(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】処理液塗布装置および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B05C 1/08 20060101AFI20220628BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B05C1/08
B41J2/01 123
(21)【出願番号】P 2018144092
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】沼田 洋典
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-240870(JP,A)
【文献】特開2005-262152(JP,A)
【文献】特開2009-000613(JP,A)
【文献】特開2003-122166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/08
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯えた液供給パンと、
前記処理液に浸られた状態で回転し当該処理液を汲み上げる汲み上げローラと、
前記汲み上げローラとの間に形成されたニップで前記汲み上げローラから前記処理液を受け取る受けローラと、
前記受けローラが受け取った処理液を、当該受けローラとの間に形成されたニップで受け取り、シートに塗布する塗布ローラと、
前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させる第一駆動源と、を備え、
前記第一駆動源は、
前記シートに前記塗布ローラ
が前記処理液
を塗布
する位置に当該シートが在るとき
は、通常の回転速度で前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させ、当該シート
に前記塗布ローラが前記処理液を塗布する位置に当該シートが無いとき
は、前記通常の回転速度よりも遅い回転速度で前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させる、
ことを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ローラを駆動する第二駆動源を備え、
前記第二駆動源は、前記シートが搬送されるときの搬送速度で前記塗布ローラを回転させる、請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】
前記シートを搬送する搬送経路において前記処理液が塗布される位置よりも搬送方向上流側に当該シートの有無を検出するセンサを備え、
前記第二駆動源は、前記センサにおける前記シートの検出結果に基づいて前記搬送速度を変化させる、請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項4】
前記第一駆動源は、前記シートへの処理液の必要な塗布量に応じて設定された回転速度で前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処理液塗布装置。
【請求項5】
前記汲み上げローラと前記受けローラにおけるニップを通過する前記処理液の量である第一液量は、前記受けローラと前記塗布ローラにおけるニップを通過する前記処理液の量である第二液量よりも少ない液量である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理液塗布装置。
【請求項6】
前記塗布ローラは前記汲み上げローラよりも硬度が低い、請求項5に記載の処理液塗布装置。
【請求項7】
処理液を貯えた液供給パンと、
前記処理液に浸られた状態で回転し当該処理液を汲み上げる汲み上げローラと、
前記汲み上げローラとの間に形成されたニップで当該汲み上げローラから前記処理液を受け取る第二受けローラと、
前記第二受けローラとの間の形成されたニップで当該第二受けローラから前記処理液を受け取る第一受けローラと、
前記第一受けローラが受け取った処理液を、当該第一受けローラとの間に形成されたニップで受け取り、シートに塗布する塗布ローラと、
前記汲み上げローラと前記第二受けローラを駆動する第一駆動源と、を備え、
前記第一駆動源は、
前記シートに前記塗布ローラ
が前記処理液
を塗布
する位置に当該シートが在るとき
は、通常の回転速度で前記汲み上げローラと前記第二受けローラを回転させ、当該シート
に前記塗布ローラが前記処理液を塗布する位置に当該シートが無いとき
は、前記通常の回転速度よりも遅い回転速度で前記汲み上げローラと前記第二受けローラを回転させる、
ことを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項8】
前記第一受けローラと、前記塗布ローラと、を駆動する第二駆動源を備え、
前記第二駆動源は、前記シートが搬送されるときの搬送速度で前記塗布ローラと前記第一受けローラを回転させる、請求項7に記載の処理液塗布装置。
【請求項9】
前記シートを搬送する搬送経路において前記処理液が塗布される位置よりも搬送方向上流側に当該シートの有無を検出するセンサを備え、
前記第二駆動源は、前記センサにおける前記シートの検出結果に基づいて前記搬送速度を変化させる、請求項8に記載の処理液塗布装置。
【請求項10】
前記第一駆動源は、前記シートへの処理液の必要な塗布量に応じて設定された回転速度で前記汲み上げローラと前記第一受けローラを回転させる、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の処理液塗布装置。
【請求項11】
前記汲み上げローラと前記第二受けローラにおけるニップを通過する前記処理液の量である第一液量と、前記第一受けローラにおけるニップを通過する前記処理液の量である第二液量と、前記第一受けローラと前記塗布ローラにおけるニップを通過する液量である第三液量は、第一液量<第二液量<第三液量の関係を満たす液量である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の処理液塗布装置。
【請求項12】
前記塗布ローラは前記第二受けローラよりも硬度が低い、請求項11に記載の処理液塗布装置。
【請求項13】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記シートに液体を塗布する液体塗布装置と、を有する画像形成システムであって、
前記液体塗布装置は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の処理液塗布装置である、ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液塗布装置、および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に処理液を塗布する処理液塗布装置と、当該処理液塗布装置の後段に配置され、処理液が塗布された記録媒体に画像形成を施す画像形成装置と、を備える画像形成システムが知られている。処理液塗布装置は、処理液を蓄える液供給パンと、液供給パンから処理液を汲み上げて記録媒体に塗布するローラ状部材と、を備える。画像形成装置は、処理液が塗布された記録媒体に対して画像を形成する。処理液塗布装置において記録媒体に塗布される処理液は、画像形成に用いられる画像形成材(インク)が記録媒体上で凝集して滲まないようにする効果や、裏写りを防止する効果を有するものである。
