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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ブロック共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20220627BHJP
   C08F 297/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08L53/00
C08F297/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020548802
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2019003749
(87)【国際公開番号】W WO2019190287
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0037549
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0117841
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・シン
(72)【発明者】
【氏名】キ・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ピル・サ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ブン・ヨル・イ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/182174(WO,A1)
【文献】Kim Chung Sol, Park Seung Soo, Kim Sung Dong, Kwon Su Jin, Baek Jun Won, Lee Bun Yeoul,Polystyrene Chain Growth from Di-End-Functional Polyolefins for Polystyrene-Polyolefin-Polystyrene Block Copolymers,Polymers,スイス,2017年,Vol.9 No.10,Page.481
【文献】Kim Dong Hyun, Park Seung Soo, Park Su Hyun, Jeon Jong Yeob, Kim Hyo Bo, Lee Bun Yeoul,Preparation of polystyrene-polyolefin multiblock copolymers by sequential coordination and anionic polymerization,RSC Advances,英国,2017年,Vol.7 No.10,Page.5948-5956
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00-297/08
C08L 53/00-53/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系ブロックとポリスチレン系ブロックを含むジブロック共重合体及びトリブロック共重合体を含み、前記ジブロック共重合体の含量が19重量%以下であり、
前記ポリオレフィン系ブロックは、下記化学式1の繰り返し単位を含み、前記ポリスチレン系ブロックは、下記化学式2及び化学式3からなる群から選択された1種以上を含む、ブロック共重合体組成物:
【化1】
【化2】
【化3】
は、水素;炭素数から20のアルキル;シリルで置換された炭素数から20のアルキル;炭素数から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数から20のアリールアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
nは、1から10,000の整数であり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数である。
【請求項2】
前記R及びRは、それぞれ独立してフェニル;またはハロゲン、炭素数1から8のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換されたフェニルである、請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記Rは、水素;または炭素数3から12のアルキルである、請求項1又は2に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
前記Rは水素または炭素数4から12のアルキルであり、R及びRはフェニルである、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系ブロックは、下記化学式4で表される繰り返し単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:
【化4】
前記化学式4において、
’及びR”は、それぞれ独立して水素、炭素数から20のアルキル;シリルで置換された炭素数から20のアルキル;炭素数から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数から20のアリールアルキルで;前記R’及びR”は互いに異なるものであり、
0<p<1であり、
n’は、10から10,000の整数である。
【請求項6】
前記ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体は、それぞれ独立して前記ポリオレフィン系ブロック及び前記ポリスチレン系ブロックが結合して形成された下記化学式5で表される複合ブロックを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:
【化5】
前記化学式5において、
は、水素;炭素数から20のアルキル;シリルで置換された炭素数から20のアルキル;炭素数から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数から20のアリールアルキルであり、
は、炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
lは、10から1,000の整数であり、
nは、10から10,000の整数である。
【請求項7】
前記ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体は、それぞれ独立して前記ポリオレフィン系ブロック及び前記ポリスチレン系ブロックが結合して形成された下記化学式6で表される複合ブロックを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:
【化6】
