(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】重合体、これを含むコーティング組成物およびこれを用いた有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C08F 12/32 20060101AFI20220627BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08F12/32
H05B33/22 D
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020518465
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 KR2019000787
(87)【国際公開番号】W WO2019146967
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0008806
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミンソブ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】エスダー・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェスン・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ファキョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クンス・イ
(72)【発明者】
【氏名】セジン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-303490(JP,A)
【文献】特開2015-035629(JP,A)
【文献】特表2015-511215(JP,A)
【文献】特開2016-066542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6-246、H01L51、H05B33、C07D219
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される単位を含む重合体:
【化1】
前記化学式1において、
Ar
1は、置換もしくは非置換の
フェニル基であり、
Ar
2~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基であり、
前記アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、ナフチル基
、及び
9,9-ジメチルフルオレニル基からなる群から選択され、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;または置換もしくは非置換の
p-フェニレン基であり、
Yは、
【化2】
からなる群から選択される基であり
、
R3~R5は、水素であり、
lおよびkはそれぞれ、0
(ゼロ)であり
、したがってR1及びR2は存在せず、
上記の各基が置換されている場合にその置換基は、重水素
である。
【請求項2】
化学式1で表される単位を含む重合体の数平均分子量は、1,000g/mol~300,000g/molである、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
前記Ar
2~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;または置換もしくは非置換の
9,9-ジメチルフルオレ
ニル基である、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
前記化学式1で表される単位を含む重合体は、下記構造式の中から選択されるものである、請求項1に記載の重合体:
【化3】
【化4】
【化5】
前記構造式において、nは、繰り返し単位数であり、10~1000であり、
前記重合体の末端基は、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基である。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項に記載の重合体を含むコーティング組成物。
【請求項6】
前記コーティング組成物は、有機発光素子用である、請求項
5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
第1電極と、第1電極に対向して備えられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含み、
前記有機物層のうちの1層以上は、請求項
5に記載のコーティング組成物を含むものである有機発光素子。
【請求項8】
前記コーティング組成物を含む有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層である、請求項
7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記コーティング組成物は、pドーピング物質をさらに含むものである、請求項
8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記pドーピング物質は、F
4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含む化合物である、請求項
9に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、前記重合体を含むコーティング組成物、およびこれを用いて形成された有機発光素子に関する。
【0002】
本出願は、2018年1月24日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0008806号の出願日の利益を主張し、その内容はすべて明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象は、特定の有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に変換される例の一つである。有機発光現象の原理は次の通りである。アノードとカソードとの間に有機物層を位置させた時、2つの電極の間に電流をかけると、カソードとアノードからそれぞれ電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び基底状態に落ちながら光を発する。このような原理を利用する有機発光素子は、一般的に、カソードとアノード、およびその間に位置した有機物層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を含む有機物層から構成される。
【0004】
有機発光素子で使用される物質としては、純粋な有機物質または有機物質と金属が錯体をなす錯化合物が大部分を占めており、用途によって、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分される。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としては、p-タイプの性質を有する有機物質、すなわち、酸化されやすく、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としては、n-タイプの性質を有する有機物質、すなわち、還元されやすく、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。発光層物質としては、p-タイプの性質とn-タイプの性質を同時に有する物質、すなわち、酸化と還元状態ですべて安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成された時、これを光に変換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0005】
上述のほか、有機発光素子で使用される物質は、次の性質を追加的に有するものが好ましい。
