(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】吸収性物品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
A61F13/15 391
A61F13/15 140
A61F13/15 350
(21)【出願番号】P 2019070250
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】河守 良太
(72)【発明者】
【氏名】細川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】坂上 晴彦
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-6505(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217551(WO,A1)
【文献】特開2014-68927(JP,A)
【文献】特開2015-66008(JP,A)
【文献】特開2009-131349(JP,A)
【文献】特開2015-19935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート部材と、前記第1シート部材の一方の面に塗布された塗布液と、前記第1シート部材上の前記塗布液上に隣接するウェブ部材と、を備える吸収性物品を製造する方法であって、
搬送方向に沿って延びる、前記第1シート部材用の第1連続シート部材の一方の面に、常温で液体である前記塗布液を常温で接触塗布する塗布工程と、
前記第1連続シート部材の前記塗布液を有する面に、前記ウェブ部材を載置する載置工程と、
を備え、
前記塗布工程後に、前記第1連続シート部材の前記一方の面上の前記塗布液を、前記吸収性物品用の他の部材及び装置に接触させずに前記載置工程へ搬送する非接触搬送工程を備
え、
前記第1シート部材及び前記第1連続シート部材は、繊維の集合体で形成されていて、
前記繊維の集合体は、不織布であり、
前記不織布は、交絡時にネット状の支持体に接していたネット面と、前記ネット面と反対側の非ネット面とを有し、
前記塗布工程は、前記第1連続シート部材の前記非ネット面に、前記塗布液を接触塗布する工程を含む、
方法。
【請求項2】
第1シート部材と、前記第1シート部材の一方の面に塗布された塗布液と、前記第1シート部材上の前記塗布液上に隣接するウェブ部材と、前記ウェブ部材を挟んで前記第1シート部材と重ねられた第2シート部材
と、を備える吸収性物品を製造する方法であって、
搬送方向に沿って延びる、前記第1シート部材用の第1連続シート部材の一方の面に、常温で液体である前記塗布液を常温で接触塗布する塗布工程と、
前記第1連続シート部材の前記塗布液を有する面に、前記ウェブ部材を載置する載置工程と、
を備え、
前記塗布工程後に、前記第1連続シート部材の前記一方の面上の前記塗布液を、前記吸収性物品用の他の部材及び装置に接触させずに前記載置工程へ搬送する非接触搬送工程を備え、
前記塗布工程は、前記第1連続シート部材の前記一方の面に、前記塗布液を、前記搬送方向に間欠的に接触塗布して、前記塗布液が塗布された塗布領域と、前記塗布液が塗布されていない非塗布領域と、を形成する工程を含み、
前記載置工程は、前記塗布領域の上に、前記ウェブ部材を載置する工程を含み、
前記方法は、
前記搬送方向に沿って延びる、前記第2シート部材用の第2連続シート部材を、前記ウェブ部材を挟んで前記第1連続シート部材と重なるように配置して、前記第1連続シート部材と前記第2連続シート部材とを前記非塗布領域に対応する位置で接合する接合工程を更に備える
、
方法。
【請求項3】
前記塗布工程は、前記第1連続シート部材の前記一方の面に、前記塗布液を、前記搬送方向及び前記搬送方向に直交する横断方向に間欠的に接触塗布して、前記塗布領域と、前記非塗布領域と、を形成する工程を含む、
請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記塗布工程は、
前記第1連続シート部材に前記塗布液を接触塗布する塗布装置を準備する工程であって、
前記塗布装置が、
前記第1連続シート部材を外周面に沿わせて搬送するための回転ロールと、
前記外周面に向かって前記塗布液を送出するノズルと、を含み、
前記回転ロールは、前記外周面に、周方向に交互に並んだ凹部及び凸部を有し、
前記ノズルは、前記外周面に近接して配置された前記塗布液の送出口を有し、
前記送出口は、前記凸部との隙間が、前記凹部との隙間よりも狭い、工程と、
前記回転ロールを前記第1連続シート部材と共に回転させて、前記送出口の前を前記凹部が通過するとき、前記送出口から前記塗布液を送出し、前記送出口の前を前記凸部が通過するとき、送出された前記塗布液を、前記第1連続シート部材に接触塗布する工程と、
を含む、
請求項
2又は
3に記載の方法。
【請求項5】
前記回転ロールは、前記外周面における前記凸部の下流側に、前記第1連続シート部材を前記外周面に吸着する吸引口を含む、
請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記非接触搬送工程は、
前記第1連続シート部材における前記非塗布領域を、前記第1連続シート部材の他方の面から吸引しつつ、前記載置工程へ搬送する工程を含む、
請求項
2乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非接触搬送工程は、
前記第1連続シート部材における前記塗布領域を、前記第1連続シート部材の他方の面から吸引しつつ、前記載置工程へ搬送する工程を含む、
請求項
2乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の機能を有する塗布液(例示:消臭剤、香料、改質剤、抗菌剤、温感剤、漢方薬抽出剤)を含む吸収性物品が知られている。そのような吸収性物品を連続生産する方法として、搬送方向に延びる連続シート部材上に、塗布液を搬送方向に沿って塗布する方法が知られている。例えば、特許文献1には、搬送方向に延びる連続シート部材(基材)上に、水やアルコールのような溶媒で希釈した塗布液(抗菌剤)をスプレーで塗布する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、常温で液体の塗布液、特に水やアルコールのような蒸発し易い剤を含む塗布液ではなく、蒸発し難い剤を含む塗布液を有する場合がある。そのような吸収性物品を連続生産するとき、塗布液を塗布する方法として、特許文献1の方法を用いることが考えらえる。しかし、その方法では、スプレーによる霧状の塗布液が連続シート部材における所望の箇所とは異なる箇所や周囲の装置に付着する事態が生じ得る。その場合、その塗布液は、蒸発し難い剤を含むため、蒸発せずにその付着した場所に留まり易い。そのため、塗布液が、直接に、又は、周囲の装置に付着した後に、連続シート部材や吸収性物品用の他の資材における塗布液が不要な箇所(以下、「液不要箇所」ともいう。)に付着して、その液不要箇所に残留してしまうおそれがある。そうなると、液不要箇所の塗布液に影響されて、製品の機能の低下を引き起こすおそれがある。また、塗布液をスプレーで塗布するのではなく、連続シート部材の上方の所定距離から流し落として塗布する方法も考え得る。しかし、その場合でも、スプレーの場合と同様に、塗布液が連続シート部材の表面の塗布された領域から流出したり跳ねたりして、連続シート部材等の所望の箇所とは異なる箇所や周囲の装置に付着する事態が生じ得ることに変わりはない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、吸収性物品を製造する方法において、吸収性物品用の液体の塗布液を塗布するとき、吸収性物品の資材における液不要箇所に塗布液が付着することを抑制することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸収性物品は、第1シート部材と、前記第1シート部材の一方の面に塗布された塗布液と、前記第1シート部材上の前記塗布液上に隣接するウェブ部材と、を備える吸収性物品を製造する方法であって、搬送方向に沿って延びる、前記第1シート部材用の第1連続シート部材の一方の面に、常温で液体である前記塗布液を常温で接触塗布する塗布工程と、前記第1連続シート部材の前記塗布液を有する面に、前記ウェブ部材を載置する載置工程と、を備え、前記塗布工程後に、前記第1連続シート部材の前記一方の面上の前記塗布液を、前記吸収性物品用の他の部材及び装置に接触させずに前記載置工程へ搬送する非接触搬送工程を備える、方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、吸収性物品を製造する方法において、吸収性物品用の液体の塗布液を塗布するとき、吸収性物品の資材における液不要箇所に塗布液が付着することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る生理用ナプキンの構成例を示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る液透過性シートの塗布液の配置例を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る液透過性シートの塗布液の他の配置例を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る生理用ナプキンの製造方法を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る塗布装置の構成及び動作の例を示す模式図である。
