(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、ならびに、これを用いた膜シール材及び膜モジュール
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20220628BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20220628BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20220628BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220628BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220628BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C09K3/10 D
B01D63/00 500
B01D63/02
C08G18/10
C08G18/32 071
C08G18/76 057
(21)【出願番号】P 2018138313
(22)【出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2017143363
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝治
(72)【発明者】
【氏名】池本 満成
(72)【発明者】
【氏名】太田 太
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-297134(JP,A)
【文献】特開平11-322881(JP,A)
【文献】国際公開第2017/6650(WO,A1)
【文献】特開2015-142908(JP,A)
【文献】国際公開第2011/74238(WO,A1)
【文献】米国特許第4598136(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
B01D63/00-63/16
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記主剤(A)が、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1)が、イソシアネート基含有化合物(a1)と、活性水素含有化合物(a2)との反応生成物であり、
前記主剤(A)中にジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、該ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマー含有量が、35質量%以下であり、
前記硬化剤(B)が、式(1)で示される化合物(b1)を含有することを特徴とする膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【化1】
式中、Rは炭素数が2以上のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1)が、アロファネート基含有ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記主剤(A)が、
変性もしくは未変性のジフェニルメタンジイソシアネートと、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)と、の混合物;および、
ジフェニルメタンジイソシアネートを構成単位として含有するイソシアネート基末端プレポリマー(A1-β);からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)が、イソシアネート基含有化合物(a1-α)と、活性水素含有化合物(a2-α)との反応生成物であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)が、イソシアネート基含有化合物(a1-β)と、活性水素含有化合物(a2-β)との反応生成物であり、
前記主剤(A)中の前記ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマー含有量が、35質量%以下であり、
前記硬化剤(B)が、式(1)で示される化合物(b1)を含有する:
【化2】
式中、Rは炭素数が2以上のアルキル基を表す。
【請求項4】
前記式(1)におけるRが、炭素数6以上24以下のアルキル基であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
前記硬化剤(B)中の前記化合物(b1)の含有量が、1質量%以上であり、
前記硬化剤(B)のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が、9.0以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項6】
硬化剤(B)が、
前記化合物(b1)と、
ヒマシ油及びヒマシ油系変性ポリオールからなる群より選択される少なくとも1種のポリオール(b2)と、
前記化合物(b1)以外の水酸基含有アミン系化合物(b3)と、を含み、
前記ポリオール(b2)の含有量Mb2と、前記水酸基含有アミン系化合物(b3)の含有量Mb3との質量比(Mb2)/(Mb3)が、70/30以上90/10以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材。
【請求項8】
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止する膜シール材と、を備え、
前記膜シール材が、請求項7に記載の膜シール材である、膜モジュール。
【請求項9】
前記膜が、複数本の中空糸膜であり、
前記膜シール材は、
前記本体部と、前記複数本の中空糸膜の少なくとも一部と、の間隙、および、
前記複数本の中空糸膜相互の間隙の少なくとも一部を封止する請求項8に記載の膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、ならびに、これを用いた膜シール材及び膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜の充填率が高い中空糸膜モジュールが開発されている。このため、膜と膜モジュールとの間隙を封止する膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物には、微小な間隙にも容易に浸透し得る優れた浸透性を発揮するべく、低粘度化が求められている。
また、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物にはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が広く用いられているが、中空糸膜の細孔を保持するための保持剤としてグリセリンが用いられている場合、MDIとグリセリンとの低分子反応物が生成する。この低分子反応物は、使用時において膜モジュール中に溶出するため、その生成が抑制されることが強く望まれている。
