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特許7094222増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/02 20060101AFI20220624BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20220624BHJP
   C08F 20/56 20060101ALI20220624BHJP
   C07C 233/09 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C12P13/02 ZNA
C08L33/26
C08F20/56
C07C233/09 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018550410
(86)(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2017057410
(87)【国際公開番号】W WO2017167803
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】16162684.1
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン ラングロッツ
(72)【発明者】
【氏名】リンダ ガレラ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ギュンター ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ドイヴェル
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-512819(JP,A)
【文献】特表2008-503218(JP,A)
【文献】特開2006-187257(JP,A)
【文献】特開昭60-139351(JP,A)
【文献】特開2016-026141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00 - 41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下および任意に0.025以上、0.01以上、0.005以上、又は0.001以上となるように遠心分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含み、その際対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに同様の方法により製造されたものであり、任意にODを、生体触媒を分離した直後に測定し、かつ任意に生体触媒の分離を、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後30分以内に開始し、かつ、前記遠心分離は、ディスクスタック遠心分離であって、該ディスクスタック遠心分離を19.67m 2 h/l以上の比沈降面積及び600l/h未満の供給流量で実施する、
前記方法。
【請求項2】
さらに、
(d)ポリアクリルアミドを乾燥するステップ、
(e)ポリアクリルアミドを粉砕及び/又は押しつぶすステップ、
(f)水溶液にポリアクリルアミドを溶解するステップ、
(g)アクリルアミド水溶液を調製する前に生体触媒を乾燥するステップ、及び/又は
(h)生体触媒を分離前に凝集するステップ
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)の生体触媒が固定されていない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリアクリルアミドを人工海水中で溶解させた場合に、ポリアクリルアミド溶液の粘度が、室温で60mPas超、好ましくは65mPas超であり、及び/又は200mPas未満、好ましくは150mPas未満である請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
比沈降面積が、23.6m2h/l以上、より好ましくは29.5m2h/l以上、さらにより好ましくは39.33m2h/l以上、さらにより好ましくは59.0m2h/l以上、最も好ましくは118.0m2h/l以上となるように、分離を実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記生体触媒が、ロドコッカス属(Rhodococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アシドボラックス属(Acidovorax)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、バチルス属(Bacillus)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ブルクホルデリア属(Burkholderia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、モラクセラ属(Moraxella)、パントエア属(Pantoea)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リゾビウム属(Rhizobium)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、セラチア属(Serratia)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードノカルジア属(Pseudonocardia)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、エシェリキア属(Escherichia)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、コモモナス属(Comomonas)、及びパイロコッカス属(Pyrococcus)に属する微生物、並びにニトリルヒドラターゼ遺伝子を導入して形質転換させた微生物細胞からなる群から選択されるものである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体触媒が、ロドコッカス属、シュードモナス属、エシェリキア属及びゲオバチルス属からなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物が、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス・ピリジノボランス(Rhodococcus pyridinovorans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アシドボラックス・アベニー(Acidovorax avenae)、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・パリダス(Bacillus pallidus)、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)、バチルスBR449種(Bacillus sp BR449)、ブラディリゾビウム・オリゴトロフィクム(Bradyrhizobium oligotrophicum)、ブラディリゾビウム・ジアゾエフィシエンス(Bradyrhizobium diazoefficiens)、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、ブルクホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)、ブルクホルデリア・グラディオリ(Burkholderia gladioli)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)、クレブシエラ・バリコーラ(Klebsiella variicola)、メソリゾビウム・シセリ(Mesorhizobium ciceri)、メソリゾビウム・オポチュニスタム(Mesorhizobium opportunistum)、メソリゾビウムF28種(Mesorhizobium sp F28)、モラクセラ属(Moraxella)、パントエア・エンドフィチカ(Pantoea endophytica)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、リゾビウム属(Rhizobium)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、セラチア・リクファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、ブレビバクテリウムCH1種(Brevibacterium sp CH1)、ブレビバクテリウムCH2種(Brevibacterium sp CH2)、ブレビバクテリウムR312種(Brevibacterium sp R312)、ブレビバクテリウム・インペリアル(Brevibacterium imperiale)、コリネバクテリウム・ニトリロフィルス(Corynebacterium nitrilophilus)、コリネバクテリウム・シュードジフテリチクム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・ホフマニイ(Corynebacterium hoffmanii)、ミクロバクテリウム・インペリアル(Microbacterium imperiale)、ミクロバクテリウム・スメグマティス(Microbacterium smegmatis)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、ノカルジア・グロベルカ(Nocardia globerula)、ノカルジア・ロドクロウス(Nocardia rhodochrous)、シュードノカルジア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophile)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)、カンジダ・グイリエロモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・フラバス(Cryptococcus flavus)、クリプトコッカスUFMG-Y28種(Cryptococcus sp UFMG- Y28)、ダバリオマイセス・ハンセイ(Debaryomyces hanseii)、ゲオトリクム・カンジズム(Geotrichum candidum)、ゲオトリクムJR1種(Geotrichum sp JR1)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリベロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ゲオバチルスRAPc8種(Geobacillus sp. RAPc8)、コモモナス・テストステローニ(Comomonas testosteroni)、パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、及びパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)の種からなる群から選択されたものである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記生体触媒が、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)である、請求項1からに記載の方法。
【請求項10】
前記生体触媒を、アクリルアミド水溶液を調製する前に乾燥させる、請求項1から9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対照溶液と比較して増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造方法、及びかかる方法により得られたポリアクリルアミド溶液に関し、該ポリアクリルアミド溶液は、0.6以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2、さらにより好ましくは0.15以下、さらにより好ましくは0.12以下、さらにより好ましくは0.1以下、さらにより好ましくは0.075以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液の重合により製造される。さらに、本発明は、0.6~0.001の範囲のOD600を有するアクリルアミド溶液、及び増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造のためのかかるアクリルアミド溶液の使用に関する。
【0002】
背景技術
以下の本発明の背景の考察は、読者が本発明を理解することを助けるために提供されただけであり、本発明に対する先行技術を記載又は構成するとは認められない。
【0003】
ポリアクリルアミドは、水処理及び製紙のようなプロセスにおける凝集塊及びシックナーとして広く使用されている。ポリアクリルアミドは、粉末形又は液体形で供給されてよく、液体形は、溶液及びエマルションポリマーとして下位分類される。ポリアクリルアミド及びその誘導体の他の一般的な使用は、表面下適用、例えば油回収の向上である。一次及び二次油回収後に、従来の方法でのさらなる促進がもはや有益ではない場合に、抽出結果を向上させるために油の移動度を増加させる方法が、三次油回収に使用される。これらの方法の1つは、ポリマー、例えばポリアクリルアミドを含有する水溶液の注入であり、さらに貯留層の油の5%~15%を回収できる(K.C. Taylor, J.A. Nasr-El-Din, J. Petr. Sci. Ang. 1998, 19, 265-280, K.C. Taylor, Annual Transactions of the Nordic Rheology Society, Vol. 11, 2003)。
【0004】
ポリアクリルアミドのための原料は、典型的にそのモノマーアクリルアミドである。主に、工業規模でアクリルアミドを製造する2つの異なる方法が存在する:化学合成及び生物学的合成であり、生物学的合成法が、より穏やかな反応条件及び固有のプロセス安全性により、ますます高まっている。より穏やかな反応条件、銅触媒の不在及びニトリルの定量的変換により、高価な下流処理ステップ、例えば蒸留又はイオン交換を生物学的合成において回避することができ、したがって、プラントの設置面積を大幅に減少させたより安価なプラントが得られる。
【0005】
双方の合成法は、出発物質としてアクリロニトリルを使用する。化学合成法は、銅触媒を使用する(米国特許第4048226号(US4048226)、米国特許第3597481号(US3597481))一方で、生物学的合成法は、生体触媒を使用してアクリロニトリルを水和してアクリルアミドを得る。一般に、かかる生体触媒は、酵素ニトリルヒドラターゼ(2013年7月現在のIUBMB命名法:EC 4.2.1.84;CAS番号2391-37-5;例えばNHaseとも言われる)を製造することができる微生物である。ニトリルヒドラターゼを製造する微生物は、環境中に広く分布しており、とりわけ、ロドコッカス属(Rhodococcus)(例えば、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber))、ノカルジア属(Nocardia)(例えば、ノカルジア・トランスバレンシス(Nocardia transvalensis))、シュードノカルジア属(Pseudonocardia)(例えばシュードノカルジア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila))、バチルス属(Bacillus)(例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis))、シュードモナス属(Pseudomonas)(例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis))、パイロコッカス属(Pyrococcus)(例えばパイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi))、コモモナス属(Comomonas)(例えばコモモナス・テストステローニ(Comomonas testosteroni))、及びコリネバクテリウム属(Corynebacterium)(例えばコリネバクテリウム・プロピンクム(Corynebacterium propinquum))の代表種を含む(例えばPrasad, Biotechnology Advances (2010), 28(6): 725-741を参照)。酵素ニトリルヒドラターゼは、特にアクリロニトリルを酵素により変換してアクリロニトリルを水和することによりアクリルアミドを得るその能力により特徴付けられる、鉄又はコバルト依存である(すなわち、その活性中心に配位した鉄又はコバルト原子を有する)(Kobayashi, Nature Biotechnology (1998),16: 733 - 736)。アクリロニトリルをアクリルアミドに変換するための生体触媒として作用する微生物の能力は、基本的に2つのパラメータ(微生物の十分な成長及びニトリルヒドラターゼの生成速度)に依存する。
【0006】
アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド溶液から生体触媒を取り出すための多くの方法が当業者に公知であり、主に、反応溶液から不純物を取り出すために適用されている。一般に、少量の不純物であっても、アクリルアミドモノマーの重合に影響するか、又は完全に重合を妨げうる。国際公開第02/088372号(WO02/088372)は、例えばチューブ型遠心分離機又はアニュラーギャップ型遠心分離機(annular gap centrifuge)を使用して、任意に凝集と組み合わせて、アクリルアミド溶液から生体触媒を分離するための方法及び装置を記載している。生体触媒を水で洗浄して、残留モノマーを取り出し、そして次の生物変換反応に使用する。
【0007】
代わりに、固定化生体触媒が、例えば生体触媒から不純物の溶出を妨げること、生体触媒の反応生成物からの分離を改善すること及び繰り返し使用に対する生体触媒の適用性を改善することを目的とした米国特許第4248968号(US4248968)、国際公開2013188844号(WO2013188844)及び台湾特許第411350号(TW411350)において記載されるように、アクリルアミドの製造のために使用される。
【0008】
アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後に生体触媒を取り出すことは、例えばそれぞれ反応溶液から不純物を取り出すことを目的とした欧州特許第2019146号(EP2019146)及び中国特許第203319905号(CN203319905)において記載されているように、多様な濾過技術により実施されてもよい。
【0009】
しかしながら、欧州特許第2264003号(EP2264003)及び米国特許公開第2011006258号(US2011006258)によって繰り返されているように、アクリルアミド溶液中に生体触媒が存在することも望ましく、ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物細胞がアクリルアミド水溶液を安定化するためにもっぱら添加される。さらに、国際公開第2005/054488号(WO2005/054488)において開示されているように、生体触媒が、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から実質的に取り出されないことも意図されている。前記文献は、むしろ、ポリマー溶液の製造方法を記載しており、モノマーは、細胞材料及び/又は発酵ブロスの成分を含有している。かかるポリマーは、生体触媒又は発酵ブロスのいずれかを取り出す必要のない、さらに特異的に設計された特徴及び特性を有するように思われる。
【0010】
ポリアクリルアミド溶液の製造を記載する種々の方法が当該技術分野において知られているが、三次油回収におけるポリアクリルアミドの使用は、さらなる改良を可能にする。例えば、ポリアクリルアミド水溶液の岩石層注入性は、ポリマー溶液を地面に導入する場合に特に関連している。より正確には、アクリルアミド調製のために生物学的合成法を使用する場合には、岩石間隙と同様の規模のサイズを有する生体触媒の細胞が重合混合物の内部に入るのを避けるべきである。しかしながら、重合後の生体触媒の分離は、経済的に不可能である。
【0011】
要するに、油の移動度をさらに増加させ、かつ貯留層の油からの回収率を高めるために、三次油回収において使用するための改善された特性及び高性能の品質を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための新たな手段及び方法を提供することが当該技術分野において必要である。したがって、本出願の根底にある技術的問題は、この必要性に従うことである。この技術的問題は、以下の特許請求の範囲において示され、明細書において記載され、実施例及び図面において例証された実施形態を提供することにより解決される。
【0012】
発明の概要
本発明は、少なくとも部分的に、アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2、さらにより好ましくは0.15以下、さらにより好ましくは0.12以下、さらにより好ましくは0.1以下、さらにより好ましくは0.075以下、最も好ましくは0.05以下となるように、生体触媒により製造されたアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離し、続いて、アクリルアミド水溶液をポリアクリルアミドに重合する驚くべき発見に基づいて、増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を提供する。特に、該ポリアクリルアミド溶液の粘度は、対照溶液と比較した場合に増加しており、その際対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに同様の方法により製造される。
【0013】
OD600の値は、600nmの波長で測定した液体試料の吸光度又は光学密度を示す。本明細書において記載されるように、水溶液中で、例えばアクリルアミド水溶液中で生体触媒の濃度又は量を決定するための好ましい方法である。したがって、水溶液のOD600が測定され、それによって生体触媒の量又は濃度が決定される。
【0014】
したがって、本発明の方法により製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度は、アクリルアミド水溶液中に残る生体触媒の残量に依存しうる。生物変換反応後に残る生体触媒の量がポリアクリルアミド溶液の粘度値に直接影響を及ぼしうることがこれまでに報告されていなかったため、これは予見できなかった。生体触媒の残量は、アクリルアミド水溶液のOD600を測定することにより決定されうる。
【0015】
0.6以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液は、例えば遅い供給流量で実施されるディスクステップ分離によって達せられてよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、アクリルアミド水溶液からの生体触媒の分離は、遠心分離により実施される。好ましくは、遠心分離は、ディスクスタック分離機により実施される。
【0017】
特定の実施形態において、遠心分離は、600l/h未満、好ましくは500l/h未満、より好ましくは400l/h未満、さらにより好ましくは300l/h未満、さらにより好ましくは200l/h又は100l/h未満の供給流量で実施される。
【0018】
アクリルアミド溶液からの生体触媒の分離は、遅い供給流量での濾過により実施されうる。これは、高粘度を有するポリアクリルアミド溶液をもたらしうる。さらに、得られたポリアクリルアミド溶液のAPI RP 63にしたがった濾過能力が改善されうる。
【0019】
したがって、本発明の他の態様は、対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)600l/h未満の供給流量で実施したディスクスタック分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関し、その際対照溶液は、生体触媒を分離せずに同様の方法で調製される。
【0020】
本発明は、アクリロニトリルをアクリルアミドに生体触媒により変換することにより製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度を増加するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2、さらにより好ましくは0.15以下、さらにより好ましくは0.12以下、さらにより好ましくは0.1以下、さらにより好ましくは0.075以下、最も好ましくは0.05以下となるように、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法にも関している。
【0021】
本明細書において開示されているように、アクリルアミド水溶液から生体触媒を選択的に分離し、アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下になる分離技術を使用して、ポリアクリルアミド溶液の粘度に影響を及ぼしてよい。
【0022】
共に、本発明のデータは、アクリルアミド水溶液からの生体触媒の分離が、対照溶液と比較して増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を得るために、好ましくは0.6以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド溶液をもたらすべきであることを初めて示唆しており、その際粘度値は、人工海水中で室温で≧60mPasである。これは、重合前にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離することが得られたポリアクリルアミド溶液の粘度の増加を導くことが当該技術分野において全く挙げられていなかったために、予期されていなかった。
【0023】
本発明は、アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6~0.001の範囲、例えば0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下であるが、0.025以上、0.01以上、0.005以上又は0.001以上となるようなアクリルアミド水溶液からの生体触媒の分離が、対照溶液と比較した場合に、人工海水中で室温で60mPas以上の増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を導く知見を有する先行技術に起因する。本明細書において言及される場合に、OD600の低い境界(すなわち、0.025以上、0.01以上、0.005以上又は0.001以上)の代わりに又はそれに加えて、アクリルアミド水溶液が固定化生体触媒を含まないことが予想される。
【0024】
種々の分離技術が当該技術分野において公知であるが、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量と得られたポリアクリルアミド溶液の粘度値との直接的な相互関係は、これまでに報告されていなかった。驚くべきことに、本発明者は、少ない残量の生体触媒を有するアクリルアミド溶液が増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液をもたらすことを見出した。さらに、0.6未満のOD600を有するアクリルアミド溶液が増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液をもたらすことが初めて示されている。増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法が要求されており、それというのも、三次油回収におけるポリアクリルアミド溶液の適用が、より深い岩石層からの貯留層油の抽出結果を高めるために重要である、減少した溶解性に伴う高い粘度値を有するポリマー溶液に特に依存するからである。したがって、本出願の発明者は、ポリアクリルアミド溶液の品質を大幅に改善するための方法を確立した。
【0025】
第一の態様において、本発明は、対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関する。
【0026】
本発明は、アクリロニトリルをアクリルアミドに生体触媒により変換することにより調製されたポリアクリルアミド溶液の粘度を増加するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法にも関している。
【0027】
したがって、本発明は、対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、ステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関し、その際対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに同様の方法により製造される。
【0028】
さらに、本発明は、アクリロニトリルをアクリルアミドに生体触媒により変換することによって製造されたポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)19.6m2/hl以上の比沈降面積で実施したディスクスタック分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関する。
【0029】
好ましい実施形態において、ODは、生体触媒を分離した直後に測定される。
【0030】
本発明のある実施形態において、本明細書に記載される方法のいずれかは、さらに、
(d)ポリアクリルアミドを乾燥するステップ、
(e)ポリアクリルアミドを粉砕及び/又は押しつぶすステップ、及び/又は
(f)水溶液にポリアクリルアミドを溶解するステップ
の少なくとも1つを含む。
【0031】
本発明にしたがって、対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに本明細書において記載された方法のいずれかによって製造される。
【0032】
さらに、本発明のポリアクリルアミド溶液の粘度は、好ましくは室温で60mPas超である。好ましい実施形態において、ポリアクリルアミド溶液の粘度は、室温で62mPas超である。さらにより好ましい実施形態において、ポリアクリルアミド溶液の粘度は、室温で65mPas超である。本発明のある実施形態において、ポリアクリルアミドは、人工海水中で溶解される。本発明のある実施形態において、ポリアクリルアミドは、天然の海水中で溶解される。
【0033】
好ましくは、生体触媒の分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後5時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、最も好ましくは30分以内に開始される。より好ましい実施形態において、分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後20分以内に開始される。さらにより好ましい実施形態において、分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後10分以内に開始される。
【0034】
本発明のある実施形態において、生体触媒の分離は、ディスクスタック分離機によって実施される。ある実施形態において、生体触媒の分離は、600l/h未満の供給流量で、500l/h未満の供給流量で、400l/h未満の供給流量で、300l/h未満の供給流量で又は200l/hもしくは100l/h未満の供給流量で、ディスクスタック分離機により実施される。
【0035】
比沈降面積の値は、本発明の記載内容において、特に手段の、例えば本発明の生成物又は組成物、方法又は使用の分離ステップにおいて好ましい。したがって、比沈降面積が、19.67m2h/l以上、好ましくは23.6m2h/l以上、より好ましくは29.5m2h/l以上、さらにより好ましくは39.3m2h/l以上、さらにより好ましくは59.0m2h/l以上、最も好ましくは118.0m2h/l以上であるように生体触媒の分離を実施することが、本発明の手段、方法及び使用の好ましい実施形態である。好ましくは、比沈降面積が19.67m2h/l以上、好ましくは23.6m2h/l以上、より好ましくは29.5m2h/l以上、さらにより好ましくは39.3m2h/l以上、さらにより好ましくは59.0m2h/l以上、又は最も好ましくは118.0m2h/l以上であるように分離を実施する場合に、ポリアクリルアミド溶液の粘度は、対照溶液(かかる分離ステップを実施しない)と比較した場合に増加するであろう。したがって、本発明の方法又は使用の分離ステップは、好ましくは、比沈降面積が、19.67m2h/l以上、好ましくは23.6m2h/l以上、より好ましくは29.5m2h/l以上、さらにより好ましくは39.3m2h/l以上、さらにより好ましくは59.0m2h/l以上、又は最も好ましくは118.0m2h/l以上であるように濾過することにより、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離することを実施する。続いて、比沈降面積の値は、(分離後の)OD600値に関連して設定されうる。したがって、前記で説明されるように、本明細書において挙げられるOD600値は、比沈降面積の値に対応しうる。したがって、OD600値は比沈降面積の値により置き換えられてもよいと予想される。
【0036】
したがって、本発明の他の態様は、対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)600l/h未満、好ましくは500l/h未満、より好ましくは400l/h未満、さらにより好ましくは300l/h未満、さらにより好ましくは200l/h未満もしくは100l/h未満の供給流量で実施したディスクスタック分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関し、その際対照溶液は、生体触媒を分離せずに同様の方法で製造される。
【0037】
本明細書に記載の方法のある実施形態において、生体触媒は、分離前に凝集される。
【0038】
本発明のある実施形態において、生体触媒の分離は、濾過によって実施される。ある実施形態において、濾過方法は、加圧濾過、例えば深層濾過又はケーク形成濾過である。ある実施形態において、濾過方法はプレコート濾過である。ある実施形態において、濾過方法は膜濾過である。
【0039】
ある実施形態において、生体触媒の分離は固定化により実施される。ある実施形態において、固定化技術は表面への共有結合である。ある実施形態において、固定化技術は架橋である。ある実施形態において、固定化技術は膜分離である。ある実施形態において、固定化技術は封入である。
