを例示できる。
【0030】
ハロゲン化物(7)は、対応する下記一般式(7a)
【0031】
【0032】
(式中、LおよびXは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアルコール(以下、アルコール(7a)と称する。)から合成でき、保護基Z1の選択としては脱保護時に副反応を抑制できれば特に制限は無い。水酸基の保護/脱保護の方法は文献(例えば、Peter G.M.Wuts著「Greene’s Protective Groups In Organic Synthesis」Chapter2:Protection For The Hydroxyl Group,Including 1,2- And 1,3-Diols(第5版,John Wiley&Sons Inc.,2014年)などを参考に行うことができ、具体的な保護基Z1としては例えば、アセチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基などを例示できる。
【0033】
アルコール(6)からエーテル化合物(8)を合成する反応は、有機溶媒中で円滑に進行し、該有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN,N-ジメチルアセトアミドなどを単独または二種類以上混合して用いることができる。
【0034】
次に3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するアルコール(6)またはアルコール(9)にアニオン化剤を作用させた後、環状スルトン化合物を加えることによって、3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸塩(10)を合成できる。アニオン化剤およびアニオン化反応条件は上述のアルコール(6)からエーテル化合物(8)を合成する際の条件と同様である。環状スルトン化合物としては市販のものを用いることができ、具体的には、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-(1-メチル)プロパンスルトンなどを例示できる。対カチオン(M1)+は、用いたアニオン化剤によって自ずと決まり、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオンなどであるが、溶解性の制御または精製のために対カチオンをスルホン酸塩として許容される他の対カチオンに、イオン交換処理などによって変換することができる。
【0035】
3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸塩(10)(上記一般式(10)で表される化合物)に塩素化剤を作用させて、対応するスルホン酸クロリド(11)(上記一般式(11)で表される化合物)を生成させた後、アルコール(12)(上記一般式(12)で表される化合物)を反応させることにより、スルホン酸エステル(1a)(上記一般式(1a)で表される化合物)を合成できる。3,4-エチレンジオキシチオフェン構造を有するスルホン酸塩(10)からスルホン酸クロリド(11)を生成させる際、塩素化剤としてはスルホン酸クロリド(11)を生成できれば特に制限は無いが、副反応を抑制でき収率が良く経済性に優れる点で塩化チオニル、二塩化オキサリルまたは五塩化リンが好ましく、二塩化オキサリルが特に好ましい。
【0036】
有機溶媒を用いることによって反応を円滑に進行させることができ、有機溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、CPMEなどのエーテル系溶媒、DMF、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒などをあげることができ、これらを単独または二種類以上混合して用いることができる。
【0037】
反応温度は、通常-20~150℃の範囲から適宜選択できる。反応溶液中に生成したスルホン酸クロリド(11)は精製せずに、ここにアルコール(12)を添加することによりスルホン酸エステル(1a)を製造できる。このときトリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基を添加すると、円滑に反応が進行する。得られたスルホン酸エステル(1a)はカラムクロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。アルコール(12)においてZは本発明のポリチオフェン(4)で示したZと同じ意味を表す。
【0038】
スルホン酸エステル(1a)にハロゲン化剤を加えてチオフェン環上の水素原子を塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子に置換することにより、スルホン酸エステル(1b)(上記一般式(1b)で表される化合物)を製造できる。ハロゲン化剤としては公知のハロゲン化剤を用いることができ、Cl2、Br2、I2、二塩化スルフリル、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド、または五塩化リンなどを例示できる。
【0039】
スルホン酸エステル(1a)とハロゲン化剤との反応は、溶媒中で行ってもよく、該溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、CPMEなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒などをあげることができ、これらを単独または二種類以上混合して用いることができる。また必要に応じて触媒量のDMFを添加しても良い。反応温度は通常-20~100℃の範囲から適宜選択できる。得られたスルホン酸エステル(1b)はカラムクロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。
【0040】
本発明のスルホン酸エステル(1)を原料として重合を行うことにより、本発明のポリチオフェン(4)を製造できる。
【0041】
重合方法には重合以外の副反応を抑制できれば特に制限は無く、ポリチオフェン類の合成において公知である種々のカップリング反応を利用でき、公知文献を参考に重合方法を選ぶと良い。公知文献として例えば、「Handbook of Thiophene-based Materials:Volume1」(Chapter2,John Wiley&Sons Ltd.2009年)、田中将太ら「オリゴチオフェン、ポリチオフェンの革新的合成法:C-Hカップリング反応によるアプローチ」(TCIメール寄稿論文153号(2012年))などの総説をあげることができる。中でも有機スズ化合物を用いた右田-小杉-スティルカップリング(公知文献:J.K.Stille,Angewandte Chemie,International Edition in English,25巻508~524頁(1986年))、鈴木-宮浦カップリング、グリニャール試薬とハロゲン原子との交換反応を用いたGrignard Metathesis(GRIM)重合(公知文献:R.S.Loeweら,Advanced Materials,11巻250~253頁(1999年))などが好適に用いられる。この場合、次の2つの一般反応式に示すように、スルホン酸エステル(1b)の二つのハロゲン原子のいずれか一つを有機スタニル基、有機ボリル基またはハロマグネシウム基に置換した下記一般式(13)で表される化合物が系中に発生してカップリングが進行する場合と、スルホン酸エステル(1b)の2つのハロゲン原子が有機スタニル基またはハロマグネシウム基に置換した下記一般式(14)で表される化合物がスルホン酸エステル(1b)とカップリングする場合、さらにはこれらの両方の反応が進行して本発明のポリチオフェン(4)が生成する場合がある。
【0042】
【0043】
(式中、a、L、R、X3およびZは、前記と同じ意味を表す。M2は、有機スタニル基、有機ボリル基またはハロマグネシウム基を表す。)
【0044】
【0045】
(式中、a、L、M2、RおよびZは、前記と同じ意味を表す。)
または、パラジウム触媒を用いたC-H直接アリール化重合(公知文献:A.Kumarら,Polymer Chemistry,Polymer Chemistry,1巻286~288頁(2010年)、Q.Wangら,Journal of The American Chemical Society,132巻11420~11421頁(2010年)、Y.Fujinamiら,ACS Macro Letters,1巻67~70頁(2012年)、H.Zhaoら,Macromolecules,45巻7783~7790頁(2012年)、J.Kuwabaraら,Polymer Chemistry,6巻891~895頁(2015年)、M.Wakiokaら,Macromolecules,48巻8382~8388頁(2015年)、K.Fujitaら,Macromolecules,49巻1259~1269頁(2016年))などが好適に用いられる。この場合、次の2つの一般反応式に示すように、スルホン酸エステル(1a)とスルホン酸エステル(1b)とを用いてC-H直接アリール化重合を行ったり、スルホン酸エステル(1b)の二つのハロゲン原子のいずれか一つを還元して水素原子に変換したスルホン酸エステル(1c)(下記一般式(1c)で表される化合物)を用いてC-H直接アリール化重合を行ったりできる。またルイス酸存在下スルホン酸エステル(1c)を作用させて求電子置換重合することもできる。