【0003】
特許文献1は、MDI及びヒマシ油との反応物から得られたイソシアネート基末端プレポリマー、ならびに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分(主剤)と、ポリオール成分(硬化剤)と、を含む膜モジュールのシール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を開示している。特許文献1にかかるシール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物によれば、低粘度であり、得られるポリウレタン樹脂の溶出量が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかる組成物は、MDIをヒマシ油で反応させ、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを添加して低粘度化を試みているものの、主剤の粘度が依然として高く、さらなる低粘度化が求められている。したがって、特許文献1にかかる組成物は、主剤と硬化剤との混合初期粘度が高いという問題を有しており、成形時の充填不良が生じることがある。
そこで、本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、低粘度であり、低分子反応物の溶出が低減された膜シール材の形成に資する、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の提供に向けられている。
本発明の他の実施の形態は、上記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材、膜モジュールの提供に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記主剤(A)が、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1)が、イソシアネート基含有化合物(a1)と、活性水素含有化合物(a2)との反応生成物であり、
前記主剤(A)中にジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、該ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマー含有量が、35質量%以下であり、
前記硬化剤(B)が、式(1)で示される化合物(b1)を含有することを特徴とする膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【0007】
【0008】
式中、Rは炭素数が2以上のアルキル基を表す。
【0009】
本発明の他の実施形態にかかる膜シール材は、上記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態にかかる膜モジュールは、
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止する膜シール材と、を備え、
前記膜シール材が、上記膜シール材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、低粘度であり、低分子反応物の溶出物が低減された膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することができる。
本発明の他の実施形態によれば、上記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材、及び膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
【0014】
[膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物]
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)と、を含むものであって、
前記主剤(A)が、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1)が、イソシアネート基含有化合物(a1)と、活性水素含有化合物(a2)との反応生成物であり、
前記主剤(A)中にジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、該ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマー含有量が、35質量%以下であり、
前記硬化剤(B)が、式(1)で示される化合物(b1)を含有することを特徴とする膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【0015】
【0016】
式中、Rは炭素数が2以上のアルキル基を表す。
【0017】
本発明の他の実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
前記主剤(A)が、
変性もしくは未変性のジフェニルメタンジイソシアネートと、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)と、の混合物;および、
ジフェニルメタンジイソシアネートを構成単位として含有するイソシアネート基末端プレポリマー(A1-β);からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)が、イソシアネート基含有化合物(a1-α)と、活性水素含有化合物(a2-α)との反応生成物であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)が、イソシアネート基含有化合物(a1-β)と、活性水素含有化合物(a2-β)との反応生成物であり、
前記主剤(A)中の前記ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマー含有量が、35質量%以下であり、
前記硬化剤(B)が、前記式(1)で示される化合物(b1)を含有する。
【0018】
<主剤(A)>
主剤(A)は、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)を含む。
また、主剤(A)は、変性もしくは未変性のジフェニルメタンジイソシアネートと、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)と、の混合物;および、ジフェニルメタンジイソシアネートを構成単位として含有するイソシアネート基末端プレポリマー(A1-β);からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
したがって、主剤(A)は、ジフェニルメタンジイソシアネートを、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)と共に混合物の態様で含んでいてもよく、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)の構成単位の態様で含んでいてもよい。
