(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】電極形成方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220628BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/17
B41J2/01 121
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2018043626
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】柳田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】岸 和人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康司
(72)【発明者】
【氏名】佐井 範行
(72)【発明者】
【氏名】升澤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】後河内 透
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸栄
(72)【発明者】
【氏名】山口 真人
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】笠 忠則
(72)【発明者】
【氏名】野津 龍太郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-043290(JP,A)
【文献】特開2015-223825(JP,A)
【文献】特開2015-044351(JP,A)
【文献】特開2015-063064(JP,A)
【文献】特開2009-045801(JP,A)
【文献】特開平08-258254(JP,A)
【文献】特開2014-144588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出対象物に液体を
液体吐出ヘッドから吐出する液体吐出工程と、
前記液体吐出ヘッド内の吐出前の前記液体を冷却する冷却工程と、
前記液体が吐出された前記吐出対象物を加熱する加熱工程と、を有し、
前記吐出対象物は、多数の粒子状物である活物質が積層された構造を有する電極合材層である
電極形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出対象物に液体吐出ヘッドからインク等の液体を吐出し、乾燥させて画像等を形成する液体吐出装置が知られている。
【0003】
液体吐出装置には、モータや加熱器等の発熱部品が多く用いられており、装置全体又は一部部品の温度が上がりすぎてしまう傾向にある。特に、液体吐出ヘッドの温度が上昇した場合、液体吐出ヘッド内のノズル付近の液体の乾きを生じてノズル詰まりが発生するおそれがある。そこで、ノズル詰まりを低減するため、液体吐出ヘッド内の液体の温度上昇を防止するファンを設けることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、吐出対象物上に吐出した液体が吐出対象物に染み込むことでにじみが生じる問題があり、ノズル詰まりと共に対策を講じる必要がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、液体吐出ヘッドのノズル詰まりを低減すると共に、吐出対象物への液体の染み込みを低減することが可能な電極形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本電極形成方法は、吐出対象物に液体を液体吐出ヘッドから吐出する液体吐出工程と、前記液体吐出ヘッド内の吐出前の前記液体を冷却する冷却工程と、前記液体が吐出された前記吐出対象物を加熱する加熱工程と、を有し、前記吐出対象物は、多数の粒子状物である活物質が積層された構造を有する電極合材層であることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、液体吐出ヘッドのノズル詰まりを低減すると共に、吐出対象物への液体の染み込みを低減することが可能な電極形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る液体吐出装置の概略構成を例示する側面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る液体吐出装置のキャリッジ近傍を例示する部分平面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る液体吐出装置の主な制御機構を表すハードウェアブロック図の一例である。
【
図4】第1の実施の形態に係る液体吐出装置のCPUの機能ブロック図の一例である。
【
図5】液体吐出に関するフローチャートの一例である。
【
図6】第1の実施の形態の変形例1に係る液体吐出装置の概略構成を例示する側面図である。
【
図7】第1の実施の形態の変形例2に係る液体吐出装置のキャリッジ近傍を例示する部分平面図である。
【
図8】第1の実施の形態の変形例3に係る液体吐出装置の液体吐出ヘッド近傍の概略構成を例示する側面図である。
【
図9】多孔質体を備えた吐出対象物を例示する模式図である。
【
図10】多孔質体上に従来の液体吐出装置を用いて機能層を形成した構造体を例示する模式図である。
【
図11】多孔質体上に液体吐出装置1を用いて機能層を形成した構造体を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る液体吐出装置の概略構成を例示する側面図である。
図2は、第1の実施の形態に係る液体吐出装置のキャリッジ近傍を例示する部分平面図である。
