(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】錯化剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 227/26 20060101AFI20220627BHJP
C07C 229/16 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C07C227/26
C07C229/16
(21)【出願番号】P 2020500137
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2018066239
(87)【国際公開番号】W WO2019002022
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,トマス
(72)【発明者】
【氏名】シュタム,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】レイノソ ガルシア,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】モルムル,フェレナ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ミヒャエル クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】イェケル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】マンニング,ジェレミー ティー
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-325215(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102483(WO,A1)
【文献】特表2008-540375(JP,A)
【文献】国際公開第2016/180664(WO,A1)
【文献】特表2012-527506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錯化剤の製造方法であって、以下の工程、
(a) 一般式(Ia)又は(Ib)
【化1】
(式中、Mはアルカリ金属及び水素及びそれらの組み合わせから選択される)
によるニトリルを提供する工程、
(b) 一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ量が2.5~2.9モルのアルカリ金属水酸化物で鹸化する工程であって、工程(b)の終わりにpH値が9.5~11.5の範囲である工程、
(c) 一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ含量が2.9~3.15モルになるようにアルカリ金属水酸化物の量を添加する工程であって、ニトリル1モルあたり合計2.9モルのアルカリ金属水酸化物を用いる場合、工程(b)それぞれにおけるアルカリ量が2.5~2.9モル未満の範囲にある工程、及び
(d)さらに変換させる工程、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(d)における変換が中和又は鹸化である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(Ib)によるニトリルが、ラセミ混合物及び鏡像異性的に純粋なL-(Ib)及びL-異性体が優勢である(Ib)の鏡像異性体の混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)における鹸化を25~200℃の範囲の温度で実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属水酸化物が、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)によるアルカリ金属水酸化物の添加を25~100℃の範囲の温度で行う、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)において、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ含量が2.9~3.0モルになるように、アルカリ金属水酸化物の量を添加する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)及び(d)の間でアンモニアを除去する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、得られた錯化剤を噴霧乾燥又は噴霧造粒する追加の工程(e)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錯化剤の製造方法に関し、以下の工程、
(a) 一般式(Ia)又は(Ib)
【化1】
(式中、Mはアルカリ金属及び水素及びそれらの組み合わせから選択される)
によるニトリルを提供する工程、
(b) 一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ量が2.5~2.9モルのアルカリ金属水酸化物で鹸化する工程であって、工程(b)の終わりにpH値が9.5~11.5の範囲である工程、