【0003】
従来の処理液塗布装置は、記録媒体にローラ状部材を接触させて処理液を塗布するように構成されていて、当該ローラ状部材が記録媒体に接触していないとき(ローラ状部材が接触する位置に記録媒体ないとき)であっても、当該ローラ状部材に処理液が供給される。ローラ状部材は複数あって、少なくとも、供給パンから処理液を汲み上げるローラと、記録媒体に処理液を塗布するローラを、別体で構成されている。したがって、塗布するローラが記録媒体に接触していないときにおいて、汲み上げるローラから塗布するローラへの処理液の供給が継続して行われていると、塗布するローラにおいて処理液が大量に付いた状態になる。そうすると、その後、記録媒体に処理液を塗布するときに、記録媒体の先端部(搬送方向先端部)に過剰な処理液が塗布される。
【0004】
記録媒体への処理液の過剰塗布を防止することを目的とする技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、処理液を塗布するローラ状部材である塗布ローラと、当該塗布ローラに適量の処理液を送るローラ状部材である計量ローラと、を備え、記録媒体が塗布ローラに接触しないときには、塗布ローラと計量ローラの間を離間させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術によれば、塗布ローラと計量ローラを離間させた状態からニップ状態に戻すときの衝撃や振動によって、スジ状態の塗布ムラが生ずる、という課題がある。したがって、従来技術によれば、記録媒体と塗布ローラの接触有無に関係なく塗布ローラへの処理液の供給をすると処理液の過剰塗布となり、記録媒体と塗布ローラの接触状態に応じて、塗布ローラへの処理液の供給を中止すると、再開示に塗布ムラが生ずる。記録媒体への処理液の塗布が過剰になったり、または、ムラが生じたりすると、画像形成プロセスによって得られる画像の質に悪影響を与えることになる。したがって、処理液塗布装置においては、記録媒体の先端から後端までムラ無く均一に処理液を塗布できることが望ましい。
【0006】
本発明は、記録媒体の先端から後端までムラ無く均一に処理液を塗布できる処理液塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、処理液塗布装置に関するものであって、処理液を貯えた液供給パンと、前記処理液に浸られた状態で回転し当該処理液を汲み上げる汲み上げローラと、前記汲み上げローラとの間に形成されたニップで前記汲み上げローラから前記処理液を受け取る受けローラと、前記受けローラが受け取った処理液を、当該受けローラとの間に形成されたニップで受け取り、シートに塗布する塗布ローラと、前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させる第一駆動源と、を備え、前記第一駆動源は、前記シートに前記塗布ローラが前記処理液を塗布する位置に当該シートが在るときは、通常の回転速度で前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させ、当該シートに前記塗布ローラが前記処理液を塗布する位置に当該シートが無いときは、前記通常の回転速度よりも遅い回転速度で前記汲み上げローラと前記受けローラを回転させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体の先端から後端までムラ無く均一に処理液を塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る画像形成システムの実施形態である印刷システムのシステム構成図。
【
図2】本発明に係る処理液塗布装置の内部構造の実施形態を示す構成図。
【
図3】本実施形態に係る処理液塗布装置の内部における記録媒体の搬送経路を示す図。
【
図4】本実施形態に係る処理液塗布装置の要部構造を示す図。
【
図5】比較例としての処理液塗布装置における塗布状態の例を示す図。
【
図6】比較例としての処理液塗布装置における塗布状態の別の例を示す図。
【
図7】本実施形態に係る塗布装置における塗布状態の例を示す図。
【
図8】本発明に係る処理液塗布装置の内部構造の別の実施形態を示す構成図。
【
図9】本実施形態に係る印刷システムが備えるプリンタの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る処理液塗布装置および画像形成システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な実施形態であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
【0011】
[本発明の要旨]
本発明は、記録媒体の画像形成面において、画像形成材(インク)を凝集させることでインクの滲みを防ぐ処理液を当該画像形成面に塗布する処理液塗布装置に特徴を有するものである。具体的には、処理液塗布装置において、記録媒体の画像形成面に処理液を塗布する塗布ローラの位置に当該記録媒体が無いとき、当該塗布ローラへの処理液の供給量を抑制しつつ供給を継続しておく。言い換えると、塗布ローラから記録媒体への処理液の塗布が行われる状況にないとき、当該塗布ローラへの処理液の供給量を減らすようにする。その後、記録媒体が塗布ローラの位置に至る状況になったとき、すなわち、記録媒体への処理液の塗布がなされる状況になったときに、塗布ローラへの処理液の供給量を戻す。このように、塗布ローラから記録媒体への処理液の塗布が行える状況であるか否かを、記録媒体と塗布ローラの位置関係に基づいて判定し、その判定結果に応じて、塗布ローラへの処理液の供給量を制御する。これによって、記録媒体に対する処理液の過剰塗布を防ぎ、かつ、塗布ムラの発生も防ぐ、ことを要旨の一つとする。その効果として、記録媒体の先端から後端に至るまで処理液を均一に塗布できる。したがって、本願発明によれば、処理液を均一に塗布できるので、塗布状態に起因する画像品質の低下を防止することができる。
【0012】
[画像形成システムの実施形態]
まず、本発明に係る処理液塗布装置を含む画像形成システムの実施形態について説明する。
図1は、画像形成システムの実施形態である印刷システム1000の概略を示す概略構成図である。
図1に示すように、印刷システム1000は、給送装置100と、処理液塗布装置200と、画像形成装置であるプリンタ300と、媒体排出装置400と、を備える。なお、処理液塗布装置200は、本発明に係る処理液塗布装置の実施形態に相当する。
【0013】
給送装置100は、シート状の記録媒体を、搬送経路下流に設けられた処理液塗布装置200に供給する。給送装置100から供給されるシート状の記録媒体は、例えば、カット紙などである。以下、本実施形態の説明において、シート状の記録媒体を「シート8」として表記する。
【0014】
