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特許7094379組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサ、光学フィルタの製造方法、カメラモジュール、化合物、及び、分散組成物
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  • 特許-組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサ、光学フィルタの製造方法、カメラモジュール、化合物、及び、分散組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサ、光学フィルタの製造方法、カメラモジュール、化合物、及び、分散組成物
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20220624BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20220624BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220624BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220624BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220624BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220624BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220624BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C09B67/20 F CSP
C09B57/00 Z
C09B67/46 A
C08L101/00
G03F7/004 505
G02B5/22
G03B17/02
H04N5/225 400
H01L27/146 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020548278
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034644
(87)【国際公開番号】W WO2020059483
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018173870
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019151055
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 憲文
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 賢
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-051952(JP,A)
【文献】特開2015-151466(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166873(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/017874(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第01039379(GB,A)
【文献】中国特許出願公開第1511883(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物と、
バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含み、
前記色素構造が、ピロロピロール色素構造、スクアリリウム色素構造、及び、フタロシアニン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素構造である組成物。
【化1】

式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、Zは、N、又は、N-Rを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、*は前記色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【請求項2】
前記式(1)で表される部分構造が、下記式(2)で表される部分構造である請求項1に記載の組成物。
【化2】

式(2)中、Xは、ヘテロアリール基を表し、*は前記色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【請求項3】
前記式(1)のX~Xにおける前記ヘテロアリール基が、フラニル基、又は、チエニル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(2)のXにおける前記ヘテロアリール基が、フラニル基、又は、チエニル基である請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物が、650nm~1,500nmの範囲に極大吸収波長を有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物が、下記式(3)で表される化合物である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】

式(3)中、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、A及びAはそれぞれ独立に、置換基を表し、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、X~X13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、X10~X13の少なくとも1つはヘテロアリール基である。
【請求項7】
前記硬化性化合物を含み、光重合開始剤を更に含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の組成物を含むか又は前記組成物を硬化してなる膜。
【請求項9】
請求項に記載の膜を有する光学フィルタ。
【請求項10】
赤外線カットフィルタ又は赤外線透過フィルタである請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
請求項に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項12】
請求項に記載の膜を有する赤外線センサ。
【請求項13】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層をパターン状に露光する工程と、
前記露光する工程後の未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含む光学フィルタの製造方法。
【請求項14】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を硬化して硬化層を形成する工程と、
前記硬化層上にフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層を露光及び現像することによりパターニングしてレジストパターンを得る工程と、
前記レジストパターンをエッチングマスクとして前記硬化層をドライエッチングする工程と、を含む光学フィルタの製造方法。
【請求項15】
固体撮像素子と、請求項又は請求項10に記載の光学フィルタとを有するカメラモジュール。
【請求項16】
下記式(3)で表される化合物。
【化4】

式(3)中、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、A及びAはそれぞれ独立に、置換基を表し、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、X~X13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、X10~X13の少なくとも1つはヘテロアリール基である。
【請求項17】
下記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物と、
溶剤、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含み、
前記色素構造が、ピロロピロール色素構造、スクアリリウム色素構造、及び、フタロシアニン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素構造である分散組成物。
【化5】

式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、Zは、N、又は、N-Rを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、*は前記色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本開示は、組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサ、光学フィルタの製造方法、カメラモジュール、化合物、及び、分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】

ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用している。このために、赤外線カットフィルタを使用して視感度補正を行うことがある。
【0003】

また、従来の赤外線センサ又は赤外線吸収剤としては、特許文献1~3に記載されたものが知られている。

特許文献1には、赤外線透過フィルタと、近赤外線吸収フィルタとを有し、波長900nm以上1000nm以下の光を検出することで物体を検出する赤外線センサであって、上記近赤外線吸収フィルタが、波長900nm以上1000nm以下に極大吸収波長を有する近赤外線吸収物質を含有する赤外線センサが記載されている。
【0004】

また、特許文献2には、顔料Aと、樹脂への吸着性を持つ構造を有する化合物Bとを含む材料であり、下記式(I)で表されるXが、0.99以上である材料が記載されている。

=(X/X)×100 ・・・(I)

は、25℃において、顔料Aの溶解度が0.02質量%以下であり、かつ、化合物Bの溶解度が0.2質量%以上である溶剤に、上記材料を浸漬した後の、上記材料中における上記化合物Bの質量であり、Xは、上記溶剤に浸漬した後の上記材料の固形分の質量である。
【0005】

更に、特許文献3には、下記式(1)で表される有機化合物が記載されている。
【0006】

【化1】

(上記式(1)中のR及びRは、其々独立に水素原子、炭素数1乃至12のアルキル基を示し、Z及びZは其々独立して5又は6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を示す。R及びRで表される置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基等の芳香族炭化水素基、フラニル基、チエニル基、チエノチエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、インドリル基及びカルバゾリル基等の芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を示す。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】

【文献】国際公開第2015/166873号
【文献】国際公開第2017/038252号
【文献】特開2017-137264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】

従来、赤外線カットフィルタは、平坦膜として用いられていた。近年は、赤外線カットフィルタも、パターン形成することが検討されている。例えば、赤外線カットフィルタ上に、カラーフィルタの各画素(例えば、赤色画素、青色画素、緑色画素など)を形成して用いることが検討されている。

しかしながら、本発明者らは、検討により、赤外線カットフィルタ等に用いられる赤外線吸収性色素は、耐熱性が十分でないことを見出した。
【0009】

本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、耐熱性に優れる組成物を提供することである。

また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記組成物を用いた膜、光学フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサ、光学フィルタの製造方法、及び、カメラモジュールを提供することである。

更に、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、新規な化合物を提供することである。

また更に、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、耐熱性に優れる分散組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】

上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。

<1> 下記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物と、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む組成物。
【0011】

【化2】
【0012】

式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、Zは、N、又は、N-Rを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、*は上記色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【0013】

<2> 上記式(1)で表される部分構造が、下記式(2)で表される部分構造である<1>に記載の組成物。
【0014】

【化3】
【0015】

式(2)中、Xは、ヘテロアリール基を表し、*は上記色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【0016】

<3> 上記式(1)のX~Xにおける上記ヘテロアリール基が、フラニル基、又は、チエニル基である<1>に記載の組成物。

<4> 上記式(2)のXにおける上記ヘテロアリール基が、フラニル基、又は、チエニル基である<2>に記載の組成物。

<5> 上記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物が、650nm~1,500nmの範囲に極大吸収波長を有する<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。

<6> 上記色素構造が、ピロロピロール色素構造、ピロメテン色素構造、スクアリリウム色素構造、クロコニウム色素構造、インジゴ色素構造、アントラキノン色素構造、ジインモニウム色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ポリメチン色素構造、キサンテン色素構造、キナクリドン色素構造、アゾ色素構造、及び、キノリン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素構造である<1>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。

<7> 上記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物が、下記式(3)で表される化合物である<1>~<6>のいずれか1つに記載の組成物。
【0017】

【化4】
【0018】

式(3)中、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、A及びAはそれぞれ独立に、置換基を表し、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、X~X13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、X10~X13の少なくとも1つはヘテロアリール基である。
【0019】

<8> 上記硬化性化合物を含み、光重合開始剤を更に含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の組成物。

<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物を含むか又は上記組成物を硬化してなる膜。

<10> <9>に記載の膜を有する光学フィルタ。

<11> 赤外線カットフィルタ又は赤外線透過フィルタである<10>に記載の光学フィルタ。

<12> <9>に記載の膜を有する固体撮像素子。

<13> <9>に記載の膜を有する赤外線センサ。

<14> <1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、上記組成物層をパターン状に露光する工程と、上記露光する工程後の未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含む光学フィルタの製造方法。

<15> <1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、上記組成物層を硬化して硬化層を形成する工程と、上記硬化層上にフォトレジスト層を形成する工程と、上記フォトレジスト層を露光及び現像することによりパターニングしてレジストパターンを得る工程と、上記レジストパターンをエッチングマスクとして上記硬化層をドライエッチングする工程と、を含む光学フィルタの製造方法。

<16> 固体撮像素子と、<10>又は<11>に記載の光学フィルタとを有するカメラモジュール。

<17> 下記式(3)で表される化合物。
【0020】

【化5】
【0021】

式(3)中、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、A及びAはそれぞれ独立に、置換基を表し、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、X~X13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、X10~X13の少なくとも1つはヘテロアリール基である。
【0022】

<18> 下記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物と、溶剤、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む分散組成物。
【0023】

【化6】
【0024】

式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、Zは、N、又は、N-Rを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、*は上記色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【発明の効果】
【0025】

本発明の一実施形態によれば、耐熱性に優れる組成物を提供することができる。

また、本発明の他の実施形態によれば、上記組成物を用いた膜、光学フィルタ、固体撮像素子、赤外線センサ、光学フィルタの製造方法、及び、カメラモジュールを提供することができる。

更に、本発明の他の実施形態によれば、新規な化合物を提供することができる。

また更に、本発明の他の実施形態によれば、耐熱性に優れる分散組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】

図1】本開示に係る赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】

以下において、本開示の内容について詳細に説明する。

本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。

本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものとともに置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。

本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。

本明細書において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。

本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。

本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Acはアセチル基を、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。

本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。

また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。

更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。

また、本開示における透過率は、特に断りのない限り、25℃における透過率である。

本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。
【0028】

<組成物>

本開示に係る組成物は、下記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物と、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む。
【0029】

【化7】
【0030】

式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、Zは、N、又は、N-Rを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、*は色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【0031】

本実施形態に係る組成物は、パターン形成用組成物として好適に用いることができる。

上記パターン形成用組成物は、ネガ型のパターン形成用組成物であっても、ポジ型のパターン形成用組成物であってもよいが、解像性の観点から、ネガ型のパターン形成用組成物であることが好ましい。

また、本実施形態に係る組成物は、赤外線吸収性組成物として好適に用いることができる。
【0032】

上述したように、赤外線カットフィルタ等に用いられる赤外線吸収性色素は、耐熱性が十分でなく、熱により熱分解して赤外線吸収能が低下してしまい、赤外線吸収性色素を含む組成物より得られる硬化膜は、耐熱性が十分でないものが多かった。

本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、耐熱性に優れる組成物が提供できることを見出した。

これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定される。

化合物が、色素構造と、特定構造のヘテロアリール基を有する式(1)で表される部分構造とを有することにより、前記ヘテロアリール基同士が分子間で双極子-双極子相互作用することにより、式(1)で表される部分構造を有する化合物同士を強固に凝集又は配位させることができ(パッキング性が向上し)、耐熱性が向上すると推定される。

以下、本開示に係る組成物の各成分について説明する。
【0033】

(式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物)

本開示に係る組成物は、上記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物を含む。なお、本開示において、式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物を、単に式(1)で表される部分構造を有する化合物ということがある。

式(1)のX~Xにおけるヘテロアリール基は、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、ヘテロ原子として、酸素原子又は硫黄原子を有するヘテロアリール基であることが好ましく、酸素原子又は硫黄原子を有する5員環ヘテロアリール基であることがより好ましく、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、又は、オキサゾリル基であることが更に好ましく、フラニル基、又は、チエニル基であることが特に好ましく、フラニル基であることが最も好ましい。

上記フラニル基としては、2-フラニル基、3-フラニル基が好ましく挙げられる。

上記チエニル基としては、2-チエニル基、3-チエニル基が好ましく挙げられる。

上記チアゾリル基としては、2-チアゾリル基が好ましく挙げられる。

上記ベンゾチアゾリル基としては、2-ベンゾチアゾリル基が好ましく挙げられる。

上記オキサゾリル基としては、2-オキサゾリル基が好ましく挙げられる。

式(1)において、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、X及びXの少なくとも1方がヘテロアリール基であることが好ましく、Xが少なくともヘテロアリール基であることがより好ましい。
【0034】

式(1)におけるX及びXはそれぞれ独立に、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、ヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。

式(1)におけるXはそれぞれ独立に、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、ヘテロアリール基であることが好ましく、ヘテロアリール基であることがより好ましい。