第一に、有機発光素子で使用される物質は、熱的安定性に優れているものが好ましい。有機発光素子内では電荷の移動によるジュール熱(joule heat)が発生するからである。現在、正孔輸送層物質として主に使用されるNPB(N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)は、ガラス転移温度が100℃以下の値を有するので、高い電流を必要とする有機発光素子では使用しにくい問題がある。
第二に、低電圧駆動可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔と電子が発光層の外に抜け出ないようにしなければならない。このために、有機発光素子に使用される物質は、適切なバンドギャップ(band gap)とHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)またはLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)エネルギー準位を有しなければならない。現在、溶液塗布法によって製造される有機発光素子において、正孔輸送物質として用いられるPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート))の場合、発光層物質として用いられる有機物のLUMOエネルギー準位に比べて、LUMOエネルギー準位が低いため、高効率長寿命の有機発光素子の製造に困難がある。
【0006】
その他にも、有機発光素子で使用される物質は、化学的安定性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などに優れていなければならない。すなわち、有機発光素子で使用される物質は、水分や酸素による物質の変形が少なくなければならない。また、適切な正孔または電子移動度を有することにより、有機発光素子の発光層で正孔と電子の密度がバランスをとるようにしてエキシトンの形成を極大化できなければならない。そして、素子の安定性のために、金属または金属酸化物を含む電極との界面を良くできなければならない。
【0007】
上述のほか、溶液工程用有機発光素子で使用される物質は、次の性質を追加的に有しなければならない。
第一に、保存可能な均質な溶液を形成しなければならない。商用化された蒸着工程用物質の場合、結晶性が良くて溶液に溶けにくかったり、溶液を形成しても結晶がとれやすいため、保存期間によって、溶液の濃度勾配が異なったり、不良素子を形成する可能性が高い。
第二に、溶液工程が行われる層は、他の層に対して溶媒および物質の耐性がなければならない。このために、VNPB(N4,N4’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4’-ビス(4-ビニルフェニル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)のように硬化基を導入して溶液塗布後、熱処理あるいはUV(ultraviolet)照射により基板上で自ら架橋結合した高分子を形成または次の工程に十分な耐性を有する高分子を形成できる物質が好ましく、HATCN(ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル:Hexaazatriphenylenehexacarbonitrile)のように自ら溶媒耐性を有し得る物質も好ましい。物質は、自ら次の工程の溶媒に耐性を有する物質が好ましく、溶媒に十分に溶解可能な単量体で高分子を作って、溶媒に対しては溶けやすいものの、次の工程の溶媒に対しては溶けない物質を必要とする。
【0008】
したがって、当技術分野では、上記のような要件を備えた有機物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、溶液工程用有機発光素子で使用可能な重合体、これを含むコーティング組成物およびこれを用いて形成された有機発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1で表される単位を含む重合体を提供する。
【0011】
【0012】
前記化学式1において、
Ar1~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基であり、
前記Ar2およびAr3は、互いに結合して置換もしくは非置換のヘテロ環を形成してもよく、
前記Ar4およびAr5は、互いに結合して置換もしくは非置換のヘテロ環を形成してもよいし、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Yは、-Y1-または-(Y2)i-Y3-であり、
前記Y1およびY3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のアルキレン基であり、
Y2は、置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換のアルキレン基;または-O-であり、
iは、1~8の整数であり、前記iが2以上の場合、Y2は、互いに同一または異なり、
Y3と結合するY2は、Y3と異なり、2以上のY2のうち互いに結合するY2は、互いに異なり、
R1~R5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
lおよびkはそれぞれ、0~3の整数であり、lが2以上の場合、前記R1は、互いに同一または異なり、kが2以上の場合、前記R2は、互いに同一または異なる。
【0013】
また、本発明は、前述した重合体を含むコーティング組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前述したコーティング組成物を含むものである有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施態様に係る重合体は、高い溶解度を有する単量体に由来する単位を含んでいて、一部の溶媒に対する溶解度は高いものの、次の工程の溶媒に耐性を有するようになって、化合物が洗い流されたり、膜特性が変化せず、再現性のある有機発光素子を作製することができる。
【0016】
重合体の主鎖とジアミンで置換されたフルオレンとの間の適切なスペーサは、分子間の相互作用を妨げてガラス転移温度、融点および溶解度を調節可能なため、この誘導体は溶液工程用有機発光素子の有機物層材料として使用可能であり、低い駆動電圧、高い発光効率および高い寿命特性を提供することができる。また、前記フルオレン誘導体を用いることにより、溶解度が増大するので、溶液工程のインク製造時に溶媒の選択が広くなり、融点を低下させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施態様に係る有機発光素子の例を示すものである。
【
図2】比較化合物Dの膜保持率の実験結果を示す図である。
【
図3】化合物Bの膜保持率の実験結果を示す図である。
【
図4】化合物Aの高分子物質分子量測定器(GPC)データである。
【
図5】化合物Bの高分子物質分子量測定器(GPC)データである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0020】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0021】
本明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0022】
本発明の一実施態様は、前記化学式1で表される単位を含む重合体を提供する。
【0023】
本発明の一実施態様は、前記化学式1で表される単位を含む重合体は、適当な有機溶媒に対して溶解性を有し、次の工程の溶媒に耐性を有する化合物が好ましい。
【0024】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される単位は、フルオレンの両側のベンゼン環にアミン基が結合し、9位にビニル基が結合している化合物に由来する単位である。化学式1のYは、長い枝状のリンカーを示し、この場合、有機溶媒に対して溶解度に優れている。前記化学式1で表される単位を含む重合体を有機発光素子における正孔輸送層または正孔注入層に用いる場合、溶液工程を適用することが容易であり、製造された正孔輸送層または正孔注入層の均一性と表面特性などに優れているので、製造された素子の性能および寿命の面で優れている。
【0025】
