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特許7095336払拭装置、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】払拭装置、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/165 307
B41J2/165 401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018050731
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019162733
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】玉井 智広
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071573(JP,A)
【文献】特開2013-199081(JP,A)
【文献】特開2011-083900(JP,A)
【文献】特開2017-071062(JP,A)
【文献】特開2010-184444(JP,A)
【文献】特開2018-030347(JP,A)
【文献】特開2020-019283(JP,A)
【文献】特開2017-077699(JP,A)
【文献】特開昭63-293578(JP,A)
【文献】特開2011-079170(JP,A)
【文献】特開2018-111235(JP,A)
【文献】特開2018-034452(JP,A)
【文献】特開2017-154361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0315463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41F 35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
払拭部材をロール状に巻き回した繰り出し側ロールと、
前記繰り出し側ロールから繰り出された前記払拭部材を巻き取る巻取り側ロールの軸心部材と、
前記繰り出し側ロールと前記巻取り側ロールとの間で、前記払拭部材を払拭対象に押し付ける押し付け部材と、を備え、
前記押し付け部材は、表面に凹凸が設けられ、
凸部は、凹部が払拭方向で並ばないように配置され
前記払拭部材には液体が含まれ、
前記払拭部材に含まれた前記液体を前記払拭対象に転写する第1払拭動作を行い、
前記第1払拭動作では、前記押し付け部材を前記払拭対象に対して進退移動させて、前記払拭部材を前記払拭対象に押し付けた後離間させるスタンプ動作を繰り返し行い、
前記スタンプ動作を行うとき、前記押し付け部材の凸部が前記払拭部材を前記払拭対象に押し付け、前記凹部は前記払拭部材を前記払拭対象に押し付けていない
ことを特徴とする払拭装置。
【請求項2】
前記第1払拭動作を行った後、前記払拭部材で前記払拭対象を払拭する第2払拭動作を行う
ことを特徴とする請求項に記載の払拭装置。
【請求項3】
前記押し付け部材を前記払拭対象に対して第1方向に移動するときに前記第1払拭動作を行い、第1方向に移動後、前記第1方向とは反対の第2方向に移動するときに前記第2払拭動作を行う
ことを特徴とする請求項に記載の払拭装置。
【請求項4】
液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うヘッドメンテナンス装置であって、
前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する請求項1ないしのいずれかに記載の払拭装置を備えている
ことを特徴とするヘッドメンテナンス装置。
【請求項5】
前記押し付け部材の凹凸は、前記ノズル面の段差以上の段差と凸間距離を有している
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドメンテナンス装置。
【請求項6】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する請求項1ないしのいずれかに記載の払拭装置、若しくは請求項又はに記載のヘッドメンテナンス装置と、を備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭装置、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体を吐出する液体吐出ヘッドを使用する場合、ノズルの状態を維持回復するため、ノズル面をキャッピングするキャップ、ノズル面を払拭清掃する払拭装置などを含む維持回復機構(メンテナンス装置)を備える。
【0003】
従来、ノズル面を払拭する払拭部材としてウェブを使用し、往路及び復路で払拭するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-154361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、払拭対象に付着する液体などの被払拭物の固化し、払拭対象に強固に付着しているような場合には、払拭部材の往復移動による払拭によっても確実に除去することが難しいという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、払拭性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る払拭装置は、