【0046】
【0047】
【0048】
(式中、a、L、R、X3およびZは、前記と同じ意味を表す。)
また、次の2つの一般反応式に示すように、スルホン酸エステル(1a)と2,5-ジハロ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(15)(下記一般式(15)で表される化合物)とのC-H直接アリール化重合によって、あるいはスルホン酸エステル(1b)と3,4-エチレンジオキシチオフェンとのC-H直接アリール化重合によって、本発明のポリチオフェン(4)の構造を有するポリチオフェン(4a)(下記一般式(4a)で表される化合物)を製造することができる。
【0049】
【0050】
(式中、a、L、RおよびZは、前記と同じ意味を表す。X4は、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す。)
【0051】
【0052】
本発明のスルホン酸エステル(1a)を原料として、酸化重合を行っても、本発明のポリチオフェン(4)を製造できる。
【0053】
酸化重合の方法として、公知である電解酸化重合法および化学酸化重合法を適宜用いることができる。
【0054】
電解酸化重合の具体的な方法は、例えば、「新高分子実験学3:高分子の合成・反応(2)-縮合系高分子の合成」(高分子学会編,共立出版1996年,331~339頁)などを参照すると良い。化学酸化重合の具体的の方法は、例えば、Satoru Amouら,Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,37巻,1943~1948頁(1999年)、Kousuke Tsuchiyaら,Polymer Journal,45巻,281~286頁(2013年)などの公知文献を参照すると良い。
【0055】
酸化重合法で得られた本発明のポリチオフェン(4)は、重合過程でドープが進むため凝集しやすくなり、必ずしも有機溶媒に可溶ではない。また各種カップリング反応で重合して得られた本発明のポリチオフェン(4)においても空気中の酸素などの影響によりドープが進むため凝集しやすくなる。このような場合は、例えばドープの進んだ本発明のポリチオフェン(4)の分散溶液にヒドラジンなどの還元剤を加えるなどの脱ドープ処理を行うことによって、有機溶媒に可溶な本発明のポリチオフェン(4)を得ることができる。
【0056】
本発明のポリチオフェン(4)の分子量は重量平均分子量、数平均分子量、粘度平均分子量など測定方法に応じて示すことができる。重量平均分子量(Mw)に関しては1,000~1,000,000であることが好ましく、重合体の性質の制御および加工性などの観点から2,000~500,000であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw・Mn-1)に特に制限はないが、概ね1~20の範囲であることが好ましく、重合体の均一性の観点から1~5の範囲であることがさらに好ましい。分子量の算出方法として、ポリスチレンやポリエチレングリコールなどの標準試料を基準に換算するゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法、粘度法、光散乱法など公知の方法をあげることができる。
【0057】
本発明のポリチオフェン(4)を加水分解することにより、本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)を製造する方法(以下、本発明の製造法と称する。)について説明する。本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)においてM+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または無置換もしくは置換アンモニウムイオンを表すが、1種類のカチオンであっても、複数種類のカチオンであってもよい。加水分解の方法はスルホン酸エステル基の加水分解反応以外の副反応を抑制できれば特に制限は無いが、具体的には本発明のポリチオフェン(4)にAlBr3やTiCl4などのルイス酸を作用させる方法、LiI、LiBr、LiCl、NaI、NaBr、NaCl、KI、KBr、KClなどのハロゲン化アルカリ塩を作用させる方法(公知文献:例えば、Florian M.Kochら,Chemistry-A European Journal,17巻,3679~3692頁(2011年)、Mori Hideharuら,Macromolecules,43巻,7021~7032頁(2010年)、Christopher C.Kotorisら,The Journal of Organic Chemistry,63巻,8052~8057頁(1998年))、塩酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸などの酸を作用させる方法、ブチルジメチルアミン、ヘキシルジメチルアミン、トリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,8-ジアゾビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンなどの第三級アミンを作用させる方法(公知文献:例えば、J.F.Kingら,Journal of the American Chemical Society,104巻,7108~7122頁(1982年)、Maria Mahrovaら,Journal of Chemical & Engineering Data,57巻,241~248頁(2012年))などがあげられるが、加水分解の効率が良い点で、ハロゲン化アルカリ塩を作用させる方法および三級アミンを作用させる方法が好ましい。
【0058】
ハロゲン化アルカリ塩または第三級アミンを用いて加水分解する際、用いるハロゲン化アルカリ塩または第三級アミンの量に特に制限は無く、化学構造や加水分解させる割合などを考慮して適宜添加量を決めれば良いが、本発明のポリチオフェン(4)のスルホン酸エステル基のモル量に対し、0.1~100当量用いれば良く、加水分解させる割合を制御しやすい点で0.5~50当量を用いることが好ましい。本発明の製造法は溶媒中で実施してもよい。該溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、CPMEなどのエーテル系溶媒、DMF、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、2-ブタノンなどのケトン系溶媒、水などをあげることができ、これらを単独または二種類以上混合して用いることができる。反応溶媒の量には制限はない。
【0059】
本発明のポリチオフェン(4)を加水分解を実施する際の反応温度は、通常0~150℃の範囲から適宜選択でき、反応効率の点で室温~120℃であることが好ましい。
【0060】
本発明のポリチオフェン(4)を加水分解するによって得られる本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)の精製法としては、特に制限は無いが例えば、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理などがあげられ、それぞれ単独または複数組み合わせることができる。
【0061】
本発明の導電性ポリマーは、本発明のポリチオフェン(4)および/または本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)を含んでいれば良く、本発明のポリチオフェン(4)および本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)のいずれか単独で、または本発明のポリチオフェン(4)および本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)を任意の割合で混合して調製できる。あるいは本発明のポリチオフェン(4)の一部繰り返し単位を本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)へと変換することによっても、本発明の導電性ポリマーとすることができる。本発明のポリチオフェン(4)および本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)の混合の割合、および本発明のポリチオフェン(4)の一部繰り返し単位を本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)へと変換する割合に特に制限は無く、本発明の導電性ポリマーの導電性、溶解性、分散性、吸湿性、酸性、成膜性、塗膜性などを鑑みて適宜決めれば良い。