処理液塗布装置200は、インクを凝集させる性質を備える液体(処理液)をシート8の画像形成面に塗布する処理液塗布部220と、処理剤液2216が塗布されたシート8を画像形成装置であるプリンタ300に向けて搬送する複数の搬送ローラと、を備える液体塗布装置である。なお、処理液塗布部220を含む処理液塗布装置200の詳細については、後述する。また、本実施形態において、処理液塗布装置200においてシート8に塗布される処理液は、「処理剤液2216」と表示する。処理剤液2216は、インクの滲み防止や裏写り防止のための効果を発揮する液体である。
【0015】
プリンタ300は、処理液塗布装置200において処理液が塗布されたシート8に、インク滴を吐出して画像形成を施す画像形成部を構成する。プリンタ300は、画像が形成されたシート8の表側の画像を乾燥させる乾燥部を備える。なお、プリンタ300は、シート8の表裏に印刷する場合、乾燥部から画像形成部へシート8を反転させて戻す搬送経路も備えている。これによって、先に画像が形成されている画像形成面の裏面側にインク滴を吐出して画像を形成し、その後、乾燥部において新たに画像が形成された面を乾燥し、その後、媒体排出装置400に排出することができる。プリンタ300の構成については、後述する。
【0016】
媒体排出装置400は、プリンタ300において画像形成処理が行われたシート8を収容する装置である。
【0017】
[処理液塗布装置200の構成]
次に、本実施形態に係る処理液塗布装置200について、図を用いながら説明する。
図2は、処理液塗布装置200の構成を示す構成図である。
図2に示すように、処理液塗布装置200は、搬入部210と、処理液塗布部220と、処理液供給部230と、搬出部240と、を有する。また、複数の搬送ローラや複数のペーパガイドからなる搬送パス250を有する。また、処理液塗布装置200は、全体の動作を制御する制御部260を有する。制御部260は、搬送パス250を構成する搬送ローラやペーパガイドの動作を制御し、処理液塗布装置200の内部におけるシート8の搬送方向等を制御する。また、処理液供給部230に含まれる各構成の動作を制御し、シート8に適量の処理液が塗布されるように制御する。
【0018】
給送装置100から排出された枚葉メディアであるシート8は、搬入部210により処理液塗布装置200に搬入されて、搬送パス250によって処理液塗布部220に至り、処理剤液2216が塗布される。その後、搬送パス250によって搬出部240に搬送されてプリンタ300に向けて搬出される。なお、
図2における太線矢印は、搬送パス250におけるシート8の搬送方向を例示している。
【0019】
図3は、処理液塗布装置200においてシート8の両面に処理剤液2216を塗布するときの動作の例を示す図である。シート8の両面に画像形成処理が行われる場合、すなわち、両面印刷の場合は、処理液塗布装置200においてシート8の両面に処理剤液2216が塗布される。
図3に示すように、搬入部210を通過して給送装置100から処理液塗布装置200にシート8が搬入されると、搬送経路A、B、Cの順にシート8が搬送される。これによって、処理液塗布部220にシート8が搬送される。処理液塗布部220には、媒体センサ2227を備えている。この媒体センサ2227によるシート8の検出状態に基づいて、処理液塗布部220の塗布動作は制御される。まず、シート8の片面(表面)に処理剤液2216が塗布される。その後、シート8が搬送経路DからEを通過する。ここで、第一分岐ゲートXの切り換えにより搬送経路Fにシート8が搬送される。その後、第二分岐ゲートYを通過して搬送経路Gにシート8が至る。
【0020】
ここで、第二分岐ゲートYが切り換えられて、シート8が搬送経路Hのように、これまでとは逆向きに進む。そして、切り換えられている第二分岐ゲートYを通過して、搬送経路Iから搬送経路Cに搬送される。これによって処理液塗布部220に再度シート8が搬送されて、シート8の裏面に処理剤液2216が塗布される。処理剤液2216が両面に塗布されたシート8は、その後、搬送経路Dから搬送経路Eを通過する。そして、第一分岐ゲートXの切り換えにより、搬送経路Jを通過して、搬出部240から搬出される。以上の動作により、処理剤液2216が両面に塗布されたシート8がプリンタ300に受け渡される。
【0021】
[処理液塗布部220の第一実施形態]
次に、処理液塗布部220の第一実施形態について
図4を用いて説明する。
図4は、処理液塗布部220と処理液供給部230の詳細な構成を示す図である。
図4に示すように、処理液塗布部220は、複数のローラ部材を備えている。処理液塗布部220は、複数のローラ部材として、転写ローラ2201と、塗布ローラ2204と、第一計量ローラ2217と、汲み上げローラ2208と、を備えている。
【0022】
転写ローラ2201は、中間位置が揺動支点2205によって支持されているTRアーム2202の一端に回転可能な状態で支持されている。TRアーム2202は、この揺動支点2205を境界として、一方の端部と他方の端部が上下方向の反対側に揺動するようになっている。TRアーム2202の他方の端部には、TRバネ2203が接続されている。ので、TRアーム2202の他方の端部が重力方向の逆方向に引っ張られていて、その結果転写ローラ2201は、重力方向に付勢された状態で支持されている。これによって、転写ローラ2201は、重力方向側に配置されている塗布ローラ2204に弾性圧接した状態となる。
【0023】
シート8が、この転写ローラ2201と塗布ローラ2204の間に形成されているニップを通過するときに、塗布ローラ2204の外周面に付着している処理液がシート8に塗布されるように構成されている。すなわち、シート8が塗布ローラ2204の位置にあれば、当該シート8に対して処理液を塗布できる状況になる。
【0024】
また、TRアーム2202の他方の端部側(TRバネ2203が接続されている端部側)の上方にはTRカム2206が配置されていて、TRアーム2202の上側面とTRカム2206が接触する状態になっている。このTRカム2206が回転すると、TRカム2206の外周面の位置が変位して、TRカム2206の接触面を重力方向に押し下げるように動作する。そうすると、TRバネ2203の引張力に抗してTRアーム2202の他方の端部側には、重力方向への押される力が加わる。TRカム2206の回転によりTRアーム2202の他方の端部に加えられる力によって、TRアーム2202の一方の端部に支持されている転写ローラ2201重力方向と反対方向に移動する。これによって、転写ローラ2201を塗布ローラ2204から離間する方向に移動する。TRカム2206の回転は、カムモータ2207による。すなわち、カムモータ2207の回転に基づいて、転写ローラ2201は、塗布ローラ2204とのニップが制御されるように構成されている。
【0025】
塗布ローラ2204は、処理液塗布部220の筐体側板に回転可能に支持されている。塗布ローラ2204の支持位置は、上下方向(転写ローラ2201の側を上方向とし、第一計量ローラ2217の側を下方向とした場合)、に移動可能になっている。塗布ローラ2204は、転写ローラ2201からの弾性圧接により第一計量ローラ2217に弾性圧接するように構成されている。したがって、塗布ローラ2204は、第一計量ローラ2217との弾性圧接による接触位置(ニップ)を介して、第一計量ローラ2217から処理液を受け取り、シート8に処理液を塗布するように構成されている。