(c) 一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ含量が2.9~3.15モルになるようにアルカリ金属水酸化物の量を添加する工程であって、ニトリル1モルあたり合計2.9モルのアルカリ金属水酸化物を用いる場合、工程(b)それぞれにおけるアルカリ量が2.5~2.9モル未満の範囲にある工程、及び
(d)さらに変換させる工程、
を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キレート剤、例えば、限定するものではないが、メチルグリシン二酢酸(MGDA)及びそのそれぞれのアルカリ金属塩は、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属イオンに対しての、及び例えば、限定するものではないが、Fe(+II)/Fe(+III)などの遷移金属の、有用な金属イオン封鎖剤(キレート剤)である。そのため、洗濯洗剤などの様々な目的に、及び自動食器洗浄機(ADW)用配合物、特にいわゆる無リン酸塩洗濯洗剤及び無リン酸塩ADW配合物に、推奨され、使用されている。
【0003】
MGDA及び他のキレート剤は、ホルムアルデヒド及びシアン化水素酸又はアルカリ金属シアン化物を用いたアミノ酸のアルキル化、それに続くアルカリ金属水酸化物を用いた鹸化によって作製され得る。完全な鹸化を確実にするために、化学量論量のアルカリ金属水酸化物又は過剰のアルカリ金属水酸化物が適用される(例えば、US76714234参照)。他の方法では、MGDAは、トリニトリルの形成下でアセトアルデヒドにNH(CH2CN)2及びシアン化水素酸を添加し、それに続く加水分解によって作製される(例えば、US7754911参照)。
【0004】
鹸化を316鋼などのステンレス鋼製の反応器で行う場合、腐食問題を低減するために、準化学量論量の塩基を使用することがWO2016/180664で提案されている。良好な錯化挙動を示すMGDA及びモノアミドの混合物が得られる。ただし、特定の条件下では、噴霧乾燥又は噴霧造粒のような方法による固化は、大きすぎる粒子(「オーバー(overs)」)が比較的高い占有率で生成されるので、経済的に好ましくない。そのようなオーバーを除去し、再利用する前にそれらオーバーを粉砕することは可能ではあるが、そのような占有率のオーバーは、経済的理由及びプロセス性能の理由から望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US76714234
【文献】US7754911
【文献】WO2016/180664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、目的は、優れた長期色安定性を有し、経済的な条件下で容易に固化し得る錯化剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、以下、本発明の方法とも称する冒頭に定義した方法が見出された。本発明の方法は、以下の工程、
(a) 一般式(Ia)又は(Ib)
【化2】
(式中、Mはアルカリ金属及び水素及びそれらの組み合わせから選択される)
によるニトリルを提供する工程、
(b) 一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ量が2.5~2.9モルのアルカリ金属水酸化物で鹸化する工程であって、工程(b)の終わりにpH値が9.5~11.5の範囲である工程、
(c) 一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ含量が2.9~3.15モルになるようにアルカリ金属水酸化物の量を添加する工程であって、ニトリル1モルあたり合計2.9モルのアルカリ金属水酸化物を用いる場合、工程(b)それぞれにおけるアルカリ量が2.5~2.9モル未満の範囲にある工程、及び
(d)さらに変換させる工程、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記工程は、以下、工程(a)、工程(b)、工程(c)及び工程(d)とも称する。それらを以下でより詳しく説明する。
【0009】
一般式(Ia)及び(Ib)によるニトリルは、それ自体既知である。ニトリル(Ia)は、NH(CH2CN)2及びシアン化水素酸をアセトアルデヒドと反応させることにより作製し得る。ニトリル(Ia)は通常、ラセミ体である。
【0010】
ニトリル(Ib)は、2当量のHCN及びホルムアルデヒドそれぞれを用いた、いわゆる二重ストレッカー合成でアラニンを変換することにより有利に作製され得る。ニトリル(Ib)は、ラセミ体又はL-異性体、又はL-異性体が主である(例えば50~99.5%がL-鏡像異性体である)L-異性体及びD-異性体の任意の混合物であり得る。ラセミ混合物及び95~99.5%のL-鏡像異性体を含有する混合物が好ましい。ニトリル(Ib)は遊離酸として、又はアルカリで、例えばナトリウム又はカリウムで、完全に又は部分的に中和されて、提供され得る。
【0011】
工程(a)で、一般式(Ia)及び(Ib)によるニトリルをバルクで、又は溶液又はスラリーとして、例えば5~60質量%の範囲の濃度(又は固形分)で提供する。
【0012】
前記スラリー又は溶液は、好ましくは水性スラリー又は水溶液、好ましくは水溶液である。そのようなスラリー又は溶液は、それぞれ、5~60質量%、好ましくは30~50質量%の範囲の合計固形分を有し得る。「水性」という用語は、それぞれ連続相又は溶媒全体に対して、50~100体積%の範囲の水、好ましくは70~100体積%の水を含む連続相又は溶媒を指す。水以外の適した溶媒の例として、アルコール、例えば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール、さらには、ジオール、例えば、エチレングリコール、及びトリオール、例えば、グリセロールが挙げられる。
