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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】蓄電装置および蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20220628BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H02M3/07
H02J7/00 K
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018049264
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019161975
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高井 正巳
(72)【発明者】
【氏名】岸 和人
(72)【発明者】
【氏名】大島 淳
(72)【発明者】
【氏名】今井 崇尋
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-236506(JP,A)
【文献】特開2015-152570(JP,A)
【文献】特開2015-154627(JP,A)
【文献】特開2011-015540(JP,A)
【文献】特開2005-229763(JP,A)
【文献】特開2017-099105(JP,A)
【文献】特開2017-099106(JP,A)
【文献】特開2016-131475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子と負荷回路に接続される蓄電装置であって、
複数の蓄電デバイスを有する蓄電部と、
前記複数の蓄電デバイスの直並列を切り替えるよう制御するタイミング制御部と、
前記タイミング制御部によって制御され、前記複数の蓄電デバイスの直並列を切り替える直並切替えスイッチ部と、を有し、
前記タイミング制御部は、ヒステリシス生成回路を含むことでヒステリシスを設けて、切り替えのタイミングを制御し、
前記ヒステリシス生成回路は、トランジスタと、抵抗と、インバータから成る
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記インバータは、抵抗と、Nチャンネルトランジスタの直列回路から成る
ことを特徴とする請求項に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記インバータは、ディプリージョントランジスタと、Nチャンネルトランジスタの直列回路から成る
ことを特徴とする請求項に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記直並切替えスイッチ部はアナログスイッチを有する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電装置は、前記負荷回路に出力電圧を出力する出力部を有しており、
前記タイミング制御部、前記直並切替えスイッチ部、及び前記出力部のインピーダンスの合計が、前記発電素子の内部インピーダンス以上である
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記タイミング制御部は、前記蓄電装置への入力電圧を監視する電圧モニタ回路を有しており、
前記タイミング制御部が前記直並切替えスイッチ部を制御することで、蓄電動作のときに前記複数の蓄電デバイスを直列接続にして、監視されている前記入力電圧が第一の電圧に達した時点で並列接続にし、
放電動作のときに、監視されている前記入力電圧が前記第一の電圧よりも低い第二の電圧に達した時点で、前記複数の蓄電デバイスを直列接続にする
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記直並切替えスイッチ部は、直並切替えスイッチ機能を有する、複数の直並列切替えスレーブICであり、
前記タイミング制御部は、前記複数の直並列切替えスレーブICの出力電圧がそれぞれ接続される、直並列切替えマスターICであり、
前記複数の直並列切替えスレーブICは、カスコード接続されており、
前記直並列切替えマスターICは、前記複数の直並列切替えスレーブICを、マスタースレーブ方式で多段制御する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に蓄電装置。
【請求項8】
電力を発電する発電素子と、
前記発電素子に接続される整流部と、
前記整流部の後段に接続される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の蓄電装置と、
負荷回路と、を有している
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項9】
前記負荷回路から前記蓄電装置に対して信号を送る
ことを特徴とする請求項に記載の蓄電システム。
【請求項10】
前記信号は、前記タイミング制御部の前記ヒステリシスの入力に対して電圧を変化させる信号である
ことを特徴とする請求項に記載の蓄電システム。
【請求項11】
前記発電素子による発電量は、発電電圧10V~1000Vであり、発電電流は50nA~100μAである
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項12】
前記発電素子は、変形及び振動による摩擦によって発電する発電素子である
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項13】
前記発電素子は、変形及び振動によって発電する発電ゴムである
