(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】導電膜形成用組成物、前駆体膜、前駆体膜の製造方法、および導電膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20220624BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220624BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220624BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220624BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220624BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/00 E
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
B22F1/00 L
(21)【出願番号】P 2018210444
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】田邉 順
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/00
H01B 5/14
H01B 13/00
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、
2-アミノエタノール塩酸塩または次亜リン酸とを含む導電膜形成用組成物。
【請求項2】
さらに分散媒を含む、請求項
1に記載の導電膜形成用組成物。
【請求項3】
バインダーを含まない、請求項1
または2に記載の導電膜形成用組成物。
【請求項4】
金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、
2-アミノエタノール塩酸塩または次亜リン酸とを含む前駆体膜。
【請求項5】
前記前駆体膜中の銅元素の含有量が、前記前駆体膜中の金属銅および窒化銅の合計質量に対して、40質量%以上100質量%未満である、請求項
4に記載の前駆体膜。
【請求項6】
バインダーを含まない、請求項
4または5に記載の前駆体膜。
【請求項7】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の導電膜形成用組成物を基材上に付与して前駆体膜を形成する形成工程
を備える、前駆体膜の製造方法。
【請求項8】
請求項
4~6のいずれか1項に記載の前駆体膜を0℃~150℃
の条件下に置いて導電膜を形成する導電膜形成工程
を備える、導電膜の製造方法。
【請求項9】
前記導電膜形成工程において前記前駆体膜を5秒間~24時間
、0℃~150℃の条件下に置く、請求項
8に記載の導電膜の製造方法。
【請求項10】
前記導電膜形成工程
における雰囲気が酸化的雰囲気である、請求項
8または9に記載の導電膜の製造方法。
【請求項11】
前記導電膜形成工程の前に、
請求項1~3のいずれか1項に記載の導電膜形成用組成物を基材上に付与して前記前駆体膜を形成する形成工程を備える、請求項
8~10のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用組成物、前駆体膜、前駆体膜の製造方法、および導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属薄膜を形成する技術として、銅および/または銅化合物の粒子を含む組成物を用いて薄膜を形成し、さらに加熱することによって金属薄膜を形成する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属銅を含むコア層とコア層の表面に配置されている窒化銅を含むシェル層とを備えるコアシェル粒子と、アビエチン酸(フラックス)と、酢酸(酸化剤)と、ノナノールおよびエタノール(分散媒)とを含む接合材料ペーストを2枚の銅板の間に挟み、ペースト膜を形成した後、窒素ガス雰囲気中、400℃の温度条件で、銅板の上部から10MPaの圧力で10分間加圧し、ペースト膜を焼結して金属薄膜を形成したことが記載されている(実施例1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年では、優れた導電性を有する導電膜をより低い温度で形成することができることが求められている。
【0006】
本発明者が検討したところ、特許文献1の実施例1~3および比較例1~5において用いられた接合材料ペーストは、150℃以下の低温で加熱したのでは、導電膜を形成することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、優れた導電性を有する導電膜を150℃以下の温度で形成できる導電膜形成用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、150℃以下の温度で導電膜を形成できる前駆体膜、前駆体膜の製造方法、および導電膜の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により上記課題を解決できることを知見した。
【0009】
[1] 金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、ハロゲン化合物およびリン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の結着剤とを含む導電膜形成用組成物。
[2] 上記ハロゲン化合物が、ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物、ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物およびハロゲン化水素からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載の導電膜形成用組成物。
[3] 上記ハロゲン化合物がハロゲン化水素である、上記[1]または[2]に記載の導電膜形成用組成物。
[4] 上記リン含有化合物が、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、テトラリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、および酸化リン(V)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の導電膜形成用組成物。
[5] 上記リン含有化合物が次亜リン酸である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の導電膜形成用組成物。
[6] さらに分散媒を含む、上記[1」~[5]のいずれか1つに記載の導電膜形成用組成物。
[7] バインダーを含まない、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の導電膜形成用組成物。
[8] 金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、ハロゲン化合物およびリン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の結着剤とを含む前駆体膜。
[9] 上記ハロゲン化合物が、ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物、ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物およびハロゲン化水素からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[8]に記載の前駆体膜。
[10] 上記ハロゲン化合物がハロゲン化水素である、上記[8]または[9]に記載の前駆体膜。
[11] 上記リン含有化合物が、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、テトラリン酸、ポリリン酸亜リン酸、次亜リン酸、および酸化リン(V)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[8]~[10]のいずれか1つに記載の前駆体膜。
[12] 上記リン含有化合物が次亜リン酸である、上記[8]~[11]のいずれか1つに記載の前駆体膜。
[13] 上記前駆体膜中の銅元素の含有量が、上記前駆体膜中の金属銅および窒化銅の合計質量に対して、40質量%以上100質量%未満である、上記[8]~[12]のいずれか1つに記載の前駆体膜。
[14] バインダーを含まない、上記[8~13のいずれか1つに記載の前駆体膜。
[15] 上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の導電膜形成用組成物を基材上に付与して前駆体膜を形成する形成工程
を備える、前駆体膜の製造方法。
[16] 金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、分散媒とを含む複合粒子含有組成物を基材上に付与して上記金属銅-窒化銅複合粒子を含む塗膜を形成する塗膜形成工程、および