【0011】
図1及び
図2を参照すると、液体吐出装置1は、供給トレイ10の吐出対象物積載部11上に積載した吐出対象物500を供給するための供給部12を有している。供給部12は、吐出対象物積載部11から吐出対象物500を1つずつ分離給送する半月コロ(供給コロ)121、及び供給コロ121に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド122を備え、分離パッド122は供給コロ121側に付勢されている。
【0012】
なお、吐出対象物500としては、後述のように様々なものが考えられるが、本実施の形態では吐出対象物500が紙等の被記録媒体である場合を例にして説明する。又、本実施の形態では吐出する液体としてインクを用い、吐出対象物500上に画像を形成する場合を例にして説明する。
【0013】
液体吐出装置1は、供給部12から供給された吐出対象物500を液体吐出ヘッド34の下方側に送り込むために、吐出対象物500を案内するガイド部材13と、カウンタローラ14と、搬送ガイド部材15と、先端加圧コロ16を有する押え部材17とを備えている。又、液体吐出装置1は、給送された吐出対象物500を静電吸着して液体吐出ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト18を備えている。
【0014】
搬送ベルト18は、無端状ベルトであり、搬送ローラ19とテンションローラ20との間に掛け渡されて、ベルトの搬送方向(副走査方向)に周回するように構成されている。搬送ベルト18は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、ETFEピュア材で形成した吐出対象物吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0015】
液体吐出装置1は、搬送ベルト18の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ21を備えている。帯電ローラ21は、搬送ベルト18の表層に接触し、搬送ベルト18の回転に従動して回転するように配置され、軸の両端に所定の圧力をかけている。なお、搬送ローラ19はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト18の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
【0016】
搬送ベルト18は、副走査モータによって搬送ローラ19を回転駆動させて、
図1においては右方向、
図2においては下方向(矢印で図示したベルト搬送方向)に周回移動する。搬送ベルト18の移動方向がキャリッジ33の副走査方向であり、キャリッジ33の主走査方向と直交している。
【0017】
液体吐出装置1は、画像情報に従って液体吐出ヘッド34から吐出されるインクによって所定の構造が形成された吐出対象物500を排出するための排出部22を有している。排出部22は、搬送ベルト18から吐出対象物500を分離するための分離爪221と、排出ローラ222と、排出コロ223とを備えている。排出ローラ222の下方には、排出トレイ23を備えている。
【0018】
搬送ローラ19とテンションローラ20との間には、加熱機構付塗工ステージロール24、乾燥部25、及び加熱機構付プレスロール26が、副走査方向に順次配置されている。
【0019】
加熱部である加熱機構付塗工ステージロール24は、液体吐出ヘッド34の直下に配置されている。言い換えれば、加熱機構付塗工ステージロール24は、搬送ベルト18を介して、液体吐出ヘッド34と対向する位置に配置されている。
【0020】
加熱機構付塗工ステージロール24は、例えば内蔵されたヒータ241により、搬送ベルト18上を搬送される吐出対象物500を加熱する。吐出対象物500を加熱することにより、吐出対象物500上に着弾したインクの溶媒の蒸発を早期に開始させることができる。加熱機構付塗工ステージロール24の近傍には、加熱機構付塗工ステージロール24の温度を検出する温度センサ242が配置されている。温度センサ242により検出された温度に基づいて、加熱機構付塗工ステージロール24の温度を所定の範囲内に制御することができる。
【0021】
吐出対象物500が搬送される副走査方向の液体吐出ヘッド34よりも後段に、吐出対象物500上に吐出されたインクを乾燥させる一対の乾燥部25を配置することができる。一対の乾燥部25は、例えば、搬送ベルト18を介して互いに対向する位置に配置されている。一対の乾燥部25は、例えば赤外線や温風により、搬送ベルト18上を搬送される吐出対象物500上に吐出されたインクを加熱して乾燥させることができる。
【0022】
例えば、インクに揮発し易い溶媒と揮発しにくい溶媒が含まれている場合、加熱機構付塗工ステージロール24で吐出対象物500を加熱して揮発し易い溶媒を蒸発させてインクの粘度を高くし、吐出対象物500にインクが染み込みにくくすることができる。その後、乾燥部25で揮発しにくい溶媒を蒸発させて完全に乾燥させることができる。
【0023】
このように、加熱機構付塗工ステージロール24及び乾燥部25の加熱により、液体吐出ヘッド34から吐出対象物500上に吐出されたインクの溶媒を蒸発させてインクを乾燥させることができる。但し、加熱機構付塗工ステージロール24のみにより、液体吐出ヘッド34から吐出対象物500上に吐出されたインクの溶媒を蒸発させることができる場合には、乾燥部25を配置しなくてもよい。
【0024】
吐出対象物500が搬送される副走査方向の液体吐出ヘッド34よりも後段に、乾燥したインクを加熱しながら加圧する加熱機構付加圧部である一対の加熱機構付プレスロール26を配置することができる。一対の加熱機構付プレスロール26は、例えば、搬送ベルト18を介して互いに対向する位置に配置されている。
