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  • 特許-レジスト組成物及びパターン形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220628BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220628BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220628BHJP
   C08F 32/08 20060101ALI20220628BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20220628BHJP
   C08F 12/22 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
G03F7/20 501
G03F7/20 521
C08F32/08
C08F20/20
C08F12/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054552
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020154210
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】谷口 良輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敬之
(72)【発明者】
【氏名】井上 直也
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/038
G03F 7/20
C08F 32/08
C08F 20/20
C08F 12/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(A-1)及び/又は(A-2)で表されるオニウム塩を含む酸発生剤、及び(B)下記式(B1)及び下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むベースポリマーを含有するものであることを特徴とする化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、若しくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはアルコキシ基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基若しくは炭素数2~20のアシロキシ基、又は-NR-C(=O)-R若しくは-NR-C(=O)-O-Rであり、Rは、水素原子、又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~16のアルキル基若しくは炭素数2~16のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基又はアシロキシ基を含んでいてもよい。Zは、pが1のときは単結合又は炭素数1~20の2価の連結基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の3価又は4価の連結基であり、該連結基は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい。Rf~Rfは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、これらのうち少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、RfとRfとが合わさって、カルボニル基を形成してもよい。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~12のアルキル基若しくはオキソアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数2~12のアルケニル基若しくはオキソアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールオキソアルキル基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル基が介在していてもよい。また、RとRとが結合して、これらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。mは、1~5の整数である。nは、0~3の整数である。pは、1~3の整数である。)
【化2】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R11、R12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。Aは、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基を表し、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。Wは、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。Rx及びRyは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。tは、0又は1である。xは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x-bを満たす整数である。cは、0≦c≦5+2x-dを満たす整数である。b,dは、1~3の整数である。)
【請求項2】
前記ベースポリマーが更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位と、下記式(B4)で表される繰り返し単位とから選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化3】
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~8の1級アルコキシ基、炭素数2~8の2級アルコキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。e及びfは、それぞれ独立に、0~4の整数である。)
【請求項3】
前記ベースポリマーが、下記式(B5)で表される繰り返し単位と、下記式(B6)で表される繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、R、Rx、Ry、W、b、dは前記と同じである。)
【請求項4】
更に、(C)架橋剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法であって、
被加工基板上に、前記化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程を含み、前記高エネルギー線が、KrFエキシマレーザー光、電子線又は波長3~15nmの極端紫外線であることを特徴とするレジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記高エネルギー線が、電子線又は波長3~15nmの極端紫外線であることを特徴とする請求項5に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅ネガ型レジスト組成物及び該組成物を用いるレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特に、フラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト材料を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィーがある。近年、より微細なパターンを得るためにEBや極端紫外線(EUV)といった短波長光用のレジスト材料の検討が進められている。
