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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20220627BHJP
   C03C 17/28 20060101ALI20220627BHJP
   C03C 17/25 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H01L31/04 560
C03C17/28 A
C03C17/25 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019520279
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2018019791
(87)【国際公開番号】W WO2018216718
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017101857
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智弘
(72)【発明者】
【氏名】入江 哲司
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】井上 愛知
(72)【発明者】
【氏名】西沢 学
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏行
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-051231(JP,A)
【文献】特表2005-527461(JP,A)
【文献】特開2017-069468(JP,A)
【文献】特開2005-174713(JP,A)
【文献】特開2014-007214(JP,A)
【文献】特開2009-088503(JP,A)
【文献】特開2012-001433(JP,A)
【文献】特表2006-516046(JP,A)
【文献】特開2010-170969(JP,A)
【文献】特開2012-039036(JP,A)
【文献】特開2007-112710(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169506(WO,A1)
【文献】米国特許第06538192(US,B1)
【文献】特開2016-052990(JP,A)
【文献】国際公開第2013/162030(WO,A1)
【文献】特開平10-218642(JP,A)
【文献】特開2003-119048(JP,A)
【文献】国際公開第2017/089196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
C03C 17/25
C03C 17/28-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池用カバーガラスと太陽電池セルを有し、
前記太陽電池用カバーガラスが、前記太陽電池セルの一方面又は他方面の少なくとも一つの受光面に封止材を介して貼着され、
前記太陽電池用カバーガラスは、JIS R 3106:1998に従い算出される波長380nm~780nmの可視光透過率が0%~60%であり、かつ、波長780nm~1,500nmの赤外光領域において、5nm刻みの透過率を単純平均して算出した値を赤外平均透過率としたときに、前記赤外平均透過率が20%~100%であり、
前記太陽電池用カバーガラスは、ガラス板と塗膜とを有し、前記塗膜は、前記ガラス板全体を被覆し、有機顔料、染料及び無機顔料からなる群から選択された少なくとも1種を含む塗料が塗布されてなる、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記太陽電池用カバーガラスは、反射光の主波長が380nm~780nm、又は補色主波長が490nm~570nmであり、刺激純度が1%~100%である、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記太陽電池用カバーガラスは、反射光のL*a*b*表色系におけるL*値が5~100であり、a*値が-60~60であり、b*値が-60~60である、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記ガラス板の板厚に対する前記塗膜の膜厚の比が0.001~1.0である、請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記ガラス板の屈折率が1.40~1.90であり、前記塗膜の屈折率が1.30~1.80である、請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池用カバーガラスは、波長780nm~1,500nmの赤外光の散乱能を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記太陽電池セルの発電ピークが、波長780nm~1,500nmの赤外光領域にある、請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記太陽電池モジュールの発電ピークが、波長780nm~1,500nmの赤外光領域にある、請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
記太陽電池セルが単結晶シリコン、多結晶シリコン、GaAs、CIS、CIGS、CdTe、InP、Zn3P2、又はCu2Sである、請求項1から8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用カバーガラス及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネビルの需要が高まっており、ビルの屋上又は屋根に太陽電池アレイを設置する事例が増えている。特にゼロエミッションビルディングにおいては発電量の確保が重要となるが、高層になるに従って消費エネルギーが増える一方、屋上の面積が変わらないことから、屋上又は屋根の他、壁面又は窓にも太陽電池アレイを設置する検討が行われている。