また、化学式1で表される単位は、フルオレンに9位の化合物が非対称の単位であり、対称の単位と比較して分子間の相互作用が低下して溶液工程中に結晶が析出する問題を低減することができ、多様な誘導体を製造可能な効果がある。
【0026】
さらに、本発明の一実施態様に係る重合体は、ビニル縮合により主鎖とアリールアミン部分が離れていて再現性ある素子の性能を確認することができる。ビニル縮合せず、アリールアミン基が主鎖の場合の重合体は、完全に共役した重合体であるため、素子において電子または正孔の流れが大きすぎたり、バランスのとれた電荷輸送に適さないことがある。また、高分子の長さに応じて主鎖にアリールアミンの含有量が異なるため、再現性あるように分子量を調節することができず、素子の性能が大きく変化する問題がある。
【0027】
以下、本明細書の置換基を以下に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基または結合部に結合する部位を意味する。
【0029】
本明細書において、前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変化することを意味する。置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0030】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、水素;重水素;ハロゲン基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;アミン基;およびアリールアミン基からなる群より選択された1つ以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換であることを意味する。
【0031】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0032】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖、分枝鎖もしくは環鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~50のものが好ましい。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0033】
前記アルキル基は、アリール基またはヘテロアリール基で置換されて、アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキル基として作用できる。前記アリール基、ヘテロ環基は、後述するアリール基、またはヘテロ環基の例示の中から選択される。
【0034】
本明細書において、前記アルキル基の長さは、化合物の共役長には影響を与えず、化合物の有機発光素子の適用方法、例えば、真空蒸着法または溶液塗布法の適用に影響を与えることができる。
【0035】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60のものが好ましく、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書において、前記アリール基が単環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数6~25のものが好ましい。具体的には、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記アリール基が多環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数10~30のものが好ましい。具体的には、多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書において、前記フルオレン基は置換されていてもよいし、隣接した置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0039】
前記フルオレニル基が置換される場合、
【化3】
などになってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0040】
前記アリール基は、アルキル基で置換されて、アリールアルキル基として作用できる。前記アルキル基は、前述した例示の中から選択される。
【0041】
本明細書において、アミン基は、炭素数は特に限定されないが、1~30のものが好ましい。アミン基は、前述したアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルケニル基、シクロアルキル基、およびこれらの組み合わせなどが置換されていてもよいし、アミン基の具体例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0042】
本明細書において、アリールアミン基の例としては、置換もしくは非置換のモノアリールアミン基、置換もしくは非置換のジアリールアミン基、または置換もしくは非置換のトリアリールアミン基がある。前記アリールアミン基中のアリール基は、単環式アリール基であってもよく、多環式アリール基であってもよい。前記アリール基が2以上を含むアリールアミン基は、単環式アリール基、多環式アリール基、または単環式アリール基と多環式アリール基を同時に含んでもよい。例えば、前記アリールアミン基中のアリール基は、前述したアリール基の例示の中から選択される。アリールアミン基の具体例としては、フェニルアミン、ナフチルアミン、ビフェニルアミン、アントラセニルアミン、3-メチル-フェニルアミン、4-メチル-ナフチルアミン、2-メチル-ビフェニルアミン、9-メチル-アントラセニルアミン、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、カルバゾールおよびトリフェニルアミン基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書において、アルキレン基は、アルキル基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアルキル基の説明が適用可能である。
【0044】
本明細書において、アルキレンオキシ基は、アルキレン-O-を意味し、ここで、アルキレンは、前記アルキレン基と同じである。
【0045】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアリール基の説明が適用可能である。
【0046】
本明細書において、「隣接した」基は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環におけるオルト(ortho)位に置換された2つの置換基、および脂肪族環における同一炭素に置換された2つの置換基は、互いに「隣接した」基と解釈される。
【0047】
本発明の一実施態様において、前記Ar1~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;または置換もしくは非置換のフルオレン基である。
【0048】
本発明の一実施態様において、前記Ar1~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、ハロゲン基、アルキル基、またはアリールアミン基で置換もしくは非置換のフェニル基;アリールアミン基で置換もしくは非置換のビフェニル基;またはアルキル基で置換もしくは非置換のフルオレン基である。
【0049】
本発明の一実施態様において、前記Ar1は、置換もしくは非置換のフェニル基;または置換もしくは非置換のビフェニル基である。
【0050】
本発明の一実施態様において、前記Ar1は、ハロゲン基またはアルキル基で置換もしくは非置換のフェニル基である。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記Ar1は、F、メチル基、ブチル基、またはヘキシル基で置換もしくは非置換のフェニル基である。
【0052】
本発明の一実施態様において、前記Ar1は、F、メチル基、tert-ブチル基、またはヘキシル基で置換もしくは非置換のフェニル基である。
【0053】
