(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】回転速センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20220628BHJP
G01P 3/487 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01P1/02
G01P3/487 D
(21)【出願番号】P 2019069999
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505417(JP,A)
【文献】特開2017-227560(JP,A)
【文献】特開2008-271731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128704(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109714942(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 1/00- 3/80
G01D 5/00- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ保持部およびケーブル保持部を含むセンサヘッドと、
前記ケーブル保持部から延出するケーブルと、
前記センサ保持部に埋設され、磁界変動に応じた電気信号を出力する第1センサICおよび第2センサICと、を有し、
前記第1センサICは、第1検出面と、前記第1検出面の反対側の第1裏面と、第1端子および第2端子と、を有し、
前記第2センサICは、第2検出面と、前記第2検出面の反対側の第2裏面と、第3端子および第4端子と、を有し、
前記ケーブルは、前記第1端子に電気的に接続された第1絶縁電線と、前記第2端子に電気的に接続された第2絶縁電線と、前記第3端子に電気的に接続された第3絶縁電線と、前記第4端子に電気的に接続された第4絶縁電線と、前記第1絶縁電線、前記第2絶縁電線、前記第3絶縁電線および前記第4絶縁電線を一括被覆する外皮とを含み、
前記第1絶縁電線、前記第2絶縁電線、前記第3絶縁電線および前記第4絶縁電線は、互いに捻られた撚り線を構成し、
前記ケーブルの径方向に沿う断面において、前記第1絶縁電線および前記第2絶縁電線は、第1方向に並び、前記第3絶縁電線および前記第4絶縁電線は、前記第1方向に並び、前記第1絶縁電線または前記第2絶縁電線と前記第3絶縁電線とは、前記第1方向に対し交差する第2方向に並んでいる、回転速センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転速センサにおいて、
前記第1裏面と前記第2検出面とは、対向し、
前記第1端子と前記第3端子とは、一部同士が平面視で重なり、
前記第2端子と前記第4端子とは、一部同士が平面視で重なっている、回転速センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転速センサにおいて、
前記ケーブルの径方向に沿う前記断面において、前記第1絶縁電線および前記第3絶縁電線は、前記第2方向に並び、前記第2絶縁電線および前記第4絶縁電線は、前記第2方向に並んでいる、回転速センサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記第1端子は、前記第1センサICの入力端子であり、
前記第2端子は、前記第1センサICの出力端子であり、
前記第3端子は、前記第2センサICの入力端子であり、
前記第4端子は、前記第2センサICの出力端子である、回転速センサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記センサヘッドは樹脂から成る、回転速センサ。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記センサヘッド内で前記外皮から露出する前記第1絶縁電線、前記第2絶縁電線、前記第3絶縁電線および前記第4絶縁電線は、互いに離間している、回転速センサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の回転速センサにおいて、
前記第1センサICおよび前記第2センサICのそれぞれは、検出素子としての磁気抵抗効果素子を備えている、回転速センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の回転速度を検出するセンサに関するものであり、特に、車輪の回転速度を検出するのに好適なセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車または自動二輪車などの車両には様々なセンサが搭載されており、それら車両用センサの1つとして回転速センサがある。回転速センサは、例えば、車輪の回転速度を検出する目的で車両に搭載される。かかる目的で車両に搭載される回転速センサは、一般的に車輪速センサと呼ばれる。車輪速センサとしての回転速センサは、車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステム(ABSシステム)、または、車輪のスリップを防止するトラクションコントロールシステムなどの構成要素の1つとして車両に搭載される。
【0003】
上記のような車輪速センサは、信号伝送路を構成するケーブルと、ケーブルの一端側に設けられたセンサヘッドと、ケーブルの他端側に設けられたコネクタとを有する。センサヘッドには、ホール素子または磁気抵抗効果素子などの検出素子を含む磁気センサ用IC(以下、「センサIC」と呼ぶ)が内蔵されている。センサヘッドは、車輪と一緒に回転するマグネットエンコーダまたはロータなどの近傍に配置される。センサヘッドに内蔵されているセンサIC(検出素子)は、マグネットエンコーダまたはロータなどの回転に伴って発生するセンサヘッド周囲の磁界変動を検出し、この磁界変動(車輪回転速度)に応じた電気信号を出力する。センサICから出力された電気信号は、ケーブルによって伝送され、コネクタを介して制御部または制御装置などに入力される。
【0004】
従来、センサヘッドに内蔵されるセンサICは1つであった。一方、自動運転システムまたは運転支援システムなどの開発に伴って、車輪速センサを含む回転速センサに対する信頼性および安定性の向上が求められている。そこで、センサヘッドに内蔵されるセンサICの数を増やして回転速センサの信頼性および安定性の向上を図ることが検討されている。つまり、回転速センサの冗長化が検討されている。