【0040】
ある実施形態において、ステップ(b)における生体触媒の分離後のアクリルアミド水溶液は、0.01以上、0.02以上、0.03以上のOD600を有する。
【0041】
本発明のある実施形態において、生体触媒は、ニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒である。本発明にしたがって、ニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒は、ロドコッカス属(Rhodococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アシドボラックス属(Acidovorax)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、バチルス属(Bacillus)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ブルクホルデリア属(Burkholderia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、モラクセラ属(Moraxella)、パントエア属(Pantoea)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リゾビウム属(Rhizobium)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、セラチア属(Serratia)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードノカルジア属(Pseudonocardia)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、エシェリキア属(Escherichia)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、コモモナス属(Comomonas)、及びパイロコッカス属(Pyrococcus)に属する微生物、並びにニトリルヒドラターゼ遺伝子を導入して形質転換した微生物細胞からなる群から選択されるものである。本発明の好ましい実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス属、シュードモナス属、エシェリキア属、及びゲオバチルス属の細菌から選択される。
【0042】
ある実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である。ある実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)である。ある実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)である。ある実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)である。ある実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス・ピリジノボランス(Rhodococcus pyridinovorans)である。ある実施形態において、生体触媒は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。ある実施形態において、生体触媒は、アシドボラックス・アベニー(Acidovorax avenae)である。ある実施形態において、生体触媒は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)である。ある実施形態において、生体触媒は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)である。ある実施形態において、生体触媒は、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)である。ある実施形態において、生体触媒は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)である。ある実施形態において、生体触媒は、バチルス・パリダス(Bacillus pallidus)である。ある実施形態において、生体触媒は、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)である。ある実施形態において、生体触媒は、バチルスBR449種(Bacillus sp BR449)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブラディリゾビウム・オリゴトロフィクム(Bradyrhizobium oligotrophicum)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブラディリゾビウム・ジアゾエフィシエンス(Bradyrhizobium diazoefficiens)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブルクホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブルクホルデリア・グラディオリ(Burkholderia gladioli)である。ある実施形態において、生体触媒は、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)である。ある実施形態において、生体触媒は、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)である。ある実施形態において、生体触媒は、クレブシエラ・バリコーラ(Klebsiella variicola)である。ある実施形態において、生体触媒は、メソリゾビウム・シセロ(Mesorhizobium cicero)である。ある実施形態において、生体触媒は、メソリゾビウム・オポチュニスタム(Mesorhizobium opportunistum)である。ある実施形態において、生体触媒は、メソリゾビウムF28種(Mesorhizobium sp F28)である。ある実施形態において、生体触媒は、モラクセラ属(Moraxella)である。ある実施形態において、生体触媒は、パントエア・エンドフィチカ(Pantoea endophytica)である。ある実施形態において、生体触媒は、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)である。ある実施形態において、生体触媒は、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)である。ある実施形態において、生体触媒は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である。ある実施形態において、生体触媒は、リゾビウム属(Rhizobium)である。ある実施形態において、生体触媒は、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)である。ある実施形態において、生体触媒は、セラチア・リクファシエンス(Serratia liquefaciens)である。ある実施形態において、生体触媒は、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)である。ある実施形態において、生体触媒は、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)である。ある実施形態において、生体触媒は、アルトロバクター属(Arthrobacter)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブレビバクテリウムCH1種(Brevibacterium sp CH1)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブレビバクテリウムCH2種(Brevibacterium sp CH2)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブレビバクテリウムR312種(Brevibacterium sp R312)である。ある実施形態において、生体触媒は、ブレビバクテリウム・インペリアル(Brevibacterium imperial)である。ある実施形態において、生体触媒は、コリネバクテリウム・ニトリロフィルス(Corynebacterium nitrilophilus)である。ある実施形態において、生体触媒は、コリネバクテリウム・シュードジフテリチクム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)である。ある実施形態において、生体触媒は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)である。ある実施形態において、生体触媒は、コリネバクテリウム・ホフマニイ(Corynebacterium hoffmanii)である。ある実施形態において、生体触媒は、ミクロバクテリウム・インペリアル(Microbacterium imperial)である。ある実施形態において、生体触媒は、ミクロバクテリウム・スメグマティス(Microbacterium smegmatis)である。ある実施形態において、生体触媒は、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)である。ある実施形態において、生体触媒は、ノカルジア・グロベルカ(Nocardia globerula)である。ある実施形態において、生体触媒は、ノカルジア・ロドクロウス(Nocardia rhodochrous)である。ある実施形態において、生体触媒は、シュードノカルジア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophile)である。ある実施形態において、生体触媒は、トリコデルマ属(Trichoderma)である。ある実施形態において、生体触媒は、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)である。ある実施形態において、生体触媒は、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)である。ある実施形態において、生体触媒は、カンジダ・ファマタ(Candida famata)である。ある実施形態において、生体触媒は、カンジダ・グイリエロモンディ(Candida guilliermondii)である。ある実施形態において、生体触媒は、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)である。ある実施形態において、生体触媒は、クリプトコッカス・フラバス(Cryptococcus flavus)である。ある実施形態において、生体触媒は、クリプトコッカスUFMG-Y28種(Cryptococcus sp UFMG- Y28)である。ある実施形態において、生体触媒は、ダバリオマイセス・ハンセイ(Debaryomyces hanseii)である。ある実施形態において、生体触媒は、ゲオトリクム・カンジズム(Geotrichum candidum)である。ある実施形態において、生体触媒は、ゲオトリクムJR1種(Geotrichum sp JR1)である。ある実施形態において、生体触媒は、ハンセニアスポラ種(Hanseniaspora)である。ある実施形態において、生体触媒は、クリベロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)である。ある実施形態において、生体触媒は、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)である。ある実施形態において、生体触媒は、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)である。ある実施形態において、生体触媒は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。ある実施形態において、生体触媒は、ゲオバチルスRAPc8種(Geobacillus sp. RAPc8)である。ある実施形態において、生体触媒は、コモモナス・テストステロン(Comomonas testosterone)である。ある実施形態において、生体触媒は、パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)である。ある実施形態において、生体触媒は、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)である。ある実施形態において、生体触媒は、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)である。
【0043】
本発明の好ましい実施態様において、生体触媒は、ロドコッカス・ロドクロウスである。本発明のある実施態様において、生体触媒は、ロドコッカス・ロドクロウス NCIMB 41164株である。本発明のある実施態様において、生体触媒は、ロドコッカス・ロドクロウス J-1株(受託番号:FERM BP-1478)である。ある実施態様において、生体触媒は、ロドコッカス・ロドクロウス M8株(受託番号:VKPMB-S926)である。本発明のある実施態様において、生体触媒は、ロドコッカス・ロドクロウス N33株である。ある実施態様において、生体触媒は、エシェリキア・コリ MT-10822株(受託番号:FERM BP-5785)である。
【0044】
本発明の他の好ましい一実施態様において、生体触媒は、ロドコッカス・ピリジノボランスである。
【0045】
ある実施形態において、本明細書において使用される生体触媒は、アクリルアミド水溶液を調製する前に乾燥されている。ある実施形態において、乾燥法は凍結乾燥である。ある実施形態において、乾燥法は噴霧乾燥である。ある実施形態において、乾燥法は熱乾燥である。ある実施形態において、乾燥法は空気乾燥である。ある実施形態において、乾燥法は真空乾燥である。ある実施形態において、乾燥法は流動床乾燥である。ある実施形態において、乾燥法は噴霧造粒である。
【0046】
本発明の他の態様は、増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造のための、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド溶液の使用を提供し、その際生体触媒は、重合前にアクリルアミド水溶液から分離される。アクリルアミド水溶液は、実質的に、生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することにより製造される。分離後に、溶液は、好ましくは0.01以上、例えば0.02以上のOD600を有する。ある実施形態において、溶液は、0.01以上のOD600を有する。
【0047】
他の態様において、本発明は、0.6~0.001の範囲のOD600を有するアクリルアミド水溶液、例えば0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するが、0.025以上、0.01以上、0.005以上又は0.001以上のOD600を有するアクリルアミド水溶液に関し、その際アクリルアミド水溶液は、生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換し、そしてアクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から該生体触媒を分離することにより製造される。
【0048】
本発明の他の態様は、本明細書に記載された方法のいずれかにより製造されたポリアクリルアミド溶液を提供する。
【0049】
他の態様において、本発明は、人工海水中で室温で少なくとも60mPasの粘度を有するポリアクリルアミドであり、かつ0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するが、0.025以上、0.01以上、0.005以上又は0.001以上のOD600を有するアクリルアミド水溶液の重合により製造されたポリアクリルアミドを開示しており、その際アクリルアミド水溶液は、生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換し、そしてアクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から該生体触媒を分離することにより製造される。
【0050】
本発明の他の態様は、室温で60mPas超の粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関する。
【0051】
さらに、本発明は、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下となるように、ステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
を含む、アクリルアミド溶液を製造するための方法に関する。
【0052】
さらに、本発明は、前記アクリルアミド溶液から製造したポリアクリルアミド溶液の粘度を増加させるための、0.6以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液の使用に関する。
【0053】
発明の詳細な説明