【0003】
太陽電池アレイは、複数枚のパネル状の太陽電池モジュールを平面的に配列し、直並列に接続することにより構成される。
【0004】
太陽電池モジュールの一例として、特許文献1には、カバーガラスを有する太陽電池モジュールが開示されている。この太陽電池モジュールは、太陽電池サーキット(太陽電池セルに相当)に、エチレンビニルアセテート樹脂フィルム(封止材に相当)を介してカバーガラスを貼着することにより構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、太陽電池モジュールに装飾表示を付与することを目的として、太陽電池モジュールのカバーガラスの基体表面に、文字、図柄等の装飾デザインを色彩印刷した太陽電池モジュールが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、太陽電池モジュールに色彩効果を付与することを目的として、太陽電池モジュールのカバーガラスに、ドット、ストライプ、チェック形状、又は図柄、模様状の色彩との組み合わせからなる表示パターンを印刷施工してなるグラフィック太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本特開2007-123725号公報
【文献】日本特開2012-84820号公報
【文献】日本特開2012-33843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の太陽電池モジュールは、カバーガラスが透明で意匠性が無いものなので、太陽電池セルがカバーガラスを介して見えてしまう。したがって、透明で意匠性の無いカバーガラスを有する太陽電池モジュールでは、ビルの壁面の意匠性が低くなり、かつ画一的なデザインにならざるを得ないという欠点があった。
【0009】
一方、特許文献2、3の太陽電池モジュールは、カバーガラスの一部に装飾デザイン又は表示パターンを印刷することによって意匠性を持たせている。しかしながら、特許文献2、3の太陽電池モジュールは、カバーガラスの全体に装飾デザイン又は表示パターンを印刷することにより太陽電池セルを外部から見せないようにした場合には、つまり、カバーガラスの全体に意匠性を持たせた場合には、太陽電池モジュールの発電効率が激減するという欠点があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カバーガラスの全体に意匠性を持たせて太陽電池セルを外部から見せないようにした場合でも、太陽電池モジュールの発電効率を十分に確保することができる太陽電池用カバーガラス及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、太陽電池セルの受光面に封止材を介して貼着される太陽電池用カバーガラスにおいて、可視光透過率が0%~60%であり、かつ波長780nm~1,500nmの赤外光領域において、5nm刻みの透過率を単純平均して算出した値を赤外平均透過率としたときに、赤外平均透過率が20%~100%である太陽電池用カバーガラスを提供する。
上記した数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「~」は、同様の意味をもって使用される。
【0012】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、反射光の主波長が380nm~780nm、又は補色主波長が490nm~570nmであり、刺激純度が1%~100%であることが好ましい。
【0013】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、反射光のL*a*b*表色系におけるL*値が5~100であり、a*値が-60~60であり、b*値が-60~60であることが好ましい。
【0014】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Zn、Bi、Er、Tm、Nd、Sm、Sn、Ce、Pr、Eu、Ag及びAuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、ガラス板と塗膜とを有し、ガラス板の表面、裏面、又はその両方に、有機顔料、染料、及び無機顔料からなる群から選択された少なくとも1種を含む塗料が塗布されてなることが好ましい。
【0016】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、ガラス板と塗膜とを有し、ガラス板の板厚に対する塗膜の膜厚の比が0.001~1.0であることが好ましい。
【0017】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、ガラス板と塗膜とを有し、ガラス板の屈折率が1.40~1.90であり、塗膜の屈折率が1.30~1.80であることが好ましい。
【0018】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、波長780nm~1,500nmの赤外光の散乱能を有することが好ましい。
【0019】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、結晶化ガラスであることが好ましい。
【0020】
本発明の実施形態にかかる太陽電池用カバーガラスは、分相ガラスであることが好ましい。
【0021】
本発明は、本発明の課題を解決するために、本発明の太陽電池用カバーガラスが、太陽電池セルの一方面又は他方面の少なくとも一つの受光面に封止材を介して貼着されてなる、太陽電池モジュールを提供する。
【0022】