払拭部材をロール状に巻き回した繰り出し側ロールと、
前記繰り出し側ロールから繰り出された前記払拭部材を巻き取る巻取り側ロールの軸心部材と、
前記繰り出し側ロールと前記巻取り側ロールとの間で、前記払拭部材を払拭対象に押し付ける押し付け部材と、を備え、
前記押し付け部材は、表面に凹凸が設けられ、
凸部は、凹部が払拭方向で並ばないように配置され
前記払拭部材には液体が含まれ、
前記払拭部材に含まれた前記液体を前記払拭対象に転写する第1払拭動作を行い、
前記第1払拭動作では、前記押し付け部材を前記払拭対象に対して進退移動させて、前記払拭部材を前記払拭対象に押し付けた後離間させるスタンプ動作を繰り返し行い、
前記スタンプ動作を行うとき、前記押し付け部材の凸部が前記払拭部材を前記払拭対象に押し付け、前記凹部は前記払拭部材を前記払拭対象に押し付けていない
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、払拭性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る払拭ユニットの側面説明図である。
図2】同じく平面説明図である。
図3】同じく押し付け部材の要部拡大説明図である。
図4】本発明に係る払拭装置の側面説明図である。
図5】第1払拭動作の第1例の説明に供する要部説明図である。
図6】第1払拭動作の第2例の説明に供する要部説明図である。
図7】第2払拭動作の第1例の説明に供する要部説明図である。
図8】第1払拭動作と第2払拭動作を連続して行う例の説明に供する説明図である。
図9】第1払拭動作とワイパ部材による払拭動作を連続して行う例の説明に供する説明図である。
図10】本発明の第2実施形態における押し付け部材の凹凸と払拭対象との位置関係の説明に供する平面説明図である。
図11】同じくヘッドの側面説明図である。
図12】押し付け部材の第1例ないし第4例の説明に供する斜視説明図である。
図13】押し付け部材の第5例の説明に供する説明図である。
図14】押し付け部材の第6例の説明に供する説明図である。
図15】押し付け部材の第7例の説明に供する説明図である。
図16】押し付け部材の第8例の説明に供する説明図である。
図17】押し付け部材の第9例の説明に供する説明図である。
図18】本発明に係るヘッドメンテナンス装置を含む液体を吐出する装置の正面説明図である。
図19】同装置のキャリッジにおけるヘッド配置の説明に供する平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同実施形態に係る払拭ユニットの側面説明図、図2は同じく平面説明図、図3は押し付け部材の要部拡大説明図である。
【0011】
払拭ユニット100は、ハウジング101に、払拭対象を払拭する払拭領域102と、空吐出が行われる空吐出領域103とを有している。
【0012】
そして、ハウジング101内に、払拭部材としてのウェブ2を軸心部材である繰り出しローラ3にロール状に巻き回した繰り出し側ロール2Aと、繰り出し側ロール2Aから繰り出されるウェブ2を巻き取る巻取り側ロール2Bの軸芯部材となる巻取りローラ4とを備えている。
【0013】
なお、初期状態では巻取りローラ4にウェブ2が巻き取られていない状態であるが、説明を明確にするため、図1では、巻取り側ロール2Bが形成されている状態で示している。
【0014】
ウェブ2としては、吸収性を有し、少なくとも使用する液体に対して耐液性を有するとともに、毛羽立ちや発塵を生じないシート状の材料からなることが好ましく、例えば、不織布、布、フィルム、紙などが挙げられる。また、本実施形態では、ウェブ2には、例えば払拭除去するインクの廃液を軟化させる洗浄液などの液体が含侵されている。
【0015】
ウェブ2は、払拭領域102内に配置された繰り出し側ロール2Aから繰り出され、案内ローラ5を経て、払拭対象にウェブ2を押し付けるローラ部材からなる押し付け部材11を経て、案内ローラ6、7、8によって空吐出領域103に這い回される。
【0016】
そして、ウェブ2は、空吐出領域103において、案内ローラ9、10によってハウジング101の開口面に沿って這い回され、巻取りローラ4の周囲に巻取り側ロール2Bとして巻き取られる。
【0017】
ここで、繰り出し側ロール2Aから繰り出されたウェブ2を払拭対象に押し付ける押し付け部材11は、回転可能に配置され、バネ12によって所定の押し付け力でウェブ2を払拭対象に押し付ける。
【0018】
この押し付け部材11は、図3に示すように、少なくとも周面に沿って凹部11aと凸部11bが交互に形成されて、周面は凹凸形状をしている。
【0019】
また、この払拭ユニット100は、ウェブ2とは別に、払拭対象を払拭するワイパ部材15が払拭領域102と空吐出領域103との間に配置されている。
【0020】
次に、本発明に係る払拭装置について図4を参照して説明する。図4は払拭ユニットを含む払拭装置の側面説明図である。
【0021】
この払拭装置1は、液体を吐出する装置の液体吐出ヘッド(以下、「ヘッド」ともいう。)20のノズル面20aを払拭対象とするヘッドメンテナンス装置を構成する。
【0022】
そして、払拭ユニット100はカートリッジ化され、払拭ユニット100が移動部材30上に着脱自在に装着される。