【0005】
特許文献1(特開2017-96828号公報)には、検出素子部を2つ搭載した車輪速センサが記載されている。ここでは、検出素子部に接続された2つの電線を1つのシース電線としてまとめ、2つの検出素子部センサのそれぞれに接続されたシース電線同士を1つのゴムチューブ内にまとめることで、計4つの電線を1つにまとめている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転速センサの冗長化により、センサヘッドに2つのセンサICを内蔵する場合、各センサICに接続された2つの配線(センサ電源供給用のVcc配線およびGND配線)、つまり計4つの配線を1つにまとめることが考えられる。樹脂成形体であるセンサヘッド内で当該4つの配線を1つにまとめる場合、複数本の当該配線同士が絡み合うと、配線同士の間にセンサヘッドを構成する樹脂が充填されず、回転速センサの信頼性が低下する問題が生じる。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態である回転速センサは、センサヘッドと、センサヘッド内に重ねて埋設された第1センサICおよび第2センサICと、端部がセンサヘッド内に位置するケーブルとを有している。ケーブル内には、第1センサICに接続された第1絶縁電線および第2絶縁電線と、第2センサICに接続された第3絶縁電線および第4絶縁電線とが1つの撚り線を構成しているものである。ケーブルの断面において、第1絶縁電線および第2絶縁電線は第1方向に並び、第3絶縁電線および第4絶縁電線は第1方向に並び、第1絶縁電線または第2絶縁電線と第3絶縁電線とは、第1方向に対し交差する第2方向に並んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転速センサの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る回転速センサの構成を示す概略図である。
【
図4】
図2に示すセンサヘッドのA-A線における断面図である。
【
図5】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す斜視図である。
【
図6】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す平面図である。
【
図7】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す底面図である。
【
図8】
図6に示すケーブルのB-B線における断面図である。
【
図9】
図2に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す概略図である。
【
図10】実施の形態1に係る回転速センサの製造工程で用いる金型の断面図である。
【
図11】実施の形態1に係る回転速センサを構成するセンサヘッドを示す斜視図である。
【
図12】
図11に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す斜視図である。
【
図13】
図11に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す底面図である。
【
図14】
図13に示すケーブルのC-C線における断面図である。
【
図15】
図11に示すセンサヘッド内におけるセンサICとケーブルとの接続状態を示す概略図である。
【
図16】比較例に係る回転速センサを構成するセンサICとケーブルとの接続状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の回転速センサの実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係る回転速センサは、ABSシステムの構成要素の1つとして車両に搭載される車輪速センサである。
【0014】
<本実施の形態の回転速センサの構造>
以下の説明で用いる
図2および
図3は、互いに異なる方向からセンサヘッド2を示す斜視図である。ただし、
図3では、ケーブル3と、センサIC41、42と、それらの間の端子および絶縁電線などを透過して示している。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る回転速センサである車輪速センサ1Aは、センサヘッド2、ケーブル3およびコネクタ4を有する。センサヘッド2は、不図示の車輪と一緒に回転するマグネットエンコーダ5の近傍に配置される。具体的には、センサヘッド2は、マグネットエンコーダ5との位置関係が所定の位置関係となるように、車体(ハブ、ナックル、サスペンション等)に固定される。マグネットエンコーダ5の周縁には、当該マグネットエンコーダ5の回転方向に沿ってN極部とS極部とが交互に設けられている。よって、車輪の回転に伴ってマグネットエンコーダ5が回転すると、センサヘッド2の周囲で磁界変動が発生する。センサヘッド2には、磁界変動を検出し、その磁界変動に応じた電気信号を出力する磁気センサ用IC(センサIC)が内蔵されている。また、センサヘッド2とコネクタ4とは、一本のケーブル3を介して接続されている。センサヘッド2に内蔵されているセンサICから出力された電気信号は、ケーブル3を介してコネクタ4に伝送され、コネクタ4の接続先に入力される。コネクタ4は、例えば、ABSシステムの制御部若しくは制御装置、またはABSシステムを含む各種システムを統括的に制御する制御部または制御装置などに接続される。
【0016】
図1、
図2および
図3に示すように、センサヘッド2は、フランジ部10と、フランジ部10の一側に設けられたセンサ保持部20と、フランジ部10の他側に設けられたケーブル保持部30と、を含んでいる。これらフランジ部10、センサ保持部20およびケーブル保持部30は、樹脂によって一体成形されている。言い換えれば、フランジ部10、センサ保持部20およびケーブル保持部30のそれぞれは、射出成形された樹脂成形体の一部である。
【0017】
図1に示すように、フランジ部10は、互いに平行な前面11aおよび背面11bを有し、全体として概ね板状の外観を呈している。
図1、
図2および