本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールは、太陽電池セルの発電ピークが、波長780nm~1500nmの赤外光領域にあることが好ましい。
【0023】
本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールの発電ピークは、波長780nm~1500nmの赤外光領域にあることが好ましい。
【0024】
本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールは、太陽電池セルが単結晶シリコン、多結晶シリコン、GaAs、CIS、CIGS、CdTe、InP、Zn3P2、又はCu2Sであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、カバーガラスの全体に意匠性を持たせて太陽電池セルを外部から見せないようにした場合でも、太陽電池モジュールの発電効率を十分に確保することができる太陽電池用カバーガラス及び太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールによって構成された太陽電池アレイを示す模式平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る太陽電池用カバーガラスを有する太陽電池モジュールを示す模式断面図である。
図3】地上での太陽光スペクトルと単結晶シリコンの太陽電池の分光感度曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1及び図2に従って本発明に係る太陽電池用カバーガラス及び太陽電池モジュールの好ましい実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る太陽電池モジュール(以下、「本太陽電池モジュール」とも称する。)によって構成された太陽電池アレイを示す模式平面図である。
図1において、太陽電池アレイ12は、複数枚の矩形状の太陽電池モジュール10を平面的に配列し、直並列に接続することにより構成される。このように構成された太陽電池アレイ12は、意匠性及び発電効率を具備するため、ビルの屋上又は屋根の他、例えば壁面又は窓に好適に設置される。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る太陽電池用カバーガラス(以下、「本カバーガラス」とも称する。)を有する太陽電池モジュールを示す模式断面図である。
図2において、太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル16の一方の受光面16Aにカバーガラス14が透明の封止材18を介して貼着され、かつ複数の太陽電池セル16の他方の受光面16Bにカバーガラス14が透明の封止材18を介して貼着されることにより構成されている。図2では、両面受光型の太陽電池セルである太陽電池セル16を用いた形態の太陽電池モジュール10を例示するが、これに限定されるものではなく、片面受光型の太陽電池セルを用いた形態の太陽電池モジュールであってもよい。片面受光型の太陽電池セルを用いた形態の太陽電池モジュールは、太陽電池セルの一方の受光面のみに本カバーガラスが封止材を介して貼着されることにより構成される。
【0030】
本カバーガラスは、特に以下の要件を備える。
すなわち、本カバーガラスは、波長380nm~780nmの可視光領域における可視光透過率が0%~60%であり、かつ波長780nm~1,500nmの赤外光領域において、5nm刻みの透過率を単純平均して算出した値を赤外平均透過率としたときに、赤外平均透過率が20%~100%である。
【0031】
本カバーガラスによれば、可視光透過率が60%以下であることにより、カバーガラスの全体に意匠性を持たせることができ、また、本太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルを外部から見せないようにすることができる。本カバーガラスの可視光透過率は、本カバーガラスの意匠性の点から、0%~50%であることが好ましく、0%~30%であることが特に好ましい。より詳細には、本カバーガラスの可視光透過率は、本カバーガラスの意匠性の点から、60.0%以下であることが好ましく、0%~50.0%であることがより好ましく、0%~30.0%であることが特に好ましい。
さらに、本カバーガラスは、赤外平均透過率が20%以上なので、太陽電池セルを有する本太陽電池モジュールの発電効率を十分に確保することができる。本カバーガラスの赤外平均透過率は、本太陽電池モジュールの発電効率の点から、40%~100%であることが好ましく、60%~100%であることが特に好ましい。より詳細には、本カバーガラスの赤外平均透過率は、本太陽電池モジュールの発電効率の点から、20.0%以上であることが好ましく、40.0%~100%であることがより好ましく、60.0%~100%であることが特に好ましい。
【0032】
したがって、本カバーガラス、及び本カバーガラス並びに太陽電池セルを有する本太陽電池モジュールよれば、カバーガラスの全体に意匠性を持たせて太陽電池セルを外部から見せないようにした場合でも、太陽電池モジュールの発電効率を十分に確保することができる。
【0033】
以下、本カバーガラスの可視光透過率及び赤外平均透過率の算出方法の一例を説明する。
【0034】
まず、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 製品名:U-4100)を用いて、波長200nm~1,500nmの範囲において、5nm刻みで、1,200nm/minのスキャン速度でカバーガラスの全光透過率を測定する。
【0035】
測定に際し、サンプルであるカバーガラスは積分球の受光部に面が接触するように設置し、塗料が塗布されているサンプルについては、ガラス板の面側から光が入射するように設定する。
【0036】
可視域スリット幅は8mm、光源切り替え波長は340.0nm、Pbs感度は2、検知器切り替え波長は850.0nmとする。