次の記載は、本発明を理解することにおいて有用であってよい情報を含む。本明細書において提供される情報のいずれかが先行技術であるか、もしくは現在請求されている発明に関連していること、又は具体的もしくは暗に参照されている任意の文献が先行技術であることを認めるものではない。
【0054】
本明細書において使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明記しない限り、複数の言及を含むことに注意すべきである。したがって、例えば、「試薬(a reagent)」に対する言及は、かかる種々の試薬の1つ又は複数を含み、「方法(the method)」に対する言及は、本明細書において記載される方法を改変又は置き換えることができる当業者に公知の同等のステップ及び方法への言及を含む。
【0055】
当業者は、日常的でない実験を使用して、本明細書において記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、又は確認することができるであろう。かかる等価物は、本発明に包含されるものとする。
【0056】
特に指示がない限り、一連の構成要素に先行する「少なくとも」の用語は、一連の全ての構成要素を示すと理解されるべきである。当業者は、日常的でない実験を使用して、本明細書において記載された方法及び使用の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、又は確認することができるであろう。かかる等価物は、本発明に包含されるものとする。
【0057】
いくつかの文献が本明細書により引用されている。本明細書において引用されたそれぞれの文献(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の仕様書、指示書等を含む)は、上記又は下記にかかわらず、参照をもってその全体が本明細書に組み込まれる。参照をもって組み込まれる資料が本明細書と矛盾するか又は相反する限り、本明細書は任意のかかる資料に取って代わる。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によってかかる開示に先立つ権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0058】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他を要求しない限り、「含む(comprise)」の単語並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」のような変形は、記載された整数もしくはステップ(integer or step)又は整数もしくはステップの群の包含を暗に示すが、他のどの整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群の除外を暗に示すものではないと理解される。本明細書において使用される場合に、「含んでいる(comprising)」の用語は、「含有している(containing)」の用語と置き換えることができ、又は時に本明細書において使用される場合に「有する(having)」の用語と置き換えることができる。
【0059】
本明細書において使用される場合に、「~からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲の構成要素において特定されていない任意の構成要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書において使用される場合に、「~から実質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求項の範囲の基本的及び新規の特徴に物質的に影響しない材料又はステップを排除するものではない。本明細書におけるそれぞれの事例において、「含んでいる(comprising)」、「~から実質的になる(consisting essentially of)」及び「~からなる(consisting of)」の用語は、他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。
【0060】
本明細書において使用される、複数の言及された構成要素間の「及び/又は」の接続的用語は、個々の選択肢及び組み合わせた選択肢の双方を包含するものとして理解される。例えば、2つの構成要素が「及び/又は」により接続される場合に、第1の選択肢は、第2の構成要素を有さない第1の構成要素の適用可能性を示す。第2の選択肢は、第1の構成要素を有さない第2の構成要素の適用性を示す。第3の選択肢は、一緒になって第1及び第2の構成要素の適用性を示す。これらの選択肢のいずれか1つは、趣旨の範囲内にあると理解され、したがって、本明細書において使用される「及び/又は」の用語の要求を満たす。前記選択肢の1つより多くの同時適用も、その趣旨に含まれると理解され、したがって、本明細書において使用される「及び/又は」の用語の要求を満たす。
【0061】
本明細書において使用される「約」の用語は、当業者により決定される特定の値について許容可能な誤差範囲内にある値を示し、その値は、その値がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、1標準偏差又は1超の標準偏差の範囲内で、それ自体当該技術分野における実施を意味しうる。「約」の用語は、問題の量又は値が指定された値であるか又はほぼ同じである他の値であることを示すためにも使用される。この語句は、類似の値が本発明による同等の結果又は効果を助長することを意味することを意図している。この文脈において、「約」は、10%まで大きい及び/又は小さい範囲を示していてよい。「約」の言葉は、いくつかの実施形態において、その値の5%まで、例えば2%まで、1%まで、又は0.5%まで大きいか又は小さい値である、ある値の上下の範囲を示す。一実施形態において、「約」は、所与の値の0.1%までの上下の範囲を指す。
【0062】
前述したように、本発明は、アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下であるが、0.025以上、0.01以上、0.005以上又は0.001以上のOD600を有するように、生体触媒により製造されたアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離し、続いて、アクリルアミド水溶液をポリアクリルアミドに重合することを初めて開示しており、それは対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液をもたらし、その際該対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに同様の方法により製造される。
【0063】
当該技術分野において示唆がないが、本発明の発明者は、驚くべきことに、アクリルアミド溶液に残る生体触媒の残量と得られるポリアクリルアミド溶液の粘度との間には直接的な相関があることを見出した。これらの発見は、広範な分離方法が当該技術分野に記載されているが、得られたポリアクリルアミド溶液の粘度に対するアクリルアミド水溶液中の生体触媒の量の直接の影響が以前に報告されていなかったため、予見できなかった。したがって、本明細書において記載される方法は、三次油回収においてさらに適用されうる、増加した粘度及びより高い品質を有するポリアクリルアミド溶液の製造を可能にする。
【0064】
本発明は、特に、対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法を提供する。
【0065】
特に、本発明は、対照溶液と比較した場合に増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下となるようにステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法に関し、その際対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに同様の方法により製造される。
【0066】
ポリアクリルアミド溶液の記載内容において本発明の態様のいずれかにおいて使用される場合の「増加した粘度」又は「粘度の増加」の用語は、対照溶液と比較した場合に該ポリアクリルアミド溶液の著しく高い粘度値を示す。粘度は、一般に、流体の抵抗の測定値であり、流体がより粘性があればあるほど、移動の容易さが低くなる。したがって、本明細書において使用される場合に「増加した粘度」の用語は、ポリアクリルアミド溶液がより濃く、したがって対照溶液と比較した場合に移動が容易でないことを意味する。本発明にしたがって、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度は、対照溶液の粘度値よりも少なくとも10%高い。好ましくは、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度は、対照溶液の粘度値よりも少なくとも15%高い。最も好ましくは、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度は、対照溶液の粘度値よりも少なくとも20%高い。
【0067】
本明細書において記載された方法のいずれかにより製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度を測定する場合に、製造されたポリアクリルアミドを人工海水中に溶解する。ある実施形態において、本明細書において提供される方法のいずれかによって製造されたポリアクリルアミド溶液を天然の海水中に溶解する。本発明にしたがって、ポリアクリルアミド溶液の粘度は、任意の従来の方法により任意の種類の粘度計、例えば毛細管粘度計、回転粘度計、粘性ビーカー、落重粘度計、プロセス粘度計、石英粘度計等を使用して、好ましくは室温(19~26℃)、より好ましくは25℃±1℃で決定される。粘度は、レオメータにより測定されてよい。好ましくは、粘度は、7 1/sのせん断速度で、室温で、DINダブルギャップゲオメトリーを有するレオメータで測定される。
【0068】
「人工海水」の用語は、標準ASTM D1141-98、すなわちNaCl 24.53g/l、MgCl2 5.20g/l、Na2SO4 4.09g/l、CaCl2 1.16g/l、KCl 0.695g/l、NaHCO3 0.201g/l、KBr 0.101g/l、H3BO3 0.027g/l、SrCl2 0.025g/l、NaF 0.003g/lによって製造された溶液を示す。
【0069】
本発明にしたがって、対照溶液は、0.6超のOD600を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド溶液であり、生体触媒を分離せずに同様の方法によって製造される。好ましい実施形態において、対照溶液は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後重合前にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離せずに本発明の方法のいずれかにより製造したアクリルアミド水溶液である。したがって、対照溶液は、一般的に、分離ステップ(b)を実施せずに本発明の方法により製造される。
【0070】
本発明のポリアクリルアミド溶液の粘度は、実質的に室温で60mPas超である。好ましくは、本発明の方法により製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度は、室温で62mPas超である。最も好ましくは、本発明の方法により製造されたポリアクリルアミド溶液の粘度は、室温で65mPas超である。
【0071】
本明細書において記載したアクリルアミド水溶液のOD600の測定において、以下の好ましい基準値を使用してよい:水中又は脱イオン水中でのアクリルアミドの飽和溶液のOD600。代わりに、基準値は、水溶液、例えば生体触媒を含むアクリルアミド水溶液を濾過した後に測定したものであってよく、フィルターの孔サイズは0.1μmであってよい。例えば、濾過は、0.4μmの孔を有するフィルター、続いて0.2μmの孔を有するフィルター、そして続けて0.1μmの孔を有するフィルターで実施してよい。0.2μm又は0.1μmの孔サイズで、生体触媒の細胞も細胞デブリもフィルターを通過せず、したがって、濾過物は実質的に使用された生体触媒を有さないと考えられる。したがって、本明細書において水溶液のOD600が測定される場合には必ず、前記基準値は、好ましくは、本発明の手段、方法及び使用の記載内容において記載されるOD600値に関して使用される。生体触媒のOD600を測定する記載内容において、生体触媒は、生きている細胞、死んでいる細胞、及び/又は細胞デブリ、例えば細胞壁、細胞膜、及びオルガネラを含む。したがって、生体触媒を含む水溶液のOD600を本明細書において測定する場合に、測定は、生体触媒の生きている細胞、死んでいる細胞、細胞デブリ等を含む。OD600は、例えば、測光法、例えばUV/VIS分光法により測定されてよい。
【0072】
したがって、本発明は、室温で60mPas超の粘度を有するポリアクリルアミド溶液を製造するための方法であって、
(a)生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、ステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)において得られたアクリルアミド水溶液を重合してポリアクリルアミドにするステップ
を含む方法も提供する。
【0073】
好ましくは、生体触媒は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から分離される。
【0074】
本発明の記載内容において使用される場合に「変換する」又は「変換」の用語は、生体触媒を使用して水溶液中でアクリロニトリル試薬をアクリルアミド生成物に全体的に又は部分的に反応させることを示す。より正確には、「変換」又は「変換する」は、アクリロニトリルが、水溶液中で生体触媒の使用により水和反応をうけて、所望の濃度を有するアクリルアミド反応溶液を得ることができることを意味する。本発明にしたがって、この水和反応は、任意の従来の方法で実施されてよい。アクリロニトリルの濃度は、特に制限されないが、但し、所望の濃度のアクリルアミド反応溶液を得る濃度である。アクリロニトリルの濃度の上限は特に制限されないが、過剰なアクリロニトリルの供給は、反応の完了のために多い触媒量、過剰な容量を有する反応器、及び熱除去のための過剰な熱交換器を要求し、その結果、装置面で経済的負担が重くなる。アクリロニトリルの場合に、反応器中で(a)の反応溶液中のアクリルアミドの理論的な製造された溶液濃度が、全てのアクリロニトリルが対応するアクリルアミドになる場合に42~80%(w/w)になる量でアクリロニトリルを供給することが好まれる。より詳述すれば、水性媒体1質量部に対して0.4~1.5質量部の量でアクリロニトリルを供給することが好まれる。
【0075】
本発明の方法のいずれか1つの記載内容において、アクリロニトリルを、反応器に、水を添加する前に、水の添加後に、又は水と一緒に添加してよい。本明細書において記載される方法のいずれか1つにしたがって、アクリロニトリルを、連続して又は断続して添加してよい。アクリロニトリルの添加は、一定のもしくは変動する供給速度で又はバッチワイズであってよい。さらに、本明細書において記載及び提供される方法のいずれか1つにおいて、ステップ(a)において反応器に水を添加する。水は、それ自体で添加されるか、本明細書に記載される生体触媒の一部であるか、本明細書に記載されるアクリロニトリル溶液の一部であるか、又は別の方法で添加されてよい。微生物触媒は、任意の量で使用されてよいが、但し、所望の濃度のアクリルアミド反応溶液(I)が得られる量であり、それらの量は、反応条件、触媒のタイプ及びそれらの形にしたがって適切に決定される。しかしながら、微生物触媒の量は、水性媒体に対して、乾燥細菌細胞の質量に関して、通常10~50000質量ppm、好ましくは50~30000質量ppmの範囲である。
【0076】
水和反応の反応時間は特に制限されないが、但し、所望の濃度のアクリルアミド反応溶液を得る濃度である。反応時間は、使用した触媒の量及び温度のような条件に依存するが、特に、1つの反応器に対して、通常1~80時間、好ましくは2~40時間の範囲である。水和反応は、通常大気圧で実施されるが、水性媒体中でのアクリルニトリルの溶解性を高めるために圧力下で実施されてよい。反応温度は、特に制限されないが、但し、水性媒体の氷点より低くあってはならない。しかしながら、通常0~50℃、好ましくは10~40℃の温度で反応を実施することが望ましい。水和反応における水性媒体のpH値は特に制限されず、任意の値であってよいが、但し、ニトリルヒドラターゼの活性が維持されるpH値である。しかしながら、水性媒体のpH値は、好ましくは6~10、より好ましくは7~9の範囲であることが望ましい。水和反応は、任意のバッチプロセス及び連続プロセスによって実施されてよく、かつ反応系、例えば懸濁床、固定床、流動床等からその反応系を選択することによって、又は触媒の形にしたがって種々の反応系を組み合わせることによって実施されてよい。
【0077】
かかる水和反応によって、ステップ(a)のアクリルアミド反応溶液が得られる。この反応溶液において、アクリルアミド、水性媒体、溶解させた微生物触媒が含まれ、さらに固形物質、例えばキャリヤー上で固定された微生物触媒及び死んでいる細菌細胞が時に含まれる。ステップ(a)において得られるアクリルアミドの濃度は、通常42~80%(w/w)の範囲である。反応溶液又は水溶液中のアクリルアミドの濃度は、従来の方法、例えば高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー又は屈折計を使用する方法により測定されてよい。当業者は、実務者が生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を製造することが可能である多数の方法及び条件を十分に認識している。
