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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ルテニウムの選択的原子層堆積
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20220624BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220624BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/455
H01L21/28 301R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020531609
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018065681
(87)【国際公開番号】W WO2019118841
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】62/599,691
(32)【優先日】2017-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イーホン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ガンディコッタ, シュリーニヴァース
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-210802(JP,A)
【文献】特表2011-510517(JP,A)
【文献】特表2017-528597(JP,A)
【文献】特開2003-347430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
C23C 16/455
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的堆積方法であって、
第1の表面を有する導電材料、及び第2の表面を有する絶縁材料を含む基板を設けることと、
前記基板を所定の温度で制御することと、
前記基板をルテニウム前駆体に曝露して、ルテニウム含有化合物を前記基板に形成することと、
前記基板を反応物質に曝露して、前記ルテニウム含有化合物と反応させることであって、前記反応物質が、O、H、又はHOのうちの1つ又は複数を含む、前記基板を反応物質に曝露すること
を含み、前記所定の温度が250℃以上であるとき、ルテニウムが、前記第2の表面より前記第1の表面に選択的に堆積され、前記所定の温度が200℃以下であるとき、ルテニウムが、前記第1の表面より前記第2の表面に選択的に堆積される、方法。
【請求項2】
前記導電材料が、Cu、Co、W、Ta、Ti、又はこれらの酸化物、窒化物、若しくは酸窒化物のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記絶縁材料が、SiO、SiN、又は高抵抗Siのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導電材料が、実質的にWからなり、前記絶縁材料が、実質的にSiOからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導電材料が、実質的にTiNからなり、前記絶縁材料が、実質的にSiNからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ルテニウム前駆体が、少なくとも1つのシクロペンタジエニル配位子又はその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ルテニウム前駆体が、実質的にRu(Cp)又はRu(EtCp)からなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ルテニウムが、約5以上の選択性で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
選択的堆積方法であって、
第1の表面を有する導電材料、及び第2の表面を有する絶縁材料を含む基板を設けることと、
前記基板をルテニウム前駆体に曝露して、ルテニウム含有化合物を前記基板に形成することと、
前記基板を反応物質に曝露して、前記ルテニウム含有化合物と反応させることであって、前記反応物質が、O、H、又はHOのうちの1つ又は複数を含む、前記基板を反応物質に曝露すること
を含み、前記基板が、200℃以下の温度に維持され、ルテニウムが、前記第1の表面より前記第2の表面に選択的に堆積される、方法。
【請求項10】
前記導電材料が、Cu、Co、W、Ta、Ti、又はこれらの酸化物若しくは窒化物のうちの1つ又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記絶縁材料が、SiO、SiN、又は高抵抗Siのうちの1つ又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記導電材料が、実質的にWからなり、前記絶縁材料が、実質的にSiOからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記導電材料が、実質的にTiNからなり、前記絶縁材料が、実質的にSiNからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ルテニウム前駆体が、少なくとも1つのシクロペンタジエニル配位子又はその誘導体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ルテニウムが、約5以上の選択性で堆積される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、ルテニウム膜を選択的に堆積させる方法に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、絶縁材料より導電材料にルテニウムを堆積させる方法、導電材料より絶縁材料にルテニウムを堆積させる方法、及び処理選択性を制御する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]半導体産業は、新興産業(例えば、自律車両、バーチャルリアリティ、及び未来型モバイルデバイス)におけるモバイル型及び高性能のシステムの必要性によって追い立てられ、継続的にデバイスの小型化を追求し続けている。この偉業を成し遂げるために、マイクロエレクトロニクスデバイスのフィーチャの急速な低減において遭遇する固有のエンジニアリング上の問題及び物理的問題を回避するために新しい高性能材料が必要とされる。
【0003】
[0003]ルテニウムは、高融点(高電流密度に耐える能力)、並外れた密度、電流通電能力があるため、集積化のために新たに提案される材料である。ルテニウム、及びルテニウム含有薄膜は、魅力的な材料特性及び導電特性を有する。ルテニウム膜は、半導体及びマイクロエレクトロニクスデバイスのフロントエンドからバックエンドの部品の用途のために提案されてきた。
【0004】
[0004]ルテニウムの薄膜は、理想的には、薄膜堆積技術(例えば、化学気相堆積(CVD)及び原子層堆積(ALD))を使用して堆積される。それは、これらの技術が、高スループットで、共形的に、且つ精密に材料を堆積させる固有の能力を有するからである。
【0005】
[0005]半導体デバイスの設計が進化するにつれて、半導体産業における精密材料製造は、原子スケールの次元の時代に突入している。原子スケールでは、わずか数十個の原子が関わっており、誤りを生じさせる余裕はない。すなわち、すべての原子が重要なのである。この前例のない課題は、原子レベルの精度を有する新しい材料処理技法を必要とする。しかしながら、原子スケールのデバイス製造において必要とされる処理フローの複雑さが増すことにより、製造コストが著しく増加する可能性がある。
【0006】
[0006]選択的堆積技法は、半導体膜パターニングにおける化学選択的な原子層精度の可能性をもたらす。選択的堆積は、リソグラフィ又はその他の処理を排除することによって、より単純な処理フローの可能性をさらにもたらす。
【0007】
[0007]様々な方法で材料の選択的堆積を達成することができる。例えば、幾つかの処理は、表面の化学的性質に基づいて、その表面に対して固有の選択性を有する場合がある。このような処理は、かなり稀であり、通常、表面エネルギーが著しく異なる複数の表面(例えば、金属と誘電体)を有する必要がある。
【0008】
