(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】位置検出エンコーダ及び位置検出エンコーダの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20220628BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01D5/347 110A
G01D5/347 110M
G01D5/245 110J
(21)【出願番号】P 2018029187
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 博和
(72)【発明者】
【氏名】新井 里枝
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特表平6-507474(JP,A)
【文献】特開平4-85677(JP,A)
【文献】特開2012-127820(JP,A)
【文献】特開昭61-182523(JP,A)
【文献】特開2001-4319(JP,A)
【文献】特開2017-194338(JP,A)
【文献】特開2016-109634(JP,A)
【文献】特開2012-168066(JP,A)
【文献】特開2015-109079(JP,A)
【文献】特開平10-221019(JP,A)
【文献】特開2009-99873(JP,A)
【文献】特開平6-267821(JP,A)
【文献】特開平6-267820(JP,A)
【文献】特開平10-106937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/38
G01B 11/00-11/30
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出用パターンと、前記位置検出用パターンの長手方向に平行な方向に形成された直線パターンと、を有するスケールと、
前記位置検出用パターンが前記長手方向に移動することにより変化する位置検出信号を発生する位置検出部と、
を有し、
前記位置検出部には、前記位置検出用パターンの短手方向における前記スケールと前記位置検出部との間の位置関係のずれ許容値以下の間隔で配置された2つのマーカー
と、前記2つのマーカーの間において前記2つのマーカーを結ぶ直線上の位置に等間隔で配置された複数の補助マーカーと、を含む位置確認用パターン
であって、前記長手方向の異なる位置に複数の前記位置確認用パターンが形成されている、
位置検出エンコーダ。
【請求項2】
前記位置確認用パターンは、前記スケールが前記長手方向に移動した場合に前記2つのマーカーの間に前記直線パターンの所定の範囲が含まれる状態で前記位置検出部が前記位置検出用パターンを介して前記スケールの位置を示す信号を受けることができる位置に形成されている、
請求項1に記載の位置検出エンコーダ。
【請求項3】
前記複数の位置確認用パターンは、それぞれが有する前記2つのマーカーの間に前記直線パターンの所定の範囲が含まれる状態で前記位置検出部が正常な前記位置検出信号を出力できる位置に形成されている、
請求項
1又は2に記載の位置検出エンコーダ。
【請求項4】
前記位置確認用パターンは、複数の前記補助マーカーを含み、
隣接する前記複数の補助マーカーの間の間隔をΔとし、前記複数の位置確認用パターンの間の距離をLとし、前記スケールと前記位置検出部との間のヨーイング方向のずれ許容値をθとしたときに、
θ>tan
-1(Δ/L)の関係を満たす、
請求項
1から3のいずれか一項に記載の位置検出エンコーダ。
【請求項5】
前記スケールは、前記位置検出用パターンの短手方向における前記位置検出用パターンの両端に接するように形成された複数の前記直線パターンを有する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の位置検出エンコーダ。
【請求項6】
前記スケールは、絶対位置を検出するための絶対位置検出パターンと、相対位置を検出するための相対位置検出パターンと、を有し、前記絶対位置検出パターンと前記相対位置検出パターンとの境界位置に前記直線パターンが形成されている、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の位置検出エンコーダ。
【請求項7】
位置検出用パターンと、前記位置検出用パターンの長手方向に平行な方向に形成された直線パターンと、を有するスケールと、
前記位置検出用パターンが前記長手方向に移動することにより変化する位置検出信号を発生する位置検出部であって、前記位置検出用パターンの短手方向における前記スケールと前記位置検出部との間の位置関係のずれ許容値以下の間隔で配置された2つのマーカー