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項14】
前記発電素子は、変形及び振動による圧力によって発電する発電素子である
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項15】
前記発電素子は、変形及び振動による静電誘導によって発電する発電素子である
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置および蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT技術の進展に伴い、エッジデバイスへの給電をエネルギーハーベスティング技術により電池レス化する取り組みが進んでいる。例えば圧電素子や、発電ゴムにおける剥離帯電および摩擦帯電、エレクトレットなどによる静電誘導により発生した電力でLEDを点灯させる応用が実現している。
【0003】
しかし、圧電素子や摩擦帯電、静電誘導による発電では発生電圧が高く、発生電流が小さいためLEDを直列接続して瞬間光らせるといった用途には向いているが、IoTのエッジデバイスに求められるCPU動作やセンサー駆動、無線伝送に必要な電圧、電流を満足することができない。そのため、発電電圧が高く電流が小さくても、効率よく発生した電力を活用する技術開発が求められている。
【0004】
一般的には、微小な発電電力量の場合、発電電力をコンデンサに蓄電しDC/DCコンバータでエッジデバイスに必要な駆動電圧に変換している。しかし、圧電素子や静電誘導による発電デバイスは出力インピーダンスが高いため、インピーダンスの低いコンデンサに直接蓄電すると、蓄電時の低電圧状態で蓄電することになり、エネルギー蓄電効率が低いといった問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、高出力インピーダンスを有し、低電流を出力する発電素子によって発電された微小電力を用いて、動作電力を生成する電源回路が提案されている。この電源回路では、微小電力を出力する発電素子としてエレクトレット素子であって、15MΩの高出力インピーダンスを有し、最大出力が92.5Vp-p、3.1μAの発電素子を想定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の電源回路を、最大出力400V、1μAの発電ゴムに適用すると仮定すると、エレクトレット素子よりも発電ゴムの方が出力電圧が大きいことで、発電ゴムの内部抵抗で消費する電力が大きくなるため、効率が悪かった。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、高電圧・低電流を出力する発電素子によって出力された電力を用いて、エネルギー蓄電効率及び使用効率を向上させることができる、蓄電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
一態様によれば、
発電素子と負荷回路に接続される蓄電装置であって、
複数の蓄電デバイスを有する蓄電部と、
前記複数の蓄電デバイスの直並列を切り替えるよう制御するタイミング制御部と、
前記タイミング制御部によって制御され、前記複数の蓄電デバイスの直並列を切り替える直並切替えスイッチ部と、を有し、
前記タイミング制御部は、ヒステリシス生成回路を含むことでヒステリシスを設けて、切り替えのタイミングを制御し、
前記ヒステリシス生成回路は、トランジスタと、抵抗と、インバータから成る
ことを特徴とする蓄電装置、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、蓄電装置において、高電圧・低電流を出力する発電素子によって出力された電力を用いて、エネルギー蓄電効率及び使用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電システムの概略図。
図2】比較例に係る蓄電システムの概略図。
図3】蓄電システムに搭載される発電素子の概念図。
図4】発電素子を用いた蓄電時の等価回路図と、コンデンサに蓄電する条件による蓄電エネルギー率について説明する図。
図5】発電素子を用いた抵抗負荷による発電電力消費時の等価回路図と、電力を抵抗負荷に供給する条件による電力供給量の比率について説明する図。
図6】2つのコンデンサを直列に接続するスイッチの状態について説明する図。
図7】2つのコンデンサを並列に接続するスイッチの状態について説明する図。
図8】直並列切替えタイミング制御部の構成例1の説明図。
図9】直並列切替えタイミング制御部の構成例2の説明図。
図10】本発明の一実施形態の蓄電装置の具体的な回路図。
図11図10の蓄電装置における、蓄電時と電力供給時の電流の流れを示す図。
図12図1の蓄電システムの回路図。
図13図12のIC機能にマイコン搭載の通信モジュールと連係する機能を追加した場合の実施例について説明する図。
図14図10の蓄電装置における直並列切替え動作のタイミングチャート。
図15】(a)コンデンサの容量を固定した回路図と、(b)(a)の状態での蓄電電流および蓄電電圧、放電の際のコンデンサ端子間電圧の推移を示す図の状態での蓄電、放電の際の電流の推移を示す図。
図16】(a)コンデンサの直並列を切り替える回路図と、(b)(a)の状態での蓄電電流および蓄電電圧、放電の際のコンデンサ端子間電圧の推移を示す図。
図17】4つのコンデンサを直列に接続する回路の実施例について説明する図。
図18】コンデンサ多段接続回路の実施例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
<蓄電システム>
