(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】アンチセンスオリゴ核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220628BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220628BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/712
A61K48/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2019501348
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2018006061
(87)【国際公開番号】W WO2018155450
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2017030489
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人日本医療研究開発機構革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業「毒性ゼロに向けた革新的核酸医薬プラットフォーム構築-デュアル修飾型人工核酸の創製・探索・評価-」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】小比賀 聡
(72)【発明者】
【氏名】脇 玲子
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徳幸
(72)【発明者】
【氏名】森廣 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】笠原 勇矢
(72)【発明者】
【氏名】三上 敦士
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0051389(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160280(US,A1)
【文献】特表平08-508493(JP,A)
【文献】国際公開第2014/121287(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/155451(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/106566(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/053722(WO,A1)
【文献】MUTSO M. et al.,PLOS ONE,2015年,10(6), e0128686, doi:10.1371/journal.pone.0128686
【文献】MERITS A.,New antisense inhibitors of hepatitis C virus.,J. Antivir. Antiretrovir.,2011年,Vol.3 Issue 4,p.165
【文献】BURDICK A. D. et al.,Nucleic Acids Research,2014年,Vol.42, No.8,p.4882-4891
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
A61K 31/00-33/44
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の低減方法であって、
(1)塩基長が7nt以上、30nt以下であり、
両末端からそれぞれ1nt以上、5nt以下の核酸残基が2’,4’-架橋型核酸であり、
上記両末端の間に非2’,4’-架橋型の核酸残基を有し、
上記非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基が修飾されているアンチセンスオリゴ核酸を得る工程(1)、
(2)工程(1)で得られたアンチセンスオリゴ核酸
をヒト以外の動物に投与する場合において、非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基への修飾の導入前に比して、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のアンチセンスオリゴ核酸投与後における血清濃度が低下することを指標としてアンチセンスオリゴ核酸を選択する工程(2)、
を含む、上記非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基を修飾することを特徴とするアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の低減方法。
【請求項2】
工程(2)が、工程(1)で得られたアンチセンスオリゴ核酸において、非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基への修飾の導入前に比して、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のアンチセンスオリゴ核酸投与後における血清濃度が、60%以下であることを指標としてアンチセンスオリゴ核酸を選択する工程である、請求項1に記載の肝毒性の低減方法。
【請求項3】
工程(1)において、非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上5以下の核酸残基の塩基が修飾されている、請求項1または2に記載の肝毒性の低減方法。
【請求項4】
塩基が修飾されている上記非2’,4’-架橋型核酸残基がTGCまたはTCCの配列に含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の肝毒性の低減方法。
【請求項5】
上記の修飾されている塩基が、5-ヒドロキシシトシン、4-アセチルシトシン、3-C
1-6アルキルシトシン、5-C
2-6アルキルシトシン、2-チオシトシン、2-チオチミン、ジヒドロチミン、プソイドチミン、2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、8-アミノグアニン、8-ハロゲノグアニン、7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-(2-ピリジルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-[2-(C
1-7アルカノイルオキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(ヒドロキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、1-C
1-6アルキルグアニン、2,2-ジ(C
1-6アルキル)グアニン、2-C
1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C
1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルケニルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルキニルグアニン、7-デアザ-7-ハロゲノグアニン、イノシン、1-C
1-6アルキルイノシン、キュェオシン、β,D-ガラクトシルキュェオシン、β,D-マンノシルキュェオシン、N
6-C
2-6アルケニルアデニン、1-C
1-6アルキルアデニン、2-C
1-6アルキルアデニン、N
6-C
1-6アルキルアデニンまたは2-C
1-6アルキルチオ-N
6-C
2-6アルケニルアデニンである、請求項1~4のいずれかに記載の肝毒性の低減方法。
【請求項6】
上記の修飾されている塩基が、7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-[2-(4-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(2-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(3-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(C
1-7アルカノイルオキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(ビドロキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-C
1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルケニルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルキニルグアニンまたは7-デアザ-7-ハロゲノグアニンである、請求項5に記載の肝毒性の低減方法。
【請求項7】
上記非2’,4’-架橋型の核酸残基がDNAである、請求項1~6のいずれかに記載の肝毒性の低減方法。
【請求項8】
上記2’,4’-架橋型の核酸残基が下記式(I)~(III)のいずれかの構造を有する、請求項1~7のいずれかに記載の肝毒性の低減方法。
【化1】
[式中、
X
1は、O、S、>N(R
3)基、-C(=O)-O-基または-C(=O)-N(R
4
)-基を示し(R
3およびR
4は、独立してHまたはC
1-6アルキル基を示す)
X
2は、下記式(IV)~(VII)で表されるいずれかのグアニジノ基を示し、
【化2】
(式中、R
5~R
18は、独立して、H、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、アミノ基の保護基または2-シアノエチルオキシカルボニル基を示す)
X
3は、O、S、>N(R
19)基、-C(=O)-O-基または-C(=O)-N(R
20)-基を示し(R
19およびR
20は、独立してHまたはC
1-6アルキル基を示す)
Y
1~Y
3は、独立してO
-またはS
-を示し、
Baseは核酸塩基基を示し、
R
1とR
2は、独立して、H、C
1-6アルキル基を示すか、または、R
1とR
2が一緒になってC
1-4アルキレン基を形成してもよく、
nは0以上2以下の整数を示す]
【請求項9】
上記2’,4’-架橋型の核酸残基が上記式(I)の構造を有し、X
1がOであり且つ
nが1である、請求項8に記載の肝毒性の低減方法。
【請求項10】
肝毒性の低減されたアンチセンスオリゴ核酸の製造方法であって、
(1)塩基長が7nt以上、30nt以下であり、
両末端からそれぞれ1nt以上、5nt以下の核酸残基が2’,4’-架橋型核酸であり、
上記両末端の間に非2’,4’-架橋型の核酸残基を有し、
上記非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基が修飾されているアンチセンスオリゴ核酸を得る工程(1)、
(2)工程(1)で得られたアンチセンスオリゴ核酸
をヒト以外の動物に投与する場合において、非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基への修飾の導入前に比して、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のアンチセンスオリゴ核酸投与後における血清濃度が低下することを指標としてアンチセンスオリゴ核酸を選択する工程(2)、
を含む、上記非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基を修飾することを特徴とする肝毒性の低減されたアンチセンスオリゴ核酸の製造方法。
【請求項11】
工程(2)が、工程(1)で得られたアンチセンスオリゴ核酸において、非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基への修飾の導入前に比して、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のアンチセンスオリゴ核酸投与後における血清濃度が、60%以下であることを指標としてアンチセンスオリゴ核酸を選択する工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(1)において、非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上5以下の核酸残基の塩基が修飾されている、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
塩基が修飾されている上記非2’,4’-架橋型核酸残基がTGCまたはTCCの配列に含まれる、請求項10~12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