【
図6】実施形態に係る塗布液のパターンの例を示す模式図である。
【
図7】実施形態に係る搬送装置の構成及び動作の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
具体的には、本発明の開示は以下の態様に関する。
[態様1]
第1シート部材と、前記第1シート部材の一方の面に塗布された塗布液と、前記第1シート部材上の前記塗布液上に隣接するウェブ部材と、を備える吸収性物品を製造する方法であって、搬送方向に沿って延びる、前記第1シート部材用の第1連続シート部材の一方の面に、常温で液体である前記塗布液を常温で接触塗布する塗布工程と、前記第1連続シート部材の前記塗布液を有する面に、前記ウェブ部材を載置する載置工程と、を備え、前記塗布工程後に、前記第1連続シート部材の前記一方の面上の前記塗布液を、前記吸収性物品用の他の部材及び装置に接触させずに前記載置工程へ搬送する非接触搬送工程を備える、方法。
【0010】
本方法では、塗布工程において、第1連続シート部材の一方の面に、常温で液体である塗布液(例示:消臭剤、香料、改質剤、抗菌剤、温感剤、漢方薬抽出剤)を、常温で接触塗布している。すなわち、塗布液が塗布装置から送出された直後に第1連続シート部材の一方の面に接触するようにして、塗布液を第1連続シート部材に塗布している。それゆえ、塗布液は、第1連続シート部の塗布領域、すなわち、第1連続シート部材における所望の箇所に留まり易くなる。それにより、塗布工程において、塗布液が、第1連続シート部材にける所望の箇所とは異なる場所や周囲の装置に付着する事態を抑制できる。
更に、非接触搬送工程において、第1連続シート部材上の塗布液は、塗布工程後、載置工程前に、吸収性物品用の他の部材及び装置に接触しない。すなわち、第1連続シート部材上の塗布液は、その上面をウェブ部材で覆われる前には、他の部材及び装置に接触しない。それゆえ、第1連続シート部材上の塗布液が、第1連続シート部材や吸収性物品用の他の資材における塗布液が不要な箇所(液不要箇所)に付着することを抑制できる。
すなわち、吸収性物品を製造する方法において、塗布液が蒸発し難い剤を有しているか否かに拘わらず、吸収性物品における液不要箇所に塗布液付着することを抑制することが可能となる。それにより、製品の機能が低下する事態を抑制できる。
【0011】
[態様2]
前記第1シート部材及び前記第1連続シート部材は、繊維の集合体で形成されている、態様1に記載の方法。
本方法では、第1シート部材及び前記第1連続シート部材が繊維の集合体(例示:布帛(不織布、織布、編物など))で形成されている。そのため、塗布液が接触塗布されるとき、塗布液の少なくとも一部が繊維の集合体の内部に拡散することができる。それにより、塗布液は、第1連続シート部の塗布領域、すなわち、第1連続シート部材における所望の箇所により留まり易くなる。それにより、塗布液が第1連続シート部材にける液不要箇所に移動して付着する事態を抑制することができる。
【0012】
[態様3]
前記繊維の集合体は、不織布であり、前記不織布は、交絡時にネット状の支持体に接していたネット面と、前記ネット面と反対側の非ネット面とを有し、前記塗布工程は、前記第1連続シート部材の前記非ネット面に、前記塗布液を接触塗布する工程を含む、態様2に記載の方法。
本方法では、不織布である第1連続シート部材の非ネット面に、塗布液を接触塗布している。すなわち、第1連続シート部材における、繊維密度の高いネット面ではなく、繊維密度の低い非ネット面に、塗布液を塗布している。そのため、不織布の平面方向(搬送方向及び横断方向)へ塗布液が拡散し難くすることができる。したがって、塗布液を、第1連続シート部の塗布領域、すなわち、第1連続シート部材における所望の箇所により留まり易くできる。それにより、塗布液が第1連続シート部材にける液不要箇所に移動して付着する事態を抑制することができる。
【0013】
[態様4]
前記吸収性物品は、前記ウェブ部材を挟んで前記第1シート部材と重ねられた第2シート部材を更に備え、前記塗布工程は、前記第1連続シート部材の前記一方の面に、前記塗布液を、前記搬送方向に間欠的に接触塗布して、前記塗布液が塗布された塗布領域と、前記塗布液が塗布されていない非塗布領域と、を形成する工程を含み、前記載置工程は、前記塗布領域の上に、前記ウェブ部材を載置する工程を含み、前記方法は、前記搬送方向に沿って延びる、前記第2シート部材用の第2連続シート部材を、前記ウェブ部材を挟んで前記第1連続シート部材と重なるように配置して、前記第1連続シート部材と前記第2連続シート部材とを前記非塗布領域に対応する位置で接合する接合工程を更に備える、態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、第1連続シート部材の一方の面に塗布液を搬送方向に間欠的に接触塗布して、塗布領域と非塗布領域とを形成している。したがって、塗布液が塗布領域に留まり易くなり、かつ、非塗布領域に配置され難くなる。そのため、本方法では、第1連続シート部材と第2連続シート部材とを、搬送方向に間欠的に並んだ非塗布領域、すなわち、塗布液が存在しない領域で接合して、シール部を形成することができる。それにより、塗布液と連続シート部材同士のシール部とが重なってしまい、シール部の接合強度が弱くなることを抑制できる。
【0014】
[態様5]
前記塗布工程は、前記第1連続シート部材の前記一方の面に、前記塗布液を、前記搬送方向及び前記搬送方向に直交する横断方向に間欠的に接触塗布して、前記塗布領域と、前記非塗布領域と、を形成する工程を含む、態様4に記載の方法。
本方法では、第1連続シート部材の一方の面に塗布液を搬送方向及び横断方向に間欠的に接触塗布して、塗布領域と非塗布領域とを形成している。そのため、本方法では、第1連続シート部材と第2連続シート部材とを、搬送方向及び横断方向に間欠的に並んだ非塗布領域、すなわち、塗布液が存在しない領域でより確実に接合して、シール部を形成することができる。それにより、塗布液と連続シート部材同士のシール部とが重なってしまい、シール部の接合強度が弱くなることをより抑制できる。
【0015】
[態様6]
前記塗布工程は、前記第1連続シート部材に前記塗布液を接触塗布する塗布装置を準備する工程であって、前記塗布装置が、前記第1連続シート部材を外周面に沿わせて搬送するための回転ロールと、前記外周面に向かって前記塗布液を送出するノズルと、を含み、前記回転ロールは、前記外周面に、周方向に交互に並んだ凹部及び凸部を有し、前記ノズルは、前記外周面に近接して配置された前記塗布液の送出口を有し、前記送出口は、前記凸部との隙間が、前記凹部との隙間よりも狭い、工程と、前記回転ロールを前記第1連続シート部材と共に回転させて、前記送出口の前を前記凹部が通過するとき、前記送出口から前記塗布液を送出し、前記送出口の前を前記凸部が通過するとき、送出された前記塗布液を、前記第1連続シート部材に接触塗布する工程と、を含む、態様4又は5に記載の方法。
本方法では、送出口の前を凹部が通過するとき、すなわち送出口と第1連続シート部材との隙間が大きいとき、送出口から前記塗布液を送出し、送出口の前を凸部が通過するとき、すなわち送出口と第1連続シート部材との隙間が小さいとき、送出された塗布液を第1連続シート部材に塗布している。そのため、塗布液を、第1連続シート部材における凸部に対応する領域、すなわち塗布領域に、より確実に接触塗布することができる。それにより、塗布液が第1連続シート部材における液不要箇所に移動して付着する事態を抑制することができる。
【0016】
[態様7]
前記回転ロールは、前記外周面における前記凸部の下流側に、前記第1連続シート部材を前記外周面に吸着する吸引口を含む、態様6に記載の方法。
本方法では、外周面における凸部の下流側に、第1連続シート部材を吸着する吸引口を含むので、第1連続シート部材を、凸部の下流側の形状、すなわち凹部の上流側の形状に確実に沿わせることができる。それにより、塗布液を、第1連続シート部材における凸部に対応する領域に、より確実に塗布することができ、凹部に対応する領域に、より確実に塗布しないようにすることができる。それにより、塗布液が第1連続シート部材における液不要箇所に付着する事態を抑制することができる。
[態様8]
前記非接触搬送工程は、前記第1連続シート部材における前記非塗布領域を、前記第1連続シート部材の他方の面から吸引しつつ、前記載置工程へ搬送する工程を含む、態様4乃至7のいずれか一項に記載の方法。
吸収性物品の製造過程で、第1連続シート部材を安定的に搬送する方法として、第1連続シート部材の他方の面から吸引しつつ、搬送する方法を取る場合がある。そこで、本方法では、第1連続シート部材の一方の面における非塗布領域を、他方の面から吸引しつつ、第1連続シート部材を搬送している。すなわち、搬送中に吸引される領域が、塗布領域に重ならない。そのため、第1連続シート部材の一方の面に塗布された塗布液が、塗布直後において、搬送中に、他方の面から吸引されて平面方向(搬送方向及び横断方向)又は厚さ方向に拡散してしまうという事態を抑制できる。それにより、塗布液が第1連続シート部材における液不要箇所に付着する事態を抑制することができる。
