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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】楕円偏光板および有機発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220627BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220627BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020554845
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2019004623
(87)【国際公開番号】W WO2019203561
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044316
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・クグ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ス・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソンホ・リュ
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-106114(JP,A)
【文献】特開2014-228567(JP,A)
【文献】特開2009-192611(JP,A)
【文献】特開2009-042254(JP,A)
【文献】特開2008-152219(JP,A)
【文献】特開2008-134546(JP,A)
【文献】特開2017-173672(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0008478(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0117961(KR,A)
【文献】特表2015-501955(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0066255(KR,A)
【文献】特表2019-530014(JP,A)
【文献】特表2021-516792(JP,A)
【文献】特表2021-516789(JP,A)
【文献】特表2021-516795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
G09F 9/30
H01L27/32
H01L51/50
H05B33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線偏光子、第1位相差フィルム、第2位相差フィルム、第3位相差フィルムおよび第4位相差フィルムを順に含み、
前記第1位相差フィルムは下記の数式1のNz値が1より大きい-Bプレートであり、
前記第2位相差フィルムは下記の数式1のNz値が0未満の+Bプレートであり、
前記第3位相差フィルムは下記の数式1のNz値が0.8~1.2であり、面内遅相軸は前記線偏光子の吸収軸と43度~47度をなし、
前記第4位相差フィルムは下記の数式1のNz値が-4.0以下である+Bプレートであるか、または下記の一般式1を満足する+Cプレートであり、
前記第1位相差フィルムの厚さ方向位相差と第2位相差フィルムの厚さ方向位相差との合計数値が-100nm~130nmであり、前記厚さ方向位相差(Rth)は下記の数式2で定義され、
前記第1位相差フィルムの面内遅相軸が前記線偏光子の吸収軸と垂直をなし、
前記第1位相差フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差の値は10nm~90nmであり、
前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は前記線偏光子の吸収軸と垂直または平行をなし、
前記第3位相差フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差の値は120nm~160nmである、楕円偏光板:
[数式1]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
[数式2]
Rth=(nz-ny)×d
[一般式1]
nx=ny<nz
数式1~2および一般式1において、nx、nyおよびnzはそれぞれ550nm波長の光に対する位相差フィルムのx軸、y軸およびz軸方向の屈折率であり、x軸は位相差フィルムの面内遅相軸と平行な方向であり、y軸は位相差フィルムの面内進相軸と平行な方向であり、z軸は位相差フィルムの厚さ方向であり、dは位相差フィルムの厚さである。
【請求項2】
前記第1位相差フィルムのNz値は1.2~6である、請求項1に記載の楕円偏光板。
【請求項3】
前記第1位相差フィルムの厚さ方向位相差値の値は-160nm~-5nmである、請求項1または2に記載の楕円偏光板。
【請求項4】