式(1)におけるXはそれぞれ独立に、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、ヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、又は、ヘテロアリール基であることがより好ましい。

また、上記ハロゲン原子としては、塩素原子、又は、臭素原子が好ましい。
【0035】

式(1)におけるZは、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、Nであることが好ましい。

また、上記N-RにおけるRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0036】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、上記式(1)で表される部分構造を1つのみ有していても、2つ以上有していてもよいが、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、上記式(1)で表される部分構造を1つ~4つ有していることが好ましく、1つ~3つ有していることがより好ましく、1つ又は2つ有していることが特に好ましい。
【0037】

上記式(1)で表される部分構造は、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、下記式(2)で表される部分構造であることが好ましい。
【0038】

【化8】
【0039】

式(2)中、Xは、ヘテロアリール基を表し、*は色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【0040】

式(2)のXにおけるヘテロアリール基は、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、ヘテロ原子として、酸素原子又は硫黄原子を有するヘテロアリール基であることが好ましく、酸素原子又は硫黄原子を有する5員環ヘテロアリール基であることがより好ましく、フラニル基、又は、チエニル基であることが更に好ましく、フラニル基であることが特に好ましい。
【0041】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物の分子量は、2,500以下であることが好ましく、300以上2,500以下であることがより好ましく、400以上2,000以下であることが更に好ましく、500以上2,000以下であることが特に好ましい。
【0042】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、赤外線吸収色素であることが好ましい。上記赤外線吸収色素は、赤外領域に少なくとも吸収を有する材料を意味する。

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、極大吸収波長を、波長650nm~1,500nmの範囲に有することが好ましく、波長680nm~1,300nmの範囲に有することがより好ましく、波長700nm~1,100nmの範囲に有することが更に好ましい。
【0043】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、顔料であってもよく、染料であってもよいが、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、顔料であることが好ましく、赤外線吸収顔料であることがより好ましい。

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物が有する色素構造は、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、ピロロピロール色素構造、ピロメテン色素構造、スクアリリウム色素構造、クロコニウム色素構造、インジゴ色素構造、アントラキノン色素構造、ジインモニウム色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ポリメチン色素構造、キサンテン色素構造、キナクリドン色素構造、アゾ色素構造、及び、キノリン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素構造であることが好ましく、ピロロピロール色素構造、ピロメテン色素構造、スクアリリウム色素構造、フタロシアニン色素構造、及び、アントラキノン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素構造であることがより好ましく、ピロロピロール色素構造、ピロメテン色素構造、スクアリリウム色素構造、及び、フタロシアニン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素構造であることが更に好ましく、ピロロピロール色素構造であることが特に好ましい。

また、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物における上記式(1)で表される部分構造及び上記色素構造以外の部分については、特に制限はなく、任意の構造であればよいが、後述する具体例におけるような構造が好ましく挙げられる。
【0044】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0045】

【化9】
【0046】

式(3)中、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、A及びAはそれぞれ独立に、置換基を表し、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、X~X13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、X10~X13の少なくとも1つはヘテロアリール基である。
【0047】

式(3)におけるY及びYはそれぞれ独立に、赤外線吸収性、分散性、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、置換基であることが好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は-BRY1Y2であることがより好ましく、-BRY1Y2であることが特に好ましい。

Y1及びRY2はそれぞれ独立に、赤外線吸収性及び分散性の観点から、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はアリールオキシ基であることが好ましく、ハロゲン原子又はアリール基であることがより好ましく、アリール基であることが特に好ましい。また、RY1及びRY2は結合して環を形成してもよい。

また、RY1及びRY2は、同じ基であることが好ましい。
【0048】

及びYとしては、下記に示す基が好ましく挙げられる。なお、*は式(3)における窒素原子との結合部位を表す。
【0049】

【化10】
【0050】

式(3)におけるA及びAはそれぞれ独立に、分散性、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は下記式(A1)で表される基であることが好ましく、アリール基又は下記式(A1)で表される基がより好ましい。
【0051】

【化11】
【0052】

式(A1)中、XA1はm-フェニレン基、p-フェニレン基、2以上の芳香環が縮合した2価の縮合多環芳香環基又は2価の複素芳香環基を表し、LA1は単結合又は2価の連結基を表し、YA1は置換基を表し、*は式(3)におけるピロロピロール環への連結部位を表す。
【0053】

また、A及びAが表すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、フルオロアルキル基、-OCOR1a、-SOR2a、-SO3a、-SONR4a5aなどが挙げられる。R1a~R5aはそれぞれ独立に、炭化水素基又はヘテロアリール基を表す。また、置換基としては、特開2009-263614号公報の段落0020~0022に記載された置換基が挙げられる。中でも、置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、フルオロアルキル基、-OCOR1a、-SOR2a、-SO3a、-SONR4a5aが好ましい。

更に、A及びAにおけるアリール基は、分岐アルキル基を有するアルコキシ基を置換基として有するアリール基、ヒドロキシ基を置換基として有するアリール基、又は、-OCOR1aで表される基を置換基として有するアリール基であることが好ましい。分岐アルキル基の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましい。
【0054】

式(A1)におけるXA1は、分散性の観点から、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ナフチレン基、フランジイル基、又は、チオフェンジイル基であることが好ましく、m-フェニレン基、p-フェニレン基、又は、ナフチレン基であることがより好ましく、m-フェニレン基、又は、p-フェニレン基であることが更に好ましく、p-フェニレン基であることが特に好ましい。

式(A1)におけるXA1は、可視透明性の観点から、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ナフチレン基、フランジイル基、又は、チオフェンジイル基であることが好ましく、m-フェニレン基、p-フェニレン基、又は、ナフチレン基であることがより好ましく、m-フェニレン基、又は、p-フェニレン基であることが更に好ましく、m-フェニレン基であることが特に好ましい。

式(A1)におけるLA1は、分散性の観点から、2価の連結基であることが好ましい。

A1における2価の連結基の炭素数は、分散性の観点から、1以上30以下であることが好ましく、1以上20以下であることがより好ましく、1以上10以下であることが更に好ましい。

また、LA1における2価の連結基としては、分散性の観点から、アルキレン基、エステル結合、エーテル結合、又は、アリーレン基であることが好ましい。

更に、LA1における2価の連結基は、分散性の観点から、酸素原子を有する基であることが好ましく、エステル結合及びエーテル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有する基であることがより好ましく、エステル結合を有する基であることが更に好ましい。
【0055】

式(A1)におけるYA1は、分散性の観点から、イミド構造、酸無水物構造、クマリン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾチオフェン構造、シアノ基、アルキルスルホン基、アリールスルホン基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、スルホンアミド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた構造を少なくとも1つ有する基であることが好ましく、イミド構造、酸無水物構造、クマリン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾチオフェン構造、シアノ基、アルキルスルホン基、アリールスルホン基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、スルホンアミド基、アミド基、ウレタン基、及び、ウレア基よりなる群から選ばれた構造を少なくとも1つ有する基であることがより好ましく、N-置換イミド構造、酸無水物構造、クマリン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾチオフェン構造、シアノ基、アルキルスルホン基、アリールスルホン基、アルキルスルホキシド基、アリールスルホキシド基、N-二置換スルホンアミド基、及び、N-二置換アミド基よりなる群から選ばれた構造を少なくとも1つ有する基であることが更に好ましく、N-置換イミド構造、N-二置換スルホンアミド基、クマリン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾチオフェン構造、及び、N-二置換アミド基よりなる群から選ばれた構造を少なくとも1つ有する基であることが特に好ましく、N-置換イミド構造を有する基であることが最も好ましい。

また、YA1は、色素誘導体にて後述する酸性基、塩基性基又は塩構造を有する基を有しないことが好ましい。

また、YA1は、分散性の観点から、下記式A-1~式A-20のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式A-1~式A-8及び式A-15~式A-20のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記式A-1~式A-3及び式A-15~式A-20のいずれかで表される基であることが更に好ましく、下記式A-1、式A-2及び式A-15~式A-20のいずれかで表される基であることが特に好ましく、下記式A-1で表される基であることが最も好ましい。
【0056】

【化12】
【0057】

【化13】
【0058】

式A-1~式A-20中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、1つの式中にRを2以上有する場合は、2つのRはアルキレン基又はアルキレン基-O-アルキレン基により環を形成していてもよく、*は式(A1)におけるLA1との連結部位を表す。

は、分散性の観点から、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。

また、上記ヘテロアリール基としては、チアゾリル基、又は、ベンゾチアゾリル基が好ましく挙げられる。
【0059】

式(3)におけるB及びBはそれぞれ独立に、赤外線吸収性の観点から、置換基であることが好ましく、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリールスルフィニル基又はヘテロアリール基であることがより好ましく、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基又はアリールスルフィニル基であることが更に好ましく、シアノ基であることが特に好ましい。
【0060】

式(3)におけるX~Xはそれぞれ、式(1)におけるX~Xと同義であり、好ましい態様も同様である。

また、式(3)におけるX10~X13はそれぞれ、式(1)におけるX~Xと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0061】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物の具体例としては、後述する実施例で使用した化合物が好ましく挙げられる。
【0062】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物が顔料、好ましくは赤外線吸収顔料である場合、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、分散性の観点から、粒子状であることが好ましい。

また、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物が顔料、好ましくは赤外線吸収顔料である場合、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物の体積平均粒子径は、分散性の観点から、1nm以上500nm以下であることが好ましく、1nm以上100nm以下であることがより好ましく、1nm以上50nm以下であることが更に好ましい。

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物の体積平均粒子径は、日機装(株)製のMICROTRAC UPA 150を用いて測定するものとする。
【0063】

また、本開示に係る組成物は、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物の含有量は、赤外線吸収性及び分散性の観点から、組成物の全固形分に対して、1質量%~90質量%であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0064】

(バインダー)

本開示に係る組成物は、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含み、膜形成性の観点から、バインダーを含むことが好ましい。

また、バインダーとしては、膜形成性、及び、分散性の観点から、バインダーポリマーであることが好ましい。

また、バインダーポリマーとして、分散剤を含んでいてもよい。
【0065】

バインダーポリマーの具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。

これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】

環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点から、ノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。

ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製のネオプリム(登録商標)シリーズ(例えば、C3450)などが挙げられる。

エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。

また、エポキシ樹脂としては、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。ウレタン樹脂としては、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)を用いることもできる。
【0067】

また、バインダーポリマーとしては、国際公開第2016/088645号の実施例に記載された樹脂、特開2017-57265号公報に記載された樹脂、特開2017-32685号公報に記載された樹脂、特開2017-075248号公報に記載された樹脂、特開2017-66240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。

また、バインダーポリマーとして、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号明細書の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0068】

バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましい。

バインダーポリマーの含有量は、組成物の全固形分に対し、10質量%~80質量%であることが好ましく、15質量%~60質量%であることがより好ましい。上記組成物は、樹脂を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0069】

-分散剤-

本開示に係る組成物は、分散剤を含んでいてもよい。

分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、アミン基を有する樹脂(ポリアミドアミンとその塩など)、オリゴイミン系樹脂、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕等を挙げることができる。

高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。

また、高分子分散剤としては、酸価が60mgKOH/g以上(より好ましくは、酸価60mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下)の樹脂も好適に挙げることができる。
【0070】

末端変性型高分子としては、例えば、特開平3-112992号公報、特表2003-533455号公報等に記載の末端にリン酸基を有する高分子、特開2002-273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9-77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子などが挙げられる。また、特開2007-277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の顔料表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
【0071】

グラフト型高分子としては、例えば、特開昭54-37082号公報、特表平8-507960号公報、特開2009-258668号公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9-169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開平10-339949号、特開2004-37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子モノマーとの共重合体、特開2003-238837号公報、特開2008-9426号公報、特開2008-81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010-106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体などが挙げられる。
【0072】

グラフト型高分子をラジカル重合で製造する際に用いるマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを用いることができ、東亞合成(株)製のマクロモノマーAA-6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS-6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN-6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB-6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2-ヒドロキシエチルのε-カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2-ヒドロキシエチルのε-カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2-272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性且つ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた組成物が示す現像性の観点から特に好ましく、特開平2-272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーで表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。