と、前記2つのマーカーの間において前記2つのマーカーを結ぶ直線上の位置に等間隔で配置された複数の補助マーカーと、を含む位置確認用パターン
であって、前記長手方向の異なる位置に複数の前記位置確認用パターンが形成された位置検出部と、
を備える位置検出エンコーダの製造方法であって、
前記スケールを前記長手方向に移動させる工程と、
前記長手方向に移動させる工程を実行中に、前記2つのマーカーの間に前記直線パターンが含まれているか否かを判定する工程と、
を有する、位置検出エンコーダの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出エンコーダにおいては、高い精度で被測定物の位置を検出することが要求される。特許文献1には、位置検出エンコーダを構成する部材の位置ずれによる被測定物の位置の検出誤差を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような技術を用いることによって、位置検出エンコーダを構成する部材の位置がずれている場合であっても、検出結果を補正することにより被測定物の位置の検出精度を向上させることができる。しかし、従来の技術では、補正を行えるようにするために、スケールに、位置検出用途以外に補正用途の特殊なパターンを追加形成することと、補正用途の特別な演算処理等を必要があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、位置検出エンコーダを構成する部材の位置関係の調整を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る位置検出エンコーダは、位置検出用パターンと、前記位置検出用パターンの長手方向に平行な方向に形成された直線パターンと、を有するスケールと、前記位置検出用パターンが前記長手方向に移動することにより変化する位置検出信号を発生する位置検出部と、を有し、前記位置検出部には、前記位置検出用パターンの短手方向における前記スケールと前記位置検出部との間の位置関係のずれ許容値以下の間隔で配置された2つのマーカーを含む位置確認用パターンが形成されている。
【0007】
前記位置確認用パターンは、前記スケールが前記長手方向に移動した場合に前記2つのマーカーの間に前記直線パターンの所定の範囲が含まれる状態で前記位置検出部が前記位置検出用パターンを介して前記スケールの位置を示す信号を受けることができる位置に形成されていてもよい。
前記位置検出部には、前記長手方向の異なる位置に複数の前記位置確認用パターンが形成されていてもよい。
【0008】
前記複数の位置確認用パターンは、それぞれが有する前記2つのマーカーの間に前記直線パターンの所定の範囲が含まれる状態で前記位置検出部が正常な前記位置検出信号を出力できる位置に形成されていてもよい。
【0009】
前記位置確認用パターンは、前記2つのマーカーを結ぶ直線上の位置に配置された少なくとも1つの補助マーカーを更に含めてもよい。
前記少なくとも1つの補助マーカーは、前記2つのマーカーの間に配置されていてもよい。
【0010】
前記位置確認用パターンは、複数の前記補助マーカーを含み、隣接する前記複数の補助マーカーの間の間隔をΔとし、前記複数の位置確認用パターンの間の距離をLとし、前記スケールと前記位置検出部との間のヨーイング方向のずれ許容値をθとしたときに、θ>tan-1(Δ/L)の関係を満たしてもよい。
【0011】
前記スケールは、前記位置検出用パターンの短手方向における前記位置検出用パターンの両端に接するように形成された複数の前記直線パターンを有してもよい。
前記スケールは、絶対位置を検出するための絶対位置検出パターンと、相対位置を検出するための相対位置検出パターンと、を有し、前記絶対位置検出パターンと前記相対位置検出パターンとの境界位置に前記直線パターンが形成されていてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る位置検出エンコーダの製造方法は、位置検出用パターンと、前記位置検出用パターンの長手方向に平行な方向に形成された直線パターンと、を有するスケールと、前記位置検出用パターンが前記長手方向に移動することにより変化する位置検出信号を発生する位置検出部であって、前記位置検出用パターンの短手方向における前記スケールと前記位置検出部との間の位置関係のずれ許容値以下の間隔で配置された2つのマーカーを含む位置確認用パターンが形成された位置検出部と、を備える位置検出エンコーダの製造方法であって、前記スケールを前記長手方向に移動させる工程と、前記長手方向に移動させる工程を実行中に、前記2つのマーカーの間に前記直線パターンが含まれているか否かを判定する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置検出エンコーダを構成する部材の位置関係の調整を容易にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】第1の実施形態に係る位置検出部の構成を示す図である。