まず、図1を用いて本発明の蓄電システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る蓄電システム(エネルギー蓄電システム)の概略図である。
【0013】
蓄電システム100は、発電素子2と、整流回路4と、蓄電装置1と、負荷回路3と、を備える。
【0014】
蓄電装置1は、直並切替えタイミング制御部5と、直並切替えスイッチ部6と、蓄電部7と、を備えている。蓄電部7は、直列接続状態と、並列接続状態に切り替え可能な、複数の蓄電デバイスであるコンデンサC1,C2によって構成されている。
【0015】
発電素子2は、発電ゴムや圧電素子や静電誘導により発電される。発電力は、高電圧、低い電流であり、発電については、図3とともに後述する。
【0016】
負荷回路3は、例えば、LED(light emitting diode)や、CPU(Central Processing Unit)機能を有するIC(Integrated Circuit)、センサー、無線伝送IC等である。
【0017】
蓄電システム1では、発電素子2により発電されたエネルギーを整流回路4により整流した後、複数の直列接続されたコンデンサC1,C2(図12参照)に高電圧でエネルギーを蓄積し、複数のコンデンサC1,C2を並列に接続した状態で負荷回路3にエネルギーを供給する。
【0018】
より詳しくは、発電素子2より発電された交流のエネルギーを、整流回路(整流部)4で整流する。このとき、直並切替えタイミング制御部5が直並切替えスイッチ部6を制御して、蓄電部7で直列に接続された複数のコンデンサC1,C2にエネルギー(蓄電電圧)を蓄電する。そして、蓄電電圧が一定の電圧に達すると、直並切替えタイミング制御部5が直並切替えスイッチ部6を制御して、複数のコンデンサC1,C2が並列接続され、負荷回路3に電力を供給する。
【0019】
そして、蓄電部7の出力電位が一定の電圧以下になると、直並切替えタイミング制御部5が直並切替えスイッチ部6を制御して、複数のコンデンサC1,C2を直列接続に復帰させて発電素子2より発電したエネルギーを蓄電する。
【0020】
<比較例>
図2に、比較として、環境発電素子により発電されたエネルギーを蓄電し負荷回路に供給するシステムの概略図を示す。
【0021】
図2は、一般的なエネルギーハーベストシステムの例を示している。本例においても、環境発電素子が発電したエネルギーを、整流回路4、蓄電装置1Xを通じて負荷回路にエネルギーを供給する。
【0022】
図2の蓄電装置1Xでは、蓄電側蓄電部である第1蓄電部101と、電力変換回路102と、供給側蓄電部である第2蓄電部103と、を備えている。即ち、一般的なエネルギー蓄電システム100Xでは、蓄電部が、蓄電用の第1蓄電部101と、供給側の第2蓄電部103が別々に設けられている。
【0023】
図2の構成では第1蓄電部101に蓄電された電圧をDC/DCコンバータ等の電力変換回路102により負荷回路3の動作電圧に変換して、第2蓄電部103に蓄電することで、負荷回路に電力を供給する。このとき、この蓄電装置では、下記の問題がある。
(A):電力変換回路102における消費電流によるロスの発生
(B):変換効率によるロスの発生
(C):インダクタ等の構成部品の追加
【0024】
詳しくは、第1蓄電部101に蓄電される電圧と第2蓄電部103に蓄電される電圧の関係で、電圧を昇圧変換または降圧変換する必要がある。
【0025】
第1蓄電部101の蓄電電圧<第2蓄電部103の蓄電電圧の場合は、昇圧変換する必要がある。低い電圧で電力を蓄電することになり、下記(式1)により蓄電装置1Xを大きくする必要がある。
【0026】
【数1】
【0027】
また蓄電エネルギーは蓄電電圧の2乗に比例するため、発電ゴムのような高電圧で低い電流を出力する発電素子2による蓄電では、電力変換回路102における消費電流によるロスが発生することで、蓄電電圧の上昇効率が悪く、蓄電効率は低くなってしまう(A)。
【0028】
次に、第1蓄電部101の蓄電電圧>第2蓄電部103の蓄電電圧の場合は、降圧変換する必要がある。この場合は(式1)により高い電圧で第1蓄電部101にエネルギーを蓄電できるため蓄電装置を小さくして高い電圧でエネルギーを蓄電することができる。しかし、第1蓄電部101の蓄電電圧と第2蓄電部103の蓄電電圧の差が発生するため、その分がロスとなり、エネルギー変換効率が低下する(B)。
【0029】
以上のように、図2の構成では、電力変換回路102における電流消費量が大きくなってしまうロスと電圧変化によるロスが大きくなるとともに、構成部品が増加する分、蓄電装置が大型化してしまった。
【0030】
これと比較して、図1に示す本発明の実施形態の蓄電システムでは、複数のコンデンサを有する蓄電部を蓄電時と電力供給時とで共通して用いており、蓄電部を駆動するための電流が少なくて済み、電圧変換ロスがないためエネルギー効率が良い。
【0031】
<発電素子>
図3は、本発明の蓄電システムに搭載される発電素子2の概念図である。
【0032】
発電素子2は、例えば、発電ゴムで構成され、剥離の力、摩擦の力、振動の力、あるいは変形の力がかかることで、電荷を発生させて、発電を行なう。
【0033】
発電素子2の発電量は、電圧10~1000V(例えば、40V)、電流50nA~100μA(例えば6μA)である。
【0034】
また、発電ゴムや圧電素子で構成される発電素子は、高抵抗で、所定の電荷による電流を出力するため、電流源21と、内部抵抗22で近似できる。内部抵抗22の抵抗値は、1~100MΩ(メガオーム)(例えば、10MΩ)である。
【0035】
ここで、発電素子2に接続されるコンデンサと抵抗負荷について、図4及び図5を用いて説明する。
【0036】
図4(a)は、発電素子を用いた蓄電時の等価回路図であり、図4(b)は、コンデンサに蓄電する条件による蓄電エネルギー率について説明する図である。
