(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】フィルムロール、光学フィルム、3D画像表示装置及び3D画像表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220628BHJP
G02B 30/25 20200101ALI20220628BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220628BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B30/25
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2020553787
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2019041109
(87)【国際公開番号】W WO2020090522
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2018204419
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019152946
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】中山 元
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-42530(JP,A)
【文献】特開2008-180809(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008850(WO,A1)
【文献】特開2012-8170(JP,A)
【文献】特開2017-228359(JP,A)
【文献】特開2013-29552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
G02B30/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に連続的に巻かれたフィルムロールであって、
面内で交互に配置された面内遅相軸方向が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域からなるパターン部分を含み、
前記パターン部分を少なくとも2か所以上ロール長手方向に有
し、
前記第1位相差領域および前記第2位相差領域は、同一面内において、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向のそれぞれに交互に配置されており、
前記パターン部分は、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域との境界に位置する境界領域を有し、
前記境界領域の平均幅が20μm以下であり、
前記第1位相差領域および前記第2位相差領域のうち面積が小さい方の位相差領域の隣接する領域同士の角部間の平均間隔が4μm以上、30μm以下であることを特徴とするフィルムロール。
【請求項2】
前記境界領域の平均幅が3μm以上、8μm以下であり、
前記角部間の平均間隔が4μm以上、10μm以下である請求項1に記載のフィルムロール。
【請求項3】
前記第1及び第2位相差領域が、互いに直交する面内遅相軸を有する請求項1
または2に記載のフィルムロール。
【請求項4】
前記パターン部分を少なくとも2回以上ロール幅方向の同じ位置に含む請求項1~
3のいずれか一項に記載のフィルムロール。
【請求項5】
前記第1及び第2位相差領域のRe(550)が、110~165nmである請求項1~
4いずれかに記載のフィルムロール: 但し、Re(550)は波長550nmにおける各位相差領域の面内レターデーション値(単位:nm)である。
【請求項6】
前記第1及び第2位相差領域が、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層である請求項1~
5いずれかに記載のフィルムロール。
【請求項7】
請求項
6に記載のフィルムロールと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが43~47°である偏光板一体型のフィルムロール。
【請求項8】
請求項
7のフィルムロールから単数または複数のパターン部分を裁断したシート形態の光学フィルム。
【請求項9】
画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、前記表示パネルの視認側に請求項
8のシート形態の光学フィルムを有する3D画像表示装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の3
D画像表示装置と、3
D画像表示装置の視認側に配置される円偏光板とを少なくとも備え、該円偏光板を通じて立体画像を視認させる3D画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面内で交互に配置された第1及び第2位相差領域からなるパターン部分を含み、前述のパターン部分を少なくとも2回以上ロール長手方向に有し、かつ製造が容易で実用性に優れたフィルムロール、並びにこのフィルムロールを利用した偏光板一体型のフィルムロール、光学フィルム、立体画像の表示が可能な3D画像表示装置及び3D画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する3D画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる第1及び第2の領域が面内に規則的に配置されたパターン、例えばストライプ状に配置されたパターン位相差膜がしられており、FPR(フィルム・パターンド・レターダー)として3D用画像表示装置に利用されている(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
ところで、上記パターン位相差膜のような光学フィルムを大量・安価に量産し、実用性に優れたものとするには、光学フィルムを長手方向に連続的に巻かれたロール形態で提供する必要がある。この際に、前記のストライプ状のパターンは、例えば特許文献1及び2にあるように、第1及び第2の領域が隣り合うようにしてかつ長手方向に光配向膜を露光したパターンを形成することで、連続してロール形態とすることが可能である。
【0004】
一方、上記の面内に規則的に配置されたパターン位相差膜は、右眼用画像及び左眼用画像が等しい面積とすることができればストライプ状である必要性はなく、例えばチェッカーボード状に右眼用画像及び左眼用画像を配置したパターンであってもよい。3D画像表示装置において、ストライプ状の配置は一般に線状に右眼用画像と左眼用画像が連続することで、両者が分割しきれずに混在するクロストーク現象が起きやすい。チェッカーボード状の配置は、右眼用画素及び左眼用画素が連続しないため、ストライプ状の配置よりも人間の視覚の作用として、より画素が滑らかに見えることが知られている(特許文献3)。
【0005】
このチェッカーボード状のパターンのような長手方向に第1及び第2の領域が変化するように配置されたパターンでは、前述のような長手方向に連続して光配向膜を露光する手法では、連続したロール形態で作製することはできない。
【0006】
チェッカーボード状パターンに限らず、右眼用画像及び左眼用画像を等面積で分割しつつ、長手方向に第1領域及び第2領域が繰り返し配置されるようなパターン部分を持つFPRが自由に設計できれば、表示する画像表示装置の画素設計も、より自由な設計が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5885348号公報
【文献】特許第5418559号公報
【文献】特開2012-8170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第一の課題は、長手方向に第1領域及び第2領域が繰り返し配置されるようなパターン部分を有する光学フィルムを、例えば間欠露光方式によるパターン露光のような方法によって実現し、実用上にも有利な長手方向に連続的に巻かれたロール形態で提供することである。第二の課題は、前述のロール形態で実現した光学フィルム及び偏光板を含む一体型のロール形態の光学フィルムとして提供することである。さらに第三の課題は、このロール形態の光学フィルムを用いることで、視野角特性の良い3D画像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1]長手方向に連続的に巻かれたフィルムロールであって、
面内で交互に配置された面内遅相軸方向が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域からなるパターン部分を含み、
前述のパターン部分を少なくとも2か所以上ロール長手方向に有することを特徴とするフィルムロール。
[2]第1位相差領域および第2位相差領域は、同一面内において、第1方向および第1方向に直交する第2方向のそれぞれに交互に配置されている[1]に記載のフィルムロール。
[3]パターン部分は、第1位相差領域と第2位相差領域との境界に位置する境界領域を有し、
境界領域の平均幅が20μm以下であり、
第1位相差領域および第2位相差領域のうち面積が小さい方の位相差領域の隣接する領域同士の角部間の平均間隔が60μm以下である[2]に記載のフィルムロール。
[4]前述の第1及び第2位相差領域が、互いに直交する面内遅相軸を有する[1]~[3]のいずれかに記載のフィルムロール。
[5]前述のパターン部分を少なくとも2回以上ロール幅方向の同じ位置に含む[1]~[4]のいずれかに記載のフィルムロール。
[6]前述の第1及び第2位相差領域のRe(550)が、110~165nmである[1]~[5]のいずれかに記載のフィルムロール: 但し、Re(550)は波長550nmにおける各位相差領域の面内レターデーション値(単位:nm)である。
[7]前述の第1及び第2位相差領域が、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層である[1]~[6]のいずれかに記載のフィルムロール。
[8][1]~[7]のいずれかに記載のフィルムロールと、偏光膜とを含み、前述の光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが43~47°である偏光板一体型のフィルムロール。
[9][8]の光学フィルムから単数または複数のパターン部分を裁断したシート形態の光学フィルム。
[10]画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、前述の表示パネルの視認側に[9]のシート形態の光学フィルムを有する3D画像表示装置。
[11][10]に記載の3D用画像表示装置と、その3D用画像表示装置の視認側に配置される円偏光板とを少なくとも備え、その円偏光板を通じて立体画像を視認させる3D画像表示システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長手方向に第1領域及び第2領域が繰り返し配置されるようなパターン部分を有する光学フィルムを、長手方向に連続的に巻かれたロール形態で提供することができる。また前述のロール形態で実現した光学フィルム及び偏光板を含む一体型のロール形態の光学フィルムとして提供することができる、さらには、このロール形態の光学フィルムを用いることで、視野角特性の良い3D画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のフィルムロールの一例の模式図である。
【
図2】
図1に示すフィルムロールが有するパターン部分を模式的に示す上面図である。
【
図6】境界領域の幅を測定する方法を示す模式図である。
【
図7】本発明のフィルムロールの他の一例の模式図である。
【
図8】パターン部分の他の例を模式的に示す上面図である。
【
図9】パターン部分の他の例を模式的に示す上面図である。
【
図10】本発明の光学フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】パターン光学異方性層と偏光膜との組み合わせの一例の模式図である。
【
図12】パターン光学異方性層と偏光膜との組み合わせの他の一例の模式図である。
【
図13】パターン光学異方性層の一例の断面模式図である。
【
図14】(a)~(e)はそれぞれ、本発明の光学フィルムの層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】(a)~(e)は、それぞれ、本発明の3D画像表示装置の層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図16】実施例で作製したフィルムロールのパターン部分を作製するためのマスクを模式的に示す図である。
【
図17】実施例で作製したフィルムロールの形態を示す図である。
【
図18】実施例で作製したフィルムロールのパターン部分を作製するためのマスクを模式的に示す図である。
【
図19】実施例で作製したフィルムロールの形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0013】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルタをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前述のRe(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0014】
【数1】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d・・・・・・・・式(B)
【0015】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(opticaxis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前述のRe(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して-50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHNWILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
【0016】
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm~780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0017】
[フィルムロール]
本発明のフィルムロールは、
長手方向に連続的に巻かれたフィルムロールであって、
面内で交互に配置された面内遅相軸方向が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域からなるパターン部分を含み、
パターン部分を少なくとも2か所以上ロール長手方向に有するフィルムロールである。
【0018】
本発明のフィルムロールについて図面を用いて説明する。
図1は、本発明のフィルムロールの一例を示す模式図である。
図2は、
図1に示すフィルムロールが有するパターン部分を示す平面図である。
図3は、
図2のパターン部分の一部を拡大して示す図である。
【0019】
図1に示すフィルムロール20は、長尺な支持体22と、複数のパターン部分12とを有する。フィルムロール20において、複数のパターン部分12は、長尺な支持体22の長手方向に配列されている。フィルムロール20は、長手方向にロール状に巻き回されている。
なお、
図1ならびに後述の
図2、
図7~
図9において、長尺な支持体22の長手方向を矢印Xで示す。
【0020】
支持体22は、複数のパターン部分12を支持できる長尺な支持体であればよい。支持体22は透明支持体であるのが好ましい。
支持体22の幅および長さは、複数のパターン部分12を支持できれば特に制限はない。支持体22の幅は、300mm~2500mmが好ましく、500mm~2200mmがより好ましい。また、支持体22の長さは、10m~5000mが好ましく、20m~3000mがより好ましい。
また、支持体22の厚さは、パターン部分12を支持できればよく、10μm~200μmが好ましく、15μm~150μmがより好ましく、20μm~120μmがさらに好ましい。
支持体22の材料としては、後述の透明支持体14と同様のものが例示される。
【0021】
パターン部分12は、光学異方性層であり、面内遅相軸方向が互いに異なる第1位相差領域と第2位相差領域とを有する。また、
図2に示すように、パターン部分12は、面内で交互に配置された第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bからなる。第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bはそれぞれ、面内に屈折率異方性を有する領域であり、入射した光に位相差を与える。
