(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】共射出成形多層構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/28 20060101AFI20220628BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220628BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220628BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B32B27/28 102
B32B27/18 Z
B32B27/32 Z
B29C45/16
(21)【出願番号】P 2019523532
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2018021424
(87)【国際公開番号】W WO2018225698
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2017111006
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真
(72)【発明者】
【氏名】ウシエー,ディディエ
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/051907(WO,A1)
【文献】特開2001-341535(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107629(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00-27/42
B29C 45/00-45/84
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア層とその両側に接して積層される外層とを有する共射出成形多層構造体であって、
前記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と、融点が250℃以下の高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)とを含む樹脂組成物(X)からなり、
エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が20~60モル%であり、ケン化度が90%以上であり、
アルカリ金属塩(B)がステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸カリウムの少なくとも一方であり、前記バリア層におけるアルカリ金属塩(B)の含有量が金属原子換算で50~1500ppmであり、
前記外層が、未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)とを含む樹脂組成物(Y)からなり、樹脂組成物(Y)全体に対する無水マレイン酸変性率が0.005~0.1wt%である、共射出成形多層構造体。
【請求項2】
バリア層とその両側に接して積層される外層とを有する共射出成形多層構造体であって、
前記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と、融点が250℃以下の高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)と、炭素-炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(C)と、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩及びコバルト塩からなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属塩(D)と
を含む樹脂組成物(X)からなり、
エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が20~60モル%であり、ケン化度が90%以上であり、前記バリア層におけるアルカリ金属塩(B)の含有量が金属原子換算で50~1500ppmであり、
前記外層が、未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)とを含む樹脂組成物(Y)からなり、樹脂組成物(Y)全体に対する無水マレイン酸変性率が0.005~0.1wt%である、共射出成形多層構造体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(C)がポリオクテニレンである、請求項
2に記載の共射出成形多層構造体。
【請求項4】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する未変性の高密度ポリエチレン(F)の190℃/2160gにおけるMFR比(F/A)が0.04~5である、請求項1
~3のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
【請求項5】
未変性の高密度ポリエチレン(F)に対する無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)の190℃/2160gにおけるMFR比(G/F)が0.5~100である、請求項1
