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  • 特許-嗜好性向上剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】嗜好性向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/142 20160101AFI20220629BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20220629BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20220629BHJP
【FI】
A23K20/142
A23K20/163
A23K50/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018081427
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019187255
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】平尾 栄志
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188344(JP,A)
【文献】特開2017-006030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260000(US,A1)
【文献】国際公開第2014/098179(WO,A1)
【文献】特表2016-538405(JP,A)
【文献】特開2017-086079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 20/00 - 20/28
A23K 50/40 - 50/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸類と還元糖を含む粉末状原料を容器に密封し、水分、水蒸気または水溶性溶媒のいずれも加えずに品温80~180℃の範囲で、5~200分間乾熱処理する工程を含む、嗜好性向上剤の製造方法。
【請求項2】
アミノ酸類の量が粉末状原料の全量に対して0.5~20質量%である、請求項1に記載の嗜好性向上剤の製造方法。
【請求項3】
還元糖の量が粉末状原料の全量に対して0.5~20質量%である、請求項1又は2に記載の嗜好性向上剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード等に使用される嗜好性向上剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットフードは、ドライタイプ(水分含量10%程度以下)、セミモイストタイプ(水分含量20~40%で未発泡のもの)、ソフトドライタイプ(水分含量20~40%で加熱発泡させたもの)、ウエットタイプ(水分含量70%程度、缶詰類)の4種類に大別される。
ウエットタイプペットフードでは、畜肉や魚肉等をそのまま又は適切な加工を施して配合することができるため、愛玩動物に対して嗜好性が高い。その反面、栄養バランスに片寄りが出易い。
ドライタイプ、セミモイストタイプ及びソフトドライタイプでは、均質なペットフードを大量に生産することが可能であり、栄養成分の調節も容易であるため、市場流通するペットフードの主流となっている。しかしながら、これらのペットフードは、ウエットタイプペットフードと比較して愛玩動物に対する嗜好性に劣るという問題がある。
そのため、嗜好性向上剤を原料に配合してペットフードを製造することや、製造したペットフードの表面に嗜好性向上剤を付着又は表面を被覆させることが一般的である。特に、ドライタイプペットフードでは、乾燥粉末化させた嗜好性向上剤をその表面に付着/被覆させることが一般的である。
このような嗜好性向上剤としては、畜肉や魚肉、酵母等を酵素や酸等で加水分解して得たアミノ化合物(アミノ酸、ペプチド及びタンパク質)が含まれる原料に、必要に応じて還元糖を添加し、加熱処理することによりメイラード反応を起こし、香気成分等のメイラード反応生成物により嗜好性を向上させるメイラード型エキスが知られている。メイラード反応は水溶液中で反応が進行し易く、また、反応を制御し易いため、メイラード型エキスは通常、原料である還元糖やアミノ酸、抽出エキス等の混合水溶液を調製し、90~150℃に加熱して製造される、つまり、水溶性溶媒を介したメイラード反応を実施することが一般的である。