【0022】
図2に示すパターン部分12において、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bは、同一面内において、
図2中上下方向および左右方向のそれぞれに交互に配置されている。
図2において、上下方向および左右方向は、本発明における第1方向および第1方向に直交する第2方向に相当する。なお、以下の説明において、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bが第1方向および第2方向に交互に配列されたパターンをチェッカーボード状パターン、チェッカーパターン、あるいは、格子状パターンともいう。
【0023】
図3に、
図2に示すパターン部分12の一部を拡大して示す。
図3において、第1位相差領域12aの遅相軸方向を矢印aで示し、第2位相差領域12bの遅相軸方向を矢印bで示す。
図3に示す例においては、第1位相差領域12aの遅相軸方向(矢印a)と、第2位相差領域12bの遅相軸方向(矢印b)は、互いに直交している。
パターン部分12の第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bの詳細は後に詳述する。
【0024】
前述のとおり、チェッカーボード状パターンのような長手方向に第1及び第2の領域が変化するように配置されたパターンでは、長手方向に連続して配向膜を露光する手法では、連続したロール形態で作製することはできないという問題があった。
【0025】
これに対して、本発明のフィルムロールは、第1位相差領域及び第2位相差領域からなるパターン部分を少なくとも2か所以上ロール長手方向に有する構成とする。長手方向に第1位相差領域及び第2位相差領域が繰り返し配置されるようなパターン部分を間欠的に2か所以上に設ける構成とすることで、間欠露光方式によるパターン露光のような方法によって配向膜を露光することができるので、長手方向に連続的に巻かれたロール形態で第1位相差領域及び第2位相差領域からなるパターン部分を形成することができる。
【0026】
ここで、面内遅相軸方向が互いに異なる領域を隣接して形成する場合、その境界に液晶性化合物が一様な配向を形成していない境界領域12cが生じる。また、第1位相差領域12aと、第2位相差領域12bとは、同じ形状および大きさで形成されるのが理想であるが、完全に同一の大きさに形成するのは難しく、
図4および
図5に示すように、第1位相差領域12aと第2位相差領域12bとは異なる大きさに形成される。
図4および
図5においては、第1位相差領域12aが第2位相差領域12bよりも大きい。
【0027】
第1位相差領域12aが第2位相差領域12bよりも大きいと、例えば、
図4に示すように、角部が隣接する第1位相差領域12a同士は、角部で接続した状態になる。一方、面積の小さい第2位相差領域12b同士の角部の間には、境界領域
12cおよび第1位相差領域12aが存在する状態になる。
あるいは、例えば、
図5に示すように、第1位相差領域12a同士が角部で接続されていない状態の場合でも、面積が小さい第2位相差領域12b同士の角部間の間隔は、面積が大きい第1位相差領域12a同士の角部間の間隔よりも大きくなる。
なお、
図4および
図5は、
図3に示すパターン部分12の、4つの位相差領域の角部が隣接する領域Aを拡大して示す図である。
【0028】
境界領域12cは、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bとは異なり、液晶性化合物が一様な配向を形成していない領域であるため、光漏れの原因となる。
また、
図4および
図5に示したように、第1位相差領域12aと第2位相差領域12bとの大きさが異なる場合には、小さい領域(図示例では第2位相差領域12b)の隣接する領域同士の角部間の間隔Cは大きくなる。角部間の間隔Cが大きいと光漏れが多くなりクロストークが生じる。また、小さい領域(第2位相差領域12b)が存在すべき位置にはみ出した第1位相差領域12aが存在することになるため、光漏れが生じてクロストークが発生してしまう。
【0029】
従って、光漏れの抑制、および、クロストークの抑制の観点から、境界領域12cの幅は、20μm以下が好ましく、3μm~20μmがより好ましく、3μm~12μmがさらに好ましく、3μm~8μmが特に好ましい。また、面積が小さい方の位相差領域の隣接する領域同士の角部間の平均間隔は、60μm以下が好ましく、4μm~60μmがより好ましく、4μm~30μmがさらに好ましく、4μm~10μmが特に好ましい。
【0030】
なお、第1位相差領域12a、第2位相差領域12bおよび境界領域12cは、偏光顕微鏡観察にて判別することができる。例えば、パターン光学異方性層(第1位相差領域の面内遅相軸と第2位相差領域の面内遅相軸とが直交しているパターン光学異方性層)を、第1位相差領域または第2位相差領域のいずれか一方の面内遅相軸が、透過軸が直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の透過軸と平行になるように偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)のサンプルステージ上に設置する。このとき、第1位相差領域、および、第2位相差領域は黒表示される。一方、境界領域は一様な配向を形成していない領域なので光が遮光されず、白表示される。これにより、各領域を特定することができる。
【0031】
境界領域の特定は、上記のように、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の透過軸と平行になるように偏光顕微鏡を使用する。その汎用的な手順としては、偏光顕微鏡を用いて、透過軸が直交位に組合された2枚の偏光板の間にサンプルとなるパターン光学異方性層を配置して、パターン光学異方性層を光軸に対して垂直となる面内で回転させて、第1位相差領域が黒表示となる状態の観察図と、第2位相差領域が黒表示となる状態の観察図とを比較する。2つの観察図中の両方において白表示となる領域が境界領域に該当する。
【0032】
境界領域の幅は、偏光顕微鏡で観察される画像を、偏光顕微鏡に取り付けたデジタルカメラ(NIKON DIGITAL CAMERA DXM1200)からPC(personal computer)に取り込み、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事株式会社)を用いて測定する。具体的な測定方法として、例えば、境界領域の幅を測定する場合、まず、
図6に示すように、偏光顕微鏡にて境界領域12cが中央付近にくるように観察する。その際、
図6に示すように、境界領域12cが延びる方向が上下方向となるように観察する。次に、観察図において、境界領域12cの左側に突出する凸部のうち最も左側に突出した2つの凸部の頂点を結ぶ直線Xを引く。次に、直線X上の任意の点Yから、直線Xに対して直交する方向で、直線Xから境界領域12cの右側端部まで線(図中では矢印)を引き、その長さを算出する。なお、上記長さの算出は、任意の点Yから50μm間隔(図中、Dが50μm)で10箇所行い、得られた10箇所における長さを算術平均して、境界領域12cの幅を求める。さらに、上記観察をパターン光学異方性層の任意の3箇所において行い、各観察図において得られた境界領域12cの幅をさらに算術平均して、境界領域の平均幅を求める。
なお、上記直線Xを引く作業、および、直線Xから境界領域12cの右側端部までの長さの測定は、WinROOFを用いて行う。
なお、
図6においては、境界領域12cが蛇行している態様が開示されているが、この態様には限定されず、直線状であってもよい。
【0033】
位相差領域同士の角部間の間隔は、偏光顕微鏡で観察される画像を、偏光顕微鏡に取り付けたデジタルカメラ(NIKON DIGITAL CAMERA DXM1200)からPCに取り込み、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事株式会社)を用いて測定する。具体的な測定方法として、まず、
図4および
図5に示すように、偏光顕微鏡にて角部が中央付近にくるように観察する。その際、
図4および
図5に示すように、境界領域が延びる方向が上下方向と左右方向とになるように観察する。次に、観察図において、位相差領域同士の角部の最短距離を測定し、「位相差領域同士の角部間の間隔C」とする。上記観察を格子状パターンの角部の任意の10箇所において行い、各観察図において得られた「位相差領域同士の角部間の間隔C」をさらに算術平均して、「位相差領域同士の角部間の平均間隔」を求める。
【0034】
なお、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bが格子状パターンで配列される場合には、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bの形状は、略正方形状、あるいは、略長方形状であるのが好ましい。また、第1位相差領域22および第2位相差領域24の形状は、相似形状であるのが好ましい。
【0035】
また、長尺な支持体22の長手方向に複数配置されるパターン部分12は、幅方向の同じ位置に配置されるのが好ましい。言い換えると、幅方向の同じ位置に2つ以上のパターン部分を有しているのが好ましい。これにより、間欠露光方式によるパターン露光の際に、マスクの幅方向の位置を変更する必要がなく、パターン露光をより簡易に行うことができる。
【0036】
また、
図1に示す例では、パターン部分12が、長尺な支持体22の長手方向に複数配置される構成としたが、これに限定はされない。
図7に示す示すように、パターン部分12が、長尺な支持体22の長手方向、および、幅方向それぞれに複数配置されてもよい。
図7に示す例では、長尺な支持体22の幅方向に4つのパターン部分12が配置されており、幅方向に配置された4つのパターン部分12が長手方向に複数配置されている。
【0037】
なお、長尺な支持体22の幅方向に配置されるパターン部分12の数は4つに限定はされず、1~3つでもよく、5つ以上であってもよい。
【0038】
また、フィルムロール20における各パターン部分12の大きさは、間欠露光方式によるパターン露光が適切に実施できる大きさであれば特に制限はない。パターン部分12の大きさとしては、長手方向10~2000mm×幅方向10~2000mmが好ましく、長手方向20~1000mm×幅方向20~1000mmがより好ましい。
【0039】
また、フィルムロール20において、長手方向に隣接するパターン部分12の間の距離は、間欠露光方式によるパターン露光が適切に実施できる距離であれば特に制限はない。パターン部分12の間の距離としては、5~500mmが好ましく、10~300mmがより好ましい。
【0040】
ここで、
図2に示す例では、パターン部分12の第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bは、同一面内において、第1方向および第1方向に直交する第2方向のそれぞれに交互に配置されている構成としたがこれに限定はされない。
第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bは、同一面内において、一方向に交互に配置される構成としてもよい。
【0041】
例えば、
図8に示す例のように、長尺な支持体22の長手方向(矢印X方向)と直交する方向に、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bが交互に配置された構成であってもよい。
あるいは、
図9に示す例のように、長尺な支持体22の長手方向(矢印X方向)に、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bが交互に配置された構成であってもよい。
あるいは、長尺な支持体22の長手方向(矢印X方向)と所定角度で交差する方向に、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bが交互に配置された構成であってもよい。
【0042】
また、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bが、一方向に交互に配置される構成の場合にも、第1位相差領域12aの面内遅相軸方向と、第2位相差領域12bの面内遅相軸方向とは、互いに異なっていればよく、互いに直交しているのが好ましい。
【0043】
第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bの、波長550nmにおける面内レターデーション値Re(550)は、110nm~165nmであるのが好ましい。
この点については後に詳述する。
【0044】
また、第1位相差領域12aおよび第2位相差領域12bは、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層であるのが好ましい。
この点については後に詳述する。
【0045】
ここで、
図3に示す例においては、第1位相差領域12aと第2位相差領域12bとは、面内遅相軸方向が互いに異なる構成としたがこれに限定はされない。第1位相差領域12aと第2位相差領域12bとは、面内レターデーションが互いに異なる構成であってもよい。
【0046】
ここで、本発明のフィルムロールは、長尺な支持体22およびパターン部分12に加えて、偏光膜、反射防止層、保護フィルム等の他の層を有していてもよい。
例えば、フィルムロールに、長尺な偏光膜が長手方向を一致させて積層された偏光板一体型のフィルムロールとしてもよい。偏光膜は長尺な支持体22側に積層されてもよく、パターン部分12側に積層されてもよい。
【0047】
また、偏光板一体型のフィルムロールとする場合には、パターン部分の第1位相差領域および第2位相差領域それぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが43°~47°であるのが好ましい。
この点については後に詳述する。
【0048】
[光学フィルム]
上述した本発明のフィルムロールは、単数または複数のパターン部分を含む領域を切り抜かれてシート形態の光学フィルムとして利用される。また、例えば、フィルムロールが、フィルムロールに長尺な偏光膜を積層した偏光板一体型のフィルムロールの場合には、切り抜かれた光学フィルムは、偏光膜、支持体、パターン部分が積層された光学フィルムとなる。
以下、本発明のフィルムロールから切り抜かれて形成される光学フィルムについて説明する。
【0049】
本発明の光学フィルムは、支持体と、第1位相差領域および第2位相差領域を有する光学異方性層を有し、光学異方性層が、面内遅相軸方向が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前述の第1位相差領域及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層である光学フィルムである。光学フィルムにおける光学異方性層は、上述したフィルムロールのパターン部分に相当する。
パターンを有する光学異方性層は、パターン位相差板として作用し、本発明の光学フィルムは、3D(three-dimensional)画像表示装置用の光学フィルム等として用いられる。
【0050】
本発明の光学フィルムは偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該光学フィルムの第1位相差領域及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。これにより、観察者に3D画像を認識させることができる。
従って、左右画像が不均一とならないように、第1位相差領域及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、また、それぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
【0051】
本発明の光学フィルムの一例の断面模式図を
図10に示す。
図10に示す光学フィルム10は、偏光膜16、透明支持体14、及び光学異方性層12を有し、光学異方性層12は、面内に、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bが、均等且つ対称に配置されたパターン光学異方性層である。一例は、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度であり、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有する光学異方性層である。この例では、
図11及び
図12に示す通り、光学異方性層12を、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの面内遅相軸a及び面内遅相軸bをそれぞれ、偏光膜16の吸収軸Pと±45°にして配置する。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができ、3D画像表示装置用の光学フィルムとして用いることができる。