【0013】
工程(b)において、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリルを、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ量が2.5~2.9モルのアルカリ金属水酸化物で鹸化し、工程(b)の終わりにpH値は9.5~11.5である。pH値は周囲温度で決定し、工程(b)による鹸化の終わりの、さらなる希釈のないそのままのpH値を指す。工程(b)における前記アルカリ金属水酸化物の添加直後に、pH値は11.5より高く、例えば最大で14までである。アルカリ金属水酸化物の消費の過程で、pH値は低下する。
【0014】
本発明の一実施形態では、アルカリ金属水酸化物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、及び前述の少なくとも2種の組み合わせの水酸化物から選択される。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物が好ましく、水酸化ナトリウムがさらにより好ましい。
【0015】
工程(b)において、アルカリ金属水酸化物を、一般式(Ia)及び(Ib)それぞれによるニトリルにバルクで、又は好ましくは水溶液で添加する。アルカリ金属水酸化物の水溶液は、1質量%~65質量%の範囲の、好ましくは10~55質量%の濃度を有し得る。
【0016】
アルカリ金属水酸化物の水溶液は、例えば、限定するものではないが、アルカリ金属炭酸塩などの1種以上の不純物を含有し得る。例えば、水酸化ナトリウムの水溶液は0.01~1%の炭酸ナトリウムを含有し得る。
【0017】
工程(b)は、反応容器にアルカリ金属水酸化物の水溶液を入れ、次に、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによる化合物のスラリー又は溶液を1つ以上の部(portion)で添加することによって、開始し得る。別の実施形態では、前記接触は、反応容器にアルカリ金属水酸化物の水溶液の一部を入れ、次に、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによる化合物のスラリー又は溶液を1つ以上の部で添加し、アルカリ金属水酸化物の残りの溶液を連続して又は好ましくは並行して添加することによって、行われ得る。別の実施形態では、前記接触は、一般式(Ia)又は(Ib)による化合物の溶液又はスラリー及びアルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に組み合わせることによって、行われ得る。
【0018】
工程(b)においてアルカリ金属水酸化物の水溶液を2つの部で添加する実施形態では、第一の部は10~50モル%の必要なアルカリ金属水酸化物を含有し得、第二の部は残りの50~90モル%を含有し得る。
【0019】
工程(b)において一般式(Ia)又は(Ib)による化合物を2つの部で添加する実施形態では、第一の部は10~50モル%の必要な一般式(Ia)又は(Ib)による化合物を含有し得、第二の部は残りの50~90モル%を含有し得る。
【0020】
本発明の一実施形態では、工程(b)がその中で行われる反応容器は、工程(b)で形成される混合物に暴露される、ステンレス鋼から作製された少なくとも1種の部分又はステンレス鋼を含有する。ここでステンレス鋼とは、純粋なオーステナイト系ステンレス鋼、又はオーステナイト及びフェライト系ステンレス鋼の合金(「二相鋼」)を指す。
【0021】
工程(b)は、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり2.5~2.9の範囲のアルカリ金属水酸化物を用いて行う。工程(b)において、前記アルカリ金属水酸化物の量には、一般式(Ia)又は(Ib)によるニトリルの製造中に使用されたアルカリ金属水酸化物が含まれる。工程(b)の終わりに、pH値は9.5~11.5の範囲にある。
【0022】
本発明の方法の工程(b)は、25~200℃の範囲の、好ましくは45~190℃の温度で行ってよい。
【0023】
本発明の方法の工程(b)は、1種の温度で行われ得る。しかしながら、好ましい実施形態では、工程(b)は、2つ以上の副工程(b1)、(b2)及び任意にさらなる工程の形態で行い、副工程は異なる温度で行う。好ましくは、各副工程は、前の副工程を行った温度よりも高い温度で行い得る。本発明において、副工程は温度が少なくとも10℃異なり、前記温度は平均温度を指す。本発明の好ましい実施形態では、工程(b)は、少なくとも2つの副工程(b1)及び(b2)を含み、副工程(b2)は副工程(b1)よりも少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃高い温度で行う。好ましい実施形態では、工程(b)は、少なくとも2つの副工程(b1)及び(b2)を含み、副工程(b2)は副工程(b1)よりも20~150℃高い温度で行う。
【0024】
好ましくは、副工程は、少なくとも30分間の期間にわたって行う。さらにより好ましくは、副工程は、30分~5時間、好ましくは最大で2時間までの期間にわたって行う。本発明の一実施形態では、工程(b)は、30分~最大で24時間までの範囲、好ましくは2~16時間の、全体の継続時間を有する。