【0037】
そして、A光源を用いた可視光透過率をJIS R 3106:1998に従い算出する。また、波長780nm~1,500nmの赤外光領域において、5nm刻みの透過率を単純平均することにより赤外平均透過率を算出する。以上により、可視光透過率及び赤外平均透過率を算出できる。
【0038】
本カバーガラスにおける可視光透過率及び赤外平均透過率は、カバーガラスの面内で均一であってもよく、分布があってもよい。
【0039】
本カバーガラスは、反射光の主波長が380nm~780nm、又は補色主波長が490nm~570nmであり、刺激純度が1%~100%であることが好ましい。
【0040】
また、本カバーガラスとしては、本カバーガラスの意匠性の点から、反射光の主波長又は補色主波長、及び刺激純度が以下の組み合わせであるカバーガラスが好ましい。
・反射光の主波長が380nm~780nm又は補色主波長が490nm~570nmであり、刺激純度が1%~30%であるカバーガラス。
・反射光の主波長が380nm~490nmであり、刺激純度が30%~100%であるカバーガラス。
・反射光の主波長が590nm~780nmであり、刺激純度が30%~100%であるカバーガラス。
・反射光の主波長が550nm~590nmであり、刺激純度が30%~100%であるカバーガラス。
【0041】
本カバーガラスにおける反射光の主波長、補色主波長、及び刺激純度は、JIS Z 8701:1999に従い算出される。
本カバーガラスは、カバーガラスの色を上記のJIS Z 8701:1999に従った色の表示方法により表示される色とすることにより、全体に意匠性を持たせた非透明のカバーガラスとして構成することができる。これにより、本カバーガラスを、太陽電池セルを有する太陽電池モジュールに用いれば、太陽電池セルを外部から見せないようにすることができる。なお、本カバーガラスの色は、主波長又は補色主波長のいずれかにより規定することができ、特に紫系の色は補色主波長により規定することができる。
【0042】
本カバーガラスにおける反射光の主波長、補色主波長、及び刺激純度は、本カバーガラスに付与する意匠性に応じて、カバーガラスの面内で均一であってもよく、分布があってもよい。
【0043】
本カバーガラスは、意匠性の点から、反射光のL*a*b*表色系におけるL*値が5~100であり、a*値が-60~60であり、b*値が-60~60であることが好ましい。
【0044】
本カバーガラスを、太陽電池セルを有する太陽電池モジュールに用いれば、反射光のL*、a*、b*値を上記の如く設定することにより、非透明のカバーガラスとして構成することができるので、太陽電池セルを外部から見せないようにすることができる。
【0045】
本カバーガラスにおける反射光のL*、a*、b*値は、本カバーガラスに付与する意匠性に応じて、カバーガラスの面内で均一であってもよく、分布があってもよい。
【0046】
本カバーガラスは、本太陽電池モジュールにおける発電量及び発電効率の点から、波長780nm~1,500nmの赤外光の散乱能を有することが好ましい。
【0047】
本カバーガラスによれば、太陽光の入射角度による太陽電池セルの発電量の変化の抑制及び太陽光が発電パネルを通過する太陽光の光路長が長くなることによる発電効率の改善が期待できる。
本カバーガラスの表面は、本カバーガラスに散乱能を付与するために、凹凸処理されていてもよい。凹凸処理方法としては、ガラス板をフッ酸等によりエッチング処理する方法、ガラス板表面を研磨する方法、ガラス板又は塗膜表面にスプレーコーティング法等によりさらに凹凸を有する層を形成する方法等が挙げられる。
【0048】
本カバーガラスが赤外光の散乱能を有するとは、例えば本カバーガラスの赤外平均拡散透過率が5%~100%であると規定される。本カバーガラスにおける赤外平均拡散透過率は、20%~100%が好ましく、20%~65%がより好ましく、20%~60%がさらに好ましく、45~60%が特に好ましい。本カバーガラスにおける赤外平均拡散透過率が5%以上であると、太陽光が発電パネルを通過する太陽光の光路長が長くなり、太陽電池モジュールの発電効率が高くなる。本カバーガラスにおける赤外平均拡散透過率が100%以下であると、太陽電池セルへの入射角が小さすぎる光を抑制でき、太陽電池モジュールの発電効率が高くなる。
【0049】
以下、本カバーガラスの赤外平均拡散透過率の算出方法の一例を説明する。
【0050】
まず、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 製品名:U-4100)を用いて、波長200nm~1,500nmの範囲を5nm刻みで、1,200nm/minのスキャン速度でカバーガラスの直線透過率を測定する。
【0051】
サンプルであるカバーガラスを、面が積分球の受光部から340mm離して設置し、塗料が塗布されているサンプルについては、ガラス板の面側から光が入射するように設定する。
【0052】
可視域スリット幅は8mm、光源切り替え波長は340.0nm、Pbs感度は2、検知器切り替え波長は850.0nmとする。
【0053】
得られた直線透過率から各波長の透過率の単純平均をとって、波長780nm~1,500nmにおける赤外平均直線透過率を計算し、波長780nm~1,500nmにおける赤外平均透過率から、波長780nm~1,500nmにおける赤外平均直線透過率を減算した結果を、波長780nm~1,500nmにおける赤外平均拡散透過率とする。
【0054】
また、本カバーガラスは、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、可視光反射率が5%~100%であることが好ましい。可視光反射率が5%以上であれば、太陽電池セルの上にカバーガラスがあってもカバーガラスの色を視認することができる。また、可視光反射率が100%以下であれば、ぎらつきを抑えることができる。可視光反射率は5%~80%が好ましく、20%~80%がさらに好ましい。