【0078】
本発明の開示にしたがって、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後に、生体触媒は、アクリルアミド水溶液から実質的に分離される。「分離される」の用語は、アクリルアミド水溶液から生体触媒及び/又はその構成成分の完全な分離を必ずしも示さない。したがって、アクリルアミド水溶液は、分離後に生体触媒の残りの部分を含みうる。ある実施形態において、生体触媒及び/又はその構成成分は部分的に取り出される。ある実施形態において、生体触媒及び/又はその構成成分は完全に取り出される。本発明の記載内容において、「分離する」の用語は、0.6以下の、好ましくは0.5以下の、より好ましくは0.4以下の、さらにより好ましくは0.3以下の、さらにより好ましくは0.2以下の、さらにより好ましくは0.1以下の、最も好ましくは0.05以下のアクリルアミド水溶液のOD600をもたらすように、生体触媒により製造したアクリルアミド水溶液から、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換するために使用した生体触媒を完全に又は部分的に取り出すとも理解されうる。本明細書において開示される実施形態のいずれかにおいて、「分離する」又は「分離」の言葉は、「放出する」又は「放出」の言葉によって同様に置き換えられる。本発明にしたがって、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して好ましくは80%(w/w)以上の生体触媒が、かかる分離で取り出される。より好ましくは、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して90%(w/w)以上の生体触媒が、かかる分離で取り出される。さらにより好ましくは、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して95%(w/w)以上の生体触媒が、かかる分離で取り出される。最も好ましくは、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して99%(w/w)以上の生体触媒が、かかる分離で取り出される。したがって、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量は、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して20%(w/w)以下であり、かかる分離で取り出される。好ましくは、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量は、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して10%(w/w)以下である。より好ましくは、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量は、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して5%(w/w)以下である。最も好ましくは、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量は、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して2%(w/w)以下、好ましくは1%(w/w)未満、より好ましくは0.5%(w/w)未満である。本発明にしたがって、ある実施形態において、生体触媒の残量は、反応の完了時にアクリルアミド水溶液中に存在する生体触媒に対して0.5%(w/w)超である。
【0079】
本明細書において前記したように、本発明にしたがって、重合前のアクリルアミド水溶液中の生体触媒の量は、他の本明細書において記載した分離技術のいずれかによって該生体触媒の分離後に著しく減少される。したがって、さらなる態様において、本発明は、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の全質量に対して20%(w/w)以下、好ましくは10(w/w)未満の生体触媒の残量まで、生体触媒により製造したアクリルアミド水溶液中の生体触媒の量を低減するための方法も提供し、その際、該方法は、重合前にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離することを含み、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の全質量に対して20%(w/w)以下、好ましくは10(w/w)未満の生体触媒の残量を有するアクリルアミド水溶液から製造されたポリアクリルアミド水溶液は、対照溶液と比較して増加した粘度を有する。
【0080】
本明細書において記載及び提供される方法のいずれか1つにおいて、生体触媒の分離は、生体触媒を使用したアクリルニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後に開始される。本明細書において使用される場合に、「完了後」の用語は、本発明にしたがった水溶液中の所望のアクリルアミド濃度に達した時点と理解されうる。「完了後」の用語は、反応混合物に供給されたアクリロニトリルの全量の99.99%が変換された時点を示しうる。言い換えれば、「完了後」の用語は、反応混合物に供給されたアクリロニトリルの全量が、残りのアクリロニトリル濃度が100ppm以下であるように変換された時点を示してよく、その際ppmは、アクリルアミド水溶液の全質量に対する質量部を示す。分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後直ちに、又は特定の時間間隔内で開始されうる。本発明の好ましい実施形態において、分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後5時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、最も好ましくは30分以内に開始される。より好ましい実施形態において、分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後20分以内に開始される。最も好ましい実施形態において、分離は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後10分以内に開始される。
【0081】
分離性能を、600nmでの光学密度(OD600)として測定したアクリルアミド水溶液中の残りのバイオマスにより特定した。OD600測定を、Shimadzu Europe UV-1650PCダブルビーム分光計を使用して実施し、試料を、対照溶液に対して1cmの光路長のセミマイクロPSキュベット中で測定した。脱塩水を基準試料として使用した。結果を、表1及び表2において示し、低い供給流量は、小さいOD600値をもたらすことを示し、アクリルアミド水溶液中で少量の残っている生体触媒を示す。
【0082】
本発明にしたがって、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有する水性アクリルアミドは、増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造のために使用されてよく、その際生体触媒は、重合前にアクリルアミド水溶液から分離される。特に、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有する水溶液は、60mPas超の粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造のために使用されてよい。好ましくは、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有する水溶液は、62mPas超の粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造のために使用されてよい。最も好ましくは、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有する水溶液は、65mPas超の粘度を有するポリアクリルアミド溶液の製造のために使用されてよい。本明細書において記載されるポリクリルアミド溶液の製造のために使用される0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液は、実質的に、生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換し、そしてアクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から該生体触媒を分離することにより製造される。本明細書において記載されるように、アクリルアミド水溶液の全質量に関連する生体触媒20%(w/w)以下、好ましくは10%(w/w)未満を含むアクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量は、分離後に、アクリルアミド水溶液の全質量に対して0.015%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)より多い。ある実施形態において、残量は、アクリルアミド水溶液の全量に対して、0.4%(w/w)未満、好ましくは0.1%(w/w)未満、より好ましくは0.05%(w/w)未満、最も好ましくは0.025%未満(w/w)である。本明細書において使用される場合に「残っている量」又は「残量」の用語は、本明細書において記載された分離技術のいずれかによりアクリルアミド水溶液から分離されなかった生体触媒の量を示す。本発明にしたがって、ある実施形態において、本明細書において提供される方法のいずれかにおける(b)の分離ステップは、生体触媒の完全な放出をもたらさず、一部がアクリルアミド水溶液中で残っている。
【0083】
アクリルアミド水溶液からの生体触媒の分離は、参考文献により本明細書において開示及び記載される技術のいずれかにより実施されてよい。好ましくは、生体触媒の分離は、ディスクスタック分離機によって実施されてよい。ディスクスタック分離機を使用して、固体は、極めて強い遠心力を使用して連続プロセスで液体から分離されてよい。この力で、固体は、回転ドラムの内壁に対して高密度に押し固められ、かつ低密度の液相は、相でドラムの中心で収集される。本発明の方法のいずれかにおいて使用されるために適している適切なディスクスタック分離機のモデルは、当業者に公知である。
【0084】
特に、本発明者は、19.67m2h/l以上の比沈降面積を有するアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するためにディスクスタック分離機を使用することにより、得られたポリアクリルアミド溶液の粘度が、分離速度に依存して対照溶液と比較して増加していることを見出している(表1及び2)。本発明の範囲における対照溶液は、本明細書における他の場所で定義されている。特に、19.67m2h/l以上の比沈降面積を有するアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するためにディスクスタック分離機を使用する場合に、それぞれ対照溶液と比較して、得られたポリアクリルアミド溶液の粘度は常に60mPas以上であり、29.5m2h/l以上の比沈降面積では62mPas以上であり、かつ39.3m2h/l以上の比沈降面積では63mPas以上であった(表1及び2)。さらに、本発明は、23.6m2h/l以上の比沈降面積が、3μm及び5μmのフィルター孔の直径で1.3未満のAPI RP 63による「ミリポア濾過率」値(MPFR値)を有するポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性をもたらすことを見出した。さらに、本発明は、29.5m2h/l以上の比沈降面積が、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔の直径で1.3未満のAPI RP 63による「ミリポア濾過率」値(MPFR値)を有するポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性をもたらすことを見出した。さらに、本発明は、39.3m2h/l以上の比沈降面積が、1.2μm、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔の直径で1.3未満のAPI RP 63による「ミリポア濾過率」値(MPFR値)を有するポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性をもたらすことを見出した(表1及び2)。MPFR値は、本明細書の別の場所に記載されているように決定されている。
【0085】
比沈降面積は、500m2h/l未満、400m2h/l未満、300m2h/l未満、200m2h/l未満、又は150m2h/l未満であってよい。
【0086】
200~600l/hの供給流量でアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するためのディスクスタック分離機を使用する場合に、それぞれ対照溶液と比較して、得られたポリアクリルアミド溶液の粘度は60mPas以上であり、200~400l/hの供給流量では62mPas以上であり、かつ200~300l/hの供給流量では63mPas以上であってよい(表1及び2)。さらに、200~500l/hの供給流量が、3μm及び5μmのフィルター孔の直径で1.3未満のAPI RP 63による「ミリポア濾過率」値(MPFR値)を有するポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性をもたらしうる。さらに、200~400l/hの供給流量が、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔の直径で1.3未満のAPI RP 63による「ミリポア濾過率」値(MPFR値)を有するポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性をもたらしうる。さらに、200~300l/hの供給流量が、1.2μm、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔の直径で1.3未満のAPI RP 63による「ミリポア濾過率」値(MPFR値)を有するポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性をもたらしうる(表1及び2)。MPFR値は、本明細書の別の場所に記載されているように決定されている。
【0087】
したがって、本発明の一態様においては、本明細書において記載された方法のいずれかにより得られる、対照溶液と比較して増加した粘度及び良好な濾過性を有するポリアクリルアミド溶液を提供する。特に、アクリルアミド水溶液のOD600が、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下となるように、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換を完了した後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離することは、対照溶液と比較して、得られたポリアクリルアミド溶液に増加した粘度及びAPI RP 63にしたがった良好な濾過性をもたらしうる。濾過性は、定義した孔直径を有するフィルター膜を溶液が通過する能力である。本明細書において使用される場合に「良好な濾過性」の用語は、対照溶液と比較して定義された孔直径を有するフィルター膜を容易に通過しうる溶液を示す。API RP 63は、「Recommended Practices for Evaluation of Polymers Used in Enhanced Oil Recovery Operations(高められた油回収操作において使用されるポリマーの評価のための推奨法)」を示す。濾過性は、本明細書において別の場所に記載されるMPFR(ミリポア濾過率)値として測定される。ある実施形態において、本発明のポリアクリルアミド溶液の濾過性は、1.2μm、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔直径で1.3未満である。好ましい実施形態において、本発明のポリアクリルアミド溶液の濾過性は、1.2μm、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔直径で1.2未満である。
【0088】
したがって、分離条件は、得られたポリアクリルアミド溶液の良好な濾過性及び増加した粘度に反映される残りの生体触媒の残量に直接影響する。それにより、アクリルアミド溶液からバイオマスをより多く放出するために、よりゆっくりとした供給流量が好ましい。さらに、驚くべきことに、分離後のアクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量は、直接定義され、得られたポリアクリルアミド溶液の粘度に影響し、より多くの生体触媒が分離された場合に、得られるポリアミド溶液の粘度がより高くなることが見出されている。したがって、本発明にしたがって、ディスクスタック分離機を使用する場合の好ましい供給流量は600l/h未満である。500l/h未満の供給流量がより好ましい。400l/h未満の分離機流量がさらにより好ましい。300l/h未満の分離機流量がさらにより好ましい。200l/h未満又は100l/h以下の分離機流量が最も好ましい。分離後のOD600は、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下である。