上記塗膜とハロゲン化合物およびリン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の結着剤とを接触させて前駆体膜を形成する接触工程
を備える、前駆体膜の製造方法。
[17] 上記ハロゲン化合物が、ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物、ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物およびハロゲン化水素からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[16]に記載の前駆体膜の製造方法。
[18] 上記ハロゲン化合物がハロゲン化水素である、上記[16]または[17]に記載の前駆体膜の製造方法。
[19] 上記リン含有化合物が、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、テトラリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、および酸化リン(V)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[16]~[18]のいずれか1つに記載の前駆体膜の製造方法。
[20]
上記リン含有化合物が次亜リン酸である、上記[16]~[19]のいずれか1つに記載の前駆体膜の製造方法。
[21]
上記複合粒子含有組成物がバインダーを含まない、上記[16]~[20]のいずれか1つに記載の前駆体膜の製造方法。
[22] 上記[8]~[14]のいずれか1つに記載の前駆体膜を0℃~150℃で加熱して導電膜を形成する導電膜形成工程
を備える、導電膜の製造方法。
[23] 上記導電膜形成工程において上記前駆体膜を5秒間~24時間加熱する、上記[22]に記載の導電膜の製造方法。
[24] 上記導電膜形成工程において上記前駆体膜を加熱する時の雰囲気が酸化的雰囲気である、上記[22]または[23]に記載の導電膜の製造方法。
[25] 上記導電膜形成工程の前に、上記[15]に記載の前駆体膜の製造方法の各工程を備える、上記[22]~[24]のいずれか1つに記載の導電膜の製造方法。
[26] 上記導電膜形成工程の前に、上記[16]~[21]のいずれか1つに記載の前駆体膜の製造方法]に記載の各工程を備える、上記[22]~[24]のいずれか1つに記載の導電膜の製造方法。
[27] 上記導電膜形成工程の後に、形成した導電膜の表面を洗浄する導電膜洗浄工程を備える、上記[22]~[26]のいずれか1つに記載の導電膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた導電性を有する導電膜を150℃以下の温度で形成できる導電膜形成用組成物を提供できる。
また、本発明は、150℃以下の温度で導電膜を形成できる前駆体膜、前駆体膜の製造方法、および導電膜の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「~」を用いて表される範囲は、その範囲に「~」の前後に記載された両端を含む範囲を意味する。例えば、「A~B」と表される範囲は、AおよびBを含む。
【0012】
本発明の導電膜の製造方法において、金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、ハロゲン化合物およびリン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の結着剤とを使用することにより、優れた導電性を有する導電膜を150℃以下の温度で形成できるメカニズムは明らかではないが、例えば、結着剤として塩酸を用いた場合には、おおむね以下のとおりであると考えられる。
【0013】
金属銅の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子と、塩酸とを接触させ、加熱すると、金属銅-窒化銅複合粒子の窒素が脱離し、純銅粒子が再生する。接触した純銅粒子間で融着して、低抵抗化する。残存した銅表面から酸により銅イオンが溶出し、直ちに塩化物イオンにトラップされ、塩化銅(I)を生成し、銅表面を覆うため、銅表面が酸化されず、亜酸化銅(Cu2O)を生成しない。生成した導電膜中には、生成物として、金属銅および塩化銅(I)が検出されることから、このようなメカニズムにより、150℃以下の低温で加熱しても導電性に優れた導電膜が形成されるのではないかと推測される。
【0014】
[導電膜の製造方法]
本発明の導電膜の製造方法は、前駆体膜を0℃~150℃で加熱して導電膜を形成する導電膜形成工程を備える。
【0015】
〈前駆体膜〉
上記前駆体膜は、金属銅-窒化銅複合粒子と、結着剤とを含む塗膜である。
【0016】
《金属銅-窒化銅複合粒子》
金属銅-窒化銅複合粒子(以下、単に「複合粒子」または「表面窒化銅粒子」という場合がある。)は、金属銅の表面が窒化銅で覆われた粒子である。いいかれば、複合粒子は、粒子状の金属銅と、金属銅の表面を覆うように配置された窒化銅とを含む。
【0017】
複合粒子は結着剤の存在下で加熱されることにより、窒化銅から窒素が脱離して、金属銅粒子を生成する。次に、金属銅粒子どうしが融着して、金属導体が形成される。さらに、金属銅粒子または金属導体の表面から銅が溶出して、ハロゲン化合物またはリン含有化合物と反応して生じる銅化合物が金属導体の表面を覆い、銅酸化物の生成を抑制することにより、酸化的雰囲気中であっても、金属導体の導電性が維持される。
【0018】
(複合粒子の組成確認方法)
複合粒子の組成は、X線回折装置(X-RAY DIFFRACTOMETER RINT-Ultima-III,リガク社製)を用いて測定し、標準データから組成を確認できる。
【0019】
((測定条件))
2Θ/ω:10-70度
サンプリングステップ:0.01度
速度:10度/分
ATT:開放
DS:1.00mm
SS:開放
RS:開放
光学系パラレルスリット:PB
入射縦制限ソーラースリット:V5
縦制限スリット:10×10
平行スリットアナライザー:PSA
(標準データ)
窒化銅 2Θ=23.2度、33.13度、40.9度、47.7度、53.6度、69,6度
金属銅 2Θ=43.3度、50.4度
【0020】
(平均粒径)
金属銅-窒化銅複合粒子の平均一次粒径は、特に限定されないが、100nm~20μmの範囲内であることが好ましく、150nm~10μmの範囲内であることがより好ましく、200nm~6μmの範囲内であることがさらに好ましい。
金属銅-窒化銅複合粒子の平均一次粒径がこの範囲内であると、より緻密な導電体が形成され、導電性がより優れた導電膜が形成される。
【0021】
複合粒子(表面窒化銅粒子)の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SS500型 FE-SEM(10kV),日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察した金属銅-窒化銅複合粒子から50個を無作為に抽出して、各粒子の一次粒径を測定し、その算術平均値を金属銅-窒化銅複合粒子の平均一次粒径とした。
【0022】
(窒化銅平均厚み)
金属銅-窒化銅複合粒子の窒化銅の層の厚み(「窒化銅平均厚み」という。)は、特に限定されないが、0.01nm~100nmの範囲内であることが好ましく、0.05nm~10nmの範囲内であることがより好ましく、0.1nm~5nm未満の範囲内であることがさらに好ましい。
金属銅-窒化銅複合粒子の窒化銅平均厚みがこの範囲内であると、加熱時に酸化されることなく、より緻密な導電体が形成され、導電性がより優れた導電膜が形成される。
【0023】
((金属銅-窒化銅複合粒子の金属銅の平均粒径と窒化銅の平均厚みの算出方法))
・金属銅-窒化銅複合粒子の金属銅と窒化銅のピーク面積比
上述の複合粒子の組成確認の測定方法で測定した測定データをもとに、複合粒子の金属銅と窒化銅のピーク面積の比を算出する。
ベースライン値: 2Θ=10~20度の範囲の平均値
窒化銅(100)ピーク面積=(2Θ=23.2度カウント面積)-ベースライン値
金属銅(100)ピーク面積=(2Θ=43.3度カウント面積)-ベースライン値
金属銅と窒化銅のピーク面積比=[窒化銅(100)ピーク面積]/[銅(100)ピーク面積]
により、複合粒子の金属銅と窒化銅のピーク面積比が算出できる。
【0024】
・金属銅の平均粒径と窒化銅の平均厚み
X線構造解析パラメータ
窒化銅:Cu3N(Qubic,Pm-3m,a 3.814Å,b 3.814Å,c 3.814Å,α90度,β90度,γ90度,V=55.48Å3,密度6.125g/cm3),出典:The Cambridge Crystallographic Data Centre(CCDC)
銅:Cu(Qubic,Fm-3m,a 3.6150Å,b 3.6150Å,c 3.6150Å,α90度,β90度,γ90度,V=47.24Å3,密度8.94g/cm3),出典:Wyckoff RWG,ccp,structure,Crystal Structures,Vol.1,1963,7,83.