【0017】
[態様9]
前記非接触搬送工程は、前記第1連続シート部材における前記塗布領域を、前記第1連続シート部材の他方の面から吸引しつつ、前記載置工程へ搬送する工程を含む、態様4乃至7のいずれか一項に記載の方法。
吸収性物品の製造過程で、第1連続シート部材を安定的に搬送する方法として、第1連続シート部材の他方の面から吸引しつつ、搬送する方法を取る場合がある。そこで、本方法では、第1連続シート部材の一方の面における塗布領域を、他方の面から吸引しつつ、第1連続シート部材を搬送している。すなわち、搬送中に吸引される領域が、塗布領域に重なる。そのため、第1連続シート部材の一方の面に塗布された塗布液が、塗布直後において、搬送中に吸引されることで、塗布液を塗布領域に保持することができる。それにより搬送中に第1連続シート部材の塗布液が平面方向(搬送方向及び横断方向)に拡散する事態を抑制できる。
【0018】
以下、実施形態に係る、塗布液を含む吸収性物品を製造する方法について、塗布液の一例として温感剤を挙げ、吸収性物品の一例として生理用ナプキンを挙げて説明する。ただし、塗布液及び吸収性物品はそれらの例に限定されるのではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の塗布液を含む他の吸収性物品でもよい。そのような他の塗布液としては、例えば消臭剤、香料、改質剤、抗菌剤、漢方薬抽出剤が挙げられる。また、そのような吸収性物品としては、例えば生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、及び使い捨ておむつが挙げられる。
【0019】
本実施形態に係る生理用ナプキン1の構成について説明する。
図1は、生理用ナプキン1に係る液透過性シートの構成例を示す平面図である。生理用ナプキン1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有する。
図1に描かれた生理用ナプキン1では、図の上側を長手方向Lの前側(前方)又は腹側とし、図の下側を長手方向Lの後側(後方)又は背側とする。長手方向L及び幅方向Wを含む平面上に置いた生理用ナプキン1を厚さ方向Tの上側から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」という。長手方向L及び幅方向Wを含む平面内の任意の方向を「平面方向」という。装着者が生理用ナプキン1を装着したとき、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側となる側をそれぞれ「肌側」及び「非肌側」という。これら定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。
【0020】
生理用ナプキン1は、概ね一般的な生理用ナプキンの形状(例示:短辺が外側に凸の曲線を有する矩形)を有しており、排泄物である体液(例示:経血)を吸収する吸収本体1aと、吸収本体1aの幅方向Wの両外側に延出する一対のウイング部6、6と、を備える。なお、別の実施形態では、生理用ナプキン1は、一対のウイング部6、6を備えない。更に別の実施形態では、生理用ナプキン1は、吸収本体1aの長手方向Lの前側及び後側の少なくとも一方に位置し、温感剤又は冷感剤を含む機能本体を更に備える。
【0021】
生理用ナプキン1は、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CL(仮想線)と、一対のウイング部6、6の各々の長手方向Lの中心を幅方向Wに結んだ幅方向中心線CW(仮想線)と、を有する。生理用ナプキン1において、長手方向中心線CLに向かう向き及び側をそれぞれ幅方向Wの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ幅方向Wの外向き及び外側とする。一方、幅方向中心線CWに向かう向き及び側をそれぞれ長手方向Lの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ長手方向Lの外向き及び外側とする。これらの定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。ただし、ウイング部6が存在しない場合、幅方向中心線CWは、長手方向Lにおいて、吸収本体1aにおける排泄口当接域の中心を通り幅方向Wに延びる線とする。本実施形態では、両者は一致するものとする。排泄口当接域は、生理用ナプキン1の着用時に排泄口が当接する領域であり、例えば、長手方向Lにて、吸収体4の中央やや前方寄りに吸収体4の全長の約1/4~2/3の長さとされ、幅方向Wにて、吸収体4の中央に、吸収体4の全長の約1/3~3/4の幅とされる。
【0022】
生理用ナプキン1は、装着時に装着者の肌に当接する液透過性シート2と、装着時に着衣(下着)に当接する液不透過性シート3と、液透過性シート2及び液不透過性シート3の間に配置された吸収体4とを備える。吸収体4は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマー粒子を含む吸収コアとコアラップ(図示されず)とを備える。別の実施形態では、吸収体4は、コアラップを含まない。なお、液透過性シート2、液不透過性シート3及び吸収体4は、それぞれ第1シート部材、第2シート部材及びウェブ部材の一例といえるが、第1シート部材、第2シート部材及びウェブ部材は吸収性物品で使用される他の資材でもよい。
【0023】
液透過性シート2は、表面シート2aと、表面シート2aの幅方向Wの両側に結合された一対のサイドシート2b、2bと、を備える。表面シート2aの幅方向Wの寸法は、概ね吸収体4の幅方向Wの寸法程度の大きさである。各サイドシート2bは、幅方向Wの内側の端部に位置し、長手方向Lに沿って延びる防漏壁2Wを含む。すなわち、液透過性シート2は、一対の防漏壁2W、2Wを含む。別の実施形態では、液透過性シート2は一対のサイドシート2b、2bを有さず、全面が表面シートである。更に別の実施形態では、液透過性シート2は一対の防漏壁2W、2Wを有さない。更に別の実施形態では、生理用ナプキン1は、表面シート2aの非肌側に当接され、排泄物を平面方向に拡散させる液拡散シートを更に備える。
【0024】
本実施形態では、液透過性シート2(第1シート部材)は、塗布液としての温感剤10を更に含む。
図2は、実施形態に係る液透過性シート2の温感剤(塗布液)10の配置例を示す模式図である。
図2は、液透過性シート2の非肌側の面を示している。温感剤10は、液透過性シート2の非肌側の表面において、長手方向Lに延び、幅方向Wに間隔を空けて並んだ複数の帯状(連続的又は間欠的)の領域に配置される(ストライプパターン)。この場合、温感剤10の配置される長手方向L及び幅方向Wの範囲は、概ね、吸収体4(又は表面シート2a)の長手方向L及び幅方向Wの範囲内である。液透過性シート2における温感材10が配置される領域は、温感剤10が塗布される領域、すなわち塗布液の塗布領域といえる。また、液透過性シート2における温感材10が配置されない領域は、温感剤10が塗布されない領域、すなわち塗布液の非塗布領域ということができる。
【0025】
温感剤10は、生理用ナプキン1の装着者の身体又はその近傍を加熱等することなしに、皮膚の温度受容器(温熱知覚受容器)を刺激して、装着者に温感を知覚させる温感成分を含み、温感成分を溶解又は分散し得る溶媒成分を更に含む。温感剤10は、常温で液体であるが、温度、気圧、外力、排泄物などの影響により、液体や気体の形態で、配置された場所から拡散し、移動し得る。そして、液透過性シート2の非肌側に配置されていても、温感剤10は、生理用ナプキン1の着用時において例えば溶出、拡散等により液透過性シート2を透過し、装着者の下腹部の肌に接触することができる。それにより、温感剤10の温感成分が皮膚の温熱知覚受容器を刺激し、装着者の下腹部に温感を付与することができる。別の実施形態では、温感剤10は、液透過性シート2の更に別の箇所、例えば肌側の表面に配置される。更に別の実施形態では、液透過性シート2ではなく、又は、液透過性シート2に加えて、吸収体4又は液拡散シートにおける非肌側若しくは肌側の表面に温感剤10が配置される。
【0026】
図2の配置を有する生理用ナプキン1の温感剤10は、長手方向Lが搬送方向に平行になるように液透過性シート2(第1シート部材)を搬送しながら(縦流し)、液透過性シート2に温感剤10を塗布することで、配置される。ただし、温感剤10の配置は、
図2の配置例に限定されるものではなく、他の配置であってもよい。
図3は、実施形態に係る液透過性シート2の温感剤(塗布液)10aの他の配置例を示す模式図である。この生理用ナプキン1’の温感剤10aは、液透過性シート2の非肌側の表面において、幅方向Wに延び、長手方向Lに間隔を空けて並んだ複数の帯状(連続的又は間欠的)の位置に配置される。この温感剤10aは、幅方向Wが搬送方向に平行になるように液透過性シート2(第1シート部材)を搬送しながら(横流し)、液透過性シート2に温感剤10aを塗布することで、配置される。なお、温感剤10の形状及び配置は任意である。