前記第1位相差フィルムのR(450)/R(550)は0.6~1.3であり、R(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの面内位相差を意味する、請求項1~3のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項5】
前記第2位相差フィルムのNz値が-1以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項6】
前記第2位相差フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差の値が0nm~60nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項7】
前記第2位相差フィルムの厚さ方向位相差値の値が30nm~120nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項8】
前記第2位相差フィルムのR(450)/R(550)は0.6~1.3であるか、Rth(450)/Rth(550)は0.6~1.3であり、R(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの面内位相差を意味し、Rth(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの厚さ方向位相差を意味する、請求項1~7のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項9】
前記第3位相差フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差の値は130nm~150nmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項10】
前記第3位相差フィルムのR(450)/R(550)は0.6~1.0であり、R(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの面内位相差を意味する、請求項1~9のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項11】
前記第4位相差フィルムの厚さ方向位相差の値は0nm~300nmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項12】
前記第4位相差フィルムのRth(450)/Rth(550)は0.6~1.3であり、Rth(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの厚さ方向位相差を意味する、請求項1~11のいずれか一項に記載の楕円偏光板。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載された楕円偏光板および有機発光表示パネルを含む、有機発光装置。
【請求項14】
楕円偏光板の第4位相差フィルムが線偏光子に比べて有機発光表示パネルに隣接するように配置される、請求項13に記載の有機発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は楕円偏光板および有機発光装置に関する。
【0002】
本出願は2018年4月17日付韓国特許出願第10-2018-0044316号に基づいた優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
最近モニターまたはテレビなどの軽量化および薄型化が要求されており、このような要求により有機発光装置(organic light emitting device;OLED)が注目されている。有機発光装置は自ら発光する自体発光型表示装置であって、別途のバックライトが不要であるため厚さを減らすことができ、フレキシブル表示装置を具現するのに有利である。
【0004】
一方、有機発光装置は有機発光表示パネルに形成された金属電極および金属配線によって外部光を反射させることができ、反射した外部光によって視認性と対比比が低下して表示品質が低下し得る。特許文献1(大韓民国特許公開第2009-0122138号)のように、有機発光表示パネルの一面に円偏光板を付着して上記反射した外部光が外側に漏洩することを減らすことができる。
【0005】
しかし、現在開発されている円偏光板は視野角依存性が強いため、側面に行くほど反射防止性能が低下して視認性が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は正面だけでなく、側面で反射特性および色特性が優秀な超高視認性の楕円偏光板およびこれを含む有機発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は楕円偏光板に関する。図1は、本出願の楕円偏光板の構造を例示的に示す。図1に示した通り、上記楕円偏光板は線偏光子50、第1位相差フィルム10、第2位相差フィルム20、第3位相差フィルム30および第4位相差フィルム40を順に含むことができる。
【0008】
本明細書で偏光子は入射光に対して選択的透過および吸収特性を示す素子を意味する。偏光子は例えば、多様な方向に振動する入射光からいずれか一方向に振動する光は透過し、残りの方向に振動する光は吸収することができる。
【0009】