【0055】
以下、本カバーガラスの可視光反射率の算出方法の一例を説明する。
【0056】
まず、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 製品名:U-4100)を用いて、波長200nm~1,500nmの範囲を5nm刻みで、1,200nm/minのスキャン速度でカバーガラスの全光透過率を測定する。
【0057】
サンプルであるカバーガラスは、積分球の受光部に面を接触させるように設置し、塗料が塗布されているサンプルについては、ガラス板の面側から光が入射するように設定する。
【0058】
光源切り替えは自動、切り替え波長は340.0nm、スリットは固定8nm、サンプリング間隔は5nmとする。
【0059】
また、近赤外においては検知器切り替え補正なし、検知器切り替え波長850.0nm、スキャンスピード750nm/min、スリットは自動制御、Pbs感度は2、光量制御モード固定とする。そして、可視光反射率をJIS R 3106:1985に従い算出する。以上により、可視光反射率を算出できる。
【0060】
本カバーガラスは、ガラス板のみからなってもよく、ガラス板と、ガラス板の表面、裏面又はその両方に塗料が塗布されてなる塗膜(以下、単に「塗膜」ともいう。)とを有してもよい。本発明のカバーガラスが、ガラス板と塗膜とを有するカバーガラスである場合、上記塗膜は、ガラス板の全体を被覆していてもよく、一部のみを被覆していてもよいが、意匠性の観点からは、ガラス板の全体を被覆していることが好ましい。
【0061】
本カバーガラスにおけるガラス板に用いられるガラスの種類は、特に限定されないが、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラス又はアルミノシリケートガラス等が挙げられる。
【0062】
また、本カバーガラスにおけるガラス板に用いられるガラスは、結晶化ガラスであることが好ましい。この場合、本カバーガラスは、結晶化ガラスからなることが好ましい。
【0063】
本カバーガラスによれば、ガラス中に結晶を有する結晶化ガラスをガラス板として用いることで、ガラス中の微細構造によりガラス中を透過する光を拡散し透過率を低くすることができる。これにより、本カバーガラスの全体に意匠性を持たせて、太陽電池セルを有する本太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルを外部から見せないようにすることができる。結晶化ガラスは、数nmから数μm大の結晶相がガラスマトリックス中に分布しており、母体ガラスの組成を選択したり、製造条件、熱処理条件を制御したりすることで、析出する結晶の種類や大きさを変えることができ、これによって、所望の非透明のカバーガラスを得ることができる。また、母体ガラス中に析出する結晶相の量及び大きさ、研磨処理条件やコート処理による表面凹凸の有無により、可視光透過率及び赤外平均透過率を調整することができる。結晶相の量が増加したり、結晶相が大きくなると可視光透過率が減少する傾向があり、また表面凹凸が多い場合も可視光透過率が減少する傾向がある。
【0064】
また、本カバーガラスにおけるガラス板に用いられるガラスは、分相ガラスであることが好ましい。この場合、本カバーガラスは、分相ガラスからなることが好ましい。
【0065】
本発明のカバーガラスによれば、ガラス中に分相を生じさせた分相ガラスをガラス板として用いることで、ガラス中の微細構造によりガラス中を透過する光を拡散し可視光透過率を低くすることができる。これにより、本カバーガラスの全体に意匠性を持たせて、太陽電池セルを有する本太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルを外部から見せないようにすることができる。分相ガラスは、組成の異なる2つ以上のガラス相が分布する。2つの相が連続的に分布するスピノーダルと1つの相がマトリクス中に粒子状に分布するバイノーダルがあり、それぞれの相は1μm以下の大きさである。分相ガラスによれば、適当な分相領域を求める組成制御と分相処理を行う熱処理条件とによって、所望の非透明のカバーガラスを得ることができる。また、分相ガラスを用いることにより、ガラス組成の違いによる模様を施すことができ、意匠性を高くすることができる。
【0066】
分相ガラスは、それぞれの相の比率を変えることにより、可視光透過率及び赤外平均透過率を調整することができる。例えば、Cr、Co、Mnを増やした組成のガラスの比率を高くすることにより、赤外平均透過率を下げることなく、可視光透過率を下げることができる。
【0067】
本発明におけるガラス板は、強化処理が施されていないガラス板と比較して割れ難くなる点から、化学強化又は物理強化などの処理がされたガラス板(以下、強化ガラス板ともいう。)であってもよい。強化ガラス板は、残留圧縮応力を有する表面層及び裏面層、並びに表面層と裏面層との間に形成され、残留引張応力を有する中間層を有する。
【0068】
強化ガラス板の端面には、表面層及び裏面層に連続して残留圧縮応力を有する層が存在していてもよい。強化ガラス板の端面に残留圧縮応力を有する層が存在することにより、強化ガラス板が衝撃に対して割れ難くなるので好ましい。なお、強化ガラス板の端面は、残留圧縮応力を有する層で覆われておらず、強化ガラス板の端面に中間層の端面が露出していてもよい。その場合は、樹脂などのカバー材料で端面を覆うことが好ましい。
【0069】
強化ガラス板の強化処理は、公知のイオン交換法等の化学強化処理、又は公知の風冷強化法等の物理強化処理のいずれでもよい。化学強化処理であれば、板厚が小さい強化ガラス(1mm程度)であっても、表面層又は裏面層の残留圧縮応力の値を大きくできるので、強化ガラス板において十分な強度を確保することができる。例えば、表面層及び裏面層の残留圧縮応力の値は、300MPa以上であることが好ましく、400MPa以上であることがより好ましい。化学強化処理された強化ガラス板の場合、表面層及び裏面層の厚さは、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