【0023】
移動部材30には、払拭ユニット100を装着したときに巻取りローラ6に設けたギヤ39と噛み合う伝達機構37と、伝達機構37を介して巻取りローラ6を回転させる巻取りモータ38を備えている。
【0024】
また、移動部材30には、払拭ユニット100のコードホイール16に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ17を設けている。これらのコードホイール16とエンコーダセンサ17によってウェブ2の移動距離(送り量)を検出するエンコーダ18を構成している。
【0025】
移動部材30は、ヘッド20のノズル配列方向である矢印Y方向に往復移動可能に配置されている。この移動部材30の払拭方向Y(Y1、Y2)への移動は、ラック31及びピニオン32と、ピニオン32を回転させる移動部材移動モータ33を含む移動機構よって行われる。
【0026】
また、移動部材30は、ウェブ2がノズル面20aに対して進退する方向、ここでは上下方向に移動可能(昇降可能)に配置されている。移動部材30の昇降は、例えばカム35と、カム35を回転させる移動部材昇降モータ36を含む昇降機構によって行われる。
【0027】
次に、払拭装置1による払拭動作について説明する。
【0028】
払拭装置1によってヘッド20のノズル面20aを払拭するときには、移動部材30が上昇して、ヘッド20のノズル面20aに対し、ウェブ2が押し付け部材11によって所定の押し付け力で押付けられる。
【0029】
このとき、巻取りローラ4を回転させることによってウェブ2を巻取り側ロール2Aに巻き取る。この巻取り側ロール2Aの回転によるウェブ2の移動速度(送り速度)を制御することにより、ノズル面20aに押し付けられているウェブ2のノズル面20aに対する相対速度を制御することができる。
【0030】
また、押し付け部材11の回転速度は、押し付け部材11を回転駆動する駆動手段によって制御することができる。
【0031】
そこで、第1払拭動作の第1例について図5を参照して説明する。図5は第1払拭動作の第1例の説明に供する要部説明図である。
【0032】
第1払拭動作の第1例では、ウェブ2を払拭対象であるノズル面20aに対して払拭方向Y1に相対的に移動させて払拭するとき、図5(a)に示すように、押し付け部材11の移動(矢印方向Bへの回転)と同期して、ノズル面20aに対するウェブ2の相対速度がほぼゼロになるようにウェブ2が押し付け部材11の周面を矢印A方向に移動しながら払拭する。
【0033】
この場合には、押し付け部材11の回転速度とウェブ2の送り速度を、ノズル面20aを払拭するときの払拭速度(払拭方向Y1への移動速度)に合わせて制御する。
【0034】
これにより、図5(b)に示すように、押し付け部材11によってウェブ2に含浸された液体である洗浄液41を、廃液40が付着しているノズル面20aに転移させることができる。
【0035】
次に、第1払拭動作の第2例について図6を参照して説明する。図6は第1払拭動作の第2例の説明に供する要部説明図である。
【0036】
第1払拭動作の第2例では、押し付け部材11を回転とウェブ2の送りを停止した状態で、払拭ユニット100を矢印Z1方向に上昇させて、押し付け部材11によってウェブ2をノズル面20aに押し付けた後、払拭ユニット100を矢印Z2方向に下降させて、押し付け部材11によってウェブ2をノズル面20aから離間させる。
【0037】
そして、払拭ユニット100を払拭方向Y1に所定量移動させた後、払拭ユニット100を上昇させてウェブ2をノズル面20aに押し付け、払拭ユニット100を下降させてウェブ2をノズル面20aから離間させる。
【0038】
このようなスタンプ動作を繰り返す(矢印に1~11を付している)ことによって、ウェブ2に含浸された洗浄液41をノズル面20aの全体に転写させることができる。
【0039】
これらの第1払拭動作を行うことによって、ノズル面20aに洗浄液41を転写してノズル面20aに付着した廃液40を除去し易くすることができる。
【0040】
次に、第2払拭動作の第1例について図7を参照して説明する。図7は第2払拭動作の説明に供する要部説明図である。
【0041】
第2払拭動作では、ウェブ2を払拭対象であるノズル面に対して払拭方向Y1に相対的に移動させて払拭する。このとき、ノズル面20aに対するウェブ2の相対速度が所定の値を持って払拭することになる。
【0042】
例えば、周面に凹凸がある押し付け部材11によって支持されたウェブ2の送り速度を制御することで、図7(a)に示すように、ウェブ2中に含浸された洗浄液41が転写されたノズル面20aを払拭して、図7(b)に示すように、ノズル面20aに付着した廃液40を洗浄液41と共に掻き取ることができる。
【0043】
このように、ウェブ2による払拭動作(第2払拭動作)を行うとき、払拭対象は押し付け部材11の凸部11bのエッジによってウェブ2を介して掻き取られるので、確実に廃液40を除去することができ、払拭性が向上する。
【0044】
次に、第1払拭動作と第2払拭動作を連続して行う例について図8を参照して説明する。図8は同説明に供する説明図である。
【0045】
まず、図8(a)~(c)に示すように、払拭ユニット100を第1方向である払拭方向Y1に移動させながら第1払拭動作を行って、前述したように、ウェブ2の洗浄液41を廃液40が付着しているノズル面20aに転写する。
