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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/14 20060101AFI20220628BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220628BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20220628BHJP
【FI】
B29B15/14
C08J5/04
B29K101:10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021069668
(22)【出願日】2021-04-16
(62)【分割の表示】P 2018131533の分割
【原出願日】2016-12-22
(65)【公開番号】P2021102784
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2015254771
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016079159
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 禎雄
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 由貴廣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 康
(72)【発明者】
【氏名】金羽木 惇二
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 正俊
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-191238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0213997(US,A1)
【文献】特開2011-241494(JP,A)
【文献】特開2012-193477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 15/14
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンから炭素繊維束を引き出して拡幅した後、刃物を間欠的に突き刺すことにより長手方向に断続的に分繊したうえで、他のボビンに巻き取ることと、
第1のキャリアシートに、熱硬化性樹脂を含む樹脂を塗工することと、
前記他のボビンから前記分繊された炭素繊維束を引き出して、所定の長さとなるように裁断し、前記樹脂が塗工された前記第1のキャリアシートの上に散布することにより、前記第1のキャリアシート上にシート状繊維束群を形成することと、
前記シート状繊維束群の上に、熱硬化性樹脂を含む樹脂が塗工された第2のキャリアシートを積層して加圧することによって、前記シート状繊維束群に、前記第1のキャリアシートに塗工された樹脂および前記第2のキャリアシートに塗工された樹脂を含浸させることと、
を含む繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形材料の製造方法に関する。
本願は、2015年12月25日に日本に出願された特願2015-254771、及び2016年4月11日に日本に出願された特願2016-079159に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
SMC(Sheet Molding Compound)は、例えばガラス繊維や炭素繊維などの長尺の強化繊維を所定の長さに裁断した複数の繊維束で形成されたシート状繊維束群に、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化樹脂成形材料である。
SMCは成形品を得るための中間材料として用いられ、金型による成形時に流動しやすい性質を有する。そのため、SMCは、成形品において部分的に肉厚の異なる部分や、リブやボスなどを形成する際に好適に利用されている。
【0003】
SMCは、例えば、以下の方法で製造される。
一方向に搬送されるシート状のキャリア上に熱硬化性樹脂を含むペーストを塗工して帯状の樹脂シートを形成する。走行する樹脂シート上に、長尺の繊維束を所定の長さに裁断しつつ散布してシート状繊維束群を形成する。該シート状繊維束群上に樹脂シートをさらに積層し、形成された積層体を両面から加圧して樹脂を該シート状繊維束群に含浸させてSMCとする。
【0004】
SMCの製造には、製造コストを下げる目的で、比較的安価なラージトウと呼ばれるフィラメント本数の多い繊維束が用いられることが多い。フィラメント本数の多い繊維束を用いる場合には、該繊維束を開繊により幅方向に拡幅した後、開繊された繊維束を分繊して複数の繊維束に分割し、分繊された繊維束を裁断する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
しかし、特にラージトウのようにフィラメント数の多い繊維束の開繊には時間がかかるため、開繊した繊維束を用いたSMCの製造は生産性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2012/0213997号明細書
【文献】特開2006-219780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低コストで生産性に優れ、ラージトウと呼ばれるフィラメント本数の多い繊維束に好適に適用できる、得られる繊維強化樹脂材料成形体の強度物性にも優れた繊維強化樹脂成形材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1]複数の裁断された繊維束と、前記裁断された繊維束のフィラメント間に含浸された樹脂とを含有するシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する方法であって、
複数の連続する繊維束を幅方向に並列させ拡幅して得られたシート状の繊維束集合体を収集して集積物を得る集積物製造工程、
を有する、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[2]前記集積物製造工程に引き続いて、
前記集積物から前記繊維束集合体を引き出して、その長手方向の間隔を空けた裁断により前記裁断された繊維束を得て、第1の樹脂を含む第1樹脂シート上に複数の前記裁断された繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する散布工程と、
前記シート状繊維束群上に、第2の樹脂を含む第2樹脂シートを積層して加圧し、前記シート状繊維束群に前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂を含浸させて繊維強化樹脂成形材料を得る貼合含浸工程と、
を有する、[1]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[3]前記集積物製造工程において、分繊により前記繊維束集合体を幅方向に分割して収集する、[1]又は[2]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[4]前記分繊を、前記連続する繊維束の長手方向における所定の間隔での断続的な分繊によって行う、[3]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[5]下式(1)の条件を満たすように前記連続する繊維束の長手方向における前記断続的な分繊を行い、前記連続する繊維束の長手方向の間隔を空けた裁断により前記裁断された繊維束を得る、[4]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
1≦a/L ・・・(1)
(但し、前記式(1)中、aは前記連続する繊維束における分繊部分の長さであり、Lは前記連続する繊維束が裁断される間隔である。)
[6]さらに、下式(2)の条件を満たすように前記分繊及び前記裁断を行う、[5]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
a/L≦10 ・・・(2)
(但し、前記式(2)中、aは前記連続する繊維束における分繊部分の長さであり、Lは前記連続する繊維束が裁断される間隔である。)