図3に示すように、フランジ部10には、センサヘッド2を所定位置に固定するための固定部材(例えば、ボルト)が挿通される貫通孔12が設けられている。貫通孔12は、フランジ部10を当該フランジ部10の厚み方向に貫通しており、貫通孔12の一端はフランジ部10の前面11aにおいて開口し、貫通孔12の他端はフランジ部10の背面11bにおいて開口している。
図2に示すように、貫通孔12の内側には、環状の補強部材13が設けられている。本実施の形態における補強部材13は金属製であるが、補強部材13は金属製に限られず、例えば樹脂製であってもよい。
【0018】
図1、
図2および
図3に示すように、センサ保持部20およびケーブル保持部30は、全体として概ね筒形の外観を呈している。より具体的には、センサ保持部20は、フランジ部10の前面11aから前方に突出しており、根元側は略円筒形の外観を呈し、先端側は略角筒形の外観を呈している。一方、ケーブル保持部30は、フランジ部10の背面11bから当該前方と反対の後方に突出しており、全長に亘って略円筒形の外観を呈している。
【0019】
ここでは、フランジ部10の厚み方向を「前後方向」とし、フランジ部10の高さ方向(長手方向)を「上下方向」とする。また、前後方向および上下方向の双方に対して直交する方向を「左右方向」とする。さらに、前後方向に関しては、フランジ部10に対するセンサ保持部20の突出方向(第1方向)を「前方」、フランジ部10に対するケーブル保持部30の突出方向(第2方向)を「後方」とする。上下方向に関しては、貫通孔12が設けられている側を「下方」、貫通孔12が設けられている側と反対側を「上方」とする。また、略円筒形の外観を呈しているセンサ保持部20の根元側を「基端部20a」と呼び、略角筒形の外観を呈しているセンサ保持部20の先端側を「先端部20b」と呼ぶ場合がある。言い換えれば、略円筒形の外観を呈している部分が基端部20aであり、略角筒形の外観を呈している部分が先端部20bである。
【0020】
図3および
図4に示すように、センサヘッド2には、磁界変動を検出する検出素子を備える複数のセンサIC40が内蔵されている。言い換えれば、センサヘッド2には、磁界変動に応じた電気信号を出力する複数のセンサIC40が内蔵されている。本実施の形態では、計2つのセンサIC(第1センサIC)41およびセンサIC(第2センサIC)42がセンサ保持部20の先端に埋設されている。より具体的には、2つのセンサIC41、42は、センサ保持部20の先端部20bの端面近傍に埋設されている。
【0021】
それぞれのセンサIC41、42は、検出素子としての磁気抵抗効果素子41c、42cを備えている。本実施の形態における磁気抵抗効果素子41c、42cは、巨大磁気抵抗効果素子(GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子)である。センサIC41、42は、双方の検出面が上向きとなる状態で上下に重ねられている。以下の説明では、センサIC41を「上側センサIC41」と呼び、センサIC42を「下側センサIC42」と呼んで区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。一方、センサIC41、42を「センサIC40」と総称する場合もある。
【0022】
図4に示すように、ケーブル3の先端はセンサヘッド2に接続されている。具体的には、ケーブル3の端部はケーブル保持部30に覆われている。つまり、ケーブル3の端部はケーブル保持部30にモールドされている。この結果、ケーブル3は、ケーブル保持部30の端面30aから後方に向かって延出している。
図4は
図2に示すセンサヘッドのA-A断面図であるが、ケーブル3内を通る4つの絶縁電線については断面ではなく左方向から見た側面を示している。
【0023】
図4~
図7に示すように、ケーブル3は、4つの芯線50を含む多芯ケーブルである。より具体的には、ケーブル3は、上側センサIC41に接続される一対の芯線50と、下側センサIC42に接続される他の一対の芯線50と、を含む多芯ケーブルである。
図6は、
図5に示す構造を上方向から見た平面図であり、
図7は、
図5に示す構造を下方向から見た平面図であり底面図である。
【0024】
図5に示すように、それぞれの芯線50は、絶縁体(絶縁膜)55によって被覆されている。さらに、絶縁体55によって被覆されているそれぞれの芯線50は、互いに撚り合わされた状態でシース(外皮、絶縁体)56によって一括被覆されている(
図4参照)。具体的には、芯線51aおよび芯線51aを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第1絶縁電線)61aを構成し、芯線51bおよび芯線51bを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第2絶縁電線)61bを構成している(
図5および
図6参照)。また、芯線52aおよび芯線52aを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第3絶縁電線)62aを構成し、芯線52bおよび芯線52bを被覆する絶縁体55は、絶縁電線(第4絶縁電線)62bを構成している(
図5および
図7参照)。
【0025】
つまり、ケーブル3は、撚り合わされた4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bと、それら4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bを一括被覆して一本に纏めるシース56と、を有する4芯ケーブルである。なお、本実施の形態における芯線50は、錫を含有する複数本の銅合金線から成る撚り線である。また、絶縁体55は難燃性架橋ポリエチレンによって形成されており、シース56は熱可塑性ウレタンによって形成されている。もっとも、芯線50、絶縁体55およびシース56の材料が上記材料に限定されないことは勿論である。
【0026】
図6および
図7に示すように、ケーブル3に含まれている4つの芯線50は所定のセンサIC40と電気的に接続されている。具体的には、
図6に示すように、2つの芯線51a、51bが上側センサIC41に接続され、
図7に示すように、他の2つの芯線52a、52bが下側センサIC42に接続されている。より具体的には、芯線51aは、上側センサIC41の入力端子(第1端子)41aに接続され、芯線51bは、上側センサIC41の出力端子(第2端子)41bに接続されている。同様に、芯線52aは、下側センサIC42の入力端子(第3端子)42aに接続され、芯線52bは、下側センサIC42の出力端子(第4端子)42bに接続されている。