前記化学式6において、
’及びR”は、それぞれ独立して水素、炭素数から20のアルキル;シリルで置換された炭素数から20のアルキル;炭素数から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数から20のアリールアルキルであり;前記R’及びR”は互いに異なるものであり、
は、炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
0<p<1であり、
n’は、10から10,000の整数であり、
lは、10から1,000の整数である。
【請求項8】
前記トリブロック共重合体は、下記化学式7で表される構造を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:
【化7】
前記化学式7において、
は、水素;炭素数から20のアルキル;シリルで置換された炭素数から20のアルキル;炭素数から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数から20のアリールアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数であり、
nは、10から10,000の整数であり、
aは、1から50の整数である。
【請求項9】
前記トリブロック共重合体は、下記化学式8で表される構造を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:
【化8】
前記化学式8において、
’及びR”は、それぞれ独立して水素;炭素数から20のアルキル;シリルで置換された炭素数から20のアルキル;炭素数から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数から20のアリールアルキルであり、前記R’及びR”は互いに異なるものであり、
0<p<1であり、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数であり、
は、10から10,000の整数であり、
aは、1から50の整数である。
【請求項10】
前記ブロック共重合体組成物は、前記ポリオレフィン系ブロックを10重量%から99重量%含み、前記ポリスチレン系ブロックを1重量%から90重量%含む、請求項1~のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項11】
前記ブロック共重合体組成物は、58,000g/molから500,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1~1のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項12】
前記ブロック共重合体組成物は、分子量分布(MWD、molecular weight density)値が1.1超過3以下である、請求項1~1のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項13】
前記ブロック共重合体組成物は、ASTM D-412によって作製されたダンベル形状の試片の、ASTM D638に準じて測定された引張強度が30MPa以下である、請求項1~1のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項14】
前記ブロック共重合体組成物は、300%モジュラス(modulus)値が2MPaから15MPaである、請求項1~1のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項15】
前記ブロック共重合体組成物は、破断伸び率(elongation at break)が800%から2,000%である、請求項1~1のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年3月30日付韓国特許出願第10-2018-0037549号及び2018年10月2日付韓国特許出願第10-2018-0117841号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ブロック共重合体組成物に関し、より詳しくは、オレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むジブロック共重合体とトリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体、例えば、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(styrene-ethylene/butylene-styrene(SEBS))またはスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(styrene-ethylene/propylene-styrene(SEPS))は、現在、全世界的に数十万トン規模の市場が形成されている。また、これらはスチレン-ブタジエン-スチレン(Styrene-butadiene-styrene(SBS))またはスチレン-イソプレン-スチレン(styrene-isoprene-styrene(SIS))に比べて耐熱性及び耐光性に優れるという利点があり、グリップ及びハンドルの柔らかくて強いタッチ感のための素材、おむつの弾力性素材、医療及び通信材料に用いられるオイル-ゲル、エンジニアリングプラスチックの衝撃補強剤、透明ポリプロピレンの可塑剤(flexibilizer)または強靭化剤(toughener)などに用いられている。従来のSEBSは、スチレンとブタジエンを陰イオン重合して得られたSBSを水素化反応させる二段階の反応で製造される。従来のSEPSも同様に、スチレンとイソプレンを陰イオン重合して得られたSISを水素化反応させる二段階の反応で製造される。このように高分子主鎖に含まれている二重結合を水素化反応させて全て飽和させる工程は工程費用が高いため、SEBS及びSEPSの単価が水素化反応前のSBS及びSISに比べてかなり高くなる。このような点は、市場の拡張に限界として作用し得る。また、水素化反応を介して高分子鎖中の二重結合を全て飽和させることは事実上不可能なので、商業化されたSEBS及びSEPSは残留二重結合を若干含むことになり、これらの存在が度々問題になったりする(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry、2002、40、1253;Polymer Degradation and Stability 2010、95、975)。また、前記の二段階で製造される従来のブロック共重合体は、ポリオレフィンブロックがブタジエンまたはイソプレンの陰イオン重合後に水素化反応を介して形成される理由で、その構造が非常に限定的である。
【0004】