上記の修飾されている塩基が、5-ヒドロキシシトシン、4-アセチルシトシン、3-C
1-6アルキルシトシン、5-C
2-6アルキルシトシン、2-チオシトシン、2-チオチミン、ジヒドロチミン、プソイドチミン、2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、8-アミノグアニン、8-ハロゲノグアニン、7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-(2-ピリジルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-[2-(C
1-7アルカノイルオキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(ヒドロキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、1-C
1-6アルキルグアニン、2,2-ジ(C
1-6アルキル)グアニン、2-C
1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C
1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルケニルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルキニルグアニン、7-デアザ-7-ハロゲノグアニン、イノシ
ン、1-C
1-6アルキルイノシン、キュェオシン、β,D-ガラクトシルキュェオシン、
β,D-マンノシルキュェオシン、N
6-C
2-6アルケニルアデニン、1-C
1-6アルキル
アデニン、2-C
1-6アルキルアデニン、N
6-C
1-6アルキルアデニンまたは2-C
1-6アルキルチオ-N
6-C
2-6アルケニルアデニンである、請求項10~13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
上記の修飾されている塩基が、7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-[2-(4-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(2-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(3-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(C
1-7アルカノイルオキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(ビドロキシ-C
1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-C
1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルケニルグアニン、7-デアザ-7-C
2-6アルキニルグアニンまたは7-デアザ-7-ハロゲノグアニンである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
上記非2’,4’-架橋型の核酸残基がDNAである、請求項10~15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
上記2’,4’-架橋型の核酸残基が下記式(I)~(III)のいずれかの構造を有する、請求項10~16のいずれかに記載の製造方法。
【化3】
[式中、
X
1は、O、S、>N(R
3)基、-C(=O)-O-基または-C(=O)-N(R
4
)-基を示し(R
3およびR
4は、独立してHまたはC
1-6アルキル基を示す)
X
2は、下記式(IV)~(VII)で表されるいずれかのグアニジノ基を示し、
【化4】
(式中、R
5~R
18は、独立して、H、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、アミノ基の保護基または2-シアノエチルオキシカルボニル基を示す)
X
3は、O、S、>N(R
19)基、-C(=O)-O-基または-C(=O)-N(R
20)-基を示し(R
19およびR
20は、独立してHまたはC
1-6アルキル基を示す)
Y
1~Y
3は、独立してO
-またはS
-を示し、
Baseは核酸塩基基を示し、
R
1とR
2は、独立して、H、C
1-6アルキル基を示すか、または、R
1とR
2が一緒にな
ってC
1-4アルキレン基を形成してもよく、
nは0以上2以下の整数を示す]
【請求項18】
上記2’,4’-架橋型の核酸残基が上記式(I)の構造を有し、X
1がOであり且つ
nが1である、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝毒性が低いアンチセンスオリゴ核酸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核酸医薬品は従来型の医薬品とは異なり、特定の遺伝子の発現を細胞内で抑制できることから、これまでは治療困難であった疾患に対する革新的な医薬品創出につながることが期待されている。核酸医薬品に関する技術として、例えば、疾病に関わるmRNAの一部と相補的なアンチセンスオリゴ核酸を外部から導入し、二重鎖を形成させることにより病原mRNAの翻訳過程を阻害して疾病の治療や予防を行うアンチセンス法が開発されている。
【0003】
しかし、アンチセンスオリゴ核酸は生体内でヌクレアーゼにより分解され易いという欠点を有する。また、標的mRNAに対する結合親和性や特異性をさらに向上させる必要がある。そこで本発明者らの研究グループは、ヌクレアーゼ耐性や、立体構造の安定化による標的mRNAへの結合親和性と特異性の改善のために、2’位と4’位を架橋した核酸分子を開発し(特許文献1~5)、また、かかる架橋核酸を用い、PCSK9遺伝子への結合親和性などに優れた脂質異常症治療剤として有用なオリゴヌクレオチドを開発している(特許文献6)。
【0004】
ところが、ヒト臨床試験を見据えた核酸創薬研究が進展するにつれ、解決すべき新たな課題が顕在化している。その最たるものとして挙げられるのが、「人工オリゴヌクレオチドが潜在的に有する毒性の回避」である。
【0005】
例えばラットやマウスにアンチセンスオリゴ核酸を静脈投与すると約12時間で肝臓に移行することが知られているが、アンチセンスオリゴ核酸の中には重篤な肝毒性を示すものがある。その機構としては、必ずしも明らかではないが、標的外のmRNAの発現抑制、自然免疫の活性化、未知のタンパク質遺伝子の発現促進などが考えられる。アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を予測する手段として、肝毒性を示すアンチセンスオリゴ核酸に共通する塩基配列を特定する研究が為されている(非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/052436号パンフレット
【文献】国際公開第2014/046212号パンフレット
【文献】国際公開第2014/112463号パンフレット
【文献】国際公開第2015/125783号パンフレット
【文献】国際公開第2016/017422号パンフレット
【文献】国際公開第2013/118776号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【文献】Peter H.Hagedornら,Nucleic Acid Therapeutics,23(5),pp.302-310(2013)
【文献】Andrew D.Burdickら,Nucleic Acids Research,2014,pp.1-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性に関与するとされている塩基配列を特定する研究は為されている。しかし、上記非特許文献1,2で肝毒性に関与するとされている塩基配列は僅かnt2またはnt3であり、このように短い塩基配列を含まないアンチセンスオリゴ核酸をデザインすることが難しい場合がある。例えば、mRNAは安定化のため部分的にループ構造や二重鎖などの自己構造を有しており、アンチセンスオリゴ核酸としては標的mRNAの一本鎖にハイブリダイズするものをデザインすべきとの制限がある。しかも、標的mRNAの一本鎖にハイブリダイズし且つ上記塩基配列を含まない塩基配列が、優れた活性を示し且つ肝毒性を示さないとは限らない。
そこで本発明は、肝毒性が低減されたアンチセンスオリゴ核酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特に、アンチセンスオリゴ核酸において特定部分における核酸残基の塩基を修飾することにより活性を維持しつつ肝毒性を低減できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0010】
[1] 塩基長が7nt以上、30nt以下であり、
両末端からそれぞれ1nt以上、5nt以下の核酸残基が2’,4’-架橋型核酸であり、
上記両末端の間に非2’,4’-架橋型の核酸残基を有し、
上記非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基が修飾されていることを特徴とするアンチセンスオリゴ核酸。
【0011】
[2] 塩基が修飾されている上記非2’,4’-架橋型核酸残基がTGCまたはTCCの配列に含まれる上記[1]に記載のアンチセンスオリゴ核酸。
【0012】
[3] 上記の修飾されている塩基が、5-ヒドロキシシトシン、4-アセチルシトシン、3-C1-6アルキルシトシン、5-C1-6アルキルシトシン、2-チオシトシン、2-チオチミン、ジヒドロチミン、プソイドチミン、2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、8-アミノグアニン、8-ハロゲノグアニン、7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-(2-ピリジルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-[2-(C1-7アルカノイルオキシ-C1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(ヒドロキシ-C1-6アルキル)エチニル]グアニン、1-C1-6アルキルグアニン、2,2-ジ(C1-6アルキル)グアニン、2-C1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C2-6アルケニルグアニン、7-デアザ-7-C2-6アルキニルグアニン、7-デアザ-7-ハロゲノグアニン、イノシン、1-C1-6アルキルイノシン、キュェオシン、β,D-ガラクトシルキュェオシン、β,D-マンノシルキュェオシン、N6-C2-6アルケニルアデニン、1-C1-6アルキルアデニン、2-C1-6アルキルアデニン、N6-C1-6アルキルアデニンまたは2-C1-6アルキルチオ-N6-C2-6アルケニルアデニンである上記[1]に記載のアンチセンスオリゴ核酸。
【0013】
[4] 上記非2’,4’-架橋型の核酸残基がDNAである上記[1]~[3]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴ核酸。
【0014】
[5] 上記2’,4’-架橋型の核酸残基が下記式(I)~(III)のいずれかの構造を有する上記[1]~[4]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴ核酸。
【0015】
【0016】
[式中、
X1は、O、S、>N(R3)基、-C(=O)-O-基または-C(=O)-N(R4)-基を示し(R3およびR4は、独立してHまたはC1-6アルキル基を示す)
X2は、下記式(IV)~(VII)で表されるいずれかのグアニジノ基を示し、
【0017】
【0018】
(式中、R5~R18は、独立して、H、C1-6アルキル基、C3-10シクロアルキル基、アミノ基の保護基または2-シアノエチルオキシカルボニル基を示す)
X3は、O、S、>N(R19)基、-C(=O)-O-基または-C(=O)-N(R20)-基を示し(R19およびR20は、独立してHまたはC1-6アルキル基を示す)
Y1~Y3は、独立してO-またはS-を示し、
Baseは核酸塩基基を示し、
R1とR2は、独立して、H、C1-6アルキル基を示すか、または、R1とR2が一緒になってC1-4アルキレン基を形成してもよく、
nは0以上2以下の整数を示す]
【0019】
[6] 上記2’,4’-架橋型の核酸残基が上記式(I)の構造を有し、X1がOであり且つnが1である上記[5]に記載のアンチセンスオリゴ核酸。
【0020】
[7] 核酸残基の塩基への上記修飾の導入前に比して肝毒性が低減されている上記[1]~[6]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴ核酸。