【0027】
生理用ナプキン1は、複数の圧搾部7、8を有する。複数の圧搾部7は、排泄口当接域を囲むように曲線状で連続的又は間欠的に配置される。複数の圧搾部8は、複数の圧搾部7に囲まれた領域にドット状に分散して配置される。圧搾部7、8は液透過性シート2及び吸収体4を肌側から非肌側へ向かって圧搾することで形成される。なお、複数の圧搾部7、8の形状及び配置は任意である。別の実施形態では圧搾部7、8は配置されない。
【0028】
ま生理用ナプキン1は、生理用ナプキン1の周囲を縁取るシール部9を有する。シール部9は、液透過性シート2と液不透過性シート3とをそれらの周縁部で、熱シール(熱融着)及び/又は圧搾(圧着)などの公知の方法で接合・封止する。生理用ナプキン1では、液透過性シート2の非肌側の面と吸収体4の肌側の面とは接着剤(図示されず)で接合され、吸収体4の非肌側の面と液不透過性シート3の肌側の面とは接着剤(図示されず)で接合される。シール部9は接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を含んでもよい。
【0029】
生理用ナプキン1は、生理用ナプキン1を装着者の着衣に固定するための粘着部(図示されず)を備える。粘着部の一方の面は液不透過性シート3に固定され、他方の面は生理用ナプキン1の個包装シート(図示されず)に仮固定される。例えば、平面視で、吸収体4と重なる領域に位置し、長手方向Lに沿って延びる粘着部と、ウイング部6と重なる領域に位置し、長手方向Lに沿って延びる粘着部と、が配置される。別の実施形態では、粘着部の他方の面は、個包装シートに固定された剥離シートに仮固定される。
【0030】
本実施形態の生理用ナプキン1では、液透過性シート2の温感剤10(塗布液)は、TRPチャネル(温度受容器(温熱知覚受容器))を活性化する温感成分と、溶媒成分とを含む。そのため、生理用ナプキン1が着衣に固定され、使用されると、液透過性シート2の温感剤10が、液透過性シート2を透過して、装着者の肌に接触する。そのため、装着者の肌において、温感成分が接触している温感剤接触部分のTRPチャネルを効率よく活性化でき、装着者の下腹部に温感を効率よく付与することができる。
【0031】
装着者の下腹部に温感を付与することにより、装着者の下腹部の肌における温感成分に接していた温感剤接触部分のTRPチャネルが活性化される結果、交感神経系を介して、温感剤接触部分から熱が生じ、装着者の肌における温感成分の接触部分の温度を上昇させることが期待できる。その結果、装着者の子宮に近い部位を温め、痛み物質プロスタグランジンを排出させ、装着者の生理痛を緩和することが期待される。装着者の子宮に近い部位を温めることにより、装着者の月経前症候群(Premenstrual Syndrome)、冷え性、更年期障害等を軽減することが期待される。血行促進(リンパの流れの促進)により老廃物排出と冷え改善、脂肪燃焼向上、免疫力向上などが期待される。
【0032】
本実施形態の生理用ナプキン1では、塗布液として温感剤10、すなわち温感成分を含む温感剤が使用されている。しかし、本発明はこの例に限定されず、生理用ナプキン1に付与しようとする機能に応じて、塗布液の種類は他の種類であってもよい。塗布液の種類として、例えば、冷感成分を含む冷感剤、発熱成分を含む発熱剤、消臭成分を含む消臭剤、香り成分を含む香料、耐久親水油剤等の繊維を改質する成分を含む改質剤、菌の増殖を抑える成分を含む抗菌剤、生薬の成分を含む漢方薬抽出剤が挙げられる。
【0033】
次に、実施形態に係る生理用ナプキン1の製造方法の一例につき説明する。
図4は、実施形態に係る生理用ナプキン1の製造方法の例を示す模式図である。製造装置200は、生理用ナプキン1用のシート部材等の資材や半製品の搬送に関し、搬送方向MD、横断方向CD、及び上下方向TDを有する。本実施形態では、生理用ナプキン1の長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tは、それぞれ生理用ナプキン1用の資材や半製品の長手方向、幅方向及び厚さ方向と同じであり、それぞれ搬送方向MD、横断方向CD及び上下方向TDと同じである。なお、本製造方法では、生理用ナプキン1の液透過性シート2がサイドシートを有さず、表面シートのみで構成され、圧搾部7、8を有さない例につき説明する。
【0034】
図4に示すように、まず、液透過性シート2(第1シート部材)用の第1連続シート部材102が、搬送ロールなどにより、ロールWR2から巻き戻され、搬送方向MDに搬送され、塗布装置210に供給される。ここで、塗布装置210は、第1連続シート部材102を外周面に沿わせて搬送するための回転ロール211と、回転ロール211の外周面に向かって温感剤10(塗布液)を送出するノズル212と、を含む。そして、回転ロール211の外周面上で、ノズル212により、常温で液体である温感剤10が、第1連続シート部材102の一方の面に常温で接触塗布される(塗布工程)。すなわち、温感剤が、ノズル212から送出された直後に第1連続シート部材102の一方の面に接触するようにして、第1連続シート部材102に塗布される。そのため、温感剤10を、第1連続シート部材102の塗布領域、すなわち、所望の箇所に留まり易くできる。このとき、第1連続シート部材102の一方の面には、温感剤が、所定のパターン(例示:搬送方向MDに間欠的に延設されたストライプパターン)で接触塗布される。ただし、本実施形態では、常温とは、10~40℃をいうものとする。また、液体とは、常温(例示:25℃)の粘度が0を超え、300mPa・s以下であり、好ましくは0を超え、200mPa・s以下であり、より好ましくは0を超え、100mPa・s以下であるものとする。接触塗布とは、ノズル212の先端と回転ロール211の外周面上の第1連続シート部材102の表面との距離が0~5mmをいう。ノズル212の先端と第1連続シート部材102の表面との距離が0mmの場合、第1連続シート部材102(液透過性シート2)が不織布のときには、温感剤10を第1連続シート部材102内に擦り込ませることができ好ましい。
【0035】
塗布工程の一例について具体的に説明する。
図5は、実施形態に係る塗布装置210の構成及び動作の例を示す模式図である。
図5(a)~
図5(c)は、それぞれ温感剤10が第1連続シート部材102に塗布される前の状態、塗布されている途中の状態、及び塗布された後の状態を示す。
【0036】
塗布装置210の回転ロール211は、外周面211Sに、周方向に交互に並んだ凹部211Lと凸部211Hとを有しており、凹部211Lと凸部211Hの外周面211Sからの高さの差dHは、第1連続シート部材102の厚さよりも大きくなるように構成されている。凹部211Lと凸部211Hの外周面211Sからの高さの差dHは、例えば1~10mmが挙げられ、好ましくは2~5mmである。回転ロール211は、第1連続シート部材102を外周面211Sの凹部211Lの表面211SL及び凸部211Hの表面211SHに沿わせて搬送する。このとき、回転ロール211上では、第1連続シート部材102の一方の面102S1が露出し、他方の面102S2が外周面211Sに接する。外周面211Sには、回転ロール211の内部へ通じ、サクション機能を有する複数の吸引口211tが形成されている。複数の吸引口211tは、第1連続シート部材102を外周面211Sの凹部211Lの表面211SL及び凸部211Hの表面211SHに沿うように吸着する。複数の吸引口211tは、外周面211Sにおける凹部211L及び凸部211Hに分散配置され、凹部211Lと凸部211Hとの境界、例えば凸部211Hの上流側及び下流側の領域に相対的に多く配置される。第1連続シート部材102を外周面211Sに適切に沿わせるためである。
【0037】
本実施形態では、回転ロール211は、耐油性を有する材料(例示:ステンレス鋼)で構成される。温感剤10で劣化することを抑制するためである。更に、外周面211Sは、弾性部材(例示:樹脂)で被覆されている。第1連続シート部材102を適切に保持する、すなわち滑らないようにするため、及び、ノズル212又はノズル212から送出される温感剤10の圧力を弾性部材の弾性力で受け止めて第1連続シート部材102が損傷することを抑制するためである。別の実施形態では、第1連続シート部材102を更に適切に保持する、すなわち滑らないように保持するために、凸部211Hの表面211SHには、微細な凹凸が形成される。微細な凹と凸との高さの差は、例えば、凹部211Lと凸部211Hの外周面211Sからの高さの差dHの0.01~0.1倍が挙げられる。
【0038】
塗布装置210のノズル212は、外周面211Sに近接して配置された温感剤10の送出口212aを有しており、送出口212aと凸部211Hの表面211SHとの隙間が、送出口212aと凹部211Lの表面211SLとの隙間よりも狭くなるように構成されている。送出口212aと凸部211Hの表面211SHとの隙間は、例えば、0.5~10mmが挙げられ、好ましくは1~5mmである。送出口212aと凹部211Lの表面211SLとの隙間は、例えば、1.5~20mmが挙げられ、好ましくは3~10mmである。
【0039】
温感剤10が第1連続シート部材102に塗布される前では、