ブロック型高分子としては、特開2003-49110号公報、特開2009-52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0073】

樹脂(分散剤)は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製「Disperbyk-101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK-P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)」、EFKA社製「EFKA4047、4050~4165(ポリウレタン系)、EFKA4330~4340(ブロック共重合体)、4400~4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ(株)製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学(株)製「フローレンTG-710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成(株)製「ディスパロンKS-860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA-703-50、DA-705、DA-725」、花王(株)製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN-B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL-18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカルズ(株)製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、MYS-IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製「ヒノアクトT-8000E」、信越化学工業(株)製「オルガノシロキサンポリマーKP341」、森下産業(株)製「EFKA-46、EFKA-47、EFKA-47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ

(株)製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」、(株)ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P-123」、及び、三洋化成工業(株)製「イオネットS-20」等が挙げられる。
【0074】

これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、後述のアルカリ可溶性樹脂を分散剤として使用することもできる。アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を変性した樹脂が挙げられるが、特に(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。また、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー共重合体、特開2004-300204号公報に記載のエーテルダイマー共重合体、特開平7-319161号公報に記載の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。

これらの中でも、上記樹脂としては、分散性の観点から、ポリエステル鎖を有する樹脂を含むことが好ましく、ポリカプロラクトン鎖を有する樹脂を含むことがより好ましい。

また、上記樹脂(好ましくはアクリル樹脂)は、分散性、透明性及び異物による膜欠陥抑制の観点から、エチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。

上記エチレン性不飽和基としては、特に制限はないが、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。

また、上記樹脂が側鎖にエチレン性不飽和基、特に(メタ)アクリロイル基を有する場合、上記樹脂は、主鎖とエチレン性不飽和基との間に、脂環構造を有する2価の連結基を有していることが好ましい。
【0075】

分散剤の含有量は、式(1)で表される部分構造を有する化合物と式(1)で表される部分構造を有する化合物以外の顔料、染料又は顔料誘導体とを含む場合は、式(1)で表される部分構造を有する化合物、並びに、式(1)で表される部分構造を有する化合物以外の顔料、染料及び顔料誘導体も含めた総含有量100質量部に対して、1質量部~100質量部であることが好ましく、5質量部~90質量部がより好ましく、10質量部~80質量部であることが更に好ましい。
【0076】

-アルカリ可溶性樹脂-

本開示に係る組成物は、現像性の観点から、バインダーポリマーとして、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。

アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合樹脂が好ましい。

アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性樹脂としては、特開2012-208494号公報の段落0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0685~0700)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0077】

アルカリ可溶性樹脂は、下記式(ED)で表される構成単位を有する樹脂も好ましい。
【0078】

【化14】
【0079】

式(ED)中、RE1及びRE2はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1~25の炭化水素基を表し、zは0又は1を表す。
【0080】

E1及びRE2で表される炭素数1~25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ステアリル基、ラウリル基、2-エチルヘキシル生等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基等のアリール基;シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、ジシクロペンタジエニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、2-メチル-2-アダマンチル基等の脂環式基;1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基等のアルコキシ基で置換されたアルキル基;ベンジル基等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも、特に、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等のような酸や熱で脱離しにくい第1級又は第2級の炭化水素基が耐熱性の点で好ましい。

なお、RE1及びRE2は、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。

式(ED)で表される構成単位を形成する化合物の例としては、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジエチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-プロピル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(t-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、等が挙げられる。これらの中でも、特にジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエートが好ましい。
【0081】

上記アルカリ可溶性樹脂は、式(ED)で表される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。

上記構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、溶媒への溶解性などの扱いやすさの観点から、油溶性を付与するアリール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートを共重合成分として含むことも好ましく、アリール(メタ)アクリレート又はアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。

また、アルカリ現像性の観点から、酸性基を含有する(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシ基を有するモノマー、N-ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを共重合成分として含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。

上記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、式(ED)で表される構成単位と、ベンジルメタクリレートから形成される構成単位と、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーから形成される構成単位とを有する樹脂が好ましく挙げられる。

式(ED)で表される構成単位を有する樹脂については、特開2012-198408号公報の段落0079~0099の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれることとする。
【0082】

アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~50,000が好ましい。下限は、5,000以上がより好ましく、7,000以上が更に好ましい。上限は、45,000以下がより好ましく、43,000以下が更に好ましい。

アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が更に好ましい。上限は、150mgKOH/g以下がより好ましく、120mgKOH/g以下が更に好ましい。

なお、本開示における酸価は、以下の方法により測定するものとする。

酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(質量比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を、25℃にて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。

A=56.11×Vs×0.1×f/w

A:酸価(mgKOH/g)

Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)

f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価

w:測定サンプル質量(g)(固形分換算)
【0083】

(硬化性化合物)

本開示に係る組成物は、パターン形成性の観点から、硬化性化合物を含むことが好ましく、硬化性化合物を含み、かつ光重合開始剤を更に含むことがより好ましい。

硬化性化合物としては、重合性基を有する化合物(以下、「重合性化合物」ともいう。)が好ましい。

硬化性化合物は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーなどの化学的形態のいずれであってもよい。硬化性化合物としては、例えば、特開2014-41318号公報の段落0070~0191(対応する国際公開第2014/017669号の段落0071~0192)、特開2014-32380号公報の段落0045~0216等の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。

また、メタクリロイル基を有するウレタン樹脂の市販品としては、8UH-1006、及び、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)が挙げられる。
【0084】

硬化性化合物は、重合性化合物が好ましい。重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよく、例えば、エチレン性不飽和基、環状エーテル基(エポキシ、オキセタン)等の重合性基を含む化合物が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和化合物が好ましい。

エチレン性不飽和基としては、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基が好ましい。重合性化合物は、重合性基を1個有する単官能化合物であってもよいし、重合性基を2個以上有する多官能重合性化合物であってもよいが、多官能重合性化合物であることが好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。組成物が、多官能重合性化合物を含有することにより、膜強度を向上させることができる。

硬化性化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物(好ましくは3~6官能の(メタ)アクリレート化合物)、多塩基酸変性アクリルオリゴマー、エポキシ樹脂、多官能のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0085】

硬化性化合物としては、エチレン性不飽和化合物を好適に用いることができる。エチレン性不飽和化合物の例としては、特開2013-253224号公報の段落0033~0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。

エチレン性不飽和化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM-35E、新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-330、日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-320、日本化薬(株)製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310、日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製、A-DPH-12E、新中村化学工業(株)製)及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。また、これらのオリゴマータイプも使用できる。

また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては、M-460、東亞合成(株)製)が好ましい。ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP-1040(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0086】

エチレン性不飽和化合物は、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。

酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルなどが挙げられる。脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に、非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた化合物が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、アロニックスシリーズのM-510、M-520などが挙げられる。

酸基を有するエチレン性不飽和化合物の酸価は、0.1mgKOH/g~40mgKOH/gが好ましい。下限は5mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、30mgKOH/g以下がより好ましい。
【0087】

本開示においては、硬化性化合物として、エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物を用いることができる。エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物としては、側鎖にエポキシ基を有するポリマー、分子内に2個以上のエポキシ基を有するモノマー又はオリゴマーなどが挙げられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。また単官能又は多官能グリシジルエーテル化合物も挙げられ、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物が好ましい。

重量平均分子量は、500~5,000,000が好ましく、1,000~500,000がより好ましい。

これらの化合物は、市販品を用いてもよいし、ポリマーの側鎖へエポキシ基を導入することによっても得られるものを用いてもよい。例えば、サイクロマーP ACA 200M、同ACA 230AA、同ACA Z250、同ACA Z251、同ACA Z300、同ACA Z320(以上、ダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。
【0088】

硬化性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。

硬化性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%~90質量%が好ましい。下限は、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
【0089】

(重合開始剤)

本開示に係る組成物は、硬化性化合物とともに、重合開始剤を含むことが好ましい。

重合開始剤としては、光重合開始剤であっても、熱重合開始剤であってもよいが、光重合開始剤であることが好ましい。

また、重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であっても、カチオン重合開始剤であってもよい。
【0090】

光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53-133428号公報に記載の化合物、独国特許3337024号明細書に記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62-58241号公報に記載の化合物、特開平5-281728号公報に記載の化合物、特開平5-34920号公報に記載の化合物、米国特許第4212976号明細書に記載の化合物などが挙げられる。
【0091】

光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、オキシム化合物、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましく、オキシム化合物がより好ましい。

オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2016-21012号公報に記載の化合物などが挙げられる。また、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)、特開2000-66385号公報、特開2000-80068号公報、特表2004-534797号公報、特開2006-342166号公報に記載の化合物等も挙げられる。

市販品ではIRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)、アデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製)も用いることができる。
【0092】

また、上記以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号明細書に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開第2009-292039号明細書に記載の化合物、国際公開第2009/131189号に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許第7556910号明細書に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物などを用いてもよい。

好ましくは、例えば、特開2013-29760号公報の段落0274~0275を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。

具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX-1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシム化合物は、オキシムのN-O結合が(E)体のオキシム化合物であってもよく、オキシムのN-O結合が(Z)体のオキシム化合物であってもよく、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0093】

【化15】
【0094】

式(OX-1)中、RO1及びRO2はそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、RO3は二価の有機基を表し、ArO1はアリール基を表す。

式(OX-1)中、RO1で表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。

一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、上述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。

置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。

式(OX-1)中、RO2で表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基が例示できる。

式(OX-1)中、RO3で表される二価の有機基としては、炭素数1~12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基が例示できる。
【0095】

光重合開始剤として、下記式(X-1)又は式(X-2)で表される化合物を用いることもできる。
【0096】

【化16】
【0097】

式(X-1)において、RX1及びRX2はそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、又は、炭素数7~30のアリールアルキル基を表し、RX1及びRX2がフェニル基の場合、フェニル基同士が結合してフルオレン基を形成してもよく、RX3及びRX4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、単結合又はカルボニル基を示す。
【0098】

式(X-2)において、RX1、RX2、RX3及びRX4は、式(X-1)におけるRX1、RX2、RX3及びRX4と同義であり、RX5は、-RX6、-ORX6、-SRX6、-CORX6、-CONRX6X6、-NRX6CORX6、-OCORX6、-COORX6、-SCORX6、-OCSRX6、-COSRX6、-CSORX6、-CN、ハロゲン原子又は水酸基を表し、RX6は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、単結合又はカルボニル基を表し、xaは0~4の整数を表す。
【0099】

上記式(X-1)及び式(X-2)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル、シクロヘキシル基又はフェニル基が好ましい。RX3はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基又はキシリル基が好ましい。RX4は炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基が好ましい。RX5はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基又はナフチル基が好ましい。Xは単結合が好ましい。

式(X-1)及び式(X-2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2014-137466号公報の段落0076~0079に記載された化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0100】

光重合開始剤としては、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落0031~0047、特開2014-137466号公報の段落0008~0012及び0070~0079、及び、特許第4223071号公報の段落0007~0025に記載されている化合物、並びにアデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0101】

オキシム化合物は、350nm~500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものが好ましく、360nm~480nmの波長領域に吸収波長を有するものがより好ましく、365nm及び405nmの吸光度が高いものが特に好ましい。

オキシム化合物としては、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であることが好ましく、2,000~300,000であることがより好ましく、5,000~200,000であることが更に好ましい。

化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0102】

本開示において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0103】

【化17】
【0104】

なお、上記(C-12)における-OC17の例としては、以下の基が挙げられる。
【0105】

【化18】
【0106】

光重合開始剤としては、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報記載の化合物、特表2014-500852号公報記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0107】

光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。光カチオン重合開始剤の詳細については特開2009-258603号公報の段落0139~0214の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0108】

光カチオン重合開始剤は市販品を用いることもできる。光カチオン重合開始剤の市販品としては、(株)ADEKA製のアデカアークルズ SPシリーズ(例えば、アデカアークルズSP-606など)、BASF社製IRGACURE250、IRGACURE270、IRGACURE290などが挙げられる。
【0109】