【0021】
本開示において「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。好ましくはC1-4アルキル基であり、より好ましくはC1-2アルキル基であり、最も好ましくはメチルである。
【0022】
「C2-6アルケニル基」は、炭素数が2以上、6以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の一価不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル等である。
【0023】
「C2-6アルキニル基」は、炭素数が2以上、6以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の一価不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル(プロパルギル)、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等である。好ましくはC2-4アルキニル基であり、より好ましくはC2-3アルキニル基である。
【0024】
「C6-12アリール基」とは、炭素数が6以上、12以下の一価芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、ビフェニル等である。
【0025】
「ハロゲノ基」としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基およびヨード基を例示することができ、クロロ基またはブロモ基が好ましい。
【0026】
「C3-10シクロアルキル基」は、炭素数3以上、10以下の環状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル等である。好ましくはC3-6シクロアルキル基である。
【0027】
「アミノ基の保護基」としては、例えば、t-ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル系保護基;ベンジルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、o-ニトロベンジルオキシカルボニル基などのアリールメトキシカルボニル系保護基;ベンジル基、4-メトキシベンジル基、トリフェニルメチル基などのアリールメチル系保護基;ホルミル基やアセチル基などのアルカノイル系保護基;ベンゾイル基などのアロイル系保護基;2,4-ジニトロベンゼンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基などのアリールスルホニル系保護基などを挙げることができる。
【0028】
「C1-6アルキレン基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の二価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチレン、エチレン、メチルメチレン、n-プロピレン、メチルエチレン、n-ブチレン、メチルプロピレン、ジメチルエチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン等である。好ましくはC1-4アルキレン基であり、より好ましくはC1-2アルキレン基であり、よりさらに好ましくはメチレンである。
【0029】
「C1-7アルカノイル基」とは、炭素数1~7の脂肪族カルボン酸からOHを除いた残りの原子団をいう。例えば、ホルミル、アセチル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、t-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル等であり、好ましくはC1-4アルカノイル基であり、より好ましくはアセチルである。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性は、顕著に低減されている。さらに、本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、標的mRNAに対する結合親和性が高く、且つ、生体内においてヌクレアーゼによる攻撃を受け難く安定であるといえる。よって本発明のアンチセンスオリゴ核酸は、実用性の高い核酸医薬になり得るものとして産業上極めて利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、Rps6kb2遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図17】
図17は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図18】
図18は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図19】
図19は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図20】
図20は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、Rps6kb2遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図21】
図21は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、Rps6kb2遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図23】
図23は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図24】
図24は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図25】
図25は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図26】
図26は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図27】
図27は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、GR遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図28】
図28は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と、PCSK9遺伝子の発現抑制活性を評価した結果を示すグラフである。
【
図29】
図29は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【
図30】
図30は、後記の実施例でアンチセンスオリゴ核酸の肝毒性を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、塩基長が7nt以上、30nt以下であり;両末端からそれぞれ1nt以上、5nt以下の核酸残基が2’,4’-架橋型核酸であり;上記両末端の間に非2’,4’-架橋型の核酸残基を有し;上記非2’,4’-架橋型の核酸残基のうちの1以上の核酸残基の塩基が修飾されていることを特徴とする。
【0033】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸の塩基配列は、標的mRNAに高い結合親和性をもってハイブリダイズでき且つ特定部分における1以上の核酸残基の塩基が修飾されていれば特に制限されない。塩基を修飾する前の元の塩基配列は、標的mRNAに従って常法により決定すればよい。
【0034】
例えば、標的mRNAの翻訳開始部位を結合標的部位として選択すると、翻訳阻害活性の高いアンチセンスオリゴ核酸をデザインできることがある。また、mRNAは分子内でヘアピンループ構造や二重鎖構造を形成していることがあり、結合標的部位としては、速度論的および熱力学的に一本鎖構造部位が好ましい。そこで、mRNAの二次構造を計算で予測し、一本鎖構造であると予測される部位を結合標的部位として選択することができる。その他、二重鎖が形成されている箇所を選択的に切断するRNaseHを用いるランダムスクリーニングにより、標的mRNAと二重鎖を最も形成し易い配列を特定することも可能である。
【0035】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸における核酸塩基は、修飾塩基以外、一般的なアデニン、グアニン、ウラシル、チミンまたはシトシンであればよい。但し、メチルシトシンはチミンから容易に合成可能であるため、シトシンの代わりにメチルシトシンを用いてもよい。
【0036】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、S化オリゴ核酸であってもよい。通常のオリゴ核酸ではリボース間がホスホジエステル結合で結合されているが、ホスホロチオエート結合でリボース間を結合することにより、エキソヌクレアーゼやエンドヌクレアーゼに対するオリゴ核酸の耐性が向上する。また、全てのリン酸基がS化されている完全型S化オリゴ核酸であってもよいし、一部のリン酸基がS化されているキメラ型S化オリゴ核酸であってもよい。
【0037】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸の塩基長としては、7nt以上、30nt以下が好ましい。塩基長が7nt以上であれば、標的mRNAに対する結合親和性や特異性を十分に確保することができる。一方、塩基長が30nt以下であれば抗原性が十分に抑制され、また、合成もし易い。当該塩基長としては、10nt以上が好ましく、12nt以上がより好ましく、また、25nt以下が好ましく、20nt以下が好ましい。なお、塩基長が17ntのオリゴ核酸は417=1.7×1010種あり、ヒトゲノムの全塩基数である2×3×109を超えるため、特異性の向上のため当該塩基長を17nt以上にすることも可能である。
【0038】
本発明のアンチセンスオリゴ核酸では、両末端からそれぞれ独立して1nt以上、5nt以下の核酸残基が2’,4’-架橋型核酸である。少なくとも両末端部位における核酸が2’,4’-架橋されていることにより、生体内において各種ヌクレアーゼによる攻撃を受け難くなっており、生体への投与後、生体内に長時間存在することができる。また、2’,4’-架橋により構造が安定化されていることから、標的mRNAと二重鎖を形成し易い。
【0039】
2以上の2’,4’-架橋型核酸残基における2’,4’-架橋構造は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。2’,4’-架橋構造は、リボース部分の構造を安定化するものであれば特に制限されないが、例えば、上記式(I)~(III)の構造を挙げることができる。
【0040】
2’,4’-架橋型核酸残基における核酸塩基は、一般的なアデニン、グアニン、ウラシル、チミンまたはシトシンであってもよいし、修飾されていてもよい。但し、メチルシトシンはチミンから容易に合成可能であるため、特に両末端部分においては、シトシンの代わりにメチルシトシンを用いてもよい。両末端部分における修飾塩基の数としては、両末端部分における2’,4’-架橋型核酸残基にもよるが、5以下または4以下が好ましく、3以下がより好ましく、1または2がよりさらに好ましい。両末端部分における修飾塩基は、非2’,4’-架橋型核酸残基における修飾塩基と同様のものを挙げることができる。
【0041】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、2’,4’-架橋型核酸残基で構成される両末端の間に、1以上の非2’,4’-架橋型の核酸残基を有する。即ち、本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸の両末端部分以外は、非2’,4’-架橋型核酸残基で構成されている。以下、本開示においては、本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸の上記両末端部分以外の部分を「中間部分」ということがある。中間部分の非2’,4’-架橋型核酸残基は、2’位-4’位間が架橋されていなければRNA、DNA、核酸誘導体、およびこれら2以上の組合わせであってもよい。核酸誘導体としては、例えば、2’-ハロゲノ核酸、2’-アセトキシ核酸などの2’-C1-6アルキルカルボニルオキシ核酸、2’-メトキシ核酸などの2’-C1-6アルキルオキシ核酸、2’-トリメチルシリルオキシ核酸などの2’-トリC1-6アルキルシリルオキシ核酸などを挙げることができる。しかし、上記中間部分の核酸がすべてDNAであることが好ましい。中間部分の核酸がすべてDNAである場合、標的mRNAに対してRNA-DNA二本鎖が形成され、当該二本鎖がRNAseHの基質となり、標的mRNAが切断される。RNAseHの基質の観点から、上記中間部分の長さとしては4nt以上が好ましく、5nt以上がより好ましく、6nt以上がよりさらに好ましい。一方、上記中間部分の長さとしては、抗原性の観点から、10nt以下が好ましい。