【0070】
本発明におけるガラス板が、強化ガラス板である場合、化学強化しやすい点から、酸化物基準の質量%でAlを3%以上含有するアルミノシリケートガラスが化学強化処理されてなる強化ガラス板であることが好ましい。
【0071】
また、本発明におけるガラス板は、公知の方法で表面処理されたガラス板であってもよい。
特に、本カバーガラスが、ガラス板と塗膜とを有するカバーガラスである場合、ガラス板が表面処理されていると、ガラス板と塗膜との接着性が向上する。
【0072】
本カバーガラスは、ガラス板に含まれる元素により全体が着色されていることが好ましい。
本カバーガラスによれば、好ましくはカバーガラスのガラス板に含まれる元素によってカバーガラスの全体が意匠性を有する濃色に着色されており、その色によって太陽電池セル16を外部から見せないようにすることができる。着色成分の元素としては、例えばCo、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Zn、Bi、Er、Tm、Nd、Sm、Sn、Ce、Pr及びEuからなる群から選択された少なくとも1種を挙げることができる。また、ガラス板は、Ag又はAuを含んでいてもよい。着色成分の元素により、カバーガラスが特定の波長で吸収を持つので、これらの元素の量や比率を適宜調整することにより、可視光透過率及び赤外平均透過率を調整することができる。例えば、Cr、Co、Mnを増やすことにより、赤外平均透過率を下げることなく、可視光透過率を下げることができる。
【0073】
また、本カバーガラスが、ガラス板と塗膜とを有するカバーガラスである場合は、本カバーガラスは、上記塗膜により着色されていることが好ましい。この場合、上記塗膜によって本カバーガラスの全体が意匠性を有する色に着色されており、その色によって太陽電池セルを外部から見せないようにすることができる。
上記塗料は、ガラス板に塗布することで塗膜を形成し、着色された本カバーガラスを製造できる塗料であればよく、公知の塗料を使用できる。上記塗料は、有機顔料、染料、及び無機顔料からなる群から選択された少なくとも1種を含む塗料であることが好ましい。
【0074】
上記塗料としては、例えば、アクリル樹脂系塗料、メラミン樹脂系塗料又はエポキシ樹脂系塗料が挙げられる。なかでも、アクリル樹脂系塗料は、付着力が大きく、耐候性、耐食性にも優れ、更に仕上げが美麗である点で好ましい。また、着色顔料も様々な色であってよい。
【0075】
上記塗料としては、適宜ポリエステル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、フッ素系塗料、シリコーン系塗料を使用してもよい。また、ガラスフリットが溶媒中に分散しているガラスフリット分散液を塗料として使用してもよい。
【0076】
塗料の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、スピンコート法、カーテンコート法を例示することができる。
【0077】
本カバーガラスにおいては、使用する塗料を変更することで、塗膜の色を調整することができるとともに、本カバーガラスの可視光透過率及び赤外平均透過率を調整することができる。特に、塗料は、着色成分として、上述した有機顔料、染料及び無機顔料からなる群から選択された少なくとも1種を含み、本発明のカバーガラスに付与したい色、可視光透過率及び赤外平均透過率を好適にするために、その種類や量を適宜調整できる。
【0078】
無機顔料としては、クロム、チタン及びアンチモンの複合酸化物(オレンジ色)、鉄、アルミニウム及びチタンの複合酸化物(オレンジ色)、ニッケル、チタン及びアンチモンの複合酸化物(黄色)、チタン、ニッケル及びバリウムの複合酸化物、クロム及び鉛の複合酸化物(黄色)、バナジウム及びビスマスの複合酸化物(黄色)、ニッケル、コバルト、亜鉛及びチタンの複合酸化物(緑色)、コバルト、亜鉛及びチタンの複合酸化物(緑色)、亜鉛、ニッケル及びチタンの複合酸化物(茶色)、マンガン、アンチモン及びチタンの複合酸化物(茶色)、アルミニウム及びコバルトの複合酸化物(青色)、コバルト、鉄及びクロムの複合酸化物(黒色)、酸化鉄(赤色)、リン酸コバルトリチウム(紫色)等が挙げられる。無機顔料は、無機化合物又は有機化合物で表面処理されていてもよい。
有機顔料としては、アゾ顔料、多環顔料等が挙げられ、具体的には、オキサジン顔料(紫色)、フタロシアニン顔料(茶色)、ベンズイミダゾロン顔料(茶色)、ベンズイミダゾロン顔料(茶色)、イソインドリノン顔料(黄色)、キナクドリン顔料(赤色)等が挙げられる。
染料としては、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン、ピラゾロンメチン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等が挙げられる。
上記着色成分は、二種以上を含んでいてもよい。
【0079】
塗料の全質量に対する上記着色成分の含有割合、及び塗膜の全質量に対する上記着色成分の含有割合は、特に限定されず、使用する着色成分の種類に応じて、本発明の意匠性が高くなるように適宜設定できる。
【0080】
本カバーガラスが、ガラス板と塗膜を有するカバーガラスである場合、ガラス板の板厚に対する塗膜の膜厚の比(膜厚/板厚)は、0.001~1.0が好ましく、0.005~0.500がより好ましく、0.010~0.020が特に好ましい。この範囲であれば、本カバーガラスにおける可視光透過率及び赤外平均透過率を特に好適に調整できる。
【0081】
本カバーガラスが、ガラス板と塗膜を有するカバーガラスである場合の塗膜の膜厚は、5μm~2,000μmが好ましく、10μm~1,000μmがより好ましく、20μm~100μmが特に好ましい。また、本カバーガラスが、ガラス板と塗膜を有するカバーガラスである場合のガラス板の板厚は、0.7mm~9.7mmが好ましく、2.0mm~6.0mmが特に好ましい。この範囲であれば、本太陽電池モジュールにおける意匠性と発電効率とのバランスの点で優れる。