【0019】
イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)は、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)の1つの態様であって、イソシアネート基含有化合物(a1-α)と、活性水素含有化合物(a2-α)との反応生成物である。
イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)は、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)の1つの態様であって、イソシアネート基含有化合物(a1-β)と、活性水素含有化合物(a2-β)との反応生成物である。
【0020】
イソシアネート基含有化合物(a1-α)、イソシアネート基含有化合物(a1-β)は、イソシアネート基含有化合物(a1)に含まれる。したがって、イソシアネート基含有化合物(a1)と呼ぶ場合、イソシアネート基含有化合物(a1-α)、イソシアネート基含有化合物(a1-β)も含む。
活性水素含有化合物(a2-α)、活性水素含有化合物(a2-β)は、活性水素含有化合物(a2)に含まれる。したがって、活性水素含有化合物(a2)と呼ぶ場合、活性水素含有化合物(a2-α)、活性水素含有化合物(a2-β)を含む。
イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)は、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)に含まれる。したがって、イソシアネート基末端プレポリマー(A1)と呼ぶ場合、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)を含む。
【0021】
<<イソシアネート基含有化合物(a1)>>
イソシアネート基含有化合物(a1)は、分子中にイソシアネート基を含有する化合物であり、特に制限されるものではない。イソシアネート基含有化合物(a1)としては、例えば、炭素数2~18の脂肪族イソシアネート、炭素数4~15の脂環族イソシアネート、炭素数6~20の芳香族イソシアネート、炭素数8~15の芳香脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
ここで、炭素数とは、イソシアネート基中の炭素原子を除く炭素原子の数であり、以下も同じである。
【0022】
炭素数2~18の脂肪族イソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2-イソシアネートエチル)カーボネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0023】
炭素数4~15の脂環族イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート等が挙げられる。
【0024】
炭素数6~20の芳香族イソシアネートとしては、例えば、2,4-TDI、2,6-TDIの如きTDI(トルエンジイソシアネート);4,4’-MDI、2,4’-MDI、2,2’-MDI、及びこれらの混合物の如きMDI(メチレンジフェニレンジイソシアネート);ナフタレンジイソシアネート;ベンゼン環を3個以上有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;等が挙げられる。なお、ここで挙げたMDIは未変性のMDIである。
【0025】
炭素数8~15の芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジイソシアネートエチルベンゼン等が挙げられる。
【0026】
また、これらのイソシアネート基含有化合物が有するイソシアネート基の一部又は全部を変性した変性体も挙げられる。変性体としては特に制限はなく、例えば、イソシアヌレート変性、ビュレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトンイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性等の変性を行って得られる変性体が挙げられる。したがって、変性のMDIとしては、カルボジイミド変性MDI、アロファネート変性MDIなど、種々の変性体が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、芳香族イソシアネート、または、芳香族イソシアネートが有するイソシアネート基の一部が変性された変性体が好ましい。MDIまたはMDIの一部が変性された変性体がより好ましい。特に、MDI又はMDIの一部がアロファネート変性された変性体が特に好ましい。これらのイソシアネート基を含有する化合物を用いることで、膜シール材に要求される物性(例えば、混合粘度、硬度などの機械的強度)が良好な硬化樹脂を形成することができる。
【0028】
なお、イソシアネート基含有化合物(a1-β)である変性もしくは未変性のMDIと、活性水素含有化合物(a2-β)と、が反応し、反応生成物となる。すなわち、変性もしくは未変性のMDIは、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-β)の構成単位となり得る。
また、変性もしくは未変性のMDIは、イソシアネート基末端プレポリマー(A1-α)と共に前記混合物を構成することができる。
【0029】
<<活性水素含有化合物(a2)>>
活性水素含有化合物(a2)としては、活性水素を含有する化合物であれば特に制限はない。活性水素含有化合物(a2)としては、例えば、脂肪族モノアルコール、芳香族モノアルコール、脂環族モノアルコール、芳香脂肪族モノアルコール、ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルコール、ヒマシ油、ヒマシ油系ポリオール、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等のポリオール等が挙げられる。
【0030】
脂肪族モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-及び2-プロパノール、1-及び2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1-ペンタノール、1-ノナノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-エイコサノール、1-ヘキサコサノール、1-ヘプタトリコンタノール、1-オレイルアルコール、2-オクチルドデカノール等の脂肪族モノアルコール、及びこれらの混合物等が挙げられる。
脂肪族モノアルコールの数平均分子量は32以上1500以下が好ましく、100以上1000以下であることがより好ましい。分子量がこの範囲であると、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度に優れる。