このような背景の下で、オレフィン単量体とスチレン単量体から直接ワン・ポット反応でポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体を製造することは、商業的な波及効果が非常に大きい挑戦的な研究主題である。これと関連し、従来は、プロピレン重合時に分子量調節剤としてパラ-メチルスチレンを用いることにより、末端基にパラ-メチルスチレン基を有するポリプロピレンを合成した後、ブチルリチウムで末端基のメチル基の脱水素化反応を誘導してから、スチレン陰イオン重合を具現してポリプロピレン-ポリスチレンブロック共重合体を製造した例が報告されている(J.Am.Chem.Soc.2001、123、4871;Macromolecules 2002、35、1622)。また、他の例として、ペンオキシイミン触媒のリビング重合反応性を活用してエチレン/プロピレン共重合を行い、引き続きスチレン単量体を注入してブロック共重合体を製造しようとする試みが報告されている(Marcomole.Rapid.Commun.、2006、27、1009)。しかし、前記の従来報告された方法等は、多段階工程が求められるなどの問題点があるため商業工程に適用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry、2002、40、1253;Polymer Degradation and Stability 2010、95、975
【文献】J.Am.Chem.Soc.2001、123、4871;Macromolecules 2002、35、1622
【文献】Marcomole.Rapid.Commun.、2006、27、1009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、オレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むジブロック共重合体とトリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、オレフィン系重合体ブロックとスチレン系重合体ブロックを含むジブロック共重合体及びトリブロック共重合体を含み、前記ジブロック共重合体の含量が19重量%以下であり、前記オレフィン系重合体ブロックは、下記化学式1の繰り返し単位を含み、前記スチレン系重合体ブロックは、下記化学式2及び化学式3からなる群から選択された1種以上を含むブロック共重合体組成物を提供する。
【化1】
【化2】
【化3】
【0008】
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
nは、1から10,000の整数であり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るブロック共重合体組成物は、オレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むジブロック共重合体とトリブロック共重合体とを含み、これらの共重合体が含む各ブロックの構造及び特性が調節され、向上した物性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0012】
本明細書で用いられる用語「組成物」は、当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料等の混合物を含む。
【0013】
本明細書で用いられる用語「残留不飽和結合」は、ブロック共重合体組成物が含むブロック共重合体の高分子鎖に存在する二重結合、三重結合などの不飽和結合を意味するものであって、前記高分子鎖は、ブロック共重合体の主鎖及び分枝鎖を含み、前記ブロック共重合体を製造するために用いられた単量体、多量体、開始剤、触媒などの原料に含まれるか、これから由来した不飽和結合だけでなく、重合過程で生成された不飽和結合を含む。
【0014】
本明細書で用いられる用語「ハロゲン」は、他の言及がなければ、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0015】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、他の言及がなければ、直鎖状、環状または分枝状の炭化水素基を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、他の言及がなければ、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、クリセニル、ピレニルなどを含む芳香族基を示す。
【0017】
本明細書において、シリルは、炭素数1から20のアルキルで置換されるか、非置換されたシリルであってよく、例えばシリル、トリメチルシリルまたはトリエチルシリルであってよい。
【0018】
本発明のブロック共重合体組成物は、オレフィン系重合体ブロックとスチレン系重合体ブロックとを含むジブロック共重合体及びトリブロック共重合体を含み、前記ジブロック共重合体の含量が19重量%以下であるものであって、前記オレフィン系重合体ブロックは、下記化学式1の繰り返し単位を含み、前記スチレン系重合体ブロックは、下記化学式2及び化学式3からなる群から選択された1種以上を含むものである。
【化4】
【化5】
【化6】
【0019】
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
nは、1から10,000の整数であり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数である。
【0020】
本発明の明細書で示した化学式等での「*」は、繰り返し単位の末端部位であって連結部位を示す。
【0021】
本発明の一例において、前記Rは、水素;または炭素数3から12のアルキルであってよい。
【0022】
本発明の一例において、前記R及びRは、それぞれ独立してフェニル;またはハロゲン、炭素数1から8のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換されたフェニルであってよい。
【0023】
また、Rは、水素または炭素数4から12のアルキルであってよく、前記R及びRはフェニルであってよい。
【0024】
前記nは、10から10,000の整数であり、具体的に500から7,000の整数であってよく、また前記mは10から1,000の整数であり、具体的に50から700の整数であってよい。前記nとmが前記範囲を同時に満たす場合、ブロック共重合体が高い引張強度と高い弾性率を全て示し得る。
【0025】
前記lは、10から1,000の整数であり、具体的に50から700の整数であってよく、前記lが前記範囲である場合、ブロック共重合体の粘度が適切な水準を有し得る。
【0026】
本発明の一例において、前記オレフィン系重合体ブロックが前記化学式1で表される繰り返し単位を2種以上含む場合、前記オレフィン系重合体ブロックは、下記化学式4で表される繰り返し単位を含むことができる。