【0026】
第一計量ローラ2217も、処理液塗布部220の筐体の側板に回転可能な状態で支持されている。第一計量ローラ2217は位置が固定されていて、上下左右への移動はしない構成になっている。
【0027】
汲み上げローラ2208は、供給液室2209の側板に回転可能に支持されている。
【0028】
なお、液供給パンである供給液室2209は、外側面の一面に設けられている突起部が液室揺動支点2213により、処理液塗布部220の筐体に揺動可能に固定されている。また、供給液室2209の外側面であって上記の突起部との反対面には、アーム2210が設けられている。アーム2210は、ピン2211を介して、圧縮バネ2212により供給液室2209を上方向(転写ローラ2201方向)に付勢されている。したがって、供給液室2209は、圧縮バネ2212によって上方向に付勢されている。圧縮バネ2212の付勢により、供給液室2209に固定されている汲み上げローラ2208は第一計量ローラ2217に弾性圧接可能となっている。
【0029】
ピン2211にはカム2214が接触しており、カム2214の回転により、圧縮バネ2212の押し付け力を可変するように構成されている。したがって、カム2214の回転によって、第一計量ローラ2217と汲み上げローラ2208のニップ荷重は変更可能となる構成になっている。また、カム2214の回転により、圧縮バネ2212の押し付け力が変化し、供給液室2209の位置が変化する。カム2214の回転動作は、第三モータ2215を駆動原とする。したがって、第三モータ2215の駆動を制御することで、第一計量ローラ2217と、汲み上げローラ2208との当接および離間を制御することができる。
【0030】
汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217は、ギヤで連結されている。汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217の回転動作は、第一モータ2225を駆動原とする。第一モータ2225の回転動作および回転速度は、制御部260によって制御される。したがって、第一モータ2225と制御部260によって第一駆動源が構成される。
【0031】
なお、塗布ローラ2204の回転動作は、第二モータ2226を駆動源とする。第二モータ2226の回転動作および回転速度は、制御部260によって制御される。したがって、第二モータ2226と制御部260によって第二駆動源が構成される。
【0032】
転写ローラ2201は、塗布ローラ2204との弾性圧接による接触により回転する。なお転写ローラ2201と塗布ローラはギヤで連結することも可能である。なお、第二モータ2226の回転速度は、シート8の搬送速度であるシート搬送速度である。
【0033】
供給液室2209の内部空間には、処理剤液2216が蓄えられている。汲み上げローラ2208は、供給液室2209に蓄えられている処理剤液2216に浸漬されている。
【0034】
供給液室2209には、処理剤液2216の液面を検出する液面センサ2218が設けられている。液面センサ2218は、処理剤液2216が適量となる液位に相当する位置に取り付けられている。この液面センサ2218の出力を監視することで、処理剤液2216が適量であるか否かを監視できるように構成されている。なお、処理剤液2216の適量とは、処理剤液2216の液面が、汲み上げローラ2208の回転中心程度にある状態をいう。
【0035】
シート8に処理剤液2216が塗布されると、供給液室2209に蓄えられている処理剤液2216が消費されて液面位が下がることになる。液面センサ2218が処理剤液2216の液面を検出しなくなった時点で、処理液供給部230に備わっている供給ポンプ2220が駆動するように構成されている。供給ポンプ2220の駆動によって、供給タンク2221に保持されている処理剤液2216が供給液室2209に送り込まれる。
【0036】
そして、所定の液位になった時点で供給弁2219を閉じて、供給ポンプ2220を停止させる。以上の動作により、処理液塗布部220は、供給液室2209に蓄えられる処理剤液2216の液位が一定に保たれるように構成されている。
【0037】
また、処理剤液2216は、経時的に特性が変化することがある。例えば、ある程度時間が経過すると、供給液室2209に蓄えられている処理剤液2216が増粘することを考慮しなければならない。そこで、ある程度時間が経過した処理剤液2216を排出する機構として、排液弁2222、排液ポンプ2223ならびに排液タンク2224が設けられている。排液弁2222を開放し、排液ポンプ2223を駆動させることで、供給液室2209内の劣化した処理剤液2216を排液タンク2224へ排出することができる。
【0038】
なお、塗布ローラ2204と転写ローラ2201との接触位置(ニップ)の搬送方向上流には、媒体センサ2227が配置されている。媒体センサ2227は、シート8が通過していることを出力するセンサである。したがって、媒体センサ2227の出力を監視することで、シート8が塗布ローラ2204と転写ローラ2201とのニップを通過するタイミングを検出できる。
【0039】
本実施形態に係る処理液塗布部220は、搬送経路C(
図3参照)の途中であって、塗布ローラ2204と転写ローラ処理液塗布部2201の接触位置の搬送方向上流側に、シート8の有無を検出する媒体センサ2227が設置されている。
【0040】
[第一実施形態に係る処理剤液2216の塗布プロセス]
次に、本実施形態に係る塗布プロセスについて説明する。すでに説明をした処理液塗布部220の構成において、汲み上げローラ2208が第一モータ2225の駆動力によって回転すると、供給液室2209に蓄えられている処理剤液2216が汲み上げローラ2208により汲み上げられる。この汲み上げられた処理剤液2216は、第一計量ローラ2217との接触位置(ニップ)に運ばれる。
【0041】
処理剤液2216は、汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217の接触位置を通過することにより、所定の液量で第一計量ローラ2217へと移動する。このとき、移動した処理剤液2216は、第一計量ローラ2217の外周面に付着して薄膜化する。これによって、処理剤液2216が所定の量となって後段の塗布ローラ2204に運ばれる。したがって、第一計量ローラ2217において、シート8に塗布するための処理剤液2216の液量が計量されるように構成されている。言い換えると、第一計量ローラ2217は、受けローラ(第一受けローラ)であって、汲み上げローラ2208との間に形成されたニップで、汲み上げローラ2208が汲み上げた処理剤液2216を受け取る。このように、ニップを介して処理剤液2216を受け取るときの汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217の回転速度を、後述するように調整することにより、適量の処理剤液2216をシート8に塗布できる。
【0042】