【0025】
加熱機構付プレスロール26は、例えば内蔵されたヒータ261により搬送ベルト18上を搬送される吐出対象物500上で乾燥したインクを加熱しながら、互いに対向する加熱機構付プレスロール26で挟持することで吐出対象物500上で乾燥したインクを加圧する。これにより、吐出対象物500上で乾燥したインクの厚みばらつきを低減することができる。但し、加熱機構付プレスロール26は、必要に応じて配置すればよい。例えば、インクの厚みの精度が重要でない場合には、加熱機構付プレスロール26を配置しなくてもよい。
【0026】
液体吐出装置1の背面部には、両面ユニット27が着脱自在に装着されている。この両面ユニット27は搬送ベルト18の逆方向回転で戻される吐出対象物500を取り込んで反転させて再度カウンタローラ14と搬送ベルト18との間に供給する。又、両面ユニット27の上面は手差しトレイ28としている。
【0027】
図2に示すように、キャリッジ33の近傍において、液体吐出装置1の左右の側面には、フレーム31を構成する側板311及び312が配置されている。側板311及び312にはガイドロッド32が横架されている。キャリッジ33は、ガイドロッド32により主走査方向に摺動自在に保持されている。キャリッジ33は、主走査モータによってタイミングベルトを介して
図2の矢印で示したキャリッジ主走査方向に移動走査される。
【0028】
キャリッジ33には、液体吐出ヘッド34が、吐出方向を下方(搬送ベルト18の方向)に向けて装着されている。液体吐出ヘッド34には、例えば、インクを吐出する複数のノズルからなるノズル列が、主走査方向と直交する副走査方向に配列されている。
【0029】
液体吐出ヘッド34として、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッドを主走査方向に沿って配列することができる。
【0030】
液体吐出ヘッド34としては、インクを吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を備えたものを使用することができる。具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等が挙げられる。
【0031】
液体吐出ヘッド34にはドライバICを搭載し、制御ボード35との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル等)36を介して接続している。
【0032】
又、キャリッジ33には、液体吐出ヘッド34に液体を供給するサブタンク37を搭載している。サブタンク37にはインク供給チューブ38を介して、カートリッジ装填部39に着脱自在に装着されたカートリッジ40から液体が補充供給される。カートリッジ40は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色用のカートリッジ40k、40c、40m、及び40yを備えている。なお、このカートリッジ装填部39にはカートリッジ40内のインクを送液するための供給ポンプユニット41が設けられ、又、インク供給チューブ38は這い回しの途中でフレーム31を構成する後板313に保持部材42により保持されている。
【0033】
印刷中や待機中に機内温度があがった場合には、制御ボード35等の近くの装置奥側のフレーム31に配置したファン101の起動停止を制御することにより、液体吐出ヘッド34や装置内全体の温度を低下させることができる。
【0034】
又、カートリッジ装填部39の近傍に配置したファン100の起動停止を制御することにより、液体吐出ヘッド34に供給される前の液体を冷却することができる。この場合、ファン100により冷却された液体が液体吐出ヘッド34に供給され、所定のタイミングで吐出される。
【0035】
液体吐出ヘッド34には温度センサ43が装着することができる。この場合、温度センサ43で検出した液体吐出ヘッド34の温度と予め設定しておいた上限温度とを比較して、液体吐出ヘッド34が上限温度を超えたら冷却部であるファン100が稼働するように制御することができる。又、予め設定しておいた下限温度より液体吐出ヘッド34の温度が下回ったときには、ファン100が停止するように制御することができる。
【0036】
但し、液体吐出ヘッド34に温度センサを装着せずに、常にファン100を稼働するようにしてもよい。この場合は、液体吐出ヘッド34が常に上限温度を超えないような冷却能力を備えたファン100を選定すればよい。
【0037】
キャリッジ33の走査方向における一方の非印字領域には、液体吐出ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構44を配置している。維持回復機構44は、液体吐出ヘッド34の各ノズル面をキャピングするためのキャップ部材45と、ノズル面をワイピング(清掃)するためのブレード部材であるワイパーブレード46と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け47等を備えている。ここでは、キャップ部材45aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ部材45b~45dは保湿用キャップとしている。
【0038】
維持回復機構44による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ部材45に排出されたインク、或いはワイパーブレード46に付着してワイパークリーナで除去されたインク、空吐出受け47に空吐出されたインクは廃液タンクに排出されて収容される。
【0039】
