(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、これを架橋させてなる粘着剤、マスキングフィルム用粘着剤、マスキングフィルム、透明電極層形成工程用粘着フィルム、半導体製造工程用テープ、マスキングフィルムの使用方法
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20220628BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20220628BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220628BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220628BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2017231381
(22)【出願日】2017-12-01
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2016236493
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】庄司 妙子
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050254(JP,A)
【文献】特開2013-147631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、鉄系架橋触媒(C)、および架橋遅延剤(D)を含有する粘着剤組成物であって、下記式(1)
および式(2)を満たし、
水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分中における水酸基含有モノマー(a1)の含有量が
2~20重量%であり、
水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)を
3~20重量部、架橋遅延剤(D)を0.1~50重量部含有することを特徴とする粘着剤組成物。
1.2×10
-5≦X×Y≦1.0×10
-2 ・・・式(1)
X:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100g中の水酸基の数(mol)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)
であり、0.00005~0.05molである。
0.6≦Z/X≦2.0 ・・・式(2)
X:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100g中の水酸基の数(mol)
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
【請求項2】
下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項
1記載の粘着剤組成物。
1.0×10
-4≦Y/Z≦10 ・・・式(3)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)
であり、0.00005~0.05molである。
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
【請求項3】
下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1
または2記載の粘着剤組成物。
1.0×10
-6≦Z×Y≦5.0×10
-2 ・・・式(4)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)
であり、0.00005~0.05molである。
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
【請求項4】
請求項1~
3いずれか記載の粘着剤組成物がイソシアネート系架橋剤(B)により架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項5】
請求項
4に記載の粘着剤からなることを特徴とするマスキングフィルム用粘着剤。
【請求項6】
請求項
4に記載の粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有することを特徴とするマスキングフィルム。
【請求項7】
請求項
4に記載の粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有することを特徴とする透明電極層形成工程用粘着フィルム。
【請求項8】
請求項
4に記載の粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有することを特徴とする半導体製造工程用テープ。
【請求項9】
請求項
6に記載のマスキングフィルムを被着体表面に貼り付け、100℃以上の加熱工程に付した後、そのマスキングフィルムを被着体表面から剥離することを特徴とするマスキングフィルムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、これを架橋させてなる粘着剤、マスキングフィルム用粘着剤、マスキングフィルム、透明電極層形成工程用粘着フィルム、半導体製造工程用テープ、マスキングフィルムの使用方法に関するものである。詳細には、十分なポットライフを持ちながら、即硬化性に非常に優れ、かつ耐熱性にも優れた、マスキングフィルムなどに用いることができる粘着剤組成物、該粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤、該粘着剤からなるマスキングフィルム用粘着剤、該粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有するマスキングフィルム、透明電極層形成工程用粘着フィルム、および半導体製造工程用テープ、ならびにマスキングフィルムの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種部材を加工する際に一時的に部材を固定、保護するために再剥離型粘着フィルムが用いられており、近年では、例えば、フレキシブルプリント配線(FPC)基板等の回路基板やITOなどの透明電極層を一時的に表面保護するためのマスキングフィルムや、フラットパネルディスプレイやタッチパネルなどの表面保護用粘着フィルムとして利用されている。
ところが、アニール処理や配線形成工程では、FPC基板やITOなどの透明電極層に保護フィルムを貼った状態で高温に晒される工程が含まれるため、粘着フィルムの粘着剤層が積層板に固着してしまい、粘着フィルムの剥離時に糊残りによる汚染が生じたり、FPC基板や透明電極層の積層板が破損したりすることがある。そのため、高温工程後であっても、剥離する際には軽い力で糊残りなく剥離できることが求められている。
【0003】
一方で、粘着フィルムの製造時には、粘着剤層の硬化(架橋)を充分に行なうために、基材フィルム上に粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を形成した後に、一定期間静置するエージング処理を行なう必要がある。ここで、エージング処理に時間がかかると、その間に、基材フィルムや離型フィルム表面の微細な凹凸に粘着剤層が追従してしまい、粘着剤層の表面に凹凸がある粘着フィルムとなってしまう。