~4のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
【請求項6】
未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)の合計に対する無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)の質量比[G/(F+G)]が0.025~0.2である、請求項1~
5のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
【請求項7】
前記バリア層が、吸湿剤(E)をさらに含む、請求項1~
6のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の共射出成形多層構造体からなる容器。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載の共射出成形多層構造体からなるキャップ。
【請求項10】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)とアルカリ金属塩(B)を含む樹脂組成物(X)と、未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)を含む樹脂組成物(Y)とを共射出成形する、請求項1~
7のいずれか
に記載の多層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物からなるバリア層とその両側に接して積層される外層とを有する共射出成形多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと称すことがある)は、酸素などのガスや有機薬品に対するバリア性に優れた高分子材料であり、フィルム、シート、容器など各種包装材料として広く用いられている。
【0003】
EVOHは、吸湿しやすい樹脂であり、吸湿することによってそのバリア性能が低下する。したがって、EVOHの吸湿を防ぐために、EVOH層の両側にポリオレフィン層などの疎水性樹脂層を配置した多層構造体が容器等として用いられることが多い。しかしながら、EVOH層と疎水性樹脂層とは接着性が悪いため、両層の間に無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの接着性樹脂層を配置することが広く行われている。しかしながら、層構成が複雑になると製造コストが上昇することが避けられず、接着性樹脂層を設けずにEVOH層と疎水性樹脂層を接着する方策が求められていた。
【0004】
一方、共射出成形によって多層構造体を得る場合には、複数のシリンダーから溶融された複数種の樹脂が同時に金型内に射出される。そして、当該樹脂が積層された状態で金型内を流れて金型に充填されることによって多層構造体が得られる。このとき、EVOH層と疎水性樹脂層の間に接着性樹脂層を均一に形成することは技術的に困難であることから、EVOH層の両側に、接着性樹脂層を介することなく疎水性樹脂層が形成される。
【0005】
特許文献1には、燃料容器に使用される成形部品であって、バリア性樹脂(A)層と11以下の溶解性パラメーターを有する熱可塑性樹脂(B)層とを積層してなる、成形部品が記載されており、当該成型部品は機械的強度等に優れると記載されている。そして、その実施例においては、EVOHからなる層を、ポリエチレン及び無水マレイン酸変性ポリエチレンからなるブレンド物からなる層で挟み込むように共射出してなる多層燃料容器が記載されている。
【0006】
特許文献2には、実質的に主鎖のみに炭素-炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂及び遷移金属塩を含有する酸素吸収性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂の炭素-炭素二重結合1モルあたりの酸素吸収量が1.6モル以上である、酸素吸収性樹脂組成物が記載されている。また、EVOHなどのマトリックス樹脂中に前記熱可塑性樹脂の粒子が分散した樹脂組成物も記載されていて、当該熱可塑性樹脂による酸素の吸収によって高度な酸素バリア性が発現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-146116
【文献】WO2007/126157A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された発明によれば、EVOH層とその両側に接して積層されるポリエチレン樹脂組成物層を有する共射出成形多層構造体において、両層間にある程度の接着性を備えていることが記載されている。しかしながら、本発明者らは、このような接着層を有さない共射出成形多層構造体からなる容器が、運搬時の落下などによって層間剥離を起こし、それに伴いEVOH層中に微細なクラックが発生することで、容器の外観上は問題が無い一方で、容器の中身の酸化劣化を起こしうることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、以下の通りである。