から、金属銅の(100)ピークと窒化銅の(100)ピークの面積比が金属銅と窒化銅の重量比と等しくなり、金属銅の密度と窒化銅の密度から、金属銅と窒化銅の体積比が算出される。
上述のSEMで測定した金属銅-窒化銅複合粒子の粒径から金属銅-窒化銅複合粒子の体積を算出し、上述の金属銅と窒化銅の体積比から、金属銅と窒化銅に分配して金属銅と窒化銅の体積が算出できる。
ここで、金属銅-窒化銅複合粒子のコアシェル球体モデルを仮定すると、上述の金属銅と窒化銅の体積から、コアの金属銅の平均半径とシェルの窒化銅の平均厚みが算出できる。
【0025】
((金属銅-窒化銅複合粒子の金属銅と窒化銅の重量の算出方法))
上述の金属銅と窒化銅の体積と上述のX線構造解析パラメータに示した金属銅と窒化銅の密度から、金属銅の重量と窒化銅の重量を算出することができる。
【0026】
(前駆体膜中の複合粒子の含有量)
本発明の前駆体膜中の上記複合粒子の含有量は、特に限定されないが、前駆体膜の全質量に対して、80質量%以上100質量%未満であることが好ましく、85質量%以上100質量%未満であることがより好ましく、90質量%以上100質量%未満であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%未満であることがいっそう好ましい。
本発明の前駆体膜中の複合粒子の含有量が上記範囲内であると、本発明の前駆体膜を用いて得られる導電膜の導電性が、より優れたものとなる。
これは、本発明の前駆体膜を用いて得られる導電膜中の導体である銅の含有率が大きくなるためであると考えられる。
【0027】
(前駆体膜中の銅元素の含有量)
本発明の前駆体膜中の銅元素の含有量は、特に限定されないが、前駆体膜中の金属銅および窒化銅の合計質量に対して、40質量%以上100質量%未満であることが好ましく、50質量%~98質量%であることがより好ましく、70質量%~95質量%であることがさらに好ましい。
前駆体膜中の銅元素の含有量がこの範囲内であると、加熱により、より緻密な導電体が形成され、導電性がより優れた導電膜が形成される。
【0028】
(前駆体膜中の銅元素の含有量の測定方法)
本発明の前駆体膜中の銅元素〔または、金属銅〕の含有量は、波長分散型全自動蛍光X線分析装置(Axios,PANalytical社製)を用いて測定ができる。
【0029】
((測定条件))
ライン:Kα線
結晶:LIF200
コリメーター:150μm
検出器:Duplex
管球フィルタ:なし
電圧:60kV
電流:60mA
測定時間:40秒
照射面積:20φ
【0030】
(前駆体膜中の複合粒子の含有量の測定方法)
本発明の前駆体膜中の上記金属銅-窒化銅複合粒子の含有量は、上記「前駆体膜中の銅元素の含有量の測定方法」により測定した銅元素の含有量と上記「金属銅-窒化銅複合粒子の金属銅と窒化銅の重量の算出方法」により算出した複合粒子の金属銅と窒化銅の重量比を元に、金属銅と窒化銅の重量の和で算出することができる。
【0031】
《結着剤》
結着剤は、ハロゲン化合物およびリン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0032】
(ハロゲン化合物)
ハロゲン化合物は、構造中にハロゲンを含む化合物であれば特に限定されないが、具体例として、ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物、ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物およびハロゲン化水素が例示される。
ハロゲン化合物は、ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物、ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物およびハロゲン化水素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ハロゲン化水素であることがより好ましい。
【0033】
なお、本発明において、ハロゲンとは、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)周期表の第17族元素のうち、フッ素(元素記号:F)、塩素(元素記号:Cl)、臭素(元素記号:Br)およびヨウ素(元素記号:I)をいい、塩素、臭素およびヨウ素をいうことが好ましく、塩素および臭素をいうことがより好ましく、塩素をいうことがさらに好ましい。また、本発明において、アスタチン(元素記号:At)およびテネシン(元素記号:Ts)は、ハロゲンに含めないものとする。
【0034】
((ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物))
ハロゲン化物イオンを含むイオン性化合物は、例えば、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、有機アミンのハロゲン化水素塩およびハロゲン化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0035】
上記アルカリ金属のハロゲン化物の例は、塩化リチウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム等の塩化物、臭化リチウム、臭化ナトリウムおよび臭化カリウム等の臭化物、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウム等のヨウ化物、ならびにフッ化リチウム、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウム等のフッ化物等である。
【0036】
本発明において、アルカリ金属とは、IUPAC周期表の第1族元素のうち、リチウム(元素記号:Li)、ナトリウム(元素記号:Na)、カリウム(元素記号:K)、ルビジウム(元素記号:Rb)およびセシウム(元素記号:Cs)をいい、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびルビジウムをいうことが好ましく、リチウム、ナトリウムおよびカリウムをいうことがより好ましく、ナトリウムおよびカリウムをいうことがさらに好ましい。本発明において、フランシウム(元素記号:Fr)は、アルカリ金属に含めないものとする。
【0037】
上記アルカリ土類金属のハロゲン化物の例は、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ベリリウムおよび塩化マグネシウム等の塩化物、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、臭化ベリリウムおよび臭化マグネシウム等の臭化物、ならびにヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ベリリウムおよびヨウ化マグネシウム等のヨウ化物等である。
【0038】
本発明において、アルカリ土類金属とは、IUPAC周期表の第2族元素のうち、ベリリウム(元素記号:Be)、マグネシウム(元素記号:Mg)、カルシウム(元素記号:Ca)、ストロンチウム(元素記号:Sr)およびバリウム(元素記号:Ba)をいい、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムをいうことが好ましく、カルシウムをいうことがより好ましいものとする。本発明において、ラジウム(元素記号:Ra)は、アルカリ土類金属に含めないものとする。
【0039】
上記有機アミンのハロゲン化水素塩の例は、トリエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩、トリエチルアミンフッ化水素酸塩、ピリジン塩酸塩、ピリジン臭化水素酸塩、ピリジンヨウ化水素酸塩、ピリジンフッ化水素酸塩、ベタイン塩酸塩、ベタイン臭化水素酸塩、ベタインヨウ化水素酸塩およびベタインフッ化水素酸塩等である。
上記有機アミンのハロゲン化水素塩は、好ましくはN,N,N-トリメチルグリシン塩酸塩である。
【0040】