【0031】
芳香族モノアルコールとしては、例えば、フェノール、クレゾール等が挙げられる。
【0032】
脂環族モノアルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0033】
芳香脂肪族モノアルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0034】
ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば前記した脂肪族モノアルコールとポリオキシプロピレングリコールとの反応物が挙げられ、ポリオキシプロピレンメチルエーテル、ポリオキシプロピレンエチルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-オクチルドデカエーテル及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルの数平均分子量は90以上1500以下が好ましい。なお、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度に優れるとの観点から、その数平均分子量は150以上1000以下であることがより好ましい。
【0035】
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油又はヒマシ油脂肪酸と、低分子ポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選択される少なくとも1種のポリオールとの反応により得られる線状又は分岐状のヒマシ油系ポリオールが挙げられる。具体例としては、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、及びモノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジ、及びトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、及びトリエステル等が挙げられる。
なお、ヒマシ油の主成分は、リシノール酸のトリグリセライドであり、ヒマシ油には水素添加ヒマシ油が含まれる。また、ヒマシ油脂肪酸の主成分はリシノール酸であり、ヒマシ油脂肪酸には、水素添加ヒマシ油脂肪酸が含まれる。
【0036】
また、前記トリメチロールアルカンとしては、例えばトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、トリメチロールヘキサン、トリメチロールヘプタン、トリメチロールオクタン、トリメチロールノナン及びトリメチロールデカン等が挙げられる。
【0037】
ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量は400以上3000以下であることが好ましく、500以上2500以下が更に好ましい。数平均分子量が400以上3000以下のヒマシ油系ポリオールを用いることにより、膜シール材に要求される物性、特に機械的特性に優れた硬化樹脂を形成することができる。
【0038】
ヒマシ油及びヒマシ油系ポリオールの平均水酸基価は20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が更に好ましい。平均水酸基価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のヒマシ油系ポリオールを用いることにより、膜シール材に要求される物性、特に機械的特性に優れた硬化樹脂を形成することができる。さらに、膜シール材の生産性、ひいては、中空糸膜モジュールの生産性の向上も図ることができる。
【0039】
低分子ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-、1,3-または1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等の2価のポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等の3~8価のポリオール等が挙げられる。低分子ポリオールの数平均分子量は、50以上200以下であることが好ましい。
【0040】
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキサイド(炭素数2~8個のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物、およびアルキレンオキサイドの開環重合物等が挙げられ、具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等が挙げられる。ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、膜シール材製造時において成型加工性に優れるとの観点から200以上7000以下が好ましく、500以上5000以下であることが更に好ましい。
【0041】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばポリカルボン酸とポリオールとの縮合重合により得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールに用いるポリカルボン酸としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2量化リノール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の脂肪族飽和、不飽和ポリカルボン酸、及び芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。
また、ポリエステル系ポリオールに用いるポリオールとしては、例えば上記した低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられる。
【0042】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下が更に好ましい。数平均分子量が200以上5000以下のポリエステル系ポリオールを用いることにより、膜シール材形成時の成形加工性に特に優れる。
【0043】
ポリラクトン系ポリオールとしては、例えばグリコール類やトリオール類の重合開始剤に、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン、及びβ-メチル-δ-バレロラクトン等を、有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物等の触媒の存在下で、付加重合させて得られるポリオールが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下が更に好ましい。数平均分子量が200以上5000以下のポリラクトン系ポリオールを用いることにより、膜シール材形成時の成形加工性に特に優れる。