【化7】
【0027】
前記化学式4において、
’及びR”は、それぞれ独立して水素、炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり;前記R’及びR”は互いに異なるものであり、
0<p<1であり、
n’は、10から10,000の整数であってよい。
【0028】
また、本発明の一例において、前記R’及びR”は、それぞれ独立して水素または炭素数3から20のアルキルであってよく、具体的にそれぞれ独立して水素または炭素数3から12のアルキルであってよく、さらに具体的にそれぞれ独立して水素または炭素数4から12のアルキルであってよい。
【0029】
また、具体的にn’は、10から10,000の整数であってよく、さらに具体的に500から7,000の整数であってよい。
【0030】
本発明の一例において、前記化学式4でR’及びR”のいずれか一つは水素であり、残りの一つは前述した置換基のうち水素以外の置換基であってよい。
【0031】
すなわち、本発明の一例において、前記オレフィン系重合体ブロックが前記化学式1で表される繰り返し単位を2種以上含む場合、Rが水素である構造とRが水素以外の炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルである構造がランダム(random)に連結されているものであってよく、具体的にRが水素である構造とRが水素以外の炭素数3から20のアルキルである構造がランダムに連結されているものであってよい。
【0032】
また、さらに具体的に前記オレフィン系重合体ブロックは、前記化学式1でRが水素である構造とRが炭素数3から12のアルキルである構造がランダムに連結されているものであってよく、よりさらに具体的に前記オレフィン系重合体ブロックは、前記化学式1でRが水素である構造とRが炭素数4から12のアルキルである構造がランダムに連結されているものであってよい。
【0033】
前記オレフィン系重合体ブロックが前記化学式1で表される繰り返し単位を2種以上含む場合、前記オレフィン系重合体ブロックは、前記化学式1でRが水素である構造とRが水素以外の置換基を有する構造を30:90から70:10の重量比で含んでよく、具体的に40:60から60:40の重量比で含んでよく、さらに具体的に45:75から55:25の重量比で含んでよい。
【0034】
前記オレフィン系重合体ブロックが、前記化学式1でRが水素である構造とRが水素以外の置換基を有する構造を前記範囲で含む場合、製造されるブロック共重合体が構造内に適切な程度で分枝(ブランチ:branch)を含むことで、高い300%モジュラス(modulus)値と破断伸び率(elongation at break)値を有するので、優れた弾性特性を発揮することができ、また高い分子量とともに広い分子量分布を示すので、優れた加工性を有することができる。
【0035】
本発明の一例において、前記ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体は、それぞれ独立して前記ポリオレフィン系ブロック及び前記ポリスチレン系ブロックが結合して形成された下記化学式5で表される複合ブロックを含むことができる。
【化8】
【0036】
前記化学式5において、
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
は、炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
lは、10から1,000の整数であり、
nは、10から10,000の整数である。
【0037】
また、前記化学式5において、R、R、l及びnは、それぞれ前記化学式1または化学式2で定義した通りである。
【0038】
また、本発明の一例において、前記オレフィン系重合体ブロックが前記化学式4で表される繰り返し単位を含むとき、前記ポリスチレン系ブロックが結合して形成された複合ブロックは、下記化学式6で表され得る。
【化9】
【0039】
前記化学式6において、前記R’、R”、p、l及びn’は、それぞれ前記化学式2または4で定義した通りである。
【0040】
本明細書では、前記化学式1で表される繰り返し単位を含む前記オレフィン系重合体ブロックを第1ブロックとも示し、前記化学式2及び3で表される繰り返し単位を含む前記スチレン系重合体ブロックをそれぞれ第2ブロック及び第3ブロックとも示す。
【0041】
本発明の一例において、前記第1ブロック及び第2ブロックが2以上含まれる場合、前記第1ブロック及び第2ブロックは、前記化学式5または6で表される構造の複合ブロックを繰り返し単位として含まれてよく、例えば本発明の一例によるブロック共重合体組成物が2つの第1ブロックと2つの第2ブロック及び1つの第3ブロックを含むブロック共重合体を含む場合を挙げて説明する場合、前記ブロック共重合体が2つの複合ブロックと1つの第3ブロックを含むということを意味する。
【0042】
また、本発明の一例において、前記ブロック共重合体が前記化学式5または6の複合ブロックを2以上含む場合、一つの複合ブロックを除いた残りの複合ブロックは、他の複合ブロックと連結され、第3ブロックとは連結されなくてもよい。例えば、前記ブロック共重合体が前記複合ブロックを2以上含む場合、前記第3ブロックに一つの複合ブロックが連結され、前記複合ブロックが複合ブロック間の結合を介して延長され、「第3ブロック-複合ブロック-複合ブロック-…」のような構造を有してよい。
【0043】
また、2つの複合ブロックが連結される際には、前記複合ブロックに含まれる第1ブロック及び第2ブロックが連結されてよく、例えば本発明の一例によるブロック共重合体が一つの第3ブロックと2つの複合ブロックを含む場合、その構造は「第3ブロック-第1ブロック-第2ブロック-第1ブロック-第2ブロック-」のような構造を有してよい。
【0044】
このような、本発明の一例によるブロック共重合体組成物は、下記化学式7で表される構造を含むブロック共重合体、具体的にトリブロック共重合体を含んでよい。
【化10】
【0045】
前記化学式7において、
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルで、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数であり、
nは、10から10,000の整数である。
【0046】
また、前記化学式5において、aは、1から50の整数であってよく、具体的に1から20の整数、さらに具体的に1から10の整数であってよい。
【0047】
また、前記Rは、水素;炭素数1から13のアルキル;シリルで置換された炭素数1から13のアルキル;炭素数7から13のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から13のアリールアルキルであってよく、