(1)バリア層とその両側に接して積層される外層とを有する共射出成形多層構造体であって、前記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と、融点が250℃以下の高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)とを含む樹脂組成物(X)からなり、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が20~60モル%であり、ケン化度が90%以上であり、前記バリア層におけるアルカリ金属塩(B)の含有量が金属原子換算で50~1500ppmであり、前記外層が、未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)とを含む樹脂組成物(Y)からなり、樹脂組成物(Y)全体に対する無水マレイン酸変性率が0.005~0.1wt%である、共射出成形多層構造体。
(2)エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する未変性の高密度ポリエチレン(F)の190℃/2160gにおけるMFR比(F/A)が0.04~50である、上記(1)に記載の共射出成形多層構造体。
(3)未変性の高密度ポリエチレン(F)に対する無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン(G)の190℃/2160gにおけるMFR比(G/F)が0.5~100である、上記(1)又は(2)に記載の共射出成形多層構造体。
(4)未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)の合計に対する無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)の質量比[G/(F+G)]が0.025~0.2である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
(5)アルカリ金属塩(B)がステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸カリウムの少なくともいずれか一方である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
(6)前記バリア層が、炭素-炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(C)と、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩及びコバルト塩からなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属塩(D)とをさらに含む、上記(1)~(5)のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
(7)熱可塑性樹脂(C)がポリオクテニレンである、上記(6)に記載の共射出成形多層構造体。
(8)前記バリア層が、吸湿剤(E)をさらに含む、上記(1)~(7)のいずれかに記載の共射出成形多層構造体。
(9)上記(1)~(8)のいずれかに記載の共射出成形多層構造体からなる容器。
(10)上記(1)~(8)のいずれかに記載の共射出成形多層構造体からなるキャップ。
(11)エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)とアルカリ金属塩(B)を含む樹脂組成物(X)と、未変性の高密度ポリエチレン(F)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)を含む樹脂組成物(Y)とを共射出成形する、上記(1)~(8)のいずれかに記載の多層構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共射出成形多層構造体は、接着剤層を有さないにもかかわらず、EVOH樹脂組成物からなるバリア層と、未変性の高密度ポリエチレン及び無水マレイン酸変性ポリエチレンを含む樹脂組成物からなる外層とが優れた接着性を有し、結果として、落下などによる衝撃が加わった後も酸素バリア性能が維持される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(樹脂組成物(X))
本発明は、バリア層とその両側に接して積層される外層とを有する共射出成形多層構造体であって、前記バリア層が、EVOH(A)と、融点が250℃以下の高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)とを含む樹脂組成物(X)からなる。
【0012】
本発明で用いられるEVOH(A)としては、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましく、中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるものがより好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量は20~60モル%である。エチレン単位含有量が20モル%以上であることによって、溶融成形性が良好になる。エチレン単位含有量は、好適には25モル%以上である。一方、エチレン単位含有量が60モル%以下であることによって、バリア性が良好になる。エチレン単位含有量は、好適には50モル%以下であり、より好適には40モル%以下である。
【0013】