このような嗜好性向上剤を非ウエットタイプペットフード、特にドライタイプペットフードの表面付着や表面被覆に使用する場合、得られたメイラード型エキスを水溶液のままで使用するとペットフードの食感や保形が著しく損なわれるため、水溶液をスプレードライやバキュームドライ、エアードライ等により乾燥粉末化する必要がある。このようにして製造された嗜好性向上剤の嗜好性向上効果は優れているが、多段階の製造工程が必要であり、製造に掛かる費用が高くなるという問題がある。
従来、粉末状嗜好性向上剤として、特許文献1には粗砕した家禽又は家畜の肝臓を煮熟し、プロアテーゼ処理し、デキストリンとグルタミン酸ナトリウムを添加し、スプレードライ等で加熱乾燥させて得られた粉末状のペットフード用嗜好性向上剤が開示されている。特許文献2にはタンパク質及び脂質を含む原料をプロテアーゼで処理し、更にリパーゼで処理した後に、還元糖と窒素化合物を添加して加熱(メイラード反応)することにより得られた嗜好性増強剤が開示されている。またこれを乾燥して粉末状にすることも一態様として開示されている。特許文献3にはコラーゲンを含む原料をプロテアーゼで処理した後、キシロース等の還元糖を添加し、加熱によりメイラード反応を起こさせることにより得られた、抗酸化作用による保健的機能を有する嗜好性向上剤が開示されている。この嗜好性向上剤は乾燥粉末化してペットフードに振りかけて使用される。特許文献4には定法に基づいた酵素分解法により得られた液状酵母エキスを70~100℃で加熱(実質的にメイラード反応)した後に乾燥粉末化することで、フレーバーが付加された嗜好性向上剤が開示されている。特許文献5には家畜類の内臓粉砕物の加熱処理物及び/又は内臓破砕物を酵素分解後固液分離して得られた上清を粉末化した内臓エキスと、乾燥粉末酵母及び/又は酵母を酵素分解後固液分離して得られた上清を粉末化した酵母エキスとを、固形分換算で1:4~4:1の割合で配合された嗜好性向上剤が開示されている。また特許文献6には、糖類とアミノ酸類を内包させた構造化脂質相(油中水エマルジョン)を加熱してメイラード反応を進行させて得られたメイラードフレーバー組成物が開示されている。特許文献1~6に開示される嗜好性向上剤の原料は多様であるが、水溶性溶媒を介したメイラード反応後に乾燥粉末化工程が不可欠であるため、製造コストが高額になりがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-139135
【文献】特表2011-510621
【文献】特開2010-99001
【文献】特願2004-121022
【文献】特開平11-127797
【文献】特表2011-526781
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水溶性溶媒を介したメイラード反応によって得られる嗜好性向上剤に対し、製造工程が簡略化された嗜好性向上剤の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、アミノ酸類と還元糖を含有する粉末状原料を容器に密封し所定の条件下で乾熱処理することで、従来の水溶性溶媒を介したメイラード反応によって得られる嗜好性向上剤と同様の効果を奏する嗜好性向上剤を得ることが出来ることを見出し、従来の方法で必要であった製造工程が簡略化された嗜好性向上剤の製造方法を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]アミノ酸類と還元糖を含む粉末状原料を容器に密封し、品温80~180℃の範囲で、5~200分間乾熱処理する工程を含む、嗜好性向上剤の製造方法。
[2]アミノ酸類の量が粉末状原料の全量に対して0.5~20質量%である、前記[1]に記載の嗜好性向上剤の製造方法。
[3]還元糖の量が粉末状原料の全量に対して0.5~20質量%である、前記[1]又は[2]に記載の嗜好性向上剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粉末状の原料を容器に密封し乾熱処理することで水溶性溶媒を媒介した場合と同様にメイラード反応による嗜好性成分が生成されることから、水溶性溶媒を媒介することなく嗜好性向上剤を製造することができる。また、製造工程を簡略化できるため、製造費用を格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】乾熱処理により得られた嗜好性向上剤A2(実施例2)の香気成分をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はアミノ酸類と還元糖を含む粉末状原料を容器に密封し、品温80~180℃の範囲で、5~200分間乾熱処理する工程を含む、嗜好性向上剤の製造方法である。