このような粘着フィルムを例えばフラットパネルディスプレイやタッチパネルなどの表面保護に用いると、粘着剤層表面の凹凸が被着体であるフラットパネルディスプレイなどの表面の光学フィルムに転写され、フラットパネルディスプレイなどの視認性が低下するなど、適用する分野によってはわずかな凹凸であっても不具合が生じることがあった。
そこで、塗工後すぐに架橋が進行することによりエージング時間が短縮化され(言い換えれば、即硬化性に優れ)、粘着力の変化が少ない粘着剤組成物として、以下の粘着剤組成物が知られている。
【0004】
特許文献1には、水酸基およびカルボキシル基を含有するアクリルポリマー(A)100質量部、イソシアネート系架橋剤(B)0.1質量部~15重量部、鉄を活性中心とする触媒(C)0.002質量部~0.5質量部、ケト-エノール互変異性を起こす化合物(D)を含む粘着剤組成物であり、鉄を活性中心とする触媒(C)に対するケト-エノール互変異性を起こす化合物(D)の重量比(D/C)が3~70である粘着剤組成物が開示され、当該粘着剤組成物によれば、錫化合物を用いることなく、速やかに架橋が進行し粘着力の変化が少ないことが記載されている。
【0005】
また特許文献2には、ガラス転移温度が-50℃以下であり、かつ、アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマーを含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、並びに、鉄を活性中心とする触媒(C)、を含む粘着剤組成物が開示され、当該粘着剤組成物によれば、糊面凹凸の発生と、ジッピングの発生を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-000945号公報
【文献】特開2015-048394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の技術では、架橋反応が促進されることにより、粘着剤層の変形が抑制されるものの、現在はさらに高い水準で粘着剤層の平滑性が求められており、そのような高い水準の要求に十分応えられるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、このような背景下において、十分なポットライフを持ちながら、即硬化性に優れ、かつ高温条件下で使用した後の粘着力の上昇が少なく、小さな力で剥離でき、さらに被着体から剥離した際に汚染が生じ難い、マスキングフィルムなどに好適に用いることができる粘着剤組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、水酸基含有アクリル系樹脂(A)を用いた粘着剤組成物において、イソシアネート系架橋剤(B)と共に、鉄系架橋触媒(C)を含有させ、さらに、水酸基含有アクリル系樹脂(A)中の水酸基の数(mol)と鉄系架橋触媒(C)の数(mol)との積が特定範囲となるように調整することにより、上記課題を解決する粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、鉄系架橋触媒(C)、および架橋遅延剤(D)を含有する粘着剤組成物であって、下記式(1)および式(2)を満たし、
水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分中における水酸基含有モノマー(a1)の含有量が2~20重量%であり、
水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)を3~20重量部、鉄系架橋触媒(C)を0.00005~0.05mol、架橋遅延剤(D)を0.1~50重量部含有することを特徴とする粘着剤組成物である。
1.2×10-5≦X×Y≦1.0×10-2 ・・・式(1)
X:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100g中の水酸基の数(mol)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)であり、0.00005~0.05molである。
0.6≦Z/X≦2.0 ・・・式(2)
X:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100g中の水酸基の数(mol)
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100gに対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
【0011】
また、本発明の要旨は、本発明の粘着剤組成物のイソシアネート系架橋剤(B)により架橋されてなることを特徴とする粘着剤、本発明の粘着剤からなることを特徴とするマスキングフィルム用粘着剤、本発明の粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有することを特徴とするマスキングフィルム、透明電極層形成工程用粘着フィルム、および半導体製造工程用テープ、ならびにマスキングフィルムの使用方法にも関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物及びこれを架橋させてなる粘着剤によれば、十分なポットライフを持ちながら、これを硬化(架橋)させた際には、非常に優れた即硬化性を有するため、微細な凹凸を有する基材フィルムや離型フィルムの凹凸形状が転写されることなく平滑な粘着剤層面を形成することができ、さらに、高温条件下で使用した後、被着体から剥離した際に汚染が生じ難く、かつ小さな力で剥離することができるものであり、本発明の粘着剤はとりわけマスキングフィルム用粘着剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、本発明において「フィルム」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
【0014】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、鉄系架橋触媒(C)、および架橋遅延剤(D)を含有する。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は下記式(1)を満たすことを特徴とするものであり、好ましくは下記式(1a)、特には下記式(1b)を満たすことが好ましい。
1.2×10-5≦X×Y≦1.0×10-2 ・・・式(1)
1.3×10-5≦X×Y≦1.0×10-3 ・・・式(1a)
1.5×10-5≦X×Y≦5.0×10-4 ・・・式(1b)
X:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部中の水酸基の数(mol)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)
X×Yの値が大きすぎるとポットライフが短くなるので塗工性が低下し、小さすぎると即硬化性が不十分となる。
【0016】
上記式中のXは、水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部中の水酸基の数(mol)であり、好ましくは0.001~1.0mol、特に好ましくは0.005~0.9mol、更に好ましくは0.01~0.8molである。
Xの値が大きすぎると乾燥工程前に架橋が進み、塗工性が低下する傾向がある。Xの値が小さすぎると架橋密度が低くなり、粘着剤層表面の凹凸が改善され難くなる傾向がある。
【0017】
上記式中のYは、水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)であり、好ましくは0.00001~0.1mol、特に好ましくは0.00005~0.05mol、更に好ましくは0.0001~0.01molである。