【0062】
また、必要に応じてスルホン酸塩(-SO3
-M+においてM+が水素イオンでない場合)をイオン交換樹脂で処理することにより酸型(-SO3H)に変換して供することができる。導電性、溶媒への分散性、成膜性、吸湿性や酸性などを制御するために、本発明のポリチオフェン(4)や本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)に添加物を加えて導電性ポリマーとすることができる。添加物としてはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ナフィオン(TM)類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリ(1-ビニルピロリジン-2-オン)、ポリ(3-ビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン)、ポリ(1-ビニル-1,3-イミダゾリジン-2-オン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ(アルキルアクリルアミド)類、セルロース類、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、ジメチルスルホキシド、DMF、エチレングリコール、オリゴ(ポリ)エチレングリコール、ブタンジオール、オリゴ(ポリ)テトラメチレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどを例示でき、単独または複数種類用いても良い。添加物の(総)量は本発明のポリチオフェン(4)および/または本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)の重量に対し50%以下であれば良く、本発明のポリチオフェン(4)および/または本発明の自己ドープ型ポリチオフェン(5)の特徴を示しやすい点で10%以下であることが好ましい。本発明の導電性ポリマーを溶媒に溶解または分散させて、導電性ポリマー溶液とすることができる。用いることのできる溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、CPMEなどのエーテル系溶媒、DMF、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、2-ブタノンなどのケトン系溶媒、水などをあげることができ、これらを単独または二種類以上混合して用いることができる。該導電性ポリマー溶液の濃度は特に制限は無いが、通常、50重量%以下、扱いやすさの点で20重量%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明の導電性ポリマーを溶媒に溶解または分散させて該導電性ポリマー溶液を調製する際、マグネチックスターラーチップ、メカニカルスターラーの撹拌翼を用いて混合できるが、必要に応じて超音波照射の他、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いた処理を適宜組み合わせて混合することができる。調製時の温度は概ね100℃以下になるように調製すると良い。
【0064】
本発明の導電性ポリマーを用いて電極または電子デバイスに用いる際の形状は特に制限は無く、基盤に密着した被膜状、フィルム状、粒子状、繊維状など必要に応じて選択することができる。被膜状に成形する場合、該導電性ポリマー溶液を基材に塗布し、乾燥することで得られる。基材としては被膜を形成できれば材質、形状に特に制限は無いが、基材の材質としては例えば、ガラス、セラミックス、シリカ、アルミナなどの無機基材、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、セルロースなどのポリマー基材、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂などの樹脂基材などをあげることができる。基材の形状としては緻密膜、圧縮成形膜、多孔質膜、粒子、織布、不織布など自由に選択できる。塗布法としては特に制限は無いが、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、インクジェット印刷法などをあげることができる。膜厚としては特に制限は無いが、通常0.01~200μm程度である。被膜の乾燥は大気下もしくは窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、常圧もしくは減圧下行うことができ、乾燥時の温度は概ね室温~100℃の範囲で数時間~数日かけて行うことができる。形成した被膜の導電性としては特に制限は無く用途に応じて広く制御可能であるが、電気伝導度で概ね0.001~1000S・cm-1程度である。
【0065】
本発明の導電性ポリマーおよびそれから作製された電極や電子デバイスは、例えば、静電気防止材料、ディスプレー用透明電極、光電変換素子用電極、固体電解コンデンサ用固体電解質、アルミ固体電解コンデンサ用セパレータ、有機半導体などへの応用が可能である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
得られたポリマーの分子量はゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)の結果から求めた。GPCシステムはGLサイエンス社製GL-7400(検出器:GL-7456、カラム(4本): TSKgel SuperH5000、H4000×2、H2000、カラム温度:40℃、展開溶媒:0.01MのLiClのDMF溶液、標準ポリスチレン換算)を用いた。
【0068】
実施例-1
3-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1a-1)の合成
【0069】
【0070】
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウム(55%) 793mg(18.0mmol)をヘキサンで洗浄し、真空乾燥後、DMF15mLを加え、これに2-ヒドロキシメチル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(6) 2.58g(15.0mmol)のDMF溶液 15mLをゆっくりと加え、室温で15分間撹拌した。60℃まで昇温し、1時間撹拌後、1-メチル-1,3-プロパンスルトン 1.60mL(15.0mmol)のDMF溶液15mLをゆっくりと加え、60℃で2時間撹拌した。反応後、DMFを減圧下で留去し、褐色固体の3-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ-1-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(10-1)を得た。この(10-1)は特に精製を行うことなく、次の反応に用いた。
【0071】
1H-NMR(400MHz,D2O,ppm),δ:1.20(3H,d,J=6.9Hz),1.55~1.64(1H,m),2.10~2.18(1H,m),2.84~2.94(1H,m),3.56~3.73(4H,m),4.02(1H,dd,J=12.0,6.8Hz),4.21(1H,dd,J=12.0,2.3Hz),4.33~4.38(1H,m),6.43(2H,s).
次に、上記で合成した(10-1)をアルゴン雰囲気下、THF/クロロホルム(=1/1体積比)混合溶媒 45mLに溶解し、DMFを2滴加え、氷浴中で二塩化オキサリル 1.47mL(18.0mmol)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、3-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ-1-メチルプロパンスルホン酸クロリド(11-1)を得た。
【0072】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:1.63(3H,d,J=6.8Hz),1.88~1.96(1H,m),2.50~2.59(1H,m),3.63~3.78(4H,m),3.79~3.89(1H,m),4.05(1H,ddd,J=11.7,7.2,5.8Hz),4.22(1H,dd,J=11.7,2.2Hz),4.28~4.33(1H,m),6.34(2H,s).