【0089】
等価沈降面積又は等価清澄表面(equivalent clarification surface)は、遠心分離を説明するパラメータである。等価沈降面積は例えば11800m2であってよい。
【0090】
「比沈降面積」の用語は、分離プロセスを説明するパラメータである。比沈降面積は、ディスクスタック遠心分離機の等価沈降面積を供給流量で割ったものとして定義される。パラメータは、分離プロセスを説明するために特に有用である。
【0091】
好ましくは、OD600は、アクリルアミド水溶液から生体触媒を分離した直後に測定される。これは、OD600値が、生体触媒の分離により達成され、他の測定、例えばアクリルアミド水溶液の希釈では達せられないことを意味する。
【0092】
本発明の他の実施形態において、アクリルアミド水溶液からの生体触媒の分離は、濾過によって実施されてよい。適した濾過方法は、先行技術において、例えば欧州特許第2019146号(EP2019146)及び中国特許第203319905号(CN203319905)において記載されている。本発明による好ましい濾過方法は、加圧濾過、プレコート濾過、及び膜濾過からなる群から選択される。加圧濾過のために、好ましくは層フィルター及びモジュールフィルターが使用され、その際バイオマスは、セルロースから形成されたフィルターケーク中に残る一方で、アクリルアミド生成物を有する液相は、この層を通過できる。プレコート濾過を使用する場合には、カートリッジフィルターがしばしば適用され、その際フィルター補助の層(例えばセルロース)が、反応懸濁液の実際の濾過前に蓄積される。かかる条件下で、生体触媒は、一部がプレコート層上に、一部がプレコート層内に残る。クロスフローフィルムを使用する他の濾過方法は、国際公開第2004089518号(WO2004089518)において詳細に記載されており、本発明による方法のいずれかにおいて良好に適用されてよい。濾過性能の結果は、例えば本明細書において記載される反応混合物のODを測定することにより、アクリルアミド水溶液中の生体触媒の残量を決定することによって測定されてよい。
【0093】
本発明の特定の実施形態において、生体触媒は、分離前に凝集される。本発明の範囲内で、凝集は、水溶液の懸濁した又はコロイド状の不純物、例えば本明細書において開示される生体触媒を凝固させて、沈殿法又は濾過により水から良好に分離させ、取り除くことを意味する。ある実施形態において、凝集は、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する反応器中で実施されてよい。好ましくは、凝集は、分離凝集タンクで実施される。本発明にしたがって、凝集は、当業者に公知の凝集剤のいずれかを使用して実施されてよい。好ましくは、本明細書において使用される凝集剤は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化ポリアルミニウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、高分子電解質及び/又はアニオン性ポリマー、例えば国際公開第02/088372号(WO02/088372)及び独国特許第19828467号(DE19828467)において記載されるPraestol(登録商標)2510又はPraestol(登録商標)であってよい。好ましくは、凝集は、pH6.8~8.0で実施される。より好ましくは、凝集は、pH7.0~7.5で実施される。
【0094】
本発明の他の実施形態にしたがって、生体触媒の分離は、固定化により実施される。固定化は、本明細書において使用される生体触媒を、触媒活性のシフトを導く、ゲル粒子、カプセル又は境界のある反応空間で空間的に固定することを意味する。固定化生体触媒は、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後の固定化生体触媒の容易な単離、精製及び再生の利点を有する、アクリルアミドの製造のために長いプロセスで使用される。慣例的に使用される固定化技術は、表面への共有結合、架橋、膜分離、及び取り込みを含み、本発明において記載される態様のいずれかに全て適用されてよい。一例として、生体触媒は、ポリアクリルアミドゲル、アルギネート、カラゲナン又はイオン交換樹脂上で固定化されてよい。本発明の特定の実施形態において、本発明の固定化生体触媒は、開口している多孔質の高親水性ポリマーの内部に実質的に不可逆的に保持されており、国際公開第2013188844号(WO2013188844)において記載される代謝性生物変換反応中の微生物の代謝活性からのデブリ発生が本質的に存在しない。米国特許第4248968号(US4248968)において開示されたニトリルヒドラターゼ活性を有する固定化生体触媒で満たしたカラムも、本発明によって使用されてよい。要するに、本発明の生体触媒の固定化は、当業者に公知の任意の慣用的な方法で実施されてよい。
【0095】
別法として、ステップa)の生体触媒は固定化されない。
【0096】
他の実施形態において、ステップa)の生体触媒は固定化されず、分離ステップb)の前の他のステップにおいても固定化されない。
【0097】
アクリルアミド水溶液から固体物質、例えば生体触媒を取り出すために、他の技術、例えば遠心分離及び膜分離が、本発明の趣旨の範囲内でもある先行技術、例えば国際公開第02/088372号において記載されている。本発明の方法又は使用のいずれかにおいて使用される好ましい遠心分離は、自己排出型遠心分離機及びアニュラーギャップ型遠心分離機である。
【0098】
アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離した後に、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下であるが、0.025以上、0.01以上、0.005以上、又は0.001以上のOD600を有するアクリルアミド水溶液を重合して、ポリアクリルアミドにする。得られたポリアクリルアミドは、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下であるが、0.025以上、0.01以上、0.005以上、又は0.001以上のOD600を有するアクリルアミド水溶液の重合により製造された場合に、室温で人工海水中で少なくとも60mPasの粘度を有する。本明細書において使用される「重合」又は「重合される」の用語は、化学反応でモノマー分子を一緒に反応させ、ポリマー鎖又は三次元ネットワークを形成するプロセスを示す。本発明の記載内容において、「重合」又は「重合される」の用語は、本明細書において記載される方法のいずれかによって得られるアクリルアミド水溶液が、そのホモポリマー又はコポリマーに変換されることを意味する。これに関して、ホモポリマーの場合に「重合」の用語は、単独重合反応を示し、コポリマーの場合に「重合」の用語は、共重合反応を示す。単独重合及び共重合は、本明細書に記載の方法のいずれかにより得ることができるか又は得られた水溶液を使用して実施されうる。本発明にしたがって、一例として、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらにより好ましくは0.3以下、さらにより好ましくは0.2以下、さらにより好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下であるが、0.025以上、0.01以上、0.005以上、又は0.001以上のOD600を有するアクリルアミド水溶液の重合は、実施例において本明細書で詳細に記載されているように実施されてよい。得られたポリアクリルアミドは、さらに乾燥され、粉砕及び/又は押しつぶされて、ポリアクリルアミドにされ、及び/又は実施例において記載した水溶液中で溶解されて、本発明のポリアクリルアミド水溶液が得られてよい。アクリルアミド水溶液から得られたポリアミドを乾燥、粉砕及び/又は押しつぶすための他の方法は、当業者に公知である。得られたポリアクリルアミドの粉末状ポリアクリルアミドは、任意の適した水溶液中で溶解されうる。好ましくは、本発明のポリアクリルアミドは、続いて人工又は天然の海水中で溶解される。
【0099】
したがって、ある実施形態において、本明細書において記載及び提供される方法は、さらに、
(d)ポリアクリルアミドを乾燥するステップ、
(e)ポリアクリルアミドを粉砕及び/又は押しつぶすステップ、及び/又は
(f)水溶液にポリアクリルアミドを溶解するステップ
の少なくとも1つを含む。
【0100】
本発明にしたがって、対照溶液と比較して増加した粘度を有するポリアクリルアミド溶液は、本明細書に開示又は記載された方法のいずれかにより製造されてよい。特に、室温で60mPas以上の粘度を有する本発明のポリアクリルアミド溶液が、本明細書に開示又は記載された方法のいずれかにより製造されてよい。
【0101】
ポリアクリルアミド溶液の粘度は、ポリアクリルアミドを人工海水中で4000ppmの濃度で溶解した場合に室温で60mPas超、好ましくは65mPas超であり、ここでppmは、ポリアクリルアミド溶液の全質量に対する質量部を示す。好ましくは、ポリアクリルアミド溶液の粘度は、200mPas未満、好ましくは150mPas未満である。特に、ポリアクリルアミド溶液の粘度は、ポリアクリルアミドを人工海水中で4000ppmの濃度で溶解した場合に室温で200mPas未満、好ましくは150mPas未満である。
【0102】
本明細書において使用される場合に「水溶液」又は「水性媒体」の用語は、緩衝剤、例えばリン酸塩、無機塩、例えば硫酸塩又は炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アミド化合物等を適した濃度で溶解した、本明細書において使用するための水性液体を示す。水溶液又は水性媒体中に、アクリロニトリル及び生体触媒が、生物変換反応を開始するために添加される。生物変換反応の完了後に、得られたアクリルアミドは、なお前記水性液体中に存在する。
【0103】
本明細書の記載内容において使用される場合に「生物変換反応」の用語は、アクリロニトリルを水及び生体触媒の存在下でアクリルアミドに変換させる反応を示す。本明細書において使用される場合に「生体触媒により製造される」の用語は、生物変換反応を実施するアクリルアミド水溶液を製造するために使用される任意の方法を示す。
【0104】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに関して使用されるように、「生体触媒」の用語は、特に、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することができる微生物(例えば細菌又は原生真核生物)及び酵素を含む。アクリロニトリルをアクリルアミドに変換する所与の生体触媒(例えば微生物又は酵素)の能力を決定するための方法は、当業者に周知である。「生体触媒」の用語は、半精製及び精製した酵素調製物を含む全ての細胞又は破砕した細胞又はそれらの一部の形で細胞材料をさらに含んでよく、かつ任意に発酵ブロスを含む。細胞材料は、微生物細胞の構成要素、例えば細胞壁材料、細胞核酸材料(例えばDNA又はRNA)、細胞質又はタンパク質を含む構成要素のいずれかを含みうる。
【0105】
本発明の方法のいずれか1つにしたがって、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換できる生体触媒は、酵素ニトリルヒドラターゼをコードし、ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物でありうる。これに関して、微生物が天然にニトリルヒドラターゼをコードするか、又は遺伝子改質して該酵素をコードさせているか、又は天然にニトリルヒドラターゼをコードする微生物を改質してより多くの及び/又は高められたニトリルヒドラターゼを生成することができるかどうかは、本発明には関係ない。本明細書において使用されるように、一般に、「(酵素)ニトリルヒドラターゼをコードする生体触媒(例えば微生物)」等は、微生物が一般にニトリルヒドラターゼを生成でき、かつ安定して維持できることも意味する。すなわち、本明細書において使用され、当業者により容易に理解されるように、本発明にしたがって使用される(天然又は非天然に)ニトリルヒドラターゼをコードする生体触媒(例えば微生物)は、一般に、ニトリルヒドラターゼを生成でき、かつ安定して維持している。しかしながら、本発明にしたがって、かかる微生物が、単に、本明細書に記載及び提供される方法のいずれか1つのステップ(a)にしたがって反応器に添加される前に、微生物の培養(又は発酵)中にニトリルヒドラターゼを製造する(したがってニトリルヒドラターゼを含んでいる)ことも可能である。そのような場合に、微生物は、もはや本明細書に記載及び提供される方法中にニトリルヒドラターゼを生成しないが、以前に生成され、まだ含まれているニトリルヒドラターゼ単位によってのみ作用することが可能である。当業者に容易に理解されるように、いくつかのニトリルヒドラターゼ分子が(例えば微生物の溶解によって)微生物から去り、生体触媒として溶液中で自由に作用することも可能である。このように、本明細書に記載及び例示されるようにアクリロニトリルをアクリルアミドに変換することができる限りは、本明細書において使用される「生体触媒」の用語は、酵素ニトリルヒドラターゼ自体を包含することも可能である。本発明の記載内容において、生体触媒としてニトリルヒドラターゼを直接使用することも可能である。
【0106】
本発明の記載内容において、本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて生体触媒として使用されうる天然にニトリルヒドラターゼをコードする微生物は、ロドコッカス属(Rhodococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アシドボラックス属(Acidovorax)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、バチルス属(Bacillus)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ブルクホルデリア属(Burkholderia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、モラクセラ属(Moraxella)、パントエア属(Pantoea)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リゾビウム属(Rhizobium)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、セラチア属(Serratia)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードノカルジア属(Pseudonocardia)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、エシェリキア属(Escherichia)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、コモモナス属(Comomonas)、及びパイロコッカス属(Pyrococcus)からなる群から選択される属に属する種を含む。本発明の好ましい実施形態において、生体触媒は、ロドコッカス属、シュードモナス属、エシェリキア属、及びゲオバチルス属の細菌から選択される。
【0107】