【0042】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸においては、上記中間部分中の1以上の核酸残基の塩基が修飾されている。本発明のアンチセンスオリゴ核酸の元の塩基配列は、標的mRNAの結合標的部位の塩基配列に相補的であり、当該結合標的部位に対して強い結合親和性を有するため、標的mRNAと二本鎖を形成すべき中間部分の塩基を修飾しても、結合親和性は維持されると考えられる。一方、アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性は、標的mRNA以外の化合物との相互作用が原因であり、そのような化合物との結合親和性は標的mRNAに比べて低い可能性が高いため、本発明において上記中間部分中の1以上の核酸残基の塩基を修飾することにより、肝毒性が低減される程度にそのような化合物との相互作用が低減されると考えられる。
【0043】
中間部分において塩基が修飾されている核酸残基の数としては、中間部分を構成する核酸残基の数にもよるが、5以下が好ましい。当該数が少ない程、標的mRNAに対する結合親和性はより確実に維持されると考えられる。当該数としては4以下または3以下がより好ましく、2または1がよりさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0044】
塩基の修飾としては、例えば、基の置換、官能基の付加、官能基の除去が考えられる。塩基の修飾については、1つの塩基内であれば、2以上の修飾を組み合わせてもよい。また、基の置換には、塩基の複素環に結合している置換基の置換のみでなく、塩基の複素環を形成する基の置換であってもよい。例えば、塩基の複素環を形成する=N-を=C<に置換することも可能である。例えば、アデニンおよびグアニンの7位における=N-は、官能基の付加により=N+<になってもよいし=C<になってもよい。
【0045】
シトシンを修飾する場合、好ましい置換基導入位置としては5位を挙げることができる。5位の置換基としては、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C6-12アリール基、水酸基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基などを挙げることができる。また、4位アミノ基に1個または2個のC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基またはC2-6アルキニル基を導入してもよい。
【0046】
また、シトシン、チミン、ウラシルの好適な修飾としては、2位カルボニル基のチオカルボニル基への置換を挙げることができる。また、チミンやウラシルの3位アミノ基にC1-6アルキル基を導入してもよい。
【0047】
グアニンまたはアデニンを修飾する場合、好ましい置換基導入位置としては8位を挙げることができる。8位の置換基としては、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基などの親水性置換基の他、ハロゲノ基を挙げることができる。また、7位の=N-を=C<に変換し、フェニルエチニル基を導入してもよい。
【0048】
さらに具体的な修飾塩基としては、例えば、5-ヒドロキシシトシン、4-アセチルシトシン、3-C1-6アルキルシトシン、5-C1-6アルキルシトシン、2-チオシトシン等のシトシン誘導体;2-チオチミン、ジヒドロチミン、プソイドチミン等のチミン誘導体;2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン等のウリジン誘導体;8-アミノグアニン、8-ハロゲノグアニン、7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアニン、7-デアザ-7-[2-(4-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(2-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(3-ピリジル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(C1-7アルカノイルオキシ-C1-6アルキル)エチニル]グアニン、7-デアザ-7-[2-(ヒドロキシ-C1-6アルキル)エチニル]グアニン、1-C1-6アルキルグアニン、2,2-ジ(C1-6アルキル)グアニン、2-C1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C1-6アルキルグアニン、7-デアザ-7-C2-6アルケニルグアニン、7-デアザ-7-C2-6アルキニルグアニン、7-デアザ-7-ハロゲノグアニン、イノシン、1-C1-6アルキルイノシン、キュェオシン、β,D-ガラクトシルキュェオシン、β,D-マンノシルキュェオシン等のグアニン誘導体;N6-C2-6アルケニルアデニン、1-C1-6アルキルアデニン、2-C1-6アルキルアデニン、N6-C1-6アルキルアデニンまたは2-C1-6アルキルチオ-N6-C2-6アルケニルアデニン等のアデニン誘導体を挙げることができる。
【0049】
本発明者らは、修飾塩基を有する化合物として、以下の新規7-置換グアノシン誘導体(VIII)を開発した。
【化3】
[式中、
R
31は、H、または、シリル系保護基、トリチル系保護基、カーバメート系保護基およびベンジルエーテル系保護基から選択される水酸基の保護基を示し;
R
32およびR
33は、独立して、ハロゲノ基、ニトロ基またはC
1-6アルキル基に置換されていてもよいフェニル基、または、シアノ基で置換されていてもよいC
1-6アルキル基を示し;
R
34は、アミノ基の保護基を示し;
R
35は、ハロゲノ基またはR
36-C≡C-(R
36は、C
6-12アリール基、複素芳香環基、ヒドロキシ-C
1-6アルキル基またはC
1-7アルカノイルオキシ-C
1-6アルキル基を示す。]
【0050】
「シリル系保護基」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、ジメチルテキシルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリベンジルシリル、トリ-p-キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、t-ブチルメトキシフェニルシリルなどを挙げることができ、「トリチル系保護基」としては、トリフェニルメチル、α-ナフチルジフェニルメチル、p-メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p-メトキシフェニル)メチル、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチルなどを挙げることができ、「カーバメート系保護基」としては、t-ブトキシカルボニル、フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどを挙げることができ、「ベンジルエーテル系保護基」としては、ベンジル、メトキシベンジル、ニトロベンジル、ハロベンジル、フェニルベンジルなどを挙げることができ、「アルカノイル系保護基」としては、ホルミル、アセチル、ハロゲノ化アセチル、ピバロイル、ベンゾイルなどを挙げることができる。また、「アミノ基の保護基」としては、前述したものを挙げることができる。
【0051】
「複素芳香環基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個有する5員環芳香族ヘテロシクリル基、6員環芳香族ヘテロシクリル基または縮合環芳香族ヘテロシクリル基をいう。例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾール等の5員複素芳香環基;ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等の6員複素芳香環基;インドリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル等の縮合環複素芳香環基を挙げることができる。好ましくは窒素原子を含む複素芳香環基であり、より好ましくはピリジルである。
【0052】
修飾すべき塩基は特に制限されない。例えば、本発明のアンチセンスオリゴ核酸の塩基長は7nt以上、30nt以下であるので、元となるアンチセンスオリゴ核酸の塩基配列を決定した後、1つずつ塩基を修飾していき、肝毒性低減効果が優れる修飾塩基を決定してもよい。しかし、後記の実施例の通り、TGCまたはTCCの配列に含まれるチミン、グアニンまたはシトシンを修飾する場合に良好な肝毒性低減効果が見られる傾向があるので、これら配列に含まれる核酸残基の塩基を修飾することを一つの目安とすることができる。
【0053】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、特に1つの核酸残基の塩基が修飾されていることにより、かかる修飾前のアンチセンスオリゴ核酸に比べて肝毒性が低減されている。例えば、肝毒性の指標となるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のアンチセンスオリゴ核酸投与後における血清濃度が、上記修飾前のアンチセンスオリゴ核酸を用いる以外は同様の条件で測定された血清濃度に対して、60%以下または50%以下であることが好ましく、40%以下または20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがよりさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸の投与後のASTの血清濃度としては、100IU/L以下が好ましく、40IU/L以下がより好ましく、また、ALTの血清濃度としては100IU/L以下が好ましく、40IU/L以下がより好ましく、20IU/L以下がよりさらに好ましい。
【0054】
本開示において、ASTおよびALTの血清濃度は、例えば、マウスまたはラットに10mg/kg体重以上、30mg/kg体重以下程度の所定投与量で、アンチセンスオリゴ核酸を静脈注射してから70時間以上、120時間以下程度の所定時間経過後に採血し、遠心分離して得られた血清から測定すればよい。
【0055】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、常法により製造することができる。例えば、本発明のアンチセンスオリゴ核酸の塩基長は7nt以上、30nt以下であることから、核酸の自動合成機を使って容易に製造することができる。
【0056】
本発明に係るアンチセンスオリゴ核酸は、標的mRNAに対する相補塩基配列を有することから、標的mRNAの翻訳を強く阻害できることができる上に、上記の通り肝毒性が低減されている。よって、標的mRNAが関与する疾患を予防または治療するための医薬として有用である。
【0057】
本発明のアンチセンスオリゴ核酸は、例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤を配合して、非経口投与製剤またはリポソーム製剤とすることができる。また、例えば、当該技術分野で通常用いられる医薬用担体を配合して、液剤、クリーム剤、軟膏剤などの局所用の製剤を調製できる。
【0058】
本発明のアンチセンスオリゴ核酸は、ヒト以外の動物およびヒトに投与することができる。その投与量は、患者の年齢、性別、体重、状態、疾患の種類、重篤度、予防的な使用であるか或いは治療的な使用であるかなどに応じて適宜調整すればよいが、例えば、成人のヒトに対する1回当たり及び体重1kg当たりの投与量として、0.01μg以上、100g以下とすることができる。当該量としては、0.1μg以上または1.0μg以上が好ましく、10μg以上または100μg以上がより好ましく、1mg以上がよりさらに好ましく、また、10g以下または1.0g以下が好ましく、100mg以下または10mg以下がより好ましく、5mg以下がよりさらに好ましい。また、投与回数としては、1ヶ月に1回から1日当たり3回以下程度の間で適宜調整すればよい。
【0059】
本願は、2017年2月21日に出願された日本国特許出願第2017-30489号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年2月21日に出願された日本国特許出願第2017-30489号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0061】