【0037】
図4(b)では、発電素子により発電されたエネルギーを、コンデンサの容量値を変化させて蓄電されるエネルギーを最大時の蓄積エネルギーを100%として計算により求めた比率(%)で表したグラフである。
【0038】
コンデンサの容量を図4(b)の矢印の部分に設定すると、コンデンサと、定電流源と内部抵抗からなる発電素子2(出力側)と、インピーダンス整合が取れて、最も効率よくエネルギーが蓄電できる。
【0039】
図5(a)は、発電素子2を用いた抵抗負荷による発電電力消費時の等価回路図であり、図5(b)は、電力を抵抗負荷に供給する条件による電力供給量の比率について説明する図である。
【0040】
図5(b)では、発電素子により発電されたエネルギーを、負荷抵抗の抵抗値を変化させて、消費されるエネルギーを最大時の消費エネルギーを100%として計算により求めた比率(%)で表したグラフである。
【0041】
負荷抵抗の抵抗値を図5(b)の矢印の部分に設定すると、負荷抵抗と、発電素子2の内部抵抗とが等しい状態となり、内部抵抗=負荷抵抗のときに、負荷回路3(出力側)とインピーダンス整合が取れて、最も効率よくエネルギーが使用できる。
【0042】
<直並列切り替え>
図6は、2つのコンデンサを直列に接続するスイッチの状態を示す模式図である。図7は、2つのコンデンサを並列に接続するスイッチの状態を示す模式図である。
【0043】
直並列切替えスイッチ部6は3つのスイッチSw1、Sw2、Sw3を備えている。蓄電部7は、2つのコンデンサC1、C2を備えている。コンデンサは蓄電デバイスの一例であって、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池、鉛蓄電池や、各種蓄電デバイスであり得る。
【0044】
図6に示すように、直並列切替えスイッチ部6のスイッチSw2がON、スイッチSw1、Sw3がOFFであることで、蓄電部7のコンデンサC1、C2は、直列接続状態になる。
【0045】
また、図7に示すように、直並列切替えスイッチ部6のスイッチSw1、Sw3がON、スイッチSw2がOFFであることで、蓄電部7のコンデンサC1、C2は、並列接続状態になる。
【0046】
<直並切り替えタイミング制御部>
図8は、直並切替えタイミング制御部の第1の構成例について説明する図である。
図8に示す直並列切替えタイミング制御部5(タイミング制御部)は、直並列切替えスイッチ制御部50と、2つの抵抗R1,R2と、2つのスイッチSw4,Sw5とを備えている。
【0047】
直並列切替えスイッチ制御部50は、直並列の切替えの基準となる入力電圧Vinをモニターし、制御信号S1を出力する電圧モニタ回路として機能する。そして、直並列切替えスイッチ制御部50は端子11への入力電圧Vinの検出結果に応じて、制御信号S1を生成し、生成した制御信号S1で、スイッチSw4及びスイッチSw5を制御する。
【0048】
また、直並列切替えタイミング制御部5では、抵抗R1及びスイッチSw4がハイインピーダンス駆動のインバータ51を形成し、抵抗R2及びスイッチSw5がハイインピーダンス駆動のインバータ52を形成している。スイッチSw4、スイッチSw5は、例えば、Nchトランジスタによって構成されている。
【0049】
直並切替えタイミング制御部5は、直並切替えスイッチ部6を制御する制御信号φ1,φ2を生成し、端子53、54から出力する。
【0050】
直並切替えタイミング制御部5において、直並列切替えスイッチ制御部50及びインバータ51は、ヒステリシス生成回路Hとして機能する。ヒステリシス生成回路Hは、入力電圧Vinの変化を素早く検出するとともに、一旦Lレベル→Hレベル(或いはHレベル→Lレベル)に切り替わった信号が不安定に切り替わることを防ぐように、切り替え閾値にヒステリシス(差)を設けている。本例では、ヒステリシス生成回路Hは、入力電圧Vinが上昇して所定の第一の電圧に達すると、制御信号φ1をHレベルからLレベルに切り替え、第一の電圧から入力電圧Vinが低下して所定の第二の電圧に達すると、制御信号φ1をLレベルからHレベルに切り替える。詳しくは、図14とともに後述する。
【0051】
本構成では、インバータ51,52に、ハイインピーダンスの抵抗R1およびR2を使用することで、圧電素子や静電誘導により発電された高電圧で低電流であるハイインピーダンス出力の発電素子2でも蓄電装置1の回路を駆動することができる。例えば、抵抗R1およびR2の抵抗値は、1MΩ~500MΩである。
【0052】
図9は、直並切替えタイミング制御部の第2の構成例について説明する図である。
図9に示す直並列切替えタイミング制御部5Aは、直並列切替えスイッチ制御部50と、2つの定電流源IC1,IC2と、2つのスイッチSw4,Sw5とを備えている。
【0053】
また、直並列切替えタイミング制御部5Aでは、定電流源IC1及びスイッチSw4がハイインピーダンス駆動のインバータ51Aを形成し、定電流源IC2及びスイッチSw5がハイインピーダンス駆動のインバータ52Aを形成している。スイッチSw4、スイッチSw5は、例えば、Nchトランジスタによって構成されている。
【0054】
直並列切替えスイッチ制御部50により生成された制御信号S1で、スイッチSw4およびSw5を制御し、直並切替えスイッチ部6を制御する制御信号φ1,φ2を生成して、端子53、54から出力する。直並切替えタイミング制御部5Aにおいて、スイッチ制御部50及びインバータ51Aは、ヒステリシス生成回路Hとして機能する。
【0055】
本構成では、インバータ51A,52Aに、ハイインピーダンスの定電流源IC1、IC2を使用することで、圧電素子や静電誘導により発電された高電圧で低電流であるハイインピーダンス出力の発電素子2でも、蓄電装置1の回路を駆動することができる。例えば、インバータ51A,52Aに含まれる定電流源IC1,IC2が生成する電流値は、10nA~100μAである。