【0010】
本発明において「アミノ酸類」はアミノ酸(α又はβ、γ型を問わない)及びその誘導体であり、ヒスチジン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、リジン、ヒドロキシリジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、グリシン、アラニン、スレオニン、メチオニン、シスチン、システイン、チロキシン、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン等が挙げられ、これらは単独で又は複数のアミノ酸、例えば1~8種類のアミノ酸の混合物として使用しても良い。アミノ酸類は、粉末状原料の全量に対して好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲で使用できる。アミノ酸類の量が多くなるにつれてメイラード反応生成物の生成量が多くなリ、嗜好性も向上する傾向にあるが、同時に原料コストが上昇する傾向にある。
【0011】
本発明において「還元糖」は、分子内に遊離性のアルデヒド基やケトン基をもち、還元性を示す糖類(アルドース及びケトース)のことをいう。還元糖は単糖類、二糖類、オリゴ糖及び多糖のいずれでも良く、好ましくは単糖類又は二糖類である。還元糖は、トリオースからヘキソースまで炭素数により分類されているが、メイラード反応の連鎖反応が進行して芳香性及び香味性化合物が生成されやすいペントース及びヘキソースが好ましい。入手容易性の観点から、アルドース類ではグルコース(ブドウ糖)及びキシロース、ケトース類ではフルクトース(果糖)が最も好ましい。複数の還元糖、例えば1~5種類の還元糖の混合物を使用しても良い
還元糖は、粉末状原料の全量に対して好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲で使用できる。還元糖の量が多くなるにつれてメイラード反応生成物の生成量が多くなリ、嗜好性も向上する傾向にあるが、同時に原料コストが上昇する傾向にある。
【0012】
本発明における粉末状原料としては、上記アミノ酸類及び還元糖の他に通常のペットフードに使用される原料を使用することが出来る。そのような原料の例としては、穀類(トウモロコシ、小麦、大麦、米、ライ麦、ソバ等)、地上系及び/又は地下系の澱粉類(コーンスターチ、さつまいも、馬鈴薯等)、家畜及び/又は家禽等の肉類(鶏、豚、牛、馬、羊等)、魚介類(まぐろ、かつお、あじ、いわし、えび等)、植物加工食品の副産物(おから、大豆粕、米ぬか、小麦ふすま,グルテンフィード等)、植物性タンパク質(小麦蛋白質、トウモロコシタンパク質、グルテン等)、油脂類(牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、植物性油脂)、卵類(加工物を含む)、乳類(加工物を含む)、野菜類、酵母類を挙げることが出来、粉末状であるものはそのまま、またそうでないものは粉末、エキス粉末等に加工した調製物を使用することが出来る。
【0013】
本発明の製造方法においては粉末状原料を容器に密封し乾熱処理する工程を含む。
本発明において「乾熱処理」とは水分や水蒸気を加えずに原料を加熱する方法であり、原料中の水分の蒸発を積極的に行う熱処理である。例えば、原料を気体又は固体媒介の伝導熱、放射熱、輻射熱、熱風、電磁波(マイクロ波)などに曝して加熱する熱処理法が挙げられる。乾熱処理の手段としては公知のものを使用することができ、例えば熱風乾燥機、ニーダーなどを使用することができる。
【0014】
粉末状原料を容器に密封し乾熱処理することで、アミノ酸類と還元糖を含む粉末状原料を乾熱処理することによって生成したメイラード生成物が空気中に飛散することを抑制し、嗜好性改善に十分な量を粉末状原料中にとどめることができる。
本発明において「容器」は粉末状原料を収容して密封することができ、また乾熱処理に耐えうるものであれば特に限定無く使用することができる。例えば金属製の密閉容器を使用することができる。
【0015】
本発明において乾熱処理の処理温度は、粉末状原料の品温が80~180℃の範囲、好ましくは100~150℃の範囲、さらに好ましくは120~140℃の範囲である。80~180℃の範囲であれば、焦げ臭の発生など嗜好性への悪影響なしに嗜好性改善に十分な量のメイラード反応産物の生成量を得ることができる。