【0027】
入力端子41a、42a、出力端子41bおよび42bのそれぞれは短冊形状を有している。そして、芯線51aが入力端子41aに抵抗溶接され、芯線51bが出力端子41bに抵抗溶接されている。また、芯線52aが入力端子42aに抵抗溶接され、芯線52bが出力端子42bに抵抗溶接されている。以下の説明では、入力端子41a、出力端子41bを「端子57」と総称し、入力端子42a、出力端子42bを「端子58」と総称する場合がある。
【0028】
図4、
図6および
図7に示すシース56の端部、芯線50、端子57、端子58およびセンサIC40の本体は、ホルダ60によって保持されている。言い換えれば、シース56の端部、芯線50、端子57および端子58を含むセンサIC40は、ホルダ60に保持された状態で、
図2に示すセンサヘッド2に内蔵されている。
図6および
図7では、ホルダ60を構成する板状のセパレータ66、67および側壁部64、65のそれぞれの具体的な形状の図示を省略し、一点鎖線で示している。
【0029】
ホルダ60は、対向する一対の側壁部64、65と、これら側壁部64、65に跨る支持板63と、を有する。芯線51a、51bおよび端子57を含む上側センサIC41(
図5および
図6参照)は、支持板63の上面側に配置されている。一方、芯線52a、52bおよび端子58を含む下側センサIC42(
図5および
図7参照)は、支持板63の下面側に配置されている。
【0030】
芯線51a、51bの間に介在する板状のセパレータ66が突設されている。言い換えれば、セパレータ66は、同一のセンサIC(上側センサIC41)に接続される一対の芯線51a、51bの間に介在する隔壁である。支持板63の下面にもセパレータ66と同様のセパレータ67が突設されている。セパレータ67も、同一のセンサIC(下側センサIC42)に接続される一対の芯線52a、52bの間に介在する隔壁である。
【0031】
図6に示すように、セパレータ66は、芯線51a、51bの端部を越えて前方に延在し、入力端子41aと出力端子41bとの間に介在している。
図7に示すように、セパレータ67は、芯線52a、52bの端部を越えて前方に延在し、入力端子42aと出力端子42bとの間に介在している。この結果、芯線51aおよび入力端子41aは、セパレータ66と側壁部64の上部との間に配置され、芯線51bおよび出力端子41bは、セパレータ66と側壁部65の上部との間に配置されている(
図6参照)。また、芯線52aおよび入力端子42aは、セパレータ67と側壁部64の下部との間に配置され、芯線52bおよび出力端子42bは、セパレータ67と側壁部65の下部との間に配置されている(
図7参照)。
【0032】
図6に示すセパレータ66は、芯線51a、51b、入力端子41aおよび出力端子41bをホルダ60上の所定位置に位置決めする役割を果たすとともに、芯線51aと芯線51bとの短絡、および、入力端子41aと出力端子41bとの短絡を防止する役割を果たす。
図7に示すセパレータ67は、芯線52a、52b、入力端子42aおよび出力端子42bをホルダ60上の所定位置に位置決めする役割を果たすとともに、芯線52aと芯線52bとの短絡、および、入力端子42aと出力端子42bとの短絡を防止する役割を果たす。
【0033】
図8に示すように、ケーブル3を構成するシース56内には、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bが通っている。すなわち、ケーブル3は、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bを束ねたものである。
【0034】
図8に示すようなケーブル3の断面は、ケーブル3の短手方向(径方向)に沿う断面であり、ケーブル3の延在方向に対して直交する断面である。当該断面において、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、例えば正四角形の四隅に当たる箇所にそれぞれ位置している。つまり、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは行列状に並んでいる。ここでは、当該断面において、絶縁電線61a、61bは第1方向において互いに並び、絶縁電線62b、62aは第1方向において互いに並んでいる。また、当該断面において、絶縁電線61a、62bは第2方向において互いに並び、絶縁電線61b、62aは第2方向において互いに並んでいる。第1方向および第2方向は、当該断面に沿う方向であり、互いに交差する方向である。第1方向および第2方向は、例えば互いに直交する関係にある。なお、
図8では、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、シース56内において互いに離間しているが、隣接する絶縁電線同士が互いに接触していてもよい。すなわち、絶縁電線61aは、絶縁電線61bおよび62bと接触し、絶縁電線61bは、絶縁電線61aおよび62aと接触し、絶縁電線62aは、絶縁電線61bおよび62bと接触し、絶縁電線62bは、絶縁電線61aおよび62aと接触していてもよい。また、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのそれぞれは、例えば正四角形ではなく平行四辺形(例えば菱形)の四隅に当たる箇所に位置していてもよい。
【0035】
図9には、センサヘッド2(
図2参照)内のセンサIC41、42を上下方向に重ねず、横に並べた状態(展開した状態)の概略図を示している。上側センサIC41は、平面視において、例えば矩形に近いレイアウトを有している。なお、ここでいう平面視とは、センサICの検出面(主面、第1検出面)に対して直交する方向(上方)から上側センサIC41を見ることをいう。入力端子41aおよび出力端子41bは、平面視において略矩形の上側センサIC41の1辺から延びており、互いに当該1辺に沿って並んでいる。下側センサIC42は、上側センサIC41と同じ機能および同じ構造を有する同一の素子である。したがって、入力端子42aおよび出力端子42bは、平面視において略矩形の下側センサIC42の1辺から延びており、互いに当該1辺に沿って並んでいる。