【0056】
図10は、本発明の一実施形態の蓄電装置1の具体的な回路図である。
【0057】
蓄電装置1は、直並切替えタイミング制御部5Bと、直並切替えスイッチ部6と、蓄電部7と、出力スイッチ部8(出力部)とを備える。なお、蓄電装置1は、1つのICにまとめて蓄電ICとしてもよい。
【0058】
直並切替えタイミング制御部5Bには、切替えスイッチ制御部50Bと、2つのディプリージョントランジスタTr1,Tr3と、2つのNchトランジスタ(FET:Field effect transistor)Tr2,Tr4とを備えている。
【0059】
本構成では、切替えスイッチ制御部50Bは、NchトランジスタTr5、及び3つの抵抗R3、R4、R5によって構成されている。3つの抵抗R3、R4、R5は高い抵抗値(高インピーダンス)を有する高抵抗である。トランジスタTr5は、ヒステリシス生成スイッチであり、負荷回路3の状態を示す信号が入力されてもよい。
【0060】
直並切替えスイッチ制御部50Bは、直並切替え電圧である入力電圧Vinをモニターし、制御信号S1を出力する。
【0061】
直並切替えタイミング制御部5Bは、直並列切替えスイッチ制御部50Bにより生成された制御信号(S1)で制御される、2つのインバータ51B、52Bを備えている。
【0062】
インバータ51Bは、ディプリージョントランジスタTr1と、NchトランジスタTr2で構成されている。インバータ51Bからの制御信号φ1は、端子53で取り出される。
【0063】
直並切替えスイッチ制御部50B及びインバータ51Bは、ヒステリシス生成回路Hを構成する。
【0064】
インバータ52Bは、ディプリージョントランジスタTr3と、NchトランジスタTr4で構成されている。インバータ52Bからの制御信号φ2は、端子54で取り出される。
【0065】
なお、ディプリージョントランジスタTr1、Tr3は、図9の定電流源IC1、IC2として機能する。NchトランジスタTr2、Tr4は、図9のスイッチSw4,Sw5として機能する。
【0066】
直並切替えタイミング制御部5Bは、蓄電期間中は、複数のコンデンサC1,C2を直列接続させるように、Hレベルの制御信号φ1及びLレベルの制御信号φ2を出力する。
【0067】
そして、入力電圧Vinが、所定の第一の電圧に達した時点で、複数のコンデンサC1,C2を並列接続させるように、Lレベルの制御信号φ1及びHレベルの制御信号φ2を出力する。
【0068】
その後、負荷回路による電力使用により、電圧Vinが低下して所定の第二の電圧より小さくなると、複数のコンデンサC1,C2を、直列接続させるように、Hレベルの制御信号φ1及びLレベルの制御信号φ2を出力する。
【0069】
また、直並切替えスイッチ部6はPchトランジスタTr6、NchトランジスタTr7、アナログスイッチTr8,Tr9で形成されている。
【0070】
直並切替えスイッチ部6において、PchトランジスタTr6は、図6図7のスイッチSw1に対応し、NchトランジスタTr7はスイッチSw3に対応し、スイッチSw2は、2つのトランジスタTr8,Tr9からなるアナログスイッチで構成されている。
【0071】
直並切替えスイッチ部6及び出力スイッチ部8を、アナログスイッチであるトランジスタで構成することで、電圧損失(電位差)が発生しない。比較としてダイオードでスイッチを構成すると、電圧損失が発生する。そのため、本発明では、電位差なく、スイッチを動作させることが可能である。
【0072】
図1には示していないが、蓄電装置1は、並列接続時に負荷回路に電力を供給する出力スイッチ部8を備えていてもよい。出力スイッチ部8は、2つのトランジスタTr10,Tr11のアナログスイッチで形成されている。
【0073】
本発明の蓄電装置1において、高抵抗や定電流トランジスタは高い抵抗を有するものを用いるため、直並切替えタイミング制御部5Bは高いインピーダンスを有している(ハイインピーダンスである)。
【0074】
そのため、発電素子から発電される、高電圧で、低電流(例えば、400V、6μA)な発電電力よりも、さらに低い電流(例えば、60nA)で、蓄電装置1が駆動できる。
【0075】
また、図10の構成において、タイミング制御部5B、直並切替えスイッチ部6、及び出力スイッチ部8を構成する素子が有するインピーダンスの合計を、発電素子2の内部インピーダンスよりも高くすることができる。このことにより、発電装置の直並切替に必要とする駆動消費電力を抑えることができ、エネルギー蓄電効率を高めることができる。
【0076】
直並切替えスイッチ部6、及び出力スイッチ部8を構成する素子はMOSトランジスタで構成されているため、直並切替えタイミング制御部5Bにより制御される、直並切替えスイッチ部6及び出力スイッチ部8で消費される電力は、スイッチ部オン、オフ時のMOSトランジスタゲート駆動電力のみであり、エネルギー蓄電効率を高めることができる。
【0077】
さらに、蓄電時の蓄電装置1のインピーダンスは、使用時の蓄電装置1のインピーダンスよりも高くなっている。従って、蓄電装置1は高電圧、低電流で蓄電が可能となり、エネルギー蓄電効率を高めることができる。また、使用時には蓄電装置1の出力電圧は例えば3Vであり、数mAの消費電力を必要とするCPUなどの電子機器を駆動することができる。
【0078】
なお、図10においてディプリージョントランジスタとNchトランジスタで構成されるインバータ51B、52Bは2段構成になっているが、ゲインが必要な場合は同様のインバータの段数を増やしても良い。
【0079】
その場合は、インバータ51B、52Bの制御信号φ1、φ2の信号変化のタイミングを、直並切替えスイッチ部6のスイッチ切替えタイミングに合わせる。