[7]下式(3)の条件を満たすように前記連続する繊維束の長手方向における前記断続的な分繊を行い、前記連続する繊維束の長手方向の間隔を空けた裁断により前記裁断された繊維束を得る、[4]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(但し、前記式(3)中、aは前記連続する繊維束における分繊部分の長さであり、bは前記連続する繊維束における断続的な分繊部分間の長さである。)
[8]前記繊維束集合体をゴデットロールで案内し、分繊により前記繊維束集合体を幅方向に分割して収集する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[9]複数の前記集積物からそれぞれ繊維束集合体を引き出し、引き出されたそれぞれの繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けた裁断により前記裁断された繊維束を得る、[1]~[8]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[10]複数の前記集積物から引き出したそれぞれの繊維束集合体を、前記それぞれの繊維束集合体の幅方向にずらして重ねて、その長手方向の間隔を空けた裁断により前記裁断された繊維束を得る、[9]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
【0009】
[11]複数の裁断された繊維束と、前記裁断された繊維束のフィラメント間に含浸された樹脂を含有するシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する装置であって、
第1製造装置を備え、
前記第1製造装置は、複数の連続する繊維束を幅方向に配置させる配置部と、
配置された複数の前記連続する繊維束から得られるシート状の繊維束集合体を収集する集積部と、
を備える、繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
[12]さらに第2製造装置を備え、
前記第2製造装置は、前記集積部で得られた集積物から前記繊維束集合体を引き出して、その長手方向の間隔を空けた裁断を行い、前記裁断された繊維束を製造する裁断機と、
第1の樹脂を含む第1樹脂シート上に複数の前記裁断された繊維束をシート状に散布して形成されたシート状繊維束群上に、第2の樹脂を含む第2樹脂シートを積層して加圧し、前記シート状繊維束群に前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂を含浸させて繊維強化樹脂成形材料とする含浸部と、
を備える、[11]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法、及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置によれば、低コストに、かつ、高い生産性で繊維強化樹脂成形材料を製造することができ、繊維束を扁平な状態に開繊して分繊することにより、樹脂の偏在部分が少なく、得られる繊維強化樹脂材料成形体の強度物性に優れた繊維強化樹脂成形材料を得ることができる。
また、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法、及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置は、特にラージトウと呼ばれるフィラメント本数の多い繊維束を用いた場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図2】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図3】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の他の例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図4】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の他の例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図5】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の他の例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図6】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の他の例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図7】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の他の例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
図8】本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の他の例の一工程、及び製造装置の一部を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、複数の裁断された繊維束と、裁断された繊維束のフィラメント間に含浸された樹脂とを含有する、シート状の繊維強化樹脂成形材料(SMC)の製造に係る方法である。
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、下記の集積物製造工程を有する。また、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、集積物製造工程に引き続く、下記の散布工程、及び貼合含浸工程を有してもよい。
【0013】
・集積物製造工程:
集積物製造工程は、複数の連続する繊維束を幅方向に並列させ拡幅して得られたシート状の繊維束集合体を収集して集積物を得る工程である。
連続する繊維束は開繊により幅方向に拡幅され、扁平な状態のシート状繊維束集合体を形成する。このシート状繊維束集合体を収集して集積物を得る。
【0014】
・散布工程:
散布工程は、集積物製造工程により得られた集積物から繊維束集合体を引き出して、繊維束集合体の長手方向の間隔を空けた裁断により、裁断された繊維束を得て、第1の樹脂を含む第1樹脂シート上に複数の裁断された繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する工程である。
集積物から引き出された繊維束集合体は、長手方向の所定の間隔を空けて、幅方向に連続的に裁断される。これにより得られる裁断された繊維束は、第1の樹脂を含む第1樹脂シート上に散布され、第1樹脂シート状にシート状繊維束群が形成される。
【0015】
・貼合含浸工程:
貼合含浸工程は、散布工程により得られたシート状繊維束群上に、第2の樹脂を含む第2樹脂シートを積層して加圧し、前記シート状繊維束群に、第1樹脂シートに含まれる第1の樹脂と第2樹脂シートに含まれる第2の樹脂を含浸させて繊維強化樹脂成形材料を得る工程である。
シート状繊維束群上に第2樹脂シートが貼り合わされ、第1樹脂シート、シート状繊維束群、第2樹脂シートがこの順で積層された積層体が加圧されることにより、シート状繊維束群に樹脂が含浸され、繊維強化樹脂成形材料が得られる。
【0016】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、集積物製造工程を有することを特徴とする。
即ち、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、複数の連続する繊維束を幅方向に並列させ拡幅して得られたシート状の繊維束集合体を、一旦収集して集積物を得て(集積物製造工程)、得られた集積物から繊維束集合体を引き出して使用することを特徴とする。
【0017】
集積物が収集される集積物製造工程を有することにより、集積物製造工程の工程速度と、散布工程及び貼合含浸工程の工程速度を別々に制御することができる。そのため、繊維束の開繊操作が律速工程となることによる、散布工程及び貼合含浸工程の工程速度の低下を抑制することができる。
従って、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法によれば、高い生産性で繊維強化樹脂成形材料を製造することが可能となる。