【0082】
本カバーガラスが、ガラス板と塗膜とを有するカバーガラスである場合、塗膜の屈折率は、1.30~1.80であることが好ましく、1.40~1.65であることが特に好ましい。上記塗膜の屈折率は、塗膜中に有機顔料、染料及び無機顔料からなる群から選択された少なくとも1種を含ませることによって適宜調整できる。また、上記範囲の屈折率を有する塗膜を形成できる塗料を選択することによっても調整できる。この場合、塗料としては、フッ素系塗料、シリコーン系塗料、又はガラスフリットが溶媒中に分散しているガラスフリット分散液の使用が好適である。
また、本発明におけるガラス板の屈折率は、1.40~1.90であり、1.45~1.60であることが好ましい。この場合のガラス板としては、ソーダライムガラスが好適である。
ガラス板と塗膜との屈折率の差が小さくなるほど、本太陽電池モジュールの発電効率が優れ、ガラス板と塗膜との屈折率の差が大きくなるほど、本太陽電池モジュールの意匠性が優れる。従って、本太陽電池モジュールの発電効率及び意匠性のバランスの点から、ガラス板の屈折率が1.40~1.90であり、かつ前記塗膜の屈折率が1.30~1.80であることが好ましく、ガラス板の屈折率が1.45~1.60であり、かつ前記塗膜の屈折率が1.40~1.65であることがより好ましい。
ガラス板の屈折率は、精密屈析計(KPR-3000、製品名、SHIMADZU社製)を用い、Vブロック法により測定できる。
塗膜の屈折率は、反射分光膜厚計(FE-3000、製品名、大塚電子社製)を用いて測定できる。
【0083】
本カバーガラスは、公知の方法で製造される。すなわち、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法、又はロールアウト法等によりリボン状に成形されたガラス板を矩形状に切断することにより製造される。本カバーガラスが、強化処理又は表面処理されたガラス板を用いる場合、ガラス板の強化処理及び表面処理は、任意のタイミングで施されればよい。また、本カバーガラスが、ガラス板と塗膜とを有するカバーガラスである場合には、任意のタイミング及び公知の塗布方法でガラス板に塗料が塗布され、必要に応じて乾燥や加熱、焼結等を施されて、塗膜が形成されればよい。
【0084】
本カバーガラスは、厚さが1mm~10mmであることが好ましい。厚さが1mm以上であれば、耐久性が高く、割れにくい。厚さは、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、4mm以上が特に好ましい。また、厚さが10mm以下であれば、軽量である。厚さは、8mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。
本カバーガラスの厚さは、本カバーガラスがガラス板からなる場合にはガラス板の板厚であり、本カバーガラスがガラス板と塗膜とからなる場合には、ガラス板の板厚と塗膜の膜厚との合計である。
【0085】
本発明における封止材は、太陽電池セルを封止する役割を果たす。封止材の材質及び厚みは、封止材のガスバリア製が好適となるように、また封止材が封止する太陽電池セルの凹凸に追従できるように、公知の材料及び任意の厚みから適宜選択できる。
【0086】
本太陽電池モジュールが有する太陽電池セルは、その発電ピークが、波長780nm~1,500nmの赤外領域にあることが好ましい。また、本太陽電池モジュールは、その発電ピークが、波長780nm~1,500nmの赤外領域にあることが好ましい。発電ピークが上記波長範囲にあるとは、発電ピークのピークトップが上記波長範囲に少なくとも一つ存在することを意味する。
【0087】
図3は、地上での太陽光スペクトル(日射エネルギー)と単結晶シリコンの太陽電池の分光感度曲線を示したグラフである。
【0088】
図3から明らかなように、波長780nmより波長の長い領域、例えば波長1,500nm以下の領域(不図示)で、単結晶シリコンの太陽電池が高い感度を有することが分かる。これは通常の透明カバーガラスと比較して、長波長領域で高い透過率を示す本カバーガラスが単結晶シリコン太陽電池の発電効率に及ぼす影響が大きいことを意味している。
【0089】
すなわち、波長780nm~1,500nmの赤外光領域における赤外平均透過率が20%~100%である本カバーガラスを有する太陽電池モジュールによれば、発電効率を十分に確保することができる。
【0090】
なお、本発明における太陽電池セルとしては、単結晶シリコンの他、多結晶シリコン、GaAs、CIS、CIGS、CdTe、InP、Zn3P2又はCu2S等の赤外領域に感度を持つ材料を適用することができる。
【0091】
本発明における太陽電池セルとしては、CIGSが好ましい。本カバーガラスを使用する場合、透明無色のカバーガラスを用いた場合と比較して、太陽電池モジュールの温度が高くなりやすい。したがって、温度が高い場合でも発電効率の落ちにくいCIGSを用いれば、耐久性により優れた太陽電池モジュールが得られる。
【0092】
本発明の太陽電池モジュールは、バックガラス又はバックシートを有していてもよく、バックガラスを有するのが特に好ましい。バックガラス及びバックシートは、太陽電池モジュールの強度及び耐光性を向上させるために、片面受光型の太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルの受光面とは逆側に配されて用いられる。バックガラス又はバックシートとしては、任意の有機材料又は無機材料を用いることができ、具体的には、ガラス板又は樹脂成型物が挙げられ、それらの少なくとも一方の面上にさらに別の層を有していてもよい。
【0093】