【0044】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエン、又はブタジエンとスチレンもしくはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。その他、末端にカルボキシル基及び水酸基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールも挙げられる。
【0045】
これらのうち、活性水素含有化合物(a2)としては、ヒマシ油またはヒマシ油系ポリオールが好ましい。
【0046】
<<イソシアネート基末端プレポリマー(A1)の製法>>
イソシアネート基末端プレポリマー(A1)は、例えばイソシアネート基含有化合物(a1)と活性水素含有化合物(a2)とをウレタン化やカルボジイミド化させたもの、またはウレタン化反応させた後、触媒(a3)を所定量添加してアロファネート化し、触媒毒(a4)により反応を停止させることにより得られるもの等が好ましい。
【0047】
<<触媒(a3)>>
触媒(a3)としては、例えば、アセチルアセトン亜鉛や、亜鉛、鉛、錫、銅、コバルト等とカルボン酸との金属カルボン酸塩、及びこれらの混合物や、3級アミン、3級アミノアルコール、4級アンモニウム塩およびこれらの混合物等が挙げられる。
触媒(a3)の添加量は、1ppm以上500ppm以下の範囲内であることが好ましく、5ppm以上300ppm以下の範囲内であることがより好ましい。1ppm以上であると反応が迅速となり、500ppm以下であるとプレポリマーの着色がさらに良好に抑制されるため好ましい。
【0048】
<<触媒毒(a4)>>
触媒毒(a4)としては、酸性物質が好ましい。触媒毒(a4)としては、例えば無水塩化水素、硫酸、燐酸、モノアルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、モノ又はジアルキル燐酸エステル、塩化ベンゾイル、ルイス酸が挙げられる。触媒毒(a4)の添加量は、触媒(a3)のモル数に対し当量以上加えることが好ましく、触媒(a3)のモル数の1.0倍モル当量以上1.5倍モル当量以下を加えることが好ましい。
【0049】
<<イソシアネート基含有量>>
主剤(A)のイソシアネート基含有量は、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上28質量%以下がより好ましく、10質量%以上26質量%以下であることが特に好ましい。これらの範囲であると、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度に優れる。
【0050】
<<MDIモノマー含有量>>
また主剤(A)中のMDIモノマー含有量は、MDIとグリセリンとの低分子反応物を低減するため35質量%以下が好ましく、33質量%以下がより好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
<<反応温度>>
ウレタン化反応は、40℃以上80℃以下の温度範囲で、目標のNCO含量となるまで反応することが好ましい。40℃以上であるとモノマーMDIの結晶析出をより良好に抑制でき、80℃以下であると副反応物の生成をより抑制できる。
【0052】
アロファネート化反応は、90℃以上130℃以下の温度範囲で、目標のNCO含量となるまで反応することが好ましい。90℃以上であると反応がより迅速となり、130℃以下であると副反応物の生成をより抑制できる。
【0053】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)は、式(1)で示される化合物(b1)を含有する:
【0054】
【0055】
式(1)中、Rは炭素数が2以上のアルキル基を表す。Rの炭素数が1であると、HLB(詳細は後述する)が高くなってグリセリンとの相溶性が向上し、溶出性能が悪化する。
硬化剤(B)を用いることにより、成形性、接着性及び耐熱性について特に優れたものとなる。
【0056】
<<化合物(b1)>>
前記式(1)で示される化合物(b1)としては、例えば、直鎖又は分岐のブチルジエタノールアミン、ヘキシルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、セチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0057】
硬化剤(B)中の化合物(b1)の含有量は、1質量%以上が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、3質量%以上30質量%以下が更に好ましく、4質量%以上25質量%以下が特に好ましい。1質量%以上であるとより低粘度になると共に、溶出をさらに抑制できる。40質量%以下であるとより適量な樹脂架橋が生じるため、溶出をさらに抑制できる。
【0058】
また、式(1)中のRの炭素数は、6~24が好ましく、8~20が更に好ましく、10~18が特に好ましい。Rの炭素数がこの範囲であると、グリセリンとの相溶性をより抑制することができるため、溶出をさらに抑制できると共に、硬化性を向上させる窒素含有量が大きく低下することがないため、速硬化性がさらに良好になる。
【0059】
硬化剤(B)は、化合物(b1)と、ヒマシ油及びヒマシ油系ポリオールからなる群より選択される少なくとも1種のポリオール(b2)と、化合物(b1)以外の水酸基含有アミン系化合物(b3)と、を含むことが好ましい。
【0060】
<<ポリオール(b2)>>
ヒマシ油及びヒマシ油系ポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオール(b2)としては、特に制限はないが、前記活性水素含有化合物(a2)で挙げた、ヒマシ油及びヒマシ油系変性ポリオールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0061】
<<水酸基含有アミン系化合物(b3)>>
水酸基含有アミン系化合物(b3)としては、例えば、低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレンジアミンのプロピレンオキシド又はエチレンオキシドの付加物であるN,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等のアミノ化合物のオキシアルキル化誘導体;モノ、ジ、トリエタノールアミン等のアミノアルコール誘導体等のアミン系化合物を挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物が好ましく、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンが特に好ましい。N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンを使用することにより、成型時の加工性がさらに向上すると共に、溶出をさらに抑制できる。
【0062】
<<(Mb2)/(Mb3)>>