EVOH(A)のケン化度は90%以上である。ここで、ケン化度は、EVOH(A)に含まれるビニルエステル単位及びビニルアルコール単位の合計に対するビニルアルコール単位の割合である。ケン化度が90%以上であることによって、バリア性が良好になるとともに、溶融成形時の熱安定性も良好になる。ケン化度は、好適には98%以上であり、より好適には99%以上である。
【0014】
エチレンとビニルエステルを共重合する際に、その他の単量体を共重合成分として含んでいても構わない。このような単量体としては、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン等のα-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、あるいはモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。しかしながら、その他の単量体由来の成分の含有量は、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましい。
【0015】
EVOH(A)の、190℃、2160gにおけるメルトフローレート(MFR)は好適には1~20g/10分である。MFRが1g/10分以上であることによって、射出成形時にEVOH(A)が高速で流動することができるため、多層構造体の端部まで均一にバリア層を形成することができる。MFRは、より好適には2g/10分以上であり、さらに好適には3g/10分以上である。一方、MFRが20g/10分を超えると、バリア層の強度が低下するおそれがある。MFRは、より好適には15g/10分以下であり、さらに好適には13g/10分以下である。
【0016】
本発明のバリア層は、EVOH(A)と融点が250℃以下の高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)とを含む樹脂組成物(X)からなる。アルカリ金属塩(B)は、その融点が250℃以下であることによって、溶融成形時に融解することができる。このときの融解したアルカリ金属塩(B)の粘度はEVOH(A)に比べてはるかに小さいので、射出成形時のせん断力によってアルカリ金属塩(B)が、バリア層と隣接層との界面に濃縮されることになる。その結果、後述する樹脂組成物層(Y)中の無水マレイン酸単位とアルカリ金属塩(B)との相互作用によって高い接着力が発現する。
【0017】
融点が250℃以下の高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)としては、炭素数が12~30の脂肪酸の塩であることが好ましい。炭素数が大きいことによって、融点が250℃以下になりやすい。炭素数は、より好適には14以上であり、さらに好適には16以上である。塩を形成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸が好適である。オレイン酸やリノール酸のような不飽和脂肪酸を用いることもできるが、熱安定性の観点からは飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。塩を形成するアルカリ金属は特に限定されないが、カリウム及びナトリウムが好ましく、接着性がより良好になる観点からは、カリウムがより好ましい。具体的なアルカリ金属塩(B)としては、ステアリン酸カリウム及びステアリン酸ナトリウムが好ましく、ステアリン酸カリウムが特に好ましい。
【0018】
前記バリア層におけるアルカリ金属塩(B)の含有量は、金属原子換算で50~1500ppmである。アルカリ金属塩(B)の含有量が金属原子換算で50ppm未満である場合、接着性の改善効果が不十分である。アルカリ金属塩(B)の含有量は、金属原子換算で100ppm以上であることが好ましく、150ppm以上であることがより好ましい。アルカリ金属塩(B)の含有量が金属原子換算で1500ppmを超える場合、成形品の外観が悪化する。アルカリ金属塩(B)の含有量は、金属原子換算で1000ppm以下であることが好ましく、750ppm以下であることがより好ましく、500ppm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
EVOH(A)にアルカリ金属塩(B)を含有させる方法は特に限定されず、予めEVOH(A)とアルカリ金属塩(B)を溶融混練して樹脂組成物(X)を得てから共射出成形に供することもできるし、EVOH(A)とアルカリ金属塩(B)を共射出成形機において溶融混練することもできる。均一な成形品を得る観点からは、予め押出機、好適には二軸押出機を用いて溶融混練して得られたペレットを共射出成形に供することが好ましい。
【0020】
前記バリア層は、炭素-炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(C)と、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩及びコバルト塩からなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属塩(D)とをさらに含むことが好ましい。遷移金属塩(D)が存在することにより、熱可塑性樹脂(C)に含まれる炭素-炭素二重結合が容易に酸化されるので、バリア層を通過する酸素分子を捕捉することができ、極めて高度な酸素バリア性を発現することができる。ここでいう「炭素-炭素二重結合」には、芳香環に含まれる二重結合は含まれない。