【0018】
以下、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法、及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置について、いくつかの具体的な実施形態に基づいて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこれらの実施形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することが可能である。
なお、以下の説明においては、適宜XYZ直交座標系を設定し、必要に応じてこのXYZ直交座標系を参照しつつ、各部材の位置関係について説明する。
【0019】
[第1実施形態]
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法、及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置の一例として、図1及び図2を参照して説明する。
【0020】
(繊維強化樹脂成形材料の製造装置)
本実施形態の繊維強化樹脂成形材料の製造装置100(以下、単に「製造装置100」とも言う。)は、第1製造装置1と第2製造装置2とを備える。
第1製造装置1は、ボビンB1から引き出された複数の長尺の、即ち連続する繊維束を幅方向に配置させる配置部に対応する開繊分繊部10を備える。
開繊分繊部10は、連続する繊維束f1を幅方向(Y軸方向)に開繊する開繊部50と、開繊された繊維束f2を分繊された繊維束f3に分繊する分繊部52と、分繊された繊維束f3を収集する収集部54とを備えている。
即ち、本実施形態においては、分繊された繊維束f3が繊維束集合体として収集部に収集されて、集積物を構成する。
【0021】
開繊部50は、X軸方向に間隔を空けて並んで設けられた複数の開繊バー17を備えている。
複数の開繊バー17は、複数の連続する繊維束f1が各開繊バー17の上下を順にジグザグに通過する際に、各開繊バー17による加熱、擦過、揺動などの手段により連続する繊維束f1が幅方向に拡幅されるようになっている。連続する繊維束f1が開繊されることで、開繊された、即ち扁平な連続する繊維束f2が得られる。
【0022】
分繊部52は、複数の回転刃18と、複数のゴデットロール19とを備えている。
複数の回転刃18は、開繊された繊維束f2の幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各回転刃18には、複数の刃物18aが周方向に連なって並んで設けられている。回転刃18を回転させながら開繊された繊維束f2を通過させることで、開繊された繊維束f2に複数の刃物18aが間欠的に突き刺さり、開繊された繊維束f2が幅方向に分割されて分繊された繊維束f3となる。但し、分繊された繊維束f3は、完全に分繊された状態とはなっておらず、部分的に未分繊の状態(結合した状態)の繊維束集合体となっており、連続する繊維束が長手方向において所定の間隔で断続的に分繊された状態となっている。
複数のゴデットロール19は、分繊された繊維束f3を収集部54へと案内するものである。
【0023】
収集部54は、シート状の繊維束集合体である分繊された繊維束f3をボビンB2に巻き取り、集積物として収集することができるようになっている。
【0024】
第2製造装置2は、第1のキャリアシート供給部11と、第1の搬送部20と、第1の塗工部12と、裁断機13と、第2のキャリアシート供給部14と、第2の搬送部28と、第2の塗工部15と、含浸部16と、を備えている。
【0025】
第1のキャリアシート供給部11は、第1の原反ロールR1から引き出された長尺の、即ち連続する第1のキャリアシートC1を第1の搬送部20へと供給する。第1の搬送部20は、一対のプーリ21a、21bの間に無端ベルト22を掛け合わせたコンベア23を備えている。コンベア23では、一対のプーリ21a、21bを同一方向に回転させることによって無端ベルト22を周回させ、無端ベルト22の面上において第1のキャリアシートC1をX軸方向の右側に向けて搬送する。
【0026】
第1の塗工部12は、第1の搬送部20におけるプーリ21a側の直上に位置しており、第1の樹脂である熱硬化性樹脂を含むペーストPを供給するコータ24を備えている。第1のキャリアシートC1がコータ24を通過することで、第1のキャリアシートC1の面上にペーストPが所定の厚み(0.05mm~0.8mm、好ましくは0.1mm~0.7mm、より好ましくは0.15mm~0.6mm)で塗工され、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1が形成されるようになっている。第1樹脂シートS1は、第1のキャリアシートC1の搬送に伴って走行する。
【0027】
裁断機13は、第1の塗工部12よりも搬送方向の後段において、第1のキャリアシートC1の上方に位置している。裁断機13の前段には、ボビンB2に巻き取って収集した集積物から引き出した分繊された繊維束f3を裁断機13へと案内するガイドロール38が設けられている。
集積物は、Y方向において複数の集積物を設置し、それぞれの集積物からそれぞれ繊維束集合体(分繊された繊維束f3)を引き出して裁断機13へと案内してもよい。この場合には、それぞれの集積物を同一のロールに設置して引き出すよりも、それぞれ個別のロールに設置して引き出すことが好ましい。この例では、Y方向において、分繊された繊維束f3を収集した複数のボビンB2を設置する場合、それらボビンB2を個別のロールにそれぞれ設置して分繊された繊維束f3を引き出すことが好ましい。これにより、それぞれの集積物における繊維束の長さが異なっていても、それぞれの個別ロールにおいて交換作業等を容易に行うことができる。
【0028】
裁断機13は、一旦ボビンB2に巻き取って収集した集積物から引き出した分繊された繊維束f3を、繊維束集合体(分繊された繊維束f3)の長手方向の間隔を空けた裁断を行うことにより、所定の長さに連続的に裁断し、裁断された繊維束を製造するものであり、ガイドロール25と、ピンチロール26と、カッターロール27とを備えている。ガイドロール25は、供給された分繊された繊維束f3を回転しながら下方に向けて案内する。ピンチロール26は、ガイドロール25との間で分繊された繊維束f3を挟み込みながら、ガイドロール25とは逆向きに回転する。これにより、ボビンB2に巻き取られた集積物から分繊された繊維束f3が引き出される。カッターロール27は、回転しながら分繊された繊維束f3を所定の長さとなるように、繊維束集合体(分繊された繊維束f3)の長手方向の間隔を空けて裁断する。裁断機13により所定の長さに裁断された繊維束f4は落下して、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1の上に散布され、第1樹脂シート上にシート状繊維束群Fが形成される。
【0029】
第2のキャリアシート供給部14は、第2の原反ロールR2から引き出された長尺の、即ち連続する第2のキャリアシートC2を第2の搬送部28へと供給する。第2の搬送部28は、コンベア23により搬送される第1のキャリアシートC1の上方に位置しており、複数のガイドロール29を備えている。第2の搬送部28は、第2のキャリアシート供給部14から供給された第2のキャリアシートC2を、第1のキャリアシートC1とは反対方向(X軸方向の左側)に搬送した後、搬送方向を複数のガイドロール29によって第1のキャリアシートC1と同じ方向に反転させる。
【0030】
第2の塗工部15は、第1のキャリアシートC1とは反対方向に搬送されている第2のキャリアシートC2の直上に位置し、第2の樹脂である熱硬化性樹脂を含むペーストPを供給するコータ30を備えている。第2のキャリアシートC2がコータ30を通過することで、第2のキャリアシートC2の面上にペーストPが所定の厚み(0.05mm~0.8mm、好ましくは0.1mm~0.7mm、より好ましくは0.15mm~0.6mm)で塗工され、第2の樹脂を含む第2樹脂シートS2が形成されるようになっている。第2樹脂シートS2は、第2のキャリアシートC2の搬送に伴って走行する。
なお、第1の樹脂と第2の樹脂は、同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0031】