硬化剤(B)中、ポリオール(b2)の含有量Mb2と、水酸基含有アミン系化合物(b3)の含有量Mb3と、の質量比(Mb2)/(Mb3)が、70/30以上90/10以下であることが好ましく、72/28以上87/13以下であることがさらに好ましい。質量比(Mb2)/(Mb3)が70/30以上の場合、反応性がより良好となり、得られるシール材の硬度が低くなり過ぎることをさらに抑制できる。質量比(Mb2)/(Mb3)が90/10以下の場合、反応性が高くなり過ぎないため、初期増粘により充填性が損なわれることがさらに抑制できると共に、得られる膜シール材の硬度が高くなり過ぎることをさらに抑制できる。
【0063】
<<活性水素含有化合物(b4)>>
硬化剤(B)中に、ポリオール(b2)および水酸基含有アミン系化合物(b3)以外の活性水素含有化合物(以下、「活性水素含有化合物(b4)」という。)を含有してもよい。活性水素含有化合物(b4)としては、前記活性水素含有化合物(a2)で挙げた各種ポリオールを用いることができる。
【0064】
硬化剤(B)中、ポリオール(b2)の含有量Mb2と、活性水素含有化合物(b4)の含有量Mb4と、の質量比(Mb2)/(Mb4)は、50/50以上100/0以下であることが好ましく、100/0が特に好ましい。すなわち、硬化剤(B)は、化合物(b1)、ポリオール(b2)、および、水酸基含有アミン系化合物(b3)のみからなることが特に好ましい。
【0065】
また、水酸基含有アミン系化合物(b3)を考慮した場合の質量比は、硬化性、充填性の観点から、質量比{(Mb2)+(Mb4)}/(Mb3)が、70/30以上90/10以下であることが好ましく、72/28以上87/13以下であることが更に好ましい。
【0066】
<<HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)>>
本実施形態では、MDIとグリセリンとの低分子反応物の溶出を低減するために、水酸基を含み親水性の高い硬化剤(B)の親水性を低下させることを目的とし、疎水性のアルキル基を組み込む。化学構造から有機性値(Organic Value;OV)と、無機性値(Inorganic Value;IV)と、を算出し、以下の算出式からHLBを求めることができる。なお、後述するHLBを用い、硬化剤(B)の親水-疎水性を示した。HLBが高いほど親水性であり、低いほど疎水性であることを示している。
【0067】
【0068】
また、表1に無機性基の具体例およびその無機性(親水性)、表2に有機性兼無機性基の具体例およびその無機性(親水性)、有機性(疎水性)を示す。
表1中、Φはアルキル基またはフェニル基を表し、Rはアルキル基を表す。
【0069】
【0070】
【0071】
硬化剤(B)のHLBは9.0以下であることが好ましく、8.8以下が更に好ましく、8.6以下が特に好ましい。
【0072】
<粘度>
膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、主剤(A)と、硬化剤(B)と、の混合を開始した時点から60秒経過後の粘度を混合粘度としたとき、400mPa・s以上1900mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以上1800mPa・s以下であることがより好ましい。なお、本開示において、低粘度とは、混合粘度が1900mPa・s以下であることを意味する。
【0073】
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、良好な速硬化性を有し、かつ低粘度で注型性に優れ、また、MDIとグリセリンとの低分子反応物の溶出量が十分に少ないポリウレタン樹脂、及び膜シール材を得ることができる。
【0074】
<膜シール材>
本発明の一実施形態にかかる膜シール材は、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。
膜シール材は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下、更に好ましくは30℃以上60℃以下の温度条件下において、前記主剤(A)を構成するイソシアネート成分と、前記硬化剤(B)を構成するポリオール成分とを反応・硬化させることにより好適に形成することができる。膜シール材は高温域にて成形することでゲル化時間の短縮が可能だが、成形収縮が起こり易いため、触媒を添加することで反応温度を下げ、成形収縮を抑えることもできる。
【0075】
<膜モジュール>
本発明の一実施形態にかかる膜モジュールは、
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止する膜シール材と、を備え、
前記膜シール材が、上述した膜シール材である。
【0076】
次いで、本発明の一実施形態にかかる膜モジュールについて図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
図1に示す膜モジュール(中空糸膜モジュール)100は、ハウジング(本体部)11を備え、その内部に複数の中空糸膜(膜)13が充填されている。例えば、透析器として用いられる中空糸膜モジュールの場合、数千~数万本の中空糸膜が充填されている。
【0077】
ハウジング11は円筒状の形状を有する。ハウジング11内部の両端(
図1中の左右両端)には膜シール材19がそれぞれ設けられている。膜シール材は、中空糸膜13同士の間隙、および、中空糸膜13とハウジング11の内壁との間の間隙を埋めて封止するとともに、複数本の中空糸膜13を結束する。
【0078】
また、ハウジング11の側面には第1の流体入口15および第1の流体出口17が設けられており、これらを介してハウジング11内には第1の流体(気体または液体)が流出入する。第1の流体入口15から流入した第1の流体は、ハウジング11内に充填された複数の中空糸膜13と接触しながらその間隙(中空糸膜外部)を通過し、第1の流体出口17から排出される。なお、中空糸膜13内部には膜シール材19が存在していないため、中空糸膜13内には不図示のキャップ部材に設けられた第2の流入口(一端側)および第2の流出口(他端側)を介して第2の流体(気体または液体)が流出入する。そして、中空糸膜13を介して第1の流体と第2の流体とが接触することで、一方の流体中から他方の流体中への(あるいはさらに他方の流体中から一方への流体中への)物質移動が生じる。例えば、中空糸膜型の透析器の場合、透析液と血液とが接触することで、血液中の老廃物や過剰な水分が透析液に移動する。
【0079】
なお、
図1に示す膜モジュール100は、複数の中空糸膜13を備え、それらの両端において膜シール材19が間隙を封止する構成であるが、本実施形態にかかる膜モジュールはかかる構成に何ら限定されるものではない。例えば、平膜、スパイラル膜等の種々の形状を有する、複数または単数の膜であってもよい。また、膜シール材は膜の両端に設けられた構成に限られるものではなく、膜の一部(中空糸状であれば一端)のみに設けられていてもよく、膜の端部すべて、例えば平膜の外縁部すべてに設けられていてもよい。さらに、膜シール材は、膜の端部以外の一部に設けられて封止する構成であってもよい。また、
図1に示す膜モジュール100のハウジング11は円筒状の形状を有するが、円筒状以外の任意の形状であってもよい。