重合開始剤は、1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。

重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限は、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0110】

(溶剤)

本開示に係る組成物は、溶剤を含んでいてもよい。

溶剤は、特に制限はなく、組成物の各成分を均一に溶解或いは分散しうるものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水、有機溶剤を用いることができ、有機溶剤が好ましい。

有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えばメタノール)、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、スルホラン等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

中でも、環状アルキル基を有するエステル類、及び、ケトン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の有機溶剤が好ましく挙げられる。

アルコール類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、特開2012-194534号公報の段落0136等に記載のものが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。

エステル類、ケトン類、エーテル類の具体例としては、特開2012-208494号公報段落0497(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0609)に記載のものが挙げられ、更に、酢酸-n-アミル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、硫酸メチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0111】

溶剤としては、エタノール、メタノール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選択される1種以上が好ましい。
【0112】

溶剤の含有量は、組成物の全固形分が、10質量%~90質量%となる量が好ましい。下限は、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。

溶剤は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0113】

(色素誘導体)

本開示に係る組成物は、式(1)で表される部分構造を有する化合物以外の色素誘導体(以下、単に「色素誘導体」ともいう。)を更に含有することが好ましい。色素誘導体を含むことで、特に式(1)で表される部分構造を有する化合物が顔料である場合、式(1)で表される部分構造を有する化合物の分散性を高めて、式(1)で表される部分構造を有する化合物の凝集を効率よく抑制できる。色素誘導体は、顔料誘導体であることが好ましい。

色素誘導体としては、色素の一部が、酸性基、塩基性基、塩構造を有する基で置換した構造を有するものが好ましく、下記式(3)で表される色素誘導体が更に好ましい。下記式(3)で表される色素誘導体は、色素構造Pが、式(1)で表される部分構造を有する化合物の表面に吸着し易いので、組成物中における式(1)で表される部分構造を有する化合物の分散性を向上できる。また、組成物が樹脂を含む場合においては、色素誘導体の末端部Xが、樹脂の吸着部(極性基など)との相互作用で樹脂に吸着するので、式(1)で表される部分構造を有する化合物の分散性を更に向上できる。
【0114】

【化19】
【0115】

式(3)中、Pは色素構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は連結基を表し、Xはそれぞれ独立に、酸性基、塩基性基又は塩構造を有する基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表す。
【0116】

における色素構造は、ピロロピロール色素構造、スクアリリウム色素構造、クロコニウム色素構造、ジインモニウム色素構造、オキソノール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造、アントラキノン色素構造、ジアントラキノン色素構造、ベンゾイソインドール色素構造、チアジンインジゴ色素構造、アゾ色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ジオキサジン色素構造、ピロメテン色素構造、ペリレン色素構造、ペリノン色素構造及びベンゾイミダゾリノン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素構造、スクアリリウム色素構造、クロコニウム色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造及びベンゾイミダゾリノン色素構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール色素構造が特に好ましい。色素誘導体が、これらの色素構造を有することで、式(1)で表される部分構造を有する化合物の分散性をより向上できる。
【0117】

における連結基としては、1個~100個の炭素原子、0個~10個の窒素原子、0個~50個の酸素原子、1個~200個の水素原子、及び、0個~20個の硫黄原子からなる基が好ましく、無置換でも置換基を更に有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子が好ましい。

連結基は、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、-NR’-、-SO-、-S-、-O-、-CO-、-COO-、-CONR’-、又は、これらを2以上の組み合わせた基が好ましく、アルキレン基、アリーレン基、-SO-、-COO-、又は、これらを2以上の組み合わせた基がより好ましい。R’は、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1~30)又はアリール基(好ましくは、炭素数6~30)を表す。

アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。

アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましく、フェニレン基が特に好ましい。

含窒素複素環基は、5員環又は6員環が好ましい。また、含窒素複素環基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。含窒素複素環基に含まれる窒素原子の数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましい。含窒素複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。窒素原子以外のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子が例示される。窒素原子以外のヘテロ原子の数は0~3が好ましく、0又は1がより好ましい。

含窒素複素環基としては、ピペラジン環基、ピロリジン環基、ピロール環基、ピペリジン環基、ピリジン環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ピラジン環基、モルホリン環基、チアジン環基、インドール環基、イソインドール環基、ベンゾイミダゾール環基、プリン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、キノキサリン環基、シンノリン環基、カルバゾール環基及び下記式(L-1)~式(L-7)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0118】

【化20】
【0119】

式中の*は、P、L又はXとの結合部位を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。置換基としては、置換基Tが挙げられる。置換基Tしては、例えば、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のチオアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アセチル基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)などが挙げられる。これら置換基は、更に置換基を有していてもよい。
【0120】

連結基の具体例としては、アルキレン基、アリーレン基、-SO-、上記式(L-1)で表される基、上記式(L-5)で表される基、-O-とアルキレン基との組み合わせからなる基、-NR’-とアルキレン基との組み合わせからなる基、-NR’-と-CO-とアルキレン基との組み合わせからなる基、-NR’-と-CO-とアルキレン基とアリーレン基の組み合わせからなる基、-NR’-と-CO-とアリーレン基との組み合わせからなる基、-NR’-と-SO-とアルキレン基との組み合わせからなる基、-NR’-と-SO-とアルキレン基とアリーレン基との組み合わせからなる基、上記式(L-1)で表される基とアルキレン基との組み合わせからなる基、上記(L-1)で表される基とアリーレン基との組み合わせからなる基、上記式(L-1)で表される基と-SO-とアルキレン基との組み合わせからなる基、上記式(L-1)で表される基と-S-とアルキレン基との組み合わせからなる基、上記式(L-1)で表される基と-O-とアリーレン基との組み合わせからなる基、上記式(L-1)で表される基と-NR’-と-CO-とアリーレン基との組み合わせからなる基、上記式(L-3)で表される基とアリーレン基との組み合わせからなる基、アリーレン基と-COO-との組み合わせからなる基、アリーレン基と-COO-とアルキレン基との組み合わせからなる基などが挙げられる。
【0121】

式(3)中、Xは、酸性基、塩基性基又は塩構造を有する基を表す。

酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、スルホンイミド基等が挙げられる。

塩基性基としては、後述する式(X-3)~式(X-8)で表される基が挙げられる。

塩構造を有する基としては、上述した酸性基の塩、塩基性基の塩が挙げられる。塩を構成する原子又は原子団としては、金属原子、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。金属原子としては、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子がより好ましい。アルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0122】

は、カルボキシ基、スルホ基、スルホンイミド基及び、下記式(X-1)~式(X-11)のいずれかで表される基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基が好ましい。
【0123】

【化21】
【0124】

式(X-1)~式(X-11)中、*は、式(3)のLとの結合部位を表し、R100~R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよく、Mはアニオンと塩を構成する原子又は原子団を表す。

アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が更に好ましい。分岐状のアルキル基の炭素数は、3~20が好ましく、3~12がより好ましく、3~8が更に好ましい。環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。環状のアルキル基の炭素数は、3~20が好ましく、4~10がより好ましく、6~10が更に好ましい。

アルケニル基の炭素数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましく、2~4が更に好ましい。

アリール基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましい。

100とR101とは互いに連結して環を形成していてもよい。環は、脂環であってもよく、芳香族環であってもよい。環は単環であってもよく、複環であってもよい。R100とR101が結合して環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、2価の脂肪族基、2価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基で連結することができる。具体例としては、例えば、ピペラジン環、ピロリジン環、ピロール環、ピペリジン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラジン環、モルホリン環、チアジン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、カルバゾール環などが挙げられる。

107、R108及びR109はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は置換基を含んでもよい炭素数1以上の炭化水素基を表す。R107、R108及びR109が表す炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~30であることが好ましい。上限は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~20であることが好ましい。上限は、18以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、12以下であることが更に好ましい。R107、R108及びR109が表す炭化水素基が含んでもよい置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アシル基、スルホ基などが挙げられる。アルコキシ基は、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。上述の置換基としては、ハロゲン原子または水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましく、ハロゲン原子であることが更に好ましい。また、ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、又は、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。

Mはアニオンと塩を構成する原子又は原子団を表す。これらは、上述したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。

mの上限は、色素構造Pが取りうる置換基の数を表し、例えば、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。mが2以上の場合は、複数のL及びXは互いに異なっていてもよい。

nは1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。nが2以上の場合は、複数のXは互いに異なってもよい。

具体例としては以下の基が挙げられる。
【0125】

【化22】
【0126】

【化23】
【0127】

上記色素誘導体は、下記式(4)で表される色素誘導体であることが好ましい。下記式(4)で表される色素誘導体は、式(3)におけるPが、ピロロピロール色素構造である化合物である。
【0128】

【化24】
【0129】

式(4)中、R43~R46はそれぞれ独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基又はヘテロアリール基を表し、R47及びR48はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4950又は金属原子を表し、R47は、R43又はR45と、共有結合又は配位結合していてもよく、R48は、R44又はR46と、共有結合又は配位結合していてもよく、R49及びR50はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又は、ヘテロアリールオキシ基を表し、R49及びR50が互いに結合して環を形成していてもよく、L41及びL42は、各々独立に、単結合、又は、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、-O-、-S-、-NR’-、-CO-、-SO-又はこれらの2以上組み合わせた連結基を表し、R’は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、X41及びX4はそれぞれ独立に、酸性基、塩基性基又は塩構造を有する基を表し、n41及びn42はそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、n41及びn42の少なくとも一方が1以上である。
【0130】

式(4)のR43~R48は、式(1)におけるR~Rと同義であり、好ましい態様も同様である

式(4)のX41及びX42は、式(3)のXと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0131】

式(4)において、L41及びL42は、式(3)のLと同義であり、好ましい態様も同様である。更に合成適性、可視透明性の点から、以下の連結基が特に好ましい。
【0132】

【化25】
【0133】

また、L41は、顔料誘導体の母核構造であるピロロピロール構造に直結するベンゼン環と、X41とをつなぐ鎖を構成する原子の数が1個~20個であることが好ましい。下限は、2個以上がより好ましく、3個以上が更に好ましい。上限は、15個以下がより好ましく、10個以下が更に好ましい。L42は、顔料誘導体の母核構造であるピロロピロール構造に直結するベンゼン環と、X42とをつなぐ鎖を構成する原子の数が1個~20個であることが好ましい。下限は、2個以上がより好ましく、3個以上が更に好ましい。上限は、15個以下がより好ましく、10個以下が更に好ましい。この態様によれば、顔料の分散性をより向上させることができる。詳細な理由は不明だが、顔料誘導体の母核構造であるピロロピロール構造と、X41及びX42との距離を長くすることで、X41及びX42が立体障害を受けにくくなって樹脂などとの相互作用が働きやすくなり、その結果、顔料の分散性を向上させることができたと推測する。
【0134】

式(4)で表される化合物は、組成物に含まれる溶剤(25℃)に対する溶解度が0g/L~0.1g/Lであることが好ましく、0g/L~0.01g/Lであることがより好ましい。この態様によれば、顔料の分散性をより向上させることができる。
【0135】

式(4)で表される化合物は、700nm~1,200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。また、波長500nmにおける吸光度A1と、極大吸収波長における吸光度A2との比率A1/A2が、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。

なお、本開示における化合物の吸光度は、化合物の溶液での吸収スペクトルから求めた値である。式(4)で表される化合物の溶液での吸収スペクトルの測定に用いる測定溶剤としては、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。式(4)表される化合物がクロロホルムに溶解する場合は、クロロホルムを測定溶剤として用いる。また、クロロホルムには溶解しないが、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフランに溶解する場合は、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフランを測定溶剤として用いる。
【0136】

式(3)で表される色素誘導体の具体例としては、以下の(3-1)~(3-25)が挙げられる。なお、以下の式において、m、m1、m2及びm3はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0137】