【0003】
パターンの微細化と共にラインパターンのエッジラフネス(LWR)及びホールパターンやドットパターンの寸法均一性(CDU)が問題視されている。ベースポリマーや酸発生剤の偏在や凝集の影響や、酸拡散の影響が指摘されている。更に、レジスト膜の薄膜化にしたがってLWR、CDUが大きくなる傾向があり、微細化の進行に伴う薄膜化によるLWR、CDUの劣化は深刻な問題になっている。
【0004】
EUVレジストにおいては、高感度化、高解像度化及び低LWR化を同時に達成する必要がある。酸拡散距離を短くするとLWRは小さくなるが、低感度化する。例えば、ポストエクスポージャーベーク(PEB)温度を低くすることによってLWRは小さくなるが、低感度化する。クエンチャーの添加量を増やしてもLWRが小さくなるが、低感度化する。感度とLWRのトレードオフの関係を打ち破ることが必要である(特許文献1)。
【0005】
ところで、フォトリソグラフィーに用いるレジスト組成物としては、露光部を溶解させてパターンを形成するポジ型及び露光部を残してパターンを形成するネガ型があり、それらは必要とするレジストパターンの形態に応じて使いやすい方が選択される。ドットパターンを形成させる際、アルカリ現像を用いたポジ型レジスト組成物の場合、ブライトマスクを使う必要があるがその場合、高エネルギーの電子線、もしくはEUV光が照射される面積が大きくマスクが劣化してしまうという欠点がある。そのため、露光面積が小さくて済むダークマスクを用いるのだが、その場合は露光部がアルカリ現像液に不溶化するネガ型レジストが不可欠である(特許文献2)。
【0006】
一方でアルカリ現像液を使うネガ型レジストでは露光部に酸が発生しその酸の作用によりベースポリマーが不溶化するのだが、露光部で発生した酸がアルカリ現像液と親和性が高く現像時に露光部が溶解しパターンのトップロス、それに伴うLWRやCDUの劣化が問題となっている。また、酸拡散の制御も十分とはいえず、露光部から未露光部への酸の拡散により不溶化が不十分となり結果としてアルカリ現像による耐性が足りずに同様にトップロス形状を招くと共に、本来は溶解すべき未露光部のアルカリ溶解性が下がりスカムになってしまう問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-197853号公報
【文献】特開2013-164588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、酸を触媒とする化学増幅レジストにおいて高感度、かつラインアンドスペースパターン(L/Sパターン)のLWRやドットパターンのCDUを低減させ、かつトップロスの少ない良好な形状を形成させることが可能なネガ型レジストの開発が望まれている。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、高感度かつLWR、CDUが小さく形状が良好なパターンを与える化学増幅ネガ型レジスト組成物、及び該組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記式(A-1)及び/又は(A-2)で表されるオニウム塩を含む酸発生剤、及び(B)下記式(B1)及び下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むベースポリマーを含有するものであることを特徴とする化学増幅ネガ型レジスト組成物を提供する。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、若しくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはアルコキシ基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基若しくは炭素数2~20のアシロキシ基、又は-NR-C(=O)-R若しくは-NR-C(=O)-O-Rであり、Rは、水素原子、又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~16のアルキル基若しくは炭素数2~16のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基又はアシロキシ基を含んでいてもよい。Zは、pが1のときは単結合又は炭素数1~20の2価の連結基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の3価又は4価の連結基であり、該連結基は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい。Rf~Rfは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、これらのうち少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、RfとRfとが合わさって、カルボニル基を形成してもよい。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~12のアルキル基若しくはオキソアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数2~12のアルケニル基若しくはオキソアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールオキソアルキル基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル基が介在していてもよい。また、RとRとが結合して、これらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。mは、1~5の整数である。nは、0~3の整数である。pは、1~3の整数である。)
【化2】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R11、R12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。Aは、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基を表し、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。Wは、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。tは、0又は1である。xは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x-bを満たす整数である。cは、0≦c≦5+2x-dを満たす整数である。b,dは、1~3の整数である。)
【0011】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物であれば、高感度かつLWR、CDUが小さく形状が良好なパターンを与える化学増幅ネガ型レジスト組成物を提供することができる。
【0012】
また、本発明では、前記ベースポリマーが更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位と、下記式(B4)で表される繰り返し単位とから選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含むものであることを特徴とする化学増幅ネガ型レジスト組成物を提供する。
【化3】