【0080】
ここで、図11図10の蓄電装置1における電流の流れを示す。図11において、(a)はコンデンサが直列接続で、蓄電時の状態を示し、(b)は、コンデンサが並列接続で、電力使用時の状態を示す。
【0081】
スイッチSw1を構成するPchトランジスタTr6のゲートには、制御信号φ1が入力されているため、制御信号φ1がL、即ち放電時にオンになる。
【0082】
スイッチSw3を構成するNchトランジスタTr7のゲートには、制御信号φ2が入力されているため、制御信号φ2がH、即ち放電時にオンになる。
【0083】
スイッチSw2を構成する、PchトランジスタTr8のゲートには、制御信号φ2が入力され、NchトランジスタTr9のゲートには、制御信号φ2が入力されている。よってスイッチSw2は、制御信号φ2がL且つ制御信号φ1がH、即ち、蓄電時にオンになる。
【0084】
また、出力スイッチ部8のスイッチSw4において、PchトランジスタTr10のゲートには、制御信号φ1が入力され、NchトランジスタTr11のゲートには、制御信号φ2が入力されている。よってスイッチSw4は、制御信号φ1がL且つ制御信号φ2がH、即ち、放電時、負荷回路3に出力電圧を供給するときにオンになる。
【0085】
直並切替えスイッチ部6に含まれるスイッチSw1,Sw2,Sw3と、出力スイッチ部8のスイッチSw4には、直並列の切り替え時のみ、スイッチの状態を変化させるために電流が流れる。そのため、蓄電時及び使用時(放電時)の消費電流を小さくすることができる。
【0086】
図12は、図1の蓄電システム100の具体的な回路図による実施例について説明する図である。
【0087】
整流回路4は、4つのダイオードD1,D2,D3,D4から成るダイオードブリッジによって構成されている。整流回路4は、発電素子2から出力された交流電力を全波整流する。
【0088】
整流された電力を、蓄電装置1における複数の直列接続したコンデンサC1,C2に蓄電し、一定電圧に達すると複数のコンデンサC1,C2を並列に接続した状態で、負荷回路3に電力を供給する。
【0089】
<IC化>
図13は、蓄電システムにおいて、マイコン搭載の通信モジュールと連係する機能を追加した構成例を示す概略図である。
【0090】
本実施形態では、負荷回路3は、通信モジュール31と、センサー32とを備えている。
【0091】
また、図13の蓄電装置1Cでは、直並列切替えタイミング制御部5、直並列切替えスイッチ部6、及び出力スイッチ部8の機能が、直並切替えIC9として一体化している。
【0092】
本実施形態では、さらに直並切替えIC9に、マイコン搭載の通信モジュール31と連係して、直並切替えタイミングを制御する機能が追加されている。
【0093】
本蓄電システム100Cでは、直並切替えIC9の出力電圧Voutにより通信モジュール31と、センサー32に電力を供給する。
【0094】
蓄電装置1Cの直並切替えIC9は、コンデンサC1,C2の接続が並列状態になったとき、通信モジュール31搭載のマイコンに並列状態になったことを示す信号SSTを出力して、通信モジュール31に電力供給が可能であることを伝える。
【0095】
通信モジュール31のシステム動作が完了した後、所定のタイミングで、通信モジュール31から直並切替えIC9に、マイコンに電圧が必要なくなったことを示す信号SENDを出力して充電に移行させるように指示し、蓄電装置1においてコンデンサC1,C2を直列接続状態に切替えて充電を開始させる。信号SENDは、図11の直並切替えタイミング制御部5BのトランジスタTr5のゲートに電圧を制御することでコンデンサC1,C2の接続を並列から直列に変化させる信号である。
【0096】
この構成の蓄電システム100Cにおいて、蓄電装置1Cは、負荷側のCPUと連携することで、蓄電効率を向上することができる。
【0097】
また、本システムは、センサー32からの信号を通信モジュール31に搭載されているマイコンにより信号処理された結果を、無線等の通信手段を通じてIoTエッジ端末として活用することもできる。
【0098】
<タイミングチャート>
次に、図14を用いて、蓄電装置における、接続切り替え動作について説明する。図14は、蓄電装置1における直並列切替え動作についてのタイミングチャートである。
【0099】
図12のように発電素子2により発電された電力を整流回路4で整流して、蓄電装置1に電力が供給される。
【0100】
時刻T0はコンデンサC1,C2は蓄電されていない状態である。
【0101】
時刻T1より整流された電力が蓄電装置1に供給され始めると、直並切替えタイミング制御部5Bがハイインピーダンス構成となっているため、発電素子2よりハイインピーダンスで出力された電力により回路が起動し制御信号φ1およびφ2が生成される。
【0102】
蓄電が開始されると、制御信号φ1はHIGH、制御信号φ2はLOWレベルとなり、直並列切替えスイッチ部6が動作してスイッチSw1,Sw3がOFF、スイッチSw2がONとなり、蓄電部7のコンデンサC1,C2が直列に接続される。
【0103】
コンデンサC1,C2が直列状態で、発電素子2からの電力である入力電圧Vinが10V(第一の電圧)に達すると、T2のタイミングで直並列切替えスイッチ制御部50が動作し、制御信号φ1がLOW、制御信号φ2がHIGHに切り替わる。これに応じて、直並列切替えスイッチ部6が動作しスイッチSw2がOFF、スイッチSw1,Sw3がONとなり、蓄電部7のコンデンサC1,C2が並列に接続される。蓄電部7のコンデンサC1,C2が直列接続から並列接続に切り替わると、(Vin=VC1+VC2)の状態から(Vin=VC1=VC2)の状態へ電圧が変化するため、蓄電電圧(入力電圧Vin)は半分に減る(10V⇒5V)。
【0104】