続いて、アルゴン雰囲気下、2,2-ジメチルプロパノール 1.59g(18.0mmol)とトリエチルアミン 3.14mL(22.5mmol)をクロロホルム 30mLに溶解し、これに上記で合成した(11-1)のクロロホルム溶液 30mLをゆっくりと滴下し、氷浴下、2時間撹拌した。有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1a-1)を4.73g(12.5mmol)得た(収率:83.4%)。
【0073】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.45(3H,d,J=6.9Hz),1.77~1.85(1H,m),2.33~2.41(1H,m),3.32~3.42(4H,m),3.58~3.74(1H,m),3.87(2H,s),4.05(1H,ddd,J=11.7,7.4,4.3Hz),4.22(1H,dd,J=11.7,2.2Hz),4.27~4.32(1H,m),6.33(2H,s).
EI-MS,m/z:378(M)+,363(M-CH3)+,322,307(M-CH2C(CH3)3)+,269,227,199,185,172,154,141,137,125,109,100.
実施例-2
3-(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-1)の合成
【0074】
【0075】
アルゴン雰囲気下、実施例-1の方法で合成した(1a-1) 4.73g(12.5mmol)をTHF 60mLに溶解し、N-ブロモスクシンイミド 4.68g(26.3mmol)を加え、氷浴下、2時間撹拌した。酢酸エチル 100mLを加えて飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-1)を6.39g(11.9mmol)得た(収率:95.3%)。
【0076】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.45(3H,d,J=6.9Hz),1.77~1.86(1H,m),2.32~2.41(1H,m),3.32~3.42(1H,m),3.60~3.79(4H,m),3.88(2H,s),4.08~4.15(1H,m),4.29~4.37(2H,m).
EI-MS,m/z:536(M)+,466,385,343,330,305,274,233,207,193,151,137,125,109.
実施例-3
3-[(5,7-ジクロロ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-2)の合成
【0077】
【0078】
アルゴン雰囲気下、実施例-1の方法で合成した(1a-1) 1.87g(4.94mmol)をTHF 50mLに溶解し、これに氷浴下で酢酸 25mLとN-クロロスクシンイミド 1.45g(10.9mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応後、クロロホルムで希釈したものを、水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-2)を1.63g得た(収率:73.9%)。
【0079】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.45(3H,d,J=7.0Hz),1.77~1.86(1H,m),2.32~2.41(1H,m),3.31~3.41(1H,m),3.60~3.79(4H,m),3.88(2H,s),4.08~4.15(1H,m),4.28~4.37(2H,m).
実施例-4
3-[(5-クロロ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルおよび3-[(7-クロロ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルの混合物(1c-2)の合成
【0080】
【0081】
アルゴン雰囲気下、実施例-3の方法で合成した(1b-2) 1.41g(3.16mmol)をTHF 50mLに溶解し、これに-78℃で1.64Mブチルリチウムのヘキサン溶液 2.00mLを加え、そのまま-78℃で15分間撹拌後、氷浴下で1時間撹拌した。再び-78℃とし、純水を30mL加え、0℃で1時間撹拌した。反応溶液をクロロホルムで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1c-2)を785mg得た(収率:60.1%)。
【0082】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.45(3H,d,J=6.9Hz),1.77~1.86(1H,m),2.32~2.44(1H,m),3.33~3.41(1H,m),3.60~3.79(4H,m),3.88(2H,s),4.02~4.14(1H,m),4.21~4.36(2H,m),6.16(1H,s).
実施例-5
3-[(5,7-ジヨード-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3)の合成
【0083】
【0084】
アルゴン雰囲気下、実施例-1の方法で合成した(1a-1) 1.96g(5.18mmol)をTHF 50mLに溶解し、これに酢酸 10mLとN-ヨードスクシンイミド 2.57g(11.4mmol)を加え、氷浴下で5時間撹拌した。反応後、酢酸エチルで希釈したものを、水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-3)を2.75g得た(収率:84.2%)。
【0085】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.46(3H,d,J=7.0Hz),1.77~1.86(1H,m),2.32~2.42(1H,m),3.32~3.43(1H,m),3.60~3.78(4H,m),3.88(2H,s),4.07~4.14(1H,m),4.28~4.36(2H,m).
実施例-6
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成-1
【0086】
【0087】
アルゴン雰囲気下、実施例-2で合成した(1b-1) 5.25g(9.79mmol)をTHF 20mLに溶解し、これにt-ブチルマグネシウムクロリドの2Mジエチルエーテル溶液 4.90mL(9.80mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド(Ni(dppp)Cl2) 106mg(0.196mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液をメタノール1Lに加え、生成した沈殿をろ取することにより、黒色固体のポリマー(4-1)を2.96g得た(収率:80.5%)。得られたポリマーのGPC測定の結果、Mn=8,280、Mw=23,600であった。
【0088】
実施例-7
臭化リチウムを用いた側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の加水分解による自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1)の合成-1
【0089】
【0090】
アルゴン雰囲気下、実施例-6で合成した(4-1) 1.52g(4.03mmol-unit)を2-ブタノン(MEK) 100mLに溶解し、これに臭化リチウム 6.95g(80.1mmol)を加えて80℃で4日間撹拌した。生成した沈殿をろ取し、この沈殿をアセトンで洗浄することにより、黒色固体のポリマー(5-1Li+)を1.23g得た(収率:97.0%)。
【0091】
(5-1Li+)1.04g(3.29mmol-unit)を水100mLに溶解し、酸型カチオン交換樹脂(シグマアルドリッチ社製LewatitTM MonoPlus S100 sodiumを2N塩酸を用いて酸型とした後、純水洗浄したもの)10gを加えて、室温で15時間撹拌した。その後、カチオン交換樹脂をろ別し、ろ液を濃縮した。濃厚溶液を過剰量のアセトンに滴下して生成した沈殿を回収することにより、黒色固体のポリマー(5-1H+)を907mg得た(収率:89.4%)。
【0092】
実施例-8
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成-2
【0093】
【0094】