【化26】
【0138】

【化27】
【0139】

【化28】
【0140】

【化29】
【0141】

【化30】
【0142】

【化31】
【0143】

式(4)で表される化合物の具体例としては、後述する実施例におけるSyn-1~Syn-19、及び、以下の化合物が挙げられる。以下の構造式において、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。なお、下記表におけるAr-1~Ar-31、R-1~R-7は以下に示すものである。以下に示す構造における「*」は連結手である。
【0144】

【表1】
【0145】

【表2】
【0146】

【化32】
【0147】

【化33】
【0148】

【化34】
【0149】

【化35】
【0150】

また、本開示に係る組成物は、上記色素誘導体を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。

上記色素誘導体の含有量は、赤外線吸収性及び分散性の観点から、組成物の全固形分に対して、0.1質量%~30質量%であることが好ましく、0.5質量%~25質量%であることがより好ましく、1質量%~20質量%であることが更に好ましい。

また、上記色素誘導体の含有量は、赤外線吸収性及び分散性の観点から、式(1)で表される部分構造を有する化合物の全質量に対して、1質量%~80質量%であることが好ましく、2質量%~50質量%であることがより好ましく、5質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0151】

(有彩色着色剤、黒色着色剤、可視光を遮光する着色剤)

本開示に係る組成物は、有彩色着色剤及び黒色着色剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することができる(以下、有彩色着色剤と黒色着色剤とを併せて、可視着色剤ともいう)。本開示において、有彩色着色剤とは、白色着色剤及び黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
【0152】

-有彩色着色剤-

本開示において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。

顔料は、平均粒径(r)が、20nm≦r≦300nmを満たすことが好ましく、25nm≦r≦250nmを満たすことがより好ましく、30nm≦r≦200nmを満たすことが更に好ましい。ここでいう「平均粒径」とは、顔料の一次粒子が集合した二次粒子についての平均粒径を意味する。

また、使用しうる顔料の二次粒子の粒径分布(以下、単に「粒径分布」ともいう。)は、(平均粒径±100)nmに入る二次粒子が全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上であることが好ましい。なお、二次粒子の粒径分布は、散乱強度分布を用いて測定することができる。

なお、一次粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、粒子が凝集していない部分で粒子サイズを100個計測し、平均値を算出することによって求めることができる。
【0153】

顔料は、有機顔料であることが好ましい。また、顔料としては、以下のものを挙げることができる。ただし、本開示は、これらに限定されるものではない。

カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、

C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、

C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultamarine,Bluish Red)等(以上、赤色顔料)、

C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、

C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、

C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)等(以上、青色顔料)。

これらの顔料は、単独又は種々組合せて用いることができる。
【0154】

染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015-028144号公報、特開2015-34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0155】

また、染料としては、酸性染料及びその誘導体のうちの少なくとも1つが好適に使用できる場合がある。その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、及びこれらの誘導体等のうちの少なくとも1つも有用に使用することができる。
【0156】

以下に酸性染料の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。例えば、以下の染料及び、これらの染料の誘導体が挙げられる。

acid alizarin violet N、

acid blue 1,7,9,15,18,23,25,27,29,40~45,62,70,74,80,83,86,87,90,92,103,112,113,120,129,138,147,158,171,182,192,243,324:1、

acid chrome violet K、

acid Fuchsin;acid green 1,3,5,9,16,25,27,50、

acid orange 6,7,8,10,12,50,51,52,56,63,74,95、

acid red 1,4,8,14,17,18,26,27,29,31,34,35,37,42,44,50,51,52,57,66,73,80,87,88,91,92,94,97,103,111,114,129,133,134,138,143,145,150,151,158,176,183,198,211,215,216,217,249,252,257,260,266,274、

acid violet 6B,7,9,17,19、

acid yellow 1,3,7,9,11,17,23,25,29,34,36,42,54,72,73,76,79,98,99,111,112,114,116,184,243、

Food Yellow 3
【0157】

また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料及びこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。

なかでも、染料としては、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、オキソノール系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、アントラピリドン系ピロメテン系から選ばれる着色剤であることが好ましい。

更に、顔料と染料を組み合わせて使用してもよい。
【0158】

-黒色着色剤-

黒色着色剤としては、有機の黒色着色剤が好ましい。なお、本開示において、可視光を遮光する着色剤としての黒色着色剤は、可視光を吸収するが、赤外線の少なくとも一部は透過する材料を意味する。したがって、本開示において、可視光を遮光する着色剤としての黒色着色剤は、カーボンブラック及びチタンブラックを含まない。可視光を遮光する着色剤としての黒色着色剤は、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などを用いることもできる。
【0159】

ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報等に記載のものが挙げられる。例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。

ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32等が挙げられる。
【0160】

アゾメチン系化合物としては、特開平1-170601号公報、特開平2-34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化工業(株)製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。アゾ化合物としては、特に限定されないが、下記式(A-1)で表される化合物等を好適に挙げることができる。
【0161】

【化36】
【0162】

-可視光を遮光する着色剤-

本開示に係る組成物を用いて、含有する赤外線吸収性色素が吸収しない領域の赤外線を透過する赤外線透過フィルタを製造する場合は、可視光を遮光する着色剤を含むことが好ましい。

可視光を遮光する着色剤は、複数の着色剤の組み合わせにより、黒色、灰色、又はそれらに近い色を呈することが好ましい。

また、可視光を遮光する着色剤は、紫色から赤色の波長域の光を吸収する材料であることが好ましい。

また、可視光を遮光する着色剤は、波長450nm~650nmの波長域の光を遮光する着色剤であることが好ましい。

本開示において、可視光を遮光する着色剤は、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましく、(1)の要件を満たしていることが更に好ましい。

(1):2種類以上の有彩色着色剤を含む態様。

(2):黒色着色剤を含む態様。

また、本開示において、可視光を遮光する着色剤としての黒色着色剤は、可視光線を吸収するが、赤外線の少なくとも一部は透過する材料を意味する。したがって、本発開示において、可視光を遮光する着色剤としての有機系黒色着色剤は、可視光線及び赤外線の両方を吸収する黒色着色剤、例えば、カーボンブラックやチタンブラックは含まない。
【0163】

上記可視光を遮光する着色剤は、例えば、波長450nm~650nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長900nm~1,300nmの範囲における吸光度の最小値Bとの比であるA/Bが4.5以上であることが好ましい。

上記の特性は、1種類の素材で満たしていてもよく、複数の素材の組み合わせで満たしていてもよい。例えば、上記(1)の態様の場合、複数の有彩色着色剤を組み合わせて上記分光特性を満たしていることが好ましい。
【0164】

可視光を遮光する着色剤として2種以上の有彩色着色剤を含む場合、有彩色着色剤は、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤及びオレンジ色着色剤から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0165】

有彩色着色剤を2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで可視光を遮光する着色剤を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば、以下が挙げられる。

(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。

(2)黄色着色剤、青色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様

(3)黄色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様

(4)黄色着色剤及び紫色着色剤を含有する態様

(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様

(6)紫色着色剤及びオレンジ色着色剤を含有する態様

(7)緑色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様

(8)緑色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様
【0166】

上記(1)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。

上記(2)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。

上記(3)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。

上記(4)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23とを含有する態様が挙げられる。

上記(5)の態様の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7又は36と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。

上記(6)の態様の具体例としては、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、オレンジ色顔料としてのC.I.Pigment Orange71とを含有する態様が挙げられる。

上記(7)の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7又は36と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。

上記(8)の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7又は36と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
【0167】

各着色剤の比率(質量比)としては、例えば、以下が挙げられる。
【0168】

【化37】
【0169】

本開示に係る組成物が、可視着色剤を含有する場合、可視着色剤の含有量は、組成物の全固形分に対し、0.01質量%~50質量%とすることが好ましい。下限は、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。

また、可視着色剤の含有量は、赤外線吸収性色素の含有量100質量部に対し、10質量部~1,000質量部が好ましく、50質量部~800質量部がより好ましい。
【0170】

(シランカップリング剤)

本開示に係る組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本開示において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基は、樹脂などとの間で相互作用もしくは結合を形成して親和性を示す基が好ましい。例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤として、特開2009-288703号公報の段落0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落0056~0066に記載の化合物、国際公開第2015/166779号の段落0229~0236に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0171】

シランカップリング剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~15.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上を使用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0172】

(界面活性剤)

本開示に係る組成物は、塗布性をより向上させる観点から、界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、国際公開第2015/166779号の段落0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0173】

本開示に係る組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0174】

フッ素系界面活性剤中のフッ素原子含有率は、3質量%~40質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましく、7質量%~25質量%が特に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0175】

フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014-41318号公報の段落0060~0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0176】

また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0177】

フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。

上記ブロックポリマーの重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000である。
【0178】

また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090及び段落0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0179】

ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0180】

界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0181】

(紫外線吸収剤)

本開示に係る組成物は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物及びジケトン化合物が挙げられ、共役ジエン化合物が好ましい。共役ジエン化合物は、下記式(UV-1)で表される化合物がより好ましい。
【0182】

【化38】
【0183】

式(UV-1)において、RU1及びRU2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、RU1とRU2とは互いに同一でも異なっていてもよいが、同時に水素原子を表すことはない。

U1及びRU2は、RU1及びRU2が結合する窒素原子とともに、環状アミノ基を形成していてもよい。環状アミノ基としては、例えば、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、ヘキサヒドロアゼピノ基、ピペラジノ基等が挙げられる。

U1及びRU2はそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基が更に好ましい。

U3及びRU4は、電子求引性基を表す。RU3及びRU4は、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基又はスルファモイル基が好ましく、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基又はスルファモイル基がより好ましい。また、RU3及びRU4は、互いに結合して環状の電子求引性基を形成してもよい。RU3及びRU4が互いに結合して形成する環状の電子求引性基としては例えば、2個のカルボニル基を含む6員環を挙げることができる。

上記のRU1、RU2、RU3及びRU4の少なくとも1つは、連結基を介して、ビニル基と結合したモノマーより導かれるポリマーの形になっていてもよい。他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0184】

式(UV-1)で表される紫外線吸収剤の置換基の説明は、特開2013-68814号公報の段落0320~0327の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。式(UV-1)で表される紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV503(大東化学(株)製)などが挙げられる。
【0185】

紫外線吸収剤として用いるジケトン化合物は、下記式(UV-2)で表される化合物が好ましい。
【0186】

【化39】
【0187】

式(UV-2)において、R101及びR102はそれぞれ独立に、置換基を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、メルカプト基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられ、アルキル基又はアルコキシ基が好ましい。

アルキル基の炭素数は、1~20が好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状が挙げられ、直鎖又は分岐が好ましく、分岐がより好ましい。

アルコキシ基の炭素数は、1~20が好ましい。アルコキシ基は、直鎖、分岐、環状が挙げられ、直鎖又は分岐が好ましく、分岐がより好ましい。

101及びR102の一方がアルキル基で、他方がアルコキシ基である組み合わせが好ましい。

m1及びm2はそれぞれ独立に、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1が特に好ましい。
【0188】

式(UV-2)で表される化合物としては、下記化合物が挙げられる。
【0189】

【化40】
【0190】

紫外線吸収剤は、ユビナールA(BASF社製)を用いることもできる。また、紫外線吸収剤は、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、トリアジン化合物等の紫外線吸収剤を用いることができ、具体例としては特開2013-68814号公報に記載の化合物が挙げられる。ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂(株)製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。

紫外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0191】

(重合禁止剤)

本開示に係る組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。なお、重合禁止剤は、酸化防止剤として機能することもある。重合禁止剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましい。
【0192】

(その他の成分)

本開示に係る組成物は、必要に応じて、増感剤、架橋剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする赤外線カットフィルタなどの光学フィルタの安定性、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-3225号公報の段落0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落0101~0104及び0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。

酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-90147号公報の段落0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.3質量%~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上を使用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0193】

(組成物の調製)

本開示に係る組成物は、上述した各成分を混合することによって調製することができる。また、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)又はナイロンが好ましい。

フィルタの孔径は、0.01μm~7.0μmが好ましく、0.01μm~3.0μmがより好ましく、0.05μm~0.5μmが更に好ましい。この範囲とすることにより、後工程において均一及び平滑な組成物の調製を阻害する、微細な異物を確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましく、ろ材としては例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられ、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。

フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。

また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール(株)(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋(株)、日本インテグリス(株)又は(株)キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
【0194】

(組成物の用途)

本開示に係る組成物は、液状とすることができるため、例えば、本開示に係る組成物を基材などに付与し、乾燥させることにより膜を容易に製造できる。

本開示に係る組成物の粘度は、塗布により膜を形成する場合は、塗布性の観点から、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。

本開示に係る組成物の全固形分は、塗布方法により変更されるが、例えば、1質量%~50質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。上限は30質量%以下がより好ましい。
【0195】

本開示に係る組成物の用途は、特に限定されない。例えば、赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。例えば、固体撮像素子の受光側における赤外線カットフィルタ(例えば、ウエハーレベルレンズに対する赤外線カットフィルタ用など)、固体撮像素子の裏面側(受光側とは反対側)における赤外線カットフィルタなどに好ましく用いることができる。特に、固体撮像素子の受光側における赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、本開示に係る組成物に対し、更に、可視光を遮光する着色剤を含有させることで、特定の波長以上の赤外線を透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。例えば、波長400nm~900nmまでを遮光し、波長900nm以上の赤外線を透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。
【0196】

また、本開示に係る組成物は、収容容器に保管されることが好ましい。

収容容器として、原材料や組成物中への不純物の混入防止を目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。これらの容器としては、例えば、特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0197】

<膜>

本開示に係る膜は、本開示に係る組成物をからなる又は前記組成物を硬化してなる膜である。また、組成物が溶剤を含む場合には、乾燥を行ってもよい。本開示に係る膜は、赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、熱線遮蔽フィルタや赤外線透過フィルタとして用いることもできる。本開示に係る膜は、支持体上に積層して用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。本開示に係る膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。

本開示における「乾燥」は、溶剤を少なくとも一部除去すればよく、溶剤を完全に除去する必要はなく、所望に応じて、溶剤の除去量を設定することができる。

また、上記硬化は、膜の硬さが向上していればよいが、重合による硬化が好ましい。
【0198】

本開示に係る膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜の厚さは20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。膜の厚さの下限は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0199】

本開示に係る膜は、波長650nm~1,500nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、波長680nm~1,300nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましく、波長700nm~1,100nmの範囲に極大吸収波長を有することが更に好ましい。
【0200】

本開示に係る膜を赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本開示に係る膜は以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、(1)~(4)の全ての条件を満たすことが更に好ましい。

(1)波長400nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。

(2)波長500nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。

(3)波長600nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。

(4)波長650nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0201】

本開示に係る膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本開示に係る組成物の欄で説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などを更に含有することができる。これらの詳細については、上述した材料が挙げられ、これらを用いることができる。
【0202】

本開示に係る膜とカラーフィルタとを組み合わせて用いる場合、本開示に係る膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本開示に係る膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本開示に係る膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本開示に係る膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本開示に係る膜が形成されていてもよく、本開示に係る膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0203】

なお、本開示において、赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を通過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本開示において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を通過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本開示において、赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0204】

本開示に係る膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0205】

<膜の製造方法>

次に、本開示に係る膜の製造方法について説明する。本開示に係る膜は、本開示に係る組成物を塗布する工程を経て製造できる。
【0206】

本開示に係る膜の製造方法において、組成物は支持体上に塗布することが好ましい。支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。これらの基板には、有機膜や無機膜などが形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した樹脂が挙げられる。また、支持体としては、上述した樹脂で構成された基板を用いることもできる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。また、支持体としてガラス基板を用いる場合においては、ガラス基板上に無機膜を形成したり、ガラス基板を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。この態様によれば、より異物の発生が抑制された膜を製造し易い。
【0207】

組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
【0208】

組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることが好ましく、80℃以上とすることがより好ましい。プリベーク温度を150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、これらの特性をより効果的に維持することができる。

プリベーク時間は、10秒~3,000秒が好ましく、40秒~2,500秒がより好ましく、80秒~220秒が更に好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0209】

本開示に係る膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本開示に係る膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0210】

-フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合-

フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本開示に係る組成物を塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)、再度露光する工程(後露光工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0211】

<<露光工程>>

露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、組成物層をパターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく、i線がより好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03J/cm2~2.5J/cm2が好ましく、0.05J/cm2~1.0J/cm2がより好ましく、0.08J/cm2~0.5J/cm2が特に好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、好ましくは1,000W/m2~100,000W/m2(例えば、5,000W/m2、15,000W/m2、35,000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10,000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20,000W/m2などとすることができる。
【0212】

<<現像工程>>

次に、露光後の組成物層における未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えない、アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20℃~30℃が好ましい。現像時間は、20秒~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0213】

現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した組成物で説明した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5倍~100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0214】

現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100℃~240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200℃~230℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、ポストベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜に対して、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。また、低温プロセスによりパターンを形成する場合は、ポストベークは行わなくてもよく、再度露光する工程(後露光工程)を追加してもよい。
【0215】

-ドライエッチング法でパターン形成する場合-

ドライエッチング法でのパターン形成は、組成物を支持体上などに塗布して形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジストの形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-64993号公報の段落0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0216】

<光学フィルタ、及び、積層体>

本開示に係る光学フィルタは、本開示に係る膜を有する。

本開示に係る光学フィルタは、赤外線カットフィルタ及び赤外線透過フィルタよりなる群から選ばれた少なくとも1種の光学フィルタとして好ましく用いることができ、赤外線カットフィルタとしてより好ましく用いることができる。

また、本開示に係る膜と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒及び無色よりなる群から選ばれる画素とを有する態様も本開示に係る光学フィルタの好ましい態様である。

また、本開示に係る積層体は、本開示に係る膜と、有彩色着色剤を含むカラーフィルタとを有する積層体である。
【0217】

本開示に係る赤外線カットフィルタは、本開示に係る膜を有する。

なお、本開示に係る赤外線カットフィルタは、赤外線領域の一部の波長の赤外線のみをカットするフィルタであっても、赤外線領域の全体をカットするフィルタであってもよい。赤外線領域の一部の波長の赤外線のみをカットするフィルタとしては、例えば、近赤外線カットフィルタが挙げられる。なお、近赤外線としては、波長750nm~2,500nmの赤外線が挙げられる。

また、本開示に係る赤外線カットフィルタは、波長750nm~1,000nmの範囲の赤外線をカットするフィルタであることが好ましく、波長750nm~1,200nmの範囲の赤外線をカットするフィルタであることがより好ましく、波長750nm~1,500nmの赤外線をカットするフィルタであることが更に好ましい。

本開示に係る赤外線カットフィルタは、上記膜の他に、更に、銅を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。本開示に係る赤外線カットフィルタが、更に、銅を含有する層、又は、誘電体多層膜を少なくとも有することで、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた赤外線カットフィルタが得られ易い。また、本開示に係る赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開第2015/099060号の段落0040~0070及び0119~0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014-41318号公報の段落0255~0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。銅を含有する層としては、銅を含有するガラスで構成されたガラス基材(銅含有ガラス基材)や、銅錯体を含む層(銅錯体含有層)を用いることもできる。銅含有ガラス基材としては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)、BG-60、BG-61(以上、ショット社製)、CD5000(HOYA(株)製)等が挙げられる。
【0218】

本開示に係る赤外線カットフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0219】

本開示に係る赤外線カットフィルタは、本開示に係る組成物を用いて得られる膜の画素(パターン)と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒及び無色よりなる群から選ばれる少なくとも1種の画素(パターン)とを有する態様も好ましい態様である。
【0220】

本開示に係る光学フィルタの製造方法としては、特に制限はないが、本開示に係る組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、上記組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含む方法、又は、本開示に係る組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、硬化して層を形成する工程、上記層上にフォトレジスト層を形成する工程、露光及び現像することにより上記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程、並びに、上記レジストパターンをエッチングマスクとして上記層をドライエッチングする工程を含む方法であることが好ましい。

本開示に係る光学フィルタの製造方法における各工程としては、本開示に係る膜の製造方法における各工程を参照することができる。
【0221】

<固体撮像素子>

本開示に係る固体撮像素子は、本開示に係る膜を有する。固体撮像素子の構成としては、本開示に係る膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0222】

支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本開示に係る膜を有する構成である。更に、デバイス保護膜上であって、本開示に係る膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本開示に係る膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0223】

<画像表示装置>

本開示に係る画像表示装置は、本開示に係る膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本開示に適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)及び黄色領域(580nm-620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0224】

<赤外線センサ>

本開示に係る赤外線センサは、本開示に係る膜を有する。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本開示に係る赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0225】

図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112及び赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0226】

赤外線カットフィルタ111は、本開示に係る組成物を用いて形成することができる。赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。
【0227】

カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-43556号公報の段落0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる
【0228】

赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。例えば、赤外LEDの発光波長が850nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長400nm~650nmの範囲における最大値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。この透過率は、波長400nm~650nmの範囲の全域で上記の条件を満たすことが好ましい。
【0229】

赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長800nm以上(好ましくは800nm~1,300nm)の範囲における最小値が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。上記の透過率は、波長800nm以上の範囲の一部で上記の条件を満たすことが好ましく、赤外LEDの発光波長に対応する波長で上記の条件を満たすことがより好ましい。
【0230】

赤外線透過フィルタ114の膜厚は、100μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、1μm以下が特に好ましい。下限値は、0.1μmが好ましい。膜厚が上記範囲であれば、上述した分光特性を満たす膜とすることができる。

赤外線透過フィルタ114の分光特性、膜厚等の測定方法を以下に示す。

膜厚は、膜を有する乾燥後の基板を、触針式表面形状測定器(ULVAC社製DEKTAK150)を用いて測定する。

膜の分光特性は、紫外可視近赤外分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製U-4100)を用いて、波長300nm~1,300nmの範囲において透過率を測定した値である。
【0231】

また、例えば、赤外LEDの発光波長が940nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長450nm~650nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における、波長835nmの光の透過率が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1,000nm~1,300nmの範囲における最小値が70%以上であることが好ましい。
【0232】

図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、赤外線カットフィルタ111とは別の赤外線カットフィルタ(他の赤外線カットフィルタ)が更に配置されていてもよい。他の赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層、又は、誘電体多層膜を少なくとも有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。

また、また、本開示に用いられる赤外線透過フィルタ及び赤外線カットフィルタの吸収波長は、使用光源等に合わせて適宜組み合わせて用いられる。
【0233】

(カメラモジュール)

本開示に係るカメラモジュールは、固体撮像素子と、本開示に係る赤外線カットフィルタとを有する。

また、本開示に係るカメラモジュールは、レンズ、及び、上記固体撮像素子から得られる撮像を処理する回路を更に有することが好ましい。

本開示に係るカメラモジュールに用いられる固体撮像素子としては、上記本開示に係る固体撮像素子であってもよいし、公知の固体撮像素子であってもよい。

また、本開示に係るカメラモジュールに用いられるレンズ、及び、上記固体撮像素子から得られる撮像を処理する回路としては、公知のものを用いることができる。

カメラモジュールの例としては、特開2016-6476号公報、又は、特開2014-197190号公報に記載のカメラモジュールを参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0234】

(化合物)

本開示に係る化合物は、上記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物であり、耐光性、耐熱性、及び、耐溶剤性の観点から、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。

本開示に係る化合物は、赤外線吸収色素として好適に用いることができる。
【0235】

【化41】
【0236】

式(3)中、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、A及びAはそれぞれ独立に、置換基を表し、B及びBはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、X~X13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、X10~X13の少なくとも1つはヘテロアリール基である。
【0237】

本開示に係る化合物における式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物、及び、式(3)で表される化合物は、本開示に係る組成物において上述した式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物、及び、式(3)で表される化合物とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
【0238】

本開示に係る化合物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法を参照し適宜製造することができる。

例えば、ジケトピロロピロール化合物に、ヘテロアリール基が結合したキノキサリン化合物をオキシ塩化リン等により反応させることにより製造する方法が好適に挙げられる。
【0239】

(分散組成物)