【0046】
この第1払拭動作では、押し付け部材11の周面が凹凸形状でなく平坦形状である場合(比較例)には、ウェブ2に含浸されている洗浄液41はノズル面20a上にとどまることなく、押し付け部材11の移動と共に下流方向へ流される。
【0047】
これに対し、本実施形態のように、押し付け部材11の周面に沿って凹凸が設けられていることで、凸部11bで押されて染み出したウェブ2中の洗浄液41は、凹部11aで圧力が解除されるため、移動方向に流されることなく、ノズル面20a上にとどまることができる。
【0048】
その後、図8(d)~(f)に示すように、払拭ユニット100を第1方向と反対方向の第2方向である払拭方向Y2に移動させながら、第2払拭動作を行って、ノズル面20aの廃液40を掻き取って除去する。
【0049】
この第2払拭動作によって、ウェブ2中に含浸されてノズル面20aに転写された洗浄液41が混在したノズル面20aの廃液40は、押し付け部材11の凸部11bのエッジによって掻き取られる。このとき、ノズル面20aを横断する凸部11bの個数分だけ複数回にわたり掻き取るため、確実に廃液40を除去することができる。
【0050】
次に、第1払拭動作とワイパ部材による払拭動作を連続して行う例について図9を参照して説明する。図9は同説明に供する説明図である。
【0051】
ここでは、図9(a)、(b)に示すように、払拭ユニット100を払拭方向Y2に移動しながら第1払拭動作を行ってウェブ2に含浸された洗浄液をノズル面20aに転写する。
【0052】
そして、この第1払拭動作の途中で、図9(b)に示すように、ワイパ部材15がノズル面20aへの接触を開始し、図9(c)、(d)に示すように、ワイパ部材15によってノズル面20aの廃液40を掻き取って除去する。
【0053】
以上のように、ウェブを払拭対象に押し付ける押し付け部材の周面に沿って凹凸を設けることで、ウェブに含浸された洗浄液などの液体を払拭対象に転写でき、払拭による掻き落としを確実に行うことができるようになる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について図10及び図11を参照して説明する。図10は同実施形態における押し付け部材の凹凸と払拭対象との位置関係の説明に供する平面説明図、図11は同じくヘッドの側面説明図である。
【0055】
本実施形態では、払拭対象はノズル面20aであり、ノズル面20aに複数のノズル21が配置された複数列(又は1列)のノズル列が配置され、ノズル面20aの周縁部がカバー部材22で覆われている。この場合、図12に示すように、ノズル面20aとカバー部材22の表面との間に段差24を生じている。
【0056】
そこで、本実施形態では、押し付け部材の凸部11bは、各ノズル21に当たらない位置に設けられている。
【0057】
これにより、払拭を行うときに、凸部11bがノズル21に当たって、ノズル21のエッジが摩耗することを防止できる。
【0058】
また、本実施形態では、押し付け部材の凸部11bとして、ノズル面20a及びカバー部材22の表面の両方に当たる位置、即ち段差24の位置でウェブ2を押し付ける凸部11b1を含んでいる。
【0059】
ここで、押し付け部材11の凹部11aと凸部11bとの高さの差(段差)は、ノズル面20aとカバー部材22との段差24以上の段差(高さ)としている。また、押し付け部材11の凸部11bの間隔(凸間距離)は、ノズル面20aとカバー部材22との段差24以上としている。
【0060】
これにより、ノズル面20aとカバー部材22との段差24の部分に溜まる廃液40も確実に除去することができるようになる。
【0061】
次に、押し付け部材の異なる例について図12を参照して説明する。図12は同説明に供する斜視説明図である。
【0062】
図12(a)に示す第1例の押し付け部材11Aは、回転体(ローラ)であり、周面に、周方向及び軸方向に沿って複数の半球状の凸部11bを並べて配置し、凸部11b間を凹部11aとして、凹凸を形成している。
【0063】
図12(b)に示す第2例の押し付け部材11Bは、平板状部材であり、表面に、払拭方向Y及び払拭方向Yと直交する方向に、複数の半球状の凸部11bを並べて配置し、凸部11b間を凹部11aとして、凹凸を形成している。
【0064】
図12(c)に示す第3例の押し付け部材11Cは、ベース部材11c上に複数の半円柱状部材11dを払拭方向Yに沿って並べて配置し、各半円柱状部材11dの周面に周方向及び軸方向に沿って複数の半球状の凸部11bを並べて配置し、凸部11b間を凹部11aとして、凹凸を形成している。
【0065】
図12(d)に示す第4例の押し付け部材11Dは、平板状部材であり、表面に、払拭方向及び払拭方向と直交する方向に、複数の半球状の凸部11bを並べて配置し、凸部11b間を凹部11aとして、凹凸を形成している。この押し付け部材11Dは、払拭方向Yの長さを払拭対象であるヘッド20の長さとほぼ同じにしたものである。
【0066】
次に、押し付け部材の更に異なる例について図13ないし図17を参照して説明する。図13ないし図17は同説明に供する説明図であり、各図(a)は平面説明図、(b)は側面説明図である。
【0067】
図13に示す第5例の押し付け部材11Eは、表面に、払拭方向Y及び払拭方向Yと直交する方向に、複数の円柱状の凸部11bを並べて配置し、凸部11b間を凹部11aとして、凹凸を形成している。