Yの値が大きすぎると配合液の安定性が低下する傾向がある。Yの値が小さすぎると即硬化性が十分でなくなり、粘着剤層表面の凹凸が改善され難くなる傾向がある。
【0018】
また、本発明の粘着剤組成物は下記式(2)、好ましくは下記式(2a)、特には下記式(2b)を満たすことが好ましい。
0.6≦Z/X≦2.0 ・・・式(2)
0.7≦Z/X≦1.8 ・・・式(2a)
0.8≦Z/X≦1.5 ・・・式(2b)
X:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部中の水酸基の数(mol)
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
Z/Xの値が大きすぎると被着体を汚染する傾向があり、小さすぎると粘着力が高くなり過ぎて、剥離する際の剥離性が低下する傾向がある。
【0019】
上記式中のZは、水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部中に対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)であり、好ましくは0.001~1.0mol、特に好ましくは0.005~0.9mol、更に好ましくは0.01~0.8molである。
Zの値が大きすぎると被着体を汚染する傾向がある。Zの値が小さすぎると粘着力が高くなり過ぎて、剥離する際の剥離性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の粘着剤組成物は下記式(3)、好ましくは下記式(3a)、特には下記式(3b)を満たすことが好ましい。
1.0×10-4≦Y/Z≦10 ・・・式(3)
1.0×10-3≦Y/Z≦5 ・・・式(3a)
1.0×10-3≦Y/Z≦1 ・・・式(3b)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
Y/Zの値が大きすぎるとポットライフが短くなるので塗工性が低下する傾向があり、小さすぎると即硬化性が不十分となる傾向がある。
【0021】
本発明の粘着剤組成物は下記式(4)、好ましくは下記式(4a)、特には下記式(4b)を満たすことが好ましい。
1.0×10-6≦Z×Y≦5.0×10-2 ・・・式(4)
5.0×10-6≦Z×Y≦1.0×10-3 ・・・式(4a)
1.0×10-5≦Z×Y≦5.0×10-4 ・・・式(4b)
Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対する鉄系架橋触媒(C)の数(mol)
Z:水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基の数(mol)
Z×Yの値が大きすぎるとポットライフが短くなるので塗工性が低下する傾向があり、小さすぎると即硬化性が不十分となる傾向がある。
【0022】
〔水酸基含有アクリル系樹脂(A)〕
本発明で用いられる水酸基含有アクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー(a1)を必須成分として含有する重合成分を重合して得られるものであり、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、水酸基含有モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)、その他の重合性モノマー(a4)を重合成分として適宜含有する重合成分を重合して得られるものである。
【0023】
上記水酸基含有モノマー(a1)としては、例えば、1級水酸基含有モノマー、2級水酸基含有モノマー、3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。1級水酸基含有モノマとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;その他、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等が挙げられる。2級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。3級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら水酸基含有モノマー(a1)は、1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
上記水酸基含有モノマーの中でも、イソシアネート系架橋剤(B)との反応性に優れる点で、1級水酸基含有モノマーを使用することが好ましく、特には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0024】
重合成分中における水酸基含有モノマー(a1)の含有量は、0.1~30重量%であることが好ましく、特に好ましくは1~25重量%、更に好ましくは2~20重量%である。かかる含有量が多すぎると、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じたり、樹脂が硬すぎて被着体との間に浮きが生じてしまう傾向があり、少なすぎると架橋度が低下し、被着体汚染性が増大する傾向がある。
【0025】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマー(a1)としては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを使用することも好ましく、特には0.2%以下、更には0.1%以下のものを使用することが好ましい。
【0026】
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)は、アルキル基の炭素数が、通常1~20であり、好ましくは1~12、特に好ましくは1~8である。炭素数が大きすぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向がある。
【0027】
具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
なかでも、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数1~8の脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0028】
重合成分中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の含有量は、通常、40~99.9重量%であり、好ましくは45~99重量%、特に好ましくは50~98重量%である。かかる含有量が少なすぎると加熱工程後の粘着力が高くなりすぎる傾向があり、多すぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向がある。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)中、アルキル基の炭素数1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの含有量が80重量%以上であることが加熱工程後の耐被着体汚染性に優れる点で好ましく、特に好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、殊に好ましくは95重量%以上である。
【0029】
上記水酸基含有モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー等が挙げられる。