図5(a)に示すように、ノズル212の送出口212aは、凹部211Lの上方に位置する。送出口212aからは温感剤10が送出され始めるが、下方へ流出せずに、表面張力などにより送出口212aに保持されている。このとき、送出口212aと、凹部211Lの表面211SL上の第1連続シート部材102の一方の面102S1と、の距離d1は、送出口212aから送出されたが保持された(垂れ下がった)状態の温感剤10の長さより長い。そのため、送出口212aから送出した温感剤10は、第1連続シート部材102の一方の面102S1に接触せず、したがって塗布されない。なお、距離d1は、例えば、1~14mmが挙げられ、好ましくは2~8mmである。この状態から、回転ロール211が、ノズル212に対して相対的に回転(
図5では反時計回りに回転)すると、ノズル212は凸部211Hの上方に到達する。
【0040】
温感剤10が第1連続シート部材102に塗布されている途中の状態では、
図5(b)に示すように、ノズル212の送出口212aは、凸部211Hの上方に位置する。このとき、送出口212aと、凸部211Hの表面211SH上の第1連続シート部材102の一方の面102S1と、の距離d2は、距離d1よりも小さい(d2<d1)。この距離d2は、送出口212aから送出されたが保持された(垂れ下がった)状態の温感剤10の長さより短い。それゆえ、送出口212aから送出された温感剤10は、第1連続シート部材102の一方の面102S1に接触して、したがって塗布される。すなわち、温感剤10は、第1連続シート部材102の一方の面102S1に接触塗布される。このとき、温感剤10は、回転ロール211の回転により、第1連続シート部材102の一方の面102S1における凸部211Hの表面211SHに保持された領域の概ね全域において接触塗布される。したがって、外周面211S上の凸部211Hの位置や形状は、第1連続シート部材102における温感剤10を塗布する領域、すなわち塗布領域の位置や形状に対応して形成される、ということができる。また、ノズル212(の送出口212a)の横断方向CDの位置や形状は、第1連続シート部材102における温感剤10を塗布する領域、すなわち塗布領域の横断方向CDの位置や形状に対応して形成される、ということができる。あるいは、ノズル212(の送出口212a)の横断方向CDの位置や形状は、塗布領域の位置や形状に対応して形成された凸部211Hの位置や形状に対応して形成される、ということもできる。なお、距離d2は、例えば、0~4mmが挙げられ、好ましくは0~3mmである。この状態から、回転ロール211が、ノズル212に対して相対的に回転(
図5では反時計回りに回転)すると、ノズル212は凹部211Lの上方に到達する。
【0041】
温感剤10が第1連続シート部材102に塗布された後の状態では、
図5(c)に示すように、ノズル212の送出口212aは、再び凹部211Lの上方に位置する。ノズル212の送出口212aは、再び凹部211Lの上方に位置する。送出口212aから送出される温感剤10は、下方へ流出せずに、表面張力などにより送出口212aに保持される。すなわち、温感剤10は、第1連続シート部材102の一方の面102S1に接触せず、したがって塗布されない。このようにして、一つの凸部211Hに対応する第1連続シート部材102の塗布領域に、温感剤10が塗布される。
【0042】
図6は、実施形態に係る温感剤10のパターンの例を示す模式図である。
図6(a)は、上下方向TDの上方から、第1連続シート部材102の一方の面102S1を見た状態を示す図であり、
図6(b)は
図6(a)のVIa-VIa線に沿った断面図である。
図6(a)に示すように、この例では、温感剤10は、搬送方向MDに間欠的なストライプパターンで接触塗布される。すなわち、温感剤10は、第1連続シート部材102の一方の面102S1において、搬送方向MDに延び、横断方向CDに並んだ、間欠的な複数の帯状の位置に配置される(間欠的なストライプパターン)。温感剤10の配置される領域が塗布領域CTであり、温感剤10の配置されない領域が非塗布領域NCTである。したがって、少なくとも搬送方向MDにおいて、温感剤10が塗布された塗布領域CTと、温感剤10が塗布されていない非塗布領域NCTと、が形成される。この場合、塗布領域CTの搬送方向MD及び横断方向CDの範囲は、概ね、吸収体4が配置される領域の搬送方向MD及び横断方向CDの範囲内である。ただし、塗布領域CTの形状は任意である。別の実施形態では、温感剤10は搬送方向MDに連続的に配置される。
【0043】
また、本実施形態では、
図6(a)に示すように、第1連続シート部材102は繊維の集合体(例示:布帛(不織布、織布、編物など))で形成されている。そのため、温感剤10が接触塗布されるとき、温感剤10の少なくとも一部が繊維の集合体の内部に拡散することができる。更に、この例では、第1連続シート部材102は不織布である。ここで、不織布は、交絡時にネット状の支持体に接していたネット面と、ネット面とは反対側の面である非ネット面とを有しており、ネット面の繊維密度は高く、非ネット面の繊維密度は低い。そして、第1連続シート部材102の一方の面102S1は非ネット面であり、他方の面102S2はネット面である。したがって、第1連続シート部材102の非ネット面に、温感剤10が接触塗布されている。すなわち、第1連続シート部材102における繊維密度の小さい面に、温感剤10が塗布される。そのため、第1連続シート部材102の平面方向(搬送方向MD及び横断方向CD)への拡散を小さく抑えることができる。
【0044】
なお、第1連続シート部材102における温感剤10の上下方向TDの拡散の深さ(厚さ)は、例えば、一方の面102S1から5~50μmが挙げられ、好ましくは10~40μmである。この厚さ(深さ)は、温感剤10の厚さを100%としたとき、例えば、10~60%が挙げられ、好ましくは20~50%である。また、この厚さ(深さ)は、第1連続シート部材102の厚さを100%としたとき、例えば、5~50%が挙げられ、好ましくは10~40%である。また、第1連続シート部材102における非ネット面側の繊維密度が相対的に小さい領域の上下方向TDの厚さは、第1連続シート部材102の厚さを100%としたとき、例えば、30~80%が挙げられ、好ましくは40~70%である。
【0045】
このように、塗布工程では、回転ロール211を第1連続シート部材102と共に回転させて、ノズル212の送出口212aの前を凹部211Lが通過するとき、送出口212aから温感剤10を送出し、送出口212aの前を凸部211Hが通過するとき、送出された温感剤10を、第1連続シート部材102aに接触塗布している。それにより、温感剤10(塗布領域CT)が、搬送方向MDに間欠的に配置される(形成される)。なお、本実施形態では、温感剤10は、
図6(a)に示すように、搬送方向MDに間欠的に延びる2列のストライプパターンで塗布されている。それに対応して、回転ロール211の凹部211L及び凸部211Hは、周方向に交互に並びつつ、回転ロール211の軸方向に延設されており、ノズル212の送出口212aは、横断方向CDに2か所、間隔を空けて並んで配置されている。
【0046】
次いで、
図4に示すように、温感剤10を塗布された直後の第1連続シート部材102aは、サクション機能を有する搬送装置252の搬送ベルトにより、吸着されつつ搬送方向MDに搬送される。
図7は、搬送装置252の構成及び動作の例を示す模式図である。
図7(a)は、搬送装置252で第1連続シート部材102aを搬送する場合を示し、
図7(b)は、搬送装置252と置換され得る搬送装置252aで第1連続シート部材102aを搬送する場合を示す。
【0047】
搬送装置252では、
図7(a)に示すように、第1連続シート部材102aを吸引する吸引口262が、第1連続シート部材102aの温感剤10、すなわち塗布領域CTと重ならないように配置されている。したがって、搬送装置252は、第1連続シート部材102aにおける非塗布領域NCTを、第1連続シート部材102aの他方の面102S2から吸引しつつ、第1連続シート部材102aを搬送方向MDに搬送する。そのため、温感剤10の塗布直後(他の工程を挟まない)において、第1連続シート部材102aの一方の面102S1に塗布された温感剤10が、搬送中に、他方の面から吸引されて平面方向(搬送方向MD及び横断方向CD)又は上下方向TDに拡散することを抑制できる。
【0048】
別の実施形態では、搬送装置252が搬送装置252aに置換される。その場合、搬送装置252aでは、
図7(b)に示すように、第1連続シート部材102aを吸引する吸引口262aが、第1連続シート部材102aの温感剤10、すなわち塗布領域CTと重なるように配置されている。したがって、搬送装置252aは、第1連続シート部材102aにおける塗布領域CTを、第1連続シート部材102aの他方の面102S2から吸引しつつ、第1連続シート部材102aを搬送方向MDに搬送する。そのため、温感剤10の塗布直後(他の工程を挟まない)において、第1連続シート部材102aの一方の面102S1に塗布された温感剤10を搬送中に吸引することで、温感剤10を塗布領域CTに保持することができる。
【0049】