【
図4】位置確認用パターンの変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図5】位置確認用パターンの変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図6】第2の実施形態に係る位置検出部の構成を示す図である。
【
図7】ヨーイング方向の位置ずれ量と信号振幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
[測定装置Sの構成]
図1は、測定装置Sの構成を模式的に示す図である。測定装置Sは、インクリメンタル方式及びアブソリュート方式を用いて、被測定物の位置を測定するための装置である。インクリメンタル方式は、動作開始後に設定された初期位置に対するスケールの相対位置を連続して特定し続けることにより位置の測定を行う方式である。アブソリュート方式は、動作開始前から予め定められている測定基準位置に対するスケールの絶対位置を特定することにより位置の測定を行う方式である。
【0016】
測定装置Sは、光源1と、レンズ2と、光学格子3と、スケール4と、位置検出部5と、ケーブル7と、処理装置8とを備える。光源1、レンズ2、光学格子3、スケール4及び位置検出部5は、位置検出エンコーダ6として機能する。ケーブル7は、位置検出部5が送信するシリアル信号を伝送する伝送路として機能する。処理装置8は、伝送路としてのケーブル7を介して、位置検出部5を制御するための制御データを含むシリアル信号を送信する。
【0017】
光源1は、光を発する発光部として機能するデバイスであり、例えばLED(Light Emitting Diode)である。光源1は、レンズ2に向けて光を発する向きに設けられている。
【0018】
レンズ2は、光源1が発した光がスケール4の所定の領域を照明するように、光源1から入射した光の向きを変える。具体的には、レンズ2は、光源1が発した光が、スケール4に形成された複数のトラックを通過して位置検出部5に到達するように、光源1が発した光を平行光線に変換する。レンズ2において平行光線に変換された光は、光学格子3に入射する。
【0019】
光学格子3は、レンズ2を介して入射した光の照度を均一化させる。具体的には、光学格子3は、レンズ2から入射される平行光線の照度分布が、位置検出部5内の光を検知する領域において均一になるようにする。なお、レンズ2から発せられる平行光線の照度分布が十分に均一である場合、測定装置Sに光学格子3が設けられていなくてもよい。
【0020】
図2は、スケール4の構成を示す図である。スケール4は、光源1が発した光の少なくとも一部を通過させる、それぞれパターンが異なる複数のトラックを有するパネルである。スケール4は、被測定物の位置を検出するために用いる位置検出用パターン40と、スケール4及び位置検出部5の位置関係を確認するために用いる直線パターンP11と、を有する。
【0021】
図2に示すように、位置検出用パターン40は、スケール4の長手方向に、光を透過する領域と光を透過しない領域とが平行に順次配置された第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43である。直線パターンP11は、位置検出用パターン40の長手方向に平行な方向に形成されたラインである。スケール4は、第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43において、光学格子3を介して入射した光を部分的に透過させて、位置検出部5内の位置によって強度が異なる透過光を発生させる。
【0022】
第1トラック41及び第3トラック43は、アブソリュート方式で被測定物の位置を特定するために用いられるアブソリュートスケールパターン(以下、ABSパターンという)である。第1トラック41のパターンの周期は、第3トラック43のパターンの周期と異なる。
【0023】
第2トラック42は、インクリメンタル方式で被測定物の位置を特定するために用いられるインクリメンタルスケールパターン(以下、INCパターンという)である。第2トラック42のパターンの周期は、第1トラック41のパターンの周期及び第3トラック43のパターンの周期よりも短い。
【0024】