【0025】
本発明の一実施形態では、工程(b)の少なくとも1つの副工程は、25~50℃の範囲の温度、好ましくは、少なくとも1つは40~55℃の範囲で実行する。
【0026】
本発明の一実施形態では、工程(b)の少なくとも1つの副工程は、50~80℃の範囲の温度、好ましくは60~75℃で実行する。
【0027】
本発明の一実施形態では、工程(b)の少なくとも1つの副工程は、90~200℃の範囲の温度、好ましくは150~190℃で実行する。
【0028】
本発明の一実施形態では、工程(b)の少なくとも1つの副工程は25~60℃の範囲の温度で実行し、工程(b)の別の副工程は50~80℃の範囲の温度で実行し、工程(b)の少なくとも別の副工程は100~200℃の範囲の温度で実行する。
【0029】
本発明の一実施形態では、反応中に形成されるアンモニアは、連続的に又は非連続的に、例えばストリッピングにより又は留去により、例えば少なくとも90℃の温度で、好ましくは90~105℃で、除去する。
【0030】
本発明の一実施形態では、例えば、アンモニア除去による水の損失を補うために、工程(b)の過程で水を添加する。
【0031】
本発明の一実施形態では、工程(b)は、常圧又は1barより高い圧力、例えば1.1~40bar、好ましくは5~25barで実行する。工程(b)の2つ以上の副工程を有する実施形態では、後続の副工程は、好ましくは、前の副工程と少なくとも同じ高さの圧力で実行する。
【0032】
工程(b)は、撹拌タンク反応器で、又はプラグフロー反応器で、又は少なくとも2個の撹拌タンク反応器、例えば2~6個の攪拌タンク反応器のカスケードで、又は2~6個の攪拌タンク反応器のカスケードの少なくとも1個のプラグフロー反応器との組み合わせで、又は少なくとも1個の攪拌タンク反応器及び2個のプラグフロー反応器のカスケードで、実行し得る。
【0033】
特に、工程(b)の最終副工程をプラグフロー反応器で実行する実施形態では、前記最終副工程は、1.5~40bar、好ましくは少なくとも20barなどの上昇した圧力下で実行してよい。上昇した圧力は、ポンプによって、又は自発的圧力上昇によって、達成され得る。
【0034】
本発明の一実施形態では、工程(b)がその中で行われる反応容器は、工程(b)の反応混合物に暴露される、ステンレス鋼から作製された少なくとも1種の部分を含有する。
【0035】
本発明の一実施形態では、工程(b)の副工程がその中で行われる少なくとも1個の反応容器は、工程(b)の反応混合物に暴露される、ステンレス鋼から作製された少なくとも1種の部分を含有する。
【0036】
工程(b)の間に、一般式(Ia)又は(Ib)による化合物が光学的に活性であり、かつ工程(b)又は工程(b)の少なくとも1つの副工程が十分に高い温度で実行される場合、部分的又は完全なラセミ化が起こり得る。いかなる理論に束縛されることを望むものではないが、ラセミ化は、上記L-モノアミド又はL-ジアミドの段階又はMGDAのL-異性体の段階で起こる可能性がある。
【0037】
工程(b)の後、そのようにして得られた生成物の溶液は通常、例えば70~100℃、特に80~100℃の範囲に、冷却させる。工程(b)又は工程(b)の少なくとも副工程が1barより高い圧力下で行われる実施形態では、工程(b)の後に圧力を常圧に下げることが好ましい。
【0038】
工程(c)において、アルカリ金属水酸化物の量を、一般式(Ia)又は(Ib)それぞれによるニトリル1モルあたり、合計アルカリ含量が2.9~3.15モルになるように添加する。工程(c)において、前記アルカリの量には、一般式(Ia)又は(Ib)によるニトリルの製造中に使用されたアルカリ金属水酸化物が含まれる。工程(c)で好ましいのは、2.9~3.0モルである。ニトリル1モルあたり合計2.9モルのアルカリ金属水酸化物が用いられる実施形態では、工程(b)それぞれにおけるアルカリの量は、2.5~2.9モル未満の範囲、例えば2.85モルである。
【0039】
工程(c)を行うために、アルカリ金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択してよく、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの組み合わせが挙げられる。工程(c)における好ましいアルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムである。本発明の好ましい実施形態では、工程(b)のアルカリ金属水酸化物及び工程(c)のアルカリ金属水酸化物は、両方とも水酸化ナトリウムである。
【0040】
アルカリ金属水酸化物の添加は、アルカリ金属水酸化物の固体を添加する、又はアルカリ金属水酸化物の水溶液を添加することにより、達成し得る。
【0041】
本発明の一実施形態では、工程(c)によるアルカリ金属水酸化物の添加は、20~100℃の範囲の温度で行われる。添加をより高い温度で行う場合、常圧よりも高い特定の圧力を適用する必要があり、これには余分な努力が必要である。
【0042】
本発明の方法の工程(d)は、さらなる変換をさせることを含む。これは、さらなる鹸化が起こり得ることを意味する。他の実施形態において、工程(d)は、加水分解なしのさらなる中和を含む。工程(d)は、アンモニアの除去も含み得る。
【0043】
本発明の一実施形態では、工程(c)から得られる水溶液は、例えば30分~5時間の範囲の期間にわたって常圧で還流させる。
【0044】