【0036】
図9では、上側センサIC41の検出面を上向きにし、下側センサIC42の検出面を下向きにしている。すなわち、
図9では、上側センサIC41の検出面(主面、第1検出面)の反対側の裏面(第1裏面)を下向きにし、下側センサIC42の検出面(主面、第2検出面)の反対側の裏面(第2裏面)を上向きにしている。センサIC41、42のそれぞれに芯線50を接続する工程では、このように2つの上側センサIC41の主面(上面)と下側センサIC42の裏面(下面)とが上向きとなるようにセンサIC41、42を置き、その状態で端子57、58に芯線50を溶接することが考えられる。その後、センサIC41、42のそれぞれの向きを相互に逆方向に90度変えることで、それぞれの検出面を同一方向に向けてセンサIC41、42を重ねることができる。ただし、この接続工程においてセンサIC41、42のそれぞれの検出面は、上および下のどちらを向いていてもよい。
【0037】
なお、本願の各図では、センサIC41、42のそれぞれの検出面および裏面の向きが分かり易いように、略矩形の平面形状を有するセンサIC41、42のそれぞれの1つの角部に、斜めに掛けた部分を示している。これに対し、センサIC41の平面形状は、入力端子41a、出力端子41bが並ぶ方向において左右対称であってもよい。センサIC42についても同様である。
【0038】
また、センサIC41、42のそれぞれの検出面は、完全に同一方向を向いている必要はない。言い換えれば、センサIC41、42のそれぞれの検出面が完全に平行である必要はない。
【0039】
入力端子41aは、上側センサIC41に電源電圧(Vcc)を供給するための電源電圧端子であり、入力端子41aに接続された芯線51aを含む絶縁電線61aは、電源配線(プラス配線)である。また、出力端子41bは、上側センサIC41を接地電位(GND)に接続するための接地端子であり、出力端子41bに接続された芯線51bを含む絶縁電線61bは、接地配線(マイナス配線)である。
【0040】
同様に、入力端子42aは、下側センサIC42に電源電圧(Vcc)を供給するための電源電圧端子であり、入力端子42aに接続された芯線52aを含む絶縁電線62aは、電源配線(プラス配線)である。また、出力端子42bは、下側センサIC42を接地電位(GND)に接続するための接地端子であり、出力端子42bに接続された芯線52bを含む絶縁電線62bは、接地配線(マイナス配線)である。
【0041】
このように互いに接続されたセンサIC41、42とケーブルは、
図5に示すように、双方の検出面が上向きとなる状態で上下に重ねられる。これは、センサIC41、42のそれぞれに同じ機能を持たせるためである。センサIC41、42のうちの一方は、例えば、他方が故障などにより動作しなくなった際、回転速センサがその機能を失い、正常に動作しなくなることを避けるために設けられた予備の素子である。したがって、センサIC41、42のそれぞれの検出面は、同じ方向に向いている必要がある。言い換えれば、上側センサIC41の裏面と、下側センサIC42の検出面とは、対向している。
【0042】
仮に、センサIC41、42のそれぞれの検出面が互いに異なる方向を向いている場合、センサIC41で検出される車輪の回転方向とセンサIC41で検出される車輪の回転方向とは、互いに別方向となるため、一方のセンサICを予備として用いることができない。なお、正常時においてセンサIC41、42は同時に動作する。すなわち、ここではセンサICの検出面と裏面とを分けて表現しているが、裏面も車輪の回転速度を検出可能な検出面であるといえる。ただし、裏面が車輪側を向いている場合には、検出面が車輪側を向いている場合と異なり逆回転を検出する。
【0043】
上記のように、センサIC41、42のそれぞれには同一の素子が用いられる。つまり、センサIC41とセンサIC42とは、検出面(主面)に対する入力端子および出力端子の位置関係が互いに同じである。具体的には、入力端子41aの左に出力端子41bが並んでおり、入力端子41aおよび出力端子41bが並ぶ方向、並びに、入力端子41aおよび出力端子41bの延在する方向のそれぞれに沿う面に対し直交する方向(上下方向)において、上側センサIC41の上側に主面(検出面)が位置し、下側に裏面が位置する。その場合、下側センサIC42の構成も同様である。つまり、入力端子42aの左に出力端子42bが並んでおり、入力端子42aおよび出力端子42bが並ぶ方向、並びに、入力端子42aおよび出力端子42bの延在する方向のそれぞれに沿う面に対し直交する方向(上下方向)において、下側センサIC42の上側に主面(検出面)が位置し、下側に裏面が位置する。
【0044】
上記位置関係は適宜変更してもよい。例えば、入力端子41aおよび出力端子41bの位置関係が逆であってもよい。ただし、その場合でもセンサIC41、42のそれぞれの検出面(主面)に対する入力端子および出力端子の位置関係は互いに同じである。すなわち、上側センサIC41の上側に主面(検出面)と下側センサIC42の主面(検出面)とは互いに同じ方向を向いており、入力端子41a、42aは互いに平面視で重なり、出力端子41b、42bは互いに平面視で重なっている。
【0045】
このとき、ケーブル3の断面において行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、絶縁電線61a、61bは行方向(または列方向)に並んでいる(
図8参照)。
図6に示すシース56のセンサヘッド2(
図3参照)側の端部(以下、シース端部と呼ぶ)において、当該方向(第1方向)における絶縁電線61a、61bの並び順は、当該方向(第1方向)における入力端子41aおよび出力端子41bの並び順と同じである。したがって、センサヘッド2内において、シース端部から入力端子41aに亘って延びる絶縁電線61aと、シース端部から出力端子41bに亘って延びる絶縁電線61bとは、互いに交差していない。
【0046】
このため、絶縁電線61a、61bのそれぞれは、シース端部から入力端子41aおよび出力端子41bのそれぞれに向かって略直線状に延びており、互いに捻れておらず、他の絶縁電線62a、62bに対しても捻れていない。言い換えれば、シース端部と入力端子41aおよび出力端子41bのそれぞれとの間において、絶縁電線61aは絶縁電線61b、62aおよび62bと離間しており、絶縁電線61bは絶縁電線61a、62aおよび62bと離間している。言い換えれば、センサヘッド2内でシース56から露出する絶縁電線61aは、絶縁電線61b、62aおよび62bと離間しており、絶縁電線61bは絶縁電線61a、62aおよび62bと離間している。