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~8の1級アルコキシ基、炭素数2~8の2級アルコキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。e及びfは、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0013】
このような化学増幅ネガ型レジスト組成物であれば、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性の向上という効果が得られる。
【0014】
また、本発明では、前記ベースポリマーが、下記式(B5)で表される繰り返し単位と、下記式(B6)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化4】
(式中、R Rx、Ry、W、b、dは前記と同じである。)
【0015】
このような化学増幅ネガ型レジスト組成物であれば、繰り返し単位B5の作用により、より一層エッチング耐性が向上するとともに基板に対する密着性とアルカリ現像液に対する溶解性とが向上し、繰り返し単位B6の作用により、ネガ化反応をより一層効率的に進めることができるため、解像性能をさらに向上させることができる。
【0016】
上記化学増幅ネガ型レジスト組成物は、更に、(C)架橋剤を含むものであることができる。
【0017】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物であれば、露光部の溶解速度をより一層低下させることにより特にLWR、CDUが小さく形状が良好なパターンを得ることができる。
【0018】
また、本発明では、上記化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法であって、被加工基板上に、前記本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法を提供する。
【0019】
本発明のレジストパターン形成方法であれば、高感度かつLWR、CDUが小さく形状が良好なレジストパターンを形成することができる。
【0020】
この場合、前記高エネルギー線が、電子線又は波長3~15nmの極端紫外線であることが好ましい。
【0021】
本発明のレジスト組成物は、高エネルギー線の中でも特に電子線(EB)、極端紫外線(EUV)による微細パターニングに好適であり、より一層LWR、CDUが小さく形状が良好なレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物を構成するベースポリマーは、溶解コントラストが高く露光部の不溶化能に優れる。一方、ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩は、ヨウ素の分子量が大きいため、酸拡散が小さいという特徴を有する。更に、波長13.5nmのEUVのヨウ素による吸収が非常に大きいため、露光中にヨウ素から2次電子が発生し、高感度化される。これらによって、高感度、低LWRかつ低CDUのレジストを構築することが可能となる。さらにヨウ素原子はアルカリ現像液に対する溶解性を低下させるため、本発明のネガ型レジスト組成物を用いて形成させたネガパターンは、従来のネガ型レジスト組成物を用いて形成させたネガパターンに比べアルカリ現像液に対する溶解性が抑制され、トップロスが少なく良好なパターン形状を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】露光量と残膜率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定のヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩を含む酸発生剤と特定のベースポリマーとを組み合わせることで高感度、かつトップロスの小さくLWR、CDUの小さなネガ型レジスト組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
即ち、本発明は、(A)後述の(A-1)及び/又は(A-2)で表されるオニウム塩を含む酸発生剤、及び、(B)後述の(B1)及び(B2)で表される繰り返し単位を含むベースポリマーを含有するものであることを特徴とする化学増幅ネガ型レジスト組成物である。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
[化学増幅ネガ型レジスト組成物]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、(A)下記式(A-1)及び/又は(A-2)で表されるヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩を含む酸発生剤、及び(B)下記式(B1)及び下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むベースポリマーを必須成分として含有することを特徴とする。そして、前記必須成分以外に架橋剤、クエンチャー、有機溶剤、界面活性剤などの任意成分を必要に応じて含むことができる。以下、これら成分について詳細に説明する。
【0028】
【化5】
【化6】
【0029】
[(A)ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩及びヨードニウム塩]
(A)成分は、下記式(A-1)及び/又は(A-2)で表されるオニウム塩(ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩)を含む酸発生剤である。
(A)成分は、式(A-1)で表されるオニウム塩と式(A-2)で表されるオニウム塩のうちのいずれか一方であっても、両方であってもよい。
【化7】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、若しくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはアルコキシ基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基若しくは炭素数2~20のアシロキシ基、又は-NR-C(=O)-R若しくは-NR-C(=O)-O-Rであり、Rは、水素原子、又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~16のアルキル基若しくは炭素数2~16のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基又はアシロキシ基を含んでいてもよい。Zは、pが1のときは単結合又は炭素数1~20の2価の連結基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の3価又は4価の連結基であり、該連結基は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい。Rf~Rfは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、これらのうち少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、RfとRfとが合わさって、カルボニル基を形成してもよい。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~12のアルキル基若しくはオキソアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数2~12のアルケニル基若しくはオキソアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールオキソアルキル基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル基が介在していてもよい。また、RとRとが結合して、これらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。mは、1~5の整数である。nは、0~3の整数である。pは、1~3の整数である。)