本発明の方法のいずれか1つで本記載内容において使用される好ましい生体触媒は、ロドコッカス属の代表種を含む。本発明の方法のいずれか1つで本記載内容において使用される生体触媒として好ましい種は、例えばロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)(例えば、NCIMB 41164又はJ1/FERM-BP 1478、M8(受託番号:VKPMB-S926)、M33)、ロドコッカス・ピリジノボランス(Rhodococcus pyridinovorans)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アシドボラックス・アベニー(Acidovorax avenae)、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・パリダス(Bacillus pallidus)、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)、バチルスBR449種(Bacillus sp BR449)、ブラディリゾビウム・オリゴトロフィクム(Bradyrhizobium oligotrophicum)、ブラディリゾビウム・ジアゾエフィシエンス(Bradyrhizobium diazoefficiens)、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、ブルクホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)、ブルクホルデリア・グラディオリ(Burkholderia gladioli)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)、クレブシエラ・バリコーラ(Klebsiella variicola)、メソリゾビウム・シセリ(Mesorhizobium ciceri)、メソリゾビウム・オポチュニスタム(Mesorhizobium opportunistum)、メソリゾビウムF28種(Mesorhizobium sp F28)、モラクセラ属(Moraxella)、パントエア・エンドフィチカ(Pantoea endophytica)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、リゾビウム属(Rhizobium)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、セラチア・リクファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、ブレビバクテリウムCH1種(Brevibacterium sp CH1)、ブレビバクテリウムCH2種(Brevibacterium sp CH2)、ブレビバクテリウムR312種(Brevibacterium sp R312)、ブレビバクテリウム・インペリアル(Brevibacterium imperiale)、ブレビバクテリウム・カセイ(Brevibacterium casei)、コリネバクテリウム・ニトリロフィルス(Corynebacterium nitrilophilus)、コリネバクテリウム・シュードジフテリチクム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・ホフマニイ(Corynebacterium hoffmanii)、ミクロバクテリウム・インペリアル(Microbacterium imperiale)、ミクロバクテリウム・スメグマティス(Microbacterium smegmatis)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、ノカルジア・グロベルカ(Nocardia globerula)、ノカルジア・ロドクロウス(Nocardia rhodochrous)、ノカルジア163種(Nocardia sp 163)、シュードノカルジア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophile)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)、カンジダ・グイリエロモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・フラバス(Cryptococcus flavus)、クリプトコッカスUFMG-Y28種(Cryptococcus sp UFMG- Y28)、ダバリオマイセス・ハンセイ(Debaryomyces hanseii)、ゲオトリクム・カンジズム(Geotrichum candidum)、ゲオトリクムJR1種(Geotrichum sp JR1)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリベロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、コモモナス・テストステローニ(Comomonas testosteroni)、パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、、エシェリキア・コリMT-10822(Escherichia coli MT-10822)(受託番号:FERM BP-5785)、ゲオバチルスRAPc8種(Geobacillus sp. RAPc8)、又はパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)を含みうる。前記微生物は、所与の微生物種に適した任意の方法により培養されてよい。本発明の方法の好ましい実施態様にしたがって、使用される生体触媒は、ロドコッカス・ロドクロウス種に属する。本発明の方法のいずれか1つで本記載内容において使用されてよいロドコッカス・ロドクロウスに属する株について特定の例は、NCIMB 41164、J1(FERM-BP 1478)、M8(受託番号:VKPMB-S926)、及びM33を含む。ロドコッカス・ロドクロウスの代わりに又はロドコッカス・ロドクロウスに加えて、本明細書において記載される方法のいずれか1つにおいて使用される生体触媒は、ロドコッカス・ピリジノボランスであってよい。代わりに又は加えて、生体触媒は、エシェリキア・コリMT-10822(受託番号:FERM BP-5785)であってよい。
【0108】
本発明にしたがって、これらの微生物の組合せがさらに使用されてよい。さらに、前記微生物は、所与の微生物種に適した任意の方法により培養されてよい。微生物から生成される本発明の微生物生体触媒は、微生物を培養することにより得られる培養液、収穫プロセス等により得られる細胞、超音波処理等により破壊された細胞、又は粗製酵素を含む細胞破壊後に調製されたもの、部分精製した酵素もしくは精製した酵素を示す。微生物触媒を使用するため方法は、酵素安定性、製造スケール等に依存して適宜選択されてよい。
【0109】
本発明のある実施形態において、本明細書において記載されるようにアクリロニトリルをアクリルアミドに変換するために使用される生体触媒は、前記反応において使用する前に洗浄されうる。ある実施形態において、生体触媒は、水、緩衝液等で一度洗浄し、そして反応前にアクリル酸で洗浄されうる。ある実施形態において、本明細書において使用される生体触媒は、欧州特許第1380652号(EP1380652)において詳細に記載されるように反応前にアクリル酸で洗浄される。ある実施形態において、生体触媒は、反応直前にアクリル酸で洗浄されうる。さらに、任意の洗浄方法を実施してよい。本発明にしたがって適用されてよいかかる方法の例は、繰り返しの洗浄及び遠心分離を包含する方法、及び中空繊維膜を使用する洗浄方法を含む。さらに、固定化生体触媒は、洗浄及び上清の除去において固定化触媒の撹拌及び沈降を繰り返すことにより洗浄されてよい。任意の洗浄方法及び洗浄の任意の数は、洗浄効率、酵素安定性等を考慮して適宜設定されうる。洗浄のために使用されるアクリル酸の濃度は、好ましくは、アクリル水溶液中で0.01質量%~10質量%である。より好ましくは、前記濃度は、0.05質量%~1質量%であり、0.1質量%が最も好ましい。
【0110】
本発明の記載内容において、天然にニトリルヒドラターゼをコードしないニトリルヒドラターゼをコードする微生物は、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子を天然に含まないが、ニトリルヒドラターゼをコードするポリヌクレオチドを含むように(例えば、形質転換、トランスダクション、トランスフェクション、接合、又は当業者に公知の細胞にポリヌクレオチドを導入もしくは挿入するために適した他の方法によって;Sambrook and Russell 2001、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、CSH Press、Cold Spring Harbor、NY、USAを参照)操作された、遺伝子操作した微生物であってよく、したがって、微生物がニトリルヒドラターゼ酵素を生成し、安定して維持することを可能にしてよい。この目的のために、さらに、それぞれニトリルヒドラターゼ遺伝子又はmRNAの転写及び翻訳を可能にするために必要であってよい追加のポリヌクレオチドを挿入することが要求されうる。かかる追加のポリヌクレオチドは、とりわけ、プロモータ配列、ポリTもしくはポリU末端、又は複製開始点、又は他のプラスミド制御配列を含みうる。本記載内容において、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子を天然に含まないが、ニトリルヒドラターゼをコードするポリヌクレオチドを含むように操作されている、かかる遺伝子操作した微生物は、原核微生物又は真核微生物であってよい。かかる原核微生物に関する例は、例えばエシェリキア・コリ種の代表種を含む。かかる真核微生物に関する例は、例えば酵母(例えばサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))を含む。
【0111】
本発明の記載内容において、「ニトリルヒドラターゼ」(本明細書においてNHaseとも言われる)の用語は、一般に、アクリロニトリルのアクリルアミドへの変換(すなわち水和)を触媒作用できる酵素を意味する。かかる酵素は、例えば2014年4月1日にEC 4.2.1.84;CAS-No.2391-37-5としてIUBMB命名法で登録されている酵素であってよい。しかしながら、本明細書において使用される「ニトリルヒドラターゼ」の用語は、例えば、より速くアクリロニトリルをアクリルアミドに変換できるか、又はより高い収率/時間比で生成されることができるか、又はアクリロニトリルをアクリルアミドに触媒により変換(すなわち水和)できる限りはより安定している、改質した又は高められた酵素も包含する。アクリロニトリルをアクリルアミドに酵素により変換するための所与の生体触媒(例えば微生物又は酵素)の能力を決定するための方法は、当業者に公知である。一例として、本発明の記載内容において、本発明の意味で所与の生体触媒のニトリルヒドラターゼとして作用する能力は、以下のように決定されうる:100μlの細胞懸濁液、細胞溶解物、溶解させた酵素粉末又はニトリルヒドラターゼと思われるものを含む任意の他の調製物と、50mMリン酸カリウム緩衝液875μl及びアクリロニトリル25μlとを、25℃でエッペンドルフ管撹拌機上で1000rpmで10分間最初に反応させる。反応時間の10分後に、試料を抜き取り、直ちに同体積の1.4%塩酸を添加することにより急冷してよい。試料の混合後に、細胞を、1分間10000rpmで遠心分離することにより取り出してよく、そして形成されたアクリルアミドの量を、澄明な上清をHPLCにより分析することにより決定する。本発明の記載内容におけるニトリルヒドラターゼであるべき酵素の確認のために、アクリルアミドの濃度は、0.25~1.25mmol/lであるべきであり、必要に応じて、試料を希釈し、変換を繰り返す。そして酵素活性は、HPLC分析に由来するアクリルアミド濃度を10分間とした反応時間で割り、この値にHPLC試料と元の試料との希釈係数を掛けることにより、アクリルアミドの濃度から推測されうる。5U/mg(乾燥細胞質量)超、好ましくは25U/mg(乾燥細胞質量)超、より好ましくは50U/mg(乾燥細胞質量)超、最も好ましくは100U/mg(乾燥細胞質量)超の活性は、機能性生体触媒の存在を示し、本発明の記載内容におけるアクリロニトリルをアクリルアミドに変換できる生体触媒と考えられる。
【0112】
本発明の記載内容において、ニトリルヒドラターゼは、配列番号1(ロドコッカス・ロドクロウスのニトリルヒドラターゼのアルファ-サブユニット:GTGAGCGAGCACGTCAATAAGTACACGGAGTACGAGGCACGTACCAAGGCGATCGAAACCTTGCTGTACGAGCGAGGGCTCATCACGCCCGCCGCGGTCGACCGAGTCGTTTCGTACTACGAGAACGAGATCGGCCCGATGGGCGGTGCCAAGGTCGTGGCCAAGTCCTGGGTGGACCCTGAGTACCGCAAGTGGCTCGAAGAGGACGCGACGGCCGCGATGGCGTCATTGGGCTATGCCGGTGAGCAGGCACACCAAATTTCGGCGGTCTTCAACGACTCCCAAACGCATCACGTGGTGGTGTGCACTCTGTGTTCGTGCTATCCGTGGCCGGTGCTTGGTCTCCCGCCCGCCTGGTACAAGAGCATGGAGTACCGGTCCCGAGTGGTAGCGGACCCTCGTGGAGTGCTCAAGCGCGATTTCGGTTTCGACATCCCCGATGAGGTGGAGGTCAGGGTTTGGGACAGCAGCTCCGAAATCCGCTACATCGTCATCCCGGAACGGCCGGCCGGCACCGACGGTTGGTCCGAGGAGGAGCTGACGAAGCTGGTGAGCCGGGACTCGATGATCGGTGTCAGTAATGCGCTCACACCGCAGGAAGTGATCGTATGA)のヌクレオチド配列及び/又は配列番号3(ロドコッカス・ロドクロウスのニトリルヒドラターゼのベータ-サブユニット:ATGGATGGTATCCACGACACAGGCGGCATGACCGGATACGGACCGGTCCCCTATCAGAAGGACGAGCCCTTCTTCCACTACGAGTGGGAGGGTCGGACCCTGTCAATTCTGACTTGGATGCATCTCAAGGGCATATCGTGGTGGGACAAGTCGCGGTTCTTCCGGGAGTCGATGGGGAACGAAAACTACGTCAACGAGATTCGCAACTCGTACTACACCCACTGGCTGAGTGCGGCAGAACGTATCCTCGTCGCCGACAAGATCATCACCGAAGAAGAGCGAAAGCACCGTGTGCAAGAGATCCTTGAGGGTCGGTACACGGACAGGAAGCCGTCGCGGAAGTTCGATCCGGCCCAGATCGAGAAGGCGATCGAACGGCTTCACGAGCCCCACTCCCTAGCGCTTCCAGGAGCGGAGCCGAGTTTCTCTCTCGGTGACAAGATCAAAGTGAAGAGTATGAACCCGCTGGGACACACACGGTGCCCGAAATATGTGCGGAACAAGATCGGGGAAATCGTCGCCTACCACGGCTGCCAGATCTATCCCGAGAGCAGCTCCGCCGGCCTCGGCGACGATCCTCGCCCGCTCTACACGGTCGCGTTTTCCGCCCAGGAACTGTGGGGCGACGACGGAAACGGGAAAGACGTAGTGTGCGTCGATCTCTGGGAACCGTACCTGATCTCTGCGTGA)のヌクレオチド配列に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.5%、及び最も好ましくは100%の同一性であるヌクレオチド配列を含むか又は該ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドであってよいが、但し、該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、本明細書において記載及び例証されるようにアクリロニトリルをアクリルアミドに触媒により水和できる(すなわち、ニトリルヒドラターゼ活性を有する)。また、本発明の記載内容において、ニトリルヒドラターゼは、配列番号2(ロドコッカス・ロドクロウスのニトリルヒドラターゼのアルファ-サブユニット:VSEHVNKYTE YEARTKAIET LLYERGLITP AAVDRVVSYY ENEIGPMGGA KVVAKSWVDP EYRKWLEEDA TAAMASLGYA GEQAHQISAV FNDSQTHHVV VCTLCSCYPW PVLGLPPAWY KSMEYRSRVV ADPRGVLKRD FGFDIPDEVE VRVWDSSSEI RYIVIPERPA GTDGWSEEEL TKLVSRDSMI GVSNALTPQE VIV)のアミノ酸配列及び/又は配列番号4(ロドコッカス・ロドクロウスのニトリルヒドラターゼのベータ-サブユニット:MDGIHDTGGM TGYGPVPYQK DEPFFHYEWE GRTLSILTWM HLKGISWWDK SRFFRESMGN ENYVNEIRNSY YTHWLSAAE RILVADKIIT EEERKHRVQE ILEGRYTDRK PSRKFDPAQI EKAIERLHEP HSLALPGAEP SFSLGDKIKV KSMNPLGHTR CPKYVRNKIG EIVAYHGCQI YPESSSAGLG DDPRPLYTVA FSAQELWGDD GNGKDVVCVD LWEPYLISA)のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.5%、及び最も好ましくは100%の同一性であるアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなるポリペプチドであってよいが、但し、該ポリペプチドは、本明細書において記載及び例証されるようにアクリロニトリルをアクリルアミドに触媒により水和できる。
【0113】
2つ以上の配列(例えば核酸配列又はアミノ酸配列)間の同一性のレベルは、当業者に公知の方法によって、例えばBLAST分析によって容易に決定されてよい。一般に、本発明の記載内容において、例えば配列比較により比較されるべき2つの配列(例えばポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列)の同一性が異なる場合に、「同一性」の用語は、より短い配列及び該短い配列に一致するより長い配列の一部を示しうる。したがって、比較される配列が同一の長さではない場合に、同一性の程度は、好ましくは、より長い配列におけるヌクレオチド残基と同一であるより短い配列におけるヌクレオチド残基のパーセンテージ、又はより短い配列におけるヌクレオチド配列と同一であるより長い配列におけるヌクレオチドのパーセンテージを示しうる。本記載内容において、当業者は、より短い配列に一致するより長い配列の一部を決定する地位に容易にある。さらに、本明細書において使用されるように、核酸配列又はアミノ酸配列の同一性レベルは、それぞれの配列の全長を指していてよく、好ましくは対で評価され、それぞれのギャップは1つのミスマッチとして計数される。配列比較のためのこれらの定義(例えば「同一性」の値の確立)は、本明細書において記載及び開示される全ての配列に適用される。
【0114】