本発明の方法の工程(a)、(b)、(c)及び(d)は、上記の順番で行われる。
【0045】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、上記で開示した工程(a)、(b)、(c)及び(d)以外の追加の工程を含み得る。そのような追加の工程は、例えば、1つ以上の脱色工程、例えば、活性炭又はH2O2などの過酸化物による処理、又はH2O2の非存在下又は存在下でのUV光の照射による処理であり得る。
【0046】
本発明の一実施形態では、アンモニアは、工程(b)及び(d)の間で、例えば部分的に又は完全に除去される。
【0047】
本発明による方法の一実施形態では、本発明の方法は、得られた錯化剤を噴霧乾燥又は噴霧造粒する追加の工程(e)を含む。
【0048】
工程(c)の後又は工程(d)の間又は工程(d)の後に実行され得る工程(a)、(b)、(c)又は(d)以外のさらなる工程は、アンモニアを除去するための空気又は窒素又は蒸気によるストリッピングである。前記ストリッピングは、90~110℃の範囲の温度で実行することができる。窒素又は空気のストリッピングにより、そのように得られた溶液から水を除去することができる。ストリッピングは、好ましくは、650~950mbarなどの常圧よりも低い圧力で実行する。
【0049】
溶液が望ましい実施形態では、工程(d)から得られる溶液を単に冷却し、任意に、水を部分的に除去することによって濃縮する。本発明の混合物の乾燥サンプルが必要とされる場合、水は噴霧乾燥又は噴霧造粒によって除去することができる。
【0050】
本発明の方法は、バッチプロセスとして、又は半連続的又は連続的プロセスとして実行してよい。
【0051】
本発明の方法によって、優れた長期色安定性を有するメチルグリシン二酢酸(MGDA)の水溶液が得られる。
【0052】
本発明の方法により得られるMGDAは、ラセミ混合物又は純粋な鏡像異性体、例えば、L-鏡像異性体、又はL-鏡像異性体及びD-鏡像異性体の混合物であって、それらの鏡像異性体の一方が優勢であり、好ましくはL-鏡像異性体が優勢である、混合物であり得る。本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法により得られるMGDAは、10~98%の範囲の鏡像異性体過剰率(ee)を有するそれぞれのL-鏡像異性体を主に含有する鏡像異性体の混合物である。
【0053】
本発明の一実施形態では、本発明の方法により得られるMGDAのそれぞれのL-異性体の鏡像異性体過剰率は、10~98%の範囲、好ましくは12.5~85%の範囲、さらにより好ましくは最大で75%までである。他の実施形態では、本発明の混合物の全ての成分は、それぞれのラセミ混合物を構成する。
【0054】
本発明の方法により得られるMGDAが2種以上の化合物を含む実施形態では、eeは、本発明の方法により得られるMGDA中に存在する全てのL-異性体の、それぞれのMGDA中の全てのD-異性体に対する鏡像異性体過剰率を指す。例えば、MGDAの二ナトリウム塩及び三ナトリウム塩の混合物が存在する場合、eeは、D-MGDAの二ナトリウム塩及び三ナトリウム塩の合計に対するL-MGDAの二ナトリウム塩及び三ナトリウム塩の合計を指す。
【0055】
鏡像異性体過剰率は、偏光を測定すること(偏光分析法)によって、又は好ましくは、クロマトグラフィ、例えば、キラルカラムを用いたHPLC(例えば、固定相として1種以上のシクロデキストリンを用いる)によって決定することができる。D-ペニシラミンなどの固定化された光学活性アンモニウム塩を用いるHPLCによるeeの決定が好ましい。
【0056】
本発明の一実施形態では、本発明の方法により得られるMGDAは、0.1~10質量%の1種以上の光学的に不活性な不純物を含有し得、不純物の少なくとも1種は、イミノ二酢酸、ラセミN-カルボキシメチルアラニン、ギ酸、グリコール酸、プロピオン酸、酢酸、及びそれらのそれぞれのアルカリ金属又はモノ-、ジ-又はトリアンモニウム塩から選択される不純物の少なくとも1種である。
【0057】
本発明の一態様では、本発明の方法により得られるMGDAは、0.2質量%未満、好ましくは0.01~0.1質量%のニトリロ三酢酸(NTA)を含有し得る。
【0058】
本発明の一実施形態では、本発明の方法により得られるMGDAは、1種以上の光学的に活性な不純物を含有し得る。光学的に活性な不純物の例は、L-カルボキシメチルアラニン及びそのそれぞれのモノ-又はジアルカリ金属塩、及びジニトリルの不完全鹸化から生じる光学的に活性なモノ-又はジアミドである(下記参照)。好ましくは、光学的に活性な不純物の量は、本発明の混合物溶液に対して、0.01~2質量%の範囲にある。さらにより好ましくは、光学的に活性な不純物の量は、0.1~2質量%の範囲にある。
【0059】
本発明の一態様では、本発明の方法により得られるMGDAは、アルカリ金属以外の少量のカチオンを含有し得る。よって少量、例えばアニオンに基づいて本発明の混合物全体の0.01~5モル%などは、アンモニウムカチオン又はアルカリ土類金属カチオン、例えば、Mg2+又はCa2+、又は遷移金属イオン、例えばFe2+又はFe3+カチオンを有することが可能である。