含浸部16は、第1の搬送部20における裁断機13よりも後段に位置し、貼合機構31と、加圧機構32とを備えており、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1上に複数の裁断された繊維束f4をシート状に散付して形成されたシート状繊維束群上に、第2の樹脂を含む第2樹脂シートS2を積層して加圧し、シート状繊維束群に第1の樹脂及び第2の樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料とするものである。
【0032】
貼合機構31は、コンベア23のプーリ21bの上方に位置し、複数の貼合ロール33を備えている。複数の貼合ロール33は、第2樹脂シートS2が形成された第2のキャリアシートC2の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。また、複数の貼合ロール33は、第1のキャリアシートC1に対して第2のキャリアシートC2が徐々に接近するように配置されている。
【0033】
貼合機構31では、第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2とが、その間に第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を挟み込んだ状態で重ね合わされ、貼り合わせられながら搬送される。これにより、第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2をこの順で下から積層した積層体が形成される。ここで、第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を挟み込んだ状態で第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2が貼合されたものを貼合シートS3と言う。
【0034】
加圧機構32は、貼合機構31の後段に位置し、一対のプーリ34a、34bの間に無端ベルト35aを掛け合わせた下側コンベア36Aと、一対のプーリ34c、34dの間に無端ベルト35bを掛け合わせた上側コンベア36Bとを備えている。下側コンベア36Aと上側コンベア36Bとは、互いの無端ベルト35a、35bを突き合わせた状態で、互いに対向して配置されている。
【0035】
加圧機構32では、下側コンベア36Aの一対のプーリ34a、34bが同一方向に回転されることによって無端ベルト35aが周回される。また、加圧機構32では、上側コンベア36Bの一対のプーリ34c、34dが同一方向に回転されることによって無端ベルト35bが無端ベルト35aと同じ速さで逆向きに周回される。これにより、無端ベルト35a、35bの間に挟み込まれた貼合シートS3がX軸方向の右側に搬送される。
【0036】
加圧機構32には、さらに複数の下側ロール37aと、複数の上側ロール37bとが設けられている。複数の下側ロール37aは、無端ベルト35aの突合せ部分の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。同様に、複数の上側ロール37bは、無端ベルト35bの突き合わせ部分の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。また、複数の下側ロール37aと複数の上側ロール37bとは、貼合シートS3の搬送方向に沿って互い違いに並んで配置されている。
【0037】
加圧機構32では、無端ベルト35a、35bの間を貼合シートS3が通過する間に、第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2との間に挟み込まれた第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を複数の下側ロール37a及び複数の上側ロール37bにより加圧する。このとき、第1樹脂シートS1に含まれる第1の樹脂及び第2樹脂シートS2に含まれる第2の樹脂がシート状繊維束群Fに含浸される。これにより、繊維強化樹脂成形材料の原反Rが得られる。原反Rは、所定の長さに切断して成形に使用することができる。なお、第1のキャリアシートC1及び第2のキャリアシートC2は、繊維強化樹脂成形材料の成形前に繊維強化樹脂成形材料から剥離される。
【0038】
(繊維強化樹脂成形材料の製造方法)
以下、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例として、製造装置100を用いる場合について説明する。
【0039】
<集積物製造工程>
第1製造装置1において、ボビンB1から連続する繊維束f1を引き出し、開繊部50において、連続する繊維束f1を各開繊バー17の上下に順にジグザグに通過させ、開繊により幅方向に拡幅して扁平な状態の連続する、開繊された繊維束f2とする。
分繊部52において複数の回転刃18を回転させながら開繊された繊維束f2を通過させ、複数の刃物18aを間欠的に突き刺し、開繊された繊維束f2を幅方向に分割して複数の連続する分繊された繊維束f3とする。但し、この分繊された繊維束f3は、完全に分繊された状態とはなっておらず、部分的に未分繊の状態(結合した状態)の繊維束集合体となっており、連続する繊維束の長手方向における所定の間隔で断続的に分繊された状態となっている。次いで、分繊された繊維束f3を複数のゴデットロール19によりボビンB2へと案内し、巻き取って収集する。
【0040】
上記のように繊維束集合体を部分的に未分繊の状態とすることで、一部のフィラメントに斜行や蛇行が存在する繊維束を連続する繊維束f1として使用した場合でも、分繊により、分繊された繊維束f3内のフィラメントの切断を低減させ、この切断されたフィラメントに起因する、分繊された繊維束f3のロール等への巻き付きを抑制することができる。
【0041】
連続する繊維束の長手方向における断続的な分繊を行う場合には、下式(1)の条件を満たすように、連続する繊維束の長手方向における断続的な分繊を行い、連続する繊維束の長手方向の間隔を空けた裁断により、裁断された繊維束f4を得ることが好ましい。
1≦a/L ・・・(1)
但し、前記式(1)中、aは連続する繊維束(分繊された繊維束f3)における分繊部分の長さであり、Lは繊維束の長手方向における裁断される間隔、即ち、連続する繊維束(分繊された繊維束f3)が裁断される間隔である。
これは、a/Lの値を1以上とすることによって、それぞれの裁断された繊維束f4中の分割されていない未分繊部分が低減するために、繊維強化樹脂成形材料の製造時における強化繊維の分散性が良好となり、繊維強化樹脂成形材料の品質が良好となる傾向にあるからである。
a/Lの値は、1.05以上が好ましく、1.1以上がより好ましい。
【0042】
また、連続する繊維束の長手方向における断続的な分繊を行う場合には、下式(2)の条件を満たすように繊維束の分繊及び裁断を行うことが好ましい。
a/L≦10 ・・・(2)
但し、前記式(2)中の記号は、前記式(1)中の記号と同じ意味である。
これは、a/Lの値を10以下とすることによって、分繊される対象である連続する繊維束f1内のフィラメントに斜行や蛇行が存在する場合であっても、裁断された繊維束f4の毛羽発生や、毛羽による工程のトラブルの発生を抑制しやすい傾向にあるからである。
a/Lの値は、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0043】
従って、a/Lの値は、1~10であることが好ましく、1.05~8がより好ましく、1.1~5がさらに好ましい。
【0044】
また、別の態様として、連続する繊維束の長手方向における断続的な分繊を行う場合には、下式(3)の条件を満たすように、連続する繊維束の長手方向における断続的な分繊を行い、連続する繊維束の長手方向の間隔を空けた裁断により裁断された繊維束f4を得ることが好ましい。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
但し、前記式(3)中、aは連続する繊維束(分繊された繊維束f3)における分繊部分の長さであり、bは連続する繊維束(分繊された繊維束f3)における断続的な分繊部分間の長さ、即ち連続する繊維束における断続的な分繊部分間に存在する未分繊部分の長さである。
【0045】
これは、a/(a+b)の値を0.9以上とすることによって、裁断された各繊維束中の分割されていない未分繊部分が低減するために、繊維強化樹脂成形材料の製造時における強化繊維の分散性が良好となり、繊維強化樹脂成形材料の品質が良好となる傾向にあるからである。
a/(a+b)の値は、0.92以上が好ましい。
【0046】
また、a/(a+b)の値を1未満とすることで、断続的な分繊が可能となり、分繊された繊維束f3のロール等への巻き付きを抑制することができる。