図1に戻り、位置検出部5は、位置検出用パターン40が長手方向に移動することにより変化する位置検出信号を発生する受光モジュールである。位置検出部5は、第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43のそれぞれを介して受けた光の強度に応じた光信号を出力する受光素子が搭載された基板を有する。受光素子は、例えば、光を電流に変換する光電素子である。受光素子が搭載された基板は例えばガラス基板であり、受光素子から出力される位置検出信号を処理装置8に送信するための配線パターンが形成されている。位置検出部5は、位置検出用パターン40が長手方向に移動することにより変化する受光素子が受ける光量に応じた値の位置検出信号を出力する。
【0025】
本明細書において位置検出エンコーダ6は、光電式エンコーダであるとして説明するが、静電式エンコーダ又は電磁誘導式エンコーダ等の他の方式のエンコーダであってもよい。位置検出エンコーダ6が静電式エンコーダである場合、位置検出部5は、静電容量の変化に応じた信号を出力する。また、位置検出エンコーダ6が電磁誘導式エンコーダである場合、位置検出部5は、電磁誘導に基づく変位量に応じた信号を出力する。また、本明細書において位置検出エンコーダ6は、ABSパターン及びINCパターンを含むアブソリュート方式のエンコーダであるとして説明するが、INCパターンのみを含むインクリメンタル方式であってもよい。
以下、位置検出部5の詳細について説明する。
【0026】
[位置検出部5の構成]
図3は、第1の実施形態に係る位置検出部5の構成を示す図である。位置検出部5は、位置検出用パターン40が長手方向に移動することにより異なる値の位置検出信号を発生させる受光部51を有する。
【0027】
ところで、上述のようにスケール4には、光を透過する領域と光を透過しない領域とを有する複数のトラックが、スケール4の長手方向に直交する短手方向に配置されている。短手方向の位置検出部5の位置が設計値(以下、ラテラルオフセット位置という)から乖離していると、受光部51が受ける複数の光信号間にクロストークが発生したり、受光部51が受ける光信号の強度が低下したりする。その結果、位置検出部5による位置検出の精度が低下してしまう。
【0028】
そこで、
図3(a)に示すように、位置検出部5のガラス基板には、スケール4に形成された直線パターンP11を用いてラテラルオフセット位置の調整を行う際に用いられる位置確認用パターンP21が形成されている。具体的には、
図3(b)に示すように、位置検出部5には、位置検出用パターン40の短手方向におけるスケール4と位置検出部5との間の位置関係のずれ許容値以下の間隔Rで配置された2つのマーカーP211、P212を含む位置確認用パターンP21が形成されている。ずれ許容値は、光信号のクロストーク、又は光信号の強度の低下量が許容値になる場合のずれ量に相当する値である。
【0029】
位置確認用パターンP21は、スケール4が長手方向に移動した場合に2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11の所定の範囲が含まれる状態で、位置検出部5が位置検出用パターン40を介してスケール4の位置を示す信号を受けることができる位置に形成されている。スケール4の位置を示す信号は、例えば、光電式エンコーダにおいてスケール4を動かすことにより変化する光、又は静電式エンコーダにおいてスケール4を動かすことにより変化する静電容量等である。本明細書においてスケール4の位置を示す信号は、光電式エンコーダにおける光であるとして説明する。具体的には、位置確認用パターンP21は、2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11の所定の範囲が含まれる状態で、光信号のクロストーク又は光信号の強度の低下量が許容範囲になる位置に形成されている。
【0030】
[位置検出エンコーダ6の製造方法]
位置検出エンコーダ6を製造する工程において、作業者は、例えば顕微鏡で位置確認用パターンP21の付近を視認しながら、スケール4を長手方向に移動させ、長手方向に移動させる工程を実行中に、2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11が含まれているか否かを判定する。作業者は、2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11の全体が含まれている場合に正常であると判定し、2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11の全体が含まれていない場合に異常であると判定する。作業者は、異常であると判定した場合、スケール4と位置検出部5との位置関係を調整してから、再度、判定作業を実施する。
【0031】