実施例1: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
(1) アンチセンスオリゴ核酸の選別と合成
核酸医薬で問題となっている肝毒性の誘発機構としては、(i)標的外遺伝子の発現抑制、(ii)自然免疫の活性化の他、(iii)核酸医薬に関係するタンパク質などの生体分子を介したシグナル経路が考えられる。上記機構(i)および(ii)を回避し、上記機構(iii)の寄与により特に強い肝毒性を誘発するアンチセンスオリゴ核酸として#101を選択した。株式会社ジーンデザインに、表1に示す配列を有する#101およびその誘導体である#101-C2-7の合成を外注した。得られたアンチセンスオリゴ核酸の分子量をマススペクトルにより測定した。#101の分子量の理論値は4589.72、実測値は4600.61であり、#101-C2-7の分子量の理論値は4605.72、実測値は4602.22であった。
【0062】
【0063】
上記配列中、大文字は下記構造を有する2’,4’-架橋型核酸(LNA)を示し、小文字はDNAを示し、mC中の塩基は5-メチルシトシンであり、ζ中の塩基は5-ヒドロキシシトシンである。
【0064】
【0065】
各アンチセンスオリゴ核酸を生理食塩水(大塚製薬社製)に溶解して2mg/mL溶液とし、実験に用いるまで-30℃で凍結保存した。
【0066】
(2) 肝毒性試験
5週齢の雄性C57BL/6NCrlマウス(日本チャールス・リバー株式会社)を1週間検疫馴化した後、実験に用いた。当該マウスを任意に4匹ずつ3群に分け、生理食塩水(大塚製薬社製)または各アンチセンスオリゴ核酸溶液を10mL/kg体重(アンチセンスオリゴ核酸の投与量として20mg/kg体重)の投与量で尾静脈内に単回投与した。投与から4日目(96時間後)に、マウスを2.0~4.0%のイソフルラン(DSファーマアニマルヘルス社製)で吸入麻酔し、後大静脈腹部から可能な限り採血した。得られた血液を室温で20~60分静置後、1700×gで5分間遠心分離して血清を得た。血液採取の際、血液量が分析に必要な量に達しない場合は注射用水を用いて希釈した後、分析に用いた。生化学自動分析装置(「JCA-BM6070」日本電子社製)を用いて、得られた血清中のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)とアラニントランスアミナーゼ(ALT)の濃度を測定した。なお、上記の動物実験の飼育と実験は、株式会社新日本科学の動物実験規定に準じ、株式会社新日本科学安全性研究所の動物実験施設内で行った。結果を
図1に示す。
図1中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0067】
図1に示す結果の通り、ASTとALTは肝機能障害の指標となる酵素であり、肝毒性が特に高い#101によるこれら酵素の血清中濃度を、その中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで有意に低減することができた。
【0068】
実施例2: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101の代わりに、上記肝毒性誘発機構(iii)の寄与により強い肝毒性を誘発する#12、#98、#14、またはそれらの誘導体を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#12の分子量の理論値は4614.73、実測値は4614.27であり、#12-C2-10の分子量の理論値は4630.73、実測値は4627.86であり、#98の分子量の理論値は4613.75、実測値は4612.79であり、#98-C2-7の分子量の理論値は4629.75、実測値は4631.10であり、#14の分子量の理論値は4606.71、実測値は4605.66であり、#14-C2-6の分子量の理論値は4622.71、実測値は4619.72であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表2に、肝毒性の測定結果を
図2に示す。
図2中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0069】
【0070】
図2に示す結果の通り、肝毒性が高いその他のアンチセンスオリゴ核酸#12、#98および#14においても、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで、血清中のASTとALTの濃度を有意に低減することができた。また、ASTとALTの血清中濃度は、肝毒性が特に高い#101程ではないが、上記変異により数%まで低減された。
【0071】
実施例3: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
GR(Glucocortiocoid Receptor)はステロイド受容体の一種であり、ステロイドホルモンであるヒドロコルチゾンに対する受容体として働く一方で、リガンド依存的に核内移行して転写因子としても働く。そこで、これを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi12(Nucleic Acid Ther.,2012,22,5,344-359)を選択し、株式会社ジーンデザインに、表3に示す配列を有するPosi12およびその誘導体であるPosi12-C2-11の合成を外注した。Posi12の分子量の理論値は4611.71、実測値は4610.81であり、Posi12-C2-11の分子量の理論値は4627.71、実測値は4625.65であった。
【0072】
【0073】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例1(2)と同様に、マウス血清中のALT濃度を測定した。結果を
図3(1)に示す。
【0074】
また、各アンチセンスオリゴ核酸によるGR遺伝子の発現抑制活性を測定した。具体的には、上記肝毒性試験において採血した後、マウスを凍結安楽死させ、肝臓を摘出して重量を測定した。摘出した肝臓において肉眼的に異常のみられない部位から約100mgを試料として採取した。採取した試料の重量を測定後、液体窒素にて凍結させ、超低温フリーザーで保存した。凍結保存した肝臓試料を、氷冷下でホモジネーター(Shake Master auto, Bio Medical Science Inc.)とTRIzol試薬(Thermo Fisher Scientific社)を用いて可能な限りホモジナイズし、total RNAを抽出した。抽出したtotal RNAのUV吸収スペクトルを、Nano VueあるいはNano Vue Plus(GEヘルスケア社)を用いて測定し,RNA濃度とO.D.260/O.D.280比から純度を算出した。Total RNAについてOne Step SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Takara社)およびApplied Biosystems 7500(Life Technologies Japan Ltd)を用いて定量PCRを行い、生理食塩水投与群に対してアンチセンスオリゴ核酸投与群の標的遺伝子の発現比率を算出し、活性を評価した。結果を
図3(2)に示す。
【0075】
図3(1)に示す結果の通り、Posi12による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで40%に低減された。その一方で、
図3(2)に示す結果の通り、Posi12の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更しても、GR遺伝子の発現抑制活性は変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0076】
実施例4: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスGRを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi14(Nucleic Acid Ther.,2012,22,5,344-359)を選択し、株式会社ジーンデザインに、表4に示す配列を有するPosi14およびその誘導体であるPosi14-C2-6の合成を外注した。Posi14の分子量の理論値は4691.78、実測値は4691.10であり、Posi14-C2-6の分子量の理論値は4707.78、実測値は4705.24であった。
【0077】
【0078】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とGR遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図4に示す。
【0079】
図4(1)に示す結果の通り、Posi14による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで70%に低減され、その低減度は、異常測定値を除外すると13%となった。その一方で、
図4(2)に示す結果の通り、Posi14の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更しても、GR遺伝子の発現抑制活性は変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0080】
実施例5: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
PCSK9(Pro-protein Convertase Subtilisin Kexin 9)はエンドプロテアーゼの一種であり、LDLのレセプターに結合して分解することによりLDLの取り込み量を減らし、結果的に血中LDL濃度を上昇させる。そこでマウスPCSK9遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi15を選択し、株式会社ジーンデザインに、表5に示す配列を有するPosi15およびその誘導体であるPosi15-C2-4およびPosi15-C2-11の合成を外注した。Posi15の分子量の理論値は4586.77、実測値は4586.73であり、Posi15-C2-4の分子量の理論値は4602.77、実測値は4600.61であり、Posi15-C2-11の分子量の理論値は4602.77、実測値は4602.09であった。
【0081】
【0082】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図5に示す。
【0083】
図5(1)に示す結果の通り、Posi15による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで40%または60%に低減され、その低減度は、異常測定値を除外すると30%または40%となった。その一方で、
図5(2)に示す結果の通り、Posi15の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更しても、PCSK9遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0084】
実施例6: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi17を選択し、株式会社ジーンデザインに、表6に示す配列を有するPosi17およびその誘導体であるPosi17-C2-10の合成を外注した。Posi17の分子量の理論値は4300.54、実測値は4300.92であり、Posi17-C2-10の分子量の理論値は4316.54、実測値は4314.46であった。
【0085】
【0086】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図6に示す。
図6中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0087】
図6(1)に示す結果の通り、Posi17による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで50%に有意に低減された。その一方で、
図6(2)に示す結果の通り、Posi17の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更しても、PCSK9遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0088】
実施例7: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