上記の搬送装置252と搬送装置252aとの使い分けは、例えば、搬送速度や温感剤10の塗布量や塗布領域や粘度などにより判断し得る。例えば、温感剤10が、塗布されてから吸収体4を載置される(後述)までの間、拡散・移動し難い状況又は性質を有する(例示:粘度が相対的に高い)場合、搬送装置252を選択し、拡散・移動し易い状況又は性質を有する(例示:粘度が相対的に低い)場合、搬送装置252aを選択し得る。
【0050】
更に別の実施形態では、サクション機能を有する搬送装置は、第1連続シート部材102aを吸引する吸引口として、第1連続シート部材102aの温感剤10(塗布領域CT)と重なるものと、重ならないものの両方を有する。
【0051】
次いで、
図4に示すように、第1連続シート部材102aは、搬送装置252の搬送ベルトにより、吸着されつつ搬送方向MDに搬送され、接着剤塗布装置220に供給される。そのとき、塗布工程の後、少なくとも接着剤塗布装置220に供給されるまで、第1連続シート部材102aの一方の面102S1は、生理ナプキン1用の他の部材及び装置に接触しない。
【0052】
次いで、第1連続シート部材102aは、接着剤塗布装置220により、一方の面に接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定のパターン(例示:スパイラルパターン)で塗布される。本実施形態では、第1連続シート部材102aは、接着剤を搬送方向MDに連続的に塗布される。それにより、非塗布領域NCTにも接着剤が配置される。このとき、接着剤塗布装置220の接着剤の送出口と第1連続シート部材102aの一方の面とが、互いに所定距離だけ離間した状態で、第1連続シート部材102aの一方の面に接着剤が塗布される。そのため、接着剤塗布装置220の接着剤の送出口は、第1連続シート部材102aの一方の面102S1に接触せず、したがって温感剤10に接触しない。
【0053】
次いで、接着剤を塗布された第1連続シート部材102bは、搬送装置252の搬送ベルトや他の搬送装置(図示されず)により、搬送方向MDに搬送され、一対の搬送ロール253、253の間に供給される。そのとき、接着剤塗布装置220での塗布の後、少なくとも一対の搬送ロール253、253の間に供給されるまで、第1連続シート部材102bの一方の面102S1は、生理用ナプキン1用の他の部材及び装置に接触しない。
【0054】
次いで、公知の方法で形成された個々の吸収体4(ウェブ部材)は、搬送装置251の搬送ベルトで、搬送方向MDに搬送され、一対の搬送ロール253、253の間に供給される。そして、一対の搬送ロール253、253により、第1連続シート部材102bの一方の面102S1(温感剤10、接着剤が存在)に吸収体4が載置される(載置工程)。本実施形態では、第1連続シート部材102bの塗布領域CT、すなわち、所望の箇所に塗布された温感剤10が吸収体4で覆われ、保護される。それにより、第1連続シート部材102bに塗布された温感剤10を、他の部材及び装置に付着しないようにでき、移動や拡散を抑制することができる。このとき、第1連続シート部材102a、102b上の温感剤10(又は一方の面102S1)は、塗布工程後、載置工程前に、生理用ナプキン1用の他の部材及び装置に接触しない。すなわち、第1連続シート部材102a、102b上の温感剤10は、その上面を吸収体4(ウェブ部材)で覆われる前には、他の部材及び装置に接触しない。そのため、温感剤10を、第1連続シート部材102a、102bの塗布領域CT、すなわち、所望の箇所に留まり易くできる。
【0055】
したがって、塗布工程後から載置工程までの間に、第1連続シート部材102a、102bを搬送する工程は、第1連続シート部材102a上の温感剤10を生理用ナプキン1用の他の部材及び装置に接触させずに、搬送する非接触搬送工程ということができる。なお、接着剤は、塗布後に移動、拡散せず、温感剤10と接触しても温感剤10の移動、拡散に影響しないので、他の部材には含まれない。
【0056】
更に、ロールWR3から巻き戻された、液不透過性シート3(第2シート部材)用の第2連続シート部材103は、搬送装置(図示されず)により、搬送方向MDに搬送され、接着剤塗布装置230に供給される。そして、第2連続シート部材103は、接着剤塗布装置230により、一方の面に接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を所定のパターン(例示:スパイラルパターン)で塗布される。次いで、接着剤を塗布された第2連続シート部材103aは、搬送装置(図示されず)により、搬送方向MDに搬送される。
【0057】
次いで、第2連続シート部材103aは、搬送装置により、搬送方向MDに搬送され、一対の搬送ロール253、253の間に供給される。そして、一対の搬送ロール253、253により、吸収体4が載置された第1連続シート部材102bの一方の面102S1に第2連続シート部材103aが載置される。ただし、本実施形態では、一対の搬送ロール253、253により、第1連続シート部材102b及び第2連続シート部材103aが上下方向TDの両側から吸収体4に重なりつつ、第1連続シート部材102b、吸収体4及び第2連続シート部材103aが上下方向TDの両側から挟持される。このとき、第1連続シート部材102bの一方の面に吸収体4の一方の面102S1が重なり接着されると概ね同時に、第2連続シート部材103aの一方の面に吸収体4の他方の面が重なり接着される。よって、本実施形態では、載置工程は、第1連続シート部材102bの一方の面102S1に吸収体4が載置され、かつ、吸収体4に第2連続シート部材103aが載置される工程ともいうことができる。別の実施形態では、載置工程は、第1連続シート部材102bの一方の面102S1に吸収体4が載置され、その後、吸収体4に第2連続シート部材103aが載置される。
【0058】
第1連続シート部材102bと第2連続シート部材103aとが吸収体4を挟んで重なるように配置された半製品P1は、搬送装置(図示されず)により、搬送方向MDに搬送され、接合装置240に供給される。接合装置240は、加熱ロール241及びアンビルロール242を備える。半製品P1は加熱ロール241とアンビルロール242との間に挟持され、第1連続シート部材102bと第2連続シート部材103aとが非塗布領域NCTに対応する位置で互いに接合される(接合工程)。その接合により、非塗布領域NCTに対応する位置に熱シール(熱融着)によるシール部109が形成される。したがって、温感剤10と、第1連続シート部材102b及び第2連続シート部材103aのシール部109と、が重なることを抑制できる。別の実施形態では、接合装置240は、圧着ロール及びアンビルロールを備える。そして、半製品P1は圧着ロールとアンビルロールとの間に挟持され、第1連続シート部材102bと第2連続シート部材103aとが非塗布領域NCTに対応する位置で互いに接合される(接合工程)。その接合により、非塗布領域NCTに対応する位置に圧搾(圧着)によるシール部109が形成される。
【0059】
非塗布領域NCTに対応する位置でシール部109が形成された半製品P2は、搬送装置254により、搬送方向MDに搬送されつつ、所定の場所に粘着部を接合され、周囲部分を生理用ナプキン1の形状に切断され、生理用ナプキン1となる。
【0060】
以上のようにして、生理用ナプキン1が製造される。
【0061】
なお、別の実施形態では、第1連続シート部材102bに吸収体4が載置された(載置工程)後、吸収体4が載置された第1連続シート部材102bに第2連続シート部材103aが載置される前に、第1連続シート部材102bから吸収体4まで延びる圧搾部7、8が形成される。
【0062】
本方法では、塗布工程において、第1連続シート部材102の一方の面102S1に、常温で液体である温感剤10(塗布液)を、常温で接触塗布している。すなわち、温感剤10が塗布装置210のノズル212から送出された直後に第1連続シート部材102の一方の面102S1に接触するようにして、温感剤10を第1連続シート部材102に塗布している。それゆえ、温感剤10は、第1連続シート部材102の塗布領域CT、すなわち、第1連続シート部材102における所望の箇所に留まり易くなる。それにより、温感剤10が、第1連続シート部材102にける所望の箇所とは異なる場所や周囲の装置に付着する事態を抑制することができる。
更に、非接触搬送工程において、第1連続シート部材102a、102b上の温感剤10は、塗布工程後、載置工程前に、生理用ナプキン1用の他の部材及び装置に接触しない。すなわち、第1連続シート部材102a、102b上の温感剤10は、その上面を吸収体4(ウェブ部材)で覆われる前には、他の部材及び装置に接触しない。言い換えると、非接触搬送工程において、第1連続シート部材102a、102b上の温感剤10は何物にも接触しない。それゆえ、第1連続シート部材102a、102b上の温感剤10が、第1連続シート部材102a、102bや生理用ナプキン1用の他の資材における温感剤10が不要な箇所(液不要箇所)に付着することを抑制できる。
すなわち、生理用ナプキン1(吸収性物品)を製造する方法において、液体の温感剤10を塗布するとき、温感剤10が蒸発し難い剤を有しているか否かに拘わらず、生理用ナプキン1の資材における液不要箇所に温感剤10が付着することを抑制することが可能となる。それにより、製品の機能が低下する事態を抑制できる。