キャリッジ33の走査方向における他方の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け48を配置し、空吐出受け48は液体吐出ヘッド34のノズル列に対応した開口49等を備えている。
【0040】
液体吐出装置1の本体の内部後方側にはホストとの間でデータを送受するためのUSBなどの通信回路部(インタフェース)が設けられると共に、液体吐出装置1の制御を司る制御部を構成する制御回路基板が設けられている。
【0041】
このように構成された液体吐出装置1においては、供給トレイ10から吐出対象物500が1つずつ分離供給され、略鉛直上方に供給された吐出対象物500はガイド部材13で案内され、搬送ベルト18とカウンタローラ14との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド部材15で案内されて先端加圧コロ16で搬送ベルト18に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0042】
このとき、制御回路によってACバイアス供給部から帯電ローラ21に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト18が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト18上に吐出対象物500が給送されると、吐出対象物500が搬送ベルト18に吸着され、搬送ベルト18の周回移動によって吐出対象物500が副走査方向に搬送される。
【0043】
そこで、吐出対象物500を停止させ、キャリッジ33を1行分移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド34からインクを吐出することにより、吐出対象物500に1行分を記録する。1行分の記録が終了したら、吐出対象物500を1行分搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は吐出対象物500の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、吐出対象物500を排出トレイ23に排出する。
【0044】
印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構44側に移動されて、キャップ部材45で液体吐出ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。又、キャップ部材45で液体吐出ヘッド34をキャッピングした状態で吸引ポンプによってノズルから記録液の一部を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。又、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、液体吐出ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0045】
図3は、第1の実施の形態に係る液体吐出装置の主な制御機構を表すハードウェアブロック図の一例である。制御部600は、例えば、制御ボード35に配置されている。制御部600は、液体吐出装置1全体の制御を司るCPU602と、CPU602が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM603と、吐出対象物500に関するデータ等を一時格納するRAM604と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリであるNVRAM605と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC606とを備えている。
【0046】
制御部600は、ホスト側(データ送信側)とのデータ、信号の送受を行うためのホストI/F601と、液体吐出ヘッド34を駆動制御するためのヘッド駆動部608と、主走査モータ615を駆動するための主走査モータ駆動部609と、搬送ベルト18を周回移動させる副走査モータ616を駆動するための副走査モータ駆動部610と、ファンモータ617を駆動するためのファンモータ駆動部611と、加熱機構付塗工ステージロール24を駆動するためのステージロール駆動部612と、乾燥部25を駆動するための乾燥部駆動部613と、加熱機構付プレスロール26を駆動するプレスロール駆動部614と、各種のセンサ618からの検知信号を入力するためのI/O607等を備えている。又、制御部600には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル619が接続されている。
【0047】
制御部600は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読み取り装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F601で受信する。
【0048】
そして、CPU602は、ホストI/F601に含まれる受信バッファ内のデータを読み出して解析し、ASIC606にて必要な処理(データの並び替え処理等)を行ってヘッド駆動部608にデータを転送する。なお、インクを吐出するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM603にデータを格納して行ってもよいし、ホスト側のプリンタドライバでデータをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
【0049】
ヘッド駆動部608は、液体吐出ヘッド34の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、液体吐出ヘッド34にシリアルデータで送出し、又、所定のタイミングでラッチ信号を液体吐出ヘッド34に送出する。