以上の製造工程の少なくとも一部は、コンピュータにより実行してもよい。例えば、コンピュータの制御により、スケール4を長手方向に移動させる。そして、長手方向に移動させる工程を実行中に位置確認用パターンP21周辺の画像を撮影し、撮影した画像をコンピュータで解析することにより、2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11が含まれているか否かを判定してもよい。
【0032】
[第1の実施形態における効果]
以上説明したとおり、第1の実施形態に係る位置検出エンコーダ6においては、スケール4が直線パターンP11を有し、位置検出部5が位置確認用パターンP21を有する。位置検出エンコーダ6がこのような構成を有することで、位置検出エンコーダ6の製造工程において、作業者は、位置確認用パターンP21の2つのマーカーP211、P212の間に直線パターンP11が含まれているかを確認することによって、ラテラルオフセット位置にずれが生じているかを容易に確認することができる。その結果、位置検出エンコーダ6によれば、位置検出エンコーダ6を構成する部材の位置関係の調整を容易にすることができる。
【0033】
また、位置検出エンコーダ6がこのような構成を有することで、位置ずれ量を計測せずにラテラルオフセット位置にずれが生じているかを確認することができるため、カメラ及び計測用ソフトウェア等の設備投資のコストを削減することができる。また、受信信号を用いて位置ずれ量を計測する場合においては、例えば、位置検出エンコーダ6が光電式エンコーダである場合、暗所の環境で調整作業を行うことが必要である等、位置検出エンコーダ6の種類に応じた環境で調整作業を行わなければならない。しかし、位置検出エンコーダ6によれば、位置ずれ量を計測せずにラテラルオフセット位置にずれが生じているかを確認することができるので、環境に影響されることなく位置検出エンコーダ6を構成する部材の位置関係の調整をすることができる。
【0034】
また、作業者は、スケール4の貼付け、スケール4を固定する不図示の機構部、及び位置検出部5のいずれかが傾いている場合において、スケール4を長手方向に動かした場合、直線パターンP11が位置確認用パターンP21の一方のマーカーに近づき、もう一方のマーカーに遠ざかる動きを確認することができる。位置検出エンコーダ6を製造する途中で行う中間検査においてこのような確認を行うことで、位置検出エンコーダ6を製造した後に行う最終検査で部材の位置ずれが見つかることによる工程のやり直しを防ぐことができる。
【0035】
[変形例1]
上記の説明において、位置検出部5は、2つのマーカーP211、P212を含む位置確認用パターンP21を有する例を示したが、位置確認用パターンP21に含まれるマーカーが2つのマーカーP211、P212であるとは限らない。
図4は、位置確認用パターンP21の変形例の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、位置確認用パターンP21は、2つのマーカーP211、P212を結ぶ直線上の位置であって、2つのマーカーP211、P212の間に配置された補助マーカーP213を更に含んでもよい。
図4においては、位置確認用パターンP21が4つの補助マーカーP213を含む例を示している。
【0036】
この場合、補助マーカーP213は、例えば、ラテラルオフセット位置のずれ許容値の1/2以下の間隔Δ1で配置される。
図4に示す位置確認用パターンP21には、ラテラルオフセット位置のずれ許容値の1/5の間隔で、4つの補助マーカーが配置されている。作業者は、位置確認用パターンP21に2つのマーカーP211、P212のみが含まれている場合においては、ラテラルオフセット位置のずれ許容値以内であるか否かしか判定できない。しかし、位置確認用パターンP21が補助マーカーP213を更に有することによって、作業者は、ラテラルオフセット位置がどの程度ずれているかを確認することができる。
【0037】
[変形例2]
上記の説明において、受光素子が搭載された基板が、ガラス基板である例を示したが、基板が透明であるとは限らない。
図5は、位置確認用パターンP21の変形例の構成を模式的に示す図である。例えば基板がPCB(Printed Circuit Board)基板のような不透明な基板である場合、基板には、目盛となる複数の穴が形成されてもよい。例えば、基板には、位置確認用パターンP21として、端面に半円又はV字等の複数の切欠き、エッジぎわの複数のパターン、又は複数の丸い穴等が形成されていてもよい。この場合、基板に形成された複数の切欠き等は、複数の切欠き等の間に直線パターンP11の所定の範囲が含まれる状態で、位置検出部5が位置検出用パターン40を介して光を受けることができる位置に形成されていてもよい。
【0038】
具体的には、