ただし、「他の部材」とは、塗布液を被覆するウェブ部材以外の吸収性物品の資材や製造に使用される材料である。なお、接着剤は、塗布後に移動、拡散せず、塗布液と接触しても塗布液の移動、拡散に影響しないので、この場合の資材には含まれない。
【0063】
本実施形態における好ましい態様では、液透過性シート2(第1シート部材)及び第1連続シート部材102が繊維の集合体(例示:布帛(不織布、織布、編物など))で形成されている。そのため、温感剤10が接触塗布されるとき、温感剤10の少なくとも一部が繊維の集合体の内部に拡散することができる。それにより、温感剤10は、第1連続シート部材102の塗布領域CT、すなわち、第1連続シート部材102における所望の箇所により留まり易くなる。それにより、温感剤10が、第1連続シート部材102における液不要箇所に移動して付着する事態を抑制することができる。
【0064】
本実施形態における好ましい態様では、不織布である第1連続シート部材102の非ネット面(一方の面102S1)に、温感剤10を接触塗布している。すなわち、第1連続シート部材102における繊維密度の小さい面に、温感剤10を塗布している。そのため、不織布の平面方向(搬送方向MD及び横断方向CD)への温感剤10の拡散を小さく抑えることができる。したがって、温感剤10を、第1連続シート部材102の塗布領域CT、すなわち、第1連続シート部材102における所望の箇所により留まり易くできる。それにより、温感剤10が、第1連続シート部材102における液不要箇所に移動して付着する事態を抑制することができる。
【0065】
本実施形態における好ましい態様では、第1連続シート部材102の一方の面102S1に温感剤10を搬送方向MDに間欠的に接触塗布して、塗布領域CTと非塗布領域NCTとを形成している。したがって、接触塗布により、温感剤10が塗布領域CTに留まり易くなり、かつ、非塗布領域NCTに配置され難くなる。そのため、本方法では、第1連続シート部材102bと第2連続シート部材103aとを、搬送方向MDに間欠的に並んだ非塗布領域NCT、すなわち、温感剤10が存在しない領域で接合して、シール部109を形成することができる。それにより、温感剤10と連続シート部材同士のシール部109とが重なってしまい、シール部109の接合強度が弱くなることを抑制できる。
【0066】
別の実施形態では、温感剤(塗布液)を、
図3に示す温感剤10aのように配置する。その場合、液透過性シート2の幅方向Wが第1連続シート部材102の搬送方向MDに平行になるように、第1連続シート部材102を搬送する(横流し)。そして、第1連続シート部材102の一方の面102S1における、搬送方向MDに延び、横断方向CDに並んだ複数の帯状の位置に温感剤10aを配置する(ストライプパターン)。それゆえ、生理用ナプキン1の液透過性シート2の非肌側の面における、幅方向Wに延び、長手方向Lに並んだ複数の帯状の位置に温感剤10aを配置できる。それにより、そ生理用ナプキン1を横流しで製造する場合、温感剤10aの位置を、幅方向Wにずれ難くできる。
【0067】
別の実施形態では、第1連続シート部材102の一方の面102S1に温感剤10を搬送方向MD及び横断方向CDに間欠的に接触塗布して、塗布領域CTと非塗布領域NCTとを形成する。例えば、回転ロール211の外周面211Sに格子状に凹部211L及び凸部211Hを設けることで、温感剤10を搬送方向MD及び横断方向CDに間欠的に接触塗布できる。その間欠的な直接塗布により、本方法では、第1連続シート部材102bと第2連続シート部材103aとを、搬送方向MD及び横断方向CDに間欠的に並んだ非塗布領域NCT、すなわち、温感剤10が存在しない領域でより確実に接合して、シール部109を形成することができる。それにより、温感剤10と連続シート部材同士のシール部109とが重なってシール部109の接合強度が弱くなることをより抑制できる。
【0068】
本実施形態における好ましい態様では、送出口212aの前を凹部211Lが通過するとき、すなわち送出口212aと第1連続シート部材102との隙間(距離d1)が大きいとき、送出口212aから温感剤10を送出し、送出口212aの前を凸部211Hが通過するとき、すなわち送出口212aと第1連続シート部材102との隙間(距離d2)が小さいとき、送出された温感剤10を第1連続シート部材102に塗布する。そのため、温感剤10を、第1連続シート部材102における凸部211Hに対応する領域、すなわち塗布領域CTに、より確実に接触塗布できる。それにより、温感剤10が第1連続シート部材102における液不要箇所に移動して付着する事態をより抑制できる。
【0069】
本実施形態における好ましい態様では、回転ロール211の外周面211Sにおける凸部211Hの下流側に、第1連続シート部材102を吸着する吸引口211tを含む。そのため、第1連続シート部材102を、凸部211Hの下流側の形状、すなわち凹部211L上流側の形状に確実に沿わせることができる。それにより、温感剤10を、第1連続シート部材102における凸部211Hに対応する領域に、より確実に塗布することができ、凹部211Lに対応する領域に、より確実に塗布しないようにすることができる。それにより、温感剤10が第1連続シート部材102における液不要箇所に付着する事態をより抑制できる。
【0070】
本実施形態における好ましい態様において、第1連続シート部材102を安定的に搬送するべく、第1連続シート部材102の他方の面102S2から吸引しつつ、搬送方向MDに搬送する。そのとき、第1連続シート部材102の一方の面102S1における非塗布領域NCTを、他方の面102S2から吸引しつつ、第1連続シート部材102を搬送する。すなわち、搬送中に吸引される領域が、塗布領域CTに重ならない。そのため、第1連続シート部材102の一方の面102S1に塗布された温感剤10が、搬送中に、他方の面102S2から吸引されて平面方向(搬送方向MD及び横断方向CD)又は上下方向TDに拡散してしまうという事態を抑制できる。それにより、温感剤10が第1連続シート部材102における液不要箇所に付着する事態を抑制できる。
【0071】
別の実施形態では、第1連続シート部材102を安定的に搬送するべく、第1連続シート部材102の他方の面102S2から吸引しつつ、搬送方向MDに搬送する。そのとき、第1連続シート部材102の一方の面102S1における塗布領域CTを、他方の面102S2から吸引しつつ、第1連続シート部材102を搬送する。すなわち、搬送中に吸引される領域が、塗布領域CTに重なる。そのため、第1連続シート部材102の一方の面102S1に塗布された温感剤10が、搬送中に吸引されることで、温感剤10を塗布領域CTに保持することができる。それにより、搬送中に第1連続シート部材102の温感剤10が平面方向(搬送方向MD及び横断方向CD)に拡散する事態を抑制できる。
【0072】
(生理用ナプキン1における各資材等)
次に、各実施形態における生理用ナプキン1における各資材等について説明する。
【0073】
上記の各実施形態における液透過性シート2は、温感剤10を有している。温感剤10は、例えば、TRPチャネルを活性化する温感成分と、溶媒成分とを含んでいる。温感成分としては、TRPチャネルを活性化するものであれば、特に制限されず、例えば、TRPV1レセプターに対するアゴニスト、TRPV3レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPV1に対するアゴニストが好ましい。TRPV1レセプターは、活性化温度閾値が43℃超と高く、装着者に高い温感を付与できるからである。
【0074】
温感成分は、装着者の安心感の観点から、植物由来の化合物が好ましい。温感成分としては、例えば、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例示:バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、及びジンゲロン、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。中でも、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体が好ましく、バニリルブチルエーテルがより好ましい。
【0075】
溶媒成分としては、温感成分を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば、親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。このような溶媒成分は、温感成分を、溶解、分散等できる。親油性溶媒としては、例えば、油脂があげられる。油脂としては、例えば、天然油(例示:中性脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油等)、炭化水素(例示:パラフィン(例示:流動パラフィン))等が挙げられる。親水性溶媒としては、例えば、水及びアルコールが挙げられる。それらの中でも、溶媒成分は、揮発性を制御しやすい、特に揮発性を下げやすい観点、及び、吸収性を阻害しにくい観点から、親油性溶媒であることが好ましい。中でも、脂肪酸エステルが好ましく、中性脂肪酸トリグリセリドがより好ましい。中性脂肪酸トリグリセリドは改質剤としても機能する。
