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特許7095724アンダーフィル用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】アンダーフィル用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220628BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20220628BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220628BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20220628BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220628BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220628BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/18
C08K3/013
C08K5/49
C08G59/50
H01L23/30 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020180882
(22)【出願日】2020-10-28
(62)【分割の表示】P 2015199761の分割
【原出願日】2015-10-07
(65)【公開番号】P2021014588
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】出口 央視
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩士
(72)【発明者】
【氏名】野尻 直幸
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0073008(US,A1)
【文献】特開2012-012431(JP,A)
【文献】特開2007-182562(JP,A)
【文献】特許第6789495(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
H01L 23/28-23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)芳香族アミン化合物、(C)無機充填材及び(D)有機リン化合物を含有してなるアンダーフィル用樹脂組成物であって、
前記(A)エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含有し、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂の質量比(ビスフェノール型エポキシ樹脂:グリシジルアミン型エポキシ樹脂)が60:40~95:5であり、
前記(D)有機リン化合物がホスフィンオキシド化合物、ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホラン化合物、ホスファルケン化合物及びホスファアルキン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、アンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ホスフィンオキシド化合物が、ジフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルビニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド及びトリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシドからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ホスフィンオキシド化合物がトリフェニルホスフィンオキシドである、請求項1又は2に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)芳香族アミン化合物が1分子中に第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群から選ばれる1種以上を2個以上含む化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)芳香族アミン化合物が、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)エポキシ樹脂の含有量が、(C)無機充填材を除くアンダーフィル用樹脂組成物全量に対して40~90質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)無機充填材の含有量が、アンダーフィル用樹脂組成物全量に対して40~80質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)無機充填材の含有量が、アンダーフィル用樹脂組成物全量に対して60~75質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)有機リン化合物の含有量が、(C)無機充填材に対して0.001~10質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項10】
E型粘度計により、110℃、せん断速度32.5s-1の条件にて測定した粘度が0.01~0.25Pa・sである、請求項1~9のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項11】
支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記支持部材と前記電子部品との接続部の少なくとも一部を封止している請求項1~10のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物と、を含む電子部品装置。
【請求項12】
支持部材と電子部品とが接続部を介して電気的に接続された電子部品装置の製造方法であって、前記接続部の少なくとも一部を、請求項1~10のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物を用いて封止する工程を含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の半導体素子(以下、チップともいう。)の封止の分野では、生産性及びコスト等の面から樹脂封止が主流となっており、封止材として様々な樹脂組成物が適用されている。その中でも、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が広く使用されている。その理由としては、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の封止材に要求される諸特性のバランスに優れているためである。
【0003】