[0008]したがって、様々な基板材料にルテニウム膜を選択的に堆積させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[0009]本開示の1つ又は複数実施形態は、第1の表面を有する導電材料、及び第2の表面を有する絶縁材料を含む基板を設けることを含む選択的堆積方法を対象としている。基板は、ルテニウム前駆体に曝露される。基板は、反応物質に曝露される。反応物質は、O、H、又はHOのうちの1つ又は複数を含む。ルテニウムは、第2の表面より第1の表面又は第1の表面より第2の表面のいずれかに選択的に堆積される。
【0010】
[0010]本開示の追加の実施形態は、第1の表面を有する導電材料、及び第2の表面を有する絶縁材料を含む基板を設けることを含む選択的堆積方法を対象としている。導電材料は、Cu、Co、W、Ta、Ti、又はこれらの酸化物若しくは窒化物のうちの1つ又は複数を含む。絶縁材料は、SiO、SiN、又は高抵抗Siのうちの1つ又は複数を含む。基板は、ルテニウム前駆体に曝露される。基板は、反応物質に曝露される。反応物質は、O、H、又はHOのうちの1つ又は複数を含む。基板は、約250℃以上の温度で維持され、ルテニウムは、第2の表面より第1の表面に選択的に堆積される。
【0011】
[0011]本開示のさらなる実施形態は、第1の表面を有する導電材料、及び第2の表面を有する絶縁材料を含む基板を設けることを含む選択的堆積方法を対象としている。導電材料は、Cu、Co、W、Ta、Ti、又はこれらの酸化物若しくは窒化物のうちの1つ又は複数を含む。絶縁材料は、SiO、SiN、又は高抵抗Siのうちの1つ又は複数を含む。基板は、ルテニウム前駆体に曝露される。基板は、反応物質に曝露される。反応物質は、O、H、又はHOのうちの1つ又は複数を含む。基板は、約200℃以下の温度で維持され、ルテニウムは、第1の表面より第2の表面に選択的に堆積される。
【0012】
[0012]本開示の上述の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによって、得ることができる。そのうちの幾つかの実施形態は添付の図面で例示されている。しかし、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容し得ることから、添付の図面は、この開示の典型的な実施形態のみを例示しており、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、処理プラットフォームの概略図を示す。
図2】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、バッチ処理チャンバの断面図を示す。
図3】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、バッチ処理チャンバの部分斜視図を示す。
図4】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、バッチ処理チャンバの概略図を示す。
図5】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、バッチ処理チャンバにおいて使用される、くさび型ガス分配アセンブリの一部の概略図を示す。
図6】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、バッチ処理チャンバの概略図を示す。
図7】本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、2パルス周期的堆積技法を使用して、ルテニウム層を形成するための例示的な処理シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0020]添付の図面では、類似の構成要素及び/又は特徴は、同じ参照符号を有し得る。さらに、同じ種類の様々な構成要素は、参照符号の後にダッシュを付けて、類似の構成要素同士を区別する第2の符号によって、区別することができる。本明細書において第1の参照符号のみが使用される場合、その記載は、第2の参照符号に関わりなく、同じ第1の参照符号を有する類似の構成要素のうちの任意の1つに適用可能である。
【0015】
[0021]本開示の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の説明で提示される構成又は処理ルーチンの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。
【0016】
[0022]本開示の実施形態は、ルテニウム含有膜を選択的に堆積させる方法を提供する。様々な実施形態の方法は、原子層堆積(ALD)を使用して、ルテニウム膜を選択された基板表面に設ける。
【0017】
[0023]幾つかの実施形態では、基板は、導電材料及び絶縁材料を含む。導電材料の表面は、第1の表面と呼ばれる。絶縁材料の表面は、第2の表面と呼ばれる。
【0018】
[0024]幾つかの実施形態では、導電材料は、金属、金属、金属窒化物、金属酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、導電材料は、Cu、Co、W、Ta、Ti、又はこれらの酸化物、窒化物、若しくは酸窒化物のうちの1つ又は複数を含むか、又はこれらから実施的になる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「実質的になる(consists essentially of)」という表現は、特定された材料の約95%、98%、又は99%以上が、記載の材料であることを意味する。
【0019】
[0025]絶縁材料は、導電材料に対して選択性を示す任意の適切な誘電体であり得る。絶縁材料は、高k(k>5)誘電体又は低k(k<5)誘電体であってもよい。幾つかの実施形態では、絶縁材料は、ケイ素を含む。幾つかの実施形態では、絶縁材料は、SiO、SiN、又は高抵抗Siのうちの1つ又は複数を含むか、又はこれらから実質的になる。このように使用される「高抵抗Si」とは、純粋なケイ素材料よりも高い抵抗を有するケイ素材料を意味する。幾つかの実施形態では、高抵抗Si材料は、表面上に酸化層を有する。したがって、幾つかの実施形態では、高抵抗ケイ素は、表面上にSiOxの薄層を有するケイ素である。
【0020】
[0026]幾つかの実施形態では、導電材料は、実質的にWからなり、絶縁材料は、実質的にSiOからなる。幾つかの実施形態では、導電材料は、実質的にTiNからなり、絶縁材料は、実質的にSiNからなる。
【0021】
[0027]本開示の実施形態は、一方の表面より他方の表面にルテニウム含有膜を選択的に堆積させる方法を提供する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「一方の表面より他方の表面に膜を選択的に堆積させる」等の表現は、第1の量の膜が、第1の表面に堆積され、第2の量の膜が、第2の表面に堆積され、第2の量の膜が第1の量の膜よりも少ないか、又は第2の表面には膜が堆積されないことを意味する。このように使用される「~より(over)」という表現は、一方の表面の上部の他方の表面の物理的配向を意味するのではなく、むしろ、一方の表面に対する他方の表面の化学的反応の熱力学的特性又は力学的特性の関係性を意味している。例えば、絶縁材料の表面より導電材料の表面にルテニウム膜を選択的に堆積させることは、ルテニウム膜が導電材料表面に堆積し、絶縁材料の表面には、ルテニウム膜が、より少ない量堆積する若しくは全く堆積しないことか、又は、導電材料表面上のルテニウム膜の形成が、絶縁材料の表面上のルテニウム膜の形成に対して、熱力学的又は力学的に好適であることを意味する。
【0022】
[0028]選択的堆積処理では、膜又は層は、ある基板表面部分よりもそれと異なる基板部分により好適に堆積されることになる。堆積処理の選択性は、概して、成長速度の倍数として表現される。例えば、ある表面が異なる表面よりも25倍速く成長する(又は堆積される)場合、この処理は、25:1の選択性を有すると説明される。このように、より高い比は、より選択的な処理を示す。
【0023】
[0029]本開示の幾つかの実施形態は、有利には、絶縁材料の表面に対して(に関連して)、導電材料の表面に好適に作用する選択的堆積のための方法を提供する。本開示の幾つかの実施形態は、有利には、導電材料の表面に対して(に関連して)、絶縁材料の表面に好適に作用する選択的堆積を提供する。驚くべきことに、本発明者らは、基板温度を制御することによって、幾つかの実施形態の選択性を制御できることを発見した。
【0024】
[0030]基板は、約250℃以上の温度で維持され、ルテニウムは、第2の表面より第1の表面に選択的に堆積される。幾つかの実施形態では、基板は、約200℃以下の温度で維持され、ルテニウムは、第1の表面より第2の表面に選択的に堆積される。幾つかの実施形態では、この選択性は、約5:1より大きい。理論に縛られるわけではないが、選択性は連続的ではなく、むしろ200℃から250℃の間で「反転する」と考えられる。
【0025】