【0060】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、工程(d)から生じる錯化剤を噴霧乾燥又は噴霧造粒する追加の工程(e)を含む。工程(e)を行うことにより、粉末又は顆粒が得られ得る。本発明において、粉末とは、周囲温度で固体であり、1μm~0.1mm未満の範囲の、好ましくは5μm~最大で50μmまでの平均粒径を有することが好ましい粒状物質を指す。粉末の平均粒径は、例えばLASER回折法によって、例えばMalvern装置を用いて決定することができ、体積平均を指す。本発明において、顆粒とは、周囲温度で固体であり、0.1mm~2mmの範囲の、好ましくは0.4mm~1.25mmの平均粒径を有することが好ましい粒状物質を指す。顆粒の平均粒径は、例えば、光学的に又は好ましくはふるい分け法によって決定することができる。用いるふるいは、60~1,250μmの範囲のメッシュを有し得る。
【0061】
本発明の一実施形態では、粉末又は顆粒は広い粒径分布を有する。本発明の別の実施形態では、粉末又は顆粒は狭い粒径分布を有する。粒径分布は所望があれば、複数のふるい分け工程によって調整することができる。
【0062】
顆粒及び粉末は、残留水分を含有し得る。水分とは、結晶水及び吸着水を含む水を指す。水の量は、粉末又は顆粒それぞれの合計固形分に対して、0.1~20質量%の範囲、好ましくは1~15質量%であってよく、カールフィッシャー滴定又は160℃で一定質量まで又は特化した時間範囲、例えば1時間の間、赤外線ラジエーターで乾燥させることによって決定し得る。
【0063】
本発明の特に好ましい一実施形態では、粉末中の水の量は、5~10質量%の範囲であり得る。
【0064】
本発明の特に好ましい一実施形態では、顆粒中の水の量は、9~12質量%の範囲であり得る。
【0065】
粉末の粒子は、規則的な又は不規則な形状を有し得る。粉末の粒子の好ましい形状は、回転楕円形である。
【0066】
顆粒の粒子は、規則的な又は不規則な形状を有し得る。顆粒の粒子の好ましい形状は、回転楕円形である。
【0067】
工程(e)による噴霧乾燥又は噴霧造粒は、好ましくは少なくとも125℃の入口温度を有するガスを使用して行ってよい。前記ガスは、以下「高温ガス」とも称し、窒素、希ガスであり得、又は好ましくは空気である。工程(e)の過程で、水の大部分、例えば水の少なくとも55%、好ましくは少なくとも65%を除去する。本発明の一実施形態では、最大で95%までの水を除去する。
【0068】
噴霧乾燥及び噴霧造粒について、以下でさらに詳細に説明する。
【0069】
本発明の一実施形態では、乾燥容器、例えば噴霧チャンバ又は噴霧塔を使用し、その中で噴霧乾燥プロセスを行う。本発明の方法により得られるMGDAの溶液又はスラリーを、平行又は向流の高温ガス流と共に前記噴霧チャンバ又は噴霧塔中に噴霧する。高温ガス流は、60~350℃、好ましくは125~220℃の範囲の温度を有し得る。
【0070】
本発明の一実施形態では、乾燥容器、例えば噴霧チャンバ又は噴霧塔を使用し、その中で流動床を使用して噴霧造粒プロセスを行う。そのような乾燥容器に、噴霧乾燥又は蒸発結晶化などの任意の乾燥方法によって得られるMGDAシード粒子の流動床を入れる。床の流動化は、125~350℃、好ましくは125~220℃の範囲の温度のガス流により達成される。次に、本発明の方法により得られるMGDAの溶液又はスラリーを、60~250℃の範囲、好ましくは125~220℃の温度の高温ガス流と共に、そのような流動床の上又は中に噴霧する。
【0071】
本発明の一実施形態では、流動床は80~150℃の範囲の、好ましくは90~120℃の温度を有し得る。
【0072】
噴霧は、乾燥容器当たり1個以上のノズルを介して行う。適したノズルは、例えば、高圧回転ドラム噴霧器、回転噴霧器、単一流体ノズル及び二流体ノズルであり、二流体ノズル及び回転噴霧器が好ましい。第一の流体は本発明の方法の工程(d)により得られる溶液又はスラリーであり、第二の流体は、例えば1.1~7barの圧力の圧縮ガスである。噴霧造粒について、好ましいノズルは、単一流体ノズル及び二流体ノズルから選択される。二流体ノズル、二成分ノズルという表現は同義であり、意味の区別なく使用され得る。
【0073】
本発明の一実施形態では、噴霧造粒中に形成される液滴は、10~500μmの範囲の、好ましくは20~180μmの、さらにより好ましくは30~100μmの平均直径を有する。
【0074】
本発明の一実施形態では、乾燥容器を出る排出ガスは、40~140℃の範囲の、好ましくは80~110℃の温度を有し得るが、いずれにしろ、高温ガス流よりも低温である。好ましくは、乾燥容器を出る排出ガスの温度と乾燥容器内に存在する固体生成物の温度は、同一である。
【0075】
本発明の別の実施形態では、噴霧造粒は、2つ以上の連続した噴霧乾燥プロセスを、例えば、少なくとも2つの噴霧乾燥機のカスケードで、例えば少なくとも2つの連続噴霧塔のカスケード又は噴霧塔と噴霧チャンバとの組み合わせ(前述の噴霧チャンバは流動床を含有する)で行うことによって、行う。第一の乾燥機では、次のようにして噴霧乾燥プロセスを行っている。
【0076】
噴霧乾燥は、噴霧乾燥機、例えば噴霧チャンバ又は噴霧塔におけるものが好ましい。好ましくは周囲温度より高い温度、例えば50~95℃の範囲の温度を有する、工程(a)により得られる溶液又はスラリーを、1つ以上の噴霧ノズルを介して噴霧乾燥機に導入し、高温ガス入口流、例えば窒素又は空気に導入し、溶液又はスラリーを液滴に変換して、水を蒸発させる。高温ガス入口流は、125~350℃の範囲の温度を有し得る。
【0077】
第二の噴霧乾燥機に、第一の噴霧乾燥機からの固体を有する流動床を入れ、上記工程により得られた溶液又はスラリーを、高温ガス入口流と共に流動床の上又は中に噴霧する。高温ガス入口流は、125~350℃の範囲の、好ましくは160~220℃の温度を有し得る。