半導体素子の表面実装としては、電子部品装置の小型化及び薄型化に伴い、ベアチップを直接配線基板上に実装する、いわゆるベアチップ実装が主流となっている。このベアチップ実装による半導体装置としては、例えば、COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等が挙げられ、これらの半導体装置においては、エポキシ樹脂を含む液状樹脂組成物が封止材として広く使用されている。
また、半導体素子を、セラミック、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/イミド樹脂、又はポリイミドフィルム等を基板とする配線基板(以下、単に「基板」ともいう)上に直接バンプ接続してなる半導体装置(フリップチップ)では、バンプ接続した半導体素子と配線基板との間隙(ギャップ)に充填するアンダーフィル材として、エポキシ樹脂を含む液状樹脂組成物が使用されている。
これらのエポキシ樹脂を含む液状樹脂組成物は、電子部品を温湿度及び機械的な外力から保護する重要な役割を果たしている。
【0004】
フリップチップ実装を行なう場合、素子と基板は熱膨張係数が異なり、接合部に熱応力が発生するため、接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が十分に保護されておらず、水分及びイオン性不純物が浸入し易いため、耐湿信頼性の確保も重要な課題である。なお、チップ保護のために、チップ側面にフィレットを形成するが、アンダーフィル材とチップとの熱膨張差に起因した熱応力によって、樹脂がクラックを生じ、チップを破壊する恐れがある。アンダーフィル材の選定によっては、温度サイクル試験等で繰り返し熱衝撃を受ける場合に、接続部の保護が不十分なため、低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。また、アンダーフィル材中にボイドが存在すると、バンプの保護が不十分なため、この場合も、低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。
【0005】
このように、流動性及び温度サイクル性が良好なアンダーフィル用樹脂組成物の需要が高まっているが、耐温度サイクル性等を向上させるために無機充填材を高充填すると、アンダーフィル用樹脂組成物の粘度が著しく増大して流動性が低下し、成形性が悪化するという問題が生じる場合がある。
当該課題を解決する発明として、(A)特定のエポキシ樹脂及び特定のエポキシ化合物から選ばれる1種以上、(B)アミン系硬化剤、(C)無機充填材及び(D)特定のシリコーン微粒子をそれぞれ所定量含有するアンダーフィル用樹脂組成物であれば、樹脂組成物の粘度を下げることができ、流動性及び耐温度サイクル性に優れることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、特定の粒径のシリカと特定の粒径の非晶質シリカを併用することで低粘度化を達成でき、流動性及び耐温度サイクル性に優れたアンダーフィル用樹脂組成物となることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-144661号公報
【文献】特開2012-149111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の半導体素子の高集積度化及び多機能化に伴ってチップサイズが大きくなってきている一方、多ピン化によってバンプの小径化、狭ピッチ化及び狭ギャップ化が進んでおり、また、搭載機器の小型化に伴いチップ厚の薄型化が行なわれている。狭ピッチ化及び狭ギャップ化により、使用できる無機充填材の粒径は小さくなっており、そのため、アンダーフィル用樹脂組成物へ無機充填材を高充填することが難しくなってきている。また、低粘度樹脂の適用は、ガラス転移温度(Tg)の低下及び樹脂強度の低下を招く恐れがあるため、アンダーフィル用樹脂組成物へ低粘度樹脂を多量に配合することが難しくなってきている。そのため、高い流動性及び信頼性(例えば、耐温度サイクル性及び耐湿性等)を両立することがますます難しくなってきている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、流動性、充填性、成形性、耐温度サイクル性及び耐湿性に優れたアンダーフィル用樹脂組成物、並びに該アンダーフィル用樹脂組成物により少なくとも一部が封止された信頼性の高い電子部品装置及び該電子部品装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂、芳香族アミン化合物、無機充填材及び有機リン化合物を含有してなるアンダーフィル用樹脂組成物であれば、無機充填材を高充填しながらも低粘度を達成することができ、その結果、流動性、充填性、成形性、耐温度サイクル性及び耐湿性を満足し得ることを見出した。また、該アンダーフィル用樹脂組成物により少なくとも一部が封止された電子部品装置の信頼性が高いことを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]に関する。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)芳香族アミン化合物、(C)無機充填材及び(D)有機リン化合物を含有してなる、アンダーフィル用樹脂組成物。
[2](D)有機リン化合物が、ホスフィン化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホラン化合物、ホスファルケン化合物、ホスファアルキン化合物及び燐酸エステル基を有する共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、上記[1]に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[3](D)有機リン化合物が、トリフェニルホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィンオキサイド及びリン酸エステル基を有する共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、上記[1]又は[2]に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[4](A)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[5](B)芳香族アミン化合物が、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンからなる群から選ばれる1種以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[6](C)無機充填材の含有量が、アンダーフィル用樹脂組成物全量に対して40~80質量%である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[7](C)無機充填材の含有量が、アンダーフィル用樹脂組成物全量に対して60~75質量%である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[8](D)有機リン化合物の含有量が、(C)無機充填材に対して0.001~10質量%である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[9]E型粘度計により、110℃、せん断速度32.5s-1の条件にて測定した粘度が0.01~0.25Pa・sである、上記[1]~[8]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