【0068】
図14に示す第6例の押し付け部材11Fは、表面に、払拭方向Y及び払拭方向Yと直交する方向に、複数の半球状の凸部11bを並べて配置し、凸部11b間を凹部11aとして、凹凸を形成している。
【0069】
図15に示す第7例の押し付け部材11Gは、表面に、払拭方向Y及び払拭方向Yと直交する方向に、複数の矩形状の凸部11bを並べて配置して、凹凸を形成している。そして、この押し付け部材11Gでは、払拭方向Yにおいて、凸部10bを千鳥状に配置して、凹部11aが払拭方向Yで並ばない配置としている。
【0070】
図16に示す第8例の押し付け部材11Hは、表面に、払拭方向Y及び払拭方向Yと直交する方向に、複数の矩形状の凸部11bを並べて配置して、凹凸を形成している。そして、この押し付け部材11Hでは、払拭方向Yと直交する方向において凸部10bは同じ位置に配置して、凹部11aが払拭方向Yで一列に並ぶ配置としている。
【0071】
図17に示す第9例の押し付け部材11Iは、表面に、払拭方向Yと直交する方向にライン上の凸部11bを配置して、凹凸を形成している。
【0072】
なお、ここでは、押し付け部材は平板状で示しているが、ローラ形状(回転体)とすることもできる。
【0073】
次に、本発明に係るヘッドメンテナンス装置を含む液体を吐出する装置の概要について図18及び図19を参照して説明する。図18は液体を吐出する装置の正面説明図、図19は同装置のキャリッジにおけるヘッド配置の説明に供する平面説明図である。
【0074】
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、キャリッジ121に1又は複数の液体吐出ヘッド20(20A~20C)を搭載し、搬送手段122で媒体123を間欠的に搬送する。そして、キャリッジ121を矢印方向に移動させ、液体吐出ヘッド20から所要の液体を吐出して画像を形成する。
【0075】
また、キャリッジ121のホーム位置側には、液体吐出ヘッド20のノズル面20aをキャッピングするキャップ52と、前記実施形態で説明したような払拭装置1で構成したヘッド清掃装置51とを含み、ヘッド20のメンテナンス(ヘッドメンテナンス)を行うヘッドメンテナンス装置50を配置している。
【0076】
このように、本発明に係る払拭装置を含むヘッドメンテナンス装置を備えていることで、ヘッド面を清浄化して安定した液体吐出を行うことができる。
【0077】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0078】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0079】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0080】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0081】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0082】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0083】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0084】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0085】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0086】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0087】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0088】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0089】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0090】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0091】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0092】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0093】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0094】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0095】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0096】
2 ウェブ(払拭部材)
2A 繰り出し側ロール
2B 巻取り側ロール
3 繰り出しローラ(軸心部材)
4 巻取りローラ(軸心部材)
11、11A~11I 押し付け部材
20 液体吐出ヘッド
21 キャリッジ
50 メンテナンス装置
51 ヘッド清掃装置
図1
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