上記ハロゲン化アンモニウムの例は、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムおよびフッ化アンモニウム等である。
【0041】
((ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物))
ハロゲンを共有結合を介して含む有機化合物の例は、塩化アセチル(別名:酢酸クロリドまたはアセチルクロリド)、臭化アセチル(別名:酢酸ブロミドまたはアセチルクロリド)、ヨウ化アセチル(別名:酢酸ヨージドまたはアセチルヨージド)、塩化プロピオニル(別名:プロピオン酸クロリドまたはプロピオニルクロリド)、臭化プロピオニル(別名:プロピオン酸ブロミドまたはプロピオニルブロミド)、ヨウ化プロピオニル(別名:プロピオン酸ヨージドまたはプロピオニルヨージド)、塩化ベンゾイル(別名:安息香酸クロリドまたはベンゾイルクロリド)、臭化ベンゾイル(別名:安息香酸ブロミドまたはベンゾイルブロミド)およびヨウ化ベンゾイル(別名:安息香酸ヨージドまたはベンゾイルヨージド)である。
本発明の導電膜の製造方法において、絶縁性塗膜とこれらのカルボン酸ハロゲン化物との接触を大気中で行うと、カルボン酸ハロゲン化物の分解によりハロゲン化水素が発生し、ハロゲン化水素が絶縁性塗膜と接触することとなるものと考えられる。
【0042】
((ハロゲン化水素))
ハロゲン化水素の例は、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素およびフッ化水素等である。
上記ハロゲン化水素は、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、塩化水素であることがさらに好ましい。
【0043】
(リン含有化合物)
リン含有化合物は、構造中にリン原子を含む化合物であれば特に限定されないが、具体例として、リン酸(H3PO4)、ピロリン酸(H4P2O7)、トリリン酸(H5P3O10)、テトラリン酸(Η6Ρ4O13)、ポリリン酸〔HO-(HPO3)n-H,nは5以上の整数〕、亜リン酸(Η4Ρ2O)、次亜リン酸(H3PO3)、および酸化リン(V)(P4O10)が例示される。
リン含有化合物は、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、テトラリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、および酸化リン(V)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸、亜リン酸および次亜リン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、亜リン酸であることがさらに好ましい。
【0044】
(前駆体膜中の結着剤の含有量)
本発明の前駆体膜中の上記結着剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の前駆体膜の全質量に対して、0質量%超20質量%以下であることが好ましく、0質量%超15質量%以下であることがより好ましく、0質量%超10質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%超5質量%以下であることがいっそう好ましい。
本発明の前駆体膜中の結着剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の前駆体膜を用いて得られる導電膜の導電性が、より優れたものとなる。
これは、本発明の前駆体膜を用いて得られる導電膜中の導体である銅の含有率が大きくなるためであると考えられる。
【0045】
《複合粒子および結着剤以外の成分》
本発明の前駆体膜は、複合粒子および結着剤以外に、バインダーを含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0046】
(バインダー)
本発明の前駆体膜は、バインダーを含まなくてもよいし、含んでもよい。
ここで、バインダーとしては、樹脂および分子量1000以上の有機化合物が挙げられる。
【0047】
上記樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂の具体例は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂およびオキサジン樹脂等が挙げられ、上記熱可塑性樹脂の具体例は、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0048】
上記分子量1000以上の有機化合物は、特に限定されないが、例えば、分子量1000以上の有機酸、分子量1000以上のポリアルキレングリコール、分子量1000以上の糖アルコール、オリゴ糖および多糖が挙げられる。
【0049】
バインダーは、導電膜の基板への密着性を向上させる効果があるが、同時に、導電性を低下させるおそれがある。そのため、本発明の前駆体膜は、バインダーを含まないことが好ましい。
【0050】
《前駆体膜の製造方法》
本発明の前駆体膜は、特に限定されないが、例えば、導電膜形成用組成物を基材上に付与して前駆体膜を形成する工程(前駆体膜形成工程)を備える前駆体膜の製造方法(以下「前駆体膜製造方法1」という場合がある。)、または、複合粒子と分散媒とを含む組成物(複合粒子含有組成物)を基材上に付与して複合粒子を含む塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)、および塗膜と結着剤とを接触させて前駆体膜を形成する工程(接触工程)を備える前駆体膜の製造方法(以下「前駆体膜製造方法2」という場合がある。)によって製造できる。
【0051】
(前駆体膜製造方法1)
前駆体膜製造方法1は、導電膜形成用組成物を基材上に付与して前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程を備える前駆体膜の製造方法である。
【0052】
((導電膜形成用組成物))
上記導電膜形成用組成物は、複合粒子と、結着剤とを含む。
上記複合粒子および上記結着剤は、本発明の前駆体膜に関して記載したとおりである。
導電膜形成用組成物中における複合粒子の含有量は、特に限定されないが、導電膜形成用組成物中の全固形分に対して、80質量%以上100質量%未満であることが好ましく、85質量%以上100質量%未満であることがより好ましく、90質量%以上100質量%未満であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%未満であることがいっそう好ましい。
また、導電膜形成用組成物中における結着剤の含有量は、特に限定されないが、導電膜形成用組成物中の全固形分に対して、0質量%超20質量%以下であることが好ましく、0質量%超15質量%以下であることがより好ましく、0質量%超10質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%超5質量%以下であることがいっそう好ましい。
複合粒子および結着剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の前駆体膜を用いて得られる導電膜の導電性が、より優れたものとなる。
なお、全固形分とは、導電膜形成用組成物に含まれる成分のうち、分散媒を除いた成分をいう。
また、上記導電膜形成用組成物は、さらに分散媒および/またはバインダーを含んでもよい。
【0053】
・分散媒
上記分散媒は、上記複合粒子を分散し、または、上記結着剤を溶解もしくは分散することができるものであれば特に限定されない。
上記分散媒の具体例は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種であり、水、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノールおよび2プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水、エチレングリコール、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。上記水としては、イオン交換水、RO(Reverse Osmosis:逆浸透)水もしくは蒸留水その他の純水、またはASTM D 1193-06タイプ1グレードその他の超純水が好ましい。