[10]支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記支持部材と前記電子部品との接続部の少なくとも一部を封止している上記[1]~[9]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物と、を含む電子部品装置。
[11]支持部材と電子部品とが接続部を介して電気的に接続された電子部品装置の製造方法であって、前記接続部の少なくとも一部を、上記[1]~[9]のいずれかに記載のアンダーフィル用樹脂組成物を用いて封止する工程を含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流動性、充填性、成形性、耐温度サイクル性及び耐湿性に優れたアンダーフィル用樹脂組成物、並びに該アンダーフィル用樹脂組成物により少なくとも一部が封止された信頼性の高い電子部品装置及び該電子部品装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「工程」との用語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。また、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計含有量を意味する。
さらに本明細書において、「常温」は25℃を意味する。また、「液状」は、特に断りの無い限り、常温において液状であることを意味し、常温におけるE型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。「固形状」は、特に断りの無い限り、常温において固形状、つまり固体であることを意味する。
【0012】
[アンダーフィル用樹脂組成物]
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)芳香族アミン化合物、(C)無機充填材及び(D)有機リン化合物を含有してなるものである。
以下、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物の各成分及び物性について順に説明する。
【0013】
<(A)エポキシ樹脂>
(A)エポキシ樹脂としては、アンダーフィル用樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができるが、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
(A)エポキシ樹脂は、常温で固形状であっても液状であってもよいが、充填性の観点から、常温で液状であることが好ましい。エポキシ樹脂としては、特に、常温で液状のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」ともいう)としては、アンダーフィル用樹脂組成物で一般に使用されている液状エポキシ樹脂を用いることができる。該液状エポキシ樹脂は、常温におけるE型粘度計で測定される粘度が、例えば、0.0001~10Pa・sであることが好ましい。
このような(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のビスフェノール型エポキシ樹脂等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール類とアルデヒド類とから得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;p-アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、流動性の観点からは、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性、接着性及び流動性の観点からは、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。ゆえに、(A)エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、流動性の観点から、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂を併用する場合、その質量比(ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂)は、特に制限はないが、耐熱性、接着性及び流動性の観点から、例えば、5:95~50:50であることが好ましく、10:90~40:60であることがより好ましく、20:80~40:60であることがさらに好ましい。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂は、流動性の観点から、いずれも常温で液状であることが好ましい。
【0014】
ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂は、いずれかを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、耐熱性、接着性及び流動性の観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂の合計含有量は、特に制限はないが、耐熱性、接着性及び流動性の観点から、(A)エポキシ樹脂全量に対して、例えば、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。該合計含有量の上限値に特に制限はなく、粘度、ガラス転移温度及び耐熱性等の観点から、所望の性状及び特性が得られる範囲で決めることができ、100質量%であってもよい。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシとを併用する場合、その質量比(ビスフェノール型エポキシ樹脂:グリシジルアミン型エポキシ)は、特に制限はないが、耐熱性、接着性及び流動性の観点から、例えば、20:80~95:5であることが好ましく、40:60~90:10であることがより好ましく、60:40~80:20であることがさらに好ましい。
【0015】
また、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物には、常温で固形状のエポキシ樹脂を使用することもできる。
常温で固形状のエポキシ樹脂の含有量は、流動性の観点から、(A)エポキシ樹脂全量に対して、例えば、0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量に特に制限はないが、耐熱性の観点から、好ましくは60~400g/mol、より好ましくは70~300g/mol、さらに好ましくは80~250g/molである。