前記RおよびRは、独立して、ハロゲン、炭素数1から8のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換されるか非置換のフェニルであってよい。
【0048】
また、前記化学式7でRからR、l、m、及びnは、それぞれ化学式1から3で定義した通りである。
【0049】
また、本発明の一例によるブロック共重合体組成物は、下記化学式8で表される構造を含むブロック共重合体、具体的にトリブロック共重合体を含んでよい。
【化11】
【0050】
前記化学式8において、
’及びR”は、それぞれ独立して水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、前記R’及びR”は互いに異なるものであり、
0<p<1であり、
及びRは、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数であり、
nは、10から10,000の整数であり、
aは、1から50の整数である。
【0051】
前記化学式8において、前記R’、R”、p、l、n’、aは、それぞれ前記化学式2、4、または7で定義した通りである。
【0052】
本発明のブロック共重合体の組成物は、例えば(1)有機亜鉛化合物を遷移金属触媒下にオレフィン系単量体1種以上と反応させてオレフィン系重合体ブロックを形成して中間体を製造する段階;及び(2)前記段階(1)で得た中間体をアルキルリチウム化合物の存在下にスチレン系単量体と反応させてスチレン系重合体ブロックを形成する段階を含む製造方法により製造され得る。
【0053】
段階(2)で製造された化合物は、前記化学式1から3の繰り返し単位構造を含むブロック共重合体を含む有機亜鉛化合物であってよく、追加的に段階(3)前記段階(2)で製造された生成物を水、酸素、または有機酸と反応させてブロック共重合体に転換させる段階により、ブロック共重合体に転換され得る。
【0054】
(1)有機亜鉛化合物を遷移金属触媒下にオレフィン系単量体1種以上と反応させてオレフィン系重合体ブロックを形成して中間体を製造する段階
前記段階(1)で前記オレフィン系単量体は、前記有機亜鉛化合物のZnとAとの間に挿入されて重合が行われ、前記化学式1で表される繰り返し単位を含むオレフィン系重合体ブロックを形成することができる。
【0055】
本発明の一例において、前記有機亜鉛化合物のZnとAとの間に挿入されて重合が行われ、前記オレフィン系重合体ブロック(第1ブロック)を形成するオレフィン系単量体は、エチレンと1種以上のアルファ-オレフィン系単量体を共に含んでよく、具体的にエチレンと、エチレン以外の1種以上のアルファ-オレフィン系単量体を含んでよい。
【0056】
本発明の一例において、前記アルファ-オレフィン系単量体は、具体的に炭素数3から20の脂肪族オレフィン、さらに具体的に炭素数4から12の脂肪族オレフィンであってよく、より具体的に炭素数5から12の脂肪族オレフィンであってよい。前記脂肪族オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン(1-decene)、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン(1-eicosene)、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジエチル-1-ヘキセンまたは3,4-ジメチル-1-ヘキセンなどを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってよい。
【0057】
本発明の一例において、前記有機亜鉛化合物は下記化学式9で表される化合物であってよい。
【化12】
【0058】
前記化学式9において、
Aは、炭素数1から20のアルキレン;炭素数6から20のアリーレン;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリーレンであり、
Bは、炭素数2から12のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールである。
【0059】
また、前記Aは、炭素数1から12のアルキレン;炭素数6から12のアリーレン;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から12のアリーレンであってよく、
前記Bは、炭素数2から8のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールであってよい。
【0060】
前記化学式9は、化学式の両末端が二重結合の構造を有してよく、例えば前記Bがアルケニルで置換されたアリールであるとき、前記アリールが前記Aと連結され、前記アリールを置換したアルケニルの二重結合が前記化学式3で最外側部分に位置してよい。
【0061】
前記有機亜鉛化合物をオレフィン重合用の遷移金属触媒下に前述したところのような前記第1ブロックを形成するためのオレフィン系単量体1種以上と反応させる場合、前記有機亜鉛化合物の亜鉛(Zn)と有機基(A)との間に前記オレフィン系単量体が挿入されながら重合が行われることになるので、オレフィン系重合体ブロック(第1ブロック)が形成された中間体が製造され得る。このように形成された中間体の一例を下記化学式10に示した。
【化13】
【0062】
前記化学式10において、
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;またはシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
Aは、炭素数1から20のアルキレン;炭素数6から20のアリーレン;またはハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリーレンであり、
Bは、炭素数2から12のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールであり、
nは、10から10,000の整数である。
【0063】
また、前記R及びnは、それぞれ前記化学式1で定義した通りであり、A及びBは、それぞれ前記化学式9で定義した通りである。
【0064】
本発明の一例において、前記有機亜鉛化合物をオレフィン重合用の遷移金属触媒下に前述したところのような前記第1ブロックを形成するためのオレフィン系単量体のうち2種以上と反応させる場合、形成された中間体の一例は、下記化学式11のように示し得る。
【化14】
【0065】
前記化学式11において、前記R’、R”、p及びn’は、それぞれ前記化学式2で定義した通りであり、A及びBは、それぞれ前記化学式9で定義した通りである。
【0066】
(2)前記段階(1)で得た中間体をアルキルリチウム化合物の存在下にスチレン系単量体と反応させてスチレン系重合体ブロックを形成する段階