T3のタイミングで負荷回路3が駆動すると電力(出力電圧Vout)が負荷回路3に供給され入力電圧Vinも低下していく。
【0105】
ここでは時刻T2からT4までは発電素子2からの電力供給は無いものとする。
【0106】
入力電圧Vinが低下して2V(第二の電圧)に達すると、T4のタイミングで制御信号φ1がHIGH、制御信号φ2がLOWとなり、スイッチSw1,Sw3がOFF、スイッチSw2がONとなることで、蓄電部7のコンデンサC1,C2が直列接続となり、発電素子2からの電力を蓄積する。
【0107】
この後入力電圧Vinが上昇して10V(第一の電圧)に達すると、コンデンサC1、C2を並列接続にする。
【0108】
以上の動作を継続する。
【0109】
ここで、T2のタイミングを10V、T4のタイミングを2Vとしたが、直並列切替えスイッチ制御部50の抵抗R3、R4、R5の抵抗値を変えることで任意の電圧を設定することができる。
【0110】
また、並列状態で発電素子2からの電力供給を継続することも可能である。その場合はT3からT4までの入力電圧Vinの電圧低下は緩やかになるか、上昇する場合もある。
【0111】
次に、図14の右側を用いて図13の通信モジュールと連携する蓄電システム100Cでの動作を説明する。図13の構成でも、T0からT5までの動作は同じである。
【0112】
時刻T6のタイミングで、直並切替えIC9は、通信モジュール31搭載のマイコンに、並列状態になったことを示す信号SSTを出力して通信モジュール31に電力供給が可能であることを伝える。なお、図14中、T3~T4およびT6~T7の期間は、蓄電装置1が通信モジュール31と同期して通信モジュール31へ電力を供給している、負荷回路動作期間(放電期間、システム動作期間)に相当する。
【0113】
時刻T7で通信モジュール31のシステム動作が完了した後、T8のタイミングで、通信モジュール31から直並切替えIC9に信号SENDを出力されると、コンデンサC1,C2を直列接続状態に切替えて充電を開始させる。
【0114】
蓄電装置1が通信モジュール31と連携して動作する場合は、放電期間中、電圧が2Vまで低下するか、信号SENDが出力されるか、いずれか早い方で、電力供給を停止する。図14では、電圧が2Vまで低下する前に、信号SENDが出力されたため、その時点で電力供給を停止し、コンデンサC1,C2の接続状態を直列へ切り替えて、蓄電動作へ移行している。
【0115】
<蓄電エネルギー>
ここで、コンデンサに蓄電するエネルギーについて説明する。
【0116】
コンデンサに蓄電できるエネルギーW(J)は以下の式で示すことができる。
【0117】
【数1】
また、コンデンサをn個、直列接続すると、容量(Csn)は、
【0118】
【数2】
コンデンサをn個、並列接続すると、容量(Cpn)は、
【0119】
【数3】
コンデンサn個直列接続で蓄電できるエネルギー(Ws)は、
【0120】
【数4】
コンデンサn個並列接続で蓄電できるエネルギー(Wp)は、
【0121】
【数5】
例えば具体的に、n=2、C=1(μF)、V=5(V)とすると
コンデンサ2個直列接続で蓄電できるエネルギー(Ws)は、
【0122】
【数6】
コンデンサ2個並列接続で蓄電できるエネルギー(Wp)は、
【0123】
【数7】
【0124】
以上のようにWs=Wpになり、同じ容量のコンデンサをn個直列でエネルギーを蓄電しても、並列で蓄電しても同じエネルギー量をコンデンサに蓄電できることになる。
n個直列にしたコンデンサに蓄電するためには高電圧n×V(V)の状態で蓄電する必要がある。一方蓄電されたエネルギーはIoT(Internet of Things)のようなシステムにおいて、CPUを駆動したり、センサーなどを接続する電子機器に供給することが求められる。これらの機器はリチウム電池1~3本程度すなわち3~10V程度の電圧、数μA~数mA程度の電流で駆動することが求められる。
【0125】
ここで、同じ容量Cのコンデンサをn個直列に接続した高インピーダンスの状態で蓄電し、それらのコンデンサを直列接続から並列接続に切り替えることで、コンデンサに蓄電されたエネルギーを保持したまま低い電圧で低インピーダンスの状態でIoTシステムなどを駆動することができる。
【0126】
回路上に付く抵抗をRとすると、インピーダンス(Z)は以下の式で定義される。
【0127】
【数8】
コンデンサをn個直列にした場合の回路のインピーダンス(Zsn)は、(式2)で示したようにCsn=C/nとなるので、下記(式9)のように示される。
【0128】
【数9】
コンデンサをn個並列にした場合の回路のインピーダンス(Zpn)は、(式3)で示したようにCpn=n×Cとなるので、下記(式10)のように示される。
【0129】
【数10】
となる。ここで、回路上に付く抵抗Rを小さくすると、直列時のインピーダンスZsn(式9)が高く、並列時のインピーダンスZpn(式10)が低いことがわかる。
【0130】
以上のように、コンデンサの直並列切替えを行なうことで、エネルギー蓄電時は(式4)と(式9)から高電圧n×V(V)で高インピーダンスで蓄電し、エネルギー供給時は(式5)と(式10)から低い電圧V(V)でシステム機器に電力を効率よく供給することができることがわかる。
【0131】
圧電素子や発電ゴムの静電誘導による発電では数10V~数100Vという高電圧が発生する。また、出力電流はnA~μAといった単位の低電流であり、出力インピーダンスの高い低電流電源と見ることができる。このため、圧電素子や静電誘導により高電圧でコンデンサに蓄電したエネルギーを、3~10V程度の電圧で数μA~数mA程度の電流で駆動するシステムに供給するエネルギーに高効率で変換する回路が必要となる。
【0132】
ここで、図15に比較例として、コンデンサの容量を固定した状態の図を示し、図16に本発明の様に、コンデンサの容量を直列と並列で切り替える状態の図を示す。