図5に示す位置確認用パターンP26のように、基板には、位置確認用パターンP21に含まれる2つのマーカーP211、P212それぞれに対応する位置において、端面に半円の複数の切欠きが形成されていてもよい。また、
図5に示す位置確認用パターンP27のように、基板には、位置確認用パターンP21に含まれる2つのマーカーP211、P212それぞれに対応する位置において、複数の丸い穴が形成されていてもよい。
【0039】
また、
図5に示す位置確認用パターンP28及びP29のように、基板には、位置確認用パターンP22に含まれる2つのマーカーP211、P212、及び複数の補助マーカーP213それぞれに対応する位置において、端面に半円又は角面の複数の切欠きが形成されていてもよい。また、
図5に示す位置確認用パターンP30のように、基板には、位置確認用パターンP22に含まれる2つのマーカーP211、P212、及び複数の補助マーカーP213それぞれに対応する位置、並びにマーカーと補助マーカーとの間又は2つの補助マーカーとの間それぞれに対応する位置に、複数の丸い穴が互い違いに形成されていてもよい。このようにすることで、作業者は、位置検出エンコーダ6の製造工程において、基板に形成されている複数の穴を通過した光を確認することにより、ラテラルオフセット位置にずれが生じているかを容易に確認することができる。
【0040】
<第2の実施形態>
[ヨーイング方向の位置ずれを検出可能にする]
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態に係る位置検出エンコーダ6は、位置検出部5が1つの位置確認用パターンを有する。しかし、1つの位置確認用パターンでは、スケール4及び位置検出部5の傾きであるヨーイング方向の位置ずれを確認することが難しい。そこで、第2の実施形態に係る位置検出エンコーダ6は、位置検出部5の長手方向に複数の位置確認用パターンを有する。以下、第1の実施形態と異なる部分について説明を行う。第1の実施形態と同じ部分については適宜説明を省略する。
【0041】
図6は、第2の実施形態に係る位置検出部5の構成を示す図である。第2の実施形態に係る位置検出部5には、長手方向の異なる位置に複数の位置確認用パターンが形成されている。
図6(a)に示すように、位置検出部5には、受光部51の左側に位置する位置確認用パターンP22と、受光部51の右側に位置する位置確認用パターンP23とが形成されている。位置確認用パターンP22、P23は、それぞれが有する2つのマーカー(例えばマーカーP221、P222)の間に、スケール4に形成されている直線パターンP11の所定の範囲が含まれる状態で位置検出部5が正常な位置検出信号を出力できる位置に形成されている。位置確認用パターンP22と位置確認用パターンP23との距離、並びに位置確認用パターンP22及び位置確認用パターンP23のマーカー間の距離は、ヨーイング方向の位置ずれが許容範囲であるか否かを検出できる距離に設定されている。位置検出部5が、このような複数の位置確認用パターンを有することにより、スケール4と位置検出部5との間のヨーイング方向の位置ずれを容易に確認することができる。
【0042】
位置確認用パターンは、2つのマーカーを結ぶ直線上の位置に配置された少なくとも1つの補助マーカーを更に含んでもよい。具体的には、少なくとも1つの補助マーカーが、2つのマーカーの間に配置されている。より具体的には、
図6(b)に示すように、位置確認用パターンP22は、2つのマーカーP221、P222の間に配置された4つの補助マーカーP223を含んでいる。このように、位置検出用パターンが補助マーカーを有することで、ヨーイング方向の位置ずれ量を高い精度で検出することができる。
【0043】
図7は、ヨーイング方向の位置ずれ量と信号振幅との関係を示す図である。
図7の縦軸は、受光部51が受ける光信号の振幅の最大値に対する割合を示し、横軸は中心を0.0度とするヨーイング方向の位置ずれ角度を示す。
図7に示すように、ヨーイング方向のずれ許容値は、光信号の振幅の減少量が許容される範囲に基づいて定まる。このヨーイング方向のずれ許容値を超えた場合、位置検出部5は、信号強度が低下し、被測定物の位置を検出する精度が低下してしまう。そこで、
図6(c)に示すように、隣接する4つの補助マーカーの間の間隔をΔ2とし、2つの位置確認用パターンP22、P23の間の距離をLとし、スケール4と位置検出部5との間のヨーイング方向のずれ許容値をθとしたときに、θ>tan
-1(Δ2/L)の関係を満たす間隔で、複数の補助マーカーP223を配置する。
【0044】
[位置検出エンコーダ6の製造方法]