【0054】
・バインダー
バインダーは、本発明の前駆体膜に関して記載したとおりである。上記導電膜形成用組成物は、バインダーを含まないことが好ましい。
【0055】
(((導電膜形成用組成物の調製方法)))
上記導電膜形成用組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、複合粒子および結着剤、さらに所望により分散媒および/またはバインダー、を混合することにより調製できる。
複合粒子および結着剤、さらに所望により分散媒および/またはバインダー、を混合する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。
例えば、分散媒中に、複合粒子と、結着剤とを添加した後、超音波法(例えば、超音波ホモジナイザーによる処理)、ミキサー法、3本ロール法、および、ボールミル法等の公知の手段により成分を分散させることによって、導電膜形成用組成物を得ることができる。
結着剤が固体である場合は、分散媒に溶解または分散してから添加してもよい。また、結着剤が気体である場合は、分散媒に溶解してから添加してもよい。
例えば、塩化水素を添加する場合は、水溶液である塩酸として添加してもよい。ただし、この場合、塩化水素の溶媒である水は、導電膜形成用組成物に含む分散媒として取り扱う。
【0056】
((基材))
上記基材は、従来公知のものを用いることができる。
また、上記基材に使用される材料の具体例は、樹脂、紙、ガラス、シリコン系半導体、化合物半導体、金属、金属酸化物、金属窒化物、木材、またはこれらの複合物であるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
上記樹脂の具体例は、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、およびセルロース誘導体であるが、これらに限定されるものではない。
上記紙の具体例は、塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール、および段ボールであるが、これらに限定されるものではない。
上記ガラスの具体例は、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、および石英ガラスであるが、これらに限定されるものではない。
上記シリコン系半導体の具体例は、アモルファスシリコンおよびポリシリコンであるが、これらに限定されるものではない。
上記化合物半導体の具体例は、CdS、CdTeおよびGaAsであるが、これらに限定されるものではない。
上記金属の具体例は、銅、鉄、およびアルミであるが、これらに限定されるものではない。
上記金属酸化物の具体例は、アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム、ITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ネサ(酸化錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、およびガリウムドープ酸化亜鉛であるが、これらに限定されるものではない。
上記金属窒化物の具体例は、窒化アルミニウムであるが、これに限定されるものではない。
また、上記複合物の具体例は、紙-フェノール樹脂、紙-エポキシ樹脂、紙-ポリエステル樹脂等の紙-樹脂複合物、ガラス布-エポキシ樹脂(ガラスエポキシ樹脂)、ガラス布-ポリイミド系樹脂、およびガラス布-フッ素樹脂であるが、これらに限定されるものではない。
本発明の導電膜を形成する基材は、特に限定されないが、ガラス基材、ポリイミド基材、またはポリエチレンテレフタレート(PET)基材であることが好ましい。
【0058】
((導電膜形成用組成物を基材上に付与する方法))
上記導電膜形成用組成物を上記基材上に付与する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、および、インクジェット法等の塗布法が挙げられる。
塗布の形状は特に制限されず、基材全面を覆う面状であっても、パターン状(例えば、配線状、ドット状)であってもよい。
【0059】
基材上への導電膜形成用組成物の塗布量としては、所望する導電膜の膜厚に応じて適宜調整すればよいが、通常、塗膜の膜厚(厚み)は、2μm~600μmであることが好ましく、10μm~300μmであることがより好ましく、10μm~200μmであることがさらに好ましい。
【0060】
上記前駆体膜製造方法1は、前駆体膜形成工程において、導電膜形成用組成物を基材上に付与して塗膜を形成した後に、塗膜を乾燥して分散媒を除去することが好ましい。乾燥の方法は、特に限定されないが、例えば、温風乾燥機等を用いて乾燥する方法等を用いることができる。また、乾燥の際の温度(乾燥温度)は、特に限定されないが、例えば、0℃~120℃であることが好ましく、10℃~100℃であることがより好ましく、15℃~80℃であることがさらに好ましい。また、乾燥の際の雰囲気は、特に限定されず、大気中等の酸化的雰囲気であってもよいし、窒素ガスその他の不活性ガス中等の不活性雰囲気であってもよし、水素ガスその他の還元性ガス中等の還元的雰囲気であってもよい。また、乾燥の際の時間(乾燥時間)は、特に限定されないが、1秒~96時間であることが好ましく、5秒~72時間であることがより好ましい。ただし、乾燥時間は導電膜形成用組成物膜から分散媒を実質的に全部除去できればよく、乾燥温度によって適宜設定することができる。
【0061】
(前駆体膜製造方法2)
前駆体膜製造方法2は、複合粒子と分散媒とを含む複合粒子含有組成物を基材上に付与して複合粒子を含む塗膜を形成する塗膜形成工程、および複合粒子を含む塗膜とハロゲン化合物およびリン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の結着剤とを接触させて前駆体膜を形成する接触工程を備える前駆体膜の製造方法である。
【0062】
((複合粒子含有組成物))
上記複合粒子含有組成物は、複合粒子と、分散媒とを含む。
上記複合粒子および上記分散媒は、本発明の前駆体膜に関して記載したとおりである。
複合粒子含有組成物中における複合粒子の含有量は、特に限定されないが、導電膜形成用組成物中の全固形分に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、85質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがいっそう好ましい。
複合粒子の含有量が上記範囲内であると、本発明の前駆体膜を用いて得られる導電膜の導電性が、より優れたものとなる。
なお、全固形分とは、複合粒子含有組成物に含まれる成分のうち、分散媒を除いた成分をいう。
また、上記複合粒子含有組成物は、さらにバインダーを含んでもよい。分散媒は、本発明の導電膜形成用組成物に関して記載したとおりである。バインダーは、本発明の前駆体膜に関して記載したとおりである。上記複合粒子含有組成物は、バインダーを含まないことが好ましい。
【0063】
(((複合粒子含有組成物の調製方法)))
上記複合粒子含有組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、複合粒子および分散媒、さらに所望によりバインダー、を混合することにより調製できる。
複合粒子および分散媒、さらに所望によりバインダー、を混合する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができ、例えば、上記導電膜形成用組成物の調製方法に記載した混合方法を採用することができる。
【0064】
((基材))
上記基材は、前駆体膜製造方法1に記載したとおりである。
【0065】
((複合粒子含有組成物を基材上に付与する方法))