[0031]本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される「基板」という用語は、処理が作用する表面又は表面の一部分を表している。また、基板に対して言及がなされるとき、文脈において特に明示されない限り、基板の一部のみを指すことができることを当業者には理解されるであろう。さらに、基板への堆積に対して言及がなされるとき、それは、ベア基板と、1つ又は複数の膜又はフィーチャが上部に堆積又は形成された基板との両方を意味し得る。
【0026】
[0032]本明細書で使用される「基板表面」とは、基板の任意の部分、又は、膜の処理が実行される、基板上に形成された材料表面の任意の部分のことを指す。例えば、処理を実行することができる基板表面には、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイア、並びに金属、窒化金属、金属合金、及び他の導電材料などの任意の他の材料のような材料が含まれる。基板は、半導体ウエハを含むが、これに限定されない。基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、UV硬化、電子ビーム(eビーム)硬化、且つ/又はベークするために、基板を前処理プロセスに曝露してもよい。基板自体の表面上で直接膜処理を行うことに加えて、本開示では、開示された任意の膜処理ルーチンは、以下でより詳細に開示される、基板に形成された下層にも実施され得る。「基板表面」という用語は、文脈が示すように、このような下層を含むことが意図されている。ゆえに、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面に堆積された場合、新たに堆積された膜/層の露出面が基板表面となる。基板は、様々な寸法(例えば、直径200mm又は300mmのウエハや、長方形又は正方形のペイン)を有し得る。幾つかの実施形態では、基板は、剛性でディスクリートな材料を含む。
【0027】
[0033]本明細書で使用される「原子層堆積(atomic layer deposition)」又は「周期的堆積」とは、2つ以上の反応性化合物への連続的曝露により、基板表面に材料層を堆積させることを指す。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「反応性化合物」、「反応性ガス」、「反応種」、「前駆体」、「処理ガス」などの用語は、交換可能に使用され、表面反応(例えば、化学吸着、酸化、還元)において基板表面又は基板表面上の材料と反応可能な種を有する物質を意味する。基板又は基板の一部は、処理チャンバの反応区域内に導入される2つ以上の反応性化合物に別々に曝露される。時間領域ALD処理では、各反応性化合物への曝露は、時間遅延によって分けられ、それにより、各化合物は、基板表面に付着するか且つ/又は基板表面上で反応し、次いで、処理チャンバからパージされることが可能になる。これらの反応性化合物は、基板に連続的に曝露されると言われている。空間ALD処理では、基板上の任意の所与の点が1つより多くの反応性化合物に同時に実質的に曝露されないように、基板表面又は基板表面上の材料の種々の部分が、2つ以上の反応性化合物に同時に曝露される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、このように使用される「実質的に(substantially)」という表現は、当業者によって理解されるように、基板の小さな部分が、拡散に起因して複数の反応性ガスに同時に曝露される可能性があり、その同時曝露は意図されていないことを意味する。
【0028】
[0034]時間領域ALD処理の一態様では、第1の反応性ガス(すなわち、第1の前駆体又は化合物A)が反応区域内にパルス供給されてから、第1の時間遅延が伴う。次に、第2の前駆体又は化合物Bが反応区域内にパルス供給され、その後、第2の遅延が伴う。各時間遅延の間、アルゴンのようなパージガスが処理チャンバ内に導入され、反応区域がパージされるか、又はさもなければ、反応区域から任意の残留反応性化合物又は反応性副生成物が除去される。代替的に、反応性化合物のパルス間の時間遅延の間、パージガスのみが流動するように、堆積処理全体にわたってパージガスが連続的に流動し得る。反応性化合物は、基板表面上に所望の膜又は膜厚が形成されるまで、交互にパルス供給される。いずれの場合でも、化合物A、パージガス、化合物B、及びパージガスをパルス供給するALD処理は、周期的に行われる。サイクルは、化合物A又は化合物Bのいずれかで開始されてもよく、所定の厚さを有する膜が達成されるまで、サイクルの対応する順序が継続される。
【0029】
[0035]空間ALD処理の一実施形態では、第1の反応性ガス及び第2の反応性ガス(例えば、水素ガス)は、反応区域に同時に供給されるが、不活性ガスカーテン及び/又は真空カーテンによって分離される。基板上の任意の所与の点が、第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスに曝露されるように、基板は、ガス供給装置に対して移動させられる。
【0030】
[0036]本開示の幾つかの実施形態は、本明細書で開示されるような処理プラットフォームで実行される空間ALD処理を利用する。図面を参照すると、図1は、本開示の1つ又は複数の実施形態に係る処理プラットフォーム100を示す。図1に示す実施形態は、1つの可能な構成を単に表すものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。例えば、幾つかの実施形態では、処理プラットフォーム100は、種々の数の処理チャンバ、バッファチャンバ、及びロボット構成体を有する。
【0031】
[0037]処理プラットフォーム100は、複数の側面111、112、113、114、115、116を有する中央移送ステーション110を含む。図示の中央移送ステーション110は、第1の側面111、第2の側面112、第3の側面113、第4の側面114、第5の側面115、及び第6の側面116を有する。ここでは6つの側面が示されているが、当業者であれば、例えば、処理プラットフォーム100の全体的な構成に応じて、中央移送ステーション110に任意の適切な数の側面があってもよいことを理解するであろう。
【0032】
[0038]移送ステーション110は、その中に位置決めされたロボット117を有する。ロボット117は、処理中にウエハを移動させることが可能な任意の適切なロボットであり得る。幾つかの実施形態では、ロボット117は、第1のアーム118及び第2のアーム119を有する。第1のアーム118及び第2のアーム119は、他方のアームから独立して動くことができる。第1のアーム118及び第2のアーム119は、x-y面において及び/又はz軸に沿って動くことができる。幾つかの実施形態では、ロボット117は、第3のアーム又は第4のアーム(図示せず)を含む。各アームは、他方のアームから独立して動くことができる。
【0033】
[0039]第1のバッチ処理チャンバ120は、中央移送ステーション110の第1の側面111に接続され得る。第1のバッチ処理チャンバ120は、バッチ時間の間、一度にx個のウエハを処理するように構成され得る。幾つかの実施形態では、第1のバッチ処理チャンバ120は、約4個(x=4)から約12個(x=12)の範囲のウエハを同時に処理するように構成され得る。幾つかの実施形態では、第1のバッチ処理チャンバ120は、6個(x=6)のウエハを同時に処理するように構成され得る。当業者によって理解されるように、第1のバッチ処理チャンバ120は、個々のウエハのロードとアンロードとの間に複数のウエハを処理することができるが、各ウエハは、任意の所与の時点で異なる処理条件に曝され得る。例えば、空間原子層堆積チャンバは、図2から図6に示されているように、ウエハが各領域を移動するにつれて、プロセスが完了するように、ウエハを種々の処理領域の種々の処理条件に曝露する。
【0034】
[0040]図2は、ガス分配アセンブリ220(インジェクタ又はインジェクタアセンブリとも呼ばれる)、及びサセプタアセンブリ240を含む、処理チャンバ200の断面を示す。ガス分配アセンブリ220は、処理チャンバ内で使用される、任意の種類のガス供給デバイスである。ガス分配アセンブリ220は、サセプタアセンブリ240に対面する前面221を含む。前面221は、サセプタアセンブリ240に向けてガスの流れを供給するための、任意の数の開口又は様々な開口を有し得る。ガス分配アセンブリ220は、図示の実施形態では実質的に円形である外縁224をさらに含む。
【0035】