【0078】
本発明の一実施形態では、特に顆粒を作製するプロセスにおいて、工程(e)でのMGDAの平均滞留時間は、2分~4時間の範囲にあり、好ましくは30分から2時間である。
【0079】
別の実施形態では、特に粉末を作製するプロセスにおいて、工程(e)でのMGDAの平均滞留時間は、1秒~1分の範囲であり、特に2~20秒である。
【0080】
本発明の一実施形態では、工程(e)における乾燥容器内の圧力は、常圧±100mbar、好ましくは常圧±20mbarであり、例えば常圧よりも1mbar低い。
【0081】
工程(e)で形成された固体MGDAを、全体で又はある程度の割合で、連続的に又は部単位で、噴霧チャンバ又は噴霧塔からそれぞれ除去する。
【0082】
所望の粒子径の固体MGDAと共に、通常小さな粒子(「ダスト」又は「微粒子」)及びより大きな粒子(「オーバー」)が形成される。次に、所望のサイズの粒子を微粒子及びオーバーから分離する。オーバーは、許容可能な粒子径に粉砕され、噴霧チャンバ又は噴霧塔に戻され(「戻された」)、微粒子も戻され得る。
【0083】
他の実施形態では、例えば、オーバー及び微粒子を、例えば水に再溶解させて噴霧乾燥又は噴霧造粒の溶液に再導入することが可能である。
【0084】
本発明の方法を行うことにより、オーバーがより少ない割合で形成され、アルカリ金属含量が著しく少ないMGDAの場合よりも、粉砕及び再利用の必要性がより少なくなることが見出された。一方で、本発明の方法により得られる顆粒は、優れた長期色安定性を有する。
【0085】
本発明の一実施形態では、工程(d)により得られる溶液又はスラリーに1種以上の添加剤を添加してよい。有用な添加剤の例は、例えば、二酸化チタン、砂糖、シリカゲル、及びポリマー、例えば、限定するものではないが、アルカリで部分的に又は完全に中和されたポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーなどである。本発明におけるポリビニルアルコールは、完全に又は部分的に加水分解されたポリビニルアセテートを指す。部分的に加水分解されたポリビニルアセテートでは、少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも96モル%のアセテート基が加水分解されている。
【0086】
本発明の一実施形態では、工程(e)で使用するポリビニルアルコールは、22,500~115,000g/molの範囲の、例えば最大で40,000g/molまでの平均分子量Mwを有する。
【0087】
本発明の別の実施形態では、(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のランダムコポリマー、アクリル酸及び無水マレイン酸のランダムコポリマー、アクリル酸の三元ランダムコポリマー、メタクリル酸及び無水マレイン酸、アクリル酸及びスチレンのランダム又はブロックコポリマー、アクリル酸及びアクリル酸メチルのランダムコポリマーである。より好ましくは、メタクリル酸のホモポリマーである。さらにより好ましくは、アクリル酸のホモポリマーである。
【0088】
(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーは、直鎖又は分岐分子を構成し得る。ここでの分岐は、そのような(コ)ポリマーの少なくとも1個の繰り返し単位が主鎖の一部ではなく、分岐又は分岐の一部を形成する場合となる。好ましくは、(コ)ポリマーは架橋されていない。
【0089】
本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定し、それぞれの遊離酸に対して、1,200~30,000g/mol、好ましくは2,500~15,000g/mol、さらにより好ましくは3,000~10,000g/molの範囲の平均分子量Mwを有する。
【0090】
本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーは、アルカリ、例えばリチウム又はカリウム又はナトリウム、又は上記の少なくとも2種の組み合わせで、特にナトリウムで、少なくとも部分的に中和される。例えば、10~100モル%の範囲のポリマー(B)のカルボキシル基が、アルカリで、特にナトリウムで中和され得る。
【0091】
本発明の一実施形態では、(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーは、ポリアクリル酸の過ナトリウム塩から、よってナトリウムで完全に中和されたポリアクリル酸から選択される。
【0092】
本発明の一実施形態では、(メタ)アクリル酸の(コ)ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定し、それぞれの遊離酸に対して、平均分子量Mwが1,200~30,000g/mol、好ましくは2,500~15,000g/mol、さらにより好ましくは3,000~10,000g/molの範囲のポリアクリル酸の過ナトリウム塩から選択される。
【0093】
本発明の一実施形態では、添加剤のMGDAに対する質量比は、1:100~1:2、好ましくは1:50~1:10の範囲にある。
【0094】
本発明により作製された顆粒及び粉末は、優れた長期色安定性を有する。それらは、容易に、経済的な条件下で生成し得る。製造中の腐食は、特にステンレス鋼に関して、優れている。
【実施例】
【0095】
本発明を実施例によりさらに説明する。
【0096】
特に明記しない限り、ee値以外の実施例における割合は質量%を指す。