さらに、本明細書において使用される「同一性」の用語は、対応する配列間の機能的及び/又は構造的な等価があることを意味する。本明細書に記載される特定の核酸/アミノ酸配列に対して所与の同一性のレベルを有する核酸/アミノ酸配列は、好ましくは同一の生物学的機能を有するこれらの配列の誘導体/多様体を示しうる。それらは、天然に生じる多様体、例えば他の多様体、種等からの配列であるか又は変異体であってよく、変異体は、天然に形成されるか、又は計画的変異誘発により生成されていてよい。さらに、多様体は、合成して生成された配列であってよい。多様体は、天然に生じる多様体、又は合成して生成した多様体、又は組換えDNA技術により生成した多様体であってよい。前記核酸配列からの偏差は、例えば欠失、置換、付加、挿入及び/又は組換えによって生成されてよい。「付加」の用語は、少なくとも1つの核酸残基/アミノ酸を所与の配列の末端に付加することを示し、一方で「挿入」は、少なくとも1つの核酸残基/アミノ酸を所与の配列内に挿入することを示す。「欠失」の用語は、所与の配列中の少なくとも1つの核酸残基又はアミノ酸残基を欠失又は除去することを示す。「置換」の用語は、所与の配列中の少なくとも1つの核酸残基/アミノ酸残基を置き換えることを示す。さらに、ここで使用されるこれらの定義は、本明細書において提供及び記載される全ての配列について準用する。
【0115】
一般的に、本明細書において使用されているように、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」又は「核酸分子」の用語は、同義と解釈されるべきである。一般に、核酸分子は、とりわけDNA分子、RNA分子、オリゴヌクレオチドチオホスフェート、置換したリボオリゴヌクレオチド又はPNA分子を含みうる。さらに、「核酸分子」の用語は、DNA又はRNA又はそれらのハイブリッド、又は当業者に公知のそれらの任意の修飾を示しうる(例えば修飾の例として米国特許第5525711号(US 5525711)、米国特許第471 1955号(US 471 1955)、米国特許第5792608号(US 5792608)又は欧州特許第302175号(EP 302175)を参照)。ポリヌクレオチド配列は、一本鎖又は二本鎖、直鎖又は環状、天然又は合成であってよく、サイズの制限はない。例えば、ポリヌクレオチド配列は、ゲノムDNA、cDNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、アンチセンスRNA、リボゾームRNA、又はかかるRNAをコードするDNA、又はキメロプラスト(chimeroplasts)(Gamper, Nucleic Acids Research, 2000, 28, 4332 - 4339)であってよい。該ポリヌクレオチド配列は、ベクター、プラスミド又はウィルス性DNAもしくはRNAの形であってよい。本明細書において記載されるように、前記核酸分子に相補的である核酸分子、及び本明細書に記載される核酸分子にハイブリダイズできる核酸分子である。本明細書において記載される核酸分子は、本発明の記載内容における核酸分子の断片であってもよい。特に、かかる断片は機能性断片である。かかる機能性断片についての例は、プライマーとして提供されてよい核酸分子である。
【0116】
本発明の方法のいずれか1つにおいて反応器に生体触媒を添加する場合に、生体触媒は、発酵ブロスから直接取り出されうる。別法として、生体触媒を事前に乾燥させてよい。これに関して、生体触媒を、本発明の方法のいずれか1つにしたがって反応器に添加される前に乾燥させてよい。本記載内容において、「前」の用語は、必ずしも、生体触媒を乾燥させ、そして直ちに反応器に添加することを意味するものではない。むしろ、生体触媒が、乾燥と添加との間にさらなるステップを実施するか否かとは無関係に、反応器に添加される前の任意の時点で乾燥ステップを受けることで十分である。制限のない例として、乾燥ステップと反応器への添加との間のかかるさらなるステップは、貯蔵又は再構成であってよい。しかしながら、乾燥後に直接反応器に生体触媒を添加することも可能である。本発明者は、乾燥ステップを受けている生体触媒を使用することによって、本明細書に記載の方法のいずれか1つにより得られるアクリルアミド水溶液中でのアクリル酸の濃度が、生体変換法において使用される前に乾燥させていない生体触媒を使用した場合と比較して、さらに低減していることを見出している。
【0117】
乾燥方法に関して、アクリルアミド水溶液を製造するため又はアクリルアミド水溶液のアクリル酸濃度を低減するための方法のいずれか1つにおいて、凍結乾燥、噴霧乾燥、熱間層、真空乾燥、流動床乾燥及び/又は噴霧造粒を使用して乾燥させた生体触媒を使用してよく、好ましくは噴霧乾燥される。これに関して、他の方法を使用して乾燥させた生体触媒を使用した場合と比較して、噴霧乾燥させた生体触媒を使用することによって、一般に、得られたアクリルアミド水溶液中のアクリル酸濃度のより高い低減が達せられたことから、噴霧乾燥が好ましい。
【0118】
本発明の方法のいずれか1つにしたがって、乾燥した生体触媒を使用してよい。これは、生体触媒が乾燥型で反応器に添加されてよいことを意味する。例えば、触媒は、本明細書において開示された方法のいずれか1つのステップ(a)において乾燥型で添加されてよい。特に、生体触媒は、粉末又は顆粒の形を有していてよい。代わりに、乾燥した生体触媒を、本明細書において記載された方法のいずれか1つのステップ(a)において添加される前に再構成させてよい。例えば、生体触媒を、水性組成物中で懸濁することによって再構成させてよい。これに関して、生体触媒を、水又は緩衝液中で懸濁させてよい。さらなる別法として、マトリックス結合微生物の形での生体触媒を、本明細書において開示された方法のいずれか1つのステップ(a)において添加してよい。本明細書において使用される「乾燥した生体触媒」又は「乾燥生体触媒」の用語は、乾燥ステップを受けている生体触媒を示す。乾燥した生体触媒は、典型的に、生体触媒試料の全質量に対して、約20%(w/w)未満、より好ましくは約15%(w/w)未満、さらにより好ましくは約14%(w/w)未満、最も好ましくは約5~約10%(w/w)の含水量を有する。含水量を決定するための方法は当業者によく知られている。例えば、本発明の記載内容において、乾燥した生体触媒の試料の含水量は、熱重量測定により決定されてよい。熱重量測定の開始時点で、試料の初期質量を測定する。そして試料を加熱し、湿分を気化させる。試料の質量が一定になるまで加熱を続ける。分析の終点での一定の質量と初期質量との差異は、分析中に気化した水の量を示し、試料の含水量の算出を可能にする。熱重量測定による含水量の決定のために、生体触媒試料を、例えば試料の質量が少なくとも30秒間一定になるまで130℃で操作した「Mettler Toledo HB43-S Halogen moisture analyzer」で分析してよい。
【0119】
本発明が、増加した粘度を有し、したがって改善した物理特性を示すポリアクリルアミド溶液の製造を可能にすることから、本発明は、対照溶液と比較した場合にポリアクリルアミド溶液の粘度を高めるための方法も包含し、その際該方法は、0.6以下の、好ましくは0.5以下の、より好ましくは0.4以下の、さらにより好ましくは0.3以下の、さらにより好ましくは0.2以下の、さらにより好ましくは0.1以下の、最も好ましくは0.05以下のアクリルアミド水溶液のOD600を有するアクリルアミド水溶液を使用することを含む。前記方法において使用されるアクリルアミド水溶液は、実質的に、生体触媒を使用してアクリロニトリルをアクリルアミドに変換し、そして本明細書の他の場所で記載されるようにアクリロニトリルのアクリルアミドへの変換の完了後にアクリルアミド水溶液から該生体触媒を分離することによって製造される。
【0120】
一般に、本発明は、本明細書において記載される全ての実施形態、及びそれらの全ての入れ替え及び組み合わせを示す。本明細書において記載される任意の特定の態様又は実施形態は、かかる態様又は実施形態に対して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0121】
さらに、本発明は、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)アクリルアミド水溶液のOD600が0.6以下であるようにステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
を含む、アクリルアミド溶液を製造するための方法に関する。
【0122】
さらに、本発明は、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を生成するステップ、
(b)600l/h未満、好ましくは500l/h未満、より好ましくは400l/h未満、さらにより好ましくは300l/h未満、さらにより好ましくは200l/h未満もしくは100l/h未満の供給流量で実施したディスクスタック分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
を含む、アクリルアミド溶液を製造するための方法に関する。
【0123】
特に、本発明は、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)19.67m2h/l超の比沈降面積で、好ましくは23.6m2h/l超の比沈降面積で、より好ましくは29.5m2h/l超の比沈降面積で、さらにより好ましくは39.3m2h/l超の比沈降面積で、さらにより好ましくは59.0m2h/l超の比沈降面積で、最も好ましくは118.0m2h/l超の比沈降面積で実施したディスクスタック分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
を含む、アクリルアミド溶液を製造するための方法に関する。
【0124】
他の態様は、
(a)生体触媒を使用して、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換することによりアクリルアミド水溶液を調製するステップ、
(b)19.67m2h/l超の比沈降面積で、好ましくは23.6m2h/l超の比沈降面積で、より好ましくは29.5m2h/l超の比沈降面積で、さらにより好ましくは39.3m2h/l超の比沈降面積で、さらにより好ましくは59.0m2h/l超の比沈降面積で、最も好ましくは118.0m2h/l超の比沈降面積で実施したディスクスタック分離によりステップ(a)のアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するステップ、
(c)ステップ(b)で得られたアクリルアミド水溶液を重合させて、ポリアクリルアミドにするステップ
を含む、アクリロニトリルをアクリルアミドに生体触媒により変換することにより製造されたポリアクリルアミド溶液を製造するための方法に関する。
【0125】
さらに、本発明は、前記ポリアクリルアミド溶液から製造したポリアクリルアミド溶液の粘度を増加させるための、0.6以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液の使用に関する。
【0126】
さらに、本発明は、前記アクリルアミド溶液から製造したポリアクリルアミド溶液の粘度を増加させるための、0.6以下のOD600を有するアクリルアミド水溶液の使用に関し、その際、アクリルアミド水溶液から生体触媒を分離した直後にOD600を測定する。
【0127】
OD600を、アクリルアミド水溶液から生体触媒を分離した直後に測定することは、OD600値が、生体触媒の分離により達成され、他の測定、例えばアクリルアミド水溶液の希釈では達せられないことを意味する。
【0128】
実施例
次の実施例は、本発明を例証するものである。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。実施例は説明の目的のために含まれており、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。本発明が、本明細書及び実施例において特に記載されている以外の他の方法で実施されてもよいことは、当業者には明らかであろう。本発明の多数の修正及び変法が前記教示に照らして可能であり、したがって、添付した特許請求の範囲内にある。
【0129】
水和
生体触媒のロドコッカス・ロドクロウス(NCIMB 41164株)を、アクリロニトリルをアクリルアミドに水和するために使用している。発熱反応を、アクリロニトリル流入及び冷却回路を備えた撹拌タンク反応器中で実施した。反応を、生体触媒及びアクリロニトリルの添加により開始した。アクリロニトリルの添加は、FTIR分析により適切に監視される。出発材料を、所望のアクリルアミド濃度に達するまで添加した。
【0130】
分離
分離ステップのために、ディスクスタック分離機(BTPX 205、Alfa Laval)を使用した。等価清澄表面は11800m2に達した。分離機を、約9650UPMの回転速度で使用し、懸濁液の送り込み容量の供給流量(infeed volumetric feed flow rate)は、約100~1000l/hの範囲であった。100l/h~500l/hの範囲において、1.2μm、2μm、3μm及び5μmのフィルター孔直径で1.3未満のAPI RP 63にしたがったMPFR値が達せられた(表1及び2を参照)。
【0131】
OD600測定
アクリルアミド水溶液の600nmでの光学密度(OD600)を、反応混合物からの生体触媒の分離後に測定して、バイオマスの残量を決定した。表1及び2は、ディスクスタック分離機を使用し、118.0~19.67m2h/lの比沈降面積に対応する100~600l/hの供給流量を適用する場合の、供給流量に対するアクリルアミド水溶液のOD600値の依存を示す。これらの測定において脱塩水を基準試料として使用した。OD600測定を、Shimadzu Europe UV-1650PCダブルビーム分光計を使用して実施し、その際、標準キュベットスライドを、6倍キュベットスライドに交換した(CPS-Controller CPS-240A)。試料を、標準1cmの光路のセミマイクロPSキュベット中で測定した。
【0132】
濾過性の決定 - MPFR(ミリポア濾過率)
アクリルアミドコポリマーの濾過性を、MPFR値を使用して調査した。MPFR値(ミリポア濾過率)は、理想的な濾過挙動からのポリマー溶液の偏差を示し、理想的な濾過挙動は、フィルターを付加した場合に濾過率の低下がない。MPFR値を決定するために、1.38*105Paの圧力で1000ppmの濃度を有するポリマー溶液約200mlを、5ミクロンの孔サイズを有するポリカーボネートフィルターを通して濾過した。濾過物の量を時間依存で記録した。MPFR値の算出を、次の式にしたがって実施した:
MPFR=(t180g-t160g)/(T80g-t60g
上記式中、t指数は、特定量の濾過物を測定した時点での時間であり、すなわちt180gは、濾過物180gを測定した時点での時間である。API RP 63(「Recommended Practices for Evaluation of Polymers Used in Enhanced Oil Recovery Operations」、American Petroleum Institute)にしたがって、1.3未満の値が許容できる。理想の濾過性の場合に、MPFR値は1である。
【0133】
重合
磁気攪拌機、pHメータ及び温度計を備えたプラスチック製バケツ中に、35%アクリル酸ナトリウム溶液112.8gを入れ、そして続けて連続して、蒸留水108.33g、分離後に得られたアクリルアミド溶液(52%)154.84g、Trilon C溶液(5%)1.2g、及びACVA(4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸))溶液(4%)4mlを添加した。20%又は2%硫酸溶液を使用し、そして、水の残量(全量131.6g - 既に添加された水の量 - 必要とした酸の量)を添加して溶液のpHを6.75に調節した後に、モノマー溶液を、4℃の温度に調整した。その溶液を、サーモフラスコに移し、温度センサーを取り付け、そして窒素で30分間洗浄した。AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)のメタノール溶液(4%)1ml、t-BHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド)溶液(1%)0.1ml及び亜硫酸ナトリウム溶液(1%)0.2mlを使用して、重合を開始した。続いて、ゲルブロックを、ミートグラインダを使用して破砕し、そして得られたゲル顆粒を、2時間55℃で流動層乾燥機を使用して乾燥させた。遠心ミルを使用して粉末状態にして、白く固い顆粒材料を得た。
【0134】
本明細書に記載した調製例により調製したポリマー溶液2000ppmの濾過性を、人工海水中で測定した。MPFR値を、本明細書において前記したように決定した。ポリマー溶液4000ppmの粘度の測定を、同様に人工海水中で実施した。ppm値は、ポリマー溶液の全質量に対する質量部を示す。粘度を、せん断速度7 1/sで、25℃±1℃で、DINダブルギャップゲオメトリーを備えたレオメータ(Anton Paar MCR 301/2)で測定する。濾過性及び粘度の値を、表1及び2において示す。ppm値は、ポリマー溶液の全質量に基づく。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
表1及び表2は、異なるバッチについてアクリルアミド水溶液から生体触媒を分離するためにディスクスタック分離機を使用した場合に供給流量及び比沈降面積に依存する、OD600、ポリアクリルアミド溶液2000ppmのAPI 63(濾過性)にしたがったMPFR値、及びアクリルアミド水溶液のポリアクリルアミド溶液4000ppmの粘度値を示す。アクリルアミド水溶液を、生体触媒によりアクリロニトリルをアクリルアミドに水和することにより調製し、使用した生体触媒を、異なる供給流量を使用して重合前に分離した。バッチ#3及びバッチ#4は、分離の異なる時点での異なる反応排出物を示す。ポリアクリルアミドを、それぞれ人工海水中で溶解し、その示したデータは、3~4の個々の測定の平均値を示す。
【配列表】
0007094222000001.app