本明細書で線偏光子は、選択的に透過する光がいずれか一方向に振動する線偏光であり、選択的に吸収する光が上記線偏光の振動方向と直交する方向に振動する線偏光である偏光子を意味する。
【0010】
上記線偏光子としては、例えば、PVA延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨウ素を染着した偏光子または配向された状態で重合された液晶をホストとし、上記液晶の配向に沿って配列された異方性染料をゲストとするゲスト-ホスト型偏光子を使用できるが、これに制限されるものではない。
【0011】
本出願の一実施例によると、上記線偏光子としてはPVA延伸フィルムを使うことができる。上記線偏光子の透過率乃至偏光度は本出願の目的を考慮して適切に調節され得る。例えば上記線偏光子の透過率は42.5%~55%であり得、偏光度は65%~99.9997%であり得る。
【0012】
本明細書で角度を定義しながら、垂直、水平、直交または平行などの用語を使う場合、これは目的とする効果を損傷させない範囲での実質的な垂直、水平、直交または平行を意味するものであって、例えば、製造誤差(error)または偏差(variation)等を勘案した誤差を含むものである。例えば、上記それぞれの場合は、約±15度以内の誤差、約±10度以内の誤差または約±5度以内の誤差を含むことができる。
【0013】
本明細書で位相差フィルムは光学異方性フィルムであって、複屈折を制御することによって入射偏光を変換できる素子を意味し得る。本明細書で位相差フィルムのx軸、y軸およびz軸を記載しながら特別な言及がない限り、上記x軸は位相差フィルムの面内遅相軸(slow axis)と平行な方向を意味し、y軸は位相差フィルムの面内進相軸(fast axis)と平行な方向を意味し、z軸は位相差フィルムの厚さ方向を意味する。上記x軸とy軸は面内で互いに直交をなすことができる。本明細書で位相差フィルムの光軸を記載しながら、特に別途に規定しない限り遅相軸を意味する。上記位相差フィルムが棒状の液晶分子を含む場合、遅相軸は上記棒状の長軸方向を意味し得、ディスク状の液晶分子を含む場合、遅相軸は上記ディスク状の法線方向を意味し得る。
【0014】
本明細書で位相差フィルムのNz値は下記の数式1で計算される。
【0015】
[数式1]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
【0016】
本明細書で下記の一般式1を満足する位相差フィルムを、いわゆる+Cプレートと呼称することができる。
【0017】
本明細書で下記の一般式2を満足する位相差フィルムを、いわゆる+Bプレートと呼称することができる。
【0018】
本明細書で下記の一般式3を満足する位相差フィルムを、いわゆる-Bプレートと呼称することができる。
【0019】
本明細書で下記の一般式4を満足する位相差フィルムを、いわゆる+Aプレートと呼称することができる。
【0020】
[一般式1]
nx=ny<nz
【0021】
[一般式2]
ny<nxnz
【0022】
[一般式3]
nx>ny>nz
【0023】
[一般式4]
nx>ny=nz
【0024】
本明細書で位相差フィルムの厚さ方向の位相差(Rth)は下記の数式2で計算される。
【0025】
本明細書で位相差フィルムの面上位相差(Rin)は下記の数式3で計算される。
【0026】
[数式2]
Rth=(nz-ny)×d
【0027】
[数式3]
Rin=(nx-ny)×d
【0028】
数式1~数式3および一般式1~4において、nx、nyおよびnzはそれぞれ上記定義したx軸、y軸およびz軸方向の屈折率であり、dは位相差フィルムの厚さである。
【0029】
本明細書で逆波長分散特性(reverse wavelength dispersion)は下記の数式4を満足する特性を意味し得、正常波長分散特性(normal wavelength dispersion)は下記の数式5を満足する特性を意味し得、フラット波長分散特性(flat wavelength dispersion)は下記の数式6を満足する特性を意味し得る。
【0030】
[数式4]
R(450)/R(550)<R(650)/R(550)
【0031】
[数式5]
R(450)/R(550)>R(650)/R(550)
【0032】
[数式6]
R(450)/R(550)=R(650)/R(550)
【0033】
本明細書で位相差フィルムの屈折率を記載しながら、特に別途に規定しない限り、約550nm波長の光に対する屈折率を意味する。上記でR(λ)はλnm光に対する面上位相差または厚さ方向位相差を意味し得る。
【0034】
本出願は上記第1位相差フィルム、第2位相差フィルム、第3位相差フィルムおよび第4位相差フィルムの光学物性を調節することによって、正面だけでなく側面でも超視認性の楕円偏光板を具現することができる。一例として、本出願の楕円偏光板は傾斜角40度および方位角45度または135度での色偏差の最大値が2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満または2.4未満であり得る。本明細書で色偏差は上記楕円偏光板が有機発光表示パネルに適用された時に側面の色相が正面の色相とどれくらい差があるかを意味するものであって、後述する実施例のカラー特性シミュレーション評価でΔE abの数式で計算される値を意味し得る。