アルゴン雰囲気下、実施例-2と同様な方法で合成した(1b-1) 10.3g(19.1mmol)をTHF 40mLに溶解し、これにt-ブチルマグネシウムクロリドの2Mジエチルエーテル溶液 9.60mL(19.2mmol)を加え、0℃で30分間撹拌した後、室温で2時間撹拌した。Ni(dppp)Cl2 207mg(0.382mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液をメタノール 2Lに加え、生成した沈殿をろ取することにより、黒色固体のポリマー(4-1)を5.42g得た(収率:75.4%)。
【0095】
得られたポリマー(4-1) 5.37gとエタノール 50mLをアルゴン雰囲気下混合し、これにヒドラジン一水和物 50mLを加えて、室温で2日間撹拌した。反応後、沈殿をろ取し、エタノールで洗浄することにより、黒褐色固体のポリマー(4-1)を 5.11g得た(収率:96.2%)。得られた脱ドープ処理後のポリマー(4-1)のGPC測定の結果、Mn=16,800、Mw=25,200であった。
【0096】
実施例-9
臭化リチウムを用いた側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の加水分解による自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1Li+)の合成-2
【0097】
【0098】
アルゴン雰囲気下、実施例-8で合成した(4-1) 4.81g(12.8mmol-unit)をMEK 320mLに溶解し、これに臭化リチウム 22.3g(257mmol)を加えて80℃で4日間撹拌した。生成した沈殿をろ取し、アセトンで洗浄することにより、黒色固体のポリマー(5-1Li+)を4.68g得た。
【0099】
実施例-10
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成-3
【0100】
【0101】
アルゴン雰囲気下、実施例-2と同様な方法で合成した(1b-1) 12.5g(23.3mmol)をTHF 47mLに溶解し、これにt-ブチルマグネシウムクロリドの2Mジエチルエーテル溶液 11.6mL(23.2mmol)を加え、0℃で30分間撹拌した後、室温で2時間撹拌した。Ni(dppp)Cl2 126mg(0.233mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応溶液をメタノール 2.5Lに加え、生成した沈殿をろ取することにより、黒色固体のポリマー(4-1)を7.12g得た(収率:81.4%)。
【0102】
得られたポリマー(4-1) 7.00gとエタノール 70mLをアルゴン雰囲気下混合し、これにヒドラジン一水和物 70mLを加えて、室温で2日間撹拌した。沈殿をろ取し、エタノールで洗浄することにより、黒褐色固体のポリマーを6.60g得た(収率:96.2%)。得られた脱ドープ処理後のポリマーのGPC測定の結果、Mn=19,400、Mw=39,700であった。
【0103】
実施例-11
臭化リチウムを用いた側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の加水分解による自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1Li+)の合成-3
【0104】
【0105】
アルゴン雰囲気下、実施例-10で合成した(4-1) 6.00g(16.0mmol-unit)をMEK 400mLに溶解し、これに臭化リチウム 27.8g(320mmol)を加えて80℃で4日間撹拌した。生成した沈殿をろ取し、アセトンで洗浄することにより、黒色固体のポリマー(5-1Li+)を 5.84g得た。
【0106】
実施例-12
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成-4
【0107】
【0108】
アルゴン雰囲気下、実施例-2と同様な方法で合成した(1b-1) 15.3g(28.5mmol)をTHF 29mLに溶解し、これにt-ブチルマグネシウムクロリドの2Mジエチルエーテル溶液 14.3mL(28.5mmol)を加え、0℃で30分間撹拌した後、室温で2時間撹拌した。Ni(dppp)Cl2 155mg(0.285mmol)を加え、還流温度で24時間撹拌した。反応溶液をメタノール 1.5Lに加え、生成した沈殿をろ取することにより、黒色固体のポリマー(4-1)を9.08g得た(収率:84.7%)。
【0109】
得られたポリマー(4-1) 9.03gとエタノール 90mLをアルゴン雰囲気下混合し、これにヒドラジン一水和物 90mLを加えて、室温で2日間撹拌した。沈殿をろ取し、エタノールで洗浄することにより、黒褐色固体のポリマーを8.74g得た(収率:97.1%)。得られた脱ドープ処理後のポリマーのGPC測定の結果、Mn=45,300、Mw=209,200であった。
【0110】
実施例-13
臭化リチウムを用いた側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の加水分解による自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1Li+)の合成-4
【0111】
【0112】
アルゴン雰囲気下、実施例-12で合成した(4-1) 7.60g(20.2mmol-unit)をMEK 400mLに溶解し、これに臭化リチウム 35.1g(404mmol)を加えて80℃で4日間撹拌した。生成した沈殿をろ取し、アセトンで洗浄することにより、黒色固体を7.86g得た。この黒色固体 7.80gをアルゴン雰囲気下、MEK 400mLに溶解し、これに臭化リチウム 35.1g(404mmol)を加えて80℃で4日間撹拌した。生成した沈殿をろ取し、アセトンで洗浄することにより、黒色固体のポリマー(5-1Li+)を7.01g得た。
【0113】
実施例-14
3-[(5,7-ジヨード-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成
【0114】
【0115】
実施例-5の方法で合成した3-[(5,7-ジヨード-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1b-3) 671mg(1.06mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 1mLに溶解し、これにt-ブチルマグネシウムクロリドの2Mジエチルエーテル溶液 540μL(1.08mmol)を加え、氷浴下で1時間撹拌した。その後、Ni(dppp)Cl2 6.20mg(11.4μmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液をメタノールに加え、生成した沈殿をろ過し、黒色固体ポリマー(4-1)を187mg得た(収率:46.6%)。GPC測定の結果、Mn=5,900,Mw=9,700であった。
【0116】
実施例-15
3-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピル(1a-1)の酸化重合による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成
【0117】
【0118】
アルゴン雰囲気下、塩化鉄1.04g(6.31mmol)をクロロホルム3.0mLに懸濁し、これに実施例-1の方法で合成した(1a-1) 597mg(1.58mmol)のクロロホルム溶液2.0mLを0℃でゆっくりと滴下し、室温で15時間撹拌した。メタノール 10mLを加え、濃縮後、再度メタノール 100mLを加えて、生成した沈殿をろ過し、黒色固体のポリマー(4-1)を354mg得た(収率:94.0%)。
【0119】
得られたポリマー 100mgとエタノール 1.0mLをアルゴン雰囲気下混合し、これにヒドラジン一水和物 1.0mLを加えて、室温で2日間撹拌した。沈殿をろ取し、エタノールで洗浄することにより、黒色固体のポリマー(4-1)を35mg得た。得られた脱ドープ処理後のポリマー(4-1)のGPC測定の結果、Mn=12,800、Mw=36,100であった。
【0120】
実施例-16
C-H直接アリール化重合による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成-1
【0121】
【0122】