上記複合粒子含有組成物を上記基材上に付与する方法は、特に制限されず、前駆体膜製造方法1に記載した方法を採用できる。
【0066】
((複合粒子を含む塗膜と結着剤とを接触させる方法))
基材上に形成した複合粒子と結着剤とを接触させる方法は、特に限定されず、例えば、ディップ、スプレー、コーティング、および塗布等の方法を採用できる。
【0067】
・接触の際の温度
複合粒子を含む塗膜と結着剤とを接触させる際の温度は、特に限定されないが、0℃~150℃であることが好ましく、0℃以上95℃未満であることがより好ましく、0℃以上90℃未満であることがさらに好ましく、0℃以上85℃未満であることがいっそう好ましく、0℃以上80℃未満であることがよりいっそう好ましい。結着剤を分散媒(溶媒)に溶解して用いる場合は分散媒の沸点±20℃の範囲で行うことが望ましい。
【0068】
・接触の際の雰囲気
複合粒子を含む塗膜と結着剤とを接触させる際の雰囲気は、特に限定されず、酸化的雰囲気、不活性雰囲気および還元的雰囲気のいずれであってもよい。酸化的雰囲気下であっても、優れた導電性を有する導電膜を形成できることが、本発明の効果のひとつである。
酸化的雰囲気としては、例えば、酸素を5.0%(v/v)以上含むものが好ましく、5.0%(v/v)以上21.0%(v/v)未満含むものがより好ましい。酸化的雰囲気には、気体状態の結着剤を含んでもよい。
不活性雰囲気または還元的雰囲気としては、例えば、不活性ガスが挙げられ、酸素の含有量が0.005%(v/v)以下であるものが好ましく、不可避的微量であるものがより好ましい。なお、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガスおよびキセノンガス等が挙げられる。還元性ガスとしては、水素ガス、ギ酸ガス等があげられる。
【0069】
・接触の際の時間
複合粒子を含む塗膜と結着剤とを接触させる際の時間は、特に限定されないが、5秒間~24時間であることが好ましく、5秒間~10分間であることがより好ましく、30秒間~2分間であることがさらに好ましい。
【0070】
・接触の際の結着剤の状態
複合粒子を含む塗膜と結着剤とを接触させる際には、塗膜と気体状態の結着剤とを接触させるか、または、塗膜と結着剤を含む液体とを接触させることが好ましい。
ここで、気体状態の結着剤は、気体状態の結着剤の単独のガスである場合および結着剤の気体とキャリアガスとの混合ガスである場合のいずれであってもよい。
また、結着剤を含む液体は、結着剤が液体である場合、液体そのまま、または、分散媒(溶媒)に溶解した溶液のいずれであってもよい。
結着剤を含む液体は、結着剤とは別に、分散媒を含んでいてもよい。分散媒としては、上記分散媒として例示した化合物が挙げられ、分散媒は、2種混合して用いてもよい。分散媒としては、水、アルコール、または水-アルコール混合分散媒が好ましく、水-アルコール混合分散媒がより好ましい。結着剤および分散媒を含む溶液において、結着剤の含有量は特に制限されないが、溶液全質量に対して、5質量%~30質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。なお、ミストでの接触は、液体状態での接触に該当する。
【0071】
上記前駆体膜製造方法2は、塗膜形成工程において、複合粒子を含む塗膜と結着剤とを接触させた後に、塗膜を乾燥して分散媒を除去することが好ましい。乾燥の方法は、特に限定されないが、上記前駆体膜製造方法2に記載した塗膜を乾燥する方法を採用することができる。
【0072】
〈導電膜形成工程〉
上記導電膜形成工程は、上記前駆体膜を0℃~150℃で加熱して導電膜を形成する工程である。
【0073】
上記導電膜形成工程における加熱の方法は、特に限定されず、従来公知の方法、例えば、ホットプレート等の加熱器具を用いて加熱する方法が上げられる。
【0074】
上記導電膜形成工程における加熱の際の温度(加熱温度)は、0℃~150℃であれば特に限定されないが、80℃~150℃であることが好ましく、80℃~120℃であることがより好ましく、90℃~110℃であることがさらに好ましく、95℃~105℃であることがいっそう好ましい。
【0075】
上記導電膜形成工程における加熱の際の雰囲気(加熱雰囲気)は、特に限定されないが、酸化的雰囲気下で行われてもよいし、還元的雰囲気下で行われてもよい。酸化的雰囲気および還元的雰囲気は、上記接触工程における接触の際の雰囲気と同様である。
【0076】
上記導電膜形成工程における加熱の際の時間(加熱時間)は、特に限定されないが、5秒間~24時間であることが好ましく、5秒間~10分間であることがより好ましく、30秒間~2分間であることがさらに好ましい。ただし、加熱時間は、加熱の際の温度によって適宜設定することができる。
【0077】
〈導電膜洗浄工程〉
本発明の導電膜の製造方法は、導電膜形成工程の後に、導電膜を洗浄する導電膜洗浄工程を備えていてもよい。
導電膜の洗浄の方法は、副生成物を洗浄可能であれば特に限定されない。導電膜の表面を水、メタノール、エタノールまたはこれらの混合物等の極性溶媒に接触させることによって行うことが好ましい。接触させる方法は、特に限定されないが、前駆体膜製造方法2に記載した接触方法を採用することができる。
さらに、導電膜の表面を極性溶媒に接触させた後、乾燥して極性溶媒を除去してもよい。乾燥の方法は、特に限定されないが、前駆体膜製造方法1、または前駆体膜製造方法2に記載した乾燥方法を採用できる。
導電膜表面を洗浄することにより、導電膜表面を清浄化できる。
【実施例】
【0078】
[表面亜酸化銅粒子の製造]
〈表面亜酸化銅粒子A1/表面亜酸化銅粒子B1〉
金属銅粒子(湿式銅紛 1050Y,三井金属鉱業社製;平均粒径 810nm)を、X線回折装置(RINT-ULTIMA III,リガク社製)を用いて分析した。その結果、金属銅粉末のX線回折パターンに亜酸化銅に起因するピークが観測され、金属銅粒子は表面が亜酸化銅で被覆されていることを確認した。以下、この金属銅粒子を「表面亜酸化銅粒子A1」という。
【0079】
表面亜酸化銅粒子A1(5g)をビーカーに入れ、ホットプレート(HP-2SA,アズワン社製)で昇温し、150℃で1時間加熱した。その後、室温まで冷却して表面亜酸化銅粒子A1の表面に酸化処理を施し、表面亜酸化銅粒子A1に比べて亜酸化銅の被覆量が増加した表面亜酸化銅粒子(以下「表面亜酸化銅粒子B1」という。)を得た。
【0080】
〈表面亜酸化銅粒子A2/表面亜酸化銅粒子B2〉
金属銅粒子(湿式銅紛 1030Y,三井金属鉱業社製;平均粒径 420nm)を、X線回折装置(RINT-ULTIMA III,リガク社製)を用いて分析した。その結果、金属銅粉末のX線回折パターンに亜酸化銅に起因するピークが観測され、金属銅粒子は表面が亜酸化銅で被覆されていることを確認した。以下、この金属銅粒子を「表面亜酸化銅粒子A2」という。
【0081】
表面亜酸化銅粒子A2(5g)をビーカーに入れ、ホットプレート(HP-2SA,アズワン社製)で昇温し、150℃で1時間加熱した。その後、室温まで冷却して表面亜酸化銅粒子A2の表面に酸化処理を施し、表面亜酸化銅粒子A2に比べて亜酸化銅の被覆量が増加した表面亜酸化銅粒子(以下「表面亜酸化銅粒子B2」という。)を得た。
【0082】
〈表面亜酸化銅粒子A3/表面亜酸化銅粒子B3〉
金属銅粒子(湿式銅紛 1100Y,三井金属鉱業社製;平均粒径 1100nm)を、X線回折装置(RINT-ULTIMA III,リガク社製)を用いて分析した。その結果、金属銅粉末のX線回折パターンに亜酸化銅に起因するピークが観測され、金属銅粒子は表面が亜酸化銅で被覆されていることを確認した。以下、この金属銅粒子を「表面亜酸化銅粒子A3」という。
【0083】
表面亜酸化銅粒子A3(5g)をビーカーに入れ、ホットプレート(HP-2SA,アズワン社製)で昇温し、150℃で1時間加熱した。その後、室温まで冷却して表面亜酸化銅粒子A3の表面に酸化処理を施し、表面亜酸化銅粒子A3に比べて亜酸化銅の被覆量が増加した表面亜酸化銅粒子(以下「表面亜酸化銅粒子B3」という。)を得た。
【0084】
〈表面亜酸化銅粒子A4/表面亜酸化銅粒子B4〉