【0047】
また、ケーブル3の断面において行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、絶縁電線62a、62bは行方向(または列方向)に並んでいる(
図8参照)。
図6に示すシース端部において、当該方向(第1方向)における絶縁電線62a、62bの並び順は、当該方向(第1方向)における入力端子42aおよび出力端子42bの並び順と逆である。したがって、センサヘッド2内において、シース端部から入力端子42aに亘って延びる絶縁電線62aと、シース端部から出力端子42bに亘って延びる絶縁電線62bとは、互いに交差している。
【0048】
<本実施の形態の効果>
ここで、樹脂成形体であるセンサヘッド2(
図2参照)を射出成形する工程で用いる金型の断面を、
図10に示す。ただし、
図10において、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bについては断面ではなく側面図を示している。
【0049】
図10に示すように、金型70は樹脂を流し込むための注入口71を備えている。金型70内に、予め互いに接続されたケーブル3とセンサIC41、42およびホルダ60をセットし、注入口71から金型70内に溶融させた樹脂を射出し、樹脂が固まることで、センサヘッド2を成形することができる。注入口71は、例えば
図2に示すフランジ部の下端に接する箇所に設けられている。
【0050】
この射出成形工程では、樹脂の流れを阻害する構造を金型70内に設けないことが重要である。例えば、シース端部からセンサIC41、42に延びる複数の絶縁電線のうち、多数が互いに捻れている場合、捻れた絶縁電線同士の間に樹脂が流れ込み難くなる。
【0051】
図16に、比較例である車輪速センサを構成するセンサICとケーブルとの接続状態を示す。
図16に示す比較例の車輪速センサを構成するセンサIC41、42は、本実施の形態で用いられるものと同様である。ただし、ケーブル3内の絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの並び順は、本実施の形態と異なる。
【0052】
比較例では、ケーブル3の断面(図示しない)において、行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、上側センサIC41に接続される絶縁電線61a、61bのそれぞれが四角形の対角の位置に配置され、下側センサIC42に接続される絶縁電線62a、62bのそれぞれが当該四角形の他の対角の位置に配置されている。つまり、ケーブル3の断面において、例えば、絶縁電線61a、62aは第1方向において互いに並び、絶縁電線62b、61bは第1方向において互いに並んでいる。また、当該断面において、絶縁電線61a、62bは第2方向において互いに並び、絶縁電線62a、61bは第2方向において互いに並んでいる。
【0053】
このような場合、センサヘッド内においてシース端部からセンサIC41、42側に延びる4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは互いに交差し、捻れ合う。比較例のケーブル3およびセンサIC41、42を互いに接続して金型内に設置し、樹脂の射出を行ってセンサヘッドを成形する場合、互いに捻れる絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの相互間には樹脂が流れ込み難い。その結果、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの相互間に空間が残ったままセンサヘッドが成形される。センサヘッド内に空間が残った場合、センサヘッドの機械的強度が低下する問題が生じる。
【0054】
特に、
図10に示すように、注入口71の直下の領域に4つの絶縁電線が露出していない場合には、捻れた絶縁電線同士の間に空間が生じ易い。そのような場合、注入口71から金型70内に流れ込んだ樹脂は最初にシース56の表面(側面)に当たり、その後、シース56の延在方向に沿ってセンサIC41、42側へ充填されていく。つまり、シース端部近傍の4つの絶縁電線に向かって樹脂を注入するのではなく、樹脂はシース56および各絶縁電線の延在方向に沿って進むため、絶縁電線同士の間に入ろうとする樹脂の圧力は、樹脂注入後に最初にシース56の表面に当たる樹脂の圧力よりも小さい。このため、捻れた絶縁電線同士の間に空間が生じ易くなる。
【0055】
また、センサヘッド内に空間が残った場合、当該空間内の水分または外部から当該空間に浸入した水分により、芯線50の腐食、または、センサIC41、42の故障などが起きる虞がある。したがって、回転速センサの信頼性を向上する観点から、絶縁電線の捻れに起因してセンサヘッド内に空間が残ることを抑制することが重要となる。
【0056】
また、絶縁電線が互いに捻れている場合、絶縁電線同士は互いに押し付けられた状態となっていることが考えられる。この場合に射出成形を行うと、樹脂の温度により絶縁電線の絶縁体が溶融し、これにより露出した複数の芯線50同士が互いに接触して短絡が生じる虞がある。このような問題は、互いに捻れる絶縁電線の数が多いほど顕著となる。
【0057】
上記空間の発生、および、短絡の発生を防ぐ観点から、センサIC41、42の端子57、58からシース端部までの絶縁電線の長さを長くすることが考えられる。しかし、この場合、センサヘッドの大きさが大きくなる問題が生じる。すなわち、前後方向におけるセンサIC41、42の端子57、58からシース端部までの絶縁電線の長さは短いことが望ましい。
【0058】
これに対し、本実施の形態では、
図8に示すように、ケーブル3の断面において行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、絶縁電線61a、61bは行方向(または列方向)に並んで互いに隣接している。また、絶縁電線62b、62aは当該方向に並んで互いに隣接している。これにより、絶縁電線61a、61bは互いに捻れることなく上側センサIC41に接続することができる。よって、
図10を用いて説明した射出成形工程で射出される樹脂は、直線状に延びる絶縁電線61a、61bのそれぞれの周囲を引っ掛かることなく流れる。このため、