【0050】
ヘッド駆動部608は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM603で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0051】
図4は、第1の実施の形態に係る液体吐出装置のCPUの機能ブロック図の一例であり、液体吐出に関する部分を示している。
図4に示すように、CPU602は、機能ブロックとして、ステージロール制御手段6021と、ファンモータ制御手段6022と、液体吐出制御手段6023とを有している。
【0052】
図5は、液体吐出に関するフローチャートの一例である。
図5に示すように、吐出対象物500にインクを吐出する際に、まず、ステップS100において、ステージロール制御手段6021は、ステージロール駆動部612に駆動の指令を送信し、加熱機構付塗工ステージロール24を駆動しヒータ241に通電して加熱させる。
【0053】
次に、ステップS101において、ステージロール制御手段6021は、温度センサ242の値をモニタし、温度センサ242の値が所定範囲内であるか否かを判定する。ステップS101において、ステージロール制御手段6021が温度センサ242の値が所定範囲内でないと判定した場合には(Noの場合)、所定のタイミングでステップS101の判定を繰り返す。
【0054】
ステップS102において、ステージロール制御手段6021が温度センサ242の値が所定範囲内であると判定した場合には(Yesの場合)、ステップS102に移行する。ステップS102では、ファンモータ制御手段6022は、ファンモータ駆動部611に駆動の指令を送信し、ファンモータ617を駆動しファン100を動作(回転)させる。
【0055】
次に、ステップS103において、ファンモータ制御手段6022は、温度センサ43の値をモニタし、温度センサ43の値が所定値以下であるか否かを判定する。ステップS103において、ファンモータ制御手段6022が温度センサ43の値が所定値以下でないと判定した場合には(Noの場合)、所定のタイミングでステップS103の判定を繰り返す。
【0056】
ステップS103において、ファンモータ制御手段6022が温度センサ43の値が所定値以下であると判定した場合には(Yesの場合)、ステップS104に移行する。ステップS104では、液体吐出制御手段6023は、ヘッド駆動部608に液体吐出ヘッド34からインクを吐出させるように指令を出す。ヘッド駆動部608は、液体吐出ヘッド34の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、液体吐出ヘッド34にシリアルデータで送出し、又、所定のタイミングでラッチ信号を液体吐出ヘッド34に送出する。これにより、吐出対象物500にインクが吐出される。
【0057】
このように、液体吐出装置1では、液体吐出ヘッド34の直下に加熱機構付塗工ステージロール24を配置し、インクが吐出される前の吐出対象物500を加熱している。これにより、吐出対象物500上に着弾したインクの溶媒の蒸発を早期に開始させることが可能となり、吐出対象物500上に着弾したインクの粘度を急速に高くすることができる。その結果、吐出対象物500へのインクの染み込みを低減することが可能となり、紙等の被記録媒体である吐出対象物500にインクによるにじみが生じることを防止できる。
【0058】
又、液体吐出ヘッド34と吐出対象物500とのクリアランスは通常1mm程度である。すなわち、加熱機構付塗工ステージロール24と液体吐出ヘッド34との距離はあまり離れていない。そのため、加熱機構付塗工ステージロール24が吐出対象物500を加熱する際に、加熱機構付塗工ステージロール24と対向配置された液体吐出ヘッド34も加熱される。液体吐出ヘッド34が加熱されると、インクの乾きを生じてノズル詰まりが発生するおそれがあるが、液体吐出装置1では液体吐出ヘッド34で吐出する前のインクをファン100により所定の温度以下に冷却しているため、インクが乾いてノズル詰まりが発生するおそれを低減できる。
【0059】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、インクを冷却するファンの配置が第1の実施の形態と異なる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0060】
図6は、第1の実施の形態の変形例1に係る液体吐出装置の概略構成を例示する側面図である。
図6を参照すると、液体吐出装置1Aでは、ファン100に代えてファン102が設けられた点が、液体吐出装置1(
図1等参照)と相違する。但し、ファン100に加えてファン102を設けてもよい。
【0061】
冷却部であるファン102は、液体吐出ヘッド34に供給されたインクを冷却可能な位置に配置することができる。
図6の例では、ファン102をキャリッジ33の上方に配置しているが、キャリッジ33の側方等に配置してもよい。キャリッジ33は主走査方向に移動するため、ファン102はキャリッジ33が移動範囲内の何れの位置にあっても冷却可能なように配置することが好ましい。
【0062】
第1の実施の形態のように、カートリッジ装填部39をファン100により冷却し、冷却した液体をサブタンク37を介して液体吐出ヘッド34に供給してもよいし、第1の実施の形態の変形例1のように、液体吐出ヘッド34に供給された液体をファン102により直接冷却してもよい。或いは、ファン100とファン102とを併用してもよい。
【0063】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、インクを冷却する冷却部としてファン以外を用いる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0064】