前記段階(2)で前記スチレン系単量体は、前記中間体のZnとオレフィン系重合体ブロックとの間に挿入されて重合が行われ、スチレン系重合体ブロックを形成することができる。
【0067】
前記アルキルリチウムは、ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物であってよく、例えばMeSiCHLiであってよい。
【0068】
前記段階(2)において、前記スチレン系単量体は、前記中間体のZnとオレフィン系重合体ブロックとの間に挿入されて重合が行われ、スチレン系重合体ブロック(第2ブロック)を形成することで、前記化学式1で表される繰り返し単位を含む第1ブロック、及び前記化学式2で表される繰り返し単位を含む第2ブロックが結合して形成された前記化学式5で表される複合ブロックを形成することができる。
【0069】
本発明の一例において、前記段階(2)において、前記スチレン系単量体は、前記中間体のZnとオレフィン系重合体ブロックとの間に挿入されて重合が行われながらスチレン系重合体ブロック(第2ブロック)を形成するとともに、前記化学式9で表された有機亜鉛化合物のBで示した部分に前記スチレン系単量体が結合して重合されることで、別途のスチレン系重合体ブロックを形成することができる。本明細書では、前記Bで示した部分に結合されて重合された別途のスチレン系重合体ブロックを第3ブロックと示し、これは前記化学式3で表される繰り返し単位に該当する。
【0070】
本発明の一例による製造方法において、前記第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックは、前記化学式9で表された有機亜鉛化合物の亜鉛(Zn)を中心に対称的に形成されるため、前記段階(2)では亜鉛を中心に3つのブロックを含むトリブロック共重合体が対称的に形成された化合物が製造され得る。このようなブロック共重合体の一例を下記化学式12に示した。
【化15】
【0071】
前記化学式12において、
からR、l、m及びnは、それぞれ前記化学式1から3で定義した通りであり、Aは、前記化学式9で定義した通りであり、B’は、前記化学式9で定義したBが前記化学式3の繰り返し単位と結合された形態を示す。
【0072】
また、前記第1ブロックが前記化学式4で表される繰り返し単位を含むとき、前記段階(2)で製造される亜鉛を中心に3つのブロックを含むトリブロック共重合体が対称的に形成された化合物の一例は、下記化学式13のように示し得る。
【化16】
【0073】
前記化学式13において、
’、R”、R及びR、p、l、m及びn’は、それぞれ前記化学式2、3及び4で定義した通りであり、Aは、前記化学式9で定義した通りであり、B’は、前記化学式9で定義したBが前記化学式3の繰り返し単位と結合された形態を示す。
【0074】
本発明の一例において、前記スチレン系単量体は、例えばハロゲン、炭素数1から8のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシまたは炭素数6から12のアリールで置換されるか非置換のスチレン系単量体であってよい。
【0075】
前述したように、前記段階(2)で前記第2ブロックが形成されるとともに前記第3ブロックが形成されることで、トリブロック共重合体が形成され、前記段階(2)で前記第2ブロックまたは第3ブロックのいずれか一つの形成がなされない場合、ジブロック共重合体が形成されることになる。
【0076】
本発明のブロック共重合体組成物は、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体及びポリオレフィン-ポリスチレンジブロック共重合体を含み、前記ジブロック共重合体の含量が19重量%以下のものである。前記ポリオレフィン-ポリスチレンジブロック共重合体とポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の含有量は、前記段階(1)で用いられた有機亜鉛化合物のモル数と、前記段階(2)で用いられたアルキルリチウム化合物のモル数との比に影響を受ける。
【0077】
本発明のブロック共重合体組成物を製造するとき、前記段階(2)で用いられたアルキルリチウム化合物のモル数が、前記段階(1)で用いられた有機亜鉛化合物のモル数に比べて大きい値を有する場合、言い換えれば、本発明のブロック共重合体組成物の製造過程でリチウム(Li)の使用量が亜鉛(Zn)の使用量に比べて多い場合、重合速度がさらに速くなるので生産性が増加し、亜鉛(Zn)とオレフィン系重合体末端の全てが開始(initiation)され、トリブロック共重合体を効果的に合成することができるため、組成物内のトリブロック共重合体の含量が増加することになる。
【0078】
一方、前記段階(2)で用いられたアルキルリチウム化合物のモル数は、前記段階(1)で用いられた有機亜鉛化合物のモル数に比べて大きい値を有するのであれば特に制限されないが、前記段階(1)で用いられた有機亜鉛化合物のモル数と前記段階(2)で用いられたアルキルリチウム化合物のモル数は1:1.05から1:4であってよく、具体的に1:1から1:3であってよく、さらに具体的に1.1から2.5であってよい。
【0079】
本発明のブロック共重合体組成物は、共重合体組成物のうちジブロック共重合体を19重量%以下、具体的に18重量%以下、さらに具体的に17重量%以下の量で含んでよい。前記ジブロック共重合体の含量が増加するほど、共重合体組成物の機械的物性が減少され得るので、ジブロック共重合体の含量は小さいほどよいが、前記ジブロック共重合体含量の下限は0.1重量%であってよい。本発明の一例において、前記ジブロック共重合体は、前記化学式5または6の構造を含むものであってよく、前記トリブロック共重合体は、前記化学式7または8の構造を含むものであってよい。また、前記ジブロック共重合体は、前記化学式5または6の一端に前記化学式9の有機亜鉛化合物から由来した単位、すなわち前記化学式9で定義したB及びAが結合され、他端が終結されたCH形態の構造を有してよく、前記トリブロック共重合体は前記化学式7または8の構造を有してよい。
【0080】
本発明の一例において、前記段階(2)では、前記アルキルリチウム化合物とともにアミン系化合物、具体的にトリアミン化合物が用いられてよく、前記トリアミン化合物は、例えばN,N,N” ,N” ,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA:N,N,N” ,N” ,N”-pentamethyldiethylenetriamine)であってよい。前記アルキルリチウム化合物と前記アミン系化合物は、例えば0.5:1から1:1のモル比で用いられてよい。前記アミン系化合物は、前記アルキルリチウム化合物と複合的に開始剤として作用することができる。
【0081】