また、光学フィルムは、さらにλ/2板を有していてもよい。λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。
【0052】
本発明において、光学異方性層は、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されていることが好ましい。
液晶組成物を利用して形成されるパターンを有する光学異方性層は、通常、それを支持するポリマーフィルム等の支持体や、またそれを保護する保護フィルム等と積層した状態で使用されるのが一般的である。支持体として利用されるポリマーフィルム等にもある程度の面内レターデーションReがあり、積層体全体として、円偏光画像等を形成するための適切なReに調整する必要がある。ところで、Reが発現された光学異方性層やポリマーフィルム等について、厚さ方向レターデーションRthを完全にゼロにするのは困難であり、ある程度のRthを有するのが一般的である。液晶組成物からなる光学異方性層にも、及びそれに積層されるポリマーフィルムにもRthがあり、積層体全体としてRthが大きくなってしまう場合もある。従来の液晶組成物を利用したパターン位相差板を実際に利用すると、斜め方向において輝度が低下し、視野角特性の点で問題があったのは、このRthが一因であると言える。例えば特開2006-220891号公報で利用されている様な棒状液晶は正の複屈折性を示す液晶であり、円偏光画像等を形成するために必要なReが発現された光学異方性層を形成すると、当該光学異方性層のRthは正になり、積層されるポリマーフィルム等のRthが加算され、積層体全体のRthの合計は大きくなり、視野角特性の低下、即ち斜め方向の輝度低下の一因になる。積層させるポリマーフィルム等の部材の数を減少することで、Rthを軽減することができるが、パターン位相差板は、表示パネルの視認側面外側に配置される部材であり、外光に曝されることによる劣化を防止するための保護部材や、又は外光が映り込むことを防止するための反射防止部材等を配置する必要があり、ポリマーフィルムの積層は避けられないのが実情である。
【0053】
本発明では、好まし態様として、パターン光学異方性層の形成にディスコティック液晶を利用することで、この問題を解決することができる。ディスコティック液晶は負の複屈折性を示す液晶であり、円偏光画像等を形成するために必要なReを発現しつつ、Rthが負の光学異方性層を形成することは容易である。ディスコティック液晶組成物からなる光学異方性層のRthにより、それに積層されるポリマーフィルム等の部材の正のRthを相殺することができ、積層体全体としてのRthを、視野角特性に影響を与えない程度まで軽減することができる。
【0054】
第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3×λ/4である光学異方性層を利用しても同様に円偏光画像を分離することができる。また、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3×λ/4である光学異方性層を利用することで、右眼用及び左眼用の直線偏光画像を分離してもよい。
【0055】
さらに、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの一方の面内レターデーションがλ/2であり、且つ他方の面内レターデーションが0である光学異方性層を利用し、これを面内レターデーションがλ/4の支持体と各々の遅相軸を平行又は直交して積層しても同様に円偏光画像を分離することができる。
また、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの形状及び配置パターンは、
図11及び
図12に示すストライプ状のパターンを交互に配置した態様に限定されるものではない。前述のとおり、チェッカーボード状のパターンでもよく、
図13に示す様に、矩形状のパターンを格子状に配置してもよい。
【0056】
また、光学フィルムは他の部材を含んでいてもよい。例えば、
図10に示す例において、透明支持体14と光学異方性層12との間に配向膜を有していてもよいし、光学異方性層12のさらに外側に反射防止層を含む表面フィルムを配置してもよい。また、透明支持体14と偏光膜16との間に、偏光膜16の保護フィルムが配置されていてもよい。また、偏光膜16の裏面に、保護フィルムがさらに配置されていてもよい。また、上記した通り、表示パネルが視認側表面に偏光膜を有する場合は、本発明の光学フィルムは偏光膜を有さず、表示パネルの偏光膜と組み合わされることで、円偏光画像等の分離機能を示す態様であってもよい。使用可能なこれらの部材の詳細については、後述する。
図14(a)~
図14(e)に、本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図を示す。
【0057】
図14(a)に示す例は、支持体14、光学異方性層12、基材フィルム24および反射防止層25がこの順に積層された光学フィルムの例である。基材フィルム24は反射防止層25用の基材(支持体)である。
図14(b)に示す例は、光学異方性層12、支持体14、および、反射防止層25がこの順に積層された光学フィルムの例である。
図14(c)に示す例は、偏光膜保護フィルム26、偏光膜16、支持体14、光学異方性層12、基材フィルム24、および、反射防止層25がこの順に積層された光学フィルムの例である。
図14(d)に示す例は、偏光膜保護フィルム26、偏光膜16、光学異方性層12、支持体14、および、反射防止層25がこの順に積層された光学フィルムの例である。
図14(e)に示す例は、支持体14、光学異方性層12、および、反射防止層25がこの順に積層された光学フィルムの例である。
なお、支持体および光学異方性層以外の層は、フィルムロールから切り抜かれた後に積層されてもよいし、長尺なフィルムロールの形態に、長尺な各層を積層したものであってもよい。
【0058】
光学異方性層12は、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成され、ディスコティック液晶は、垂直配向させるのが好ましい。なお、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85~90度が好ましく、87~90度がより好ましく、88~90度がさらに好ましく、89~90度が最も好ましい。また、前述の組成物としては、ディスコティック液晶の配向を制御する配向制御剤を含有していてもよい。ディスコティック液晶及び配向制御剤の詳細については後述する。
【0059】
第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度である態様では、面内遅相軸a及びbは、偏光膜の吸収軸とそれぞれ±45°の角度をなすことが好ましい。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1位相差領域12a及び第2位相差領域12bのいずれか一方については、40~50°であることが好ましく、他方は、-50~-40°であることが好ましい。
なお、光学異方性層12のReが単独でλ/4である必要はなく、偏光膜16の一方の表面上に配置される光学異方性層12を含む全ての部材のReの総和、例えば、
図15(a)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのReの総和、
図15(b)の態様では、偏光膜保護フィルム、光学異方性層、及び支持体のReの総和が、
図15(c)の態様では、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのReの総和、
図15(d)の態様では、光学異方性層、及び支持体のReの総和が、
図15(e)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、及び光学異方性層のReの総和が、110~160nmであるのが好ましく、120~150nmであるのがより好ましく、125~145nmであることが特に好ましい。ここで、「全てのReの総和」とは、該当する層をまとめて一度に測定したときのReのことである。
【0060】
なお、
図15(a)に示す態様は、
図14(a)に示した光学フィルム10を、液晶パネル29aの視認側に配置した例であり、この場合の液晶パネル29aは、視認側(図中上側)から、偏光膜保護フィルム26、偏光膜16、光学補償膜27、液晶セル28、光学補償膜27、偏光膜16、および、偏光膜保護フィルム26がこの順に積層された例である。
図15(b)に示す態様は、
図14(b)に示した光学フィルム10を、液晶パネル29aの視認側に配置した例であり、この場合の液晶パネル29aは、
図15(a)に示す液晶パネル29aと同様の構成である。
図15(c)に示す態様は、
図14(c)に示した光学フィルム10を、液晶パネル29bの視認側に配置した例であり、この場合の液晶パネル29bは、視認側(図中上側)から、液晶セル28、光学補償膜27、偏光膜16、および、偏光膜保護フィルム26がこの順に積層された例である。
図15(d)に示す態様は、
図14(d)に示した光学フィルム10を、液晶パネル29bの視認側に配置した例であり、この場合の液晶パネル29bは、
図15(c)に示す液晶パネル29bと同様の構成である。
図15(e)に示す態様は、
図14(e)に示した光学フィルム10を、液晶パネル29aの視認側に配置した例であり、この場合の液晶パネル29aは、
図15(a)に示す液晶パネル29aと同様の構成である。
【0061】
一方、光学フィルムロールを表示パネルに配置した場合に、偏光膜より視認側外側に配置される部材のRthは、視野角特性に影響するので、その絶対値が小さいほうが好ましく、具体的には、Rthは-100nm~100nmが好ましく、-60nm~60nmであるのがより好ましく、-40~40nmであるのがさらに好ましく、-40~20nmであるのが特に好ましい。但し、本発明者が鋭意検討した結果、偏光膜の吸収軸方向によって、同一の部材が配置され、同一のRthであっても、視野角特性に影響する程度が異なることがわかった。具体的には、
図11に示す態様、即ち、偏光膜の吸収軸方向が、表示面左右方向を0°とした場合に、45°又は135°方向である態様では、偏光膜より視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響するが、一方で、
図12に示す態様、即ち、偏光膜の吸収軸方向が、表示面左右方向を0°とした場合に、0°又は90°方向である態様では、偏光膜と光学異方性層との間に配置される部材のRthはほとんど影響せず、光学異方性層及びさらにその視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響することがわかった。
【0062】
図15(a)~
図15(e)の態様を例に挙げれば、
図11の配置において、
図15(a)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和が、
図15(b)の態様では、偏光膜保護フィルム、光学異方性層及び支持体全てのRthの総和が、
図15(c)の態様では、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和が、
図15(d)の態様では、光学異方性層及び支持体の全てのRthの総和が、
図15(e)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、及び光学異方性層の全てのRthの総和が、-100nm~100nmが好ましく、-80nm~80nmがより好ましく、-60~60nmであるのがさらに好ましく、-60~20nmであるのが特に好ましい。ここで、「全てのRthの総和」とは、該当する層をまとめて一度に測定したときのRthのことである。
【0063】
[3D画像表示装置及び3D画像表示システム]
本発明は、本発明の光学フィルムを有する3D画像表示装置及び3D画像表示システムにも関する。
本発明の3D画像表示装置は、画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルの視認側に配置される上述した光学フィルムとを有する。
また、本発明の3D画像表示システムは、上記3D画像表示装置と、3D画像表示装置の視認側に配置される円偏光板とを備え、円偏光板を通じて立体画像を視認させる。
前述のとおり、本発明の光学フィルムは、表示パネルの視認側に配置され、表示パネルが表示する画像を右眼用及び左眼用の円偏光画像又は直線偏光画像等の偏光画像に変換する機能を有する。観察者は、これらの画像を円偏光又は直線偏光眼鏡等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
【0064】
本発明では、表示パネルについてはなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL(electro-luminescence)層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよいし、自発光のLED(light emitting diode)画素が集積されたLEDウォール型のパネルでもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、透過モードの液晶パネル等は、視認側表面に画像表示のための偏光膜を有する態様では、本発明の光学フィルムは、当該偏光膜との組み合わせによって、上記機能を達成してもよい。勿論、本発明の光学フィルムは、液晶パネルとは別に偏光膜を有していてもよいが、その場合は、光学フィルムの偏光膜の吸収軸と、液晶パネルの偏光膜の吸収軸とを一致させて配置する。
【0065】
前述の
図15(a)~
図15(e)に、
図14(a)~
図14(e)に示す本発明の光学フィルムと、表示パネルとして液晶パネルとを有する3D画像表示装置の構成例を断面模式図として示したが、これらの構成に限定されるものではない。なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の液晶表示装置の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。
図15(a)~
図15(e)に示す態様では、液晶セルの後方には、バックライトが配置され、バックライトと液晶セルとの間に偏光膜が配置された、透過モードとして構成されている。
【0066】
液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、その一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。TNモードでは、一般的に、偏光膜の吸収軸は、表示面左右方向0°に対して45°又は135°に配置されるので、TNモード液晶パネルとは、
図11に示す態様の光学フィルムと組み合わせるのが好ましい。また、VAモード及びIPSモードでは、一般的に、偏光膜の吸収軸は、表示面左右方向0°に対して0°又は90°に配置されるので、VAモード及びIPSモード液晶パネルとは、
図12に示す態様の光学フィルムと組み合わせるのが好ましい。
【0067】
以下、本発明のフィルムロール、光学フィルム、3D画像表示装置および3D画像表示システムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0068】
光学異方性層:
本発明における光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前述の第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層である。一例は、第1及び第2位相差領域がそれぞれλ/4程度のReを有し、且つ面内遅相軸が互いに直交している光学異方性層である。このような光学異方性層の形成には種々の方法があるが、本発明では、重合性基を有するディスコティック液晶を垂直配向させた状態で重合させ、固定化して形成することが好ましい。なお、前述の光学異方性層は単層構造であっても、積層構造であってもよい。2以上の層からなる積層構造の態様では、少なくとも一つの層が、ディスコティック液晶を含有する組成物の配向を固定してなる光学異方性層であるのが好ましい。前述の積層構造の光学異方性層の一例は、非パターン化(以下「一様な」という場合もある)の光学異方性層と、パターン化光学異方性層との積層体である。前述の積層構造の例において、ディスコティック液晶を含有する組成物からなる光学異方性層は、前述の非パターン化光学異方性層及び前述のパターン化光学異方性層のいずれであってもよいし、双方であってもよい。前述の積層構造の例が、ディスコティック液晶を含有する組成物からなる光学異方性層以外の光学異方性層を含む場合、その例には、棒状液晶を含有する組成物からなる光学異方性層、及び複屈折高分子フィルムが含まれる。前述の積層構造の例では、第1位相差領域及び第2の位相差領域のいずれか一方は、2以上の光学異方性層のReが互いに加算されて所定のReを示し(例えばRe=λ/2)、他方は、2以上の光学異方性層のReが互いに軽減し合い所定のRe(例えばRe=0)を示す。
【0069】