【0021】
熱可塑性樹脂(C)に含まれる炭素-炭素二重結合の量は、好適には0.001~0.02mol/gである。ポリブタジエンのように、熱可塑性樹脂(C)に含まれる二重結合が相互に2個のメチレンにより隔てられているものであっても構わないが、酸素吸収効率の面からは、熱可塑性樹脂(C)に含まれる二重結合が相互に3個以上のメチレンにより隔てられていることが好ましい。なかでも熱可塑性樹脂(C)としてポリオクテニレンで好適である。ポリオクテニレンは、シクロオクテンを開環重合させることにより製造することができる。熱可塑性樹脂(C)の好適な重量平均分子量は、1,000~500,000である。このような熱可塑性樹脂(C)は、特許文献2に記載された方法などにより製造することができる。
【0022】
遷移金属塩(D)は、熱可塑性樹脂(C)の酸化反応を促進するために配合される。遷移金属塩(D)としては、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩及びコバルト塩を用いることができる。なかでも、コバルト塩が好適である。遷移金属塩(D)のアニオン種としてはカルボン酸アニオンが好適である。カルボン酸としては、酢酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属塩(D)として用いられる特に好適な塩としては、ステアリン酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト及びネオデカン酸コバルトが挙げられる。また、遷移金属塩(D)はイオン性重合体を対イオンとして有する、いわゆるアイオノマーであってもよい。
【0023】
前記バリア層中の熱可塑性樹脂(C)の好適な含有量は、EVOH(A)100質量部に対して1~30質量部である。また、バリア層中の遷移金属塩(D)の好ましい含有量は、金属元素換算で1~50,000ppmである。熱可塑性樹脂(C)及び遷移金属塩(D)の配合方法は特に限定されないが、アルカリ金属塩(B)と同時に溶融混練して配合することが好ましい。
【0024】
前記バリア層は、吸湿剤(E)をさらに含むことが好ましい。吸湿剤(E)としては、リン酸塩及び硫酸塩等を用いることができる。前記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、ポリリン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、ポリリン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2)、ポリリン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の塩の無水物が挙げられる。前記硫酸塩として、ベリリウム(硫酸ベリリウム(BeSO4・4H2O))、マグネシウム(硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O))、カルシウム(硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O))等のアルカリ土類金属の他、銅(硫酸銅(CuSO4)・5H2O))、亜鉛(硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O))、鉄(硫酸鉄(FeSO4・7H2O))などの2価イオンを形成できる遷移金属の硫酸塩などが挙げられる。また、3価の金属の硫酸塩としては、アルミニウム(硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・16H2O))、鉄などの金属の硫酸塩が挙げられる。
【0025】
前記バリア層中の吸湿剤(E)の好適な含有量は、EVOH(A)100質量部に対して1~50質量部である。吸湿剤(E)の配合方法は特に限定されないが、アルカリ金属塩(B)と同時に溶融混練して配合することが好ましい。
【0026】
本発明のバリア層は、無機フィラーを含んでいても構わない。前記バリア層中の無機フィラーの含有量は50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。また、前記バリア層がEVOH(A)、アルカリ金属塩(B)、熱可塑性樹脂(C)、遷移金属塩(D)、吸湿剤(E)及び無機フィラー以外の成分を含んでいても構わないが、その含有量は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
(樹脂組成物(Y))
樹脂組成物(X)からなるバリア層の両側に接して積層される外層は、未変性の高密度ポリエチレン(F)(以下、高密度ポリエチレンをHDPEと略記することがある)と無水マレイン酸変性ポリエチレン(G)(以下、無水マレイン酸変性ポリエチレンを無水マレイン酸変性PEと略記することがある)とを含む樹脂組成物(Y)からなる。EVOH(A)とアルカリ金属塩(B)とを含む樹脂組成物(X)を作製する際に得られた知見から、本発明者らは、溶融粘度が高い無水マレイン酸変性PE(G)を溶融粘度が低いHDPE(F)に分散させた際に、バリア層と隣接樹脂の界面へ無水マレイン酸変性PE(G)が濃縮されずに、バリア層と外層との間に充分な接着性が発現しないと考えていた。しかし、驚くべきことに、粘度の高い無水マレイン酸変性PE(G)を用いたとしても、容器としたときに実用にたる接着力を備えた多層構造体を得ることができることを本発明者らは見出した。