【0030】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN-グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、中でも共重合性に優れる点で(メタ)アクリル酸が好ましく用いられるが、金属基材に対して用いる場合には、腐食防止の点から、カルボキシル基を含有しないことが好ましい。
【0031】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0032】
上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0033】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0034】
アミノ基含有モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合及びアミノ基(無置換又は置換アミノ基)を有するモノマーが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノイソプロピル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルや(メタ)アクリル酸N-(t-ブチル)アミノエチル等のN-アルキルアミノアルキルの(メタ)アクリル酸エステル等の一置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等のN,N-ジアルキルアミノアルキルの(メタ)アクリル酸エステル等の二置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;これらアミノ基含有単量体の四級化塩など;p-アミノスチレン等のアミノ基含有スチレン類;3-(ジメチルアミノ)スチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類;N,N-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N-ジエチルアミノエチルビニルエーテル等のジアルキルアミノアルキルビニルエーテル類;アリルアミン、4-ジイソプロピルアミノ-1-ブテン、トランス-2-ブテン-1,4-ジアミン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
なお、本明細書では、エチレン性不飽和二重結合及びアミノ基(無置換又は置換アミノ基)を有するモノマーであって、かつアミド基(アミド結合を有する基)を有するモノマーについては、下記のアミド基含有モノマーに包含されることとする。
【0035】
上記アミド基含有モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合及びアミド基(アミド結合を有する基)を有するモノマーが挙げられ、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N-s-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(s-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジペンチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシル(メタ) アクリルアミド、N,N-ジヘプチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチルメチルアクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミドエチルエチレンウレア、(メタ)アクリルアミドt-ブチルスルホン酸等の置換アミド基含有モノマー;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミド;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のアルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド;これらアミド基含有モノマーの四級化塩などが挙げられる。
【0036】
これら水酸基含有モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明においては、架橋促進効果の点から、窒素原子を含有する官能基含有モノマーを含有することが好ましく、特に好ましくはアミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、更に好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、殊に好ましくはジメチルアミノプロピルアクリルアミドである。
【0037】
重合成分中における水酸基含有モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)の含有量は、通常、0.001~30重量%であり、好ましくは0.01~20重量%、特に好ましくは0.05~15重量%である。かかる含有量が多すぎると、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じたり、樹脂が硬すぎて被着体との間に浮きが生じてしまう傾向があり、少なすぎると架橋度が低下し、被着体汚染性が増大する傾向がある。
【0038】
水酸基含有モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)として、アミノ基含有モノマーおよび/またはアミド基含有モノマーを含有する場合における、該モノマーの重合成分中の含有割合は、好ましくは0.001~30重量%、特に好ましくは0.005~5重量%、更に好ましくは0.01~2重量%である。かかる含有割合が多すぎると重合時に分子量が低下したり、粘着剤が着色する傾向があり、少なすぎると架橋促進効果が十分に得られにくくなる傾向がある。
【0039】
その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0040】
重合成分中におけるその他の共重合性モノマー(a4)の含有量は、通常、0~40重量%であり、好ましくは0.001~30重量%、特に好ましくは0.01~25重量%である。含有量が多すぎると、粘着特性が低下しやすい傾向がある。
【0041】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合に際しては、例えば、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法を採用することができる。中でも、安全に、安定的に、また任意のモノマー組成でアクリル系樹脂組成物を製造できる点で、溶液ラジカル重合により得られる溶剤系水酸基含有アクリル系樹脂が好ましい。例えば、有機溶剤中に、上記水酸基含有モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、及び必要に応じて水酸基含有モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)、その他の重合性モノマー(a4)を含む重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50~90℃で2~20時間重合を行なうことにより得られる溶剤系水酸基含有アクリル系樹脂が好ましい。
【0042】