【0097】
I.1. L-アラニンN,N-ビスアセトニトリルの水溶液の提供、工程(a.1)
5リットルの撹拌フラスコに1,170gの脱イオン水を入れ、40℃に加熱した。668.5gのL-アラニン(99.2質量%、>98%eeで7.44モルに相当)を添加した。得られたスラリーに、50質量%の水酸化ナトリウム水溶液390.0g(4.88モル)を、30分の期間にわたり添加した。添加の間、温度は60℃に上昇した。水酸化ナトリウムを完全に添加した後、スラリーを60℃で30分間撹拌した。透明な溶液が得られた。
【0098】
38~42℃で、上記の溶液、30%水溶液としてのホルムアルデヒド、及びHCN(総量の80%)を、3個の攪拌タンク反応器を含むカスケードの最初の攪拌タンク反応器に添加した。2番目の攪拌反応器に、追加のHCN(総量の20%)を38~42℃で追加した。3番目の攪拌反応器で、38~42℃で、反応が完了した。部分的に中和されたL-アラニンN,N-ビスアセトニトリルの水溶液が得られた。これを低温鹸化の供給材料として使用した。
【0099】
I.2. 準化学量論量又は当モル量のNaOHを用いたMGDA-Nax水溶液の合成:鹸化(b.1)
【0100】
(b.1-1)低温鹸化:
低温鹸化を2個の攪拌タンク反応器及び管状反応器のカスケードで行った。3個全ての反応器において、温度は約55℃であった。
【0101】
第一の撹拌反応器中に、工程(a.1)で提供した供給溶液及び50%水溶液としてのNaOHを添加した。反応を完結させるために、混合物を第二の撹拌タンク反応器内及び管状反応器内でさらに反応させた。定常状態条件下で得られた溶液を、高温鹸化における供給材料として使用した。
【0102】
(b.1-2)高温鹸化:
高温鹸化は、180℃及び24barで、管状プラグ流反応器中30~45分の滞留時間で行った。工程(c)又は(d)は行わなかった。
【0103】
定常状態条件下で得られた溶液を周囲圧力まで膨張させ、アンモニアを除去するために94~98℃で970mbarのタンク反応器で撹拌し、次に、アンモニアをさらに除去するために、100℃で900mbarのワイプフィルム蒸発器でストリッピングした。次に、錯化剤(A)全体の濃度を(鉄結合能に基づいて)約40質量%に調整した。
【0104】
供給材料のモル比概要を表1に示す。
【0105】
【0106】
* NaOH当量とは、供給溶液からのNaOHと低温鹸化中のNaOHの添加量の合計を指す。
** 鉄結合能に基づく。三ナトリウム塩として表す。
*** HPLCに基づく。
【0107】
本発明による実施例:
工程I.1及びI.2を、上記のように行った。
【0108】
I.3 NaOHの添加
定常状態条件下で得られた溶液を、94~98℃で970mbarの攪拌タンク反応器に連続モードで供出した。表2による追加量のNaOHを、撹拌タンク反応器に加えた。次に、アンモニアをさらに蒸発させるために、組み合わせた流れを100℃で900mbarのワイプフィルム蒸発器でストリッピングした。次に、錯化剤(A)全体の濃度を(鉄結合能に基づいて)約40質量%に調整した。
【0109】
【0110】
* NaOH当量とは、供給溶液からのNaOHと低温鹸化中のNaOHの添加量の合計を指す。
(x):工程(b)それぞれの終わり
** 鉄結合能に基づく
*** HPLCに基づく
【0111】
I.4 周囲温度でのNaOHの添加
前述の工程I.1及びI.2に対応する以下の例を調製したが、NaOHの追加量は、工程I.2(b.1-2)の後に生成物に加えた。
【0112】
1リットルの撹拌フラスコに、対応する生成物500gを(工程I.2の後に)入れた。次に、追加量の水酸化ナトリウム水溶液(50質量%)を周囲温度で加えた。この溶液を80℃に加熱し、80℃で60分間撹拌した。次に、反応溶液を20℃に冷却し、錯化剤(A)全体の濃度を(鉄結合能に基づいて)約40質量%に調整した。
【0113】
【0114】
* NaOH当量とは、供給溶液からのNaOHと低温鹸化中のNaOHの添加量の合計を指す。
(x):工程(b.1-2)それぞれの終わり
** 鉄結合能に基づく。
*** HPLCに基づく。
【0115】
II.噴霧造粒、一般的な注意事項
二成分ノズル及びジグザグ空気分級機を備えた市販の実験室噴霧造粒機、Glatt Lab Systemsを使用した。噴霧造粒機に約1.5kgの市販のMGDA-Na3(Trilon(登録商標)M)を入れた。噴霧造粒機は、表4のとおり運転した。実験室用噴霧造粒機を定常状態で操作した場合に、オーバーの割合を決定した。
【0116】
次に、MGDAナトリウム塩の溶液を攪拌機タンクから二流体ノズルにポンプで送り、実験室用噴霧造粒機に導入した。顆粒の形成が観察された。
【0117】
十分に大きい(重い)粒子は、ジグザグ空気分級機を通過して、有用画分(value fraction)とともにサンプル瓶に落ちた。サンプル瓶は、有用画分及びオーバーを含有する。より小さい(より軽い)顆粒は、空気分級機により再生器を通って流動床に吹き戻された。微粒子は、内部フィルターによって造粒機内に戻された。
【0118】
【0119】
サンプル瓶内の粒子は、1000μmのスクリーンで分級した。直径が1000μm以下の粒子が、有用画分を構成した。1000μmを超える顆粒をオーバーと定義した。オーバーをハンマーミルで最大直径700μmまでに粉砕し、粉砕した生成物の再生を通して占有率の少ない粉砕した有用画分と共に流動床に再導入した。
【0120】
実験C-2.1では、市販のMGDA-Na3溶液を使用した。