【0035】
第1位相差フィルムはNz値が1より大きい-Bプレートであり得る。上記Nz値は具体的には1.15以上または1.2以上であり得る。上記Nz値の上限は具体的には20以下、15以下、10以下、8以下または6以下であり得る。第1位相差フィルムのNz値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0036】
第1位相差フィルムの550nm波長の光に対する面上位相差値は10nm~90nmであり得る。上記面上位相差値は具体的には、10nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上または30nm以上であり得、90nm以下、85nm以下、80nm以下、75nm以下または70nm以下であり得る。第1位相差フィルムの面上位相差値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0037】
第1位相差フィルムの厚さ方向位相差値は-160nm~-5nmであり得る。上記厚さ方向位相差値は具体的には、-160nm以上、-155nm以上または-150nm以上であり得、-5nm以下、-8nm以下、-10nm以下または-10.5nm以下であり得る。第1位相差フィルムの厚さ方向位相差値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0038】
第1位相差フィルムは面内遅相軸が上記線偏光子の吸収軸と垂直をなすことができる。これを通じて正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0039】
第2位相差フィルムは数式1のNz値が0未満の+Bプレートであるか、または上記一般式1を満足する+Cプレートであり得る。一般式1を満足する+Cプレートである場合はnx=nyであるのでNz=(nx-nz)/(nx-ny)値は定義されない。
【0040】
第2位相差フィルムが+Bプレートである場合にNz値は、具体的には、0未満、-0.2以下、-0.4以下、-0.6以下、-0.8以下または-1以下であり得る。上記Nz値の下限は具体的には、-50以上、-40以上、-30以上または-20以上であり得る。第2位相差フィルムのNz値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0041】
第2位相差フィルムが+Bプレートである場合、550nm波長の光に対する面上位相差値が0nm~60nmであり得る。上記面上位相差値は具体的には、1nm以上、2nm以上、3nm以上または3.2nm以上であり得、60nm以下、55nm以下、50nm以下または45nm以下であり得る。第2位相差フィルムの面上位相差値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0042】
第2位相差フィルムが+Bプレートである場合、厚さ方向位相差値が30nm~120nmであり得る。上記厚さ方向位相差値は具体的には、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、65nm以上または68nm以上であり得、120nm以下、110nm以下、100nm以下または90nm以下であり得る。第2位相差フィルムの厚さ方向位相差値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る
【0043】
第2位相差フィルムが+Bプレートである場合、面内遅相軸は上記線偏光子の吸収軸と垂直または平行をなすことができる。これを通じて正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0044】
第2位相差フィルムが+Cプレートである場合、厚さ方向位相差値は10nm~300nmであり得る。上記厚さ方向位相差値は具体的には、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上または65nm以上であり得、300nm以下、290nm以下、280nm以下、270nm以下、260nm以下または255nm以下であり得る。第2位相差フィルムの厚さ方向位相差値が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る
【0045】
本出願では第2位相差フィルムにより第1~第3実施例で具現され得る。本出願の第1実施例によると、第2位相差フィルムは+Cプレートであり得る。本出願の第2実施例によると、第2位相差フィルムは+Bプレートであり得、その遅相軸は線偏光子の吸収軸と平行をなすことができる。本出願の第3実施例によると、第2位相差フィルムは+Bプレートであり得、その遅相軸は線偏光子の吸収軸と垂直をなすことができる。
【0046】
第1位相差フィルムの厚さ方向位相差と第2位相差フィルムの厚さ方向位相差との合計数値は-100nm~130nmであり得る。上記合計数値は具体的には-100nm以上、-95nm以上、-90nm以上、-85nm以上または-80nm以上であり得、130nm以下、125nm以下、120nm以下、115nm以下、110nm以下または105nm以下であり得る。これを通じて正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0047】