本発明の水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常、10万~250万、好ましくは20万~220万、特に好ましくは40万~200万である。重量平均分子量が大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で不利となる傾向があり、小さすぎると粘着剤層の耐熱性が低下し、被着体汚染が増大する傾向がある。
【0043】
また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば、通常20以下であり、好ましくは15以下、特に好ましくは10以下であり、下限は通常1.1である。分散度が高すぎると、粘着剤層の耐熱性が低下し、発泡等が発生しやすくなる傾向にある。
【0044】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
また測定に際してポリマーを誘導体化してもよいし溶離液の種類を適宜変更してもよい。
【0045】
更に、水酸基含有アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、通常-80~10℃であり、好ましくは-75~5℃、特に好ましくは-70~0℃である。ガラス転移温度が高すぎると、加熱工程後の粘着力が高くなる傾向があり、ガラス転移温度が低すぎると、耐熱性が低下し、被着体汚染が増大する傾向がある。
【0046】
なお、ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
【数1】
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0047】
即ち、アクリル系樹脂を構成するそれぞれのモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものである。
【0048】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)の含有量は、粘着剤組成物全量に対して、30~99重量%であることが好ましく、特に好ましくは40~98.5重量%、更に好ましくは50~98重量%である。
【0049】
〔イソシアネート系架橋剤(B)〕
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(B)を含有することが、反応性が高くなり、耐熱性が向上する点で重要である。
【0050】
上記イソシアネート系架橋剤(B)としては、例えば、
2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トランス-シクロヘキサンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート;
等が挙げられ、
さらに、これらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0051】
なかでも加熱後の粘着力上昇が小さく、加熱後に剥離した際の糊残りのし難さ(耐熱汚染性)が良好である点で、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体や2,4-トリレンジイソシアネート及び/又は2,6-トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、2,4-トリレンジイソシアネート及び/又は2,6-トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、テトラメチルキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が好ましい。
【0052】
上記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.5~40重量部、特に好ましくは3~30重量部、更に好ましくは5~20重量部である。かかるイソシアネート系架橋剤の含有量が多すぎると粘着剤の架橋が進みすぎて、粘着力が低下するので、被着体表面との間に浮きを生じてしまう傾向があり、少なすぎると、粘着剤の凝集力が低下し、糊残りの原因となる傾向がある。
【0053】
また、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内で、粘着剤組成物に通常用いられるその他の架橋剤を併用することもできる。
かかる架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。
【0054】
〔鉄系架橋触媒(C)〕
鉄系架橋触媒(C)は、鉄を活性中心とする触媒であり、イソシアネート系架橋剤(B)の反応を促進する。本発明の粘着剤組成物は、鉄系架橋触媒(C)を含有することが、ポットライフと即硬化性を両立させ、平滑な粘着剤層を得ることができる点で重要である。
【0055】
上記鉄系架橋触媒(C)としては、鉄キレート化合物を好適に用いることができ、例えば、一般式Fe(L)(M)(N)として表わすことができる。鉄キレート化合物は(L)(M)(N)の組み合わせにより、Fe(L)3、Fe(L)2(M)、Fe(L)(M)(N)のいずれかで表される。
鉄キレート化合物Fe(L)(M)(N)において、(L)(M)(N)はそれぞれFeに対する配位子である。例えば、L、MまたはNがβ-ジケトンの場合、β-ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、ヘキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、5-メチル-ヘキサン-2,4-ジオン、オクタン-2,4-ジオン、6-メチルヘプタン-2,4-ジオン、2,6-ジメチルヘプタンー3,5-ジオン、ノナン-2,4-ジオン、ノナン-4,6-ジオン、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン、トリデカン-6,8-ジオン、1-フェニル-ブタン-1,3-ジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、アスコルビン酸等が挙げられる。
また、L、MまたはNがβ-ケトエステルの場合、β-ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸-n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸-n-ブチル、アセト酢酸-sec-ブチル、アセト酢酸-tert-ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸-n-プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸-n-ブチル、プロピオニル酢酸-sec-ブチル、プロピオニル酢酸-tert-ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。これら鉄系架橋触媒(C)は1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0056】
本発明においては、これら鉄系架橋触媒(C)のうち、反応性、硬化性の点でβ-ジケトンを配位子として持つ鉄キレート化合物が好ましく、特にトリス(アセチルアセトナート)鉄を用いることが好ましい。
【0057】