金属銅粒子(湿式銅紛 1400Y,三井金属鉱業社製;平均粒径 5700nm)を、X線回折装置(RINT-ULTIMA III,リガク社製)を用いて分析した。その結果、金属銅粉末のX線回折パターンに亜酸化銅に起因するピークが観測され、金属銅粒子は表面が亜酸化銅で被覆されていることを確認した。以下、この金属銅粒子を「表面亜酸化銅粒子4」という。
【0085】
表面亜酸化銅粒子A4(5g)をビーカーに入れ、ホットプレート(HP-2SA,アズワン社製)で昇温し、150℃で1時間加熱した。その後、室温まで冷却して表面亜酸化銅粒子A4の表面に酸化処理を施し、表面亜酸化銅粒子A4に比べて亜酸化銅の被覆量が増加した表面亜酸化銅粒子(以下「表面亜酸化銅粒子B4」という。)を得た。
【0086】
[表面窒化銅粒子の製造]
〈表面窒化銅粒子1〉
表面亜酸化銅粒子A1(50g)を回転式小型真空アンモニア・プラズマ照射装置(YHS-DΦS,魁半導体社製)で処理して、銅粒子の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子を得た。以下、この金属銅-窒化銅複合粒子を「表面窒化銅粒子1」という。
【0087】
表面窒化銅粒子1の一次粒子の平均粒径(平均一次粒径)および表面を被覆している窒化銅の平均厚み(窒化銅被覆平均厚み)を上述した方法により求めたところ、以下のとおりであった。
平均一次粒径・・・800nm
窒化銅被覆平均厚み・・・0.4nm
【0088】
〈表面窒化銅粒子2〉
表面亜酸化銅粒子A1(1g)および尿素(1g)をノナノール(100mL)に添加して分散液を調製した後、190℃まで昇温し、190℃で1時間加熱した。その後、分散液を室温まで冷却した後、高速大容量冷却遠心分離機(Model 7750,久保田商事社製)を用いて遠心分離(5000rpm)を行い、沈殿物を固形分として回収した。得られた沈殿物をヘキサンで十分に洗浄した後、傾斜ろ過で上清を除去し、沈殿物を加熱乾燥して、銅粒子の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子を得た。以下、この金属銅-窒化銅複合粒子を「表面窒化銅粒子2」という。
【0089】
表面窒化銅粒子1と同様にして、表面窒化銅粒子2の平均一次粒径および窒化銅被覆平均厚みを求めたところ、以下のとおりであった。
平均一次粒径・・・800nm
窒化銅被覆平均厚み・・・1.8nm
【0090】
〈表面窒化銅粒子3〉
表面亜酸化銅粒子A1(50g)に代えて表面亜酸化銅粒子B1(1g)を用いたことを除いて、表面窒化銅粒子1と同様にして銅粒子の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子を得た。以下、この金属銅-窒化銅複合粒子を「表面窒化銅粒子3」という。
【0091】
表面窒化銅粒子1と同様にして、表面窒化銅粒子3の平均一次粒径および窒化銅被覆平均厚みを求めたところ、以下のとおりであった。
平均一次粒径・・・780nm
窒化銅被覆平均厚み・・・2.0nm
【0092】
〈表面窒化銅粒子4〉
表面亜酸化銅粒子A1(50g)に代えて表面亜酸化銅粒子B2(1g)を用いたことを除いて、表面窒化銅粒子1と同様にして銅粒子の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子を得た。以下、この金属銅-窒化銅複合粒子を「表面窒化銅粒子4」という。
【0093】
表面窒化銅粒子1と同様にして、表面窒化銅粒子4の平均一次粒径および窒化銅被覆平均厚みを求めたところ、以下のとおりであった。
平均一次粒径・・・360nm
窒化銅被覆平均厚み・・・0.9nm
【0094】
〈表面窒化銅粒子5〉
表面亜酸化銅粒子A1(50g)に代えて表面亜酸化銅粒子B3(1g)を用いたことを除いて、表面窒化銅粒子1と同様にして銅粒子の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子を得た。以下、この金属銅-窒化銅複合粒子を「表面窒化銅粒子5」という。
【0095】
表面窒化銅粒子1と同様にして、表面窒化銅粒子5の平均一次粒径および窒化銅被覆平均厚みを求めたところ、以下のとおりであった。
平均一次粒径・・・1μm
窒化銅被覆平均厚み・・・2.5nm
【0096】
〈表面窒化銅粒子6〉
表面亜酸化銅粒子A1(50g)に代えて表面亜酸化銅粒子B4(1g)を用いたことを除いて、表面窒化銅粒子1と同様にして銅粒子の表面が窒化銅で覆われた金属銅-窒化銅複合粒子を得た。以下、この金属銅-窒化銅複合粒子を「表面窒化銅粒子6」という。
【0097】
表面窒化銅粒子1と同様にして、表面窒化銅粒子6の平均一次粒径および窒化銅被覆平均厚みを求めたところ、以下のとおりであった。
平均一次粒径・・・4μm
窒化銅被覆平均厚み・・・4.9nm
【0098】
[実施例1]
〈導電膜の製造〉
1.導電膜形成用組成物の調製
表面窒化銅粒子1(50.0質量部)を、エチレングリコール(50.0質量部;東京化成社製)と混合し、泡とり練太郎(ARE-250型,シンキー社製)を用いて、2000rpmで5分間撹拌して、導電膜形成用組成物(以下「導電膜形成用組成物1」という)を調製した。
【0099】
2.前駆体膜の製造
ガラス基板(縦76mm×横26mm×厚み0.9mm;松波硝子社製)上に、調製した導電膜形成用組成物1をコイルバーにより、縦61mm×横26mm×ウェット厚み40μmで塗布し、大気中において25℃で1週間乾燥させて、ガラス基板上に前駆体膜(以下「前駆体膜1」という)を形成した。
【0100】
3.前駆体膜と結着剤との接触
ガラス基板上に形成した前駆体膜1を、10質量%塩化水素-エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))に5秒間浸漬した。さらに、結着剤と接触させた後の前駆体膜1を、エタノールに5秒間浸漬し、その後、大気下で2分間静置して、乾燥させた。
【0101】
4.加熱(導電膜の製造)
前駆体膜1を結着剤と接触させた後に乾燥させて得られた膜を、大気下、100℃で1分間加熱して、導電膜(導電膜1)を得た。
【0102】
5.導電膜表面の洗浄
得られた導電膜1を脱イオン水に浸漬し、その後、大気中で24時間静置して、乾燥させ、導電膜1の表面を洗浄した。
【0103】
6.導電膜の導電性評価
得られた導電膜1の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0104】
[実施例2]
表面窒化銅粒子1に代えて表面窒化銅粒子2を使用した点を除いて、実施例1と同様にして導電膜(導電膜2)を得た。さらに、得られた導電膜2の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0105】
[実施例3]
表面窒化銅粒子1に代えて表面窒化銅粒子3を使用した点を除いて、実施例1と同様にして導電膜(導電膜3)を得た。さらに、得られた導電膜3の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0106】
[実施例4]
10質量%塩化水素-エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))に代えて、10質量%ヨウ化水素-エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))を使用した点を除いて、実施例3と同様にして導電膜(導電膜4)を得た。さらに、得られた導電膜4の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0107】
[実施例5]
10質量%塩化水素-エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))に代えて、10質量%臭化水素-エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))を使用した点を除いて、実施例3と同様にして導電膜(導電膜5)を得た。さらに、得られた導電膜5の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0108】
[実施例6]