第3位相差フィルムはNz値が0.8~1.2であり得る。第3位相差フィルムは+Bプレートであるか、-Bプレートであるかまたは+Aプレートであり得る。第3位相差フィルムのNz値が1.0である場合には+Aプレートであり、0.8以上~1.0未満である場合には+Aプレートに近い+Bプレートであり、1.0より大きく1.2以下である場合には+Aプレートに近い-Bプレートである。
【0048】
第3位相差フィルムは1/4波長位相遅延特性を有することができる。本明細書で「n波長位相遅延特性」は少なくとも一部の波長範囲内で、入射光をその入射光の波長のn倍だけ位相遅延させることができる特性を意味し得る。したがって、上記1/4波長位相遅延特性は少なくとも一部の波長範囲内で、入射光をその入射光の波長の1/4倍だけ位相遅延させることができる特性を意味し得る。
【0049】
第3位相差フィルムの550nm波長の光に対する面上位相差は120nm~160nm、具体的には130nm~150nmであり得る。第3位相差フィルムの面上位相差が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0050】
上記第3位相差フィルムの面内遅相軸は上記線偏光子の吸収軸と約40度~50度、約43度~47度、具体的には約45度をなすことができる。これを通じて正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0051】
第4位相差フィルムは+Cプレートであるかまたは+Bプレートであり得る。上記第4位相差フィルムの+Bプレートである場合にNz値は-4.0以下であり得る。上記第4位相差フィルムのNz値が-4.0以下である場合には+Cプレートに近い+Bプレートであり得る。上記第4位相差フィルムのNz値の下限は例えば-3000以上であり得る。上記第4位相差フィルムが+Cプレートである場合はnx=nyであるのでNz=(nx-nz)/(nx-ny)値は定義されなくてもよい。
【0052】
第4位相差フィルムが+Bプレートである場合、面内遅相軸は線偏光子の光吸収軸と約40度~50度、約43度~47度、具体的には約45度をなすことができる。これを通じて正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0053】
第4位相差フィルムは0nm以上の厚さ方向位相差を有することができる。具体的には、上記第4位相差フィルムの厚さ方向位相差は0nm~300nmであり得る。より具体的には、上記第4位相差フィルムの厚さ方向位相差は0nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上または65nm以上であり得、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下または75nm以下であり得る。第4位相差フィルムの厚さ方向位相差が上記範囲を満足する場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0054】
第1、第2、第3~第4位相差フィルムはそれぞれ逆波長分散特性、正常波長分散特性またはフラット波長分散特性を有することができる。一つの例示において、第1位相差フィルムはR(450)/R(550)値が0.6~1.3であり得る。一つの例示において、第2位相差フィルムはR(450)/R(550)値が0.6~1.3であるかRth(450)/Rth(550)は0.6~1.3であり得る。一つの例示において、第3位相差フィルムはR(450)/R(550)値が0.60~1.0、具体的には0.6~0.99または0.6~0.92であり得る。第3位相差フィルムのR(650)/R(550)値は上記R(450)/R(550)値より大きい値を有しつつ、1.01~1.19、1.05~1.15または1.09~1.11であり得る。一つの例示において、第4位相差フィルムはRth(450)/Rth(550)は0.6~1.3であり得る。上記でR(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの面上位相差を意味し、Rth(λ)はλnm光に対する位相差フィルムの厚さ方向位相差を意味する。第1、第2、第3~第4位相差フィルムの波長分散特性が上記範囲内である場合、正面だけでなく側面でも優秀な反射特性および色特性を示すので、超高視認性の楕円偏光板を具現するのに有利であり得る。
【0055】