a/(a+b)の値は、0.99以下が好ましく、0.98以下がより好ましい。
【0047】
従って、a/(a+b)の値は、0.9以上1未満が好ましく、0.9以上0.99以下がより好ましく、0.92以上0.98以下がさらに好ましい。
【0048】
連続する分繊された繊維束f3をボビンB2に巻き取る際には、分繊された繊維束f3に紙やフィルムを重ねて巻き取ってもよい。これにより、ボビンB2に巻き取られる分繊された繊維束f3の間には紙やフィルムが挿入されるため、巻き取られる分繊された繊維束f3の繊維同士が絡まって引き出しにくくなることが抑制されやすくなる。
【0049】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法に用いられる連続する繊維束としては、炭素繊維束を用いることが好ましい。なお、連続する繊維束としては、ガラス繊維束を用いてもよい。
また、連続する繊維束としては、例えば、繊維数が3,000本以上のフィラメントからなる繊維束を用いることができるが、フィラメント数が12,000本以上の繊維束を好適に使用することができる。また、連続する繊維束として、ラージトウと呼ばれる48,000本以上のフィラメントからなる繊維束も使用することもできる。
【0050】
集積物製造工程において、集積物として収集される繊維束集合体の平均厚さは、0.01mm~0.3mmであることが好ましく、0.02mm~0.2mmがより好ましく、0.025mm~0.15mmがさらに好ましい。
繊維束集合体の平均厚さが前記下限値以上であれば、繊維束集合体を安定的に開繊することが可能であり、前記上限値以下であれば、繊維強化樹脂成形材料が高強度な物性となる。
なお、繊維束集合体の平均厚さは、マイクロゲージによって測定される。
【0051】
集積物製造工程において、集積物として収集される繊維束集合体の幅は、0.5mm~50mmであることが好ましく、1mm~40mmがより好ましく、2mm~25mmがさらに好ましい。
繊維束集合体の幅が前記下限値以上であれば、繊維強化樹脂成形材料の流動性が良好となり、前記上限値以下であれば、繊維強化樹脂成形材料が高強度な物性となる。
【0052】
<散布工程>
第2製造装置2において、第1のキャリアシート供給部11により、第1の原反ロールR1から長尺の、即ち連続する第1のキャリアシートC1を引き出して第1の搬送部20へと供給し、第1の塗工部12により、第1の樹脂を含むペーストPを、所定の厚みで塗工して、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1を形成する。第1の搬送部20によって第1のキャリアシートC1を搬送することにより、第1のキャリアシートC1上の第1樹脂シートS1を走行させる。
【0053】
ペーストPに含まれる第1の樹脂である熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。ペーストPには、炭酸カルシウムなどの充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤などを配合してもよい。
【0054】
また、ボビンB2から連続する分繊された繊維束f3を引き出し、裁断機13において所定の長さとなるように、その長手方向の間隔を空けた裁断を行い、裁断された繊維束f4を第1樹脂シートS1の上に落下させて散布する。これにより、走行する第1樹脂シートS1上に、複数の裁断された繊維束f4が、開繊された状態で分繊してランダムな繊維配向で散布されたシート状繊維束群Fが連続的に形成される。
【0055】
このように、裁断された繊維束f4は、連続する繊維束(分繊された繊維束f3)が、その長手方向の間隔を空けて裁断されることにより得られる。
裁断された繊維束の平均長さは、5~100mmが好ましく、10~75mmがより好ましく、20~60mmがさらに好ましい。
裁断された繊維束の平均長さが前記下限値以上であれば、引張強度、弾性率などの物性に優れた繊維強化樹脂材料成形体が得られ、前記上限値以下であれば、成形時に繊維強化樹脂成形材料がより流動しやすくなるため、成形が容易になる。
【0056】
<貼合含浸工程>
第2のキャリアシート供給部14により、第2の原反ロールR2から長尺の、即ち連続する第2のキャリアシートC2を引き出して第2の搬送部28へと供給する。第2の塗工部15により、第2のキャリアシートC2の面上に、第2の樹脂を含むペーストPを所定の厚みで塗工し、第2の樹脂を含む第2樹脂シートS2を形成する。
【0057】
ペーストPに含まれる第2の樹脂である熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。ペーストPには、炭酸カルシウムなどの充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤などを配合してもよい。
【0058】
第2のキャリアシートC2を搬送することで第2樹脂シートS2を走行させ、含浸部16において、貼合機構31によりシート状繊維束群F上に第2樹脂シートS2を積層し、貼り合わせる。そして、加圧機構32により第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を含む積層体を加圧し、第1樹脂シートS1に含まれる第1の樹脂及び第2樹脂シートS2に含まれる第2の樹脂を、シート状繊維束群Fに含浸させる。これにより、繊維強化樹脂成形材料が第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された、繊維強化樹脂成形材料の原反Rが得られる。
【0059】
本実施形態では、集積物製造工程において、連続する繊維束f1を開繊し、分繊された繊維束f3(繊維束集合体)を一旦収集して集積物を得た後に、散布工程において集積物から繊維束集合体を引き出して使用する。そのため、散布工程及び貼合含浸工程の工程速度を、集積物製造工程の工程速度と関係なく制御することができ、繊維束の開繊操作が律速となって散布工程及び貼合含浸工程の工程速度が低下することを抑制できる。
また、上述のように、扁平な状態に開繊・分繊された繊維束f3が裁断されて得られる裁断された繊維束f4が、ランダムな繊維配向で連続的に第1樹脂シートS1上に散布されることにより、樹脂の偏在部分が少なく強度物性に優れた繊維強化樹脂成形材料を得ることができる。
【0060】
なお、集積物製造工程において開繊された繊維束の分繊を行う場合、前記製造装置100を用いる態様のような、繊維束を分繊した後に、分繊された繊維束をゴデットロールでボビンへと案内する態様には限定されない。
例えば、開繊された繊維束をゴデットロールで案内して、その後に分繊を行い、分繊された繊維束を得てもよい。開繊された繊維束(繊維束集合体)をゴデットロールで案内し、分繊により繊維束集合体を幅方向に分割して収集を行う態様は、開繊された繊維束を分繊して、分繊された繊維束をゴデットロールで案内する態様に比べて、分繊時に繊維束に毛羽立ちが生じてもロールへの巻き付きによる不具合が生じにくい点で有利である。また、分繊された繊維束同士がゴデットロールで案内される際に再度密着することを抑制しやすい。
ゴデットロールについては、鏡面や梨地の表面状態となったロールが好ましい。また、耐久性の観点からハードクロムメッキを被覆したものが好ましい。
【0061】
具体的には、例えば、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、製造装置100において第1製造装置1を図4に例示した第1製造装置1Aに変更した製造装置を用いる製造方法であってもよい。
図4における図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
第1製造装置1Aは、分繊部52の代わりに分繊部52Aを備えている以外は第1製造装置1と同じである。分繊部52Aは、複数の回転刃18が複数のゴデットロール19の後段に配置されている以外は分繊部52と同じである。
このような第1製造装置1Aを用いることで、開繊された繊維束f2をゴデットロール19によって回転刃18へと案内し、開繊された繊維束f2を分繊により幅方向に分割して、分繊された繊維束f3とすることができる。
【0062】
[第2実施形態]
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法においては、集積物製造工程で得た複数の集積物からそれぞれ繊維束集合体を引き出し、引き出されたそれぞれの繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けた裁断により裁断された繊維束を得ることが好ましい。