図4に示すセンサヘッド2内に空間が残ることを抑制することができる。したがって、当該空間の存在に起因するセンサヘッド2の強度の低下、および、当該空間内の水分に起因するセンサヘッド2の劣化を抑制することができる。つまり、センサヘッド2の樹脂モールドの品質を高めることができる。
【0059】
また、絶縁電線61a、61bが互いに捻れていないことにより、射出成形工程において絶縁電線61a、61bの絶縁体が溶融したとしても、芯線50同士が互いに短絡することを防ぐことができる。
【0060】
以上より、本実施の形態では、回転速センサの信頼性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施の形態では多数の絶縁電線同士が互いに捻れることを防ぐことで、センサIC41、42の端子57、58からシース端部までの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの長さを短くすることができる。よって、センサヘッド2が大きくなることを防ぐことができる。これにより、センサヘッド2の製造コスト、すなわち回転速センサの製造コストを低減することができる。また、例えばセンサヘッド2の大きさを従来のセンサICが1個の回転速センサと同じとした場合、センサヘッド2の外部の装置であって、センサヘッド2を保持する部品の設計を変更する必要がなくなる。
【0062】
また、絶縁電線61a、61bを互いに捻る必要がないため、
図9に示すようにセンサIC41、42を並べて芯線50と端子57、58とを接続する作業が容易となる。よって、作業性が上がるため、回転速センサの製造コストを低減することができる。また、センサIC41、42の端子57、58からシース端部までの絶縁電線の長さが短くても、このような作業を行うことが容易となるため、センサヘッド2が大きくなることを防ぐことができる。
【0063】
なお、4つの絶縁電線を1つにまとめてケーブルを形成する方法として、2つの絶縁電線を撚り線として束ねることで形成した対撚り絶縁電線を2つ用意し、それらの2つの対撚り絶縁電線をさらに撚り線として束ねることで1つのケーブルを形成することが考えられる。しかし、この方法ではケーブルが太くなり、ケーブルは曲げ難くなる。これに対し、本実施の形態では4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bを相互に交差させて捻ることで形成した1つの撚り線として束ねることでまとめ、これにより1つのケーブル3を形成している。よって、細く曲げ易いケーブル3を実現することができる。
【0064】
本実施の形態では、上側センサIC41に接続された絶縁電線61a、61bに捻れがなく、下側センサIC42に接続された絶縁電線62a、62bに捻れが生じている構成について説明した。このような構成とは逆に、上側センサIC41に接続された絶縁電線61a、61bに捻れが生じており、下側センサIC42に接続された絶縁電線62a、62bに捻れが生じない構成であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
ここではセンサIC41、42が互いに離間する別体である場合について説明したが、磁気抵抗効果素子41c、42c(
図4参照)が同一の樹脂内に封入され、1つのセンサICを構成していてもよい。つまり、磁気抵抗効果素子41c、42cおよび当該樹脂が、4つの端子57、58を備えた1つのセンサICを構成し、当該センサICがセンサヘッド2内に封入されていてもよい。
【0066】
(実施の形態2)
以下に、4つの絶縁電線を束ねたケーブル内における絶縁電線の配置を工夫することで、センサヘッド内でシースから露出する絶縁電線同士の捻れの発生を防ぎ、これにより回転速センサの信頼性を向上させることについて説明する。
【0067】
<本実施の形態の回転速センサの構造>
図11~
図15に示すように、本実施の形態の回転速センサを構成するセンサヘッド2およびケーブル3の構成は、下側センサIC42に接続された絶縁電線62a、62bのそれぞれのケーブル3内での配置が逆となっている点を除き、前記実施の形態1と同様である。
【0068】
すなわち、
図11に示すように、センサヘッド2内において、センサIC41、42は、双方の検出面が上向きとなる状態で上下に重ねられている。また、センサIC41、42のそれぞれの端子57、58には、センサヘッド2の後方に接続されたケーブル3内を通る複数の芯線50が接続されている。
【0069】
図13は、下側センサIC42を下側から見た底面図であり、上側センサIC41および上側センサICに接続された絶縁電線61a、61bの構造は、
図6に示したものと同様である。
図12および
図13に示すように、前記実施の形態1と異なり、絶縁電線62a、62bは互いに交差しておらず、互いに捻れていない。これは、
図14に示すように、絶縁電線62a、62bのそれぞれの位置が、
図8に示す絶縁電線62a、62bのそれぞれの位置に対し逆になっているためである。
【0070】
具体的には、
図14に示すようなケーブル3の径方向に沿う断面において、4つの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、例えば正四角形の四隅に当たる位置にそれぞれ位置している。つまり、当該断面において絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは行列状に並んでいる。ここでは、当該断面において、絶縁電線61a、61bは第1方向において互いに並び、絶縁電線62a、62bは第1方向において互いに並んでいる。また、当該断面において、絶縁電線61a、62aは第2方向において互いに並び、絶縁電線61b、62bは第2方向において互いに並んでいる。
【0071】
これにより、入力端子41a、出力端子41b、入力端子42aおよび出力端子42bのそれぞれの位置と、シース端部における絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのそれぞれの位置とは、互いに対応している。このため、入力端子41a、出力端子41b、入力端子42aおよび出力端子42bと絶縁電線61a、61b、62aおよび62bとをそれぞれ相互に接続した際、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち2以上の絶縁電線が、端子57、58とシース端部との間で交差することを防ぐことができる。