第一計量ローラ2217は、第一モータ2225の駆動力によって回転する。第一計量ローラ2217が回転すると、第一計量ローラ2217の表面に形成された処理剤液2216の薄液膜は、第一計量ローラ2217の表面(外周面)に付着したまま、塗布ローラ2204との接触位置(ニップ)に運ばれる。
【0043】
薄膜化している計量後の処理剤液2216が、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204の接触位置を通過するとき、第一計量ローラ2217から塗布ローラ2204に分配される。これによって、更に薄膜化された処理剤液2216によって、塗布ローラ2204の表面に薄液膜(微量液層)が形成される。
【0044】
塗布ローラ2204は、第二モータ2226の駆動力によって回転する。塗布ローラ2204が回転すると、塗布ローラ2204の表面に形成された微量液層は、転写ローラ2201との接触位置(ニップ)に運ばれる。塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触位置をシート8が通過することで、塗布ローラ2204の表面の微量液層がシート8に転写される。以上のように塗布プロセスが実行され、供給液室2209に蓄えられている処理剤液2216がシート8に塗布される。
【0045】
上記の構成において、弾性圧接されている各ローラ間を通過する処理剤液2216の液膜の厚み(通過膜厚)は、各ローラの速度に依存する。一般的に、ローラの回転速度が速くなればなるほど、塗布ローラ2204に運ばれる処理剤液2216の量が多くなる。すなわち、塗布ローラ2204の表面に形成される液膜の厚みが厚くなる。
【0046】
したがって、シート8に塗布される処理剤液2216の塗布量は、第一モータ2225による汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217の回転速度に依存する。第一モータ2225の回転速度が速くなると、これら2つのローラの回転速度が速くなる。これによって、シート8に向けて運ばれる処理剤液2216の量が増える。したがって、第一モータ2225は、シート8への必要な塗布量に応じて、処理液塗布装置制御部において予め設定された回転速度に基づいて、汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217を回転させる。
【0047】
塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触位置をシート8が通過していないときに、処理剤液2216が運ばれると、塗布ローラ2204の表面に処理剤液2216が蓄積する状態になる。すなわち、塗布ローラ2204の表面に形成される液膜の厚みが増加する。
【0048】
この蓄積に対する対処をしない場合の従来例を
図5に示す。
図5に示すように、シート8の有無に関係なく、モータ2230によって汲み上げローラ2208、第一計量ローラ2217、塗布ローラ2204を回転させ続けると、処理剤液2216が消費されることなく、塗布ローラ2204の表面に処理剤液2216が蓄積する状態になる。その後、
図5に示すように、次のタイミングで、塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触位置を通過するシート8の先端部には、塗布ローラ2204に蓄積されていた処理剤液2216が付着するので、先端部付近は過剰塗布になる。先端部付近以降の塗布量は通常に戻るので、シート8への処理剤液2216の塗布にムラが生ずる。
【0049】
塗布ローラ2204の表面への処理剤液2216に蓄積に対応する従来の別例を
図6に示す。
図6に示す様に、媒体センサ2227を塗布ローラ2204の上流側(シート8の搬送方向上流側)に配置し、媒体センサ2227がシート8を検出しないときには、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204を離間させる。すなわち、シート8に処理剤液2216を塗布できる状況でなければ、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給を一旦停止する(塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給を遮断する)。
【0050】
図6に示した従来例によると、媒体センサ2227がシート8を検出したときに、第一計量ローラ2217を移動させて塗布ローラ2204と再度接触させる。これによって、処理剤液2216の塗布ローラ2204表面への移動を再開する。この場合、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204を再度接触させたときの衝撃や振動によって、第一計量ローラ2217から塗布ローラ2204に移動する処理剤液2216の量にムラが生ずる。すなわち、シート8への塗布を再開したときの塗布ローラ2204の表面に形成されている処理剤液2216の液膜にはムラが生じている。
【0051】
これをシート8に塗布すると、
図6に示すように、シート8の先端部分の塗布にスジ状のムラが発生し、均一に処理剤液2216を塗布することが困難になる。
【0052】
これらに対し、本実施形態に係る処理液塗布部220は、塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触位置の搬送方向上流側にシート8を検出するための媒体センサ2227が設置されている。媒体センサ2227の検出結果と、シート8の搬送方向長さの情報に基づけば、塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触位置(ニップ)において、シート8のどの位置が通過しているか分かる。
【0053】
シート8に適量の処理剤液2216が塗布されるポイントは、塗布ローラ2204と転写ローラ2201との接触位置(ニップ)である。また、塗布ローラ2204の表面に適量の微小液層が形成されるポイントは、塗布ローラ2204と第一計量ローラ2217の接触位置(ニップ)である。
【0054】
シート8が塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触点を通過してしまって、シート8への処理剤液2216の塗布が行われなくなる前に、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給を抑制するとよい。これによって、塗布ローラ2204への処理剤液2216の過剰供給を防ぐことができる。また、シート8がこれから、塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触点を通過しようとする前に、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給量を戻せばよい。以下、本実施形態に係る塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給量の制御方法について説明する。
【0055】
本実施形態では、塗布ローラ2204と第一計量ローラ2217との接触点である第二接触点と、塗布ローラ2204とシート8との接触点である第一接触点は、塗布ローラ2204の表面において180°異なる位置になる。ここで、塗布ローラ2204の外径を「R」とする。