具体的な鉄系架橋触媒(C)としては、例えば、日本化学産業株式会社製「ナーセム第二鉄」、日本化学産業株式会社製「ニッカオクチックス鉄」、東京化成工業株式会社製「トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、和光純薬工業株式会社製「2,4-ペンタンジオン酸鉄(III)」、シグマアルドリッチジャパン合同会社製「鉄(III)アセチルアセトナート」等が挙げられる。
【0058】
上記鉄系架橋触媒(C)の含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.001~30重量部、特に好ましくは0.005~20重量部、更に好ましくは0.01~15重量部である。
鉄系架橋触媒(C)の含有量が多すぎると配合液の安定性が低下する傾向があり、含有量が少なすぎると即硬化性が低下し、塗膜表面に凹凸が転写され易くなる傾向がある。
【0059】
〔架橋遅延剤(D)〕
本発明の粘着剤組成物は架橋遅延剤(D)を含有することが、十分なポットライフを保持し、塗工性を向上させる点で必要である。
架橋遅延剤(D)は、鉄系架橋触媒(C)の活性を調整し、粘着剤組成物のポットライフと硬化性のバランスを取るために含有されるものである。架橋遅延剤(D)は、粘着剤組成物中においては、鉄系架橋触媒(C)に対してキレート化剤として作用し、鉄系架橋触媒(C)をブロックすることにより、粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。その後、粘着剤組成物を基材等に塗工し、乾燥させることにより架橋遅延剤(D)が揮発すると、架橋遅延剤(D)によりブロックされていた上記鉄系架橋触媒(C)が活性化し、架橋促進効果が発揮されて、粘着剤組成物の架橋が進む。
【0060】
上記架橋遅延剤(D)としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性化合物であり、上記鉄系架橋触媒(C)を保護することにより、鉄系架橋触媒(C)の溶液状態での触媒活性を低下させ、配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
これらのなかでも、ポットライフと即硬化性のバランスの点から、架橋遅延剤(D)としてアセチルアセトンを用いることが好ましい。
なお、これら架橋遅延剤(D)は1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0061】
具体的な架橋遅延剤(D)としては、例えば、株式会社ダイセル製「アセチルアセトン」、東京化成工業製「アセチルアセトン」、和光純薬工業製「アセチルアセトン」、キシダ化学製「アセチルアセトン」等が挙げられる。
【0062】
架橋遅延剤(D)は、鉄系架橋触媒(C)の架橋促進効果とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、鉄系架橋触媒(C)に対する架橋遅延剤(D)の割合を適切に設定することが好ましい。
粘着剤組成物のポットライフを延長し、かつ即硬化性を損なわないためには、架橋遅延剤(D)に対する鉄系架橋触媒(C)(固形分換算量)の含有割合(重量比)(C)/(D)は、好ましくは(C)/(D)=0.1~100、特に好ましくは0.5~90、更に好ましくは1~80である。
鉄系架橋触媒(C)の含有量に対して、架橋遅延剤(D)の含有量が少なすぎると、ポットライフが短く塗工性が低下する傾向があり、多すぎると即硬化性が低下する傾向がある。
【0063】
上記架橋遅延剤(D)の含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、特に好ましくは0.5~40重量部、更に好ましくは1.0~30重量部である。
架橋遅延剤(D)の含有量が多すぎると即硬化性が低下する傾向があり、含有量が少なすぎるとポットライフが短縮する傾向がある。
【0064】
〔その他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘着付与樹脂等の添加剤を更に含有していてもよく、これらの添加剤は1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。特に酸化防止剤は粘着剤層の安定性を保つのに有効である。酸化防止剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.01~5重量%である。なお、添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されていても良い。
【0065】
本発明の粘着剤組成物は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、鉄系架橋触媒(C)、架橋遅延剤(D)、および必要に応じてその他の成分を常套の方法により配合することにより調製することができるが、架橋遅延剤(D)を配合する前に鉄系架橋触媒(C)を配合すると、架橋が開始してゲル化するので、鉄系架橋触媒(C)を配合する前に架橋遅延剤(D)を配合するか、あるいは鉄系架橋触媒(C)と架橋遅延剤(D)との混合物を配合することが好ましい。
【0066】
本発明の粘着剤組成物がイソシアネート系架橋剤(B)により架橋されてなる粘着剤のゲル分率は、通常、40~100%、好ましくは60~100%、特に好ましくは80~100%、更に好ましくは85~100%、殊に好ましくは90~100%である。
ゲル分率が低すぎると粘着剤の凝集力が低下し、糊残りを生じて、被着体汚染の原因となる傾向がある。
【0067】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(離型フィルムを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いて算出する。
【0068】
<粘着剤、粘着フィルム>
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(B)により架橋させることによって、微粘着~低粘着程度の粘着力(約2N/25mm以下)を有する粘着剤とすることができる。かかる粘着剤は、例えば、一時的に被着体の表面保護するために短期間(数時間~数日)被着体と貼り合せるマスキングフィルム用粘着剤などの粘着フィルム用粘着剤として好適に用いられる。
かかる粘着フィルムとしては、マスキングフィルムの他に、ITOなどからなる透明電極層の形成工程で用いられる透明電極層形成工程用粘着フィルム、半導体製造工程で用いられる半導体製造工程用テープなどが挙げられる。
【0069】
本発明においては、上記粘着剤組成物からマスキングフィルム用粘着剤などの粘着剤を調製し、基材であるフィルム上に粘着剤層を積層形成することにより、マスキングフィルムなどの粘着フィルムを得ることができる。なお、粘着剤層を構成する粘着剤は、上記粘着剤組成物がイソシアネート系架橋剤(B)にて架橋されたものである。
【0070】
粘着剤層を積層形成する基材としては、例えば、金属、ポリエステル系樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂、ポリイミドおよびその誘導体、エポキシ樹脂等からなる単層または積層構造のフィルムが挙げられる。マスキングフィルムなどの粘着フィルムには、粘着剤層の基材とは反対側の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましい。マスキングフィルムなどの粘着フィルムを実用に供する際には、上記離型フィルムを剥離して用いられる。上記離型フィルムとしては、例えば、シリコン系の離型フィルム、オレフィン系の離型フィルム、フッ素系の離型フィルム、長鎖アルキル系の離型フィルム、アルキッド系の離型フィルムを用いることができる。
【0071】