光学異方性層は単独でReがλ/4程度であってもよく、その場合はRe(550)が、110~165nmであることが好ましく、120~150nmであることがより好ましく、125~145nmであることが特に好ましい。前述の光学異方性層のRth(550)は負であるのが好ましく、-80~-50nmであることが好ましく、-75~-60nmであることがより好ましい。光学異方性層のRth(550)が負であると、他の部材の正のRthを相殺することができ、斜め方向の輝度低下を抑制することができる。
【0070】
[重合性基を有するディスコティック液晶化合物]
本発明において光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前述のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
前述のディスコティック液晶としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I): D(-L-H-Q)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Hは二価の芳香族環又は複素環であり、Qは重合性基であり、nは3~12の整数を表す。
【0071】
円盤状コア(D)は、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、アントラキノン環、トルキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましく、ベンゼン環、トリフェニレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が特に好ましい。
【0072】
Lは、*-O-CO-、*-CO-O-、*-CH=CH-、*-C≡C-及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基が好ましく、*-CH=CH-又は*-C≡C-のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基であることが特に好ましい。ここで、*は一般式(I)中のDに結合する位置を表す。
【0073】
Hは、芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましく、ピリジン環が特に好ましい。Hは、芳香族環が特に好ましい。
【0074】
重合性基Qの重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリレート基、エポキシ基が好ましい。
【0075】
前述の一般式(I)で表されるディスコティック液晶は、下記一般式(II)又は(III)で表されるディスコティック液晶であることが特に好ましい。
【0076】
【0077】
式中、L、H、Qは、前述の一般式(I)におけるL、H、Qとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0078】
【0079】
式中、Y1、Y2、及びY3は、後述する一般式(IV)におけるY11、Y12、及びY13と同義であり、その好ましい範囲も同一である。また、L1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、及びR3も、後述する一般式(IV)におけるL1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、R3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0080】
後述するように、一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表されるように、分子内に複数個の芳香環を有しているディスコティック液晶は、配向制御剤として用いられるピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物等のオニウム塩との間に分子間π-π相互作用が起こるため、垂直配向を実現できる。特に、例えば、一般式(II)において、Lが、*-CH=CH-又は*-C≡C-のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基である場合、及び、一般式(III)において、複数個の芳香環及び複素環が単結合で連結される場合は、その連結基により結合の自由回転が強く束縛されることにより分子の直線性が保持されるため、液晶性が向上すると共に、より強い分子間π-π相互作用が起こり安定な垂直配向が実現できる。
【0081】
前述のディスコティック液晶としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0082】
【0083】
式中、Y
11、Y
12及びY
13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H
1、H
2及びH
3は、それぞれ独立に一般式(I-A)又は(I-B)の基を表し;R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に下記一般式(I-R)を表す;
【化4】
【0084】
一般式(I-A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(IV)におけるL1~L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(IV)におけるR1~R3側と結合する位置を表す;
【0085】
【0086】
一般式(I-B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(IV)におけるL1~L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(IV)におけるR1~R3側と結合する位置を表す;
【0087】
一般式(I-R)
*-(-L21-Q2)n1-L22-L23-Q1
一般式(I-R)中、*は、一般式(IV)におけるH1~H3側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0~4の整数を表す;L22は、**-O-、**-O-CO-、**-CO-O-、**-O-CO-O-、**-S-、**-NH-、**-SO2-、**-CH2-、**-CH=CH-又は**-C≡C-を表す;L23は、-O-、-S-、-C(=O)-、-SO2-、-NH-、-CH2-、-CH=CH-及び-C≡C-並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q1は重合性基又は水素原子を表す。
【0088】
前述の式(IV)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物の各符号の好ましい範囲、及び前述の式(IV)の化合物の具体例については、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物は、前述の式(IV)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物に限定されるものではない。
【0089】
トリフェニレン化合物としては、特開2007-108732号公報の段落[0062]~[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
前述の一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、後述する、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる。特に、一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、複数個の芳香環が単結合で連結されているため、分子の回転自由度が束縛された直線性の高い分子構造を有しているため、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間により強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させ垂直配向状態が実現できる。
【0091】
本発明では、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85~90度が好ましく、87~90度がより好ましく、88~90度がさらに好ましく、89~90度が最も好ましい。
なお、前述の組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤を添加していることが好ましく、その添加剤の例には、特開2009-223001号公報の[0055]~[0063]に記載の化合物が含まれる。
【0092】
なお、液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学異方性層のもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(液晶性化合物のチルト角はその層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、-40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA-21ADH及びKOBRA-WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP-100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0093】
[オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)]
本発明では、前述のように、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
【0094】
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z-(Y-L-)nCy+・X‐
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(2a)及び(2b)におけるL23、L24、Y22、Y23、Z21、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。
【0095】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
【0096】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。さらに、オニウム塩化合物は、温度T
1℃では配向膜材料との親和性が高く、一方、温度T
2℃では、親和性が低下しているのが好ましい。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温~150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyamaand K.Morokuma、Journalof American Chemical Society、第99巻、第1316~1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、
図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、AngewanteChemistry InternationalEdition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
【0097】
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5-トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。
【0098】
nは、2~5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前述のディスコティック液晶と強い分子間π-π相互作用が働くため、そのディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
【0099】
前述の一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前述の一般式(I)~(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
【0100】
【0101】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
L23は、単結合、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-O-AL-O-、-O-AL-O-CO-、-O-AL-CO-O-、-CO-O-AL-O-、-CO-O-AL-O-CO-、-CO-O-AL-CO-O-、-O-CO-AL-O-、-O-CO-AL-O-CO-又は-O-CO-AL-CO-O-であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1~10のアルキレン基である。L23は、単結合、-O-、-O-AL-O-、-O-AL-O-CO-、-O-AL-CO-O-、-CO-O-AL-O-、-CO-O-AL-O-CO-、-CO-O-AL-CO-O-、-O-CO-AL-O-、-O-CO-AL-O-CO-または-O-CO-AL-CO-O-が好ましく、単結合または-O-がさらに好ましく、-O-が最も好ましい。
【0102】
L24は、単結合、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-または-N=N-であるのが好ましく、-O-CO-又は-CO-O-がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、-O-CO-及び-CO-O-であるのがさらに好ましい。
【0103】
R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1~20の置換アミノ基である。
R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R22は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2~12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2~8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R22が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0104】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
【0105】
Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前述の5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1~12のアルキル基および炭素原子数が1~12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2~12のアシル基または炭素原子数が2~12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1~4の炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0106】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0107】
Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1~10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2~10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1~12のアルキル基、炭素原子数が2~20のアルキニル基、炭素原子数が1~12のアルコキシ基、炭素原子数が2~13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7~26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7~26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1~10のアルキル基または炭素原子数が1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4~10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7~12のアルキル基、炭素原子数が7~12のアルコキシ基、炭素原子数が7~12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7~12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7~12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7~12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0108】