本発明の一実施態様において、前記Ar2~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;または置換もしくは非置換のフルオレン基であるか、Ar2およびAr3は、結合して置換もしくは非置換のカルバゾール環を形成し、前記Ar4およびAr5は、結合して置換もしくは非置換のカルバゾール基を形成する。
【0054】
本発明の一実施態様において、前記Ar2~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、アリールアミン基で置換もしくは非置換のフェニル基;アリールアミン基で置換もしくは非置換のビフェニル基;またはアルキル基で置換もしくは非置換のフルオレン基であるか、Ar2およびAr3は、結合してカルバゾール環を形成し、前記Ar4およびAr5は、結合してカルバゾール基を形成する。
【0055】
本発明の一実施態様において、前記Ar2~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、ジフェニルアミン基で置換もしくは非置換のフェニル基;ジフェニルアミン基で置換もしくは非置換のビフェニル基;またはメチル基で置換もしくは非置換のフルオレン基であるか、Ar2およびAr3は、結合してカルバゾール環を形成し、前記Ar4およびAr5は、結合してカルバゾール基を形成する。
【0056】
本発明の一実施態様において、前記Ar2~Ar5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、ジフェニルアミン基で置換もしくは非置換のフェニル基;ジフェニルアミン基で置換もしくは非置換のビフェニル基;またはメチル基で置換されたフルオレン基であるか、Ar2およびAr3は、結合してカルバゾール環を形成し、前記Ar4およびAr5は、結合してカルバゾール基を形成する。
【0057】
本発明の一実施態様において、前記L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;または置換もしくは非置換のフェニレン基である。
【0058】
本発明の一実施態様において、前記L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;またはフェニレン基である。
【0059】
本発明の一実施態様において、前記L1およびL2は、互いに同一であり、直接結合;またはフェニレン基である。
【0060】
本発明の一実施態様において、前記L1およびL2は、フェニレン基である。
【0061】
本発明の一実施態様において、前記L1およびL2がリンカー(フェニレン)の場合、溶解度を調節することができ、L1およびL2が直接結合する場合より共鳴構造が大きくなるので、HOMO準位を調節することができる。
【0062】
本発明の一実施態様において、前記Y1およびY3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のプロピレン基;置換もしくは非置換のフェニレン基;または置換もしくは非置換のビフェニリレン基であり、
前記Y2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のビフェニリレン基;置換もしくは非置換のメチレン基;置換もしくは非置換のエチレン基;置換もしくは非置換のプロピレン基;置換もしくは非置換のブチレン基;置換もしくは非置換のペンチレン基;置換もしくは非置換のヘキシレン基;または-O-であり、2以上のY2のうち互いに結合するY2は、互いに異なる。
【0063】
本発明の一実施態様において、前記Yは、下記構造式から選択される。
【0064】
【0065】
前記構造式において、RおよびR’は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキレン基である。
【0066】
本発明の一実施態様において、前記RおよびR’は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、アルキレン基である。
【0067】
本発明の一実施態様において、前記RおよびR’は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基である。
【0068】
本発明の一実施態様において、前記RおよびR’は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、メチレン基;エチレン基;プロピレン基;ブチレン基;ペンチレン基;またはヘキシレン基である。
【0069】
本発明の一実施態様において、前記Yは、下記構造式から選択される。
【0070】
【0071】
本発明の一実施態様において、前記R1およびR2は、水素である。
【0072】
本発明の一実施態様において、前記R3~R5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;置換もしくは非置換のエチル基;置換もしくは非置換のプロピル基;または置換もしくは非置換のブチル基である。
【0073】
本発明の一実施態様において、前記R3~R5は、水素である。
【0074】
本発明の一実施態様において、化学式1で表される単位を含む重合体の数平均分子量は、1,000g/mol~300,000g/molであってもよい。具体的には、2,000g/mol~10,0000g/molであってもよい。
【0075】
本明細書において、前記分子量分析は、GPC装置により分析した。カラムはPL mixed Bx2を用い、溶媒としてはTHF(テトラヒドロフラン)(0.45mmで濾過して使用)を用いた。1.0mL/minの流速と1mg/mLの試料濃度で測定した。試料は100mL注入し、カラム温度は40℃に設定した。検出器(Detector)としてはAgilent RI detectorを用い、PS(ポリスチレン)で基準を設定した。ChemStationプログラムによりデータプロセッシング(Data processing)を行った。
【0076】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される単位を含む重合体は、下記構造式の中から選択される。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
前記構造式において、nは、繰り返し単位数であり、10~1000であり、
前記重合体の末端基は、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基である。
【0081】
本発明の一実施態様において、前記重合体の末端基は、アルキル基またはニトリル基で置換もしくは非置換のアルキル基;またはアリール基である。
【0082】
本発明の一実施態様において、前記重合体の末端基は、メチル基またはニトリル基で置換もしくは非置換のメチル基;またはフェニル基である。
【0083】
本発明の一実施態様に係る重合体は、後述する製造方法で製造できる。
【0084】
例えば、前記化学式1で表される単位を含む重合体は、下記反応式1のように製造できる。置換基は、当技術分野で知られている方法により結合可能であり、置換基の種類、位置または個数は、当技術分野で知られている技術により変更可能である。
【0085】
【0086】
前記反応式1において、R1~R5、L1、L2、Y、l、kおよびAr1~Ar5の定義は、化学式1における定義と同じであり、nは、繰り返し単位数であり、10~1000の整数である。
【0087】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、前記重合体および溶媒を含む。
【0088】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、液状であってもよい。前記「液状」は、常温および常圧で液体状態であることを意味する。
【0089】
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;メチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、3-フェノキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリンなどの溶媒が例示されるが、本願発明の一実施態様に係る化合物を溶解または分散させることが可能な溶媒であれば十分であり、これらに限されない。
【0090】
もう一つの実施態様において、前記溶媒は、1種単独で使用するか、または2種以上の溶媒を混合して使用することができる。