【0056】
この場合、媒体センサ2227がシート8の先端部を検出したタイミングと、処理液塗布装置200の制御部が予め取得しているシート8のサイズから導出可能な当該シート8の搬送方向の長さに基づいて、シート8の搬送方向において処理剤液2216が塗布された位置を判定できる。例えば、シート8の搬送方向の長さに対して、シート8の後端位置から「R×π×180°÷360」の長さ相当する位置にまで処理剤液2216が塗布された時点を判定する。この判定された時点に基づいて、第一モータ2225の速度を低速に切り替える。これによって、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給量を微小化する。なお、上記の計算式中における「180°」は、塗布ローラ2204の外周上における第一接触点と第二接触点が形成する角度である。
【0057】
その後、次のシート8の先端が媒体センサ2227を通過したタイミングと、当該シート8の長さに基づいて、塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触点(ニップ)に到達するタイミングを判定する。この場合、シート8が塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触点に到達する前であって、当該接触点よりも搬送方向上流側における「R×π×180°÷360」にて求められる長さに相当する位置にシート8の先端が到達したタイミングで、第一モータ2225の回転速度を通常速度に戻す。なお、上記の計算式中における「180°」も、塗布ローラ2204の外周上における第一接触点と第二接触点が形成する角度である。
【0058】
本動作により塗布ローラ2204への過剰な処理剤液2216の供給を抑制でき、さらに、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給抑制後のシート8への塗布において塗布ムラが生ずることを防止することができる。本実施形態における処理液塗布装置200によれば、上記の動作を繰り返すことにより、シート8の先端を含めた全体に処理剤液2216を均一に塗布することができる。
【0059】
本実施形態において、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204の間に液だまりを形成されてしまうと供給液量が飽和してしまい、第一モータ2225の回転に追従した塗布ローラ2204への液供給の感度が鈍くなり、瞬時の供給量可変ができなくなる。よって、汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217の弾性圧接部を通過できる第一液量である「液量L1」は、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204の接触点(弾性圧接部)を通過できる第二液量である「液量L2」よりも少なくし「液量L1<液量L2」を満たす液量となるように、各ローラの回転速度を制御すること好適である。
【0060】
また、本実施形態においては、汲み上げローラ2208のゴム硬度よりも塗布ローラ2204のゴム硬度を低くした方が、より好適である。これによって、処理剤液2216が通過し易い構成となっている。
【0061】
[処理液塗布部220の第二実施形態]
次に、処理液塗布部220の別の実施形態について、
図8を用いて説明する。本実施形態に係る処理液塗布部220は、第一実施形態よりも、更に微量塗布を実現するための構成を備える。本実施形態に係る処理液塗布部220aは、汲み上げローラ2208と第一計量ローラ2217の間に第二計量ローラ2228が配置されている。
【0062】
第二計量ローラ2228は、処理液塗布部220aの側板に回転可能に支持され、上下に移動可能であり、汲み上げローラ2208からの弾性圧接により第一計量ローラ2217に弾性圧接している。
【0063】
汲み上げローラ2208と第二計量ローラ2228は、ギヤで連結されており、第一モータ2225により駆動される。塗布ローラ2204と第一計量ローラ2217は、第一実施形態と同様に、第二モータ2226により駆動可能な構成である。転写ローラ2201は、塗布ローラ2204との弾性圧接による接触により回転する。なお、転写ローラ2201と塗布ローラはギヤで連結することも可能である。なお、第二モータ2226の回転速度は、シート8の搬送速度であるシート搬送速度である。
【0064】
[第二実施形態に係る処理剤液2216の塗布プロセス]
次に、本実施形態に係る塗布プロセスについて説明する。すでに説明をした処理液塗布部220aの構成において、汲み上げローラ2208が第一モータ2225の駆動力によって回転すると、供給液室2209に蓄えられている処理剤液2216が汲み上げローラ2208により汲み上げられる。この汲み上げられた処理剤液2216は、第二計量ローラ2228との接触位置(ニップ)に運ばれる。
【0065】
処理剤液2216は、汲み上げローラ2208と第二計量ローラ2228の接触位置を通過することにより、所定の液量が第二計量ローラ2228へと移動する。このとき、移動した処理剤液2216は、第二計量ローラ2228の外周面に付着して薄膜化する。これによって、処理剤液2216が所定の量となって後段の第一計量ローラに運ばれる。第二計量ローラにおいて薄膜化された処理剤液2216は、第二計量ローラ2228の表面に付着したまま、第一計量ローラ2217との接触位置に運ばれる。この薄膜化された処理剤液は、第二計量ローラ2228と第一計量ローラ2217の接触位置を通過することにより、所定の液量が第一計量ローラ2217の表面に分配されて、更に薄膜化される。
【0066】
第一計量ローラ2217の表面に形成された処理剤液2216は、第一計量ローラ2217に付着したまま、塗布ローラ2204との接触位置に運ばれる。第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204の接触位置を通過後には、第一計量ローラ2217の表面から塗布ローラ2204の表面に、液膜がさらに分配されて、更なる薄膜になり、塗布ローラ2204の表面に微小液層を形成する。塗布ローラ2204上に形成された微量液層は、転写ローラ2201との接触位置に運ばれ、枚葉メディアであるシート8との接触により、シート8に転写されることにより塗布される。上記のように処理剤液2216の分配を一回増やすことにより更なる微量化が図れる。言い換えると、第二計量ローラ2228は、第二受けローラであって、汲み上げローラ2208との間に形成されたニップで、汲み上げローラ2208が汲み上げた処理剤液2216を受け取る。また、第一計量ローラ2217は、第一受けローラであって、第二計量ローラ2228との間で形成されたニップで、第二計量ローラ2228が汲み上げローラ2208から受け取って薄膜化した処理剤液2216を受け取る。このように、ニップを介して処理剤液2216を受け取るときの汲み上げローラ2208と第二計量ローラ2228の回転速度と第一計量ローラ2217の回転速度を後述するように調整することにより、適量の処理剤液2216をシート8に塗布できる。
【0067】