上記の粘着フィルムを製造する方法については、〔1〕基材上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型フィルムを貼合し、エージング処理を行なう方法、〔2〕離型フィルム上に、粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、基材を貼合し、エージング処理を行なう方法等が挙げられる。これらの中でも、〔1〕の方法が基材との密着性を上げる点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0072】
上記エージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常、0~150℃、好ましくは10~100℃、特に好ましくは20~80℃、時間は通常、30日以下、好ましくは14日以下、特に好ましくは7日以下であり、具体的には、例えば23℃で3~10日間、40℃で1~7日間等の条件で行なうことができる。
【0073】
粘着フィルムの製造においては、粘着剤組成物からなる層(以下、粘着剤組成物層という。)の架橋反応を充分に進行させるため、通常、エージング処理を要するものであるが、本発明では上記鉄系架橋触媒(C)を含有することで即硬化性に優れたものとなるため、エージング中に粘着剤組成物層に基材フィルムや離型フィルム表面の微細な凹凸が転写されることなく平滑な粘着剤層面を形成することができる。
【0074】
粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは5~60重量%、特に好ましくは10~50重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンが好適に用いられる。
【0075】
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なうことができる。
【0076】
粘着フィルムにおける粘着剤層の厚みは、通常5~300μm、好ましくは5~50μm、特に好ましくは10~30μmである。この粘着剤層が薄すぎると粘着物性が安定し難くなる傾向があり、厚すぎると粘着フィルム全体が厚すぎて、使い勝手が悪くなる傾向がある。
【0077】
粘着フィルムの被着体としては、耐熱性を有する材料の基材を用いることが好ましく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、マグネシウム、ニッケル、チタン等の金属板あるいは金属箔等;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、エステルアクリレート等のポリエステル系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン-4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;ポリイミドおよびその誘導体;ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂複合材料、脂環エポキシ樹脂、エポキシノボラック、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート等のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0078】
粘着フィルムの粘着剤層(または粘着剤組成物層)の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜調整されるが、例えばSUS-BA板、ハードコート処理されたPETフィルム、ガラス、ポリイミドフィルム等に貼り付ける場合には、塗工直後(エージング前)の粘着剤組成物層の粘着力が、0.01~1.0N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは0.05~0.5N/25mm、更に好ましくは0.1~0.3N/25mmである。
【0079】
また、エージング後の粘着フィルムの粘着剤組成物層の粘着力が、0.01~1.0N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは0.05~0.5N/25mm、更に好ましくは0.1~0.3N/25mmである。
【0080】
さらに、加熱後の粘着フィルムの粘着剤層の粘着力が0.01~1.0N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは0.05~0.5N/25mm、更に好ましくは0.1~0.3N/25mmである。
【0081】
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる、マスキングフィルムなどの粘着フィルムは、高温条件下で使用した後でも、被着体から剥離した際に汚染が生じ難く、かつ小さな力で剥離することができるので、例えば、FPC基板等の回路基板や透明電極層を一時的に表面保護するためのマスキングフィルムなど耐熱を要するマスキング用途、または製造工程中で製品を一時的に保持・補強のために固定するための透明電極層形成工程用粘着フィルムや半導体製造工程用テープなどの仮固定用途全般に用いることができる。
また、本発明の粘着剤組成物は即硬化性を有し、離型フィルムの有する微細な凹凸が粘着剤層の粘着面に転写されにくいため、フラットパネルディスプレイやタッチパネルなどのディスプレイの保護フィルム用として用いた場合でも、凹凸による視認性の低下などを防ぐことができる。
【0082】
本発明の粘着剤組成物を用いて得られるマスキングフィルムの使用方法としては、例えば、該マスキングフィルムを被着体表面に貼り付け、通常100℃以上(好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上)の加熱工程に付した後、そのマスキングフィルムを被着体表面から剥離するという使用方法が好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「%」および「部」とあるのは重量基準を意味する。
【0084】
<アクリル系樹脂(A)溶液の製造>
〔製造例1:アクリル系樹脂(A-1)〕
温度計、攪拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル40部を仕込み、撹拌しながら昇温し、約80℃になったらブチルアクリレート(BA)(a2)64.85部、メチルメタクリレート(MMA)(a2)30.0部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(a1)5.0部、アクリル酸(AAc)(a3)0.15部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部、酢酸エチル5.0部を混合溶解させた混合液を2時間にわたって滴下した。更に、重合途中に、酢酸エチル5.0部にAIBN0.025部を混合させた混合溶液、最後に酢酸エチル5.0部にAIBN0.05部を混合させた混合溶液を逐次追加しながら前記温度で還流下6.0時間還流させた後、酢酸エチルとトルエンで40%希釈して、100重量部(固形分換算量)中の水酸基数3.8×10-2molのアクリル系樹脂(A-1)を得た。
【0085】
〔製造例2:アクリル系樹脂(A-2)〕