【0091】
もう一つの実施態様において、前記溶媒の沸点は、好ましくは40℃~250℃、さらに好ましくは60℃~230℃であるが、これに限定されない。
【0092】
もう一つの実施態様において、前記単独あるいは混合溶媒の粘度は、好ましくは1~10cP、さらに好ましくは3~8cPであるが、これに限定されない。
【0093】
もう一つの実施態様において、前記コーティング組成物中の前記化学式1で表される単位を含む重合体の濃度は、好ましくは0.1~20wt/v%、さらに好ましくは0.5~5wt/v%であるが、これに限定されない。
【0094】
本発明はまた、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子を提供する。
【0095】
本発明の一実施態様において、有機発光素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられる1層以上の有機物層とを含み、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される単位を含む重合体を含むコーティング組成物を用いて形成される。
【0096】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される単位を含む重合体を含むコーティング組成物を用いて形成された有機物層の厚さは、10nm~100nmであり、より好ましくは20nm~50nmである。
【0097】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層である。
【0098】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、pドーピング物質をさらに含む。
【0099】
本発明の一実施態様において、前記pドーピング物質は、F4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含む。
【0100】
本発明の一実施態様において、前記pドーピング物質は、F4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含み、前記ホウ素陰イオンは、ハロゲン基を含む。
【0101】
本発明の一実施態様において、前記pドーピング物質は、F4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含み、前記ホウ素陰イオンは、Fを含む。
【0102】
本発明の一実施態様において、前記pドーピング物質は、下記構造式の中から選択される。
【0103】
【0104】
本発明の一実施態様において、前記有機発光素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層、および正孔阻止層からなる群より選択される1層または2層以上をさらに含む。
【0105】
本発明の一実施態様において、第1電極は、カソードであり、第2電極は、アノードである。
【0106】
本発明の一実施態様において、第1電極は、アノードであり、第2電極は、カソードである。
【0107】
もう一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、アノード、1層以上の有機物層、およびカソードが順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。
【0108】
もう一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、カソード、1層以上の有機物層、およびアノードが順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。
【0109】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機層を含むことができる。
【0110】
例えば、本発明の一実施態様に係る有機発光素子の構造は、
図1に例示されている。
【0111】
図1には、基板101上に、アノード201、正孔注入層301、正孔輸送層401、発光層501、電子注入および輸送層601、並びにカソード701が順次に積層された有機発光素子の構造が例示されている。
【0112】
前記
図1にて、正孔注入層301、正孔輸送層401、発光層501は、化学式1で表される単位を含む重合体を含むコーティング組成物を用いて形成される。
【0113】
前記
図1は、有機発光素子を例示したものであり、これに限定されない。
【0114】
前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成される。
【0115】
本発明の有機発光素子は、有機物層のうちの1層以上が前記化合物を含むコーティング組成物を用いて形成されることを除けば、当技術分野で知られている材料および方法で製造できる。
【0116】
例えば、本発明の有機発光素子は、基板上にアノード、有機物層、およびカソードを順次積層させることにより製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)法を利用して、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させてアノードを形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上にカソードとして使用可能な物質を蒸着させることにより製造できる。
【0117】
このような方法以外にも、基板上に、カソード物質から有機物層、アノード物質を順に蒸着させて有機発光素子を作ることができる。
【0118】
本発明はまた、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子の製造方法を提供する。
【0119】
具体的には、本発明の一実施態様において、基板を用意するステップと、前記基板上にカソードまたはアノードを形成するステップと、前記カソードまたはアノード上に1層以上の有機物層を形成するステップと、前記有機物層上にアノードまたはカソードを形成するステップとを含み、前記有機物層のうちの1層以上は、前記コーティング組成物を用いて形成される。
【0120】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、スピンコーティングを利用して形成される。
【0121】
他の実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、印刷法によって形成される。
【0122】
本発明の態様において、前記印刷法は、例えば、インクジェットプリンティング、ノズルプリンティング、オフセットプリンティング、転写プリンティング、またはスクリーンプリンティングなどがあるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の一実施態様に係るコーティング組成物は、構造的な特性から溶液工程が好適で印刷法によって形成可能なため、素子の製造時に時間および費用的に経済的な効果がある。
【0124】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を形成するステップは、前記カソードまたはアノード上に前記コーティング組成物をコーティングするステップと、前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理するステップとを含む。
【0125】
本発明の一実施態様において、前記熱処理するステップは、溶媒を蒸発させるステップである。
【0126】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を熱処理する時間は、好ましくは1時間以内、さらに好ましくは30分以内である。
【0127】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を熱処理する雰囲気は、好ましくは、アルゴン、窒素などの不活性気体である。
【0128】
本発明の一実施態様において、前記化合物を含むコーティング組成物は、重合体結合剤に混合して分散させたコーティング組成物を用いることができる。
【0129】