[0041]使用されるガス分配アセンブリ220の特定の種類は、使用される特定の処理に応じて変わり得る。本開示の実施形態は、サセプタとガス分配アセンブリとの間の間隙が制御される任意の種類の処理システムと使用することができる。様々な種類のガス分配アセンブリ(例えば、シャワーヘッド)を利用することができるが、本開示の実施形態は、複数の実質的に平行なガスチャネルを有する空間的ガス分配アセンブリにおいて特に有用であり得る。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される「実質的に平行(substantially parallel)」という表現は、ガスチャネルの長手方向軸が同じ概略方向に延在することを意味する。ガスチャネルの平行度には、若干の不完全さがあり得る。2成分反応では、複数の実質的に平行なガスチャネルは、少なくとも1つの第1の反応性ガスAチャネル、少なくとも1つの第2の反応性ガスBチャネル、少なくとも1つのパージガスPチャネル、及び/又は少なくとも1つの真空Vチャネルを含み得る。1つ又は複数の第1の反応性ガスAチャネル、1つ又は複数の第2の反応性ガスBチャネル、及び1つ又は複数のパージガスPチャネルから流れるガスは、ウエハの上面に向けて導かれる。一部のガス流は、ウエハ表面にわたって水平に移動し、1つ又は複数のパージガスPチャネルを通して処理領域から出る。基板がガス分配アセンブリの一端から他端まで移動することで、基板は、各処理ガスに順に曝露され、基板表面上に層が形成されることになる。
【0036】
[0042]幾つかの実施形態では、ガス分配アセンブリ220は、単一のインジェクタユニットで作られた剛性の固定体である。1つ又は複数の実施形態では、ガス分配アセンブリ220は、図3に示すように、複数の個々のセクタ(例えば、インジェクタユニット222)で構成されている。単片体又は複数のセクタ体のいずれであっても、記載された本開示の様々な実施形態と共に使用することができる。
【0037】
[0043]サセプタアセンブリ240は、ガス分配アセンブリ220の下方に位置付けされる。サセプタアセンブリ240は、上面241、及び上面241における少なくとも1つの凹部242を含む。サセプタアセンブリ240は、底面243及び縁244をさらに有する。凹部242は、処理される基板60の形状とサイズに応じて、任意の適切な形状とサイズであってもよい。図2に示す実施形態では、凹部242は、ウエハの底を支持するために平らな底部を有しているが、凹部の底部は変動し得る。幾つかの実施形態では、凹部の外周縁の周りには、ウエハの外周縁を支持するよう寸法形成された段差領域がある。この段差によって支持されるウエハの外周縁の面積は、例えば、ウエハの厚さや、ウエハの背面に既にあるフィーチャの存在に応じて変動し得る。
【0038】
[0044]幾つかの実施形態では、図2に示すように、サセプタアセンブリ240の上面241の凹部242は、凹部242内で支持される基板60が、サセプタ240の上面241と実質的に同一平面の上面61を有するように、寸法形成される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「実質的に同一平面(substantially coplanar)」という表現は、ウエハの上面とサセプタアセンブリの上面が、±0.2mm内で同一平面にあることを意味する。幾つかの実施形態では、上面は、0.5mm、±0.4mm、±0.35mm、±0.30mm、±0.25mm、±0.20mm、±0.15mm、±0.10mm、又は±0.05mmの範囲内で同一平面にある。
【0039】
[0045]図2のサセプタアセンブリ240は、サセプタアセンブリ240を上昇、下降、且つ回転させることが可能な支持ポスト260を含む。サセプタアセンブリは、支持ポスト260の中央内部にヒータ、又はガスライン、又は電子部品を含み得る。支持ポスト260は、サセプタアセンブリ240とガス分配アセンブリ220との間の間隙を広げたり狭めたりして、サセプタアセンブリ240を適切な位置へと移動させる主要手段であり得る。サセプタアセンブリ240は、微調整アクチュエータ262をさらに含み得る。微調整アクチュエータ262は、サセプタアセンブリ240とガス分配アセンブリ220との間に所定の間隙270が生じるように、サセプタアセンブリ240に対して微調整を行うことができる。
【0040】
[0046]幾つかの実施形態では、間隙270の距離は、約0.1mmから約5.0mmの範囲内、若しくは約0.1mmから約3.0mmの範囲内、若しくは約0.1mmから約2.0mmの範囲内、若しくは約0.2mmから約1.8mmの範囲内、若しくは約0.3mmから約1.7mmの範囲内、若しくは約0.4mmから約1.6mmの範囲内、若しくは約0.5mmから約1.5mmの範囲内、若しくは約0.6mmから約1.4mmの範囲内、若しくは約0.7mmから約1.3mmの範囲内、若しくは約0.8mmから約1.2mmの範囲内、若しくは約0.9mmから約1.1mmの範囲内であるか、又は、約1mmである。
【0041】
[0047]図に示されている処理チャンバ200は、サセプタアセンブリ240が複数の基板60を保持し得るカルーセル型チャンバである。図3に示すように、ガス分配アセンブリ220は、複数の個々のインジェクタユニット222を含み得る。各インジェクタユニット222は、ウエハがインジェクタユニットの下方に移動するにつれて、ウエハに膜を堆積させることが可能である。2つのパイ形状のインジェクタユニット222が、サセプタアセンブリ240のほぼ両側で、且つサセプタアセンブリ240の上に位置付けされているように示されている。インジェクタユニット222の数は、例示目的のためにのみ示されている。より多くの又はより少ないインジェクタユニット222を含み得ることを理解されたい。幾つかの実施形態では、サセプタアセンブリ240の形状に適合する形状を形成するのに十分な数のパイ形状のインジェクタユニット222が存在する。幾つかの実施形態では、個々のパイ形状のインジェクタユニット222は、それぞれ、他のインジェクタユニット222のいずれにも影響を与えることなく、個別に移動してもよく、取り外されてもよく、且つ/又は交換されてもよい。例えば、あるセグメントを上昇させることにより、ロボットがサセプタアセンブリ240とガス分配アセンブリ220との間の領域にアクセスして、基板60をローディング/アンローディングすることを可能にすることができる。
【0042】
[0048]複数のウエハを同時に処理するために、複数のガスインジェクタを有する処理チャンバが使用することができ、それにより、複数のウエハが同じ処理の流れを経る。例えば、図4に示すように、処理チャンバ200は、4つのガスインジェクタアセンブリ、及び4つの基板60を有する。処理開始の際、基板60は、ガス分配アセンブリ220間に位置付けされ得る。サセプタアセンブリ240を45°回転させること17により、ガス分配アセンブリ220間にある各基板60が、膜堆積のために、ガス分配アセンブリ220の下方の点線円で示されているように、ガス分配アセンブリ220の方に移動させられる。さらに45°回転させることにより、基板60はガス分配アセンブリ220から離れる方向に移動することになる。基板60の数とガス分配アセンブリ220の数は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、処理されるウエハの数は、ガス分配アセンブリの数と同じである。1つ又は複数の実施形態では、処理されるウエハの数は、ガス分配アセンブリの数の分数又は整数倍になる。例えば、4つのガス分配アセンブリが存在する場合、4xの処理されるウエハが存在し、ここでxは1以上の整数値である。例示的な実施形態では、ガス分配アセンブリ220は、ガスカーテンによって分離された8つの処理領域を含み、サセプタアセンブリ240は、6つのウエハを保持し得る。
【0043】
[0049]図4に示す処理チャンバ200は、実行可能な一構成を表しているに過ぎず、本開示の範囲を限定していると見なすべきではない。ここでは、処理チャンバ200は、複数のガス分配アセンブリ220を含む。図示の実施形態では、4つのガス分配アセンブリ(インジェクタアセンブリとも呼ばれる)があり、処理チャンバ200の周囲で均等に離間している。図示の処理チャンバ200は八角形であるが、当業者であれば、これは可能な一形状であり、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことを理解されよう。図示のガス分配アセンブリ220は台形であるが、単一の円形構成要素であってもよく、又は、図3に示すように、複数のパイ形状のセグメントで構成されてもよい。
【0044】
[0050]図4に示す実施形態は、ロードロックチャンバ280、又はバッファステーションのような補助チャンバを含む。このチャンバ280は、処理チャンバ200の側面に接続されており、それにより、例えば、基板(基板60とも呼ばれる)が処理チャンバ200にローディングされたり、処理チャンバ200からアンローディングされることが可能となる。基板をサセプタ上に移動させるために、ウエハロボットをチャンバ280内に配置してもよい。
【0045】