アシル基は-CO-R、アシルオキシ基は-O-CO-Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0109】
pは、1~10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。CpH2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。CpH2pは、直鎖状アルキレン基(-(CH2)p-)であることが好ましい。
【0110】
式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基である。
【0111】
前述の式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
【0112】
【0113】
式(2a’)及び(2b’)中、式(2a)及び(2b)中のそれぞれと同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、-O-CO-又は-CO-O-であるのが好ましく、L24が-O-CO-で、且つL25が-CO-O-であるのが好ましい。
【0114】
R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基である。n23は0~4、n24は1~4、及びn25は0~4を表す。n23及びn25が0で、n24が1~4(より好ましくは1~3)であるのが好ましい。
R30は、炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基であるのが好ましい。
【0115】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、特開2006-113500号公報の明細書中[0058]~[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0116】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
【0117】
【0118】
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1~2質量%程度であるのが好ましい。
【0119】
前述の一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前述の親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1~20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前述のピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
【0120】
さらに、前述の一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、ある温度を超えて加熱することで、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進することができる。これは、加熱による熱エネルギーでポリビニルアルコールとの水素結合が切断され、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
【0121】
[フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶、主に、前述の一般式(I)で表されるディスコティック液晶、の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004-333852号、同2004-333861号、同2005-134884号、同2005-179636号、及び同2005-181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005-179636号、及び同2005-181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ホスホノキシ{-OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1~1質量%程度であるのが好ましい。
【0122】
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ホスホノキシ{-OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
【0123】
[溶媒]
光学異方性層の形成に利用する、前述の組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0124】
[重合開始剤]
前述の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、その配向状態を紫外線照射により固定する。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。
【0125】
[増感剤]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0126】
[その他の添加剤]
前述の組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前述の非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0~20質量%程度であるのが好ましい。
【0127】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【0128】
透明支持体:
本発明の光学フィルムは、前述の光学異方性層を支持する透明支持体を有する。透明支持体としては、正のRthを示すポリマーフィルムを用いるのが好ましい。また透明支持体として、低Re及び低Rthのポリマーフィルムを用いるのも好ましい。
【0129】
本発明に使用可能な透明支持体を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前述のポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0130】
また、前述の透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0131】
また、前述の透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
【0132】
[紫外線吸収剤]
上記セルロースアシレートフィルム等の透明支持体には、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板や画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0133】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前述のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
【0134】
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加してもよいし、また直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースアシレート中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0135】
本発明において紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアシレート100質量部に対し0.1~5.0質量部、好ましくは0.5~2.0質量部、より好ましくは0.8~2.0質量部である。
【0136】
配向膜:
光学異方性層及び透明支持体との間にパターン光学異方性層を実現できる配向膜を形成してもよい。配向膜としては、ラビング配向膜を利用するのが好ましい。
本発明に利用可能な「ラビング配向膜」とは、ラビングによって、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。ラビング配向膜には、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。液晶分子は、配向膜への紫外線照射部分でラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行になるように配向し、未照射部分で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して直交配向するように、配向膜の材料、酸発生剤、液晶、及び配向制御剤を選択する。
【0137】
ラビング配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85~99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。ラビング配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがさらに好ましい。
【0138】
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=N×l×(1+2π×r×n/(60×v))
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0139】
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
長尺状の偏光膜であって、吸収軸が長手方向の偏光膜と貼り合わせるには、長尺のポリマーフィルムからなる支持体上に配向膜を形成し、長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理して、ラビング配向膜を形成するのが好ましい。
【0140】
可能であれば、光配向膜を利用してもよい。
【0141】
また、配向膜は、少なくとも一種の光酸発生剤を含有していてもよい。光酸発生剤とは、紫外線等の光照射により分解し酸性化合物を発生する化合物である。前述の光酸発生剤が、光照射により分解して酸性化合物を発生すると、配向膜の配向制御能に変化が生じる。ここでいう配向制御能の変化は、配向膜単独の配向制御能の変化として特定されるものであっても、配向膜とその上に配置される光学異方性層形成用組成物中に含まれる添加剤等とによって達成される配向制御能の変化として特定されるものであってもよいし、またこれらの組み合わせとして特定されるものであってもよい。
ディスコティック液晶は、オニウム塩を添加することで、直交垂直配向状態になる場合がある。分解により発生した酸と、そのオニウム塩とが、アニオン交換すると、そのオニウム塩の配向膜界面における偏在性が低下し、直交垂直配向効果を低下させ、平行垂直配向状態を形成させてもよい。また、例えば、配向膜がポリビニルアルコール系配向膜である場合には、そのエステル部分が発生した酸により分解し、その結果、前述のオニウム塩の配向膜界面偏在性を変化させてもよい。
【0142】
前述の光学異方性層は、配向膜を利用した種々の方法で形成でき、その製法については特に制限はない。
第1の態様は、ディスコティック液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、ディスコティック液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。例えば、前述の一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前述の親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1~20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前述のピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前述のピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010-141346号明細書(特開2012-008170号公報)に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0143】
第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1位相差領域及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010-173077号明細書(特開2012-032661号公報)に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0144】
また、第1の態様及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前述の配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog.Polym.Sci.,23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。前述の光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010-289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0145】
ここで、配向膜中に光酸発生剤を添加するなどして、パターン露光により、パターン配向膜を形成する場合には、露光マスクと配向膜とを密着させて露光を行うことが好ましい。また、露光マスクと配向膜との間に0.03MPa~0.7MPaの圧力をかけて露光を行うことが好ましい。
マスクと配向膜とを密着させることで、露光時の光漏れを抑制して、第1位相差領域と第2位相差領域との境界部分に形成される、液晶性化合物が一様な方向に配向していない境界領域の幅を小さくすることができる。また、0.03MPa~0.7MPaの圧力をかけて密着させることで、マスクと塗膜との間に隙間が生じることを抑制でき、露光時の光漏れを十分に抑制して、境界領域の幅をより小さくすることができる。
【0146】
マスクと塗膜とを密着させる圧力は0.03MPa~0.7MPaが好ましく、0.1MPa~0.6MPaがより好ましく、0.2MPa~0.5MPaがさらに好ましい。
【0147】
また、この製造方法では、露光の際に、マスクと塗膜とを密着させて、露光を行うため、露光工程の後にラビング工程を行う。ラビング工程の後にマスクと塗膜とを密着させると、ラビング処理によって形成したラビング面が破壊されるため、露光工程の後にラビング工程を行うのが好ましい。
【0148】
さらに、第3の態様として、重合性が互いに異なる重合性基(例えば、オキセタニル基及び重合性エチレン性不飽和基)を有するディスコティック液晶を利用する方法がある。この態様では、ディスコティック液晶を所定の配向状態にした後、一方の重合性基のみの重合反応が進行する条件で、光照射等を行い、プレ光学異方性層を形成する。次に、他方の重合性基の重合を可能にする条件で(例えば他方の重合性基の重合を開始させる重合開始剤の存在下で)、マスク露光を行う。露光部の配向状態は完全に固定され、所定のReを有する一方の位相差領域が形成される。未露光領域は、一方の反応性基の反応が進行しているものの、他方の反応性基は未反応のままとなっている。よって、等方相温度を超え、他方の反応性基の反応が進行可能な温度まで加熱すると、未露光領域は、等方相状態に固定され、即ち、Reが0nmになる。
【0149】
偏光膜:
偏光膜は、一般的な偏光膜を用いることができる。例えば、ヨウ素や二色性色素によって染色されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子膜を用いることができる。
【0150】
粘着層または粘着剤:
光学異方性層と偏光膜との間には、粘着層が配置されていてもよい。光学異方性層と偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001~1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。粘着剤については特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いることができる。