本発明の一実施態様において、重合体結合剤としては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。重合体結合剤としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどが例示される。
【0130】
また、本発明の一実施態様に係る重合体は、カルバゾールおよびアミン基を含むことにより、有機物層に化合物単独で含んでもよく、他の重合体と混合したコーティング組成物を用いて混合物を含むことができる。
【0131】
前記アノード物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明で使用可能なアノード物質の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0132】
前記カソード物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。カソード物質の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0133】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、アノードからの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)がアノード物質の仕事関数と周辺の有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0134】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質としては、アノードや正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0135】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq3);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾール、およびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0136】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0137】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換もしくは非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換もしくは非置換のアリールアミンに少なくとも1つのアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換もしくは非置換である。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0138】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層で、電子輸送物質としては、カソードから電子注入をきちんと受けて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望するカソード物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、各場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0139】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層で、電子を輸送する能力を有し、カソードからの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0140】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0141】
前記正孔阻止層は、正孔のカソード到達を阻止する層で、一般的に、正孔注入層と同一の条件で形成される。具体的には、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、BCP、アルミニウム錯体(aluminum complex)などがあるが、これらに限定されない。
【0142】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【0143】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスタに含まれる。
【実施例】
【0144】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0145】
<製造例>
製造例1.化合物Aの合成
(1)中間体3の合成
【化11】
【0146】
中間体2の合成:フラスコに2,7-ジブロモ-9-フルオレノン(1)(20.2g、60mmol)を入れて、無水テトラヒドロフラン(200mL)に溶かした後、フラスコを氷浴に入れた。フェニルマグネシウムブロミド(エーテル中3M、30ml、90mmol)をゆっくり入れて、0℃で1時間撹拌した。NH4Cl(aq)で反応を止め、ジエチルエーテルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を除去し、残留物をカラム精製して、中間体2を20g(80%収率)得た。
【0147】
中間体3の合成:中間体2(16.6g、40mmol)、フェノール(18.8g、200mmol)とメタンスルホン酸(57mL)を丸底フラスコに入れた後、50℃で3時間撹拌した。反応の終わった混合物に蒸留水(57mL)を入れた後、30分間撹拌した。ろ過後、濾過した固体を蒸留水で十分に洗った後、50℃の真空オーブンで1日間乾燥させて、中間体3を17g(85%収率)得た。
【0148】
【0149】
中間体3(2.46g、5mmol)、4-(ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ)フェニルボロン酸(6g、12.5mmol)、Pd(PPh3)4(289mg、0.25mmol)とK2CO3(3.46g、25mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素置換した。テトラヒドロフラン(THF)(20mL)とH2O(5mL)を入れた後、90℃で4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体4を5.9g(96%収率)得た。
【0150】
【0151】
中間体4(2.4g、2mmol)、炭酸セシウム(652mg、2mmol)と4-ビニルベンジルクロライド(0.34ml、2.4mmol)を丸底フラスコに入れて、無水ジメチルホルムアミド(DMF)(10mL)を入れた後、60℃で4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体5を1.7g(65%収率)得た。
【0152】
中間体5のNMR測定値:1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.82(d,2H),7.66(d,2H),7.64-7.58(m,9H),7.54-7.47(m,8H),7.46-7.38(m,8H),7.37-7.30(m,8H),7.18-7.00(m,18H),7.11(d,2H),6.85(d,2H),6.70(dd,1H),5.73(d,1H),5.22(d,1H),4.99(s,2H),1.45(s,12H)
【0153】
【0154】
中間体5(1.32g、1.0mmol)とアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)(8.2mg、0.05mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素雰囲気下、無水トルエン(10mL)に溶かした。60℃で2時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテート(5mL)を入れる。沈殿物をろ過し、エチルアセテートで洗った。得られた固体を乾燥させて、化合物Aを900mg(68%収率)得た。(Mw=48061、Mn=24761)
前記化合物AのGPCデータを
図4に示した。