【0076】
温感剤10における温感成分の濃度は、例えば1~50質量%が挙げられ、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~15質量%である。対応して、温感剤10における溶媒成分の濃度は、例えば50~99質量%が挙げられ、好ましくは70~95質量%であり、より好ましくは85~90質量%である。温感成分の粘度(25℃)は、例えば0を超え、500mPa・s以下が挙げられ、好ましくは0を超え、300mPa・s以下であり、より好ましくは0を超え、200mPa・s以下である。溶媒成分の粘度(25℃)は、例えば0を超え~300mPa・sが挙げられ、好ましくは0を超え、200mPa・s以下であり、より好ましくは0を超え、100mPa・s以下である。温感成分及び溶媒成分を混合した温感剤10の粘度(25℃)は、例えば0を超え、300mPa・s以下が挙げられ、好ましくは0を超え、200mPa・s以下であり、より好ましくは0を超え、100mPa・s以下である。また、温感剤10の坪量は、例えば、0.001~40g/m
2が挙げられ、好ましくは0.01~30g/m
2であり、より好ましくは0.1~20g/m
2である。装着者に温感を付与する観点からである。なお、例えば、25℃において、バニリルブチルエーテルの粘度は150mPa・sであり、中性脂肪酸トリグリセリドの粘度は72mPa・sであり、両者を混合した温感剤の粘度は77mPa・sである。また、
図7(a)や
図7(b)の搬送装置に関して、温感剤10を塗布してから吸収体4を載置されるまでの間、温感剤10が拡散・移動し難い粘度、すなわち相対的に高い粘度は、例えば、250~500mPa・sが挙げられ、温感剤10が拡散・移動し低い粘度、すなわち相対的に高い粘度は、例えば、0を超え、250mPa・sが挙げられる。
【0077】
なお、粘度は、以下の方法で測定する。
測定方法としては、JIS K7117-1(1999)及びJISZ8803(2011)に準拠した方法で行った。測定装置としては、B型回転粘度計(TVB-10M:東機産業株式会社製)を用いた。測定時のトルクは67.37μN・mとした。
【0078】
生理用ナプキン1では、温感剤10は、上述の温感成分及び溶媒成分以外に、装着者に温感を付与する効果を阻害しない範囲で、所望の作用を有する少なくとも一種の他の成分を含むことができる。そのような少なくとも一種の他の成分としては、例えば、抗菌剤や皮膚収斂剤や抗炎症剤のような薬剤、ビタミン、アミノ酸、ゼオライト、ヒアルロン酸、コラーゲン、ワセリン、トレハロース、pH調整剤、保湿剤、香料などが挙げられる。
【0079】
温感剤10の代わりに冷感剤を用いる場合、冷感剤は、例えば、TRPチャネルを活性化する冷感成分と、溶媒成分とを含んでいる。冷感成分としては、TRPチャネルを活性化するものであれば、特に制限されず、例えば、TRPM8レセプターに対するアゴニスト、TRPA1レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPM8レセプターに対するアゴニストであることが好ましい。装着者に、過度の冷感を付与しないためである。冷感成分としては、例えば、メントール(例示:l-メントール)及びその誘導体(例示:乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル(例示:l-メンチルグリセリルエーテル))、サリチル酸メチル、カンファー、植物(例示:ミント、ユーカリ)由来の精油等が挙げられる。溶媒成分としては、温感成分用の溶媒成分と同様である。冷感剤における冷感成分の濃度は、例えば5~90質量%が挙げられ、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは30~70質量%である。対応して、冷感剤における溶媒成分の濃度は、例えば10~95質量%が挙げられ、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~70質量%である。粘度や坪量については、温感剤10の場合と同様である。
【0080】
生理用ナプキン1において、液透過性シート2(第1連続シート部材102)は、平坦なシート部材でもよいし、賦形されたシート部材でもよい。賦形されたシート部材としては、長手方向L(搬送方向MD)に延び、幅方向W(横断方向CD)に所定間隔で並んだ複数の突出部と、隣り合う突出部の間に位置する複数の窪み部と、を有するシート部材が挙げられる。この賦形された部材は、幅方向W(横断方向CD)の温感剤10の拡散、移動を抑制できる。
【0081】
液透過性シート2(第1連続シート部材102)の素材としては、液透過性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、布帛(例示:不織布、織布、編物)、開孔フィルム等が挙げられる。布帛としては、生理用ナプキン1の製造し易さの観点から不織布が好ましい。不織布としては、例えば、エアレイドパルプ、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例示:SMS)が挙げられる。液透過性シート2(第1連続シート部材102)の坪量は、例えば、2~200g/m2が挙げられ、好ましくは5~100g/m2であり、より好ましくは10~50g/m2である。液透過性シート2の厚さは、例えば、0.1~6mmが挙げられ、好ましくは0.2~4mmであり、より好ましくは0.4~2mmである。液透過性シート2の繊維密度は、例えば0.001g/cm3~0.6g/cm3が挙げられ、好ましくは0.002g/cm3~0.4g/cm3であり、より好ましくは0.004g/cm3~0.3g/cm3である。
【0082】
布帛を構成する繊維としては、例えば、天然繊維、合成繊維、及び半合成繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、パルプ繊維及び再生セルロース繊維が挙げられる。再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン繊維が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート繊維のような半合成セルロース繊維が挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維が挙げられる。熱可塑性繊維としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートやポリペンチレンテレフタレートのようなポリエステル系ポリマー、ナイロン6やナイロン6,6のようなポリアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、又はそれらの変性物、あるいはそれらの組み合わせ等から形成された繊維が挙げられる。開孔フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのシートに、複数の開孔部を設けたものが挙げられる。
【0083】
生理用ナプキン1において、液不透過性シート3の素材としては、液不透過性を有するものであれば特に制限はない。ただし、温感剤10の温感剤の効果で温められた空気を液不透過性シート3と肌との間の領域から散逸し難くする観点から、液不透過性シート3の素材としては非通気性を有するものを用いることが好ましい。液不透過性シート3の素材として、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に合成樹脂フィルムを接合したもの、SMS等の複層不織布等が挙げられ、非通気性を有する合成樹脂フィルムが好ましい。液不透過性シート3の坪量は、例えば5~100g/m2が挙げられ、好ましくは10~50g/m2であり、より好ましくは15~30g/m2である。
【0084】
生理用ナプキン1において、吸収体4(の吸収コア)の素材としては、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。吸収体4がコアラップを有する場合には、コアラップの素材としては、例えばティッシュが挙げられる。
【0085】
生理用ナプキン1において、粘着部の素材としては、ホットメルト接着剤、例えば、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。
【0086】
生理用ナプキン1では、温感剤10は液透過性シート2の非肌側の面に配置されているが、液透過性シート2の肌側の面や、吸収体4の肌側又は非肌側の面や、液不透過性シート3の肌側の面に配置されてもよい。
【0087】
本発明の吸収性物品(例示:生理用ナプキン)は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、各実施形態同士を組合せることや公知技術を適用すること等が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 液透過性シート(第1シート部材)
4 吸収体(ウェブ部材)
10 温感剤(塗布液)
102 第1連続シート部材