【0151】
光学フィルムの層構成:
本発明の光学フィルムは、目的に応じて必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。好ましい態様としては、光学異方性層の上にハードコート層が積層された態様、光学異方性層の上に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上にハードコート層が積層され、その上に更に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上に防眩層が積層された態様、さらには本発明の光学フィルムを含む積層体を基板やディスプレイ基板へ貼合するための粘着層が積層された態様等が挙げられる。その反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して設計された、少なくとも一層以上の層からなる層である。
【0152】
反射防止層は、最も単純な構成では、フィルムの最表面に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8-122504号公報、特開平8-110401号公報、特開平10-300902号公報、特開2002-243906号公報、特開2000-111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層としたもの(例、特開平10-206603号公報、特開2002-243906号公報等)等が挙げられる。
【0153】
ハードコート層や反射防止層を有す本発明の光学フィルムの具体的な層構成の例を下記に示す。
支持体/光学異方性層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層
支持体/光学異方性層/支持体/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/防眩層
支持体/光学異方性層/支持体/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層
光学異方性層/支持体/支持体/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/防眩層
光学異方性層/支持体/支持体/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/防眩層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層
光学異方性層/支持体/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/防眩層
光学異方性層/支持体/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層
支持体/光学異方性層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/防眩層
支持体/光学異方性層/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/防眩層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0154】
上記の各構成において、光学異方性層の上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の機能層を直接形成することが好ましい。また、光学異方性層を含む光学フィルムと、別途、支持体上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の層を設けた光学フィルムとを積層して製造してもよい。
【0155】
本発明の光学フィルムの好ましい態様の一つは、光学異方性層側から順に、中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層が積層された反射防止層を有する態様である。その中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60~1.65であり、その中屈折率層の厚さが50.0nm~70.0nmであり、その高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70~1.74であり、その高屈折率層の厚さが90.0nm~115.0nmであり、その低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33~1.38であり、その低屈折率層の厚さが85.0nm~95.0nmであることが好ましい。
【0156】
上記構成の中でも、以下に示す構成(1)又は構成(2)が、特に好ましい。
構成(1):中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60~1.64であり、中屈折率層の厚さが55.0nm~65.0nmであり、高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70~1.74であり、高屈折率層の厚さが105.0nm~115.0nmであり、低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33~1.38であり、低屈折率層の厚さが85.0nm~95.0nmを有する低屈折率層である反射防止フィルム。
構成(2):中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60~1.65であり、中屈折率層の厚さが55.0nm~65.0nmであり、高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70~1.74であり、高屈折率層の厚さが90.0nm~100.0nmであり、低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33~1.38であり、低屈折率層の厚さが85.0nm~95.0nmである反射防止フィルム。
【0157】
各層の屈折率と厚みを上記範囲内とすることで反射色の変動をより小さくできる。構成(1)は反射色の変動を小さく抑えつつ、反射率を特に低くすることができる構成であり、特に好ましい。また、構成(2)は反射率の変動が構成(1)よりも更に小さく抑えられる構成であり、膜厚変動に対するロバスト性に優れるため、特に好ましい。
【0158】
そして、本発明においては、設計波長λ(=550nm:視感度が最も高い波長域の代表)に対して、上記中屈折率層が下式(I)を、上記高屈折率層が下式(II)を、上記低屈折率層が下式(III)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0159】
式(I) λ/4×0.68<n1×d1<λ/4×0.74
式(II) λ/2×0.66<n2×d2<λ/2×0.72
式(III) λ/4×0.84<n3×d3<λ/4×0.92
式中、n1は中屈折率層の屈折率であり、d1は中屈折率層の層厚(nm)であり、n2は高屈折率層の屈折率であり、d2は高屈折率層の層厚(nm)であり、n3は低屈折率層の屈折率であり、d3は低屈折率層の層厚(nm)であり、n3<n1<n2である。
【0160】
上記式(I)、式(II)、式(III)を満足する場合には、反射率が低くなり、かつ反射色の変化を抑制することができるために好ましい。また、これにより、指紋や皮脂等の油脂成分が付着した際に色味の変化が少ないために汚れが視認されにくくなるために好ましい。
【0161】
波長380nmから780nmの領域におけるCIE標準光源D65の5度入射光に対する正反射光の色味が、CIE1976L*a*b*色空間のa*、b*値がそれぞれ0≦a*≦8、かつ、-10≦b*≦0の範囲内にすること、更には上記の色味変動範囲内で、各層のうち任意の層の層厚が2.5%変動したときの色差ΔEを下記式(5)の範囲にすることで、反射色のニュートラル性が良好で、製品ごとに反射色に差がなく、かつ、指紋や皮脂等の油脂成分が表面に付着した際に汚れが目立たなくなるため好ましい。重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤、及び含フッ素多官能アクリレートを含有した低屈折率層と上記層構成とを組み合わせて用いることで、多層干渉膜構成にしてもマジックや指紋、皮脂等の油脂成分が付着しにくく、付着しても拭き取りやすくかつ目立たなくすることが可能となる。
【0162】
式(5):
ΔE={(L*-L*')2+(a*-a*')2+(b*-b*')2}1/2≦3
(L*'、a*'、b*'は設計膜厚時の反射光の色味)
【0163】
また、画像表示装置の表面に設置した場合、鏡面反射率の平均値を0.5%以下とすることにより、映り込みを著しく低減することができ、好ましい。
【0164】
鏡面反射率及び色味の測定は、分光光度計"V-550"(日本分光(株)製)にアダプター"ARV-474"を装着して、380~780nmの波長領域において、入射角θ(θ=5~45°、5°間隔)における出射角-θの鏡面反射率を測定し、450~650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。更に、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の各入射角の入射光に対する正反射光の色味を表すCIE1976L*a*b*色間のL*値、a*値、b*値を算出し、反射光の色味を評価することができる。
【0165】
各層の屈折率の測定は、各層の塗布液を3~5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて測定することができる。本明細書では、「DR-M2,M4用干渉フィルタ546(e)nm 部品番号:RE-3523」のフィルタを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。各層の膜厚は光の干渉を利用した反射分光膜厚計"FE-3000"(大塚電子(株)製)や、TEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察により測定することができる。反射分光膜厚計でも膜厚と同時に屈折率の測定も可能であるが、膜厚の測定精度を上げるために、別手段で測定した各層の屈折率を用いることが望ましい。各層の屈折率が測定できない場合は、TEMによる膜厚測定が望ましい。その場合は、10箇所以上測定し、平均した値を用いることが望ましい。
【0166】
本発明の光学フィルムは、製造時の形態がフィルムをロール状に巻き取った形態をしているのが好ましい。その場合に、反射色の色味のニュートラリティーを得るためには、任意の1000m長の範囲の層厚の平均値d(平均値)、最小値d(最小値)、及び最大値d(最大値)をパラメーターとする下記式(6)で算出される層厚分布の値が、薄膜層の各層につき、5%以下であるのが好ましく、より好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは2.5%以下、2%以下が特に好ましい。
【0167】
式(6):(最大値d-最小値d)×100/平均値d
【0168】
(ハードコート層)
本発明の光学フィルムは、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることができる。本発明においては、ハードコート層を設けなくてもよいが、ハードコート層を設けた方が鉛筆引掻き試験などの耐擦傷性面が強くなり、好ましい。好ましくは、ハードコート層上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0169】
ハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48~2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48~1.70である。ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層ある態様では、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
【0170】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、通常0.5μm~50μm程度とし、好ましくは1μm~20μm、更に好ましくは5μm~20μmである。
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JISK5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0171】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0172】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0~10.0μm、好ましくは1.5~7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0173】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、各種屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前述の多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0174】
ハードコート層は、前述の無機化合物の粒子など以外に紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0175】
(紫外線吸収剤)
前述のハードコート層等、パターン光学異方性層のさらに外側に配置される層中に、紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。使用可能な紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できるもので、公知のものがいずれも使用できる。そのような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るためにベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
【0176】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-3′-tert-ブチル-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-tert-ブチル-3′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-5′-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-ter―ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1、1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7~9-ブランチ直鎖アルキルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0177】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アセトキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシ-5,5′-ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0178】
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率や紫外線吸収剤の吸光度にもよるが、ハードコート層形成用組成物(但し塗布液として調製される場合は溶媒を除いた固形分)100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは1~20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が20質量部よりも多い場合には、硬化性組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、ハードコート層の可視光線透過率が低下するおそれもある。一方、1質量部より少ない場合には、ハードコート層の紫外線吸収性を十分に発揮することができなくなる。
【0179】
(防眩層)
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくはフィルムの硬度、耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩層については特開2009-98658号公報の段落[0178]~[0189]に記載されており、本発明においても同様である。
【0180】