[0051]カルーセル(例えば、サセプタアセンブリ240)の回転は、連続的であってもよく、又は断続的(不連続)であってもよい。連続処理においては、ウエハは、常に回転しており、各インジェクタに順に曝露される。非連続処理においては、ウエハは、インジェクタ領域に移動してから停止し、次いで、インジェクタ間の領域84に移動してから停止し得る。例えば、カルーセルは、ウエハが、インジェクタ間領域からインジェクタを通って移動し(又はインジェクタの隣で停止し)、カルーセルが再び一時停止することができる次のインジェクタ間領域に向かうように、回転することができる。インジェクタ間で一時停止することにより、各層の堆積と堆積との間に、追加の処理ルーチン(例えば、プラズマへの曝露)を行う時間が確保され得る。
【0046】
[0052]図5は、ガス分配アセンブリ220のセクタ又は一部を示し、これは、インジェクタユニットと呼ばれ得る。インジェクタユニット222は、個別に使用してもよく、又は他のインジェクタユニットと組み合わせて使用してもよい。例えば、図6に示すように、図5のインジェクタユニット222が4つ組み合わされて、単一のガス分配アセンブリ220が形成される。(分かりやすくするために、4つのインジェクタユニットを分ける線は示されていない。)図5のインジェクタユニット222は、パージガスポート255及び真空ポート245に加えて、第1の反応性ガスポート225と第2ガスポート235の両方を有しているが、インジェクタユニット222には、これらの構成要素の全てが必要なわけではない。
【0047】
[0053]図5及び図6の両方を参照すると、1つ又は複数の実施形態に係るガス分配アセンブリ220は、複数のセクタ(又はインジェクタユニット222)を備え得る。各セクタは、同一であるか、又は異なっている。ガス分配アセンブリ220は、処理チャンバの中に位置付けられており、ガス分配アセンブリ220の前面221には、複数の細長いガスポート225、235、245が備え付けられている。複数の細長いガスポート225、235、245、255は、内周縁223に隣接する領域から、ガス分配アセンブリ220の外周縁224に隣接する領域に向かって延在する。図示の複数のガスポートは、第1の反応性ガスポート225、第2のガスポート235、第1の反応性ガスポートと第2の反応性ガスポートのそれぞれを取り囲む真空ポート245、及びパージガスポート255を含む。
【0048】
[0054]図5又は図6に示す実施形態を参照すると、ポートが少なくとも内周領域周辺から少なくとも外周領域周辺まで延在すると述べたとしても、ポートは、単に内側領域から外側領域まで径方向に延在するだけではないことがある。真空ポート245は、反応性ガスポート225及び反応性ガスポート235を取り囲むので、ポートは、接線方向に延在することができる。図5及び図6に示す実施形態では、くさび型の反応性ガスポート225、235は、内周領域と外周領域に隣接する縁を含むすべての縁が真空ポート245によって囲まれている。
【0049】
[0055]図5を参照すると、基板が経路227に沿って移動するにつれて、基板表面の各部分が様々な反応性ガスに曝露される。経路227を辿ると、基板は、パージガスポート255、真空ポート245、第1の反応性ガスポート225、真空ポート245、パージガスポート255、真空ポート245、第2のガスポート235、そして真空ポート245に曝されることになり、すなわち、これらに「遭遇」することになる。ゆえに、図5に示す経路227の終点では、基板は、第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスに曝露されており、層が形成される。図示のインジェクタユニット222は、四分円をなしているが、より大きくてもよく、又はより小さくてもよい。図6に示すガス分配アセンブリ220は、図3のインジェクタユニット222が4つ連続的に接続されて組み合わさったものであると見なしてよい。
【0050】
[0056]図5のインジェクタユニット222は、反応性ガスを分離させるガスカーテン250を示す。「ガスカーテン」という用語は、反応性ガスを混合しないように分離させるガス流又は真空の任意の組み合わせを説明するために使用される。図5に示すガスカーテン250は、真空ポート245の第1の反応性ガスポート225に隣り合った部分、中間のパージガスポート255、及び真空ポート245の第2のガスポート235に隣り合った部分を含む。ガス流と真空とのこの組み合わせは、第1の反応性ガスと第2の反応性ガスとの気相反応を防止又は最少化するために使用され得る。
【0051】
[0057]図6を参照すると、ガス分配アセンブリ220からのガス流と真空との組み合わせが、複数の処理領域350に分離をもたらす。処理領域は、個々のガスポート225、235の周りに大まかに画定されており、350の間にガスカーテン250が伴う。図6に示す実施形態は、8つの別個の処理領域350からなり、それらの間に8つの別個のガスカーテン250がある。処理チャンバは、少なくとも2つの処理領域を有し得る。幾つかの実施形態では、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の処理領域が存在する。
【0052】
[0058]処理中、基板は、任意の所与の時点で1つより多くの処理領域350に曝露され得る。しかしながら、種々の処理領域に曝露される諸部分では、ガスカーテンが2つを分離する。例えば、基板の先端縁が第2のガスポート235を含む処理領域に入った場合、基板の中央部はガスカーテン250の下にあり、基板の後端縁は第1の反応性ガスポート225を含む処理領域内にある。
【0053】
[0059]例えば、ロードロックチャンバ280であり得るファクトリインターフェース(図4に示す)が、処理チャンバ200に接続されているように示されている。基板60は、ガス分配アセンブリ220に重なり合うように示されており、参照用のフレームが提供される。基板60は、多くの場合、ガス分配アセンブリ220の前面221の近くに保持されるようサセプタアセンブリ上に配置され得る。基板60は、ファクトリインターフェースを介して、処理チャンバ200の中へとローディングされ、基板支持体又はサセプタアセンブリ上に配置される(図4参照)。基板60は、第1の反応性ガスポート225に隣接し、2つのガスカーテン250a、250bの間に配置されているので、処理領域内に位置付けされたように示され得る。基板60を経路227に沿って回転させることにより、基板は、処理チャンバ200を反時計回りに移動することになる。したがって、基板60は、第1の処理領域350aから第8の処理領域350hまでの、その間の処理領域を含むすべての処理領域に曝露されることになる。
【0054】
[0060]本開示の幾つかの実施形態は、複数の処理領域350a~350hを有する処理チャンバ200であって、各処理領域が隣接する領域からガスカーテン250によって分離されている処理チャンバ200を対象としている。例えば、図6に示す処理チャンバである。処理チャンバ内のガスカーテンと処理領域の数は、ガス流の配置に応じて、任意の適切な数であり得る。図6に示す実施形態は、8つのガスカーテン250、及び8つの処理領域350a~350hを有する。
【0055】
[0061]再び図1を参照すると、処理プラットフォーム100は、中央移送ステーション110の第2の側面112に接続された処理チャンバ140を含む。幾つかの実施形態の処理チャンバ140は、第1のバッチ処理チャンバ120におけるプロセスの前及び/又は後にウエハを処理するプロセスにウエハを曝露するように構成される。幾つかの実施形態の処理チャンバ140は、アニーリングチャンバを含む。アニーリングチャンバは、炉アニーリングチャンバ若しくは急速熱アニーリングチャンバ、又は所定の温度及び圧力でウエハを保持し、チャンバにガス流を供給するように構成された別のチャンバであり得る。
【0056】
[0062]幾つかの実施形態では、処理プラットフォームは、中央移送ステーション110の第3の側面113に接続された第2のバッチ処理チャンバ130をさらに備えている。第2のバッチ処理チャンバ130は、第1のバッチ処理チャンバ120と同様に構成することができ、又は異なるプロセスを実行するように若しくは異なる数の基板を処理するように構成することができる。
【0057】
[0063]第2のバッチ処理チャンバ130は、第1のバッチ処理チャンバ120と同じであってもよいし、又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、第1のバッチ処理チャンバ120と第2のバッチ処理チャンバ130は、x(第1バッチ処理チャンバ120のウエハの数)とy(第2のバッチ処理チャンバ130のウエハの数)が同じとなり、(第2のバッチ処理チャンバ130の)第1のバッチ時間と第2のバッチ時間とが同じになるように、同じバッチ時間で同じ枚数のウエハで同じ処理を行うように構成されている。幾つかの実施形態では、第1のバッチ処理チャンバ120及び第2のバッチ処理チャンバ130は、異なる数のウエハ(xはyに等しくない)、異なるバッチ時間、又はその両方のうちの1つ又は複数を有するように構成されている。
【0058】