【0030】
上記式中、Rは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、若しくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはアルコキシ基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基若しくは炭素数2~20のアシロキシ基、又は-NR-C(=O)-R若しくは-NR-C(=O)-O-Rである。前記Rは、水素原子、又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基である。前記Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~16のアルキル基若しくは炭素数2~16のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基又はアシロキシ基を含んでいてもよい。
【0031】
におけるアルキル基、アルコキシ基及びアシロキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0032】
上記Rにおけるアルキル基、アルコキシ基、アシル基及びアシロキシ基の炭化水素部分、Rにおけるアルキル基、アルコキシ基、アシル基及びアシロキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、炭素数に応じた上記炭化水素基を挙げることができる。
【0033】
上記Rにおけるアルケニル基、アリール基、アラルキル基の好ましい例としては、
ビニル基、アリル基、ブテニル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0034】
Zは、pが1のときは単結合又は炭素数1~20の2価の連結基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の3価又は4価の連結基であり、該連結基は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい。
【0035】
Zで表される連結基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の飽和環状2価炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等の不飽和環状2価炭化水素基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基で置換されていてもよく、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、又はこれらの基の炭素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、カーボネート基、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0036】
Rf~Rfは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、これらのうち少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、Rf及びRfと、これらが結合する炭素原子とが合わさって、カルボニル基を形成してもよい。
【0037】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~12のアルキル基若しくはオキソアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数2~12のアルケニル基若しくはオキソアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールオキソアルキル基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル基が介在していてもよい。また、RとRとが結合して、これらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0038】
、R、R、R及びRにおけるアルキル基、オキソアルキル基、アルケニル基、オキソアルケニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基の炭化水素部分については、例えば上記R、Rについて示したものを挙げることができる。
【0039】
mは、1~5の整数である。nは、0~3の整数である。pは、1~3の整数である。
mは、1~3の整数が、nは、0~2の整数が、pは、1~2の整数が好ましい。
【0040】
上記式(A-1)又は(A-2)で表されるオニウム塩(ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩)は、ヨウ素の分子量が大きいため、酸拡散が小さいという特徴を有する。更に、波長13.5nmのEUVはヨウ素による吸収が非常に大きいため、露光中にヨウ素から2次電子が発生し、高感度化される。さらにヨウ素原子はアルカリ現像液に対する溶解性を低下させる。
(A)成分(酸発生剤)が上記のような特徴を有するオニウム塩を含んでいるため、本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いると、高感度、低LWRかつ低CDUのレジストを構築することが可能となる。さらに本発明のネガ型レジスト組成物を用いて形成させたネガパターンは、従来のネガ型レジスト組成物を用いて形成させたネガパターンに比べアルカリ現像液に対する溶解性が抑制され、トップロスが少なく良好なパターン形状を形成することができる。
なお、(A)成分(酸発生剤)は、式(A-1)で表されるオニウム塩と式(A-2)で表されるオニウム塩のうちのいずれか一方、又は両方であってよい。
【0041】
式(A-1)で表されるスルホニウム塩及び式(A-2)で表されるヨードニウム塩のアニオン部分としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
【化8】
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
【化12】
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
式(A-1)で表されるスルホニウム塩のカチオン部分としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】
【化20】
【0055】
【化21】
【0056】
【化22】
【0057】
【化23】
【0058】
【化24】
【0059】
【化25】
【0060】
【化26】
【0061】
【化27】
【0062】
式(A-2)で表されるヨードニウム塩のカチオン部分としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
【化28】
【0064】