Rps6kb2(Ribosomal protein S6 kinase beta-2)は、リボソームタンパク質S6をリン酸化する酵素として同定されたセリン-スレオニンキナーゼであり、増殖因子やストレスなどの刺激により活性化され、細胞周期やタンパク質合成の調節をしている。これを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてNo.97を選択し、株式会社ジーンデザインに、表7に示す配列を有するNo.97およびその誘導体であるNo.97-C2-7、No.97-C2-9およびNo.97-C2-10の合成を外注した。No.97の分子量の理論値は4182.40、実測値は4183.06であり、No.97-C2-7の分子量の理論値は4198.40、実測値は4197.54であり、No.97-C2-9の分子量の理論値は4198.40、実測値は4196.60であり、No.97-C2-10の分子量の理論値は4198.40、実測値は4199.40であった。
【0089】
【0090】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とRps6kb2の発現抑制活性を測定した。結果を
図7に示す。
図7中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0091】
図7(1)に示す結果の通り、No.97による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで33%、20%または35%に低減された。その一方で、
図7(2)に示す結果の通り、No.97の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更しても、Rps6kb2遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0092】
実施例8: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101の誘導体として#101-T6-5を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#101-T6-5の分子量の理論値は4605.78、実測値は4605.10であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表8に、肝毒性の測定結果を
図8に示す。
図8中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0093】
【0094】
上記配列中、κ中の塩基は2-チオカルボニルチミンであり、κは以下の構造を有する。
【0095】
【0096】
図8に示す結果の通り、肝毒性が非常に高いアンチセンスオリゴ核酸#101の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変換することにより、血清中のASTとALTの濃度を低減することができた。
【0097】
実施例9: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101の代わりに#98、#14、またはそれらの誘導体を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#98-T6-5の分子量の理論値は4629.81、実測値は4631.05であり、#14-T6-4の分子量の理論値は4622.77、実測値は4623.11であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表9に、肝毒性の測定結果を
図9に示す。
図9中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0098】
【0099】
肝毒性が高いその他のアンチセンスオリゴ核酸#98および#14においても、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更するのみで、血清中のASTとALTの濃度を有意に低減することができた。
【0100】
実施例10: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスGRを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi12(Nucleic Acid Ther.,2012,22,5,344-359)を選択し、株式会社ジーンデザインに、表10に示す配列を有するPosi12およびその誘導体であるPosi12-T6-4の合成を外注した。Posi12-T6-4の分子量の理論値は4627.77、実測値は4629.03であった。
【0101】
【0102】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とGR遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図10に示す。
図10中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0103】
図10(1)に示す結果の通り、Posi12による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更するのみで40%に低減された。その一方で、
図10(2)に示す結果の通り、Posi12の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更しても、GR遺伝子の発現抑制活性は変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0104】
実施例11: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスGRを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi14(Nucleic Acid Ther.,2012,22,5,344-359)を選択し、株式会社ジーンデザインに、表11に示す配列を有するPosi14およびその誘導体であるPosi14-T6-4の合成を外注した。Posi14-T6-4の分子量の理論値は4707.84、実測値は4708.38であった。
【0105】
【0106】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とGR遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図11に示す。
図11中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0107】
図11(1)に示す結果の通り、Posi14による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更するのみで3%に低減された。その一方で、
図11(2)に示す結果の通り、Posi14の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更しても、GR遺伝子の発現抑制活性は変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0108】
実施例12: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi17(Nucleic Acid Ther.,2012,22,5,344-359)を選択し、株式会社ジーンデザインに、表12に示す配列を有するPosi17およびその誘導体であるPosi17-T6-4の合成を外注した。Posi17-T6-4の分子量の理論値は4316.60、実測値は4316.08であった。
【0109】
【0110】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図12に示す。
図12中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0111】
図12(1)に示す結果の通り、Posi17による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更するのみで60%に低減された。その一方で、
図12(2)に示す結果の通り、Posi17の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのチミンを2-チオカルボニルチミンに変更しても、PCSK9遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0112】
実施例13: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101の誘導体として#101-G3-6を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#101-G3-6の分子量の理論値は4604.73、実測値は4605.45であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表13に、肝毒性の測定結果を
図13に示す。
図13中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0113】
【0114】
上記配列中、λ中の塩基は8-アミノグアニンであり、λは以下の構造を有する。
【0115】
【0116】
図13に示す結果の通り、肝毒性が非常に高いアンチセンスオリゴ核酸#101の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-アミノグアニンに変更するのみで、血清中のASTとALTの濃度を低減することができた。
【0117】
実施例14: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101の代わりに#12、#98、#14、またはそれらの誘導体を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#12-G3-9の分子量の理論値は4629.74、実測値は4628.19であり、#98-G3-6の分子量の理論値は4628.76、実測値は4628.93であり、#14-G3-5の分子量の理論値は4621.72、実測値は4621.39であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表14に、肝毒性の測定結果を
図14に示す。
図14中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0118】
【0119】
図14に示す結果の通り、肝毒性が高いその他のアンチセンスオリゴ核酸#12、#98および#14においても、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-アミノグアニンに変更するのみで、血清中のASTとALTの濃度を有意に低減することができた。
【0120】
実施例15: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101またはその誘導体である#101-G4-6を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#101-G4-6の分子量の理論値は4668.61、実測値は4670.31であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表15に、肝毒性の測定結果を
図15に示す。
図15中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0121】
【0122】
上記配列中、μ中の塩基は8-ブロモグアニンであり、μは以下の構造を有する。
【0123】
【0124】
図15に示す結果の通り、肝毒性が非常に高いアンチセンスオリゴ核酸#101の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更するのみで、血清中のASTとALTの濃度を低減することができた。
【0125】
実施例16: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
上記実施例1において、アンチセンスオリゴ核酸#101の代わりに#12、#98、#14、またはそれらの誘導体を用いた以外は同様にして肝毒性を評価した。#12-G4-9の分子量の理論値は4693.62、実測値は4692.50であり、#98-G4-6の分子量の理論値は4692.64、実測値は4693.45であり、#14-G4-5の分子量の理論値は4685.60、実測値は4683.86であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表16に、肝毒性の測定結果を
図16に示す。
図16中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0126】