【0028】
HDPE(F)は、極性モノマーで変性されていない、実質的に炭化水素モノマーのみからなるHDPEである。HDPE(F)は、エチレンのホモポリマーであってもよいし、5質量%以下のプロピレンを共重合したコポリマーであってもよい。一方、無水マレイン酸変性PE(G)は、極性モノマーである無水マレイン酸で変性されたPEである。無水マレイン酸変性PE(G)のベースとなるポリエチレン(変性前のポリエチレン)も、エチレンのホモポリマーであってもよいし、5質量%以下のプロピレンを共重合したコポリマーであってもよい。また、得られる多層構造体の接着性を優れたものとするために、樹脂組成物(Y)全体に対する無水マレイン酸変性率が0.005~0.1wt%である必要がある。前記変性率は0.015wt%以上がより好ましい。
【0029】
HDPE(F)の190℃、2160gにおけるMFRは、0.1~100g/10分であることが好ましい。190℃、2160gにおけるMFRが、0.1g/10分以上であることによって、容易に射出成形することができる。MFRはより好適には0.2g/10分以上、さらに好適には1.0g/10分以上である。一方、190℃、2160gにおけるMFRが、100g/10分以下であることによって、外観の良好な成形品を得ることができる。MFRはより好適には50g/10分以下であり、さらに好適には30g/10分以下である。
【0030】
無水マレイン酸変性PE(G)の190℃、2160gにおけるMFRは、0.5~200g/10分であることが好ましい。190℃、2160gにおけるMFRが、0.5g/10分以上であることによって、バリア層と外層との接着性が良好になる。MFRはより好適には1g/10分以上である。一方、190℃、2160gにおけるMFRが、200g/10分を超えると、溶融粘度が低くなりすぎて無水マレイン酸変性PE(G)の製造が困難になる。
【0031】
HDPE(F)と無水マレイン酸変性PE(G)の合計に対する無水マレイン酸変性ポリプロピレン(G)の質量比[G/(F+G)]が0.025~0.2であることが好ましい。質量比[G/(F+G)]が0.025以上であることによって、バリア層と外層との接着性が良好になる。質量比[G/(F+G)]はより好適には0.03以上であり、さらに好適には0.04以上である。一方、質量比[G/(F+G)]が0.2を超えると得られる成形品の外観が悪化するおそれがある。質量比[G/(F+G)]はより好適には0.13以下であり、さらに好適には0.08以下である。
【0032】
EVOH(A)に対するHDPE(F)の190℃/2160gにおけるMFR比(F/A)が0.04~5であることが好ましい。MFR比(F/A)が0.04~5であることによって外観の良好な成形品を得ることができる。MFR比(F/A)は、より好適には3以下であり、さらに好適には1以下である。一方、MFR比(F/A)は、より好適には0.1以上である。
【0033】
HDPE(F)に対するマレイン酸変性PE(G)の190℃/2160gにおけるMFR比(G/F)が0.5~100であることが好ましい。MFR比(G/F)が0.5~100であることによって外観の良好な成形品を得ることができる。MFR比(G/F)は、より好適には70以下であり、さらに好適には50以下、特に好適には20以下である。
【0034】
HDPE(F)と無水マレイン酸変性PE(G)を配合する方法は特に限定されず、予め未変性PE(F)と無水マレイン酸変性PE(G)を溶融混練して樹脂組成物を得てから共射出成形に供することもできるし、HDPE(F)と無水マレイン酸変性PE(G)をドライブレンドして混合ペレットを得てから共射出成形機において溶融混練することもできる。
【0035】
共射出成形するに際しては、EVOH(A)とアルカリ金属塩(B)を含む樹脂組成物(X)と、HDPE(F)と無水マレイン酸変性PE(G)を含む樹脂組成物(Y)とを共射出成形し、前者がバリア層を形成し、後者がその両側に接して積層される外層を形成する。このとき、外層のさらに外側に追加の層を形成しても構わないが、好適な層構成は、外層(樹脂組成物(Y))/バリア層(樹脂組成物(X))/外層(樹脂組成物(Y))の三層構造である。
【0036】
各樹脂組成物の射出タイミングは、目的とする多層構造体の形状に応じて適宜調整することができる。まず、内側と外側の両外層の射出を開始し、その後バリア層の射出を開始することによって先端部でバリア層が露出するのを防ぐことができる。また、最後に外層のみを射出することでゲート部においてもバリア層が露出することを防止することができる。射出成形時の温度は、用いる樹脂の融点以上の温度にするとともに、アルカリ金属塩(B)の融点以上の温度とすればよく、特に限定されない。
【0037】
バリア層と外層の厚み比率は特に限定されないが、両側の外層の合計厚みを100とした場合のバリア層の厚みが1~20であることが好ましい。前記バリア層の厚みはより好適には2以上である。一方、前記バリア層の厚みはより好適には15以下である。
【0038】
こうして得られた共射出成形多層構造体は、バリア性が要求される容器、例えば食品容器、有機薬品容器などの用途に用いることができる。特に、飲料物のボトルやキャップ、医療用のバイアルに好適である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。実施例中における試料の評価方法は以下のとおりである。
【0040】