式(A-1)で表されるスルホニウム塩及び式(A-2)で表されるヨードニウム塩の合成方法としては、ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸よりも弱酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩とイオン交換をする方法が挙げられる。ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸よりも弱い酸としては、炭酸等が挙げられる。また、ヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のナトリウム塩やアンモニウム塩をスルホニウムクロリド塩又はヨードニウムクロリド塩とイオン交換して合成することもできる。
【0065】
本発明のレジスト組成物において、式(A-1)で表されるスルホニウム塩及び/又は式(A-2)で表されるヨードニウム塩の含有量は、後述するベースポリマー100質量部に対し、感度と酸拡散抑制効果の点から0.01~100質量部が好ましく、0.05~50質量部がより好ましい。
【0066】
[(B)ベースポリマー]
本発明のネガ型レジスト組成物に含まれる(B)ベースポリマーは、下記式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1ともいう。)及び下記式(B2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2ともいう。)を含むポリマー(以下、ポリマーBともいう。)である。繰り返し単位B1は、エッチング耐性を与えるとともに基板に対する密着性とアルカリ現像液に対する溶解性とを与える繰り返し単位である。繰り返し単位B2は、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用により酸脱離性基が脱離反応を起こし、アルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発する繰り返し単位である。繰り返し単位B2の作用により、ネガ化反応をより効率的に進めることができるため、解像性能を向上させることができる。
【化29】
【0067】
式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。R12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0068】
は、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基を表し、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。Wは、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。tは、0又は1である。xは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x-bを満たす整数である。cは、0≦c≦5+2x-dを満たす整数である。b,dは、1~3の整数である。
【0069】
1で表されるアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルキレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B1)中のtが1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、tが0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルキレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0070】
11、R12で表されるアシルオキシ基、アルキル基及びアルコキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0071】
式(B1)中、xは0~2の整数を表し、0の場合はベンゼン骨格、1の場合はナフタレン骨格、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。aは0≦a≦5+2x-bを満たす整数であるが、xが0の場合、好ましくは、aは0~3の整数であり、bは1~3の整数であり、xが1又は2の場合、好ましくは、aは0~4の整数であり、bは1~3の整数である。
【0072】
繰り返し単位B1の含有量は、高解像性を得る目的で高エネルギー線照射によってネガ化される部分と照射されない部分(ネガ化されない部分)に高コントラストを引き出すためには、前記ポリマーBを構成する全繰り返し単位中、その下限は40モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、その上限は、90モル%であり、80モル%がより好ましい。
【0073】
が0かつAが単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、すなわちリンカーのない場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。これらのうち、より好ましくは下記式(B5)で表される繰り返し単位等である。
【化30】
(式中、R及びbは、前記と同じ。)
【0074】
また、tが1である場合、つまりリンカーとしてエステル骨格を有する場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、上記繰り返し単位B1の好ましい例も併せて示すが、これらに限定されない。
【化31】
【0075】
繰り返し単位B2は、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用により酸脱離性基が脱離反応を起こし、アルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発する繰り返し単位である。繰り返し単位B2の作用により、ネガ化反応をより効率的に進めることができるため、解像性能を向上させることができる。
【0076】
で表される脂肪族1価炭化水素基又は1価芳香環基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、メチルカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0077】
Rx又はRyとして好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びその構造異性体や、これらの水素原子の一部がヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0078】
は0~2の整数を表すが、0である場合にはベンゼン環、1である場合にはナフタレン環、2である場合にはアントラセン環である。
【0079】
で表されるアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルキレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B2)中のtが1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、tが0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。
【0080】
繰り返し単位B2としては、下記式(B6)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化32】
(式中、R、Rx、Ry、W及びdは、前記と同じ。)
【0081】
繰り返し単位B2の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記例中、Meはメチル基を表し、Acはアセチル基を表す。
【化33】
【0082】
【化34】