【0127】
図16に示す結果の通り、肝毒性が高いその他のアンチセンスオリゴ核酸#12、#98および#14においても、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更するのみで、血清中のASTとALTの濃度を有意に低減することができた。
【0128】
実施例17: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスGRを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi14(Nucleic Acid Ther.,2012,22,5,344-359)を選択し、株式会社ジーンデザインに、表17に示す配列を有するPosi14およびその誘導体であるPosi14-G4-10の合成を外注した。Posi14-G4-10の分子量の理論値は4770.67、実測値は4771.46であった。
【0129】
【0130】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とGR遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図17に示す。
図17中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0131】
図17(1)に示す結果の通り、Posi14による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更するのみで30%に低減された。その一方で、
図17(2)に示す結果の通り、Posi14の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更しても、GR遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0132】
実施例18: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi15を選択し、株式会社ジーンデザインに、表18に示す配列を有するPosi15およびその誘導体であるPosi15-G4-8の合成を外注した。Posi15-G4-8の分子量の理論値は4665.66、実測値は4666.01であった。
【0133】
【0134】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図18に示す。
図18中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0135】
図18(2)に示す結果の通り、Posi15の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更した場合にはPCSK9遺伝子の発現抑制活性はやや低下したが、
図18(1)に示す結果の通り、Posi15による肝毒性は1%まで有意に低減された。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性をそれほど低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0136】
実施例19: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi17を選択し、株式会社ジーンデザインに、表19に示す配列を有するPosi17およびその誘導体であるPosi17-G4-3、Posi17-G4-5およびPosi17-G4-8の合成を外注した。Posi17-G4-3の分子量の理論値は4379.43、実測値は4378.54であり、Posi17-G4-5の分子量の理論値は4379.43、実測値は4377.25であり、Posi17-G4-8の分子量の理論値は4379.43、実測値は4378.34であった。
【0137】
【0138】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図19に示す。
図19中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0139】
図19(1)に示す結果の通り、Posi17による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更するのみで、3%、9%または20%まで有意に低減された。Posi17-G4-8による肝毒性低減効果は、異常測定値を除外すると3%にまで低下した。その一方で、
図19(2)に示す結果の通り、Posi17の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更しても、PCSK9遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0140】
実施例20: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスRps6kb2を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてNo.97を選択し、株式会社ジーンデザインに、表20に示す配列を有するNo.97およびその誘導体であるNo.97-G4-8の合成を外注した。No.97-G4-8の分子量の理論値は4261.29、実測値は4261.11であった。
【0141】
【0142】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度とRps6kb2遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図20に示す。
図20中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0143】
図20(1)に示す結果の通り、No.97による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更するのみで9%まで有意に低減された。その一方で、
図20(2)に示す結果の通り、No.97の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-ブロモグアニンに変更しても、Rps6kb2遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0144】
実施例21: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
上記実施例5において、Posi15の誘導体であるPosi15-G6-8を用いた以外は同様にして肝毒性と活性を評価した。Posi15-G6-8の分子量の理論値は4685.90、実測値は4683.03であった。本実施例で用いた各アンチセンスオリゴ核酸の配列を表21に、肝毒性の測定結果を
図21に示す。
図21中の「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
【0145】
【0146】
上記配列中、α中の塩基は7-フェニルエチニルグアニンであり、αは以下の構造を有する。
【0147】
【0148】
図21(1)に示す結果の通り、Posi15による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを7-フェニルエチニルグアニンに変更するのみで、異常測定値を除いて5%まで有意に低減された。その一方で、
図21(2)に示す結果の通り、Posi15の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを7-フェニルエチニルグアニンに変更しても、PCSK9遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0149】
実施例22: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスRps6kb2およびマウスGRを標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてNo.97とPosi14をそれぞれ選択し、株式会社ジーンデザインに、表22に示す配列を有するNo.97、Posi14、および中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-アミノグアニンに変更した誘導体の合成を外注した。また、マウスPCSK9遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi15とPosi17をそれぞれ選択し、株式会社ジーンデザインに、表22に示す配列を有するPosi15、Posi17、および中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-アミノグアニンに変更した誘導体の合成を外注した。
【0150】
【0151】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度と、マウスRps6kb2遺伝子、マウスGR遺伝子またはマウスPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図22~25に示す。
【0152】
図22~25の(1)に示す結果の通り、No.97、Posi14、Posi15およびPosi17による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-アミノグアニンに変更するのみで明らかに低減された。その一方で、
図22~25の(2)に示す結果の通り、No.97、Posi14、Posi15およびPosi17の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを8-アミノグアニンに変更しても、マウスRps6kb2遺伝子、マウスGR遺伝子およびマウスPCSK9遺伝子の発現抑制活性は一部を除いてほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0153】
実施例23: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
強い肝毒性を誘発するアンチセンスオリゴ核酸として#12を選択し、株式会社ジーンデザインに、表23に示す配列を有する#12と、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを以下に構造を示す7-置換グアニンに変更した誘導体の合成を外注した。なお、7-置換グアノシン誘導体の導入に用いた化合物は新規であるので、その合成方法は後記する。
【0154】
【0155】
【0156】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度を測定した。結果を
図26に示す。
図26に示す結果の通り、#12による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンの第7位に置換基を導入するのみで、有効に低減された。
【0157】
実施例24: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性と活性の評価
マウスGRおよびマウスPCSK9遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴ核酸としてPosi14とPosi15をそれぞれ選択し、株式会社ジーンデザインに、表24に示す配列を有するPosi14、Posi15、および中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを7-置換グアニンに変更した誘導体の合成を外注した。
【0158】
【0159】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度と、マウスGR遺伝子またはマウスPCSK9遺伝子の発現抑制活性を測定した。結果を
図27,28に示す。
【0160】
図27,28の(1)に示す結果の通り、Posi14およびPosi15による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを7-置換グアニンに変更するのみで明らかに低減された。その一方で、
図27,28の(2)に示す結果の通り、Posi14およびPosi15の中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのグアニンを7-置換グアニンに変更しても、マウスGR遺伝子およびマウスPCSK9遺伝子の発現抑制活性はほとんど変わらなかった。このように本発明によれば、アンチセンスオリゴ核酸の活性を低下させることなく肝毒性を低減することができる。
【0161】
実施例25: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