【0155】
製造例2.化合物Bの合成
(1)中間体6の合成
【化15】
【0156】
中間体3(4.9g、10mmol)、4-ニトロベンズアルデヒド(3g、20mmol)、Cu(OAc)2(91mg、0.5mmol)とCs2CO3(6.5g、20mmol)を丸底フラスコに入れた後、DMF(50mL)を入れた。100℃で4時間撹拌した。常温まで冷やした後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体6を5.8g(98%収率)得た。
【0157】
【0158】
中間体6(2.4g、4mmol)を丸底フラスコに入れた後、MeOH(10mL)とTHF(10mL)に溶かした。反応混合物にソジウムボロハイドライド(300mg、8mmol)を少しずつ入れた後、常温で30分撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して、中間体7を1.9g(78%収率)得た。
【0159】
【0160】
中間体7(1.5g、2.5mmol)、4-(ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ)フェニルボロン酸(3g、6.25mmol)、Pd(PPh3)4(144mg、0.125mmol)とK2CO3(1.73g、12.5mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素置換した。THF(9.4mL)とH2O(3.1mL)を入れた後、90℃で4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体8を2.7g(82%収率)得た。
【0161】
【0162】
ソジウムハイドライド(60wt%、112mg、2.8mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素雰囲気に置換した。無水DMF(3.5mL)を入れた後、0℃に冷却した。中間体8(1.84g、1.4mmol)を無水DMF(3.5mL)に溶かした溶液を反応混合物にゆっくり入れた後、0℃で1時間撹拌した。4-ビニルベンジルクロライド(0.39ml、2.8mmol)を入れた後、60℃に昇温して4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体9を1.2g(60%収率)得た。
【0163】
中間体9のNMR測定値:1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.87(d,2H),7.78-7.64(m,7H),7.64-7.58(m,5H),7.55-7.49(m,8H),7.45-7.40(m,6H),7.37(d,2H),7.34-7.24(m,19H),7.23-7.18(m,8H),7.09(d,2H),6.97(d,2H),6.88(d,2H),6.69(dd,1H),5.73(d,1H),5.21(d,1H),4.50(s,2H),4.48(s,2H),1.65(s,12H)
【0164】
【0165】
中間体9(1.43g、1.0mmol)とアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)(8.2mg、0.05mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素雰囲気下、無水トルエン(10mL)に溶かした。60℃で2時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテート(5mL)を入れた。沈殿物をろ過し、エチルアセテートで洗った。得られた固体を乾燥させて、化合物Bを1g(73%収率)得た。(Mw=98552、Mn=54408)
前記化合物BのGPCデータを
図5に示した。
【0166】
製造例3.化合物Cの合成
(1)中間体10の合成
【化20】
【0167】
中間体3(2.46g、5mmol)、ジフェニルアミン(2.12g、12.5mmol)、Pd(PtBu3)2(128mg、0.25mmol)とNaOtBu(1.92g、20mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素に置換した。トルエン(25mL)を入れた後、90℃で4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体10を2.5g(75%収率)得た。
【0168】
【0169】
中間体10(1.34g、2mmol)、炭酸セシウム(652mg、2mmol)と4-ビニルベンジルクロライド(0.34ml、2.4mmol)を丸底フラスコに入れて、無水DMF(10mL)を入れた後、60℃で4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、中間体11を1.13g(72%収率)得た。
【0170】
中間体11のNMR測定値:1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.82(d,2H),7.66(d,2H),7.33-7.24(m,17H),7.11(d,8H),7.08(d,4H),7.02(t,4H),6.85(d,2H),6.70(dd,1H),5.73(d,1H),5.22(d,1H),4.97(s,2H)
【0171】
【0172】
中間体11(785mg、1.0mmol)とアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)(8.2mg、0.05mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素雰囲気下、無水トルエン(10mL)に溶かした。60℃で2時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテート(5mL)を入れた。沈殿物をろ過し、エチルアセテートで洗った。得られた固体を乾燥させて、化合物Cを636mg(81%収率)得た。(Mw=54358、Mn=31061)
【0173】
【0174】
ソジウムハイドライド(60wt%、80mg、2mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素雰囲気に置換した。無水DMF(2.5mL)を入れた後、0℃に冷却した。中間体8(1.31g、1mmol)を無水DMF(2.5mL)に溶かした溶液を反応混合物にゆっくり入れた後、0℃で1時間撹拌した。ベンジルクロライド(0.23ml、2mmol)を入れた後、60℃に昇温して4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を揮発し、残留物をカラム精製して、化合物Dを970mg(69%収率)得た。
【0175】
化合物DのNMR測定値:1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.87(d,2H),7.78-7.64(m,7H),7.64-7.58(m,5H),7.56-7.49(m,8H),7.45-7.40(m,6H),7.37(d,2H),7.34-7.24(m,19H),7.23-7.16(m,9H),7.10(d,2H),6.97(d,2H),6.87(d,2H),4.50(s,2H),4.48(s,2H),1.65(s,12H)
【0176】
製造例5.比較化合物Eの合成
(1)中間体13の合成
【化24】
【0177】
中間体12の合成:フラスコに2,7-ジブロモ-9-フルオレノン(1)(10.1g、30mmol)を入れて、無水デトラヒドロフラン(100mL)に溶かした後、フラスコを氷浴に入れた。メチルマグネシウムブロミド(エーテル中3M、15ml、45mmol)をゆっくり入れて、0℃で1時間撹拌させた。NH4Cl(aq)で反応を止め、ジエチルエーテルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を除去し、残留物をカラム精製して、中間体12を9.2g(87%収率)得た。
【0178】
中間体13の合成:中間体12(7.1g、20mmol)をDCM(67mL)に溶かした後、トリエチルシラン(4.8ml、30mmol)とトリフルオロ酢酸(2.45mmol、32mmol)を入れて、室温で一晩撹拌した。反応終了後、カラム精製して、中間体13を6.4g(収率95%)得た。