上記バックガラスにおけるガラス板としては、上述した本発明におけるガラス板と同様の材料が挙げられる。上記バックシートにおける樹脂成型物としては、板状、フィルム状等に成形された樹脂(フッ素系樹脂、アルキッド系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、変性ポリエステル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、シリコーン系樹脂等)が挙げられる。
バックガラス及びバックシートは、本発明の太陽電池モジュールの意匠性及び発電効率の点から、全光線透過率が低いことが好ましく、具体的には0%~30%であることが好ましい。
【0094】
本太陽電池モジュールにおける、太陽電池セルと、バックガラス又はバックシートとの*L値の差の絶対値*Lbは、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。*Lbは、顔料等を含むバックガラス又はバックシートを用いるか、顔料等を含む層を有するバックガラス又はバックシートを用いることによって適宜調節できる。
【0095】
本太陽電池モジュールは、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、太陽電池セル間の配線を有さないか、有する場合には配線が黒もしくは太陽電池セルと同色であるのが好ましい。この場合、配線の着色は、公知の方法で施されればよい。
【0096】
以下、実施例と比較例とを表1~6を参照して示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0097】
例1~38及び例41~55は実施例の太陽電池モジュール用カバーガラスであり、例39、40は比較例の太陽電池モジュール用カバーガラスである。
【0098】
例1~26の太陽電池モジュール用カバーガラスは、着色成分の元素が含有された分相ガラス板からなるカバーガラスである。例27~34の太陽電池モジュール用カバーガラスは、着色成分の元素が含有されたガラス板からなるカバーガラスである。例35、36の太陽電池モジュールのカバーガラスは、ソーダライムガラス板の一方の面上に有機顔料を含む塗料を塗布してなる塗膜を有するカバーガラスである(表4中、着色源を「有機塗料」と記載)。例37の太陽電池モジュール用カバーガラスは、ソーダライムガラス板の一方の面上に無機顔料を含む塗料を塗布してなる塗膜を有するカバーガラスである(表2中、着色源を「無機塗料」と記載)。例38の太陽電池モジュールのカバーガラスは、結晶化ガラス板からなるカバーガラスである。
【0099】
例39の太陽電池モジュール用カバーガラスは、ソーダライムガラス板からなり、着色成分の元素は含有されておらず、結晶化ガラスでも分相ガラスでもなく、また、ガラス板の表面に塗料は塗布されていない。例40の太陽電池モジュール用カバーガラスは、例39のカバーガラスの表面にAlをコーティングし、鏡としたものである。
【0100】
例41~55の太陽電池モジュール用カバーガラスは、ソーダライムガラス板の一方の面上に、無機顔料を含む塗料を塗布してなる塗膜を有するカバーガラスであり(表5中、着色源を「無機塗料」と記載)、無機顔料には表5及び表6に記載の顔料を使用している。塗料としては、例41~53にはフッ素系塗料を、例54にはシリコーン系塗料を、例55にはガラスフリット分散液を使用している。例41~55におけるガラス板の屈折率はいずれも1.52であり、塗膜の屈折率はいずれも1.40~1.65である。
なお、塗膜の膜厚は、渦電流式膜厚計(商品名「EDY-5000」、サンコウ電子社製)を用いて測定した値であり、ガラス板の板厚は、厚み計(マイクロメーター)を用いて測定した値である。
【0101】
また、例1~26のカバーガラスにおけるガラス板は化学強化されており、例35~37のカバーガラスにおけるガラス板は物理強化されている。
【0102】
例1~55のカバーガラスにおける、可視光透過率、赤外平均透過率、可視光反射率、赤外平均拡散透過率、主波長、補色主波長、刺激純度、L*、a*、b*、ガラス板の板厚及び塗膜の膜厚は、それぞれ上記した方法により求めた。
【0103】
また、カバーガラスを備えていない単結晶シリコンセルの発電効率を100%としたときの、例1~55のカバーガラスを太陽電池モジュールとして用いる場合の発電効率は、次のようにして求めた。
【0104】
単結晶シリコンの可視光領域(380nm~780nm)と、赤外光領域(780nm~1,500nm)の発電寄与度をそれぞれ30%、70%として可視光透過率及び赤外平均透過率を乗算したものを合計し、カバーガラスを備えていない単結晶シリコンセルに対する発電効率を算出した。
【0105】
結果を表1~6に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
例1~38及び例41~55の太陽電池モジュール用カバーガラスは、可視光透過率が0%~60%、かつ波長780nm~1,500nmの赤外光領域における赤外平均透過率が20%~100%であったので、カバーガラスの全体に意匠性を持たせて太陽電池セルを外部から見せないようにした場合でも、太陽電池モジュールの発電効率を十分に確保することができる。
【0113】
例39の太陽電池モジュール用カバーガラスは、着色成分の元素を含有しておらず、結晶化ガラスでも分相ガラスでもなく、表面に塗料が塗布されていないため、可視光透過率が60%超であった。このため、例39のカバーガラスを用いた太陽電池モジュールでは、カバーガラスを介して太陽電池セルが見えてしまい意匠性がなかった。
【0114】
例40の太陽電池モジュール用カバーガラスは、赤外平均透過率が0%であり、20%未満であった。このため、例40のカバーガラスを用いた太陽電池モジュールでは、発電させることができなかった。
なお、2017年5月23日に出願された日本特許出願2017-101857号の明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0115】
10…太陽電池モジュール、12…太陽電池アレイ、14…太陽電池用カバーガラス、16…太陽電池セル、18…封止材
図1
図2
図3