【0063】
(繊維強化樹脂成形材料の製造装置)
集積物製造工程で得た複数の集積物からそれぞれ繊維束集合体を引き出し、引き出されたそれぞれの繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けた裁断により裁断された繊維束を得る、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法としては、例えば、図1及び図3に例示した繊維強化樹脂成形材料の製造装置200(以下、単に「製造装置200」とも言う。)を用いる方法が挙げられる。図3における図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0064】
製造装置200は、第1製造装置1と第2製造装置3とを備える。即ち、製造装置200は、第2製造装置2の代わりに第2製造装置3を備える以外は、製造装置100と同じである。
【0065】
第2製造装置3は、図3に示すように、複数のボビンB2に収集した集積物から複数の分繊された繊維束f3を引き出し、引き出されたそれぞれの分繊された繊維束f3を重ねて、裁断機13へと供給して、それぞれの繊維束集合体が同時に裁断されるようになっている以外は、第2製造装置2と同じである。
【0066】
(繊維強化樹脂成形材料の製造方法)
以下、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例として、製造装置200を用いる場合について説明する。
【0067】
<集積物製造収工程>
第2実施形態における集積物製造工程は、第1実施形態の集積物製造工程と同様に行える。
即ち、本実施形態においては、分繊された繊維束f3が繊維束集合体として収集部に収集されて、集積物を構成する。
【0068】
<散布工程>
第2製造装置3において、第1実施形態と同様に、第1のキャリアシート供給部11により、第1の原反ロールR1から長尺の、即ち連続する第1のキャリアシートC1を引き出して第1の搬送部20へと供給し、第1の塗工部12により、第1の樹脂を含むペーストPを、所定の厚みで塗工して、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1を形成する。第1の搬送部20によって第1のキャリアシートC1を搬送することにより、第1のキャリアシートC1上の第1樹脂シートS1を走行させる。
【0069】
また、複数のボビンB2から連続する分繊された繊維束f3を複数引き出し、それらを重ねて裁断機13において所定の長さとなるように、その長手方向の間隔を空けた裁断を行い、裁断された繊維束f4を第1樹脂シートS1の上に落下させて散布する。これにより、走行する第1樹脂シートS1の上に複数の裁断された繊維束f4が、開繊された状態で分繊してランダムな繊維配向で散布されたシート状繊維束群Fが連続的に形成される。
【0070】
本実施形態のように、散布工程において複数の集積物からそれぞれ引き出した複数の繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けて裁断して裁断された繊維束を得る場合、複数の繊維束集合体を幅方向が一致するように重ねて裁断する態様に比べて、複数の繊維束集合体を幅方向がずれるように重ねて裁断することが好ましい。
複数の繊維束集合体を幅方向がずれるように重ねて裁断することにより、製造速度を上げることができ、得られる繊維強化樹脂成形材料に目付ムラが生じることを抑制しやすい。
【0071】
このような効果が得られる要因は、以下のように考えられる。
即ち、同じ装置によって分繊された複数の繊維束集合体においては、その幅方向における分割位置が同じ位置となっている。そのため、それら複数の繊維束を幅方向が一致するように重ねて裁断すると、重ねられた繊維束の積層体において幅方向の分割位置が一致するため、得られる繊維強化樹脂成形材料において目付ムラが生じやすくなる。これに対して、複数の繊維束を幅方向がずれるように重ねて裁断する態様では、重ねられた繊維束の積層体における幅方向の分割位置もずれるため、得られる繊維強化樹脂成形材料において目付ムラが生じにくくなる。
【0072】
<貼合含浸工程>
第1実施形態の貼合含浸工程と同様にして、繊維強化樹脂成形材料が第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された原反Rを得る。
【0073】
本実施形態においても、集積物製造工程において、連続する繊維束f1を開繊し、分繊された繊維束f3を一旦収集して集積物を得た後に、散布工程において集積物から繊維束集合体を引き出して使用する。そのため、散布工程及び貼合含浸工程の工程速度を、集積物製造工程の工程速度と関係なく制御することができ、繊維束の開繊操作が律速となって散布工程及び貼合含浸工程の工程速度が低下することを抑制できる。
また、上述のように、扁平な状態に開繊・分繊された繊維束f3が裁断されて得られる裁断された繊維束f4が、ランダムな繊維配向で連続的に第1樹脂シートS1上に散布されることにより、樹脂の偏在部分が少なく強度物性に優れた繊維強化樹脂成形材料を得ることができるとともに、目付ムラが少なく物性のバラツキの少ない繊維強化樹脂成形材料が得られる。
【0074】
また、本実施形態においても、開繊された繊維束をゴデットロールで案内して、その後に分繊を行い、分繊された繊維束を得てもよい。
具体的には、例えば、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、製造装置200において第1製造装置1を図4に例示した第1製造装置1Aに変更した製造装置を用いる製造方法であってもよい。
これにより、分繊時に繊維束に毛羽立ちが生じてもロールへの巻き付きによる不具合が生じにくくなる。
【0075】
[第3実施形態]
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法においては、集積物製造工程において開繊された繊維束を収集し、散布工程において、収集した開繊された繊維束(集積物)を引き出し、分繊して、裁断・散布してもよい。
第1実施形態及び第2実施形態においては、集積物製造工程において、開繊された繊維束を分繊し、分繊された繊維束を収集したが、散布工程において分繊を行ってもよい。
即ち、本実施形態においては、開繊された繊維束f2が繊維束集合体として収集部に収集されて、集積物を構成する。
【0076】
(繊維強化樹脂成形材料の製造装置)
集積物製造工程において開繊された繊維束を収集し、散布工程において、収集した開繊された繊維束(集積物)を引き出し、分繊して、裁断・散布する、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法としては、例えば、図5及び図6に例示した繊維強化樹脂成形材料の製造装置300(以下、単に「製造装置300」とも言う。)を用いる方法が挙げられる。図5及び図6における図1及び図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0077】
製造装置300は、第1製造装置4と第2製造装置5とを備える。
第1製造装置4は、開繊部50と、ガイドロール40と、収集部54とを備えている。第1製造装置4は、分繊部52の代わりにガイドロール40を備える以外は第1製造装置1と同じである。ボビンB1から引き出された複数の長尺の、即ち連続する繊維束f1が開繊部50において開繊された繊維束f2(繊維束集合体)は、ガイドロール40により収集部54に案内されてボビンB2に巻き取られるようになっている。
【0078】
第2製造装置5は、分繊部52と、第1のキャリアシート供給部11と、第1の搬送部20と、第1の塗工部12と、裁断機13と、第2のキャリアシート供給部14と、第2の搬送部28と、第2の塗工部15と、含浸部16とを備えている。第2製造装置5は、分繊部52をさらに備える以外は、第2製造装置2と同じである。
分繊部52は裁断機13の前段に設けられている。ボビンB2から引き出された開繊された繊維束f2(繊維束集合体)がガイドロール41に案内されて分繊部52に供給され、分繊部52において分繊された繊維束f3が裁断機13に供給されるようになっている。
【0079】
(繊維強化樹脂成形材料の製造方法)
以下、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例として、製造装置300を用いる場合について説明する。