【0133】
詳しくは、図15(a)は、コンデンサの容量を固定した回路図を示し、図15(b)は、図15(a)の状態での蓄電電流および蓄電電圧、放電の際のコンデンサ端子間電圧の推移を示す図である。
【0134】
図15では、0.25μF(マイクロファラッド)の容量のコンデンサを1つ用いて、充電時、放電時ともに、容量0.25μFで動作させる例を示している。
【0135】
一般的に、CPU動作、センサー駆動、無線伝送ICの駆動電圧は、2~5V程度である。図15(b)に示すように、この構成例では、放電時にコンデンサに蓄えている容量が少ないため急激に電圧値が降下し、電圧値が、2~4.5Vの範囲にある時間は、20msである。そのため、20msしか電力を使用できない。
【0136】
これに対して、図16(a)はコンデンサの直並列を切り替える回路図を示し、図16(b)は、図16(a)の状態での蓄電電流および蓄電電圧、放電の際のコンデンサ端子間電圧の推移を示す図を示している。
【0137】
図16では、0.5μFの容量のコンデンサを2つ用いて、充電時は直列状態にして容量0.25μFで動作させ、放電時は並列状態にして容量1.0μFで動作させる例を示している。
【0138】
図16(b)に示すように、この構成例では、放電時はコンデンサを直列接続から並列接続に切り替えることで、切り替え時に電圧値は半分になるが、その後、容量が大きいコンデンサを用いた放電により電圧値が緩やかに降下する、そのため、電圧値が、2~4.5Vの範囲にある時間は、84msである。図15(b)と比較すると、充電時のコンデンサの容量は同じながら、図16の切り替えにより、放電時に電力を使用できる時間が4倍以上に増える。
【0139】
図16に示したように、本発明の蓄電システムでは、コンデンサの直列接続・並列接続を切り替えることで、蓄電時に、高電圧で、高インピーダンスでインピーダンス整合して、エネルギーを蓄積する。一方、放電時は、IoTシステムなどに対して必要な電圧で、低インピーダンスでインピーダンス整合して、エネルギーを供給することができる。
【0140】
<蓄電装置にコンデンサを多数設ける例>
上記は、蓄電装置1に2つのコンデンサを含む構成について説明したが、複数のコンデンサの数は2つに限られない。図17は、4つのコンデンサを直列に接続する回路の実施例について説明する図である。
【0141】
図17は、4直並列切替えIC90の内部ブロック図である。
【0142】
直並切替えスイッチ部60は、図10の直並切替えスイッチ部6と対応しており、スイッチ群61、62、63で構成される。スイッチ群61、63は、コンデンサC1,C2,C3,C4を並列接続にするときにONとなり、直列接続にするときにOFFとなる。スイッチ群62は、コンデンサC1,C2,C3,C4を直列接続にするときにONとなり、並列接続にするときにOFFとなる。
【0143】
スイッチ80は出力スイッチ部8に対応する。
【0144】
直並切替えタイミング制御部5Dは、図10の2つのコンデンサ切り替え用の直並列切替えタイミング制御部5Bと同様であるが、図18のようにカスコード接続してコンデンサを多段直列接続する場合には、マスター側とスレーブ側の切替えをするための切替え回路55が搭載されている。
【0145】
図18は、コンデンサ多段接続回路の実施例について説明する図である。
【0146】
図18において、コンデンサ多段接続回路90Eは、4直並列切替えマスターIC91と、4直並列切替えスレーブIC92、93、94、95で構成される。
【0147】
マスターIC91に、図17のマスター/スレーブ切替え回路55を搭載することで、4つのIC92、93、94、95はスレーブICとしてカスコード接続できるよう構成し、それぞれの出力電圧Vout出力を4直並列切替えマスターIC91に接続でき多段接続が可能である。
【0148】
このように、多段接続する場合、カスコード接続をマスタースレーブ方式で多段接続制御する。このように接続すると、より多段のコンデンサを接続することが出来、更なる高効率化が可能になる。
【0149】
上記の実施形態において、本発明の蓄電装置は、高電圧、低電流で切替え電圧を検出でき、高電圧、低電流で動作して直並接続を切替え、高効率で電力を蓄電することが可能である。
【0150】
なお、上記実施形態では、直並切替えタイミング制御部5が、ヒステリシス生成回路Hを内部に備えることで、制御信号φ1に対してヒストリシスを設けていたが、直並切替えタイミング制御部5でヒステリシスを設けることができれば、ヒステリシス生成回路は直並切替えタイミング制御部5以外に存在してもよい。
【0151】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0152】
1,1C 蓄電装置
2 発電素子
3 負荷回路
4 整流回路(整流部)
5,5D 直並切替えタイミング制御部(タイミング制御部)
6,60 直並切替えスイッチ部
7 蓄電部
8 出力スイッチ部(出力部)
9,90,90E 直並切替えIC
31 通信モジュール
32 センサー
50 直並列切替え制御部(電圧モニタ回路)
51,52 インバータ
61,62,63 スイッチ群
91 マスターIC
92,93,94,95 スレーブIC
100 蓄電システム
C1,C2,C3,C4 コンデンサ(蓄電デバイス)
H ヒステリシス生成回路
Tr1,Tr3 ディプリージョントランジスタ
Tr2,Tr4 Nchトランジスタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【文献】特開2013-236506号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18