ここで、エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定することができる。具体的には、株式会社三菱化学アナリテックの自動滴定装置「GT-200型」を用いて、200mlビーカーにエポキシ樹脂2gを秤量し、メチルエチルケトン90mlを滴下し、超音波洗浄器溶解後、氷酢酸10ml及び臭化セチルトリメチルアンモニウム1.5gを添加し、0.1mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で滴定することにより求められる。
【0017】
(A)エポキシ樹脂の純度は高いことが好ましい。特に加水分解性塩素量は、IC(Integrated Circuit)等の素子上のアルミ配線腐食に係わるため、少ない方が好ましく、耐湿性に優れるアンダーフィル用樹脂組成物を得る観点からは、例えば、500ppm以下であることが好ましい。
ここで、加水分解性塩素量とは、試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1N-KOH(水酸化カリウム)メタノール溶液5mlを添加して30分間還流させた後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0018】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に制限はないが、耐熱性、接着性及び流動性の観点から、(C)無機充填材を除く樹脂組成物の全量中、例えば、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましく、55~70質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
<(B)芳香族アミン化合物>
(B)芳香族アミン化合物は、(A)エポキシ樹脂の硬化剤として機能する芳香族アミン化合物であれば特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂の硬化剤として知られている、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤及び酸無水物系硬化剤等と比べ、芳香族アミン化合物であれば、耐温度サイクル性及び耐湿性等に優れ、半導体装置の信頼性を向上できる。
(B)芳香族アミン化合物は、例えば、1分子中に第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群から選ばれる1種以上(以下、単に「アミノ基」ともいう)を2個以上含む化合物であることが好ましく、前記アミノ基を2~4個有する化合物であることがより好ましく、前記アミノ基を2個有する芳香族ジアミン化合物であることがさらに好ましい。
(B)芳香族アミン化合物は、常温で固形状であってもよいし、液状であってもよいが、アンダーフィル用樹脂組成物の流動性の観点からは、常温で液状であることが好ましい。
【0020】
常温で液状の芳香族アミン化合物(液状芳香族アミン化合物とも称する。)としては、例えば、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン等のジエチルトルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン等が挙げられる。
(B)芳香族アミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、保存安定性の観点からは、例えば、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ジエチルトルエンジアミン及び3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
保存安定性の観点から、(B)芳香族アミン化合物中のジエチルトルエンジアミンの含有量が20~70質量%であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましい。
【0021】
液状芳香族アミン化合物としては、市販品を用いてもよい。市販品の液状芳香族アミン化合物としては、例えば、JERキュアW(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、カヤハード(登録商標)A-A、カヤハード(登録商標)A-B、カヤハード(登録商標)A-S(日本化薬株式会社製、商品名)、トートアミンHM-205(東都化成株式会社製、商品名)、アデカハードナー(登録商標)EH-101(株式会社ADEKA製、商品名)、エポミック(登録商標)Q-640、エポミック(登録商標)Q-643(三井化学株式会社製、商品名)、DETDA80(Lonza社製、商品名)等が入手可能である。
【0022】
本発明の効果を損なわない範囲で、(B)芳香族アミン化合物以外の公知の他の硬化剤、例えば、フェノール系硬化剤及び酸無水物系硬化剤等を併用してもよいが、他の硬化剤の含有量は、充填性、成形性、耐温度サイクル性及び耐湿性の観点から、(B)芳香族アミン化合物100質量部に対して、例えば、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0023】
(B)芳香族アミン化合物としては、常温で固形状の(B)芳香族アミン化合物を使用することもできる。
常温で固形状の(B)芳香族アミン化合物の含有量は、流動性の観点から、(B)芳香族アミン化合物全量に対して、例えば、0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
(B)芳香族アミン化合物の活性水素当量は、特に制限はないが、充填性、成形性、耐温度サイクル性及び耐湿性の観点から、例えば、10~200g/molであることが好ましく、20~120g/molであることがより好ましく、30~75g/molであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂と(B)芳香族アミン化合物との当量比((A)エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数/(B)芳香族アミン化合物の活性水素のモル数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑える観点から、例えば、0.7~1.6であることが好ましく、0.8~1.4であることがより好ましく、0.9~1.2であることがさらに好ましい。
【0026】
<(C)無機充填材>
(C)無機充填材としては、特に制限はないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。
(C)無機充填材として難燃効果のある無機充填材を用いてもよい。難燃効果のある無機充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。
(C)無機充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、入手容易性、化学的安定性及び材料コストの観点からは、例えば、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。(C)無機充填材の粒子形状は、特に制限はなく、不定形であっても球状であってもよいが、アンダーフィル材用樹脂組成物の微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは、球状シリカ、特に球状溶融シリカが好ましく用いられる。