本実施形態も、第一実施形態と同様に、塗布ローラ2204と第一計量ローラ2217との接触点である「第一接触点」と、塗布ローラ2204と転写ローラ2201との接触点である「第二接触点」の、塗布ローラ2204における角度は「180°」である。また、第一計量ローラ2217の外周上の接触点であって、第一計量ローラ2217と第二計量ローラ2228との接触点である「第三接触点」と、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204との接触点である「第一接触点」の角度も「180°」である。
【0068】
なお、本実施形態において、塗布ローラ2204の外径を「R」とし、第一計量ローラ2217の外径を「R1」とする。
【0069】
本実施形態に係る処理液塗布部220aにおいても、媒体センサ2227がシート8の先端部を検出したタイミングと、処理液塗布装置200の制御部が予め取得しているシート8のサイズから導出可能な当該シート8の搬送方向の長さに基づいて、シート8の搬送方向において処理剤液2216が塗布された位置を判定できる。
【0070】
例えば、シート8の搬送方向の長さに対して、シート8の後端位置から「R×π×180°÷360」の長さから、「R1×π×180°÷360」の長さに相当する位置にまで処理剤液2216が塗布された時点を判定する。この判定された時点に基づいて、第一モータ2225の速度を低速に切り替える。これによって、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給量を微小化する。
【0071】
その後、次のシート8の先端が媒体センサ2227を通過したタイミングと、当該シート8の長さに基づいて、当該シート8の先端が、塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触点(ニップ)に到達するタイミングを判定する。そして、シート8の先端が塗布ローラ2204と転写ローラ2201の接触点に到達する前であって、当該接触点よりも搬送方向上流側における((R×π×180°÷360)+(R1×π×180°÷360))にて求められる長さに相当する位置にシート8の先端が到達したタイミングで、第一モータ2225の回転速度を通常速度に戻す。
【0072】
本動作により第一計量ローラ2217への過剰な処理剤液2216の供給を抑制でき、さらに、塗布ローラ2204への処理剤液2216の供給抑制後のシート8への塗布において塗布ムラが生ずることを防止することができる。本実施形態における処理液塗布装置200によれば、上記の動作を繰り返すことにより、シート8の先端を含めた全体に処理剤液2216を均一に塗布することができる。
【0073】
本実施形態において、第一計量ローラ2217と塗布ローラ2204との間及び第二計量ローラ2228と第一計量ローラ2217との間に液だまりを形成されてしまうと供給液量が飽和してしまう。そうすると、第一モータ2225の回転に追従した塗布ローラ2204への液供給の感度が鈍くなり、瞬時の供給量可変ができなくなる。よって、汲み上げローラ2208と第二計量ローラ2228の弾性圧接部を通過できる第一液量である「液量L1」と、第二計量ローラ2228と第一計量ローラ2217の弾性圧接部を通過できる第二液量である「液量L2」と、塗布ローラ2204と第一計量ローラ2217の弾性圧接部を通過できる第三液量である「液量L3」との関係を「液量L1<液量L2<液量L3」を満たす液量となるように、各ローラの回転速度を制御することが好適である。
【0074】
また、本実施形態においては、第二計量ローラ2228のゴム硬度よりも塗布ローラ2204のゴム硬度を低くした方が、より好適である。これによって、処理剤液2216が通過し易い構成となっている。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る処理液塗布装置200によれば、シート8に処理剤液2216を塗布するときに、より均一な塗布を実現し、塗布ムラや過剰塗布を防止できるとともに、これらに起因する画像劣化を防止できる。
【0076】
[プリンタ300の実施形態]
ここで、印刷システム1000を構成するプリンタ300の構成について、
図9を用いて説明する。プリンタ300は、インクジェット方式により画像形成用の液体であるインクを吐出して画像を形成する画像形成装置である。プリンタ300は、画像形成部310と、乾燥部320と、を備えている。
【0077】
画像形成部310は、記録媒体としてのシート8を外周面に保持して搬送する円筒状の搬送ドラム3010と、液体を吐出する複数のノズルを有し、ノズル列が搬送ドラム3010の回転方向と直交する方向に配置された液体吐出ヘッド3021とを備えている。液体吐出ヘッド3021は、インクジェット方式によりインクを吐出する記録ヘッドである。
【0078】
画像形成部310の用紙搬送方向下流側には、インクジェット方式で画像が形成されたシート8を乾燥させる乾燥部320を備えている。乾燥部320には、用紙の裏面に更に画像を形成するための用紙反転部3051を備え、さらに下流側には乾燥した用紙を排紙する排紙部を備えている。
【0079】
ここで、画像形成部310において、シート8の画像を形成するための一連の画像形成動作について説明する。
【0080】
一枚ずつ分離されてピックアップされたシート8は、レジスト調整部でレジスト補正が行われた後、所定のタイミングで画像形成部310に搬送される。画像形成部310に搬送されたシート8は、搬送ドラム3010の表面に設けられたグリッパ3012によって先端が挟まれて、搬送ドラム3010の表面に位置決めされる。また、搬送ドラム3010には、その表面に無数のエアー吸引孔が形成されており、シート8の全体を裏面からエアー吸引して搬送ドラム3010の表面に密着させて保持することができる。そして、搬送ドラム3010の表面にグリッパ3012で位置決めされ、エアー吸引で密着保持されたシート8は、搬送ドラム3010が図中矢印方向に回転することにより、液体吐出ヘッド3021(3021a~3021f)の方向に搬送される。
【0081】
画像形成部310には、搬送ドラム3010の円周の表面に沿って液体吐出ヘッド3021のユニットが所定の液体を充填した状態で順に配設されている。充填された液体としては、カラー印刷を行う為のブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインク、及びコーティング液等が挙げられる。この各色の液体吐出ヘッド3021の下部に、搬送ドラム3010の表面に保持されたシート8が搬送され、所定のタイミングで液体吐出ヘッド3021から各色のインクやコーティング液が吐出されることにより、シート8の表面に画像が形成される。
【0082】
搬送ドラム3010には、円周上の表面の3ヶ所にシート8の先端を把持するグリッパ3012が取り付けられているので、搬送ドラム3010が回転軸3011を中心に1回転する間に、3枚のシート8に画像形成を行うことができるようになっている。
【0083】
液体吐出ヘッド3021には、液体を頻繁に吐出するノズルとあまり吐出しないノズルがある。後者のノズル内では、液体が乾燥、増粘し、所望のタイミングで所望の量の液体を吐出できなくなる場合がある。これを防ぐ為に、所定時間液体が吐出されない場合には空吐出を行う。空吐出により吐出された液体を受容するための液体受容手段3013が、搬送ドラム3010の回転においてバランスを崩さない位置に配置されている。