【0080】
複数の中空糸膜13の集束体の端部における中空糸膜13相互の隙間を、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物により封止し、当該組成物を硬化させて上述した膜シール材を形成する(当該膜シール材によって中空糸膜相互の間隙が封止される)ことで、膜モジュール100を作製することができる。
【0081】
本発明の一実施形態にかかる膜モジュールは、抽出物の発生が良好に抑制されるため、医療用、水処理用モジュールとして好適に使用することができる。膜モジュールとして具体的には、血漿分離装置、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例によって何ら限定して解釈されるものではない。なお、以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0083】
以下の成分を実施例及び比較例で使用した。
[主剤(A)]
・a1-1;4,4’-MDI(東ソー社製 ミリオネートMT、
イソシアネート基含有量=33.6%)
・a1-2;2,4’-MDIおよび4,4’-MDIの混合物(東ソー社製
ミリオネートNM、イソシアネート基含有量=33.6%)
・a1-3;4,4’-MDIのカルボジイミド変性体(東ソー社製
ミリオネートMTL-C、イソシアネート基含有量=28.6%)
・a1-4;2,4-TDI(東ソー社製 コロネートT-100、
イソシアネート基含有量=48.2%)
・a2-1;ヒマシ油脂肪酸メチルエステル(伊藤製油社製 COFA-MD、
OHV=160mgKOH/g)
・a2-2;ポリプロピレングリコール(ADEKA社製 PP-1000、
OHV=111mgKOH/g)
・a2-3;2-オクチルドデカノール(花王社製 カルコール200GD)
・a2-4;部分脱水ヒマシ油 (豊国製油社製 HS2G-120、
OHV=120mgKOH/g)
・a2-5;ヒマシ油(伊藤製油社製 URIC H-30、
OHV=160mgKOH/g)
・a2-6;イソトリデカノール(KHネオケム社製、OHV=280mgKOH/g、
炭素数13)
・a2-7;ヒマシ油系ジオール(伊藤製油社製 URIC Y-403、
OHV=160mgKOH/g)
・a2-8;ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールのエステル化物
(下記ジオール合成例1により得られた化合物 OHV=114mgKOH/g)
・a3 ;アセチルアセトン亜鉛(東京化成工業社製)
・a4 ;塩化ベンゾイル(東京化成工業社製)。
【0084】
<ジオール合成例1>
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ1リットル容の四つ口フラスコに、リシノレイン酸(CO-FA 伊藤製油社製)596質量部、数平均分子量400のポリプロピレングリコール(ADEKA社製)400質量部を加え、窒素気流下にて、常圧で110℃2時間、10℃/時間の割合で昇温しながら190℃まで加熱、更に190℃で2時間反応を行い、水を留去させた。次いでテトラブチルチタネート(片山化学工業社製 TBT-100)0.05質量部を加え窒素を停止し、温度を190℃で維持したまま徐々に5kPaまで減圧、5kPa到達後更に4時間反応させ生成する水を留去させた。得られたエステル化物の水酸基価は114mgKOH/gであった。
【0085】
[硬化剤(B)]
・b1-1;N-メチルジエタノールアミン(日本乳化剤社製 アミノアルコールMDA、
OHV=942mgKOH/g、粘度=75mPa・s@25℃、HLB=27.0)
・b1-2;N-ブチルジエタノールアミン(日本乳化剤社製 アミノアルコールMBD、
OHV=696mgKOH/g、粘度=56mPa・s@25℃、HLB=16.9)
・b1-3;N-ラウリルジエタノールアミン(日油社製 ナイミーンL-202、
OHV=394mgKOH/g、粘度=100mPa・s@25℃、HLB=8.4)
・b1-4;N-ステアリルジエタノールアミン(日油社製 ナイミーンS-202、
OHV=322mgKOH/g、HLB=6.1)
・b1-5;N,N-ビスヒドロキシプロピル-N-ヒドロキシエチルアミン
(ライオン社製 レオコンMA-170、OHV=950mgKOH/g、
粘度=3000mPa・s@25℃、HLB=26.4)
・b1-6;t-ブチルジエタノールアミン(日本乳化剤社製 アミノアルコール
tr-BDEA、OHV=696mgKOH/g、常温固体、HLB=19.3)
・b1-7;ラウリルポリオキシエチレンアミン(花王社製 アミート105、
OHV=311mgKOH/g、粘度=110mPa・s@25℃、HLB=10.5)
・b1-8;ステアリルポリオキシエチレンアミン(花王社製 アミート320、
粘度=250mPa・s@25℃、OHV=91mgKOH/g、常温固体、
HLB=14.0)
・b1-9;ラウリル酸ジエタノールアミド(花王社製 アミノーンL-02、
OHV=373mgKOH/g、常温固体、HLB=10.5)
・b2-1;ヒマシ油(伊藤製油社製 URIC H-30、
OHV=160mgKOH/g、粘度=690mPa・s@25℃、HLB=4.0)
・b2-2;部分脱水ヒマシ油 (伊藤製油社製 URIC H-41、
OHV=120mgKOH/g、HLB=3.4)
・b3-1;N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン
(ADEKA社製 EDP-300、水酸基価=760mgKOH/g、
粘度=50000mPa・s@25℃、HLB=22.5)
・b3-2;エチレンジアミンのエチレンオキシド/プロピレンオキシド=40/60
付加物(ADEKA社製 BM-34、水酸基価=820mgKOH/g、
粘度=7500mPa・s@25℃、HLB=24.5)
【0086】
[製造例1~11]
(製造例1:主剤(A-1)の製造)
2リットル容の四口フラスコにa1-1を193g、a1-2を450g加え、窒素気流下攪拌しながら50℃に調整した。次いで攪拌しながらa2-1を269g、a2-2を88g加え、ウレタン化反応の発熱が収まった後に90℃まで昇温した。内温が90℃で安定したところで、触媒a3を0.1g添加し90℃で4時間反応させ、触媒毒a4を0.14g加え反応を停止させ、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下これを「主剤(A-1)」とする。主剤(A-1)において、得られたイソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基(NCO)含有量は13.5質量%であり、25℃における粘度は3330mPa・sであった。
【0087】
(製造例2~5)
イソシアネート成分およびポリオール成分を表3に示す組成に変更し、製造例1と同様の操作でプレポリマーを合成した。いずれも淡黄色透明液体で低粘度のプレポリマーが得られた。その性状を表3~4に示す。
【0088】
(製造例6)