【0027】
また、(C)無機充填材は表面処理されていてもよい。(C)無機充填材は、具体的には、シランカップリング剤を用いて表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤及びイソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。
【0028】
(C)無機充填材の体積平均粒径は、特に制限はないが、例えば、0.1~10μmであることが好ましく、0.3~5μmであることより好ましく、0.5~3μmであることがさらに好ましい。(C)無機充填材の体積平均粒径が0.1μm以上とすることで、(A)エポキシ樹脂への分散性が向上し、アンダーフィル用樹脂組成物にチキソトロピック性が付与されにくく、アンダーフィル用樹脂組成物の流動特性が向上する傾向がある。一方、10μm以下とすることで、アンダーフィル用樹脂組成物中での(C)無機充填材の沈降を抑制し易くなる傾向があり、かつ、アンダーフィル用樹脂組成物としての微細間隙への浸透性及び流動性が向上して、ボイド及び未充填部分の発生を抑制できる傾向がある。
なお、体積平均粒径とは、粒子の全体積を100%として粒径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0029】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物中の(C)無機充填材の含有量は、特に制限はないが、アンダーフィル用樹脂組成物全量に対して、例えば、40~80質量%であることが好ましく、50~75質量%とすることもでき、60~75質量%とすることもできる。(C)無機充填材の含有量が40質量%以上とすることで、熱膨張係数の低減効果及び耐温度サイクル性の向上効果が得られ易い傾向にあり、80質量%以下とすることで、アンダーフィル用樹脂組成物の粘度の上昇を抑制し、流動性、浸透性及びディスペンス性が良好となる傾向にある。特に、耐温度サイクル性の向上効果の観点からは、(C)無機充填材の含有量の下限値は高いほど好ましい。本発明においては、(C)無機充填材の含有量を上記の様に高くしても、アンダーフィル用樹脂組成物を低粘度に維持することが可能である。
【0030】
<(D)有機リン化合物>
(D)有機リン化合物は、分子中に有機基とリン原子を有している化合物である。有機基としては、流動性、充填性及び耐温度サイクル性の観点から、炭素数6~14の芳香族炭化水素基が好ましい。該芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。該芳香族炭化水素基は、炭素数1~5のアルキル基及び炭素数1~5のアルコキシル基からなる群から選ばれる1種以上の置換基によって置換されていてもよい。
(D)有機リン化合物を用いることにより、アンダーフィル用樹脂組成物の粘度を低下させる効果がある。当該効果が発現する正確な理由は不明であるが、(D)有機リン化合物が前記(C)無機充填材の表面に吸着して無機充填材同士の水素結合を抑制する効果があるためと推察する。また、(D)有機リン化合物の主骨格による立体的効果によって、(C)無機充填剤の分散安定化を向上させることで、(C)無機充填剤の沈降を防止する効果が得られるものと推察する。
(D)有機リン化合物としては、例えば、ホスフィン化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホラン化合物、ホスファルケン化合物、ホスファアルキン化合物、燐酸エステル基を有する共重合体等が挙げられる。その中でも、アンダーフィル用樹脂組成物の流動性、充填性、耐温度サイクル性及び耐湿性の観点から、ホスフィン化合物、ホスフィンオキシド化合物、リン酸エステル基を有する共重合体が好ましい。
(D)有機リン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。これらの中でも、流動性、充填性、耐温度サイクル性及び耐湿性の観点から、トリフェニルホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィンが好ましい。なお、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィンとしては、例えば、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン等が好ましい。
【0032】
ホスフィンオキシド化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルビニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、流動性、充填性、耐温度サイクル性及び耐湿性の観点から、トリフェニルホスフィンオキシドが好ましい。
【0033】
リン酸エステル基を有する共重合体は、分子内にリン酸エステル基を有する共重合体であれば特に制限はない。市販品を用いるのが簡便であり、例えば、BYK-W9010(ビックケミージャパン株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0034】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物中の(D)有機リン化合物の含有量は、特に制限はないが、(C)無機充填材全量に対して、例えば、0.001~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましく、0.01~2質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、前記(A)~(D)成分以外に、その他の成分を含有してなるものであってもよい。その他の成分としては、アンダーフィル用樹脂組成物に含有させ得る公知の成分が挙げられ、例えば、可撓剤、硬化促進剤、カップリング剤、イオントラップ剤、着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0036】
(可撓剤)
可撓剤を用いると、アンダーフィル用樹脂組成物の耐熱衝撃性の向上効果及び半導体素子への応力低減効果が得られる。可撓剤としては特に制限は無いが、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)、シリコーンゴム等のゴム粒子が挙げられる。
可撓剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーンゴム粒子としては、例えば、直鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子;シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの;乳化重合等で得られる固形状シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の有機重合体のシェルからなるコア-シェル重合体粒子などが挙げられる。