第1、第2、第3~第4位相差フィルムはそれぞれ高分子フィルムまたは液晶フィルムであり得る。上記高分子フィルムとしては、ポリカーボネート(PC)(polycarbonate)、ノルボルネン樹脂(norbonene resin)、ポリビニルアルコール(PVA)(poly(vinyl alcohol))、ポリスチレン(PS)(polystyrene)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(poly(methyl methacrylate))、ポリプロピレン(PP)(polypropylene)等のポリオレフィン、PARポリアリレート(Par(poly(arylate)))、ポリアミド(PA)(polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(PET)(poly(ethylene terephthalate))またはポリスルホン(PS)(polysulfone)等を含むフィルムを使うことができる。上記高分子フィルムを適切な条件で延伸または収縮処理して複屈折性を付与して上記第1~第4位相差フィルムとして使うことができる。上記液晶フィルムは液晶分子を配向および重合させた状態で含むことができる。上記液晶分子は重合性液晶分子であり得る。本明細書で重合性液晶分子は、液晶性を示すことができる部位、例えばメソゲン(mesogen)骨格などを含み、重合性官能基を一つ以上含む分子を意味し得る。また、重合性液晶分子を重合された形態で含むとは、上記液晶分子が重合されて液晶フィルム内で液晶高分子の主鎖または側鎖のような骨格を形成している状態を意味し得る。
【0056】
第1、第2、第3~第4位相差フィルムは、厚さはそれぞれ本出願の目的を考慮して適切に調節され得る。例えば、第1、第2、第3~第4位相差フィルムは、厚さはそれぞれ独立的に0.1μm~100μmであり得る。
【0057】
上記楕円偏光板は表面処理層をさらに含むことができる。表面処理層としては反射防止層などを例示することができる。表面処理層は線偏光子の外側に、例えば、第1位相差フィルムが配置された反対側面に配置され得る。上記反射防止層としては屈折率が異なる2個以上の層の積層体などを使用できるが、これに制限されるものではない。
【0058】
上記楕円偏光板で、第1位相差フィルム、第2位相差フィルム、第3位相差フィルム、第4位相差フィルム乃至線偏光子は粘着剤または接着剤を通じて付着されているか、あるいは直接コーティングによって積層されていてもよい。上記粘着剤または接着剤としては光学透明粘着剤または接着剤を使うことができる。
【0059】
本出願の楕円偏光板は外光の反射を防止できるため、有機発光装置の視認性を改善することができる。外部から入射する非偏光された光(incident unpolarized light)(以下、「外光」という。)は、線偏光子を通過しながら二つの偏光直交成分のうち一つの偏光直交成分、すなわち第1偏光直交成分のみが透過し、偏光された光は第3位相差フィルムを通過しながら円偏光に変わり得る。上記円偏光された光は基板、電極などを含んだ有機発光表示装置の表示パネルで反射しながら円偏光の回転方向が変わることになり、上記円偏光された光が第3位相差フィルムを再び通過しながら二つの偏光直交成分のうち他の一つの偏光直交成分、すなわち第2偏光直交成分に変換される。上記第2偏光直交成分は線偏光子を通過できないため外部に光が放出されず、外光反射防止効果を有することができる。
【0060】
本出願の楕円偏光板は、特に側面から入射する外光の反射も効果的に防止できるため、有機発光装置の側面視認性を改善することができる。例えば、本出願の楕円偏光板は視野角偏光補償原理を通じて側面から入射する外光の反射も効果的に防止することができる。
【0061】
本出願の楕円偏光板は有機発光装置に適用され得る。図2は、本出願の楕円偏光板を適用した有機発光装置を例示的に図示した断面図である。図2を参照すると、上記有機発光装置は有機発光表示パネル200と有機発光表示パネル200の一面に位置する楕円偏光板100を含む。上記楕円偏光板の第4位相差フィルム40が線偏光子50に比べて有機発光表示パネル200に隣接するように配置され得る。
【0062】
上記有機発光表示パネルはベース基板、下部電極、有機発光層、上部電極および封止基板などを含むことができる。上記下部電極および上部電極のうち一つはアノード(anode)であり他の一つはカソード(cathode)であり得る。アノードは正孔(hole)が注入される電極であって、仕事関数(work function)が高い導電物質で作られ得、カソードは電子が注入される電極であって、仕事関数が低い導電物質で作られ得る。下部電極および上部電極のうち少なくとも一つは発光された光が外部に出ることができる透明導電物質で作られ得、例えばITOまたはIZOであり得る。有機発光層は下部電極と上部電極に電圧が印加された時に光を出すことができる有機物質を含むことができる。
【0063】
下部電極と有機発光層の間および上部電極と有機発光層の間には付帯層をさらに含むことができる。付帯層は電子と正孔のバランスを取るための正孔伝達層(hole transporting layer)、正孔注入層(hole injecting layer)、電子注入層(electron injecting layer)および電子伝達層(electron transporting layer)を含むことができるが、これに限定されるものではない。封止基板はガラス、金属および/または高分子で作られ得、下部電極、有機発光層および上部電極を封止して外部から水分および/または酸素が流入することを防止することができる。
【0064】
楕円偏光板は有機発光表示パネルで光が出る側に配置され得る。例えばベース基板側に光が出る背面発光(bottom emission)構造である場合はベース基板の外側に配置され得、封止基板側に光が出る前面発光(top emission)構造である場合は封止基板の外側に配置され得る。楕円偏光板は、外光が有機発光表示パネルの電極および配線などのように、金属で作られた反射層によって反射して有機発光装置の外側に出ることを防止することによって、有機発光装置の表示特性を改善することができる。また、楕円偏光板は前述した通り、正面だけでなく側面でも反射防止効果を示すことができるため側面視認性を改善することができる。