【0080】
<集積物製造工程>
第1製造装置4において、ボビンB1から連続する繊維束f1を引き出し、開繊部50において、連続する繊維束f1を各開繊バー17の上下に順にジグザグに通過させ、開繊により幅方向に拡幅して扁平な状態の、開繊された繊維束f2とする。
次いで、開繊された繊維束f2をガイドロール40により収集部54へと案内し、ボビンB2に巻き取って集積物として収集する。ガイドロール40は、複数使用してもよい。
【0081】
連続する開繊された繊維束f2をボビンB2に巻き取る際には、開繊された繊維束f2に紙やフィルムを重ねて巻き取ってもよい。これにより、ボビンB2に巻き取られる開繊された繊維束f2の間には紙やフィルムが挿入されるため、巻き取られる開繊された繊維束f2の繊維同士が絡まって引き出しにくくなることが抑制されやすくなる。
【0082】
<散布工程>
第2製造装置5において、第1のキャリアシート供給部11により、第1の原反ロールR1から長尺の、即ち連続する第1のキャリアシートC1を引き出して第1の搬送部20へと供給し、第1の塗工部12により、第1の樹脂を含むペーストPを、所定の厚みで塗工して、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1を形成する。第1の搬送部20によって第1のキャリアシートC1を搬送することにより、第1のキャリアシートC1上の第1樹脂シートS1を走行させる。
また、ボビンB2から連続する開繊された繊維束f2を引き出し、分繊部52において複数の回転刃18を回転させながら開繊された繊維束f2を通過させ、複数の刃物18aを間欠的に突き刺し、開繊された繊維束f2を幅方向に分割して連続する分繊された繊維束f3とする。次いで、分繊された繊維束f3を複数のゴデットロール19により裁断機13へと供給する。
【0083】
裁断機13においては、連続する分繊された繊維束f3を所定の長さとなるように、その長手方向の間隔を空けた裁断を行い、裁断された繊維束f4を第1樹脂シートS1の上に落下させて散布する。これにより、走行する第1樹脂シートS1上に、複数の裁断された繊維束f4が、開繊された状態で分繊してランダムな繊維配向で散布されたシート状繊維束群Fが連続的に形成される。
【0084】
<貼合含浸工程>
第1実施形態の貼合含浸工程と同様にして、繊維強化樹脂成形材料が第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された原反Rを得る。
【0085】
本実施形態においては、集積物製造工程において連続する繊維束f1を開繊し、開繊された繊維束f2(繊維束集合体)を一旦収集した後に、散布工程において開繊された繊維束f2(繊維束集合体)を引き出して使用する。そのため、散布工程及び貼合含浸工程の工程速度を、集積物製造工程の工程速度と関係なく制御することができ、繊維束の開繊操作が律速となって散布工程及び貼合含浸工程の工程速度が低下することを抑制できる。
また、上述のように、扁平な状態に開繊・分繊された繊維束f3が裁断されて得られる裁断された繊維束f4が、ランダムな繊維配向で連続的に第1樹脂シートS1上に散布されることにより、樹脂の偏在部分が少なく強度物性に優れた繊維強化樹脂成形材料を得ることができる。
【0086】
なお、散布工程において開繊された繊維束の分繊を行う場合、前記製造装置300を用いる態様のような、繊維束を分繊した後に、分繊された繊維束をゴデットロールで裁断機へと案内する態様には限定されない。
例えば、開繊された繊維束をゴデットロールで案内して、その後に分繊を行い、分繊された繊維束を得てもよい。
これにより、分繊時に繊維束に毛羽立ちが生じてもロールへの巻き付きによる不具合が生じにくくなる。また、分繊された繊維束同士がゴデットロールで案内される際に再度密着することを抑制しやすい。
【0087】
具体的には、例えば、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、図8に例示した、分繊部52を分繊部52Aに変更した第2製造装置5Aを備える以外は製造装置300と同じ態様の製造装置300Aを用いる方法であってもよい。
図8における図6と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
分繊部52Aは、複数の回転刃18が複数のゴデットロール19の後段に配置されている以外は分繊部52と同じである。
このような製造装置300Aを用いることで、収集された開繊された繊維束f2を引き出し、ゴデットロールによって回転刃18へと案内し、開繊された繊維束f2を分繊により幅方向に分割して、分繊された繊維束f3とすることができる。
【0088】
[第4実施形態]
集積物製造工程において開繊された繊維束を収集し、散布工程において収集した開繊された繊維束(集積物)を引き出し、分繊して、裁断・散布する方法においても、集積物製造工程で得た複数の集積物からそれぞれ繊維束集合体を引き出し、引き出されたそれぞれの繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けた裁断により裁断された繊維束を得ることが好ましい。
【0089】
(繊維強化樹脂成形材料の製造装置)
集積物製造工程において開繊された繊維束を収集し、散布工程において収集した開繊された繊維束(集積物)を引き出し、分繊して、裁断・散布する方法において、集積物製造工程で得た複数の集積物からそれぞれ繊維束集合体を引き出し、引き出されたそれぞれの繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けた裁断により裁断された繊維束を得る、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法としては、例えば、図5及び図7に例示した繊維強化樹脂成形材料の製造装置400(以下、単に「製造装置400」とも言う。)を用いる方法が挙げられる。図7における図6と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0090】
製造装置400は、第1製造装置4と第2製造装置6とを備える。即ち、製造装置400は、第2製造装置5の代わりに第2製造装置6を備える以外は、製造装置300と同じである。
【0091】
第2製造装置6は、図7に示すように、複数のボビンB2に収集した集積物から複数の開繊された繊維束f2を引き出し、引き出されたそれぞれの開繊された繊維束f2を重ねて、裁断機13へと供給して、それぞれの繊維束集合体が同時に切断されるようになっている以外は、第2製造装置5と同じである。
【0092】
(繊維強化樹脂成形材料の製造方法)
以下、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例として、製造装置400を用いる場合について説明する。
【0093】
<集積物製造工程>
第4実施形態における集積物製造工程は、第3実施形態の集積物製造工程と同様に行える。
即ち、本実施形態においては、開繊された繊維束f2が繊維束集合体として収集部に収集されて、集積物を構成する。
【0094】
<散布工程>
第2製造装置6において、第3実施形態と同様に、第1のキャリアシート供給部11により、第1の原反ロールR1から長尺の、即ち連続する第1のキャリアシートC1を引き出して第1の搬送部20へと供給し、第1の塗工部12により、第1の樹脂を含むペーストPを、所定の厚みで塗工して、第1の樹脂を含む第1樹脂シートS1を形成する。第1の搬送部20によって第1のキャリアシートC1を搬送することにより、第1のキャリアシートC1上の第1樹脂シートS1を走行させる。
【0095】
また、複数のボビンB2から連続する開繊された繊維束f2を複数引き出し、分繊部52において分繊し、それらを重ねて裁断機13において所定の長さとなるように、その長手方向の間隔を空けた裁断を行い、裁断された繊維束f4を第1樹脂シートS1の上に落下させて散布する。これにより、走行する第1樹脂シートS1の上に複数の裁断された繊維束f4が、開繊された状態で分繊してランダムな繊維配向で散布されたシート状繊維束群Fが連続的に形成される。
【0096】
本実施形態においても、散布工程において複数の集積物からそれぞれ引き出した複数の繊維束集合体を重ねて、その長手方向の間隔を空けて裁断して裁断された繊維束を得る場合、複数の繊維束集合体を幅方向が一致するように重ねて裁断する態様に比べて、複数の繊維束集合体を幅方向がずれるように重ねて裁断することが好ましい。