これらのシリコーンゴム粒子の形状は、無定形であっても球形であってもよいが、アンダーフィル用樹脂組成物の粘度を低く抑えるためには、球形のものを用いることが好ましい。シリコーンゴム粒子は、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、信越化学株式会社等から市販品が入手可能である。
【0037】
ゴム粒子の平均一次粒子径は、0.05~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましい。平均一次粒子径が0.05μm以上であることにより、アンダーフィル用樹脂組成物への分散性が向上する傾向があり、10μm以下であることにより、低応力化効果が向上する傾向にあり、かつ、アンダーフィル用樹脂組成物としての微細間隙への浸透性及び流動性が向上し、ボイド及び未充填部分の発生を抑制し易くなる傾向にある。ゴム粒子の一次粒径は、アンダーフィル用樹脂組成物を均一に変性するためには小さい方が有利である。
【0038】
アンダーフィル用樹脂組成物が可撓剤を含有してなる場合、その含有量は、(C)無機充填材を除くアンダーフィル用樹脂組成物全体の1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、4~12質量%であることがさらに好ましい。可撓剤の含有量を1質量%以上とすることで、低応力効果が大きくなる傾向があり、30質量%以下とすることで、アンダーフィル用樹脂組成物の粘度が低減し、成形性及び流動性が向上する傾向がある。
【0039】
(硬化促進剤)
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と(B)芳香族アミン化合物との反応を促進させる観点から、必要に応じて、硬化促進剤を含有してなるものであってもよい。
硬化促進剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物;トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩などが挙げられる。
また、潜在性を有する硬化促進剤として、常温で固体のアミノ基を有する化合物を含むコアを、常温で固体のエポキシ化合物を含むシェルで被覆してなるコア-シェル粒子が挙げられる。該コア-シェル粒子の市販品としては、アミキュア(登録商標)(味の素株式会社製、商品名)、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたノバキュア(登録商標)(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)等が使用できる。
硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物が硬化促進剤を含有してなるものである場合、硬化促進剤の含有量は、(A)エポキシ樹脂と(B)芳香族アミン化合物との硬化促進効果が発現する量であれば特に制限はなく、用いる硬化促進剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。例えば、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~40質量部であることが好ましく、0.5~20質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。硬化促進剤の含有量が、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部以上であれば、低温での硬化性が良好となる傾向にあり、40質量部以下であれば、硬化速度の制御が容易になり、ポットライフ及びシェルライフ等の保存安定性が向上する傾向にある。
【0041】
(カップリング剤)
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と(C)無機充填材との界面接着及び(A)エポキシ樹脂と電子部品の構成部材との界面接着を強固にする観点、並びに充填性を向上させる観点から、必要に応じてカップリング剤を含んでなるものであってもよい。
カップリング剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができ、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基からなる群から選ばれる1種以上を有するアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。これらの中でも、シリカへの反応性の観点からは、例えば、シラン系化合物が好ましく、エポキシシランがより好ましい。
エポキシシランとしては、例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、シリカへの反応性の観点からは、例えば、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
カップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物がカップリング剤を含有してなるものである場合、カップリング剤の含有量は、特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂と(C)無機充填材との界面接着及び(A)エポキシ樹脂と電子部品の構成部材との界面接着を強固にする観点、並びに充填性を向上させる観点から、アンダーフィル用樹脂組成物全量に対して、例えば、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
<イオントラップ剤>
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、IC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤を含有してなるものであってもよい。
イオントラップ剤としては、特に制限はないが、例えば、下記組成式(I)又は(II)で表されるイオントラップ剤が挙げられる。
Mg1-xAl(OH)(COx/2・mHO (I)
(0<X≦0.5、mは正の数)
BiO(OH)(NO (II)
(0.9≦x≦1.1、0.6≦y≦0.8、0.2≦z≦0.4)
(但し、2x+y+z=3である。)
【0044】
前記組成式(I)又は(II)で表される化合物は、市販品として入手可能である。組成式(I)で表される化合物の市販品としては、例えば、「DHT-4A」(協和化学工業株式会社製、商品名)が入手可能である。また、上記組成式(II)で表される化合物の市販品としては、例えば、「IXE500」(東亞合成株式会社製、商品名)が入手可能である。
イオントラップ剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオントラップ剤の平均粒径は、特に制限はないが、例えば、0.1~3μmであることが好ましく、最大粒径は、例えば、10μm以下であることが好ましい。