本発明のブロック共重合体組成物は、組成物全体を基準に、前記ポリオレフィン系ブロックを10重量%から99重量%含んでよく、前記ポリスチレン系ブロックを1重量%から90重量%含んでよい。また、具体的に前記ポリオレフィン系ブロックを40重量%から85重量%含んでよく、前記ポリスチレン系ブロックを合計量で15重量%から60重量%含んでよく、さらに具体的に前記ポリオレフィン系ブロックを60重量%から80重量%含んでよく、前記ポリスチレン系ブロックを合計量で20重量%から40重量%含んでよい。
【0082】
本発明の一例によるブロック共重合体組成物は、前記第3ブロックと第1ブロックとの間にその製造過程で用いられた化合物、具体的に前記化学式9の有機亜鉛化合物から由来した単位が含まれている構造を含んでよい。このようなブロック共重合体構造の一例を下記化学式14に示した。
【化17】
【0083】
前記化学式14において、RからR、l、m、n及びaは、それぞれ前記化学式1から3及び7で定義した通りであり、Aは、前記化学式9で定義した通りであり、B’は、前記化学式9で定義したBが前記化学式3の繰り返し単位と結合された形態を示す。
【0084】
また、前記第3ブロックと第1ブロックとの間にその製造過程で用いられた化合物、具体的に前記化学式9の有機亜鉛化合物から由来した単位が含まれているブロック共重合体構造の他の一例は、下記化学式15のように示し得る。
【化18】
【0085】
前記化学式15において、
’、R”、R及びR、p、l、m、n’及びaは、それぞれ前記化学式2から4、及び7で定義した通りであり、Aは、前記化学式9で定義した通りであり、B’は、前記化学式9で定義したBが前記化学式3で表される繰り返し単位と結合された形態を示す。
【0086】
本発明の一例によるブロック共重合体組成物は、前記有機亜鉛化合物を用いて、亜鉛を中心に対称的に形成されたブロック共重合体を含む化合物を製造した後、ここに水、酸素、または有機酸などを投入する過程を含み、ブロック共重合体を別に水素化させる飽和工程を要しない製造方法によって製造されるので、ジブロック共重合体を別に水素化させる飽和工程が省略されたワン・ポット(one-pot)製造方法により行われるという利点がある。
【0087】
また、本発明のブロック共重合体組成物を含むポリオレフィン系ブロックの製造過程でブタジエンまたはイソプレンなどのジエン(diene)化合物のような残留不飽和結合を残し得る単量体が用いられないので、これを水素化させる飽和工程によっても飽和されない不飽和結合が残留するという問題がない。
【0088】
このように製造された本発明のブロック共重合体組成物は、58,000g/molから500,000g/molの重量平均分子量を有してよく、具体的に60,000g/molから300,000g/molの重量平均分子量、さらに具体的に65,000g/molから200,000g/molの重量平均分子量を有してよい。
【0089】
前記ブロック共重合体組成物は、多分散指数(polydispersity index、PDI)値が1.1超過3以下であってよく、具体的に1.2から2.5、さらに具体的に1.3から1.8であってよい。
【0090】
前記ブロック共重合体組成物は、ISO37基準で測定した引張強度が30MPa以下であってよく、具体的に5MPaから28MPa、さらに具体的に10MPaから26MPaであってよい。
【0091】
また、前記ブロック共重合体組成物は、300%モジュラス(modulus)値が2MPaから15MPaであってよく、具体的に2.5MPaから10MPa、さらに具体的に3MPaから8MPaであってよい。
【0092】
また、前記ブロック共重合体組成物は、破断伸び率(elongation at break)が800%から2,000%であってよく、具体的に850%から1,500%、さらに具体的に870%から1,300%であってよい。
【実施例
【0093】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0094】
製造例:有機亜鉛化合物の製造
【化19】
ボランジメチルスルフィド(1.6mL、3.2mmol)を撹拌中にあるトリエチルボラン(0.6g)に徐々に投入した後、90分間反応させた。-20℃に冷却している無水ジエチルエーテル(10mL)に溶かしたジビニルベンゼン(3.8g)に徐々に投入した後、一晩撹拌した。真空ポンプで溶媒を除去した後、ジエチル亜鉛(0.8g)を添加した。5時間0℃で減圧蒸留を介して生成されるトリエチルボランを除去しながら反応を進めた。40℃で余分のジビニルベンゼン及びジエチル亜鉛を減圧蒸留で除去した。メチルシクロヘキサン(150mL)を添加して生成物を再び溶解した後、副生成物として生成された固体化合物をセライトを用いて濾過して除去し、前記化学式16で表される有機亜鉛化合物を製造した。
【0095】
実施例1
高圧反応器に15mLの1-ヘキセンと240μmolの有機亜鉛化合物{(CH=CHCCHCHZn}を100gのメチルシクロヘキサンに溶かして投入し、温度を80℃に上げた。
【0096】
下記化学式17で表される遷移金属化合物と助触媒として[(C1837)N(Me)H[B(Cを1:1の比率で含む溶液(5μmol)を高圧反応器に注入した後、直ぐにエチレンを注入して20barの圧力で維持した。
【0097】
95℃から100℃の温度で45分間重合工程を行った後、残りのガスを排出させた。MeSiCHLiとN,N,N” ,N” ,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA:N,N,N” ,N” ,N”-pentamethyldiethylenetriamine)を1:1の比率(420μmol)でメチルシクロヘキサンに混合して前記反応器に注入した後、30分間撹拌させた。撹拌温度は90℃から100℃に維持した。8.5mLのスチレンを高圧反応器に注入した後、90℃から100℃の間に維持しながら5時間に亘って反応させてスチレン単量体を全て転換させた。スチレンの完全な転換後、酢酸及びエタノールを連続的に注入した。収得された重合体組成物を80℃の真空オーブンで一晩中乾燥させた。
【化20】
【0098】
実施例2から9
1-ヘキセン、スチレン、有機亜鉛化合物、メチルシクロヘキサン、遷移金属化合物/助触媒溶液、及びMeSiCHLiとPMDETAの使用量を下記表1に示すように変化させたことを除き、実施例1と同様の方法で重合体組成物を製造した。
【0099】
比較例1から3
比較例1から3では、商業的に販売されるSEBSとしてaldrich社のProduct#200565、200557、及びKraton社のG1657をそれぞれ使用した。
【0100】
比較例4
高圧反応器に30mLの1-プロピレンと150μmolの有機亜鉛化合物{(CH=CHCCHCHZn}を100gのメチルシクロヘキサンに溶かして投入し、温度を80℃に上げた。
【0101】
前記化学式17で表される遷移金属化合物と助触媒として[(C1837)N(Me)H[B(Cを1:1の比率で含む溶液(4μmol)を高圧反応器に注入した後、直ぐにプロピレン30gを注入し、エチレンを注入して20barの圧力になるようにし、20barを維持した。