【0083】
【化35】
【0084】
【化36】
【0085】
繰り返し単位B2の含有量は、前記ポリマーBを構成する全繰り返し単位中、その下限は、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、その上限は、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。
【0086】
特に、前記ポリマーBが、繰り返し単位B5と繰り返し単位B6を含む場合には、繰り返し単位B5の作用により、より一層エッチング耐性が向上するとともに基板に対する密着性とアルカリ現像液に対する溶解性とが向上し、繰り返し単位B6の作用により、ネガ化反応をより一層効率的に進めることができるため、解像性能をさらに向上させることができる。
【0087】
ベースポリマーBは、エッチング耐性を向上させる目的で、更に下記式(B3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B3ともいう。)と、下記式(B4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B4ともいう。)とから選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含んでもよい。
【化37】
【0088】
式中R13及びR14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1~8の1級アルコキシ基、炭素数2~8の2級アルコキシ基、ハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、又はハロゲン置換されていてもよい炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。e及びfは、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0089】
繰り返し単位B3~B4のうち少なくとも1つを構成単位として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性の向上という効果が得られる。
【0090】
繰り返し単位B3~B4は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、繰り返し単位B3~B4の含有量は、前記ポリマーBを構成する全繰り返し単位中、その下限は、2モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、その上限は、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。
【0091】
[(C)架橋剤]
本発明において、架橋剤を配合しても良い。ネガ型レジスト組成物の場合は、架橋剤を添加することによって、露光部の溶解速度を低下させることによりネガティブパターンを得ることができる。
【0092】
本発明で使用可能な架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されてよい、エポキシ化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、及びアルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物等が挙げられる。これらは、添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。
【0093】
前記架橋剤のうち、エポキシ化合物としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0094】
メラミン化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0095】
グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0096】
グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリル等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0097】
ウレア化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレア等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
【0098】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0099】
アジド化合物としては、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジド等が挙げられる。
【0100】
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0101】
(C)架橋剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し、2~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。前記範囲であれば、パターン間がつながり、解像度が低下するおそれが少ない。(C)架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
[その他の成分]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、上記成分以外に、上記架橋剤のほか、クエンチャー、有機溶剤、界面活性剤等を必要に応じて適宜組み合わせて配合することができる。このようにネガ型レジスト組成物を構成することによって、従来のネガ型レジスト組成物を用いて形成させたネガパターンに比べアルカリ現像液に対する溶解性が抑制され、トップロスが少なく良好なパターン形状を形成することができる。そして、レジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、超LSI用レジスト材料として非常に有効なものとすることができる。
【0103】
・クエンチャー
本発明のレジスト組成物には、クエンチャーを配合してもよい。前記クエンチャーとしては、従来型の塩基性化合物が挙げられる。従来型の塩基性化合物としては、第1級、第2級、第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。このような塩基性化合物を添加することによって、例えば、レジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができる。
【0104】
また、前記クエンチャーとして、特開2008-158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないカルボン酸の、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸又はメチド酸は、酸不安定基を脱保護させるために必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないカルボン酸は脱保護反応を殆ど起こさないために、クエンチャーとして機能する。
【0105】
前記クエンチャーとしては、更に、特開2008-239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーが挙げられる。これは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0106】