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物がイオントラップ剤を含有してなるものである場合、イオントラップ剤の含有量は、例えば、0.1~3質量%であることが好ましく、0.3~1.5質量%であることがより好ましい。
また、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、必要に応じてその他の陰イオン交換体を含んでいてもよい。その他の陰イオン交換体としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができ、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等からなる群から選ばれる1種以上の元素の含水酸化物などが挙げられ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、上記各種成分を十分に分散混合できる手法であれば、いかなる手法を用いて調製してもよい。例えば、所定の配合量の前記各成分を秤量し、擂潰機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等の混合機を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
混合及び混練条件は、原料の種類等に応じて適宜決定すればよいが、前記各成分が十分に(好ましくは均一に)混合及び分散する条件を選択することが好ましい。
【0046】
(アンダーフィル用樹脂組成物の粘度)
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、常温で液状であることが好ましい。つまり、常温におけるE型粘度計で測定した本発明のアンダーフィル用樹脂組成物の粘度は、例えば、1,000Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度が1,000Pa・s以下であると、近年の電子部品の小型化、半導体素子の接続端子のファインピッチ化、配線基板の微細配線化に対応可能な流動性及び浸透性を確保し易い。
特に、アンダーフィルする際のアンダーフィル用樹脂組成物の粘度も重要であり、アンダーフィルする際の温度(70~130℃)、例えば110℃における実施例に記載の方法に従って測定するアンダーフィル用樹脂組成物の粘度は、上記同様の観点から、例えば、500Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、10Pa・s以下であることがさらに好ましく、3Pa・s以下であることがよりさらに好ましく、0.25Pa・s以下であることが特に好ましく、0.20Pa・s以下であることが最も好ましい。粘度の下限に特に制限はないが、実装性の観点からは、例えば、0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.5Pa・s以上であることがより好ましく、0.1Pa・s以上であることがさらに好ましい。とりわけ、該粘度は、0.01~0.25Pa・sが好ましく、0.01~0.20Pa・sがより好ましく、0.05~0.20Pa・sがさらに好ましい。
前記粘度は、封止の対象となる電子部品及び電子部品装置の種類に応じて適宜調整すればよい。粘度は、例えば、上記で例示した各成分の種類、含有量等を制御することによって調整が可能である。
【0047】
<アンダーフィル用樹脂組成物の用途>
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド及びフレキシブル配線板、ガラス、シリコーンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載した半導体装置に適用することができる。
特に、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物は、信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル用樹脂組成物として好適である。具体的には、リジッド及びフレキシブル配線板又はガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした、フリップチップBGA/LGA、COF(Chip On Film)等の半導体装置に対して好適である。
【0048】
[電子部品装置]
本発明の電子部品装置は、支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記支持部材と前記電子部品との接続部の少なくとも一部を封止している本発明のアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物と、を含む電子部品装置である。
本発明の電子部品装置を構成する、支持部材、電子部品等を備える半導体装置の好適な態様は、前記本発明のアンダーフィル用樹脂組成物の用途の説明中に挙げられた半導体装置と同様である。
本発明の電子部品装置は、支持部材と電子部品との接続部の少なくとも一部が、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物によって封止されていればよいが、前記接続部の全部が封止されていることが好ましい。
【0049】
[電子部品装置の製造方法]
本発明の電子部品装置の製造方法は、支持部材と電子部品とが接続部を介して電気的に接続された電子部品装置の製造方法であって、前記接続部の少なくとも一部を、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物を用いて封止する工程を含む、電子部品装置の製造方法である。
本発明の電子部品装置の製造方法に用いられる、支持部材、電子部品等を備える半導体装置の好適な態様は、前記本発明のアンダーフィル用樹脂組成物の用途の説明中に挙げられた半導体装置と同様である。
本発明の電子部品装置の製造方法は、支持部材と電子部品との接続部の少なくとも一部を、本発明のアンダーフィル用樹脂組成物によって封止すればよいが、前記接続部の全部を封止することが好ましい。
本発明のアンダーフィル用樹脂組成物を用いて支持部材と電子部品との接続部を封止する方法としては、特に制限はなく、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等の従来公知の方式を適用することができる。
【実施例
【0050】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において行った特性試験の試験方法を以下にまとめて示す。
【0051】
実施例及び比較例で得られたアンダーフィル用樹脂組成物の評価に用いた半導体装置の仕様は以下のとおりである。
・半導体素子のサイズ:20mm×20mm×0.55mm厚(回路:アルミのデイジーチェーン接続、パッシベーション:ポリイミド膜HD4000、日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社製)
・バンプの種類:はんだボール(Sn-Ag-Cu、直径80μm、7,744pin)
・バンプピッチ:190μm
・基板(コア)の種類:FR-5(ソルダーレジストSR7200、日立化成株式会社製、60mm×60mm×0.8mm厚)
・基板とチップ間のギャップ:50μm