[0064]図1に示す実施形態では、処理プラットフォーム100は、中央移送ステーション110の第4の側面114に接続された第2の処理チャンバ150を含む。第2のバッチ処理チャンバ150は、処理チャンバ140と同じであってもよいし、又は異なっていてもよい。
【0059】
[0065]処理プラットフォーム100は、ロボット117に接続されたコントローラ195(接続は図示せず)を含み得る。コントローラ195は、ロボット117の第1のアーム118を用いて、処理チャンバ140と第1のバッチ処理チャンバ120との間でウエハを移動させるように構成され得る。幾つかの実施形態では、コントローラ195は、ロボット117の第2のアーム119を用いて、第2の処理チャンバ150と第2のバッチ処理チャンバ130との間でウエハを移動させるようにさらに構成される。
【0060】
[0066]幾つかの実施形態では、コントローラ195は、処理チャンバ200のサセプタアセンブリ240及びガス分配アセンブリ220に接続される。コントローラ195は、サセプタアセンブリ240を中心軸の周りで回転17させるように構成され得る。コントローラは、ガスポート225、235、245、255内のガス流を制御するようにさらに構成され得る。幾つかの実施形態では、第1の反応性ガスポート225は、ルテニウム前駆体の流れを供給する。幾つかの実施形態では、第2の反応性ガスポート235は、反応物質の流れを供給する。幾つかの実施形態では、他のガスポート(符号なし)は、プラズマの流れを供給し得る。第1の反応性ガスポート225、第2の反応性ガスポート235、及び他の反応性ガスポート(符号なし)は、任意の処理順序で配置することができる。
【0061】
[0067]処理プラットフォーム100は、中央移送ステーション110の第5の側面115に接続された第1のバッファステーション151、及び/又は中央移送ステーション110の第6の側面116に接続された第2のバッファステーション152を含み得る。第1のバッファステーション151及び第2のバッファステーション152は、同じ又は異なる機能を実行することができる。例えば、バッファステーションは、ウエハのカセットを保持し得る。このウエハのカセットは、処理されて元のカセットに戻される。又は、第1のバッファステーション151は、未処理のウエハを保持し得る。このウエハは、処理された後に第2のバッファステーション152に移動する。幾つかの実施形態では、バッファステーションのうちの1つ又は複数は、処理の前及び/又は後にウエハを前処理、予加熱、又は洗浄するように構成されている。
【0062】
[0068]幾つかの実施形態では、コントローラ195は、ロボット117の第1のアーム118を用いて、第1のバッファステーション151と、処理チャンバ140及び第1のバッチ処理チャンバ120のうちの1つ又は複数との間でウエハを移動させるように構成されている。幾つかの実施形態では、コントローラ195は、ロボット117の第2のアーム119を用いて、第2のバッファステーション152と、第2の処理チャンバ150又は第2のバッチ処理チャンバ130のうちの1つ又は複数との間でウエハを移動させるように構成されている。
【0063】
[0069]処理プラットホーム100は、中央移送ステーション110と任意の処理チャンバとの間に1つ又は複数のスリット弁160をさらに含み得る。図示の実施形態では、処理チャンバ120、130、140、150のそれぞれと中央移送ステーション110との間にスリット弁160が存在する。スリット弁160は、開閉して、中央移送ステーション110内の環境から処理チャンバ内の環境を隔離することができる。例えば、処理チャンバが処理中にプラズマを生成する場合、浮遊プラズマが移送ステーション内のロボットを損傷することを防止するために、その処理チャンバのスリット弁を閉じることが役立つ場合がある。
【0064】
[0070]幾つかの実施形態では、処理チャンバは、中央移送ステーション110から容易に取り外すことができない。処理チャンバのいずれかに対してメンテナンスを行うことを可能にするために、各処理チャンバは、処理チャンバの側面に複数のアクセスドア170をさらに備え得る。アクセスドア170は、中央移送ステーション110から処理チャンバを取り外すことなく、処理チャンバへの手動アクセスを可能にする。図示の実施形態では、各処理チャンバの各側面は、移送ステーションに接続された側面を除いて、アクセスドア170を有する。このようにあまりにも多くのアクセスドア170を含むと、チャンバ内のハードウェアを、ドアを介してアクセス可能であるように構成しなければならないので、使用される処理チャンバの構成を複雑にしてしまう恐れがある。
【0065】
[0071]幾つかの実施形態の処理プラットフォームは、中央移送ステーション110に接続されたウォーターボックス180を含む。ウォーターボックス180は、処理チャンバのいずれか又は全てに冷却剤を供給するように構成され得る。ここでは「ウォーター」ボックスと呼ばれるが、当業者であれば、任意の冷却剤を使用できることを理解するであろう。
【0066】
[0072]幾つかの実施形態では、処理プラットフォーム100の大きさにより、単一の電力コネクタ190を介して、接続が電力を収容することが可能になる。単一の電力コネクタ190は、処理プラットフォーム100に取り付けられ、処理チャンバ及び中央移送ステーション110のそれぞれに電力を供給する。
【0067】
[0073]処理プラットフォーム100をファクトリインターフェース102に接続することができ、それにより、処理プラットフォーム100にウエハ又はウエハのカセットをロードすることが可能になる。ファクトリインターフェース102内のロボット103は、ウエハ又はカセットをバッファステーション151、152に出入りするように移動させることができる。中央移送ステーション110内のロボット117によって、ウエハ又はカセットを処理プラットフォーム100内で移動させることができる。幾つかの実施形態では、ファクトリインターフェース102は、別のクラスタツールの移送ステーションである。
【0068】
[0074]幾つかの実施形態では、処理プラットフォーム100又は第1のバッチ処理チャンバ120は、コントローラに接続される。コントローラは、同じコントローラ195であってもよく、又は異なるコントローラであってもよい。コントローラは、第1のバッチ処理チャンバ120のサセプタアセンブリ及びガス分配アセンブリに連結可能であり、1つ又は複数の構成を有する。この構成には、サセプタアセンブリを中心軸の周りで回転させる第1の構成、ルテニウム前駆体の流れをプロセス領域に供給する第2の構成、反応物質の流れを処理領域に供給する第3の構成、プラズマを処理領域内に供給する第4の構成が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0069】
[0075]図7は、本開示の一又は複数の実施形態に係る、基板上にルテニウム含有層を形成する方法を示す。方法700は、概して、702で始まり、ルテニウム含有層が上部に形成される基板は、処理チャンバ内に設置且つ配置される。ここで使用される「基板表面(substrate surface)」とは、上部に層が形成され得る任意の基板表面のことを指す。基板表面は、その中に形成された1つ又は複数のフィーチャ、その上に形成された1つ又は複数の層、及びこれらの組合せを有し得る。基板(又は基板表面)は、ルテニウム含有層の堆積の前に、例えば、研磨、エッチング、還元、酸化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、アニーリング、ベーキングなどによって前処理され得る。
【0070】
[0076]基板は、例えば、シリコン基板、III-V化合物基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、エピ基板、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板、ディスプレイ基板(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセンス(EL)ランプディスプレイ)、太陽電池アレイ、ソーラーパネル、発光ダイオード(LED)基板、半導体ウエハ、又は同等物などの、上部に材料を堆積することが可能な任意の基板であり得る。幾つかの実施形態では、ルテニウム含有層が少なくとも部分的に上部に形成され得るように、1つ又は複数の追加の層を基板に配置してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、金属、窒化物、酸化物、若しくは同等物、又はこれらの組み合わせを含む層が、基板上に配置されてもよく、このような1つ又は複数の層の上にルテニウム含有層が形成され得る。
【0071】