位置検出エンコーダ6を製造する工程において、作業者は、例えば顕微鏡で位置確認用パターンP22及びP23の付近を視認しながら、スケール4を長手方向に移動させる。そして、長手方向に移動させる工程を実行中に、複数の位置確認用パターンにおける対応する、隣接する2つの補助マーカーの間、又はマーカーと補助マーカーとの間に直線パターンP11が含まれているか否かを判定する。「対応する2つの補助マーカー」は、スケール4の短手方向における位置が同一の補助マーカーである。
【0045】
作業者は、複数の位置確認用パターンにおける対応する、隣接する2つの補助マーカーの間、又はマーカーと補助マーカーとの間に直線パターンP11の全体が含まれている場合に正常(例えばヨーイング方向のずれ量がθ未満)であると判定し、隣接する2つの補助マーカーの間、又はマーカーと補助マーカーとの間に直線パターンP11の全体が含まれていない場合に異常であると判定する。作業者は、異常であると判定した場合、スケール4と位置検出部5との位置関係を調整してから、再度、判定作業を実施する。
【0046】
以上の製造工程の少なくとも一部は、コンピュータにより実行してもよい。例えば、コンピュータの制御により、スケール4を長手方向に移動させる。そして、長手方向に移動させる工程を実行中に位置確認用パターンP22及びP23周辺の画像を撮影し、撮影した画像をコンピュータで解析することにより、複数の位置確認用パターンそれぞれに対して、隣接する2つの補助マーカーの間、又はマーカーと補助マーカーとの間に直線パターンP11が含まれているか否かを判定してもよい。
【0047】
[第2の実施形態における効果]
以上説明したとおり、第2の実施形態に係る位置検出エンコーダ6においては、位置検出部5が、2つのマーカーの間に配置された少なくとも1つの補助マーカーを含む複数の位置確認用パターンを有する。位置検出エンコーダ6がこのような構成を有することで、位置検出エンコーダ6の製造工程において、作業者は、複数の位置確認用パターンそれぞれに対して、隣接する2つの補助マーカーの間、又はマーカーと補助マーカーとの間に直線パターンP11が含まれているかを確認することによって、ヨーイング方向に位置ずれが生じているかを容易に確認することができる。
【0048】
[変形例]
上記の説明において、スケール4は、1つの直線パターンP11を有する例を示したが、スケール4が有する直線パターンは1つに限らない。
図8及び
図9は、スケール4の変形例の構成を示す図である。スケール4は、位置検出パターンの短手方向における位置検出用パターン40の両端に接するように形成された複数の直線パターンを有してもよい。
図8(a)に示すように、スケール4は、第1トラック41の上側に形成されている直線パターンP11の他に、直線パターンP11の反対側に位置する第3トラック43の下側に直線パターンP12を形成してもよい。
【0049】
この場合において、
図8(b)に示すように、位置検出部5には、スケール4と位置検出部5との位置関係が正常である場合に直線パターンP11が所定の範囲に含まれるように配置された位置確認用パターンP22、P23と、スケール4と位置検出部5との位置関係が正常である場合に直線パターンP12が所定の範囲に含まれるように配置された位置確認用パターンP24、P25とが形成されている。このようにすることで、作業者は、位置検出エンコーダ6の種類に応じて、見やすい位置確認用パターンからスケール4及び位置検出部5の位置関係にずれが生じているかを確認することができる。
【0050】
また、スケール4の位置検出用パターンの短手方向の両端に直線パターンを配置することにより、位置検出用パターンと重ならない位置に直線パターンを形成することができる。また、スケール4の製造においては、ABSパターンの先端のように尖った箇所で終わるような形状に対してエッチングを行うと、製造上の安定性が低くなるが、スケール4の両端に直線パターンを形成することにより、ABSパターンの先端から離れた位置に直線パターンを形成できるので、製造上の安定性が向上する。
【0051】
なお、スケール4の短手方向の両端は、面積が限られて直線パターンを形成することが難しい場合がある。そこで、ABSパターンとINCパターンとを有するスケール4においては、ABSパターンとINCパターンとの境界位置に直線パターンが形成されていてもよい。
図9に示すように、スケール4は、ABSパターンである第1トラックと、INCパターンである第2トラックとの境界位置に直線パターンP13を有し、第2トラックと、ABSパターンである第3トラックとの境界位置に直線パターンP14を有してもよい。このようにすることで、スケール4には、スケール4の短手方向の両端よりも広い面積において、直線パターンを形成することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0053】
1 光源
2 レンズ
3 光学格子
4 スケール
5 位置検出部
51 受光部
6 位置検出エンコーダ
7 ケーブル
8 処理装置