10質量%塩化水素-エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))に代えて、5質量%ベタイン塩酸塩((カルボキシメチル)トリメチルアンモニウム塩酸塩)エタノール水溶液(水:エタノール=1:2(g/g))を使用した点を除いて、実施例3と同様にして導電膜(導電膜6)を得た。さらに、得られた導電膜6の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0109】
[実施例7]
表面窒化銅粒子1に代えて表面窒化銅粒子4を使用した点を除いて、実施例1と同様にして導電膜(導電膜7)を得た。さらに、得られた導電膜7の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0110】
[実施例8]
表面窒化銅粒子1に代えて表面窒化銅粒子5を使用した点を除いて、実施例1と同様にして導電膜(導電膜8)を得た。さらに、得られた導電膜8の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0111】
[実施例9]
表面窒化銅粒子1に代えて表面窒化銅粒子6を使用した点を除いて、実施例1と同様にして導電膜(導電膜9)を得た。さらに、得られた導電膜9の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0112】
[実施例10]
1.導電膜形成用組成物の調製
表面窒化銅粒子3(47.5質量部)および50%次亜リン酸水溶液(5.0質量部;富士フイルム和光純薬社製)を、エチレングリコール(47.5質量部;東京化成社製)と混合し、泡とり練太郎(ARE-250型,シンキー社製)を用いて、2000rpmで5分間撹拌して、導電膜形成用組成物(以下「導電膜形成用組成物10」という)を調製した。
【0113】
2.前駆体膜の製造
ガラス基板(縦76mm×横26mm×厚み0.9mm;松波硝子社製)上に、調製した導電膜形成用組成物1をコイルバーにより、縦61mm×横26mm×ウェット厚み40μmで塗布し、大気中において25℃で1週間乾燥させて、ガラス基板上に前駆体膜(以下「前駆体膜10」という)を形成した。
【0114】
3.乾燥
前駆体膜10を、エタノールに5秒間浸漬し、その後、大気下で2分間静置して、乾燥させた。
【0115】
4.加熱(導電膜の製造)
乾燥後の前駆体膜10を、大気下、100℃で1分間加熱して、導電膜(導電膜10)を得た。
【0116】
5.導電膜の導電性評価
得られた導電膜10の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0117】
[実施例11]
1.導電膜形成用組成物の調製
表面窒化銅粒子1(47.5質量部)および2-アミノエタノール塩酸塩(2.5質量部;富士フイルム和光純薬社製)を、エチレングリコール(50.0質量部;東京化成社製)と混合し、泡とり練太郎(ARE-250型,シンキー社製)を用いて、2000rpmで5分間撹拌して、導電膜形成用組成物(以下「導電膜形成用組成物11」という)を調製した。
【0118】
2.前駆体膜の製造
ガラス基板(縦76mm×横26mm×厚み0.9mm;松波硝子社製)上に、調製した導電膜形成用組成物1をコイルバーにより、縦61mm×横26mm×ウェット厚み40μmで塗布し、大気中において25℃で1週間乾燥させて、ガラス基板上に前駆体膜(以下「前駆体膜11」という)を形成した。
【0119】
3.前駆体膜の組成評価
得られた前駆体膜11を用いて、上述した複合粒子の組成確認方法により、金属銅と窒化銅を確認した。また、得られた前駆体膜11を用いて、前駆体膜中の銅元素の含有量の測定方法により、前駆体膜中の銅元素の含有量を測定したところ、前駆体膜中の金属銅および窒化銅の合計質量に対して、73.3質量%であった。
【0120】
4.加熱(導電膜の製造)
前駆体膜11を、大気下、100℃で1分間加熱して、導電膜(導電膜11)を得た。
【0121】
5.導電膜の導電性評価
得られた導電膜11の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0122】
[比較例1]
表面窒化銅粒子1に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点を除いて、実施例1と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0123】
[比較例2]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点を除いて、実施例4と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0124】
[比較例3]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点を除いて、実施例5と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0125】
[比較例4]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点を除いて、実施例6と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0126】
[比較例5]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A2を使用した点を除いて、実施例7と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0127】
[比較例6]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A3を使用した点を除いて、実施例8と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0128】
[比較例7]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A4を使用した点を除いて、実施例9と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0129】
[比較例8]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点を除いて、実施例10と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0130】
[比較例9]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点を除いて、実施例11と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0131】
[比較例10]
表面窒化銅粒子3に代えて表面亜酸化銅粒子A1を使用した点、および、2-アミノエタノール塩酸塩(2.5質量部)に代えてアビエチン酸(2.5質量部;東京化成工業社製)を使用した点を除いて、実施例11と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0132】
[比較例11]
表面窒化銅粒子3(50.0質量部)およびエチレングリコール(50.0質量部)を使用した点を除いて、実施例10と同様にして導電膜を得た。さらに、得られた導電膜の体積抵抗値を四端子法により測定し、測定結果を表1に示した。
【0133】
【0134】
表1には、表面窒化銅粒子および表面亜酸化銅粒子のうち使用したもの、および結着剤のうち使用したものにチェックを付けて、表面窒化銅粒子または表面亜酸化銅粒子と結着剤との組合せを表した。さらに、導電膜の体積抵抗値(測定値)を「導電膜」の「体積低効率」の欄に示した。なお、「体積抵抗値」の欄の「O.L.」は体積抵抗値を測定したときの測定値が1.0×104Ω・cmを超え、測定範囲外となったことを意味する。
【0135】
実施例1~11では、体積抵抗値が低く、導電性に優れた導電膜を、150℃以下(100℃)の温度で加熱することにより製造することができた。