(高屈折率層及び中屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、1.70~1.74であることが好ましく、1.71~1.73であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.60~1.64であることが好ましく、1.61~1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
【0181】
上記中屈折率層は、上記高屈折率層と屈折率を異ならせた以外は同様の材料を用いて同様に調整できるので、以下、特に高屈折率層について説明する。
上記高屈折率層は、無機微粒子、3官能以上の重合性基を有する硬化性化合物(以下、「バインダー」と称する場合もある)、溶媒及び重合開始剤を含有する塗布組成物を塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱、電離放射線照射あるいは両手段の併用により硬化して形成されたものであるのが好ましい。硬化性化合物や開始剤を用いる場合は、塗布後に熱及び/又は電離放射線による重合反応により硬化性化合物を硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。
【0182】
[無機微粒子]
上記無機微粒子としては、金属の酸化物を含有する無機微粒子が好ましく、Ti、Zr、In、Zn、Sn、Al及びSbから選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物を含有する無機微粒子がより好ましい。また、中屈折率層及び高屈折率層のうち少なくともいずれかが、導電性の無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、屈折率の観点から、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。また、導電性の観点からは、Sb、In、Snのうちの少なくとも1種類の金属の酸化物を主成分とする無機微粒子を用いることが好ましい。導電性の無機微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化銀、酸化ニッケル及び酸化銅からなる群から少なくとも一つ選択される金属酸化物が更に好ましい。
無機微粒子の量を変化させることで所定の屈折率に調整することができる。層中の無機微粒子の平均粒径は、酸化ジルコニウムを主成分として用いた場合、1~120nmであることが好ましく、更に好ましくは1~60nm、2~40nmが更に好ましい。この範囲内で、ヘイズを抑え、分散安定性、表面の適度の凹凸による上層との密着性が良好となり、好ましい。
【0183】
酸化ジルコニウムを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90~2.80であることが好ましく、2.00~2.40であることが更に好ましく、2.00~2.20であることが最も好ましい。
【0184】
無機微粒子の添加量は、添加する層により異なり、中屈折率層では中屈折率層全体の固形分に対し、20~60質量%が好ましく、25~55質量%がより好ましく、30~50質量%が更に好ましい。高屈折率層では高屈折率層全体の固形分に対し、40~90質量%が好ましく、50~85質量%がより好ましく、60~80質量%が更に好ましい。
【0185】
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10~400m2/gであることが好ましく、20~200m2/gであることが更に好ましく、30~150m2/gであることが最も好ましい。
【0186】
無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。無機微粒子の化学的表面処理剤、溶媒、触媒、及び分散物の安定剤は特開2006-17870号公報の[0058]~[0083]に記載されている。
【0187】
無機微粒子の分散は、分散機を用いて分散することができる。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は10~120nmである。好ましくは20~100nmであり、更に好ましくは30~90nm、特に好ましくは30~80nmである。無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層及び中屈折率層を形成できる。
【0188】
[硬化性化合物]
硬化性化合物としては、重合性化合物が好ましく、重合性化合物としては電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーが好ましく用いられる。これらの化合物中の官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0189】
高屈折率層には、前述の成分(無機微粒子、硬化性化合物、重合開始剤、光増感剤など)以外に、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
【0190】
本発明に用いる高屈折率層及び中屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、更にマトリックス形成に必要なバインダー前駆体である硬化性化合物(例えば、前述の電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、硬化性化合物の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0191】
更に、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0192】
高屈折率層の形成において、硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。高屈折率層を酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性、更には、高屈折率層と高屈折率層と隣接する層との接着性を改良することができる。好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で硬化性樹脂の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0193】
上述したように、中屈折率層は、高屈折率層と同様の材料を用いかつ同様にして得ることができる。
具体的には、中屈折率層、高屈折率層が前述の式(I)、式(II)の膜厚と屈折率を満足するように微粒子の種類、樹脂の種類を選択すると共にその配合比率を決め、主な組成を決定することが一例として挙げられる。
【0194】
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、屈折率が1.30~1.47であることが好ましい。多層薄膜干渉型の反射防止フィルム(中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の場合の低屈折率層の屈折率は1.33~1.38であることが望ましく、更に望ましくは1.35~1.37が望ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
【0195】
低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層まで形成した反射防止フィルムの強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が95゜以上であることが好ましい。更に好ましくは102゜以上である。特に、接触角が105°以上であると、指紋に対する防汚性能が著しく良化するため、特に好ましい。また、水の接触角が102°以上で、かつ、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であることがより好ましく、23dyne/cm以下であることが特に好ましく、20dyne/cm以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、水の接触角が105°以上で、かつ、表面自由エネルギーが20dyne/cm以下である。
【0196】
[低屈折率層の形成]
低屈折率層は、重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤、重合性不飽和基を有する含フッ素共重合体、無機微粒子、その他所望により含有される任意成分を溶解あるいは分散させた塗布組成物を塗布と同時、又は塗布・乾燥後に電離放射線照射(例えば光照射、電子線ビーム照射等が挙げられる。)や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により硬化して、形成することが好ましい。
特に、低屈折率層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が1体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度、耐薬品性に優れた層を得ることができる。
好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が0.1体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.05体積%以下、最も好ましくは0.02体積%以下である。
【0197】
酸素濃度を1体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0198】
上記全ての層を形成するための塗布組成物には、低屈折率層用組成物と同様の溶剤を用いることができる。
【0199】
[粘着剤層]
各層の貼り合わせに用いる接着剤としては、粘着剤でもUV接着剤でもよく、粘着剤層や接着剤層などを介して貼り合わせてもよく、特に限定されない。粘着剤は、例えば、透明支持体上にパターン光学異方性層を形成した積層体と、支持体上に上記ハードコート層等を形成した積層体とを貼合するために用いられる。接着剤は、例えば、パターン光学異方性層面と、前述のハードコート層等の支持体の裏面とを接着するために用いてもよいし、また前述の2つの積層体の支持体のそれぞれ裏面を接着するために用いてもよい。
なお、パターン光学異方性層の表面、又はそのパターン光学異方性層を支持する透明支持体の裏面に、前述のハードコート層形成用塗布組成物を塗布して、直接形成してもよく、その場合は、接着剤は不要である。
【0200】
粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0201】
粘着剤層には、例えば、ベースモノマー、共重合モノマーの種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合量、添加剤の種類、その配合量等を制御することにより行うことができる。例えば、粘着剤ベースポリマーの分子量を調整したり、ガラス転移温度や凝集性などが異なるモノマーを共重合したり、架橋剤の添加量による架橋度を制御することなどが効果的に適用される。
【0202】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。特に、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含む粘着剤により形成されているものを好適に用いることができる。
【0203】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1~20のものを例示できる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソミリスチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3~9であるのが好ましい。
【0204】
前述のアクリル系ポリマーのなかでも、平衡水分率を低く制御する観点から、疎水性の高い(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリルポリマーをベースポリマーとすることが好ましい。一般に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、前述の光学透明性、適度な濡れ性と凝集力、接着力、耐候性や耐熱性などの点から、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数3~9のもの、好ましくは4~8のものが実用上好ましく用いられる。これらアルキル基のなかでも、アルキル基の炭素数が大きい程、疎水性が高くなり、当該平衡水分率を低くするうえで好ましい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチルがあげられる。これらのなかでも疎水性が高い(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましい。
【0205】
前述のアクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0206】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミドやN-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド、N-アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミドやN-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミドやN-フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0207】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2-メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0208】
アクリル系ポリマー中の前述の共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、全構成モノマーの重量比率において、0~30%程度、さらには0.1~15%程度であるのが好ましい。
【0209】
これら共重合モノマーの中でも、光学フィルム用途として液晶セルへの接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマーが好ましく用いられる。これらモノマーは、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物モノマーなどは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。例えば、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを用いるよりも、好ましくは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシルのように、ヒドロキシアルキル基のアルキル基の大きいものを用いるのが好ましい。共重合モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを用いる場合、その割合は全構成モノマーの重量比率において、0.01~5%、さらには0.01~3%であるのが好ましい。また、共重合モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、その割合は全構成モノマーの重量比率において、0.01~10%、さらには0.01~7%であるのが好ましい。
【0210】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、10万~250万程度であるのが好ましい。前述のアクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50~80℃程度、反応時間は1~8時間とされる。また、前述の製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20~80重量%程度とされる。
【0211】
また前述の粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、などがあげられる。これら架橋剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤は過酸化物系架橋剤と組み合わせて好適に用いられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0212】