本発明における乾熱処理の時間は粉末混合物の品温が上記温度に達してから、5~200分間、好ましくは15~100分間さらに好ましくは30~60分間であり、乾熱処理温度に応じて適宜調整することができる。5~200分間の範囲であれば、焦げ臭の発生など嗜好性への悪影響なしに嗜好性改善に十分な量のメイラード反応産物の生成量を得ることができる。
【実施例
【0016】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
製造例1:犬用ドライタイプペットフードの製造
とうもろこし50質量部、小麦粉16質量部、大豆粕12質量部、チキンミール8質量部、ミートミール7質量部、小麦フスマ5質量部、ミネラル類(炭酸マンガン、炭酸亜鉛、硫酸鉄、硫酸銅、ヨウ素酸カルシウム、硫酸コバルト)1質量部、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、K3、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ビオチン)1質量部を十分に混合した後、水20質量部を加えて一軸押出機(ウェンガー社製X-20型)に供給し、温度140℃で混練してダイスから押し出し、切断した後、水分が8~10%になるように120℃で20分間、熱風乾燥機(エスペック社製PH-202)で乾燥させて、膨化した犬用ドライフード粒(直径10mm、長さ10mm)を製造した。
【0018】
製造例2:水溶液加熱(従来技術)、乾熱処理(本願発明)による犬用嗜好性向上剤の製造
(水溶液加熱)
小麦粉10質量部、キシロース3質量部、アラニン1質量部を水100質量部に混合し、オートクレーブで100℃、60分間加熱した反応混合液を自然に冷却してから凍結し、凍結乾燥により嗜好性向上剤B1(対照例1)を得た。
(乾熱処理)
小麦粉10質量部、キシロース3質量部、アラニン1質量部を金属缶に封入し(直径11~12cm×高さ3cmの円柱型のアルミニウム製の容器に10~20gの試料を入れて薄く広げ、蓋をした。以下の実験でも同様)135℃の熱風乾燥機で20分間加熱した後、自然冷却し、嗜好性向上剤A1(実施例1)を得た。
【0019】
製造例3:嗜好性向上剤を塗布した犬用ドライタイプペットフード
製造例1で得たドライフード粒94質量部を回転式ドラムミキサーに入れた。ドライフード粒を撹拌しながら75℃に加温した牛脂5質量部を滴下し、塗布した。次いで、ドライフード粒を撹拌しながら嗜好性向上剤B1または嗜好性向上剤A1のそれぞれ1質量部を滴下し、均一となるように塗布して嗜好性向上剤を塗布した犬用ドライタイプペットフードを得た。
【0020】
嗜好性試験1
製造例3で得られた嗜好性向上剤B1を塗布したペットフードB1、嗜好性向上剤A1を塗布したペットフードA1をそれぞれ別の餌皿に150gずつ盛り付けた。5頭の犬を個別の犬舎に入れ、2種類のペットフードを同時に与えて、午後2時~午後4時までの間、自由に摂餌させることで二者択一の嗜好性試験を行った。嗜好性は、下記式で求め、結果を表1に記した。
式・・・ペットフードA1の摂餌量/(ペットフードB1の摂餌量+ペットフードA1の摂餌量)×100
【0021】
表1
【0022】
水溶液中で加熱した場合と乾熱処理した場合では嗜好性に差はなかった。
【0023】
定性試験:乾熱処理によるメイラード反応生成物の確認
ビール酵母10質量部、キシロース1質量部、メチオニン0.5質量部、グリシン0.5質量部を金属缶に封入し、135℃の熱風乾燥機で30分間加熱して嗜好性向上A2(実施例2)を得た。得られた嗜好性向上剤A2の香気成分をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、メチオニンと還元糖のメイラード反応生成物である3-メチルチオプロパナールが検出された。結果を図1に示す。
この結果より、本発明の乾熱処理工程を含む製造方法においても、従来の水溶液における加熱によるメイラード反応と同様にメイラード反応が起こっていることが確認された。
【0024】
製造例4:乾熱処理条件の検討
表2の配合表に記載した粉末状の各原料を十分に混合した後、金属容器に密封し、熱風乾燥機に投入し、表2記載の加熱条件で乾熱処理した。乾熱処理終了後、自然冷却して嗜好性向上剤A3(実施例3)および嗜好性向上剤C1(比較例1)を得た。
【0025】
表2
*2分子のシステインが酸化されてジスルフィド結合を介して結合した化合物。
【0026】
製造例5:嗜好性向上剤を塗布した犬用ドライタイプペットフードの製造
製造例1で得たドライフード粒94質量部を回転式ドラムミキサーに入れた。ドライフード粒を撹拌しながら75℃に加温した牛脂5質量部を滴下し、塗布した。次いで、ドライフード粒を撹拌しながら製造例4で製造した嗜好性向上剤A3および嗜好性向上剤C1のそれぞれ1質量部を滴下し、均一となるように塗布して実施例3及び比較例1のペットフードA3及びC1を得た。