本開示に係る分散組成物は、下記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物と、溶剤、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む。
【0240】

【化42】
【0241】

式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表し、X~Xの少なくとも1つはヘテロアリール基であり、Zは、N、又は、N-Rを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、*は色素構造を有する構造との結合位置を表す。
【0242】

本開示に係る分散組成物における上記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物、溶剤、バインダー及び硬化性化合物は、本開示に係る組成物において上述した上記式(1)で表される部分構造及び色素構造を有する化合物、溶剤、バインダー及び硬化性化合物とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。

また、上述した以外の成分についても、本開示に係る組成物において上述した成分を好適に含むことができる。
【0243】

上記式(1)で表される部分構造を有する化合物が顔料である場合、本開示に係る分散組成物は、分散性、及び、分散安定性の観点から、分散剤を含むことが好ましい。

また、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物が顔料である場合、本開示に係る分散組成物は、分散性、及び、分散安定性の観点から、色素誘導体を含むことが好ましく、顔料誘導体を含むことがより好ましい。

本開示に係る分散組成物における分散剤及び色素誘導体は、本開示に係る組成物において上述した分散剤及び色素誘導体とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
【実施例
【0244】

以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0245】

上述した以外の実施例比較例に使用した化合物等を、以下に示す。

<色素>
【0246】

【化43】
【0247】

上記化学式におけるRP1~RP7、XP1、XP2、及び、YP1の組み合わせを以下の表3~表8に示す。記号*は、他の構造との結合位置を表す。
【0248】

【表3】
【0249】

【表4】
【0250】

【表5】
【0251】

【表6】
【0252】

【表7】
【0253】

【表8】
【0254】

【化44】
【0255】

上記化学式におけるRP11~RP14、XP11、及び、YP11の組み合わせを以下の表9に示す。記号*は、他の構造との結合位置を表す。
【0256】

【表9】
【0257】

【化45】
【0258】

上記化学式におけるRP8の組み合わせを以下の表10に示す。記号*は、他の構造との結合位置を表す。
【0259】

【表10】
【0260】

【化46】
【0261】

上記化学式におけるRP9の組み合わせを以下の表11に示す。記号*は、他の構造との結合位置を表す。
【0262】

【表11】
【0263】

(合成例1)

下記スキームに示す方法により、PPB-1を合成した。詳細を以下に示す。
【0264】

【化47】
【0265】

<PPB-1-aの合成>

4-(1-メチルヘプトキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、化合物PPB-1-aを合成した。
【0266】

<中間体C-1の合成>

下記スキームに従い、中間体C-1を合成した。
【0267】

【0268】

tert-ブトキシカリウム137質量部と、テトラヒドロフラン(THF)400質量部とをフラスコに入れ、氷浴下でシアノ酢酸tert-ブチル160質量部を滴下した。室温(25℃、以下同様)で0.5時間撹拌した後に、2,6-ジクロロキノキサリン90質量部を添加し、2時間撹拌した。反応液に900質量部の水を注ぎ、酢酸53質量部を加え、析出物を濾取した。この結晶を50℃で送風乾燥することで、中間体C-1aを118質量部得た。

中間体C-1a 115質量部と、酢酸362質量部をフラスコに入れ、外接温度140℃で7時間撹拌した。反応後、内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつ水630質量部を滴下した。結晶をろ別し、50℃で送風乾燥することで、中間体C-1bを62質量部得た。

中間体C-1b 25質量部と、3-フリルボロン酸18質量部と、炭酸カリウム17質量部と、水45質量部、ジメチルアセトアミド235質量部をフラスコに入れ、室温で0.5時間撹拌した後に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)7質量部を添加し、外接温度120℃で2時間撹拌した。反応後、内温10℃になるまで氷冷し、内温20℃以下を維持しつつ1mol/L塩酸600質量部を滴下した。結晶をろ別し、水250質量部で洗浄した。得られた結晶に393質量部の2-プロパノールを加えて30分間撹拌し、結晶をろ別した。得られた結晶を50℃で送風乾燥することで、中間体C-1を25質量部得た。
【0269】

<PPB-1-bの合成>

化合物PPB-1-a 20質量部、中間体C-1 21質量部をトルエン346質量部中で撹拌し、オキシ塩化リン51質量部を滴下し3.5時間加熱還流した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、内温30℃以下を維持しつつメタノール634質量部を30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分間撹拌した。析出した結晶をろ別し、メタノール271質量部で洗浄した。得られた結晶を50℃12時間送風乾燥させることで、化合物(PPB-1-b)を16質量部得た。
【0270】

<PPB-1-cの合成>

化合物PPB-1-b 5質量部、ジフェニルボリン酸2-アミノエチルエステル10質量部を1,2-ジクロロベンゼン98質量部中で撹拌し、外接温度145℃で、四塩化チタン15質量部と1,2-ジクロロベンゼン32質量部の混合物を15分間かけて滴下し、1時間撹拌した。内温30℃になるまで放冷し、内温30℃以下を維持しつつメタノール80質量部を滴下した。滴下後30分間撹拌し、結晶をろ別し、メタノール40質量部で洗浄した。得られた結晶に28質量部のメタノールを加えて30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を50℃で12時間送風乾燥させることで、化合物PPB-1-cを2.5質量部得た。
【0271】

<PPB-1の合成>

化合物PPB-1-c 0.3質量部をテトラヒドロフラン8.9質量部中で撹拌し、トリエチルアミン0.34質量部、テトラヒドロフラン2質量部と2-ナフトイルクロリド0.42質量部との混合物の順で滴下し、外接温度75℃まで昇温し1時間加熱還流した。内温30℃になるまで放冷し、結晶をろ別し、テトラヒドロフラン5.4質量部で洗浄した。得られた結晶に7.9質量部のメタノールを加えて1時間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別した。得られた結晶を50℃で12時間送風乾燥させることで、化合物PPB-1を0.16質量部得た。

H-NMR(CDCl):δ=6.40(d,4H),6.61(d,2H),7.25(d,4H),7.16~7.32(m,14H),7.43(m,10H),7.60~7.70(m,6H),7.82(d,2H),7.97(d,2H),8.02(d,2H),8.06(d,2H),8.12(d,2H),8.32(d,2H),8.92(s,2H),9.12(s,2H).

なお、化合物PPB-1のλmaxは、クロロホルム中で895nmであった。
【0272】

(合成例2)

原料を変更した以外は、PPB-2~PPB-76、及び、後述するSyn-1~Syn-19を、PPB-1と同様の方法でそれぞれ合成した。
【0273】

<PPB-4>

H-NMR(CDCl):δ=6.41(d,4H),7.02(d,4H),7.15~7.35(m,14H),7.45(m,12H),7.60~7.70(m,4H),7.94~8.07(m,10H),8.14(d,2H),8.31(d,2H),8.93(s,2H),9.12(s,2H).

なお、化合物PPB-4のλmaxは、クロロホルム中で897nmであった。
【0274】

<PPB-7>

H-NMR(CDCl):δ=6.41(d,4H),7.01(m,6H),7.17~7.30(m,16H),7.39(d,2H),7.44(d,8H),7.60~7.70(m,4H),7.94~8.14(m,10H),8.31(d,2H),8.92(d,2H),9.11(s,2H).

なお、化合物PPB-7のλmaxは、クロロホルム中で909nmであった。
【0275】

<PPB-16>

H-NMR(CDCl):δ=6.39(d,4H),6.61(d,2H),7.01(d,4H),7.16~7.30(m,10H),7.41(d,10H),7.47~7.59(m,8H),7.68(s,2H),7.81(d,2H),7.98(t,4H),8,10(d,2H),8.35(s,2H),9.09(s,2H).

なお、化合物PPB-16のλmaxは、クロロホルム中で895nmであった。
【0276】

<PPB-17>

H-NMR(CDCl):δ=3.28(s,6H),6.41(d,4H),6,61(s,2H),6.09(d,4H),7.16~7.31(m,14H),7.40~7.42(m,10H),7.68(s,2H),7,82(d,2H),8.05(d,2H),8.09(d,2H),8,67(d,2H),8.77(s,2H),9.09(s,2H).

なお、化合物PPB-17のλmaxは、クロロホルム中で895nmであった。
【0277】

<PPB-18>

H-NMR(CDCl):δ=6.39(d,4H),7.01(d,4H),7.16~7.35(m,14H),7.39~7.45(m,12H),7.47~7.57(m,6H)7.94(d,2H),7,98(t,4H),8.13(d,2H),8.35(s,2H),9.10(s,2H).

なお、化合物PPB-18のλmaxは、クロロホルム中で898nmであった。
【0278】

<PPB-19>

H-NMR(CDCl):δ=3.28(s,6H),6.42(d,4H),7.00(d,4H),7.16~7.36(m,16H),7.41~7.45(m,12H),7.94(d,2H),8.05(d,2H),8.11(d,2H),8,67(d,2H),8.77(s,2H),9.10(s,2H).

なお、化合物PPB-19のλmaxは、クロロホルム中で898nmであった。
【0279】

(合成例3)

特開2017-137264号公報に記載の方法を参考にして、化合物SQ-1を合成した。
【0280】

(合成例4)

SQ-2、SQ-3及びSQ-4を、SQ-1と同様の方法でそれぞれ合成した。
【0281】

<誘導体>
【0282】

【化48】
【0283】

上記化学式におけるRP1~RP7、XP1、XP2、及び、YP1の組み合わせを以下の表12及び表13に示す。記号*は、他の構造との結合位置を表す。
【0284】

【表12】
【0285】

【表13】
【0286】

【化49】
【0287】

<分散樹脂>

D-1:下記構造の樹脂(酸価=100mgKOH/g、重量平均分子量=37,600、主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。)

D-2:下記構造の樹脂(酸価=32.3mgKOH/g、アミン価=45.0mgKOH/g、重量平均分子量=22,900、主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。)
【0288】

【化50】
【0289】

<樹脂>

E-1:アクリベースFF-426(藤倉化成(株)製、アルカリ可溶性樹脂)

E-2:ARTON F4520(JSR(株)製、環状ポリオレフィン樹脂)

E-3:下記構造の樹脂(Mw=40,000、酸価100mgKOH/g、主鎖に付記した数値は繰り返し単位の質量比を表す。アルカリ可溶性樹脂。)
【0290】

【化51】
【0291】

<光重合開始剤>
【0292】

【化52】
【0293】

<重合性化合物>

M-1:アロニックスM-305(東亞合成(株)製、下記2種の化合物の混合物。トリアクリレートの含有量が55質量%~63質量%である。)
【0294】

【化53】
【0295】

M-2:KAYARAD RP-1040(日本化薬(株)製、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート)

M-3:アロニックスM-510(東亞合成(株)製、多塩基酸変性アクリルオリゴマー)
【0296】

<溶剤>

PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート

CYP:シクロペンタノン
【0297】

(実施例1~82、及び、比較例1~4)

<顔料型実施例及び比較例の評価方法>

<<顔料分散液の調製>>

下記表14又は表15に記載の顔料10質量部、下記表14又は表15に記載の誘導体3質量部、下記表14又は表15に記載の分散剤7.8質量部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)150質量部、及び、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。
【0298】

<<硬化性組成物の調製1>>

下記の成分を混合して、硬化性組成物を作製した。

-硬化性組成物の組成-

・上記で得られた分散液:55質量部

・樹脂:7.0質量部

・重合性化合物:4.5質量部

・光重合開始剤:0.8質量部

・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.001質量部

・界面活性剤(下記混合物(Mw=14,000)。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。):0.03質量部

・紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製):1.3質量部

・溶剤:31質量部
【0299】

【化54】
【0300】

<<硬化性組成物の調製2>>

下記の成分を混合して、硬化性組成物を作製した。

-硬化性組成物の組成-

・上記で得られた分散液:55質量部

・樹脂:14質量部

・溶剤:31質量部
【0301】

<<硬化膜の作製1>>

硬化性組成物をガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して組成物層を得た。得られた組成物層を、i線ステッパーを用い、500mJ/cmの露光量にて露光した。次いで、露光後の組成物層に対してホットプレートを用いて220℃で5分間硬化処理を行い、厚さ0.7μmの硬化膜を得た。
【0302】