図9の例では、グリッパ3012の間に等間隔で設けられている。
【0084】
液体受容手段3013の内部には、空吐出された液体を保持可能な吸収体3014が交換可能に設けられている。吸収体3014の材料としては、ポリエステルフェルト繊維材料、また、アクリルニトリルフェルト繊維材料が好ましく、更には、ポリエステルフェルト繊維材料及びアクリルニトリルフェルト繊維材料が混合されたものも好ましい。使用繊維材料の繊維径、繊維長、配列方向等を適宜変えると、吸収体3014の液体保持能力を細かく調整することが可能である。また、その他にポリアミド系繊維材料、ポリプロピレン繊維材料、ポリビニールアルコール系繊維材料、ポリ塩化ビニリデン系繊維材料、ポリウレタン系繊維材料などが挙げられる。インク等の記録液の吸収性を考えると、ポリエステル系繊維材料がより好ましく、上記材料を混合した材料系を用いることも好適である。
【0085】
画像形成部310によって画像が形成されたシート8は、乾燥部320に搬送される。乾燥部320には乾燥ユニット3007が設けられており、この乾燥ユニット3007の下側をシート8が通過することによってインク中の水分を蒸発させ、シート8のカールを防止することができる。
【0086】
また、乾燥部320には用紙反転部3051と用紙反転搬送部3050とが設けられており、両面印刷時にはここでシート8を反転して再度、画像形成部310に搬送する。用紙反転部3051でシート8の搬送方向を切り換えた後、用紙反転搬送部3050によって画像形成部310の方向に搬送される。シート8は、搬送ドラム3010に達する前にレジストローラ3005によってレジストの補正が行われる。レジスト補正されたシート8は、搬送ドラム3010に搬送され、グリッパ3012に挟まれて、画像が形成されていない裏面を表にして搬送ドラム3010の表面に保持される。そして、画像形成部310では、液体吐出ヘッド3021により、前述と同様にして、搬送ドラム3010の表面に保持されたシート8の画像が形成されていない裏面に画像形成が行なわれる。
【0087】
乾燥部320を通過した両面印刷されたシート8は、片面印刷及び両面印刷時のいずれも同様に媒体排出装置400に搬送される。媒体排出装置400では、シート8が整然と揃えられた状態で積載される。
【0088】
[画像形成システムの別実施形態]
なお、上記にて説明をした各装置が備える機能は、プリンタ300の内部に集約して一台の画像形成装置として構成することもできる。その場合、本発明に係る処理液塗布装置は、画像形成装置に含まれるものとなる。なお、処理液塗布装置等が備える構成を画像形成装置に集約するときには、その大きさや詳細な構成は異なるものとなるが、主な機能は同等のものである。
【0089】
本発明に係る画像形成システムは、例えば、液体吐出記録方式のおよび画像形成装置を備えるものであって、本明細書において記載される発明および実施形態も液体吐出記録方式を前提とするものである。本実施形態に係る印刷システム1000は、インクを吐出する記録ヘッド(液体吐出ヘッド)を備えるプリンタ300において、搬送される媒体に対して記録ヘッドからインクが吐出されて、媒体に画像形成を行うものである。例えば、したがって、プリンタ300は液体吐出ヘッドが主走査方向に移動しながらインク滴を吐出して画像を形成するシリアル型インクジェットプリンタや、液体吐出ヘッドが移動しない状態でインク滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを備えるライン型インクジェットプリンタが相当する。
【0090】
なお「媒体」とは、本実施形態ではシート8であるが、画像形成が行われる対象を紙に限定するものではなく、OHPシートなど搬送可能なシート状の部材を含む。媒体は、インク、その他の像を形成するための液体などが付着可能なものを意味する。被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。また、「画像形成」と同義語として、記録、印字、印写、印刷なども使用する。
【0091】
そこで、本明細書においては、液体吐出記録方式の「画像形成装置(インクジェットプリンタ)」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。
【0092】
「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0093】
また本明細書における「インク」とは、一般的にインクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体状になり、記録ヘッドを介して吐出可能なものを含むものである。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0094】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、または立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0095】
液体吐出方式の画像形成装置において、特にインクジェット方式の画像形成は、低騒音、低ランニングコストに加えて、カラー化が容易といった利点を有していることから、近年、急速に普及してきている。しかし、専用紙以外のウェブに画像を形成すると、滲み、濃度、色調や裏写りなどといった初期の品質問題に加えて、耐水性、耐候性といった画像の堅牢性に関わる問題を有しているため、これらの問題を解決する提案がなされている。
【0096】
それらの解決手段として、記録媒体である用紙にインク滴が着弾する前にインクを凝集させる機能を有する前処理液を塗布して、画質を改善する方法がある。この前処理液を塗布する方法として、ローラを用いて媒体の全面に塗布する方法が知られている。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0098】
100 :給送装置
200 :処理液塗布装置
210 :搬入部
220 :処理液塗布部
230 :処理液供給部
240 :搬出部
250 :搬送パス
300 :プリンタ
310 :画像形成部
320 :乾燥部
400 :媒体排出装置
1000 :印刷システム
2201 :転写ローラ処理液塗布部
2201 :転写ローラ
2202 :TRアーム
2203 :TRバネ
2204 :塗布ローラ
2205 :揺動支点
2206 :TRカム
2207 :カムモータ
2208 :汲み上げローラ
2209 :供給液室
2210 :アーム
2211 :ピン
2212 :圧縮バネ
2213 :液室揺動支点
2214 :カム
2215 :第三モータ
2216 :処理剤液
2217 :第一計量ローラ
2218 :液面センサ
2225 :第一モータ
2226 :第二モータ
2227 :媒体センサ
2228 :第二計量ローラ
2319 :供給弁
2320 :供給ポンプ
2321 :供給タンク
2322 :排液ポンプ
2323 :排液弁
2324 :排液タンク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】