複数の繊維束集合体を幅方向がずれるように重ねて裁断することにより、製造速度を上げることができ、得られる繊維強化樹脂成形材料に目付ムラが生じることを抑制しやすい。
【0097】
<貼合含浸工程>
第1実施形態の貼合含浸工程と同様にして、繊維強化樹脂成形材料が第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された原反Rを得る。
【0098】
本実施形態においても、集積物製造工程において、連続する繊維束f1を開繊し、開繊された繊維束f2を一旦収集して集積物を得た後に、散布工程において集積物から繊維束集合体を引き出して使用する。そのため、散布工程及び貼合含浸工程の工程速度を、集積物製造工程の工程速度と関係なく制御することができ、繊維束の開繊操作が律速となって散布工程及び貼合含浸工程の工程速度が低下することを抑制できる。
また、上述のように、扁平な状態に開繊・分繊された繊維束f3が裁断された得られる裁断された繊維束f4が、ランダムな繊維配向で連続的に第1樹脂シートS1上に散布されることにより、樹脂の偏在部分が少なく強度物性に優れた繊維強化樹脂成形材料を得ることができるとともに、目付ムラが少なく物性のバラツキの少ない繊維強化樹脂成形材料を得られる。
【0099】
また、本実施形態においても、開繊された繊維束をゴデットロールで案内して、その後に分繊を行い、分繊された繊維束を得てもよい。
具体的には、例えば、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、製造装置400において分繊部52を分繊部52Aに変更した製造装置を用いる製造方法としてもよい。
これにより、分繊時に繊維束に毛羽立ちが生じてもロールへの巻き付きによる不具合が生じにくくなる。
【0100】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法においては、装置構成がより簡便になる点から、第3実施形態及び第4実施形態のように集積物から引き出した開繊された繊維束に対して分繊を行う方法よりも、第1実施形態及び第2実施形態のように開繊後に分繊を行った分繊された繊維束を収集する方法の方が好ましい。
【0101】
以上説明したように、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法においては、繊維束を開繊した後に一旦収集するため、繊維束の開繊操作が律速となって散布工程及び貼合含浸工程の工程速度が低下することを抑制できる。
また、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法においては、低コストに高い生産性で繊維強化樹脂成形材料を製造することができ、また繊維束を扁平な状態に開繊・分繊された繊維束が裁断されて得られる裁断された繊維束が、ランダムな繊維配向で連続的に第1樹脂シート上に散布されることにより、樹脂の偏在部分が少なく強度物性に優れた繊維強化樹脂成形材料を得ることができる。
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法、及び繊維強化樹脂成形材料の製造装置は、特にラージトウと呼ばれるフィラメント本数の多い繊維束を用いた場合に有用である。
【0102】
なお、本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、前記した方法には限定されない。例えば、集積物製造工程において開繊された繊維束を収集する方法は、巻き取りには限定されず、振り込みなどの公知の収集方法を採用してもよい。
【実施例
【0103】
[実施例1]
連続する繊維束として炭素繊維束(商品名「TRW40 50L」、三菱レイヨン社製)を使用した。
熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂(製品名:ネオポール8051、日本ユピカ社製)100質量部に対して、硬化剤として、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンの75%溶液(製品名:パーヘキサC-75、日本油脂社製)0.5質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの74%溶液(製品名:カヤカルボンBIC-75、化薬アクゾ社製)0.5質量部とを添加し、内部離型剤として、リン酸エステル系誘導体組成物(製品名:MOLD WIZ INT-EQ-6、アクセルプラスチックリサーチラボラトリー社製)0.35質量部を添加し、増粘剤として、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名:コスモネートLL、三井化学社製)15.5質量部を添加し、安定剤として、1,4-ベンゾキノン(製品名:p-ベンゾキノン、和光純薬工業社製)0.02質量部を添加して、これらを十分に混合撹拌してペーストを得た。
【0104】
第1製造装置1にてボビンB1から引き出された複数の連続する繊維束を幅方向に配置させ開繊部50にて繊維束の幅を25mmまで開繊させ、分繊部52にて、a/(a+b)の値が0.98となるようにして、2分割となるように分繊して繊維束集合体として40m/minの速度で集積部にて収集された集積物を得た。
搬送している第1のキャリアシート上に前記ペーストを塗工して厚み0.45mmの第1樹脂シートを形成した。また、集積部で収集された集積物(開繊及び分繊を行った厚み0.1mm、幅12.5mmの炭素繊維束集合体)を裁断機で裁断し、a/Lの値が1.1となるようにして、平均繊維長が25.4mmのチョップド繊維束として落下させ、厚み1.3mmのシート状繊維束群を形成した。ライン速度は1.5m/分とした。
第1のキャリアシートの上方で、第1のキャリアシートと逆方向に搬送している第2のキャリアシート上に前記ペーストを塗工して、厚み0.45mmの第2樹脂シートを形成し、搬送方向を反転させて第2樹脂シートを前記シート状繊維束群の上に貼り合わせて積層した。さらに、第1樹脂シート、シート状繊維束群及び第2樹脂シートの積層体に対して含浸を行い、厚み2mmのシート状の繊維強化樹脂成形材料を得た。
【0105】
得られた繊維強化樹脂成形材料を1週間養生したものを250mm×250mmに切断し、端部に嵌合部を有するパネル成形用金型(300mm×300mm×2mm、表面クロムめっき仕上げ)に、繊維強化樹脂成形材料の製造装置での繊維強化樹脂成形材料の搬送方向(MD方向)を揃えて、2枚を金型中央に投入し繊維強化樹脂材料成形体(繊維含有率53wt%)を得た。
得られた成形体の引張強度は150Mpaと強度の高いものであった。
【0106】
[実施例2]
連続する繊維束として炭素繊維束(商品名「TR50S 15L」、三菱レイヨン社製)を使用した。
実施例1と同様の工程にて開繊部にて繊維束の幅を15mmまで開繊させ、分繊部にて、a/(a+b)の値が0.92となるようにして、2分割となるように分繊して繊維束集合体として40m/minの速度で集積部にて収集された集積物を得た。
【0107】
搬送している第1のキャリアシート上に実施例1で得た前記ペーストを塗工して厚み0.45mmの第1樹脂シートを形成した。また、集積部で収集された集積物(開繊及び分繊を行った厚み0.05mm、幅7.5mmの炭素繊維束集合体)を裁断機で裁断し、a/Lの値が5となるようにして、平均繊維長が25.4mmのチョップド繊維束として落下させ、厚み1.4mmのシート状繊維束群を形成した。ライン速度は1.5m/分とした。
実施例1と同様にして、第2樹脂シートをシート状繊維束群の上に貼り合わせて積層し、積層体に対して含浸を行い、厚み2.1mmのシート状の繊維強化樹脂成形材料を得た。
【0108】
実施例1と同様の条件にて、得られた繊維強化樹脂成形材料を1週間養生したものを用いて成形を行い、繊維強化樹脂材料成形体(繊維含有率57wt%)を得た。
得られた成形体の引張強度は240MPaと強度の高いものであった。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、4 第1製造装置
2、3、5、5A、6 第2製造装置
10 開繊分繊部
11 第1のキャリアシート供給部
12 第1の塗工部
13 裁断機
14 第2のキャリアシート供給部
15 第2の塗工部
16 含浸部
20 第1の搬送部
28 第2の搬送部
50 開繊部
52、52A 分繊部
54 収集部
100、200、300、300A、400 繊維強化樹脂成形材料の製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8