<<硬化膜の作製2>>

硬化性組成物を、ガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて80℃で10分間加熱(プリベーク)し、次いで、200℃で5分間加熱して厚さ0.7μmの膜を得た。
【0303】

<<耐熱性の評価>>

得られた膜を、ホットプレートにより260℃で30分加熱した後、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)にて、耐熱テスト前後の色差のΔEab値を測定して、下記基準に従って評価した。ΔEab値の小さい方が、耐熱性が良好であることを示す。

なお、ΔEab値は、CIE1976(L,a,b)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。

ΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb1/2

<<判定基準>>

A:ΔEab値<5

B:5≦ΔEab値<10

C:10≦ΔEab値
【0304】

<<耐光性の評価>>

得られた膜に対し、キセノンランプを5万luxで20時間照射(100万lux・h相当)した後、耐光テスト前後の色差のΔEab値を測定した。ΔEab値の小さいほうが、耐光性が良好であることを示す。

<<判定基準>>

A:ΔEab値<5

B:5≦ΔEab値<10

C:10≦ΔEab値
【0305】

<<耐溶剤性の評価>>

得られた膜を、85℃、相対湿度85%の高温高湿の環境下で1時間放置した。その後、赤外線吸収フィルタをシクロヘキサノンに5分間浸漬させ、浸漬前後の分光を比較し、下記式より耐溶剤性を評価した。分光は、分光器U4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)により極大吸収波長における吸光度を測定した。

式:(浸漬後の吸光度/浸漬前の吸光度)×100

<<判定基準>>

A:上記式の値が90%以上

B:上記式の値が80%以上90%未満

C:上記式の値が80%未満
【0306】

<染料型実施例及び比較例の評価方法>

<<色素溶液の調製>>

下記表14又は表15に記載の染料2.34質量部、溶剤72.2質量部を混合して色素溶液を製造した。
【0307】

<<硬化性組成物の調製3>>

下記の成分を混合して、硬化性組成物を作製した。

-硬化性組成物の組成-

・色素溶液:74.5質量部

・樹脂(30%シクロペンタノン溶液):20.1質量部

・重合性化合物:1.3質量部

・光重合開始剤:1.4質量部

・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.001質量部

・メガファックRS-72-K(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製):2.6質量部
【0308】

<<硬化性組成物の調製4>>

下記の成分を混合して、硬化性組成物を作製した。

-硬化性組成物の組成-

・色素溶液:74.5質量部

・エポキシ樹脂(30%シクロペンタノン溶液):20.1質量部

・エポキシ硬化剤:0.05質量部
【0309】

以下に実施例及び比較例で使用したエポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤の詳細を示す。
【0310】

-エポキシ樹脂-

F-1:メタクリル酸グリシジル骨格ランダムポリマー(日油(株)製、マープルーフG-0150M、重量平均分子量10,000)

F-2:EPICLON HP-4700(DIC(株)製、ナフタレン型エポキシ樹脂)

F-3:JER1031S(三菱化学(株)製、多官能エポキシ樹脂)
【0311】

-エポキシ硬化剤-

G-1:トリメリット酸

G-2:ピロメリット酸無水物

G-3:N,N-ジメチル-4-アミノピリジン
【0312】

<<硬化膜の作製3>>

上記で調製した各硬化性組成物を、ガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて80℃で10分間加熱(プリベーク)し、次いで、150℃で3時間加熱して厚さ0.7μmの膜を得た。
【0313】

<<耐熱性、及び、耐光性の評価>>

上記と同様の方法で耐熱性、耐光性及び耐溶剤性を評価した。
【0314】

評価結果をまとめて表16及び表17に示す。
【0315】

【表14】
【0316】

【表15】
【0317】

【表16】
【0318】

【表17】
【0319】

表16及び表17に記載の結果から、本開示に係る組成物は、比較例の組成物に比べて、耐熱性に優れることが明らかである。更に、本開示に係る組成物は、耐光性及び耐溶剤性にも優れることがわかる。また、式(1)で表される部分構造を2つ有する化合物を含む組成物は、式(1)で表される部分構造を1つのみ有する化合物を含む組成物に比べて、耐熱性に優れることがわかる。
【0320】

また、実施例1において、PGMEAの1/3質量をプロピレングリコールモノメチルエーテルに置き換えて同様に評価した場合も実施例1と同様の結果が得られる。

実施例1において、重合禁止剤を添加しない場合においても実施例1と同様の結果が得られた。

実施例1において、界面活性剤を添加しない場合においても実施例1と同様の結果が得られた。
【0321】

(実施例101~182)

実施例1、3、7~53、55~65、67、68、71~77又は79~82で得られた組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cmで2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、2μm四方のパターン(赤外線カットフィルタ)を形成した。

実施例2、4~6、54、66、69、70又は78で得られた組成物を、製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウェハ上にスピンコート法で塗布した。その後ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱した。次いでドライエッチング法により2μm四方のパターン(赤外線カットフィルタ)を形成した。
【0322】

次に、赤外線カットフィルタのパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cmで2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、赤外線カットフィルタのパターン上に、Red組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑及び青の着色パターン(Bayerパターン)を形成した。

なお、Bayerパターンとは、米国特許第3,971,065号明細書に開示されているような、一個の赤色(Red)素子と、二個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子とを有する色フィルタ素子の2×2アレイを繰り返したパターンであるが、本実施例においては、一個の赤色(Red)素子と、一個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子と、一個の赤外線透過フィルタ素子を有するフィルタ素子の2×2アレイを繰り返したBayerパターンを形成した。
【0323】

次に、上記パターン形成した膜上に、赤外線透過フィルタ形成用組成物(下記組成100又は組成101)を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cmで2μm四方のBayerパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、赤外線カットフィルタのBayerパターンのうち、上記着色パターンが形成されていない抜け部分に、赤外線透過フィルタのパターニングを行った。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。

得られた固体撮像素子について、低照度の環境下(0.001ルクス(Lux))で赤外発光ダイオード(赤外LED)により赤外線を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。実施例1~82で得られたいずれの組成物を使用した場合でも、低照度の環境下であっても画像をはっきりと認識できた。
【0324】

実施例101~182で使用したRed組成物、Green組成物、Blue組成物、及び、赤外線透過フィルタ形成用組成物は、以下の通りである。
【0325】

-Red組成物-

下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。

Red顔料分散液:51.7質量部

樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.6質量部

重合性化合物4:0.6質量部

光重合開始剤1:0.3質量部

界面活性剤1:4.2質量部

PGMEA:42.6質量部
【0326】

-Green組成物-

下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。

Green顔料分散液:73.7質量部

樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.3質量部

重合性化合物1:1.2質量部

光重合開始剤1:0.6質量部

界面活性剤1:4.2質量部

紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製):0.5質量部

PGMEA:19.5質量部
【0327】

-Blue組成物-

下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。

Blue顔料分散液:44.9質量部

樹脂4(40質量%PGMEA溶液):2.1質量部

重合性化合物1:1.5質量部

重合性化合物4:0.7質量部

光重合開始剤1:0.8質量部

界面活性剤1:4.2質量部

PGMEA:45.8質量部
【0328】

-赤外線透過フィルタ形成用組成物-

下記組成における成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、赤外線透過フィルタ形成用組成物を調製した。
【0329】

<組成100>

顔料分散液1-1:46.5質量部

顔料分散液1-2:37.1質量部

重合性化合物5:1.8質量部

樹脂4:1.1質量部

光重合開始剤2:0.9質量部

界面活性剤1:4.2質量部

重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.001質量部

シランカップリング剤:0.6質量部

PGMEA:7.8質量部
【0330】

<組成101>

顔料分散液2-1:1,000質量部

重合性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):50質量部

樹脂:17質量部

光重合開始剤(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)):10質量部

PGMEA:179質量部

アルカリ可溶性重合体F-1:17質量部(固形分濃度35質量部)
【0331】

<アルカリ可溶性重合体F-1の合成例>

反応容器に、ベンジルメタクリレート14部、N-フェニルマレイミド12部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15部、スチレン10部及びメタクリル酸20部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200部に溶解し、更に2,2’-アゾイソブチロニトリル3部及びα-メチルスチレンダイマー5部を投入した。反応容器内を窒素パージ後、撹拌及び窒素バブリングしながら80℃で5時間加熱し、アルカリ可溶性重合体F-1を含む溶液(固形分濃度35質量%)を得た。この重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が9,700、数平均分子量が5,700であり、Mw/Mnが1.70であった。
【0332】

<顔料分散液2-1>

C.I.ピグメントブラック32を60部、C.I.ピグメントブルー15:6を20部、C.I.ピグメントイエロー139を20部、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパース76500を80部(固形分濃度50質量%)、アルカリ可溶性重合体F-1を含む溶液を120部(固形分濃度35質量%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを700部混合し、ペイントシェーカーを用いて8時間分散し、着色剤分散液2-1を得た。
【0333】

Red組成物、Green組成物、Blue組成物、及び、赤外線透過フィルタ形成用組成物に使用した原料は、以下の通りである。
【0334】

・Red顔料分散液

C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0335】

・Green顔料分散液

C.I.Pigment Green 36を6.4質量部、C.I.Pigment Yellow 150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
【0336】

・Blue顔料分散液

C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5部、PGMEAを82.4部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0337】

・顔料分散液1-1

下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-1を調製した。

・赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)及び黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139)からなる混合顔料:11.8質量部

・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製):9.1質量部

・PGMEA:79.1質量部
【0338】

・顔料分散液1-2

下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-2を調製した。

・青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)及び紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)からなる混合顔料:12.6質量部

・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製):2.0質量部

・樹脂A:3.3質量部

・シクロヘキサノン:31.2質量部

・PGMEA:50.9質量部
【0339】

樹脂A:下記構造(Mw=14,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0340】

【化55】
【0341】

・重合性化合物1:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、日本化薬(株)製)

・重合性化合物4:下記構造
【0342】

【化56】
【0343】

・重合性化合物5:下記構造(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【0344】

【化57】
【0345】

・樹脂4:下記構造(酸価:70mgKOH/g、Mw=11,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0346】

【化58】
【0347】

・光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、BASF社製)

・光重合開始剤2:下記構造
【0348】

【化59】
【0349】

・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14,000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、構成単位の割合を示す%(62%及び38%)の単位は、質量%である。
【0350】

【化60】
【0351】

・シランカップリング剤:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表す。
【0352】

【化61】
【0353】

(実施例201)

下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、実施例201のパターン形成用組成物を調製した。

実施例1のパターン形成用組成物:22.67質量部

顔料分散液2-1:51.23質量部

実施例201のパターン形成用組成物を用いて、実施例1と同様に耐熱性、パターン形状、及び、現像残渣の評価を行ったところ、実施例1と同様の効果が得られた。また、実施例201のパターン形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させることができた。
【0354】

(実施例202)

下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、実施例202のパターン形成用組成物を調製した。

実施例1のパターン形成用組成物:36.99質量部

顔料分散液1-1:46.5質量部

顔料分散液1-2:37.1質量部

実施例202のパターン形成用組成物を用いて、実施例1と同様に耐熱性、パターン形状、及び、現像残渣の評価を行ったところ、実施例1と同様の効果が得られた。また、実施例202のパターン形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させることができた。
【0355】

(実施例301)

上記実施例1~82で得られた組成物を用い、基板としてガラス基板を用い、ガラス基板上に上記組成物を塗布した以外は実施例1と同様に赤外線遮蔽性、耐熱性、パターン形状、及び、現像残渣の評価を行っても、実施例1~82と同様の効果が得られる。
【0356】

(実施例302)

上記実施例201及び実施例202で得られた組成物を用い、基板としてガラス基板を用い、ガラス基板上に上記組成物を塗布した以外は実施例201又は実施例202と同様に耐熱性、パターン形状、及び、現像残渣の評価を行っても、実施例201及び実施例202と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0357】

110:固体撮像素子、111:赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層
図1