強い肝毒性を誘発するアンチセンスオリゴ核酸として#101を選択し、株式会社ジーンデザインに、表25に示す配列を有する#101と、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変更した誘導体の合成を外注した。
【0162】
【0163】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度を測定した。結果を
図29に示す。
図29に示す結果の通り、#101による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つのシトシンの5-ヒドロキシシトシンに変更するのみで、有効に低減された。
【0164】
実施例26: アンチセンスオリゴ核酸の肝毒性の評価
強い肝毒性を誘発するアンチセンスオリゴ核酸として#101を選択し、株式会社ジーンデザインに、表26に示す配列を有する#101と、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1~3つの塩基を5-ヒドロキシシトシン(ζ)、2-チオカルボニルチミン(κ)または8-ブロモグアニン(μ)に変更した誘導体の合成を外注した。
【0165】
【0166】
得られた各アンチセンスオリゴ核酸に関して、上記実施例3と同様にしてマウス血清中のALT濃度を測定した。結果を
図30に示す。
図30に示す結果の通り、#101による肝毒性は、中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの1つの塩基を誘導体に変更するのみで有効に低減され、同中間部分における非2’,4’-架橋型核酸残基のうちの2以上の塩基を誘導体に変更すると、肝毒性の減弱効果はより一層高まることが実証された。
【0167】
実施例27: 7-デアザ-7-ヨードグアノシン誘導体の合成
【0168】
【0169】
(1) 化合物2の合成
化合物1は、F.Seelaら,Synthesis,2004,8,1203-1210およびM.Mackovaら,ChemBioChem,2015,16,2225-2236に従って合成した。
テトラメチルグアニジン(4.3mL,35mmol)およびピリジン-2-アルドキシム(4.3g,35mmol)を化合物1(5.1g,7.0mmol)のDMF/1,4-dioxane混合溶液(170mL,DMF:1,4-dioxane=1:1)に加え、窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。酢酸エチルで希釈し、1規定塩酸水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち濃縮し、残渣を得た。残渣をメタノールで洗浄し、白色固体である化合物2(4.9g)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δH:1.22(9H,s),2.38(3H,s),2.40(3H,s),2.64(1H,m),2.91(1H,m),4.45-4.62(3H,m),5.63(1H,d,J=5.9Hz),6.55(1H,dd,J=9.1,5.5Hz),7.34-7.41(5H,m),7.88-7.94(4H,m),10.96(1H,s),11.95(1H,s)
【0170】
(2) 化合物3の合成
氷冷下において1規定ナトリウムメトキシド(12.4mL,12.4mmol)を化合物2(4.5g,6.2mmol)のTHF/メタノール混合溶液(151.5mL,THF:メタノール=150:1.5)に加え、窒素雰囲気下、氷冷下15分攪拌した。氷冷下において酢酸(0.8mL)を加え濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール=9/1)で精製し、白色固体である化合物3(3.0g)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δH:1.23(9H,s),2.09(1H,m),2.36(1H,m),3.50(2H,m),3.76(1H,s),4.29(1H,s),4.93(1H,t,J=5.1Hz),5.23(1H,d,J=3.3Hz),6.45(1H,dd,J=8.1,5.5Hz),7.45(1H,s),10.97(1H,s),11.90(1H,s)
【0171】
(3) 化合物4の合成
ジメトキシトリチルクロリド(0.8g,2.4mmol)を化合物3(1.0g,2.2mmol)のピリジン溶液(15mL)に加え、窒素雰囲気下、一晩攪拌した。メタノールを加え1時間攪拌した後、クロロホルムで希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥したのち濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=94/5/1)で精製し、白色固体である化合物4(1.3g)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δH:1.20(9H,s),2.15(1H,m),2.40(1H,m),3.04(1H,m),3.13(1H,m),3.70(6H,s),3.86(1H,m),4.27(1H,m),5.26(1H,d,J=3.7Hz),6.43(1H,m),6.81-6.84(4H,m),7.15-7.35(10H,m),10.94(1H,s),11.90(1H,s)
【0172】
(4) 化合物5の合成
2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.27mL,1.2mmol)をジイソプロピルエチルアミン(0.28mL,1.7mmol)と化合物4(0.5g,0.6mmol)のジクロロメタン溶液(30mL)に加え、窒素雰囲気下、1時間攪拌した。ジクロロメタンで希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン=10/9/1)で精製し、白色固体である標題化合物(0.4g)を得た。
31P NMR(122MHz,CDCl3)δP:148.53,148.91
【0173】
実施例28: 7-デアザ-7-(2-フェニルエチニル)グアノシン誘導体の合成
【0174】
【0175】
(1) 化合物6の合成
ヨウ化銅(6mg,0.03mmol)、トリエチルアミン(0.09mL,0.6mmol)、エチニルベンゼン(0.04mL,0.4mmol)および化合物4(0.2g,0.3mmol)を含むアセトニトリル溶液(5mL)に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(35mg,0.03mmol)を加え、窒素雰囲気下、80℃で2時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濃縮し残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:トリエチルアミン=98:2)で精製し、標題化合物(0.15g)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δH:1.30(9H,s),1.90(1H,d,J=3.7Hz),2.42(2H,m),3.28(1H,m),3.40(1H,m),3.73(6H,s),4.03(1H,m),4.55(1H,m),6.44(1H,m),6.81-6.84(4H,m),7.13(1H,s),7.17-7.33(10H,m),7.41-7.43(2H,m),7.50-7.54(2H,m),7.91(1H,s),11.69(1H,s)
【0176】
(2) 化合物7の合成
2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.16mL,0.7mmol)を、ジイソプロピルエチルアミン(0.15mL,1.2mmol)および化合物6(0.4g,0.5mmol)のジクロロメタン溶液(20mL)に加え、窒素雰囲気下、1時間攪拌した。ジクロロメタンで希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン=10/9/1)で精製し、白色固体である標題化合物(0.4g)を得た。
31P NMR(162MHz,CDCl3)δP:148.70,148.97
【0177】
実施例29: 7-デアザ-7-[2-(4-ピリジル)エチニル]グアノシン誘導体の合成
【0178】
【0179】
(1) 化合物8の合成
ヨウ化銅(2mg,0.01mmol)、トリエチルアミン(0.04mL,0.3mmol)、p-エチニルピリジン(20mg,0.2mmol)および化合物4(0.1g,0.1mmol)を含むアセトニトリル溶液(2.5mL)に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mg,0.01mmol)を加え、窒素雰囲気下、80℃で1時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濃縮し残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/トリエチルアミン=98/2)で精製し、淡黄色固体である標題化合物(0.08g)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δH:1.31(9H,s),2.21(1H,m),2.43(2H,m),3.30(1H,m),3.40(1H,m),3.73(6H,s),4.06(1H,m),4.57(1H,brs),6.41(1H,tr,J=6.6Hz),6.80-6.83(4H,m),7.28-7.43(10H,m),7.17-7.22(2H,m),8.14(1H,s),8.53-8.55(2H,m),11.78(1H,s)
【0180】
(2) 化合物9の合成
2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.15mL,0.7mmol)を、ジイソプロピルエチルアミン(0.3mL,1.7mmol)および化合物8(0.5g,0.7mmol)のジクロロメタン溶液(30mL)に加え、窒素雰囲気下、1時間攪拌した。ジクロロメタンで希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン=10/9/1)で精製し、白色固体である標題化合物(0.5g)を得た。
31P NMR(162MHz,CDCl3)δP:148.64,149.07
【0181】
実施例30: 7-デアザ-7-[2-(アセトキシメチル)エチニル]グアノシン誘導体の合成
【0182】
【0183】
(1) 化合物10の合成
ヨウ化銅(4mg,0.01mmol)、トリエチルアミン(0.09mL,0.7mmol)、1-アセトキシ-2-プロピン(20mg,0.2mmol)および化合物4(0.1g,0.1mmol)を含むアセトニトリル溶液(2.5mL)に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(22mg,0.01mmol)を加え、窒素雰囲気下、80℃で1時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濃縮し残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=98/1/1)にて精製後、アミノシリカゲルシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=98/1/1)にて再精製し、淡黄色固体である標題化合物(0.08g)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δH:1.28(9H,s),2.08(3H,s),2.15(1H,d,J=3.2Hz),2.37(2H,m),3.24(1H,m),3.37(1H,m),3.77(6H,s),4.01(1H,m),4.50(1H,brs),4.91(2H,s),6.38(1H,m),6.80-6.83(4H,m),7.07(1H,s),7.81-7.41(9H,m),8.03(1H,s),11.73(1H,s)
【0184】
(2) 化合物11の合成
2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.1mL,0.4mmol)を、ジイソプロピルエチルアミン(0.2mL,1.0mmol)および化合物10(0.3g,0.4mmol)のジクロロメタン溶液(20mL)に加え、窒素雰囲気下、1時間攪拌した。ジクロロメタンで希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン=10/9/1)で精製し、白色固体である標題化合物(0.3g)を得た。
31P NMR(122MHz,CDCl3)δP:148.72,149.04
【配列表】