本発明のレジスト組成物において、前記クエンチャーの含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましく、0~4質量部がより好ましい。
【0107】
・有機溶剤
本発明のネガ型レジスト組成物は、その他の成分として有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、前述した各成分を溶解可能なものであれば、特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0108】
これらの有機溶剤の中でも、(A)成分の光酸発生剤の溶解性が特に優れている、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0109】
有機溶剤の使用量は、(B)ベース樹脂100質量部に対し、200~12,000質量部が好ましく、400~10000質量部がより好ましい。
【0110】
・界面活性剤
本発明のレジスト組成物には、被加工基板への塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、PF-636(OMNOVA SOLUTIONS製)やFC-4430(3M社製)、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。界面活性剤の含有量は、(B)ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましい。
【0111】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は、被加工基板上に、前述した本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程(前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、EB又はEUV等で露光する工程)、及びアルカリ現像液を用いて露光した前記レジスト膜を現像する工程を含む。
【0112】
基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi、SiO等)を用いることができる。前述の基板上に、スピンコーティング等の手法で膜厚が0.03~2μmとなるようにレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0113】
レジスト膜の露光は、KrFエキシマレーザー光、又はEUVを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm、より好ましくは10~100mJ/cmとなるように照射することで行うことができる。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するため直接、露光量が好ましくは1~300μC/cm、より好ましくは10~200μC/cmとなるように照射する。
【0114】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。更に、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0115】
また、パターン形成方法の手段として、レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【実施例
【0116】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0117】
レジスト組成物に用いたスルホニウム塩又はヨードニウム塩の酸発生剤PAG1~17の構造を以下に示す。PAG1~17は、それぞれ下記アニオンを与えるヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のアンモニウム塩と、下記カチオンを与えるスルホニウムクロリド又はヨードニウムクロリドとのイオン交換によって合成した。
【化38】
【0118】
【化39】
【0119】
同様に比較用の酸発生剤、比較PAG1~4の構造を合成した。以下に示す。
【化40】
【0120】
[合成例]ベースポリマー(ポリマー1~24)の合成
窒素雰囲気下、各々のモノマーを組み合わせてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液、γ―ブチロラクトン溶剤下で共重合反応を行い、得られた重合液をジイソプロピルエーテルに滴下すると、共重合体が凝集した。デカンテーションによりジイソプロピルエーテルを除去し、共重合体をアセトンに溶解した。このアセトン溶液をジイソプロピルエーテルに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体を再度アセトンに溶解し、このアセトン溶液を水に滴下し、析出した共重合体を濾別した。その後、40℃で40時間乾燥し、白色重合体であるポリマーを得た。ポリマーを、13C-NMR、H-NMR及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。得られたベースポリマーの組成はH-NMRにより、Mw及び分散度(Mw/Mn)はGPC(溶剤:THF、標準:ポリスチレン)により確認した。
【0121】
表1にポリマー1~20、比較ポリマー21~24の単量体の種類と導入比を示す。また、ポリマーに導入した繰り返し単位の構造を表2に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
[ネガ型レジスト組成物の調製]
ベースポリマー(ポリマー1~20、比較ポリマー21~24)、酸発生剤(PAG-1~PAG-17、比較PAG-1~比較PAG-4)、クエンチャー(Q-1~Q-3)、架橋剤(テトラメトキシメチルグリコールウリル(TMGU))、及び界面活性剤(PF-636、OMNOVA SOLUTIONS社製)を、下記表3~5に示す組成で有機溶剤中に溶解して溶液を調製し、得られた各溶液を0.02μmサイズのUPEフィルター及び/又はナイロンフィルターで濾過して、ネガ型レジスト組成物(レジスト材料)を調製した。表3~5中のレジスト材料(レジスト組成物)の有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びγ-ブチロラクトン(GBL)又はジアセトンアルコール(DAA)の混合溶剤を用いた。尚、クエンチャーQ1~Q3の構造は以下の通りである。
【0125】
【化41】
【0126】
[レジスト組成物の評価:電子線(EB)描画評価(1)]
[実施例1-1~1-17、比較例1-1~1-3]
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、DUV-42)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(61nm膜厚)基板上に、各レジスト組成物をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、45nmのレジスト膜を作製した。これを、エリオニクス社製、電子線描画装置(ELS-F125、加速電圧125kV)を用いて、ウェハー上寸法が26nm、ピッチ52nmのドットパターンを、露光量50μC/cmからステップ1μC/cmで変化させながら描画を行い、露光後、表3に示す温度で60秒間ベーク(PEB)した。その後、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、純水でリンス、スピンドライを行い、ネガ型パターンを得た。現像後のドットパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S9380)で観察し、感度、露光余裕度、CDUを下記方法に従い評価した。結果を表3に示す。