実施例-1の方法で合成した(1a-1) 500mg(1.32mmol)と実施例-2の方法で合成した(1b-1) 715mg(1.32mmol)とをDMF 3.0mLに溶解し、ここへ酢酸パラジウム 29.6mg(0.132mmol)、トリフェニルホスフィン 41.1mg(0.147mmol)、炭酸セシウム 890mg(2.63mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、100℃で48時間撹拌した。反応溶液をメタノール 150mLに加え、生成した沈殿をろ取し、黒色個体のポリマー(4-1)を735mg得た(収率:61.2%)。GPC測定の結果、Mn=23,400,Mw=65,500であった。
【0123】
実施例-17
C-H直接アリール化重合による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成-2
【0124】
【0125】
実施例-1の方法で合成した(1a-1) 500mg(1.32mmol)と実施例-2の方法で合成した(1b-1) 715mg(1.32mmol)とをトルエン 3.0mLに溶解し、ここへ酢酸パラジウム 29.6mg(0.132mmol)、トリフェニルホスフィン 41.1mg(0.147mmol)、炭酸セシウム 890mg(2.63mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、100℃で48時間撹拌した。反応溶液をメタノール 150mLに加え、生成した沈殿をろ取し、黒色個体のポリマー(4-1)を575mg得た(収率:47.9%)。GPC測定の結果、Mn=17,300,Mw=28,500であった。
【0126】
実施例-18
ルイス酸を用いた求電子置換重合による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成
【0127】
【0128】
実施例-4の方法で合成した(1c-2) 371mg(0.898mmol)をアルゴン雰囲気下、トルエン 5mLに溶解し、四塩化スズの1Mジクロロメタン溶液 200μL(0.200mmol)を加え、100℃で48時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール 250mLに加え、生成した沈殿をろ過し、黒色固体のポリマー(4-1)を357mg得た(収率:66.6%)。GPC測定の結果、Mn=3,610,Mw=5,840であった。
【0129】
実施例-19
右田-小杉-スティルカップリング反応を用いた側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成
【0130】
【0131】
実施例-2の方法で合成した(1b-1) 506mg(0.944mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 1mLに溶解し、これにt-ブチルマグネシウムクロリドの2Mジエチルエーテル溶液 580μL(1.23mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、氷浴下でトリメチルスズクロリド 207mg(1.04mmol)のTHF 1mLを滴下し、室温で15時間撹拌した後、60℃で3時間撹拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水および濃縮し、茶褐色の粘性液体の3-[(5-ブロモ-7-トリメチルスタニル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルおよび3-[(7-ブロモ-5-トリメチルスタニル-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルの混合物(13-1) 482mg(0.777mmol)を得た。この(13-1)は特に精製を行わず、次の反応に用いた(1H-NMRスペクトルより生成物中にスズ誘導体は69%含有)。
【0132】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.35(9H,t,J=28Hz),0.99(9H,s),1.45(3H,d,J=7.0Hz),1.76~1.85(1H,m),2.32~2.41(1H,m),3.32~3.42(1H,m),3.57~3.78(4H,m),3.88(2H,s),4.00~4.11(1H,m),4.19~4.34(2H,m).
上記で合成した(13-1) 482mg(0.777mmol)をアルゴン雰囲気下、DMF 1mLに溶解し、これにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 45.1mg(39.0μmol)を加え、100℃で48時間撹拌した。反応溶液をメタノール 50mLに投入し、生成した沈殿をろ取することによって黒色固体のポリマー(4-1)を135mg得た(収率:46.1%)。GPC測定の結果、Mn=6,550,Mw=11,000であった。
【0133】
実施例-20
鈴木-宮浦カップリング反応を用いた側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-1)の合成
【0134】
【0135】
実施例-2の方法で合成した(1b-1) 538mg(1.00mmol)とビス(ピナコラト)ジボロン(Bpin)2 566mg(2.23mmol)、酢酸カリウム 335mg(3.41mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 12.1mg(10.5μmol)をアルゴン雰囲気下、1,4-ジオキサン10mLに溶解し、85℃で12時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル 50mLを加えて水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより無色粘性固体の3-{[5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル]メトキシ}-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルおよび3-{[7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル]メトキシ}-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルの混合物(モノホウ素化体) 163mgを得た(収率:32.1%)。
【0136】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.26(12H,s),1.45(3H,d,J=6.9Hz),1.77~1.86(1H,m),2.32~2.41(1H,m),3.33~3.41(1H,m),3.60~3.79(4H,m),3.88(2H,s),4.02~4.09(1H,m),4.20~4.38(2H,m),6.33(1H,s).
アルゴン雰囲気下、上記で合成したモノホウ素化体 163mg(0.322mmol)をTHF 2.0mLに溶解し、これにN-ブロモスクシンイミド(NBS) 59.5mg(0.334mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。酢酸エチル 20mLを加えて水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水後濃縮することで3-{[5-ブロモ-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル]メトキシ}-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルおよび3-{[7-ブロモ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル]メトキシ}-1-メチルプロパンスルホン酸2,2-ジメチルプロピルの混合物(13-2)を184mg得た(収率:97.8%)。この生成物は特に精製を行わず、次の反応に用いた。
【0137】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(9H,s),1.26(12H,s),1.45(3H,d,J=6.9Hz),1.77~1.86(1H,m),2.32~2.41(1H,m),3.32~3.42(1H,m),3.60~3.79(4H,m),3.88(2H,s),4.02~4.15(1H,m),4.29~4.37(2H,m).