【0052】
[封止及び硬化条件]
実施例及び比較例で得られたアンダーフィル用樹脂組成物80mgを、110℃の条件下でディスペンス方式にて半導体装置の基板と素子との間隙に塗布(アンダーフィル)した後、150℃で2時間、空気中で硬化することで間隙を封止し、半導体装置を作製した。
【0053】
[物性評価]
実施例及び比較例で得られたアンダーフィル用樹脂組成物を、次の各試験により評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
(1)110℃粘度(流動性の評価)
アンダーフィル用樹脂組成物の110℃での粘度を、E型粘度計「AR2000」(TAインスツルメント社製)により、40mmパラレルプレート(ギャップ:500μm)を用いて、せん断速度32.5s-1の条件にて測定した。狭ギャップでの流動性の観点からは、0.25Pa・s以下が好ましく、0.20Pa・s以下がより好ましい。
【0055】
(2)含浸時間(充填性の評価)
半導体装置を110℃に加熱したホットプレート上に置き、ディスペンス方式にてアンダーフィル用樹脂組成物100mgをチップの側面(1辺)に滴下し、アンダーフィル用樹脂組成物が対向する側面に浸透するまでの時間を測定した。110秒以下が好ましく、100秒以下がより好ましい。
【0056】
(3)ボイドの有無(成形性の評価)
封止後の半導体装置10個の内部を超音波探傷装置「AT-5500」(日立建機株式会社製)で観察し、ボイドの有無を調べ、ボイドが存在する半導体装置の個数(ボイドが存在した半導体装置の個数/10)を測定した。ボイドが存在する半導体装置の個数が少ないほど、成形性に優れる。
【0057】
(4)信頼性の評価
(4-1)耐温度サイクル性
アンダーフィル用樹脂組成物をアンダーフィルして作製した半導体装置を、-55℃~125℃、各30分のヒートサイクルで2000サイクル処理し、1000サイクルごとに導通試験を行い、アルミ配線及びパッドの断線不良を調べ、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
(4-2)耐湿性
アンダーフィル用樹脂組成物をアンダーフィルして作製した半導体装置を、130℃、85%RHのHAST条件下で200時間処理した後、アルミ配線及びパッドの断線有無を導通試験により確認し、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
【0058】
[実施例1~8、比較例1~4]
表1に示す各成分を表1に示す組成で配合し、三本ロール及び真空擂潰機にて混練分散した後、実施例1~8及び比較例1~4のアンダーフィル用樹脂組成物を作製した。なお、表1中の配合組成における単位は、特に規定の無い限りは質量部であり、空欄は配合無しを表す。
また、表1中の略称等は以下のとおりである。
【0059】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160g/molの液状ジエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「jER806」)
・エポキシ樹脂2:ビスフェノールAをエポキシ化して得られるエポキシ当量190g/molの液状ジエポキシ樹脂(三井化学株式会社製、商品名「エポミック(登録商標)R140P」)
・エポキシ樹脂3:アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95g/molの3官能液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「jER630」)
【0060】
(芳香族アミン化合物)
・芳香族アミン化合物1:活性水素当量45g/molのジエチルトルエンジアミン(三菱化学株式会社製、商品名「jERキュアW」)
・芳香族アミン化合物2:活性水素当量63g/molのジエチルジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード(登録商標)A-A」)
(硬化剤)
・硬化剤3:酸無水物当量168g/molの液状酸無水物(酸無水物;日立化成株式会社製、商品名「HN5500」)
・硬化剤4:活性水素141g/molのフェノール系硬化剤(明和化成株式会社製、商品名「MEH8000H」)
【0061】
(無機充填材)
・シリカ:体積平均粒径1μmの球状溶融シリカ
【0062】
(有機リン化合物)
・有機リン化合物1:トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製、商品名「TPP」)
・有機リン化合物2:トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン(北興化学工業株式会社製、商品名「TPTP」)
・有機リン化合物3:トリフェニルホスフィンオキシド(北興化学工業株式会社製、商品名「TPPO」)
有機リン化合物4:リン酸エステル基を有する共重合体(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK-W9010」、酸価:129mgKOH/g、不揮発分100%)
【0063】
(その他の成分)
・可撓剤:ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された体積平均粒径2μmの球状のシリコーンゴム粒子(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「EP-2601」)
・硬化促進剤:2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2P4MHZ」)
・カップリング剤:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-403」)
・イオントラップ剤:ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社製、商品名「IXE-500」)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA-100」)
【0064】
【表1】
【0065】
芳香族アミン化合物を用いず、代わりに酸無水物系硬化剤又はフェノール系硬化剤を用いた比較例1及び比較例2では、ボイドが発生し、かつ耐温度サイクル性及び耐湿性が共に不十分であった。比較例2では、110℃における流動性も低く、さらに充填性にも乏しかった。
また、有機リン化合物を用いていない比較例3及び比較例4については、ボイドが発生し、またそれに伴い耐温度サイクル性が劣った。さらに、比較例3及び比較例4のいずれにおいても、110℃における流動性も低く、さらに充填性にも乏しかった。
実施例2及び6~8の結果の対比から、有機リン化合物としてトリフェニルホスフィン(有機リン化合物1)を用いた場合に、最も低粘度の効果を得られ、充填性も高くなる傾向にあることが分かった。
実施例1~5の結果から、有機リン化合物の添加量を増やすことにより、低粘度効果が増大し、充填性も高まることが分かった。特に実施例3では、無機充填剤を高充填(70質量%)しているが、低粘度を維持できているためにボイドが発生せず、耐温度サイクル性及び耐湿性が最も優れる結果となった。