【0179】
【0180】
中間体13(3.4g、10mmol)と4-ビニルベンジルクロライド(1.7ml、12mmol)をトルエン33mLに溶かして、2M KOH30mLとTBAB(aq50wt%)(0.31ml、1mmol)を入れた後、還流状態で12時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてろ過した。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を除去し、残留物をカラム精製して、中間体14を3.5g(収率78%)得た。
【0181】
【0182】
中間体14(1.8g、4mmol)、N-フェニル-1-ナフチルアミン(2.2g、10mmol)、Pd(PtBu3)2(102mg、0.2mmol)、そしてNaOtBu(1.54g、16mmol)を丸底フラスコに入れて、窒素雰囲気に置換した。無水トルエン20mLを入れて、90℃で4時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテートと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させてフィルタした。濾過液を真空回転濃縮機で乾燥して有機溶媒を除去し、残留物をカラム精製して、中間体15を2.1g(収率72%)得た。
【0183】
中間体15のNMR測定値:1H NMR(500MHz,CDCl3)δ8.19(d,2H),8.08(d,2H),7.85(d,2H),7.81(d,2H),7.66-7.50(m,10H),7.33(s,2H)7.16-7.24(m,6H),7.08(d,4H),7.00(t,2H),6.75(d,2H),3.20(s,2H),1.75(s,3H)
【0184】
【0185】
中間体15(731mg、1.0mmol)とアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)(8.2mg、0.05mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素雰囲気下、無水トルエン(10mL)に溶かした。60℃で2時間撹拌した。反応終了後、エチルアセテート(5mL)を入れた。沈殿物をろ過し、エチルアセテートで洗った。得られた固体を乾燥させて、化合物Eを453mg(62%収率)得た。(Mw=30520、Mn=14873)
【0186】
<実験例>
実験例1.薄膜保持率の測定
化合物Bおよび比較化合物Dの2wt%シクロヘキサノン(cyclohexaone)溶液でガラスにスピンコーティングして薄膜を形成した。窒素雰囲気中、220℃で30分間熱処理し、各薄膜のUV吸収を測定した。再びその薄膜をトルエン(toluene)に10分間浸漬した後、乾燥後にUVを測定した。トルエン(Toluene)に浸漬する前後のUV吸収の最大ピーク(peak)の大きさの比較で薄膜保持率を測定した。
単分子の比較化合物Dの場合、薄膜保持されなかったが(
図2、薄膜保持率0%)、高分子である化合物Bの場合、トルエン溶媒に優れた耐性を有していた(
図3、薄膜保持率100%)。一部の溶媒に対する溶解度は高いものの、次の工程の溶媒に耐性を有するようになって、化合物が洗い流されたり、膜特性が変化しないので、再現性のある有機発光素子を作製することができることを確認した。
【0187】
図2は、比較化合物Dの膜保持率の実験結果を示す図である。
【0188】
図3は、化合物Bの膜保持率の実験結果を示す図である。
【0189】
<実施例>
[ITO基板の用意]
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を用い、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次濾過した蒸留水を用いた。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行させた。
【0190】
蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピル、アセトンの溶剤で超音波洗浄をし、乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスに基板を輸送した。
【0191】
[素子例1]
ITO透明電極上に、前記化合物A:下記のpドーパント(下記化学式L)(8:2の重量比)の2wt%シクロヘキサノンインクをITO表面上にスピンコーティング(4000rpm)し、200℃で30分間熱処理して40nmの厚さに正孔注入層を形成した。この後、真空蒸着機に搬送した後、前記正孔注入層上に前記化合物Fを真空蒸着して20nmの厚さの正孔輸送層を形成した。
【0192】
次いで、前記正孔輸送層上に、化合物Gと化合物Hを8%の濃度で20nmの厚さに真空蒸着して発光層を形成した。前記発光層上に化合物Iを35nmの厚さに真空蒸着して電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に、順次、1nmの厚さにLiFと100nmの厚さにアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0193】
前記の過程で、有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、カソードのリチウムフルオライドは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7~5×10-8torrを維持した。
【0194】
【0195】
【0196】
pドーピング物質は、下記化学式Jの有機化合物形態のpドーパントであるか、化学式Kまたは化学式Lのイオン性pドーパントを用いているが、これらに限定されない。
【0197】
【0198】
[素子例2]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、化合物A:pドーパント(8:2)2wt%シクロヘキサノンインクの代わりに前記化合物B:pドーパント(8:2)の2wt%シクロヘキサノンインクを用いたことを除けば、素子例1の工程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0199】
[素子例3]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、化合物A:pドーパント(8:2)2wt%シクロヘキサノンインクの代わりに前記化合物C:pドーパント(8:2)の2wt%シクロヘキサノンインクを用いたことを除けば、素子例1の工程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0200】
[比較素子例1]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、化合物A:pドーパント(8:2)2wt%シクロヘキサノンインクの代わりに比較化合物E:pドーパント(8:2)の2wt%シクロヘキサノンインクを用いたことを除けば、素子例1の工程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0201】
前記素子例1~4、および比較素子例1で製造された有機発光素子を10mA/cm2の電流密度で駆動電圧、外部量子効率(external quantum efficiency)、輝度および寿命を測定した結果を下記表1に示した。前記外部量子効率は(放出された光子の数)/(注入された電荷キャリアの数)で求められる。
【0202】
【0203】
本発明の一実施態様に係る化学式1からなる重合体は、一部の有機溶媒に対する溶解度に優れ、コーティング組成物の製造が容易であるが、次の工程の溶媒に対しては耐性を有するので、次の工程が溶液工程でも十分に再現性あるように素子を作製することができる。また、表1の結果により、前記コーティング組成物を用いて均一なコーティング層を形成することができ、膜の安定性にも優れていて、有機発光素子においてより優れた性能を示すことを確認した。
【符号の説明】
【0204】
101:基板
201:アノード
301:正孔注入層
401:正孔輸送層
501:発光層
601:電子注入および輸送層
701:カソード