図7は、第1の実施の形態の変形例2に係る液体吐出装置のキャリッジ近傍を例示する部分平面図である。
図7を参照すると、液体吐出装置1Bでは、ファン100に代えてペルチェ素子200が設けられた点が、液体吐出装置1(
図1等参照)と相違する。ペルチェ素子200は、カートリッジ装填部39を直接冷却できる位置に配置されている。
図7の例では、ペルチェ素子200をカートリッジ装填部39の側方に配置しているが、カートリッジ装填部39の上方や下方等に配置してもよい。
【0065】
ペルチェ素子200は、線材等を介して例えば制御ボード35と接続され、制御ボード35により所定の温度に制御することができる。なお、ペルチェ素子200の放熱面にヒートシンクを配置してもよい。
【0066】
このように、液体吐出ヘッド34から吐出するインクを冷却する冷却部はファンには限定されず、ペルチェ素子等であってもよい。
【0067】
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、吐出対象物をロールトゥロール式で搬送する例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0068】
図8は、第1の実施の形態の変形例3に係る液体吐出装置の液体吐出ヘッド近傍の概略構成を例示する側面図である。
【0069】
図8を参照すると、液体吐出装置1Cは、巻き出しローラ51、搬送ローラ52及び53、巻き取りローラ54を有する点が、液体吐出装置1(
図1等参照)と相違する。液体吐出装置1Cは、搬送ベルト18を有していない。
【0070】
液体吐出装置1Cでは、巻き出しローラ51と巻き取りローラ54との間にウェブ状の吐出対象物510が掛け渡されている。巻き出しローラ51(巻き出し部)と巻き取りローラ54(巻き取り部)が回転することで、巻き出しローラ51から送り出された吐出対象物510が副走査方向に搬送され、巻き取りローラ54に巻き取られる。吐出対象物510は、例えば連続紙等の被記録媒体であるが、これには限定されない。
【0071】
このように、搬送ベルト18を有する構造に代えて、ウェブ状の吐出対象物510をロールトゥロール式で搬送する巻き出しローラ51及び巻き取りローラ54を有する構造としてもよい。ロールトゥロール式を用いることにより、生産性を向上することができる。
【0072】
〈第2の実施の形態〉
第1の実施の形態及びその変形例1~3では、吐出対象物として紙等の被記録媒体を用い、吐出する液体としてインクを用い、吐出対象物上に画像を形成する例を示した。第2の実施の形態では、多孔質体を備えた吐出対象物に液体として樹脂の前駆体を吐出する例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0073】
図9は、多孔質体を備えた吐出対象物を例示する模式図である。
図10は、多孔質体上に従来の液体吐出装置を用いて機能層を形成した構造体を例示する模式図である。
図11は、多孔質体上に液体吐出装置1を用いて機能層を形成した構造体を例示する模式図である。なお、多孔質体上に形成する機能層は、所定の機能を有する層であれば特に限定されないが、例えば樹脂を主成分とする絶縁層とすることができる。
【0074】
図9に示すように、吐出対象物520は、基体521上に形成された多孔質体522である。多孔質体522は、例えば、多数の粒状物が多層に積層された構造である。
【0075】
吐出対象物520上に、従来の液体吐出装置(加熱機構付塗工ステージロール24を有していない)を用いて液体を塗布して乾燥させ機能層523を形成する場合を考える。従来の液体吐出装置は、溶媒を早期に蒸発させる機構を備えていないため、液体が乾燥するまでの間に、液体の一部が多孔質体522に染み込んだ状態で乾燥する。そのため、
図10に示すように、機能層523の一部は多孔質体522の内部に存在する。
【0076】
これに対して、液体吐出装置1を用いて機能層523を形成した構造体は、吐出対象物520の多孔質体522上に吐出された液体に含まれる溶媒が加熱機構付塗工ステージロール24で加熱されて早期に蒸発し、液体の粘度が高くなるため、液体が吐出対象物500の内部に染み込みにくくなる。そのため、
図11に示すように、機能層523が多孔質体522の内部に全く存在しないか、或いは多孔質体522の内部に存在する機能層523の量が従来(
図10の例)よりも大幅に低減される。
【0077】
又、加熱機構付塗工ステージロール24により加熱機構付塗工ステージロール24と対向配置される液体吐出ヘッド34が加熱されると、吐出する液体の乾きを生じてノズル詰まりが発生するおそれがあるが、液体吐出装置1では液体吐出ヘッド34をファン100により所定の温度以下に冷却しているため、液体が乾いてノズル詰まりが発生するおそれを低減できる。
【0078】
以上の効果は、液体吐出装置1に代えて、液体吐出装置1A、1B、又は1Cを用いた場合も同様である。
【0079】
なお、吐出対象物520の多孔質体522上に機能層523を形成する場合、液体吐出ヘッド34(
図1~
図3参照)は、例えば、多孔質体522の上に機能層523を形成するための液体を吐出する1個のインクジェットヘッドとすることができる。
【0080】
例えば、基体521として金属製の電極基体を用い、多孔質体522を活物質を含む電極合材層とし、機能層523を多孔質の絶縁層とすることで、蓄電素子用の電極を形成することができる。蓄電素子用の電極において、機能層523として多孔質の絶縁層を形成する場合の材料等について、以下に説明する。
【0081】
機能層523が絶縁層である場合、機能層523は樹脂を主成分として形成することができる。ここで、樹脂を主成分とするとは、多孔質絶縁層を構成する全物質の50質量%以上を樹脂が占めることを意味する。