【0027】
嗜好性試験2
実施例3及び比較例1のペットフードA3及びC1をそれぞれ別の餌皿に150gずつ盛り付け、嗜好性試験1と同様に試験を実施した。嗜好性は、下記式で求め、結果を表3に記した。
式・・・ペットフードA3の摂餌量/(ペットフードA3の摂餌量+ペットフードC1の摂餌量)×100
【0028】
表3
【0029】
実施例3の嗜好性向上剤は、比較例1の嗜好性向上剤に対して優れた嗜好性を示した。これは、メイラード反応によって生じた香ばしい香り成分のためであると考えられる。
【0030】
製造例6 市販の嗜好性向上剤を塗布した犬用ドライタイプペットフードの製造
製造例4で製造した嗜好性向上剤に代えて市販の酵母エキス(日本製紙ケミカル:SK酵母エキス)を使用したこと以外は製造例3と同様にして対照例2のペットフードB2を得た。
【0031】
嗜好性試験3
実施例2及び対照例2のペットフードA2及びB2を別の餌皿にそれぞれ150g盛り付け、嗜好性試験1と同様に試験を実施した。嗜好性は、下記式で求め、結果を表4に記した。
式・・・ペットフードA2の摂餌量/(ペットフードA2の摂餌量+ペットフードB2の摂餌量)×100
【0032】
表4
【0033】
本発明の嗜好性向上剤A2(実施例2)は、従来の嗜好性向上剤である酵母エキス(対照例2)よりも嗜好性に優れていた。
【0034】
製造例7 猫用ドライタイプペットフードの製造
とうもろこし40質量部、小麦粉15質量部、大豆粕8質量部、コーングルテンミール5質量部、チキンミール8質量部、ミートミール7質量部、魚粉15質量部、ミネラル類(炭酸マンガン、炭酸亜鉛、硫酸鉄、硫酸銅、ヨウ素酸カルシウム、硫酸コバルト)1質量部、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、K3、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ビオチン)1質量部を十分に混合した後、水20質量部を加えて一軸押出機(ウェンガー社製X-20型)に供給し、温度140℃で混練してダイスから押し出し、切断した後、水分が8~10%になるように120℃で20分間、熱風乾燥機(エスペック社製PH-202)で乾燥させて、膨化した猫用ドライフード粒(直径10mm、長さ10mm)を製造した。
【0035】
製造例8 乾熱処理による猫用嗜好性向上剤の製造
表5の配合表に記載した粉末状の各資材を十分に混合した後、金属容器に密封し、熱風乾燥機に投入し、表5記載の加熱条件で乾熱処理した。乾熱処理終了後、自然冷却して嗜好性向上剤A4(実施例4)、嗜好性向上剤C2(比較例2)および嗜好性向上剤C3(比較例3)を得た。
【0036】
表5 配合表
【0037】
製造例9 嗜好性向上剤を塗布した猫用ドライタイプペットフードの製造
製造例7で得たドライフード粒94質量部を回転式ドラムミキサーに入れた。ドライフード粒を撹拌しながら75℃に加温した牛脂5質量部を滴下し、塗布した。次いで、ドライフード粒を撹拌しながら製造例8で製造した嗜好性向上剤A4、C2及びC3のそれぞれ1質量部を滴下し、均一になるように塗布して実施例4及び比較例2及び3のペットフードA4、C2及びC3を得た。
【0038】
嗜好性試験4:実施例4及び比較例2の猫用ペットフードA4及びC2を別の餌皿にそれぞれ100g盛り付けた。5匹の猫を個別の猫舎に入れ、実施例4及び比較例3のペットフードA4及びC2を同時に与え、午後4時~翌朝の午前9時まで間自由摂餌させることで二者択一の嗜好性試験を行った。嗜好性は、下記式で求め、結果を表6に記した。
式・・・ペットフードA4の摂餌量/(ペットフードA4の摂餌量+ペットフードC2の摂餌量)×100
【0039】
表6
【0040】
実施例4の嗜好性向上剤は、比較例2に対して優れた嗜好性を示した。これは、メイラード反応によって生じた香ばしい香り成分のためであると考えられる。
【0041】
嗜好性試験5
実施例4及び比較例3の猫用ペットフードA4及びC3を別の餌皿にそれぞれ100g盛り付けた。嗜好性試験4と同様に試験を実施した。嗜好性は、下記式で求め、結果を表7に記した。
式・・・ペットフードA4の摂餌量/(ペットフードA4の摂餌量+ペットフードC3の摂餌量)×100
【0042】
表7
【0043】
実施例4の嗜好性向上剤は、比較例3に対して優れた嗜好性を示した。比較例3の嗜好性向上剤は182℃と高温で乾熱処理したため、焦げ臭が発生し、また焦げによる苦味が付与されたために嗜好性に劣ったものと考えられる。
図1