1リットル容の四口フラスコにa1-1を530g加え、窒素気流下で攪拌しながら50℃に温調した。次いで、攪拌しながらa2-7を470g加え、ウレタン化反応の発熱が収まった後に、75℃で3時間反応させ、プレポリマーA-6を得た。プレポリマーA-6は淡黄色透明液体で、25℃における粘度は3450mPa・sであった。その性状を表4に示す。
【0089】
(製造例7、8、10)
イソシアネート成分およびポリオール成分を表4に示す組成に変更し、製造例6と同様の操作でプレポリマーを合成した。いずれも淡黄色透明液体で低粘度のプレポリマーが得られた。その性状を表4に示す。
【0090】
(製造例9)
1リットル容の四口フラスコにa1-4を215g加え、窒素気流下で攪拌しながら50℃に温調した。次いで、攪拌しながらa2-5を430g加え、ウレタン化反応の発熱が収まった後に、75℃で3時間反応させた。その後、a1-1を55g、a1-3を300g加え、均一になるまで混合撹拌し、プレポリマーA-9を得た。プレポリマーA-9は淡黄色透明液体で、25℃における粘度は4700mPa・sであった。その性状を表4に示す。
【0091】
(製造例11)
a1-3(4,4’-MDIのカルボジイミド変性体;東ソー社製 ミリオネートMTL-C;イソシアネート基含有量=28.6%)を用意し、これをそのままA-11とした。
【0092】
【0093】
【0094】
[調製例1~21]
(調製例1:硬化剤(B-1)の調製)
ポリオールb2-1を65質量部、b2-2を10質量部及びポリオールb3-1を25質量部、均一混合して硬化剤(B-1)を調製した。以下、これを「硬化剤(B-1)」とし、その性状を表5に示す。
【0095】
(調製例2~21)
各ポリオールを表5および表6に示す組成に変更し、調製例1と同様の操作で硬化剤(B-2)~(B-21)を調製した。その性状を表5および表6に示す。(単位は質量部)
【0096】
【0097】
【0098】
[NCO含有量測定]
表3、4に示すプレポリマーA-1~A-11において、NCO含有量は、JIS K1603-1:2007に準じて行った。
【0099】
[MDIのモノマー含有量測定]
表3、4に示すプレポリマーA-1~A-11において、MDIのモノマーの含有量(質量%)は、GPC測定により、下記の条件および方法により求めた。
【0100】
<測定条件>
測定装置:「HLC-8120(商品名)」(東ソー社製)
カラム:充填剤として、TSKgel G3000HXL、TSKgel G2000HXL、TSKgel G1000HXL(いずれも商品名、東ソー社製)の3種をそれぞれ充填したカラムを直列に接続して、カラム温度40℃にて測定
検出器:RI(屈折率)計
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)(流量:1mL/min.、40℃)
検量線:以下のグレードのポリスチレン(TSK standard POLYSTYRENE;東ソー社製)を用いて、検量線を得た。
F-2(1.81×104)F-1(1.02×104)A-5000(5.97×103)A-2500(2.63×103)A-500(Mw=6.82×102、5.78×102、4.74××102、3.70×102、2.66×102)トルエン(Mw=92)
サンプル:サンプル0.05gのテトラヒドロフラン10mL溶液
【0101】
<測定方法>
まず、ポリスチレンを標準物質として、屈折率差により検出して得られたチャートから、検量線を得た。次に各サンプルについて、同じ検量線に基づき屈折率差により検出して得られたチャートから、MDIのモノマーを示すピークトップ分子量(数平均分子量)230付近のピークの質量%を求めた。
【0102】
[低分子溶出試験用サンプルの作成]
(実施例1~17、比較例1~16)
主剤(A-1)~(A-11)、硬化剤(B-1)~(B-21)を表7~10に示す組み合わせで、液温45℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00もしくは1.05(モル比)、合計質量が30gとなるように主剤と硬化剤を配合した混合液を15秒撹拌した。更にグリセリン10gを添加(中空糸に含有するグリセリンを想定)して15秒間撹拌し、ポリウレタン樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を1次キュア条件として温度50℃、時間10分間、2次キュア条件として温度45℃、時間2日間、恒温槽内で静置した。
【0103】
[低分子溶出物抽出試験]
実施例1~17、比較例1~16において得られた樹脂硬化物の低分子溶出物値は、以下の方法により測定した。
先ず、各実施例及び比較例で得られた低分子溶出物値測定サンプルを扇形に裁断したものを20g秤量し、予め40℃に加温した100mlの精製水に浸漬し、40℃で2時間放置し、精製水中に低分子溶出物を抽出した。次いで、得られた抽出液をデカンテーションして50mlのメスフラスコに10ml入れ、精製水にて50mlに調整した液を試験液とし、UV吸光度測定(島津製作所UV-1500)を行った。240~245nmにおける吸光度の最大値の10分の1の値を低分子溶出物値とした。低分子溶出物値は0.07未満が好ましく、0.065未満がより好ましい。
【0104】
[混合粘度・ポットライフ試験]
実施例1~17、比較例1~16において、樹脂硬化物を得る際の混合粘度・ポットライフは、以下の方法により求めた。
予め45℃に温度調整した主剤と硬化剤を、イソシアネート基/活性水素基=1.00(モル比)になる配合で合計50gとなるように計量、混合し、25℃雰囲気下で回転粘度計(B型、4号ローター)を用いて混合物の粘度を測定した。主剤と硬化剤の混合を開始した時点から60秒経過後の粘度を混合粘度とし、混合物の粘度が50000mPa・sに到達するまでの時間をポットライフ(秒)とした。ポットライフ300秒以内であれば速硬化性良好と判断した。また、混合粘度1900mPa・s以下であれば低粘度であると判断した。
【0105】
[硬度測定試験]
実施例1~17、比較例1~16において得られた樹脂硬化物の硬度は、以下の方法により測定した。
各実施例及び比較例で得られた測定サンプルについて、25℃の温度条件下で、測定瞬間及び測定瞬間から10秒後のJIS-D硬度をJIS-K7312に記載の方法に準拠した方法で測定した。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
本発明の一実施形態によれば、優れた速硬化性を有し、かつ低粘度で注型性に優れ、MDIとグリセリンとの反応物である低分子溶出物の低減が可能な膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物及び該組成物を用いた膜シール材、膜モジュールを提供することが可能となる。従って、本発明の一実施形態にかかる膜シール材は、医療用、家庭用、工業用分離装置を構成する膜シール材として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0111】
11 ハウジング(本体部)
13 中空糸膜
15 第1の流体入口
17 第1の流体出口
19 膜シール材