上記で合成した(13-2) 184mg(0.315mmol)をアルゴン雰囲気下、DMF 1mLに溶解し、これにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 22.1mg(0.0192mmol)と2.0M炭酸カリウム水溶液 0.50mL(1.00mmol)を加え、90℃で48時間撹拌した。反応溶液をメタノール 50mLに加え、生成した沈殿をろ過し、黒色固体のポリマー(4-1)を66mg得た(収率:55.6%)。GPC測定の結果、Mn=5,130,Mw=11,300であった。
【0138】
実施例-21
3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチルプロパンスルホン酸エチルの合成(1a-2)
【0139】
【0140】
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウム(55%) 1.61g(883mg,36.4mmol)をヘキサンで洗浄し、真空で乾燥後、DMF 15mLに分散した。これに(6) 2.58g(30.1mmol)のDMF 15mLをゆっくりと滴下し、室温で15分間撹拌した。60℃まで昇温し、2時間撹拌後、1-メチル-1,3-プロパンスルトン 3.10mL(29.7mmol)のDMF 15mLをゆっくりと滴下し、60℃で2時間撹拌した。反応後、DMFを減圧下で留去し、褐色粘性固体の(10-1)を得た。これは特に精製を行うことなく、次の反応に用いた。
【0141】
上記で合成した(10-1)をアルゴン雰囲気下、THF/クロロホルム(=1/1体積比)混合溶媒90mLに溶解し、DMFを5滴加え、氷浴中で二塩化オキサリル3.00mL(36.7mmol)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を濃縮し、(11-1)を得た。
【0142】
引き続きアルゴン雰囲気下、エタノール 2.10mL(36.0mmol)とトリエチルアミン 6.50mL(46.6mmol)をクロロホルム 60mLに溶解し、これに上記で合成した(11-1)のクロロホルム溶液 60mLをゆっくりと滴下し、氷浴下、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1体積比、トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1a-2)を6.57g得た(収率:64.8%)。
【0143】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:1.40(3H,t,J=7.1Hz),1.44(3H,d,J=6.9Hz),1.76~1.85(1H,m),2.31~2.40(1H,m),3.30~3.40(1H,m),3.59~3.74(4H,m),4.05(1H,ddd,J=11.6,7.3,3.7Hz),4.22(1H,dd,J=11.6,2.2Hz),4.27~4.33(3H,m),6.33(2H,s).
実施例-22
実施例-9の自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1Li+) 50mgを純水 5.0mLに溶解し、一晩撹拌した後、20分間超音波ホモジナイザー(UH-150、20kHz)による超音波処理を行った。その後、メンブレンフィルター(10μm)でろ過し、ろ液にカチオン交換樹脂(Lewatit MonoPlus S 100、酸型)を1.0g加え、一晩撹拌した。カチオン交換樹脂をろ別して自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1H+)の水溶液を調製した。この(5-1H+)の水溶液の一部をガラス板上に幅1.0cm×長さ1.5~2.0cm程度になるように、キャストし60℃で30分間乾燥した。さらに室温で30分間真空乾燥し、導電率の評価を行った。
【0144】
膜厚の算出方法は、キャスト前後のガラス板の厚さをデジタルマイクロメーター(MDC-25PJ、Mitutoyo)を用いて測定し、キャスト前後の値の差から膜厚を求めた。また抵抗測定はLCRメータ(IM3533-01,HIOKI)を用い、二端子法(電極間距離;1cm)で行った。求めた抵抗値と膜厚より、導電率を算出した。
【0145】
実施例-23 実施例-11の自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1Li+)についても、実施例-22と同様な操作を行い(5-1H+)の水溶液を調製し、同様なキャスト膜を作製して膜厚、抵抗値を測定して導電率を算出した。
【0146】
実施例-24
実施例-13の自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(5-1Li+)についても、実施例-22と同様な操作を行い(5-1H+)の水溶液を調製し、同様なキャスト膜を作製して膜厚、抵抗値を測定して導電率を算出した。
【0147】
結果を表-1にまとめた。
表-1 自己ドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体の膜の物性
【0148】
【0149】
実施例-25
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸エチルの合成(1b-4)
【0150】
【0151】
実施例-21の方法で合成した(1a-2) 6.33g(18.8mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 90mLに溶解し、これに氷浴下でN-ブロモスクシンイミド 7.08g(39.8mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応後、クロロホルムで希釈したものを、水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-4)を8.83g得た(収率:94.9%)。
【0152】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:1.41(3H,t,J=7.1Hz),1.44(3 H,d,J=6.9Hz),1.76~1.85(1H,m),2.30~2.49(1H,m),3.29~3.40(1H,m),3.60~3.78(4H,m),4.12(1H,ddd,J=11.6Hz,7.1Hz,3.9Hz),4.28~4.37(4H,m).
実施例-26
3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸イソプロピルの合成(1a-3)
【0153】
【0154】
アルゴン雰囲気下、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(10-1)(30mmol)をTHF/クロロホルム(=1/1(v/v))混合溶媒 90mLに溶解し、DMFを5滴加え、氷浴中で二塩化オキサリル 3.00mL(36.7mmol)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を濃縮し、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸クロリド(11-1)を得た。
【0155】
続いて、アルゴン雰囲気下、イソプロパノール 2.80mL(36.5mmol)とトリエチルアミン 6.50mL(46.6mmol)とをクロロホルム 60mLに溶解し、これに上記で合成した(11-1)全量のクロロホルム溶液 60mLをゆっくりと滴下し、氷浴下、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加))で精製することにより、無色液体の(1a-3)を7.33g得た(収率:69.7%)。
【0156】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:1.41(6H,d,J=6.3Hz),1.42(3H,d,J=6.9Hz),1.78~1.83(1H,m),2.31~2.40(1H,m),3.24~3.34(1H,m),3.58~3.74(4H,m),4.05(1H,ddd,J=11.6Hz,7.3Hz,5.0Hz),4.22(1H,dd,J=11.6Hz,2.2Hz),4.27~4.32(1H,m),4.92~5.01(1H,m),6.33(2H,s).
実施例-27
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸イソプロピルの合成(1b-5)
【0157】
【0158】
実施例-26の方法で合成した(1a-3) 3.76g(10.7mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 50mLに溶解し、これに氷浴下でN-ブロモスクシンイミド 4.01g(22.5mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応後、クロロホルムで希釈したものを、水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-5)を5.02g得た(収率:92.0%)。
【0159】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:1.42(6H,d,J=6.2Hz),1.43(3H,d,J=5.5Hz),1.74~1.82(1H,m),2.30~2.39(1H,m),3.23~3.34(1H,m),3.59~3.78(4H,m),4.08~4.15(1H,m),4.29~4、37(2H,m),4.92~5.02(1H,m).