【0082】
樹脂を主成分とする絶縁層を形成する場合には、多孔質体522上に樹脂の前駆体溶液である液体を吐出し、乾燥させればよい。この場合、染み込み防止の観点から、加熱機構付塗工ステージロール24で加熱する際の温度範囲は60~120℃程度に制御することが好ましい。
【0083】
機能層523を形成するための樹脂は、特に限定されず、加熱によって架橋性の構造体形成が可能である樹脂であれば何でもよいが、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、エン-チオール反応を活用した樹脂が挙げられる。これらの中でも特に、反応性の高さからラジカル重合を利用して容易に構造体を形成可能なアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が生産性の観点から好ましい。
【0084】
上記樹脂は、熱によって硬化できる機能として、重合性モノマーと、熱によってラジカル又は酸を発生する化合物を混合した混合物を調液することで得ることができる。又、重合誘起相分離により機能層523を形成するためには、上記混合物に、予めポロジェンを混合させたインクを作製すればよい。
【0085】
ラジカル重合型のモノマーとしては、例えば特開平08-82925号公報に開示されたようなアクリル系化合物が、モノマーとして好適に用いられる。例えば、ミルセン,カレン,オシメン,ピネン,リモネン,カンフェン,テルピノレン,トリシクレン,テルピネン,フェンチェン,フェランドレン,シルベストレン,サビネン,ジペンテン、ボルネン、イソプレゴール、カルボン、等の不飽和結合を有するテルペンの2重結合をエポキシ化し、アクリル酸又はメタクリル酸を付加させたエステル化合物が挙げられる。
【0086】
或いは、シトロネロール,ピノカンフェオール,ゲラニオール,フェンチルアルコール,ネロール,ボルネオール,リナロール,メントール,テルピネオール,ツイルアルコール,シトロネラール,ヨノン,イロン,シネロール,シトラール,ピノール,シクロシトラール,カルボメントン,アスカリドール,サフラナール,ピペリトール,メンテンモノオール,ジヒドロカルボン,カルベオール,スクラレオール,マノール,ヒノキオール,フェルギノール,トタロール,スギオール、ファルネソール,パチュリアルコール,ネロリドール,カロトール,カジノール,ランセオール,オイデスモール,フィトール,等のテルペン由来アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸のエステル化合物、更にはシトロネロル酸,ヒノキ酸,サンタル酸,エステル側鎖にメントン,カルボタナセトン,フェランドラール,ピメリテノン,ペリルアルデヒド,ツヨン,カロン,ダゲトン,ショウノウ,ビサボレン,サンタレン,ジンギベレン,カリオフィレン,クルクメン,セドレン,カジネン,ロンギホレン,セスキベニヘン,セドロール,グアヨール,ケッソグリコール,シペロン,エレモフィロン,ゼルンボン,カンホレン,ポドカルプレン,ミレン,フィロクラデン,トタレン,ケトマノイルオキシド,マノイルオキシド,アビエチン酸,ピマル酸,ネオアビエチン酸,レボピマル酸,イソ-d-ピマル酸,アガテンジカルボン酸,ルベニン酸,カロチノイド、ペラリアルデヒド、ピペリトン、アスカリドール、ピメン、フェンケン、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類等の骨格をエステル側鎖に有するアクリレート又はメタクリレート化合物が挙げられる。
【0087】
光重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα-ヒドロキシ-もしくは、α-アミノセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp'-ジクロロベンゾフェン、pp'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル等のベンゾインアルキルエ-テルやエステル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
【0088】
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。又、熱のみで重合させる場合は通常の光ラジカル発生剤であるA(AIBN)等の通常の熱重合開始剤を使用することができる。
【0089】
一方、光照射により酸を発生する光酸発生剤と、酸の存在下で重合する少なくとも1種のモノマーとで混合物を調整しても同様の機能を達成することができる。このような液体インクに光を照射すると、光酸発生剤が酸を発生し、この酸は重合性化合物の架橋反応の触媒として機能する。
【0090】
又、発生した酸はインク層内で拡散する。しかも、酸の拡散及び酸を触媒とした架橋反応は、加熱することにより加速可能であり、この架橋反応はラジカル重合とは異なって、酸素の存在によって阻害されることがない。得られる樹脂層は、ラジカル重合系の場合と比較して密着性にも優れる。
【0091】
酸の存在下で架橋する重合性化合物は、エポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等のような環状エーテル基を有する化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリル又はビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラミン化合物、ビニルエーテル類やビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、アルファ-メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールとアクリル、メタクリル等のエステル化合物をはじめとするビニルアルコールエステル類等、カチオン重合可能なビニル結合を有するモノマー類を併せて使用することが挙げられる。