【0127】
[感度評価]
感度として、前記[電子線(EB)描画評価(1)]において、寸法26nm、ピッチ52nmのドットパターンが得られる最適な露光量Eop(μC/cm)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0128】
[露光余裕度(EL)評価]
EL評価として、前記[電子線(EB)描画評価(1)]で得たドットパターンにおける寸法26nmの±10%(23nm~29nm)の範囲内で形成される露光量から、次式によりEL(単位:%)を求めた。この値が大きい程、良好である。

EL(%)=(|E-E|/Eop)×100
:寸法23nm、ピッチ52nmのドットパターンを与える最適な露光量
:寸法29nm、ピッチ52nmのドットパターンを与える最適な露光量
op:寸法26nm、ピッチ52nmのドットパターンを与える最適な露光量
【0129】
[寸法均一性(CDU)評価]
前記[電子線(EB)描画評価(1)]において、前記感度評価における最適露光量で照射して得たドットパターンを、同一露光量ショット内10箇所(1箇所につき9個のCHパターン)の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を寸法均一性(CDU)として求めた。この値が小さいほど、ドットパターンの寸法均一性が優れる。
【0130】
結果を表3に示す。
【表3】
【0131】
表3に示した結果より、特定のベースポリマーとヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩を酸発生剤として含む本発明のレジスト組成物(レジスト材料)は、高感度かつELとCDUが良好であることがわかった。
【0132】
[EUV露光評価]
[実施例2-1~2-18、比較例2-1~2-5]
表4に示す各レジスト材料を、ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を20nm膜厚で形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これに、ASML社製EUVスキャナーNXE3300(NA0.33,shiguma0.9/0.5、クアドルポール照明)を用いて露光し、ホットプレート上で表4記載の温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行って、ネガ型レジストパターンを形成した。その結果、未露光部分が現像液に溶解しスペース幅23nm、ピッチ46nmのLSパターンが得られた。得られたレジストパターンについて次の評価を行った。結果を表4に示す。
【0133】
[感度評価]
前記LSパターンを電子顕微鏡にて観察し、スペース幅23nm、ピッチ46nmのLSパターンが得られる最適な露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。
【0134】
[LWR評価]
最適露光量で照射して得たLSパターンを、(株)日立ハイテクノロジーズ製CD-SEM(CG-5000)でスペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られる。
【0135】
[形状評価]
最適露光量におけるパターン形状を比較し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン形状が矩形であり側壁の垂直性が高い。
不良:パターン側壁の傾斜が大きいテーパー形状、又はトップロスによるトップラウ
ンディング形状。
【0136】
【表4】
【0137】
表4に示した結果より、特定のベースポリマー(B)とヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩(A)を酸発生剤として含む本発明のレジスト組成物(レジスト材料)は、高感度かつLWRが良好であることがわかった。また、実施例2-17、2-18のように、式(A-1)で表されるオニウム塩と式(A-2)で表されるオニウム塩を併用しても、高感度かつLWRが良好であることがわかった。このように本発明は良好な形状であったのに対し、レジスト組成物が本発明の(A)成分(酸発生剤)及び(B)成分(ベースポリマー)の両方を有していない比較例は、トップロスによる形状不良が認められた。特に比較例2-3はパターン形状劣化が著しく感度、LWRが測定不可能であった。また、ヨウ素化ベイゾイルオキシ基を含有しない酸発生剤(比較PAG-3)を用いた比較例2-1では形状不良が認められたことから、(A)成分のアニオン部分(フッ素化スルホン酸)が単にヨウ素を有するだけではパターン形状は改善されず、オニウム塩が式(A-1)又は式(A-2)で表わされる構造を有することが必須であることがわかる。
【0138】
[露光部残膜評価]
[実施例3-1~3-7、比較例3-1~3-3]
表5に示す各レジスト材料を、ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を20nm膜厚で形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これに、ニコン製KrFスキャナーS206D(NA0.82、Conventional照明)を用いて露光量を変化なさせながら露光し、ホットプレート上で表5記載の温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行った。各露光量で露光した箇所を(株)SCREENセミコンダクターソルーションズ製膜厚計RE-3100で膜厚を測定し、レジスト塗布後膜厚に対する割合を下記式のように計算してそれを残膜率と定義した。横軸に露光量、縦軸に残膜率をプロットしグラフ化したものを図1に示す。本発明はアルカリネガ型レジスト組成物なので、図1のように露光量が増加する程、レジスト残膜率が増加する。残膜率はいずれ飽和するが、飽和した際の残膜率を飽和残膜率(図1中Aの値)として表5に示す。この値が大きいほど、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が抑制されていて優れていることを示す。

残膜率(%)=各露光量における膜厚(nm)/塗布直後の膜厚(50nm)×100
【0139】
【表5】
【0140】
表5に示した結果より、特定のベースポリマー(B)とヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩(A)を酸発生剤として含む本発明のレジスト組成物(レジスト材料)は、飽和残膜率が高く良好である。また、実施例3-7のように、式(A-1)で表されるオニウム塩と式(A-2)で表されるオニウム塩を併用しても、飽和残膜率が高く良好であることがわかる。これに対し、レジスト組成物が本発明の(A)成分及び(B)成分の両方を有していない比較例は、飽和残膜率が低い結果となった。
【0141】
表3,4より本発明のネガ型組成物がEB、EUVリソグラフィーにおいて感度、LWR、CDU、パターン形状に優れることが明らかとなった。さらに表5のKrFリソグラフィーにより本発明のネガ型組成物が飽和残膜率に優れていること、つまり露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が抑制されていることが明らかになった。本発明のレジスト組成物のうち、特定のベースポリマー(B)とヨウ素化ベイゾイルオキシ基含有フッ素化スルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩(A)の両方を含有する必要があり、片方だけでは性能の向上は認められないことは明白である。
【0142】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1