【0072】
すなわち、シース端部と入力端子41a、出力端子41b、入力端子42a、および出力端子42bのそれぞれとの間において、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、相互に接しておらず、離間している。言い換えれば、センサヘッド2内でシース56から露出する絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、互いに離間している。
【0073】
センサIC41、42のそれぞれに芯線50を接続する際には、例えば
図15に示すように、検出面を上に向けた上側センサIC41と、裏面を上に向けた下側センサIC42とを横に並べて抵抗溶接を行う。その後、センサIC41、42のそれぞれの向きを相互に逆方向に90度変えることで、それぞれの検出面を同一方向に向けてセンサIC41、42を重ねることができる。
【0074】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態では、
図14に示すように、ケーブル3の断面において行列状に並ぶ絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのうち、絶縁電線61a、61bは行方向(または列方向)に並んで互いに隣接し、絶縁電線62a、62bも当該方向に並んで互いに隣接している。これにより、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bは、いずれも互いに捻れることなくセンサIC41、42に接続することができる。よって、
図10を用いて説明した射出成形工程では、直線状に延びる絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのそれぞれの周囲を樹脂が流れ易いため、
図11に示すセンサヘッド2内に空間が残ることを抑制することができる。よって、当該空間の存在に起因するセンサヘッド2の強度の低下、および、当該空間内の水分に起因するセンサヘッド2の劣化を抑制することができる。
【0075】
本実施の形態では、前記実施の形態1と異なり、センサヘッド2内において、絶縁電線61a、61bのみでなく、絶縁電線62a、62bも互いに捻れていない。これは、
図14に示すケーブル3の断面において、入力端子41aに接続される絶縁電線61aおよび出力端子41bに接続される絶縁電線61bの第1方向での並び順が、入力端子42aに接続される絶縁電線62aおよび出力端子42bに接続される絶縁電線62bの第1方向での並び順が、同じであるためである。これにより、同一の構造および機能を有するセンサIC41、42を、それぞれの検出面を同じ方向に向けて重ねる際、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bのそれぞれを相互に交差させることなく、端子57、58に接続することができる。このため、絶縁電線の捻れに起因して樹脂が流れ難くなる箇所を無くすことができるため、本実施の形態では、前記実施の形態1に比べ、より樹脂モールドの品質を高めることができる。
【0076】
また、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bが互いに捻れていないことにより、射出成形工程において絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの絶縁体が溶融したとしても、芯線50同士が互いに短絡することを抑制することができる。
【0077】
以上より、本実施の形態では、回転速センサの信頼性を向上させることができる。
【0078】
また、本実施の形態では多数の絶縁電線同士が互いに捻れることを防ぐことで、センサIC41、42の端子57、58からシース端部までの絶縁電線61a、61b、62aおよび62bの長さを短くすることができる。よって、センサヘッド2が大きくなることを防ぐことができる。
【0079】
また、絶縁電線61a、61b、62aおよび62bを互いに捻る必要がないため、
図15に示すようにセンサIC41、42を並べて芯線50と端子57、58とを接続する作業が容易となる。よって、回転速センサの製造コストを低減することができる。また、センサIC41、42の端子57、58からシース端部までの絶縁電線の長さが短くても、このような作業を行うことが容易となるため、センサヘッド2が大きくなることを防ぐことができる。
【0080】
ここではセンサIC41、42が互いに離間する別体である場合について説明したが、磁気抵抗効果素子41c、42c(
図4参照)が同一の樹脂内に封入され、1つのセンサICを構成していてもよい。つまり、磁気抵抗効果素子41c、42cおよび当該樹脂が、4つの端子57、58を備えた1つのセンサICを構成し、当該センサICがセンサヘッド2内に封入されていてもよい。
【0081】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0082】
例えば、センサヘッドに内蔵されるセンサICが備える検出素子は、異方性磁気抵抗効果素子(AMR(Anisotropic magnetoresistance effect)素子)またはトンネル磁気抵抗効果素子(TMR(Tunnel magnetoresistance effect)素子)などであってもよく、ホール素子であってもよい。
【0083】
芯線とセンサICの出力端子との接続方法は溶接に限られず、例えば、半田付けであってもよい。また、芯線とセンサICの出力端子とを接続端子を介して接続してもよい。この場合、例えば、接続端子の一端と芯線とがカシメ接続され、接続端子の他端と出力端子とがカシメ接続される。
【0084】
本発明は、車輪速センサ以外の回転速センサにも適用することができ、適用された場合には上記と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0085】
2 センサヘッド
3 ケーブル
40 センサIC
41 センサIC(上側センサIC)
41a、42a 入力端子
41b、42b 出力端子
42 センサIC(下側センサIC)
41c、42c 磁気抵抗効果素子
50、51a、51b、52a、52b 芯線
61a、61b、62a、62b 絶縁電線