【0092】
光照射により酸を発生する光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、及びそれらの混合物等を使用することができる。
【0093】
中でも光酸発生剤としては、オニウム塩を使用することが望ましい。使用可能なオニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パラトルエンスルホネートアニオン、及びパラニトロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、及びスルホニウム塩を挙げることができる。又、光酸発生剤は、ハロゲン化トリアジン化合物でも使用できる。
【0094】
光酸発生剤は、場合によって、増感色素を更に含んでいてもよい。増感色素としては、例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン、アントラセン、及びレーザ色素類等が挙げられる。
【0095】
ポロジェンは、硬化後の機能層523中に空孔を形成するために混合される。 ポロジェンとしては、前記重合性モノマー及び熱によってラジカル又は酸を発生する化合物を溶解可能であり、かつ、前記重合性モノマー及び熱によってラジカル又は酸を発生する化合物が重合していく過程で、相分離を生じさせることが可能な液状物質ならば全て用いることができる。
【0096】
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等エステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。
【0097】
又、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液状物質もポロジェンとして機能する傾向がある。中でも特に、エチレングリコール類は高沸点のものも多く存在する。相分離機構は形成される構造体が、ポロジェンの濃度に大きく依存する。そのため、上記液状物質を使用すれば、安定した多孔質絶縁層の形成が可能となる。又、ポロジェンは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
〈液体吐出装置の他の変形例〉
本発明に係る液体吐出装置は、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)等を含むものである。
【0099】
又、液体吐出装置は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0100】
液体吐出装置の吐出対象物は、液体が付着可能なものであれば特に限定されない。「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、多孔質体、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
【0101】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0102】
又、「液体」には、インク、樹脂の前駆体溶液、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
【0103】
又、液体吐出装置は、液体吐出ヘッドと吐出対象物とが相対的に移動する装置を含むが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。なお、液体吐出装置1、1A、1B、及び1Cは、シリアル型装置の一例である。
【0104】
又、液体吐出装置としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
【0105】
又、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0106】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0107】
1、1A、1B、1C 液体吐出装置
10 供給トレイ
11 吐出対象物積載部
12 供給部
13 ガイド部材
14 カウンタローラ
15 搬送ガイド部材
16 先端加圧コロ
17 押え部材17
18 搬送ベルト
19 搬送ローラ
20 テンションローラ
21 帯電ローラ
22 排出部
23 排出トレイ
24 加熱機構付塗工ステージロール
25 乾燥部
26 加熱機構付プレスロール
27 両面ユニット
28 手差しトレイ
31 フレーム
32 ガイドロッド
33 キャリッジ
34 液体吐出ヘッド
35 制御ボード
36 ハーネス
37 サブタンク
38 インク供給チューブ
39 カートリッジ装填部
40、40k、40c、40m、40y カートリッジ
41 供給ポンプユニット
42 保持部材
43 温度センサ
44 維持回復機構
45、45a、45b、45c、45d キャップ部材
46 ワイパーブレード
47、48 空吐出受け
49 開口
51 巻き出しローラ
52、53 搬送ローラ
54 巻き取りローラ
100、101、102 ファン
121 半月コロ(供給コロ)
122 分離パッド
200 ペルチェ素子
221 分離爪
222 排出ローラ
223 排出コロ
241、261 ヒータ
242 温度センサ
311、312 側板
500、510、520 吐出対象物
521 基体
522 多孔質体
523 機能層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】