【発明の効果】
【0065】
本出願は正面だけでなく、側面で反射特性および色特性が優秀な超高視認性の楕円偏光板およびこれを含む有機発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本出願の一実施例に係る楕円偏光板の例示的な断面図。
図2】本出願の一実施例に係る有機発光装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本出願に係る実施例および本出願に従わない比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記に提示された実施例によって制限されるものではない。
【0068】
評価例1 カラー特性シミュレーション評価
実施例および比較例に対して正面および側面でのカラー特性(Techwiz 1D plus、サナイシステム)をシミュレーション評価した。色偏差(Color difference、△E ab、dE)は下記のような数式によって定義される。
【0069】
【数1】
【0070】
上記数式で(L 、a 、b )は正面(傾斜角0°、方位角0°)での反射色相値を意味し、(L 、a 、b )は側面(特定の傾斜角および方位角)での反射色相値を意味する。dE max値は傾斜角40度および方位角45度または135度でのdE値のうち最大値を基準として作成した。色偏差数値(dE値)が意味するものは側面の色相が正面の色相とどれくらい差があるかを示すものである。△E ab値が2.3であれば、JND(just noticeable difference)と見ることができるが、△E ab値が2.4未満であればJNDに近接した性能を具現すると見ることができる。
【0071】
[実施例1]
偏光子、第1位相差フィルム、第2位相差フィルム、第3位相差フィルムおよび第4位相差フィルムを順に含む楕円偏光板を準備し、上記楕円偏光板を第4位相差フィルムがOLEDパネルに隣接するように配置した。
【0072】
偏光子は単体透過率(Ts)が42.5%である線偏光子であり、OLEDパネルはGalaxy S6である。第1位相差フィルムは-Bプレートでその遅相軸は偏光子の吸収軸と垂直をなす。第2位相差フィルムは+Cプレートである。第3位相差フィルムはR(450)/R(550)値が0.86であり、Rin値が140nmであり、その遅相軸は偏光子の吸収軸と45度をなす。第4位相差フィルムはRth値が60nmである+Cプレートである。上記でRinは位相差フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差値を意味し、Rthは位相差フィルムの550nm波長の光に対する厚さ方向位相差値を意味する。
【0073】
表1、表2および表3はそれぞれ第1位相差フィルムのNz値が1.2、3.0および6.0である場合に、40度傾斜角でdE Max値が2.4未満を示す第1および第2位相差フィルムの光学物性を表す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
[実施例2]
第1位相差フィルムと第2位相差フィルムをそれぞれ下記のように変更したことを除いては実施例1と同一の構造を設定した。
【0078】
第1位相差フィルムは-Bプレートであり、その遅相軸は偏光子の吸収軸と垂直をなす。第2位相差フィルムは+Bプレートであり、その遅相軸は偏光子の吸収軸と平行をなす。
【0079】
表4および表5はそれぞれ第1位相差フィルムのNz値が1.2および6.0である場合に、40度傾斜角でdE Max値が2.4未満を示す第1および第2位相差フィルムの光学物性を表す。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5-1】
【表5-2】
【0082】
[実施例3]
第1位相差フィルムと第2位相差フィルムをそれぞれ下記のように変更したことを除いては実施例1と同一の構造を設定した。
【0083】
第1位相差フィルムは-Bプレートであり、その遅相軸は偏光子の吸収軸と垂直をなす。第2位相差フィルムは+Bプレートであり、その遅相軸は偏光子の吸収軸と垂直をなす。
【0084】
表6および表7はそれぞれ第1位相差フィルムのNz値が1.2および6.0である場合に、40度傾斜角でdE Max値が2.4未満を示す第1および第2位相差フィルムの光学物性を表す。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
[比較例1]
第1位相差フィルムと第2位相差フィルムを含まず、偏光子、第3位相差フィルムおよび第4位相差フィルムを順に含む楕円偏光板を設定したことを除いては実施例1と同一の構造を設定した。比較例1のdE max値は2.8であった。
【符号の説明】
【0088】
10:第1位相差フィルム
20:第2位相差フィルム
30:第3位相差フィルム
40:第4位相差フィルム
50:線偏光子
100:楕円偏光板
200:有機発光表示パネル
図1
図2