実施例-28
3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸2-メチルプロピルの合成(1a-4)
【0160】
【0161】
アルゴン雰囲気下、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(10-1)(30mmol)をTHF 45mLに溶解し、DMFを5滴加え、氷浴中で二塩化オキサリル 3.00mL(36.7mmol)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を濃縮し、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸クロリド(11-1)を得た。
【0162】
続いてアルゴン雰囲気下、2-メチル-1-プロパノール 3.40mL(36.8mmol)とトリエチルアミン 6.50mL(46.6mmol)をTHF60mLに溶解し、これに上記で合成した(11-1)のTHF溶液 60mLをゆっくりと滴下し、氷浴下、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加))で精製することにより、無色液体の(1a-4)を8.85g得た(収率:81.0%)。
【0163】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.98(6H,d,J=6.7Hz),1.44(3H,d,J=6.9Hz),1.76~1.85(1H,m),1.98~2.08(1H,m),2.32~2.40(1H,m),3.59~3.74(4H,m),3.99(2H,d,J=6.6Hz),4.05(1H,ddd,J=11.6Hz,7.4Hz,4.2Hz),4.22(1H,dd,J=11.6Hz,2.2Hz),4.27~4.32(1H,m),6.33(2H,s).
実施例-29
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸2-メチルプロピルの合成(1b-6)
【0164】
【0165】
実施例-28の方法で合成した(1a-4)8.85g(24.3mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 120mLに溶解し、これに氷浴下でN-ブロモスクシンイミド 9.09g(51.1mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水した。これを濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-6)を11.9g得た(収率:93.8%)。
【0166】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.99(6H,d,J=6.8Hz),1.45(3H,d,J=6.9Hz),1.77~1.86(1H,m),1.99~2.09(1H,m),2.31~2.40(1H,m),3.31~3.41(1H,m),3.60~3.78(4H,m),3.99(2H,d,J=6.5Hz),4.08~4.15(1H,m),4.29~4.37(2H,m).
実施例-30
3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸1-メチルプロピルの合成(1a-5)
【0167】
【0168】
アルゴン雰囲気下、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(10-1)(10mmol)をTHF 30mLに溶解し、DMFを5滴加え、氷浴中で二塩化オキサリル 1.00mL(12.2mmol)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を濃縮し、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸クロリド(11-1)を得た。
【0169】
続いてアルゴン雰囲気下、2-ブタノール 1.40mL(15.3mmol)とトリエチルアミン 2.10mL(15.1mmol)をTHF 20mLに溶解し、これに上記で合成した(11-1)全量のTHF溶液 20mLをゆっくりと滴下し、氷浴下、2時間撹拌した。反応後、反応溶液を水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加))で精製することにより、無色液体の(1a-5)を2.51g得た(収率:68.8%)。
【0170】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.97(3H,t,7.5Hz),1.40(3H,d,J=6.3Hz),1.43(3H,d,J=6.9Hz),1.62~1.87(1H,m),2.32~2.41(1H,m),3.25~3.34(1H,m),3.58~3.77(4H,m),4.04(1H,ddd,J=11.6Hz,7.4Hz,5.3Hz),4.22(1H,dd,J=11.6Hz,2.2Hz),4.27~4.32(1H,m),4.75~4.82(1H,m),6.33(2H,s).
実施例-31
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸1-メチルプロピルの合成(1b-7)
【0171】
【0172】
実施例-30の方法で合成した(1a-5) 1.14g(3.19mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 120mLに溶解し、これに氷浴下でN-ブロモスクシンイミド 1.19g(6.71mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水した。これを濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(トリエチルアミン1%添加)で精製することにより、無色液体の(1b-7)を1.57g得た(収率:94.0%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,ppm),δ:0.98(3H,t,7.4Hz),1.40(3H,d,J=6.3Hz),1.44(3H,d,J=6.9Hz),1.63~1.84(3H,m),2.32~2.40(1H,m),3.24~3.34(1H,m),3.60~3.78(4H,m),4.08~4.15(1H,m),4.29~4.36(2H,m),4.75~4.83(1H,m).
実施例-32
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸イソプロピル(1b-5)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-3)の合成
【0173】
【0174】
実施例-27の方法で合成した(1b-5)554mg(1.09mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 2mLに溶解し、これに2Mイソプロピルマグネシウムクロリド-THF溶液 550μL(1.10mmol)を加え、氷浴下で1時間撹拌した。その後、室温で1時間撹拌した後、Ni(dppp)Cl2 11.30mg(0.0207mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液をメタノールに加え、生成した沈殿をろ過し、黒色固体ポリマー(4-3)を253mg得た(収率:66.6%)。GPC測定より分子量はMn=4,900,Mw=10,700,Mw/Mn=2.19であった。
【0175】
実施例-33
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸2-メチルプロピル(1b-6)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-4)の合成
【0176】
【0177】
実施例-29の方法で合成した(1b-6)525mg(1.01mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 2mLに溶解し、これに2Mイソプロピルマグネシウムクロリド-THF溶液 500μL(1.00mmol)を加え、氷浴下で1時間撹拌した。その後、室温で1時間撹拌した後、Ni(dppp)Cl2 10.5mg(0.0192mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液をメタノールに加え、生成した沈殿をろ過し、黒色固体ポリマー(4-4)を282mg得た(収率:77.4%)。GPC測定より分子量はMn=20,000,Mw=37,900,Mw/Mn=1.90であった。
【0178】
実施例-34
3-[(5,7-ジブロモ-2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸1-メチルプロピル(1b-7)のGRIM法による側鎖にスルホン酸エステル基を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体(4-5)の合成
【0179】
【0180】
実施例-31の方法で合成した(1b-7)526mg(1.01mmol)をアルゴン雰囲気下、THF 2mLに溶解し、これに2Mイソプロピルマグネシウムクロリド-THF溶液 500μL(1.00mmol)を加え、氷浴下で1時間撹拌した。その後、室温で1時間撹拌した後、Ni(dppp)Cl2 11.0mg(0.0201mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液をメタノールに加え、生成した沈殿をろ過し、黒色固体ポリマー(4-5)を215mg得た(収率:58.9%)。GPC測定より分子量はMn=5,600,Mw=14,700,Mw/Mn=2.64であった。