温度計、攪拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル74.2部を仕込み、撹拌しながら昇温し、約80℃になったらBA(a2)91.85部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(a1)7.0部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)(a3)0.15部、AIBN0.06部、酢酸エチル6.0部を混合溶解させた混合液を2時間にわたって滴下した。更に、重合途中に、酢酸エチル0.3部に4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)(a1)0.8部を混合させた混合溶液、酢酸エチル0.3部にAIBN0.05部を混合させた混合溶液、酢酸エチル0.3部に4HBA(a1)0.2部を混合させた混合溶液、最後に酢酸エチル0.3部にAIBN0.05部を混合させた混合溶液を逐次追加しながら前記温度で還流下7.5時間還流させた後、酢酸エチルで希釈して42%希釈して、100重量部(固形分換算量)中の水酸基数6.7×10-2molのアクリル系樹脂(A-2)を得た。
【0086】
上記製造例1および2でそれぞれ製造されたアクリル系樹脂(A-1)および(A-2)の原料組成、重量平均分子量、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)、ガラス転移温度を表1に示す。
【0087】
【0088】
<イソシアネート系架橋剤(B)>
(B-1)東ソー株式会社製「コロネートHX」
<鉄系架橋触媒(C)>
(C-1)日本化学産業株式会社製「ナーセム第二鉄」(分子量353.17)
<架橋遅延剤(D)>
(D-1)株式会社ダイセル製「アセチルアセトン」
【0089】
<その他金属触媒>
東京化成工業株式会社製「ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)」(分子量263.61)
日本化学産業株式会社製「ナーセムチタン」(分子量392.31)
日本化学産業株式会社製「ナーセム錫」(分子量431.15)
日本化学産業株式会社製「ナーセムアルミニウム」(分子量324.31)
【0090】
<実施例1>
アクリル系樹脂(A-1)の固形分100部に対して、コロネートHX(B-1)を7部、ナーセム第二鉄(C-1)を1.0部、アセチルアセトン(D-1)を20部配合して、粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが約20μmになるように、基材としてのPETフィルム(東レ株式会社製、T60 ルミラー、厚み38μm)に塗布した後、120℃で2分間乾燥させた。その後、塗工面に、離型処理されたPETフィルム(三井化学東セロ株式会社製、PET-01-BU、厚み38μm)を貼着し保護して、粘着フィルムを作製した。
【0091】
<実施例2、3および比較例1~7>
粘着剤組成物の各成分を表2に示す割合で配合した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、更に粘着フィルムを作製した。
【0092】
得られた粘着剤組成物および粘着フィルムを用いて以下の評価を行ない、その結果を表3にまとめた。
【0093】
<即硬化性(表面凹凸)>
(評価方法)
上記で得られた粘着フィルムを40℃で7日間エージング処理した後、粘着フィルムの離形フィルムを剥離し、粘着剤層表面に、JFC-1600オートファインコーターにて、30mA、40sで白金を蒸着させた(蒸着層の厚み約10nm)。その後、白金を蒸着させた粘着剤層表面をマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-900(型番))にて観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・表面の凹凸はほとんど確認されなかった。
△・・・表面の凹凸は少し確認された。
×・・・表面の凸凹は多く確認された。
【0094】
<ポットライフ>
(評価方法)
上記で調製した塗工前の粘着剤組成物をサンプルビンに入れて30分間撹拌後、25℃の恒温水槽につけておき、試験開始(粘着剤組成物を調製した時点)から1時間経過後の粘着剤組成物の粘度を、B型粘度計を用いて、25℃×1分で測定した。その後、更に続けて25℃の恒温水槽につけておき、試験開始から8時間経過後の粘度を、B型粘度計を用いて、25℃×1分で測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・8時間経過後の粘度が1時間経過後の粘度の2倍未満であった。
△・・・8時間経過後の粘度が1時間経過後の粘度の2倍以上、3倍未満であった。
×・・・8時間経過後の粘度が1時間経過後の粘度の3倍以上であった。
【0095】
<粘着力>
・加熱前
(評価方法)
上記で得られた粘着フィルムを40℃で7日間エージング処理した後、25mm×100mmの試験片を作製し、離型フィルムを剥がした後に、ステンレス板(SUS304BA板)にHC(ハードコート)-PETフィルム(東レ社製「タフトップTHS」)のPET面が貼り付けられた被着体のHC面に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した。
その後、剥離速度0.3m/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・0.3N/25mm未満
△・・・0.3N/25mm以上、1.0N/25mm未満
×・・・1.0N/25mm以上
【0096】
・加熱後
(評価方法)
上記で得られた粘着フィルムを40℃で7日間エージング処理した後、25mm×100mmの試験片を作製し、離型フィルムを剥がした後に、ステンレス板(SUS304BA板)にHC(ハードコート)-PETフィルム(東レ社製「タフトップTHS」)のPET面が貼り付けられた被着体のHC面に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した。
続いて、150℃の雰囲気下に1.0時間晒し、その後23℃に戻した。更に23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて2時間放置した後、剥離速度0.3m/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・0.3N/25mm未満
△・・・0.3N/25mm以上、1.0N/25mm未満
×・・・1.0N/25mm以上
【0097】
【0098】
【0099】
表2および表3に示す結果から、本発明に係る実施例1~3では、十分なポットライフを持ちながら、即硬化性に優れ、かつ高温条件下で使用した後の粘着力の上昇が少なく、小さな力で剥離でき、さらに被着体から剥離した際に汚染が生じ難いことが分かる。
一方、比較例1では、水酸基含有アクリル系樹脂の水酸基の数(X)と鉄系架橋触媒(C)の数(Y)との積(X×Y)が式(1)の下限値未満であるため、即ち水酸基含有アクリル系樹脂の水酸基価に対して鉄系架橋触媒の添加量が十分でないため、粘着剤層表面に凸凹が多く確認された。
また、比較例2~5では、鉄系架橋触媒(C)以外の他の金属触媒を用いているため、ポットライフが不十分であったり、即硬化性に劣ったり、高温条件下で使用した後の粘着力が上昇したりするなど、本発明のような効果が得られなかった。
また、比較例6、7では、鉄系架橋触媒(C)を用いていないため、即硬化性に劣り、粘着剤層表面に凸凹が多く確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の粘着剤組成物は、FPC基板等の回路基板や透明電極層等のタッチパネル関連部材の製造工程に含まれる加熱工程においてマスキングや固定を行なうためのマスキングフィルム、透明電極層形成工程用粘着フィルム、半導体製造工程用テープなどの粘着フィルムに好適に用いることができる。