【0102】
95℃から110℃の温度で45分間重合工程を行った後、残りのガスは排出させた。MeSiCHLiとN,N,N” ,N” ,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA:N,N,N” ,N” ,N”-pentamethyldiethylenetriamine)を1:1の比率(150μmol)でメチルシクロヘキサンに混合して前記反応器に注入した後、30分間撹拌させた。撹拌温度は90℃から110℃に維持した。7.8gのスチレンを高圧反応器に注入した後、90℃から110℃の間に維持しながら5時間に亘って反応させてスチレン単量体を全て転換させた。スチレンの完全な転換後、酢酸及びエタノールを連続的に注入した。収得された重合体組成物を80℃の真空オーブンで一晩中乾燥させた。
【0103】
比較例5
プロピレンを35mL注入し、エチレンを注入して20barの圧力になるようにし、20barを維持したことを除き、前記比較例4と同様の方法で重合体組成物を製造した。
【0104】
比較例6
高圧反応器に10mLの1-ヘキセンと150μmolの有機亜鉛化合物{(CH=CHCCHCHZn}を100gのメチルシクロヘキサンに溶かして投入し、温度を80℃に上げた。
【0105】
前記化学式17で表される遷移金属化合物と助触媒として[(C1837)N(Me)H[B(Cを1:1の比率で含む溶液(4μmol)を高圧反応器に注入した後、直ぐにプロピレン30gを注入し、エチレンを注入して20barの圧力になるようにし、20barを維持した。
【0106】
95℃から110℃の温度で45分間重合工程を行った後、残りのガスを排出させた。MeSiCHLiとN,N,N” ,N” ,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA:N,N,N” ,N” ,N”-pentamethyldiethylenetriamine)を1:1の比率(150μmol)でメチルシクロヘキサンに混合して前記反応器に注入した後、30分間撹拌させた。撹拌温度は90℃から110℃に維持した。7.8gのスチレンを高圧反応器に注入した後、90℃から110℃の間に維持しながら5時間に亘って反応させてスチレン単量体を全て転換させた。スチレンの完全な転換後、酢酸及びエタノールを連続的に注入した。収得された重合体組成物を80℃の真空オーブンで一晩中乾燥させた。
【0107】
比較例7
1-ヘキセンを15mL注入し、エチレンを注入して20barの圧力になるようにし、20barを維持したことを除き、前記比較例6と同様の方法で重合体組成物を製造した。
【0108】
【表1】
【0109】
実験例
前記実施例1から9、比較例1から7のブロック共重合体に対して、下記方法により物性を測定して下記表2に示した。
【0110】
1)重量平均分子量(Mw、g/mol)、数平均分子量(Mn、g/mol)及び多分散指数(polydispersity index、PDI)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて重量平均分子量(Mw、g/mol)及び数平均分子量(Mn、g/mol)をそれぞれ測定し、重量平均分子量を数平均分子量で除してて多分散指数(polydispersity index、PDI)を計算した。
-カラム:PL Olexis
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB:Trichlorobenzene)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High TemperatureRI detector
-ポリスチレン標準(Standard)使用
-Mark-Houwink式を用いて(K=40.8×10-5、α=0.7057)、Universal Calibrationで分子量計算
【0111】
2)1-ヘキセン及びブランチ(branch)の含量
NMRを介して測定した。Bruker 600MHz AVANCE III HD NMR装置を用いて1H NMRをns=16、d1=3s、溶媒(solvent)=TCE-d2、373K条件で測定後、TCE-d2溶媒ピークを6.0ppmに補正しており、0.92ppmで1-ブテンのCHを、0.96ppm近辺で1-ヘキセンによるブチルブランチのCH関連ピーク(triplet)を確認した後、含量を計算した。
【0112】
3)引張強度、300%モジュラス及び伸び率の測定
前記実施例1から5、及び比較例1から3の重合体組成物を用いて成形品をASTM D-412によってダンベル形状の試片で製作し、ASTM D638に準じてUTM(Universal Testing Machine)装置(モデル:4466、Instron)を用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を500mm/minで引っ張った後、前記各試片が切断される地点を測定した。引張強度は、下記数式1によって計算した。また、伸び率(%)は、下記数式2によって計算しており、300%モジュラス(300%での応力)(MPa)は、試片が初期長さの3倍に伸びた際の引張強度を測定した。
【数1】
【数2】
【0113】
4)ジブロック共重合体の含量
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて得られるGPCカーブを2つのガウシアンカーブでピーク(peak)を仮定して解析(デコンボリューション:deconvolution)して得た。
【0114】
ピーク解析(ピークデコンボリューション:peak deconvolution)のためのプログラムとしては、オリジン(origin)を用いており、分析(analysis)で多重ピークフィット(Multiple Peak Fit)を用いており、具体的にガウシアンカーブピークを、測定された分子量をトリブロック共重合体の分子量に、測定された分子量の75%をジブロック共重合体の分子量に仮定して、二つのピークでフィッティングされるようにした。導出された面積比(area percentage)を測定した分子量に基づいて重量比(weight percentage)で計算した。
【0115】
【表2】
【0116】
前記表2を参照すると、実施例1から9の重合体組成物は、比較例1から3のSEBSに比べて弾性を示す物性である300%モジュラスと破断伸び率(elongation at break)が同時に優れた値を示し、また多分散指数(PDI)値が相対的に高いため優れた加工性を示すものであることが確認できる。また、実施例1から9の重合体組成物は、高い多分散指数(PDI)値を有しながらも、伸び率、弾性を示す物性である300%モジュラス、及び引張強度が同時に優れた値を示しており、これからいずれか一つ以上の物性がよくない比較例4から7とは区別される優れた物性を有することが確認できた。