(1)EVOH(A)のエチレン単位含有量およびケン化度
DMSO-d6を溶媒とした1H-NMR測定(測定装置:日本電子製JNM-GX-500型)により求めた。
【0041】
(2)メルトフローレート(MFR)
メルトインデクサ(宝工業製L244)を用い、温度190℃または230℃、荷重2160gの条件下で、試料の流出速度(g/10分)を測定することによって求めた。
【0042】
(3)融点(Tm)
JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメント製Q2000)を用い、融点(Tm)を求めた。
【0043】
(4)酸素透過度(OTR)
後述の手順で作製したキャップを500mlペットボトルに装着し、モダン・コントロール社製Ox-Tran2/21型酸素透過率測定装置を用いて、以下の条件でボトルのOTRを測定した。
・ボトル内側:23℃、窒素、100%RH
・ボトル外側:23℃、空気、50%RH
また、水を充填してキャッピングしたボトルを、高さ1mから倒立状態(キャップが下に向く方向)にしてコンクリート面に垂直に落下させ、落下させた後のボトルについて、上記と同じ条件でOTRを測定した。5本のボトルについて、落下後のOTRの測定を行い、その平均値を落下試験後のOTRとした。
【0044】
(5)透湿度
透湿度(水蒸気透過度;WVTR)は、ガスクロ法(JIS-K7129-C)に従い、蒸気透過測定装置(GTRテック社製「GTR-WV」)を用いて測定した。具体的には、温度が40℃、水蒸気供給側の湿度が90%RH、キャリアガス側の湿度が0%RHの条件下で透湿度(単位:g/(m2・day))を測定した。透湿度は、未変性HDPEの単層フィルム厚み100μmを試料として測定を実施した。
【0045】
(6)落下試験
メチレンブルー水溶液62mlに、架橋型無水マレイン酸-イソブテン共重合体の微粉末1.2gを加えた酸素検知用組成物を準備し、後述の手順で作製した50mlバイアル内に入れて、ゴム栓で封止した。このバイアルを、高さ30cmから直立状態(ゴム栓が上に向く状態)にしてコンクリート面に垂直に落下させ、落下させた後のバイアルを23℃、50%RH環境下で静置して、バイアル内の酸素検知用組成物が青色に着色するまでの日数を数え、以下の基準で評価した。
A 7日以上
B 4~6日
C 2~3日
D 1日以内
【0046】
[PEの銘柄]
以下の実施例において、未変性HDPE(F)及び無水マレイン酸変性PE(G)は、以下のものを用いた。
[未変性HDPE(F)]
・Ineos社製 Eltex Superstress CAP508S2、MFR=1.8g/10分(190℃、2160g荷重)
・Ineos社製 Rigidex HD5502S、MFR=0.2g/10分(190℃、2160g荷重)
[無水マレイン酸変性PE(G)]
・Eval Europe社製 ALP-063、MFR=7g/10分(190℃、2160g荷重)、無水マレイン酸変性率0.4wt%
・Two H Chem社製 NOVACOM-P HFS2100P、MFR=25g/10分(190℃、2160g荷重)、無水マレイン酸変性率1.0wt%
【0047】
実施例1
エチレン単位含有量が32モル%、ケン化度が99モル%以上、MFRが4.4g/10分(190℃、2160g荷重)、OTRが2.0cc・20μm/m2・day・atm(20℃/85%RH)のEVOH(株式会社クラレ製 エバールF104B)に対し、高級脂肪酸のアルカリ金属塩(B)としてステアリン酸カリウムを、EVOH中のステアリン酸カリウムの含有量が金属原子換算で200ppmとなるように混合した後、以下の条件で、混合物を溶融混練してからペレット化して、さらに乾燥することにより、EVOH樹脂組成物のペレットを得た。ステアリン酸カリウムの融点は240℃である。
・装置:26mmφ二軸押出機(東洋精機製作所製ラボプラストミル15C300)
・L/D:25
・スクリュー:同方向完全噛合型
・ダイスホール数:2ホール(3mmφ)
・押出温度(℃):C1=200、C2~C5=240、Die=240
・回転数:100rpm
・吐出量:約5kg/hr
・乾燥:熱風乾燥80℃、6hr
【0048】
一方、HDPE(F)としてIneos社製 CAP508S2(MFR=1.8g/10分(190℃、2160g荷重))95質量部と無水マレイン酸変性PE(G)としてEval Europe社製ALP-063(MFR=7g/10分(190℃、2160g荷重))5質量部をドライブレンドし、HDPE(F)のペレットと無水マレイン酸変性PE(G)のペレットを含む混合PEペレットを得た。
【0049】
得られたEVOH樹脂組成物のペレットと混合PEペレットを用い、以下の条件で共射出成形を行い、500mlペットボトル用キャップ又は50mlバイアルの共射出成形多層構造体を得た。得られた共射出成形多層構造体のOTRと外観を上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
・装置:共射出成形機 Nestal Machine社製 SYNERGY3000
・スクリュー径
EVOH樹脂組成物:18mmφ
PE樹脂組成物[HDPE(F)及び変性PE(G)を含む樹脂組成物]:28mmφ
・ホットランナー:Kortec社製
・EVOH樹脂組成物/PE樹脂組成物=9/91(質量比)
・500mlペットボトル用キャップ:直径36mm、高さ14mm
・50mlバイアル:底の外径43mm、高さ73mm