[0077]704では、ルテニウム含有層が基板上に形成される。ルテニウム含有層は、原子層堆積(ALD)などの周期的堆積処理によって形成することができる。幾つかの実施形態では、周期的堆積処理によるルテニウム含有層の形成は、概して、基板を2つ以上の処理ガスに別々に曝露することを含み得る。時間領域ALDの実施形態では、各処理ガスへの曝露は、時間遅延/休止によって分けられ、それにより、処理ガスの成分が、基板表面に付着し且つ/又は基板表面で反応することが可能になる。代替的に、又は組み合わせにより、幾つかの実施形態では、基板を処理ガスに曝露する前及び/又は後にパージを行ってもよい。パージを行うためには、不活性ガスが使用される。例えば、第1の処理ガスを処理チャンバに供給し、その後、不活性ガスによるパージを行うことができる。次に、第2の処理ガスを処理チャンバに供給し、その後、不活性ガスによるパージを行うことができる。幾つかの実施形態では、不活性ガスは、処理チャンバに継続的に供給されてもよく、第1の処理ガスが、処理チャンバ内に投与又はパルス供給され、その後、第2の処理ガスが、処理チャンバ内に投与又はパルス供給され得る。このような実施形態では、第1の処理ガスの投与と第2の処理ガスの投与との間に遅延又は休止が生じる場合があり、これにより、処理ガスの投与間に不活性ガスの連続流が処理チャンバをパージすることが可能になる。
【0072】
[0078]空間ALDの実施形態では、(2つの反応性ガスのみが使用される場合に)基板の一部が第1の反応性ガスに曝露され、基板の異なる部分が第2の反応性ガスに曝露されるように、各処理ガスへの曝露は、基板の種々の部分に対して同時に行われる。基板は、その上の各点が、第1の反応性ガスと第2の反応性ガスとの両方に連続的に曝露されるように、ガス供給システムに対して移動させられる。時間領域ALD又は空間ALD処理の任意の実施形態では、所定の層厚が基板表面上に形成されるまで、このシーケンスが繰り返され得る。
【0073】
[0079]ここで使用される「パルス(pulse)」又は「投与(dose)」は、処理チャンバ内に断続的に又は非連続的に導入される原料ガスの量を指すことが意図される。各パルス内の特定の化合物の量は、パルスの持続時間に応じて、経時的に変動し得る。特定の処理ガスは、単一の化合物、又は2つ以上の化合物の混合物/組み合わせ(例えば、以下に記載される処理ガス)を含み得る。
【0074】
[0080]各パルス/投与の持続時間は、可変であり、例えば、処理チャンバの空間容量、並びに処理チャンバに連結された真空システムの能力に適合するように調整され得る。さらに、処理ガスの投与時間は、処理ガスの流量、処理ガスの温度、制御弁の種類、使用される処理チャンバの種類、及び基板表面に吸着する処理ガスの成分の能力に応じて変動し得る。投与時間は、形成される層の種類、及び形成されるデバイスの形状に基づいても変動し得る。投与時間は、基板の表面全体に実質的に吸着/化学吸着し、その上に処理ガス成分の層を形成するのに十分な量の化合物を供給するのに十分な長さでなければならない。
【0075】
[0081]704でルテニウム含有層を形成する処理は、基板を第1の反応性ガスに曝露することによって開始し得る。幾つかの実施形態では、第1の反応性ガスは、ルテニウム前駆体(ルテニウム含有ガス等とも呼ばれる)を含み、706に示すように、第1の期間にわたって基板に曝露される。
【0076】
[0082]ルテニウム前駆体は、後の反応のために基材上にルテニウムの層を吸着させるための任意の適切な前駆体であり得る。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、ルテニウム金属中心及び1つ又は複数の配位子を含む。幾つかの実施形態では、ルテニウム金属中心は、1つ又は複数のルテニウム原子を含む。言い換えると、幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、二量体、三量体、又は四量体のうちの1つ又は複数である。
【0077】
[0083]ルテニウム前駆体上の配位子の数及び配位子の種類は、例えば、ルテニウム原子の酸化状態に基づいて変動し得る。ルテニウム前駆体は、ホモレプティック又はヘテロレプティックであり得る。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、ホモレプティック錯体である(すなわち、ルテニウム前駆体の配位子が同一である)。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、ヘテロレプティックである(すなわち、配位子の少なくとも1つが他の配位子とは異なる)。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru(CO)12)を含む。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、少なくとも1つのシクロペンタジエニル配位子(Cp)又はその誘導体を含む。シクロペンタジエニル配位子の適切な誘導体には、1つ又は複数のアルキル基又はアミノ基で置換されたCp、及び別のCp又は異なる配位子に共有結合されたCpが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)(Ru(Cp))を含む。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)(Ru(EtCp))を含むか、又は実質的にそれからなる。幾つかの実施形態では、ルテニウム前駆体は、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)(Ru(MeCp)又はRu(Cp*))を含むか、又は実質的にそれらからなる。
【0078】
[0084」ルテニウム前駆体は、ルテニウム含有ガスとして処理チャンバに供給される。ルテニウム含有ガスは、1つ又は複数のパルスで、又は連続的に供給され得る。ルテニウム含有ガスの流量は、約1から約5000sccmの範囲、又は約2から約4000sccmの範囲、又は約3から約3000sccmの範囲、又は約5から約2000sccmの範囲を含む任意の適切な流量であり得るが、これらに限定されない。ルテニウム含有ガスは、約5mTorrから約25Torrの範囲、又は約100mTorrから約20Torrの範囲、又は約5Torrから約20Torrの範囲、又は約50mTorrから約2000mTorrの範囲、又は約100mTorrから約1000mTorrの範囲、又は約200mTorrから約500mTorrの範囲の圧力を含む任意の適切な圧力で供給され得るが、これらに限定されない。
【0079】
[0085]基板がルテニウム含有ガスに曝露される期間は、ルテニウム前駆体が、基板表面の上に適切な核形成層を形成することを可能にするのに必要な任意の適切な時間であり得る。例えば、処理ガスは、約0.1秒から約90秒の期間にわたって処理チャンバ内に流入し得る。幾つかの時間領域ALD処理では、ルテニウム含有ガスは、約0.1秒から約90秒の範囲、又は約0.5秒から約60秒の範囲、又は約1秒から約30秒の範囲、又は約2秒から約25秒の範囲、又は約3秒から約20秒の範囲、又は約4秒から約15秒の範囲、又は約5秒から約10秒の範囲の時間にわたって基板表面に曝露される。
【0080】
[0086]幾つかの実施形態では、不活性ガスは、ルテニウム含有ガスと同時に処理チャンバに追加的に供給され得る。不活性ガスは、(例えば、希釈ガスとして)ルテニウム含有ガスと混合されてもよく、又は別々に供給されてもよく、且つパルス供給であってもよく、又は一定の流れであってもよい。幾つかの実施形態では、不活性ガスは、約1から約10000sccmの範囲の一定流量で処理チャンバ内に流入する。不活性ガスは、任意の不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、又はこれらの組み合わせ等)であってもよい。1つ又は複数の実施形態では、ルテニウム含有ガスは、処理チャンバ内に流入する前に、アルゴンと混合される。
【0081】
[0087]堆積中の基板の温度は、例えば、基板支持体又はサセプタの温度を設定することによって制御することができる。幾つかの実施形態では、基板は、約0℃から約600℃の範囲、又は約25℃から約500℃の範囲、又は約50℃から約450℃の範囲、又は約100℃から約400℃の範囲、又は約100℃から約200℃の範囲、又は約250℃から約350℃の範囲の温度に保持される。
【0082】
[0088]1つ又は複数の実施形態では、基板温度は、堆積処理の選択性を調整するように制御される。幾つかの実施形態では、基板は、約200℃以下、又は約150℃以下、又は約100℃未満に維持され、ルテニウムは、導電材料よりも絶縁材料上に堆積される。幾つかの実施形態では、基板は、約250℃以上、又は約300℃以上、又は約350℃以上に維持され、ルテニウムは、絶縁材料よりも導電材料上に堆積される。
【0083】