アクリル系ポリマー等のベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.001~20重量部程度が好ましく、さらには0.01~15重量部程度が好ましい。前述の架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が好ましい。過酸化物系架橋剤は、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、0.01~3重量部程度が好ましく、0.02~2.5重量部程度が好ましく、さらには0.05~2.0重量部程度が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、0.001~2重量部程度が好ましく、さらには0.01~1.5重量部程度が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤および過酸化物系架橋剤は、前述の範囲で用いることができる他、これらを併用して好ましく用いることができる。
【0213】
さらに粘着剤には、必要に応じて、シランカップリング剤、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、透明微粒子等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。
【0214】
添加剤としては、シランカップリング剤が好適であり、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、シランカップリング剤(固形分)0.001~10重量部程度が好ましく、さらには0.005~5重量部程度を配合するのが好ましい。シランカップリング剤としては、従来から知られているものを特に制限なく使用できる。例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤を例示できる。
【0215】
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン-ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン-イソプレン-スチレン系ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン系ゴム等があげられる。シリコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等があげられ、これらベースポリマーもカルボキシル基等の官能基が導入されたものを使用することができる。
【0216】
また上記に挙げた以外でも、UV硬化型粘着剤など特定の官能基により硬化させるタイプの粘着剤および接着剤でも本発明おいては使用できる。
【0217】
前述の基材フィルム(支持体)は、光学異方性層の透明支持体を兼ねていてもよい。基材フィルムとして利用可能なポリマーフィルムの例については、前述の光学異方性層の透明支持体の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0218】
液晶セル:
本発明の3D用画像表示システムに用いられる3D用画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digestof tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、及び特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0219】
3D画像表示システム用偏光板:
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。前述の位相差板によって右眼用及び左眼用の円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡が用いられ、直線偏光画像を形成する態様では、直線偏光眼鏡が用いられる。光学異方性層の前述の第1位相差領域及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され、前述の第1位相差領域及び第2位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前述の偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
【0220】
偏光眼鏡を含め、本発明の3D用画像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、光学異方性層(位相差板)は、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前述の第1位相差領域と前述の第2位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前述の第1位相差領域と前述の第2位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前述の第1位相差領域と前述の第2位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
【0221】
円偏光を利用する場合、前述の第1位相差領域と前述の第2位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前述の光学異方性層において円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は-45度)に近いほど好ましい。
【0222】
また、例えば前述の映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前述の偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸がそのフロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前述の偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前述の液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前述の光学異方性層の奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、光学異方性層(光学フィルム)及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004-170693号公報に開示がある。
【0223】
偏光眼鏡の例としては、特開2004-170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM-M220Wの付属品を挙げることができる。
【実施例】
【0224】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0225】
(実施例1)
[ラビング配向膜付透明支持体ロール001の作製]
下記のラビング配向膜用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、ラビング配向膜用塗布液として用いた。その塗布液を支持体としてのタックフィルムTG60UL(富士フイルム株式会社製、幅1340mm、長さ1000m)の表面に、厚さ0.5μmとなるように塗布を行い、120℃で1分間乾燥させて巻きとった。次に、
図16に示すような、5mm四方の矩形状の開口部41aがチェッカーパターンで形成された、フィルムロール長手方向が500mm、フィルムロール幅方向が1000mmのマスク40aを、幅方向中央に配置して露光を行った。この露光を
図17に示すように、上記のラビング配向膜上に長手方向に100mmの間隔をあけて合計40回繰り返した。露光は、室温空気下にて、UV-C領域における照射量50mJとなるようLED-UVランプを用いて紫外線を照射した。また、露光の際、マスクをラビング配向膜に接触させて、紫外線の照射を行った。紫外線の照射により、マスクの開口部である、第1の位相差領域用の配向膜となる領域において光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させた。その後に、750rpmでロール進行方向に対して約45°の方向にラビング処理を行い、ラビング配向膜付の透明支持体ロール001を長さ24m作製した。この処理により、透明支持体ロール001には、右眼画素用のチェッカーの格子と左眼画素用のチェッカーの格子がそれぞれ5mm四方で交互に繰り返す、長手方向が500mm、幅方向が1000mmのパターン配向膜42aが、100mm間隔で40か所に形成されている。
【0226】
<配向層用組成>
下記の配向膜用ポリマー材料 100質量部
光酸発生剤(S-5) 3.0質量部
光重合開始剤 7.5質量部
(イルガキュア2959、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
水 2734質量部
メタノール 474質量部
イソプロピルアルコール 365質量部
【0227】
【0228】
【0229】
[光学異方性層からなるパターン部分を有するフィルムロール101の作製]
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液として用いる。その塗布液を、透明支持体ロール001の配向膜側の表面に光学異方性層の膜厚が1.1μmとなるように塗布した。塗布後、膜面温度115℃で2分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた。その後、90℃まで冷却し空気下にて230mW/cm2の空冷メタルハライドランプを用いて紫外線を2秒間照射して、その配向状態を固定化した。以上の工程により、光学異方性層からなるパターン部分を有するフィルムロール101を形成した。形成された光学異方性層の、マスク露光部分(第1の位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、未露光部分(第2の位相差領域)はディスコティック液晶が直交に垂直配向していた。
【0230】
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶(E-1) 20質量部
ディスコティック液晶(E-2) 80質量部
多官能アクリル系重合化合物 10質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
配向膜界面配向剤(II-001) 0.9質量部
配向膜界面配向剤(II-002) 0.08質量部
空気界面配向剤(P-001) 0.6質量部
空気界面配向剤(P-002) 0.01質量部
メチルエチルケトン 244質量部
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
(実施例2)
実施例1で使用した、開口部がチェッカーパターン状に形成されたマスク40aに代えて、
図18に示すような、2mm四方の開口部がチェッカーパターン状に形成された、フィルムロール長手方向が200mm、フィルムロール幅方向が300mmのマスク40bを用い、
図17に示すようなマスク(パターン配向膜42a)の配置に代えて、幅方向に上記マスク40bを10mm間隔で4列配置し、長手方向に50mmの間隔をあけて(
図19参照)、上記のラビング配向膜に合計400回露光を繰り返した以外は、実施例1と同様にして、ラビング配向膜付の透明支持体ロール002を長さ100m作製した。その後、実施例1と同様の方法で前述の透明支持体ロール002に光学異方性層用塗布液をおこない、光学異方性層からなるパターン部分を有するフィルムロール102を作製した。
図19に示すように、透明支持体ロール002には、右眼画素用のチェッカーの格子と左眼画素用のチェッカーの格子がそれぞれ5mm四方で交互に繰り返す、長手方向が200mm、幅方向が300mmのパターン配向膜42bが、幅方向に10mm間隔、長手方向に50mm間隔で4×400か所に形成されている。
また、形成された光学異方性層の、マスク露光部分(第1の位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、未露光部分(第2の位相差領域)はディスコティック液晶が直交に垂直配向していた。
【0239】
(実施例3)
ラビング配向膜の露光の際に、マスクをラビング配向膜から100μm離間させて露光を行った以外は実施例1と同様にしてフィルムロール103を作製した。
【0240】
(光学フィルムの評価)
作製した光学異方性層からなるパターン部分を有するフィルムロール101、102、103のFPRフィルム110について、第1位相差領域および第2の位相差領域をそれぞれ切り出し、KOBRA-21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、Re、Rthをそれぞれ測定、101、102、103のいずれも第1位相差領域、第2位相差領域のReは120nm、Rthは-23nmであることを確認した。
【0241】
(境界領域、角部間の平均間隔の測定)
実施例1および実施例3の光学異方性層の、境界領域の幅を上述の方法で測定したところ、実施例1は10μm、実施例3は40μmであった。また、実施例1および実施例3ともに、第2位相差領域よりも第1位相差領域の面積が大きかった。隣接する第2位相差領域同士の角部間の平均間隔を上述の方法で測定したところ、実施例1は15μm、実施例3は96μmであった。
【0242】
(偏光板一体型のフィルムロール201、202、203の作製)
PVA偏光子の両面をタック2枚で保護してあり、片側に粘着剤つきの偏光板ロール(ZT-TP17、サンリッツ社製)と、実施例1で作製した光学異方性層からなるパターン部分を有するフィルムロール101とを、偏光板ロールの粘着剤を介してロール・ツー・ロールで貼合し、偏光板一体型のフィルムロール201を作製した。なおこの際、パターン部分を有するフィルムロール101の光学異方性層の面が、偏光板の粘着剤の面と直接貼り合わせられるように貼合した。同様にして、実施例2で作製したパターン部分を有するフィルムロール102からも偏光板一体型フィルムロール202を作製した。このようにして作製した偏光板一体型のフィルムロールのパターン部分の中の、第1位相差領域と偏光板の吸収軸のなす角度は反時計回り45°となるようにした。また第2位相差領域と偏光板吸収軸のなす角度は時計回りに45°となるようにした。同様に実施例3のフィルムロール103についても偏光板一体型のフィルムロール203を作製した。
【0243】
(偏光板一体型のフィルムロール201からのシート裁断)
偏光板一体型フィルムロール201のチェッカーパターン部分(長手方向500mm×幅方向1000mm)を長手方向から10枚連続して選び、偏光板一体型フィルムロール201から自動裁断機(グラフテック社製)を用いてシート状に裁断した。
【0244】
(3D画像表示装置301、303、310の作製)
偏光板一体型フィルムロール201から裁断した500mm×1000mmのシートの偏光板側に、同じサイズの粘着剤を貼合したものを2枚用意し、5mmのSMD型LED画素が集積したLEDビデオウォール(960mm×960mm、EachinLED社製)の発光面側へ、5mmのチェッカーパターン部分と5mmのLED画素とが重なりあい、2枚のシートの長辺同士の継ぎ目が見えないようにして貼合し、3D画像表示装置301を作製した。同様に、偏光板一体型フィルムロール203から裁断したシートを用いて3D画像表示装置303を作製した。
【0245】
(3D画像表示装置システム評価)
(1)輝度比の測定
本発明の3D画像表示装置301を点灯し、チェッカーパターンに合わせて右眼用に黒、左眼用に白が配置するように黒および白の画像を表示させた。この際、パッシブ型の3Dメガネ(円偏光メガネ、GetD社製)を直接画面に乗せて、3Dメガネの右眼越しに、黒表示している5mm角の画素を1個選び、この画素の輝度を正面および斜め45度の角度から測定した。同様にして3Dメガネを左眼越し切り替えて同一画素を見ると、白表示となる。この画像の白輝度を正面および斜め45度から測定した。以上から黒の輝度を分母、白の輝度を分子とした輝度比は正面で520、斜め45度で517と求められた。
【0246】
(2)クロストーク評価
本発明の3D画像表示装置301を点灯し、チェッカーパターンの右眼用および左眼用画素から、両者に視差のある3D表示用の画像を表示した。一方、3D画像表示装置の視認側5m離れた位置に立って、パッシブ型の3Dメガネ(円偏光メガネ、GetD社製)をかけ、右眼用の画像と左眼用の画像からなる3D画像を観察した。その結果、本発明の光学フィルムを用いた3D画像表示装置301においては立体視でき、右眼画像への左眼画像の混入、いわゆるクロストークはほとんど視認されなかった。また、3D画像表示装置303においては、わずかにクロストークが視認された。
【符号の説明】
【0247】
10 光学フィルム
12 パターン光学異方性層(パターン部分)
12a 第1の位相差領域
12b 第2の位相差領域
14 透明支持体
16 偏光膜
20 フィルムロール
22 長尺な支持体
24 基材フィルム
25 反射防止層
26 偏光膜保護フィルム
27 光学補償膜
28 液晶セル
29a、29b 液晶パネル
40a、40b マスク
41a、41b 開口部
42a、42b パターン配向膜
a 面内遅相軸
b 面内遅相軸