・温度条件
EVOH樹脂組成物:ゾーン1=220℃、ゾーン2=245℃、ゾーン3=255℃
PE樹脂組成物: ゾーン1=240℃、ゾーン2=250℃、ゾーン3=255℃、ゾーン4=260℃、ゾーン5=260℃
マニフォールド:255℃
・射出圧、時間:1200bars、4秒
・金型温度:40℃
・サイクルタイム:8.5秒
・冷却時間:1秒
【0050】
【0051】
実施例2~5、比較例1~4
ガスバリア層及び外層に用いる樹脂組成物の組成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に共射出成形多層構造体の製造及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例6
攪拌機および温度計を装着した容量5リットルの3つ口フラスコを窒素置換した後、これにシクロオクテン110g(1.0mol)およびシス-4-オクテン187mg(1.7mmol)を溶解させたヘプタン溶液624gを仕込んだ。次いでベンジリデン(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド8.48mg(10μmol)をトルエン1gに溶解させた触媒液を調製し、これを上記のヘプタン溶液に加えて、70℃で開環メタセシス重合を行った。5分後、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製「GC-14B」、カラム:化学品検査協会製「G-100」)により反応液を分析したところ、シクロオクテンの消失を確認した。得られた反応液にメタノール600gを添加し、40℃で30分間攪拌した後、40℃で1時間静置して分液し、下層を除去した。上層に再びメタノール600gを添加し、40℃で30分間攪拌した後、40℃で1時間静置して分液し、下層を除去した。上層からヘプタンなどの低沸成分を減圧下で留去し、さらに、真空乾燥機を用いて50Pa、40℃で24時間乾燥し、重量平均分子量が158,000、分子量1,000以下のオリゴマー含有率が8.5質量%のポリオクテニレン101.2g(収率90%)を得た。
【0053】
得られたポリオクテニレンの、側鎖中の炭素-炭素二重結合の全炭素-炭素二重結合に対する比率は0%であった。なお、この全炭素-炭素二重結合に対する比率は、主鎖中の炭素-炭素二重結合の量をa(mol/g)、側鎖中の炭素-炭素二重結合の量をb(mol/g)とすると、100×b/(a+b)で示される。
【0054】
得られたポリオクテニレンの全量を1mm角程度に破砕し、攪拌機、還流管、温度計を装着した500mlセパラブルフラスコに入れ、アセトン300gを加えて40℃で3時間攪拌した。アセトンをデカンテーションで除去した後、再度アセトン300gを加え、40℃で3時間攪拌した。デカンテーションでアセトンを除去し、次いで真空乾燥機を用いて、50Pa、100℃で6時間乾燥し、重量平均分子量が163,000、分子量1,000以下のオリゴマー含有率が3.1質量%のポリオクテニレン96.1gを得た。
【0055】
エチレン単位含有量が32モル%、ケン化度が99モル%以上、MFRが5.2g/10分(190℃、2160g荷重)であるEVOH、ポリオクテニレン、ステアリン酸コバルト及びステアリン酸カリウムを以下の条件で溶融混練してからペレット化した後、乾燥することによって、EVOH樹脂組成物のペレットを得た。当該樹脂組成物(X)は、EVOHを92質量部、ポリオクテニレンを8質量部、ステアリン酸コバルトを金属原子換算で200ppm、及びステアリン酸カリウムを金属原子換算で200ppm含有するものである。
・装置:26mmφ二軸押出機(東洋精機製作所製ラボプラストミル15C300)
・L/D:25
・スクリュー:同方向完全噛合型
・ダイスホール数:2ホール(3mmφ)
・押出温度(℃):C1=200、C2~C5=240、Die=240
・回転数:100rpm
・吐出量:約5kg/hr
・乾燥:熱風乾燥80℃、6hr
【0056】
こうして得られたEVOH樹脂組成物のペレットを共射出成形に用いた以外は実施例1と同様の方法で、共射出成形多層構造体を得た。得られた共射出成形多層構造体について、実施例1と同様に評価を行った結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
エチレン単位含有量が32モル%、ケン化度が99モル%以上、MFRが4.8g/10分(190℃、2160g荷重)であるEVOH、リン酸水素二ナトリウム、分散剤及びステアリン酸カリウムを以下の条件で溶融混練してからペレット化した後、乾燥することによって、EVOH樹脂組成物のペレットを得た。当該樹脂組成物(X)は、EVOHを80質量部、リン酸水素二ナトリウムを20質量部、分散剤400ppm及びステアリン酸カリウムを金属原子換算で200ppm含有するものである。
・装置:26mmφ二軸押出機(東洋精機製作所製ラボプラストミル15C300)
・L/D:25
・スクリュー:同方向完全噛合型
・ダイスホール数:2ホール(3mmφ)
・押出温度(℃):C1=200、C2~C5=240、Die=240
・回転数:100rpm
・吐出量:約5kg/hr
・乾燥:熱風乾燥80℃、6hr
【0058】
こうして得られた樹脂組成物を共射出成形に用いた以外は実施例1と同様の方法で、共射出成形多層構造体を得た。得られた共射出成形多層構造体について、実施例1と同様に評価を行った結果を表1に示す。