[0089]上記に加えて、基板をルテニウム含有ガスに曝露する間、追加の処理パラメータを調節してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、処理チャンバは、約0.2から約100Torr、又は約0.3から約90Torrの範囲、又は約0.5から約80Torrの範囲、又は約1から約50Torrの範囲の圧力で維持され得る。
【0084】
[0090]次に、708では、(特に時間領域ALDにおいて)処理チャンバは、不活性ガスを使用してパージされてもよい。(空間的ALD処理では、反応性ガスを分離するガスカーテンが存在するので、これは必要とされない場合がある。)不活性ガスは、任意の不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素等)であってもよい。幾つかの実施形態では、不活性ガスは、基板をルテニウム含有ガスに曝露する間(706)に処理チャンバに供給される不活性ガスと同一であってもよく、又は代替的にそれと異なっていてもよい。不活性ガスが同一である実施形態では、第1の処理ガスを処理チャンバから偏向させ、不活性ガスが処理チャンバを通って流れることを可能にすることによってパージが実行され得る。それにより、処理チャンバから任意の過剰な第1の処理ガス成分又は反応副産物をパージする。幾つかの実施形態では、不活性ガスは、上述の第1の処理ガスに関連して使用される流量と同じ流量で供給されてもよく、又は幾つかの実施形態では、流量を増加又は減少させてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、不活性ガスは、処理チャンバをパージするために約0から約10000sccmの流量で処理チャンバに供給され得る。空間的ALDでは、反応性ガスの流れと流れとの間にパージガスカーテンが維持されており、処理チャンバをパージする必要がない場合がある。空間的ALD処理の幾つかの実施形態では、処理チャンバ又は処理チャンバ領域は、不活性ガスでパージされ得る。
【0085】
[0091]不活性ガスの流れは、処理チャンバからの任意の過剰な第1の処理ガス成分及び/又は過剰な反応副産物の除去を促進させ、第1及び第2の処理ガスの望ましくない気相反応を防止することができる。例えば、不活性ガスの流れは、処理チャンバから過剰なルテニウム含有ガスを除去し、ルテニウム前駆体とその後の反応性ガスとの間の反応を防止することができる。
【0086】
[0092]次に、710では、基板が、第2の期間にわたって、第2の処理ガスに曝露される。第2の処理ガスは、基板表面上のルテニウム含有化合物と反応して堆積膜を生成する。幾つかの実施形態では、第2の反応性ガスは、反応物質(reactant)と呼ばれる。第2の処理ガスは、得られたルテニウム膜に衝突し得る。例えば、第2の処理ガスがHである場合、ルテニウム膜が堆積され得るが、第2の反応性ガスがシラン又はジシランの場合、ルテニウムシリサイド膜が堆積され得る。
【0087】
[0093]幾つかの実施形態では、第2の反応性ガスは、O、H、HO、又はそれらのプラズマのうちの1つ又は複数を含む。幾つかの実施形態では、第2の反応性ガスは、金属膜(例えば、ルテニウム膜)又は金属酸化物(例えば、Ru)を基板に堆積させるために選択される。
【0088】
[0094]幾つかの実施形態では、第2の反応性ガスは、水素を含み、形成された結果的な膜は、ルテニウム膜である。水素ガスは、ルテニウム含有ガスよりも大きい流量で基板表面に供給され得る。1つ又は複数の実施形態では、Hの流量は、ルテニウム含有ガスの流量の約1倍、又はルテニウム含有ガスの流量の約100倍、又はルテニウム含有ガスの流量の約3000から5000倍の範囲である。水素ガスは、時間領域ALDでは、約1秒から約30秒の範囲、又は約5秒から約20秒の範囲、又は約10秒から約15秒の範囲の時間にわたって供給され得る。水素ガスは、約1Torrから約30Torrの範囲、又は約5Torrから約25Torrの範囲、又は約10Torrから約20Torrの範囲、又は最大約50Torrの範囲の圧力で供給され得る。本明細書の他の箇所に開示されているように、基板温度は、任意の適切な温度で維持され得る。1つ又は複数の実施形態では、基板は、ルテニウム含有ガスに曝露されている間の基板の温度とほぼ同じ温度で維持される。
【0089】
[0095]次に、712では、処理チャンバは、不活性ガスを使用してパージされ得る。不活性ガスは、任意の不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素等)であってもよい。幾つかの実施形態では、不活性ガスは、以前の処理ルーチン中に処理チャンバに供給される不活性ガスとは同一であってもよく、又は代替的に、異なっていてもよい。不活性ガスが同一である実施形態では、第2の処理ガスを処理チャンバから偏向させ、不活性ガスが処理チャンバを通って流れることを可能にすることによってパージが実行され得る。それにより、処理チャンバから任意の過剰な第2の処理ガス成分又は反応副産物をパージする。幾つかの実施形態では、不活性ガスは、上述の第2の処理ガスに関連して使用される流量と同じ流量で供給されてもよく、又は幾つかの実施形態では、流量を増加又は減少させてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、不活性ガスは、処理チャンバをパージするために0より大きな流量から約10,000sccmの流量で処理チャンバに供給され得る。
【0090】
[0096]図面に示された処理方法の概略的な実施形態は、反応性ガスの2つのパルスのみを含むが、これらは例示に過ぎず、反応性ガスの追加のパルスを使用し得ることを理解されたい。例えば、窒化物膜は、金属前駆体ガスを含む第1のパルス、還元剤を含む第2のパルス、及び窒化のための窒素の第3のパルスによって、成長させることができる。パルスは、全体的に又は部分的に繰り返すことができる。例えば、3つのパルス全てを繰り返してもよく、又は2つのみを繰り返してもよい。これは、各サイクルにつき変動し得る。
【0091】
[0097]堆積処理は、熱的処理又はプラズマ強化処理であり得、いずれともプラズマの追加を使用することができる。図には示されていないが、幾つかの実施形態では、基板はプラズマに曝露される。幾つかの実施形態では、プラズマは、O、H、又はHOのうちの1つ又は複数のプラズマを含む。幾つかの実施形態では、基板は、反応物質のプラズマに曝露される。幾つかの実施形態では、プラズマは、限定されないが、窒素、アルゴン、又はヘリウムを含む不活性ガス、希釈ガス、又はキャリアガスのプラズマを含む。プラズマは、直流プラズマ又は遠隔プラズマであり得る。反応プラズマは、導電結合プラズマ(CCP)又は誘導結合プラズマ(ICP)であり得る。
【0092】
[0098]次に、714では、ルテニウム含有層が所定の厚さに達したかどうかが判定される。所定の厚さに達していない場合、方法700は704に戻り、所定の厚さに達するまでルテニウム含有層を形成し続ける。一旦所定の厚さに達すると、方法700は、終了するか、又は任意選択的なさらなる処理(例えば、別の金属膜のバルク堆積)のために716に進み得る。幾つかの実施形態では、ルテニウム含有層は、約10から約10,000Å、又は幾つかの実施形態では、約10から約1000Å、又は幾つかの実施形態では、約50から約5,000Åの総層厚を形成するように堆積され得る。
【0093】
[0099]本開示の幾つかの実施形態は、ルテニウム含有膜を堆積させる方法を対象とする。幾つかの実施形態のルテニウム含有膜は、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、及び/又は酸窒化ルテニウムのうちの1つ又は複数を含む。当業者であれば、堆積される膜は、原子ベースで非化学量論量の金属、酸素、及び/又は窒素原子を有し得るよいことを理解するであろう。
【0094】
[00100]幾つかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、約95原子パーセント以上のルテニウム、約97原子パーセント以上のルテニウム、約98原子パーセント以上のルテニウム、約99原子パーセント以上のルテニウム、又は約99.5原子パーセント以上のルテニウムを含む。1つ又は複数の実施形態では、C、N、及びO原子の合計は、ルテニウム含有膜の約5原子パーセント以下、約3原子パーセント以下、約2原子パーセント以下、約1原子パーセント以下、又は約0.5原子パーセント以下である。
【0095】
[00101]本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の例示に過ぎないことを理解されたい。当業者であれば、本開示の精神及び範囲から逸脱せずに、様々な改変及び変形を本開示の方法及び装置に対して行うことができることが明らかであろう。ゆえに、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等物に含まれる改変例及び変形例を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7